説明

ポインタ制御方法、システム、およびそのプログラム。

【課題】マルチモニタ環境におけるポインタの移動方向、移動速度を柔軟に制御する方法およびシステムを提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために第1の態様として、複数モニタの表示領域の所望の箇所に、ポインタに所望の動作を行わせる制御領域を定義する制御領域定義部であって、制御領域を一意に識別するための識別名と、当該制御領域におけるポインタの制御項目とその制御内容のペアを含む、定義データを記録する、制御領域定義部と、前記定義データを読み取り、ポインタの制御を行うポインタ制御部であって、ポインタが制御領域に進入することに応じて、当該制御領域に対して定義された定義データの前記制御項目に対応する前記制御内容に従って前記ポインタの制御を行う、ポインタ制御部を有し、前記制御項目として、移動速度閾値、移動可能方向、または移動先を含むポインタ制御システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポインタ制御に関し、特にマルチモニタ環境におけるポインタ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来マルチモニタ(マルチディスプレイ)におけるポインタ制御については、単体のモニタの表示域に移動が限られるもの、マルチモニタ間を自由に移動できるものなどが知られている。現状は拡張デスクトップという形態で後者の制御方法がよく使用されている。
【0003】
ところでマルチモニタにおいては表示枠の大きさが異なる組み合わせや特定のモニタを主な作業領域として他を参考表示にするなど種々の組み合わせ、使用形態がある。このような環境においてユーザの使用環境にマッチしたポインタ制御方法が望まれていた。
【0004】
例えば、同時接続モニタ数の増加や画面サイズの異なるモニタの組み合わせによりポインタの移動距離も長くなる。移動距離が長くなるとポインタの移動に要する時間も長くなる。そのためポインタを高速に移動せざるを得なくなり、自分の操作しているポインタを画面上から見失う弊害が生じる。
【0005】
その他、表示領域が大と小の2つのモニタ間のポインタ(カーソル)移動では小→大への水平移動はそのまま可能であるが、大→小の場合にはそのままの水平移動ができない場合がある。
【0006】
また複数のモニタの表示領域に複数のアプリケーションが表示されている状態で、特定のモニタに表示されている特定のアプリケーションへポインタを移動する操作はモニタ数の増大および表示領域の拡大と共に難しくなる。
【0007】
従来技術として特許文献1がある。特許文献1は拡張デスクトップ環境においてマウスの操作性を向上させたマルチモニタシステムに関する技術であり、画面1と画面2が接続する箇所に既定の領域を表示させ、マウスがこの近傍に移動した場合、マウスを一時停止させたり、移動先の画面にモニタ番号を表示する方法を提供する。
【0008】
しかしながら、このような方法はモニタ間の接続領域のみを考慮しており、ユーザの使用環境やポインタの挙動に柔軟に対応するポインタ制御がなされていない。従ってユーザ環境、ポインタの移動速度、移動方向、使用しているアプリケーションなど複雑な使用環境に柔軟に対応する、人間工学的に優れたより良いポインタ制御方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−59251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
マルチモニタ環境においてユーザ使用環境に柔軟に対応した人間工学的に優れたポインタ制御方法およびシステムを提供することである。
【0011】
また別の課題は、マルチモニタ環境におけるポインタの移動方向、移動速度を柔軟に制御する方法およびシステムを提供することである。
【0012】
また別の課題は、マルチモニタ環境において、使用するアプリケーションと関連付けてポインタを制御する方法およびシステムを提供することである。
【0013】
また別の課題は、マルチモニタ環境において、表示領域にポインタの動作を抑制・促進する制御領域をユーザが自由に定義できるようにし、このユーザ定義に従ってポインタを制御する方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。
【0015】
本発明は、複数モニタにおけるポインタの制御を行うシステムを提供する。複数モニタの表示領域の所望の箇所に、ポインタに所望の動作を行わせる制御領域を定義する制御領域定義部であって、制御領域を一意に識別するための識別名と、当該制御領域におけるポインタの制御項目とその制御内容のペアを含む、定義データを記録する、制御領域定義部と、前記定義データを読み取り、ポインタの制御を行うポインタ制御部であって、ポインタが制御領域に進入することに応じて、当該制御領域に対して定義された定義データの前記制御項目に対応する前記制御内容に従って前記ポインタの制御を行う、ポインタ制御部を有し、前記制御項目として、移動速度閾値、移動可能方向、または移動先を含むポインタ制御システムを提供する。
【0016】
ここで、前記移動先の制御内容を、表示領域における座標、制御領域の識別名、またはアプリケーション識別子とすることができる。
【0017】
また、前記アプリケーション識別子を、アプリケーション名、アプリケーションパス、またはアプリケーションのプロセスIDとすることができる。
【0018】
さらに、前記制御項目が、制御領域プロパティ、または偏向量を含むことができる。
【0019】
そして、前記制御領域プロパティが、領域形状、位置、サイズ、属性を含むことができる。
【0020】
本発明の別の態様として、コンピュータの処理により複数モニタにおけるポインタの制御を行う方法を提供する。複数モニタの表示領域の所望の箇所に、ポインタに所望の動作を行わせる制御領域を定義するステップであって、制御領域を一意に識別するための識別名と、当該制御領域におけるポインタの制御項目とその制御内容のペアを含む、定義データを記録するステップと、前記定義データを読み取り、ポインタの制御を行うステップであって、ポインタが制御領域に進入することに応じて、当該制御領域に対して定義された定義データの前記制御項目に対応する前記制御内容に従って前記ポインタの制御を行うステップを有し、前記制御項目として、移動速度閾値、移動可能方向、または移動先を含むポインタ制御方法を提供する。
【0021】
ここで、前記移動先の制御内容を、表示領域における座標、制御領域の識別名、またはアプリケーション識別子とすることができる。
【0022】
また、前記アプリケーション識別子を、アプリケーション名、アプリケーションパス、またはアプリケーションのプロセスIDとすることができる。
【0023】
さらに、前記制御項目が、制御領域プロパティ、または偏向量を含むことができる。
【0024】
そして、前記制御領域プロパティが、領域形状、位置、サイズ、属性を含むことができる。
【0025】
本発明のさらに別の態様として、上記方法の各ステップをコンピュータに実行させる、コンピュータ・プログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、ユーザの使用環境やポインタの挙動に柔軟に対応するポインタ制御が可能になる。より具体的にはポインタの移動速度、移動方向を柔軟に制御し、また遠方アプリケーションへの効果的な移動、回帰が可能になる。本発明によって人間工学的に優れたよりポインタ制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のポインタ制御方法の概略図である。
【図2】本発明の制御パネル140で設定される定義データ180の内容である。
【図3】移動方向の偏向を説明する図である。
【図4】移動先にアプリケーション識別子を指定した場合の制御動作について説明する図である。
【図5】モニタが3台設置され中央のモニタ520を作業画面として使用する例である。
【図6】制御パネルにおいて移動先にアプリケーション識別子を指定するGUIである。
【図7】本発明の全体の処理フローである。
【図8】制御領域定義部170の動作説明である。
【図9】移動先としてアプリケーション識別子が指定された場合のフローチャートである。
【図10】本発明に使用されるコンピュータ・ハードウェアのブロック図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について実施形態をもって説明するが、本発明は、後述する実施形態に限定されるものではない。実施形態におけるポインタ制御は、コンピュータ用ディスプレイに限らず、テレビ画面、プロジェクタ、プレゼンテーション機器、携帯電話、ゲーム機器など、ポインタを表示する表示装置すべてについて実施可能であることは言うまでもない。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態によるポインタ制御方法の概略図を示す。複数のモニタ間(図1ではモニタ110、モニタ120の2つ)でポインタ150をユーザがマウス、カーソルキー、その他のポインティングデバイスを用いて移動させる。本発明はポインタ150がモニタの表示領域に設置された制御領域への進入、移動、脱出に応じて予め定義されたポインタの動作制御を行う。なお以下に説明する各部位は個別にハードウェア化しても良い。
【0030】
より具体的には制御領域定義部170が制御領域130を定義するための制御パネル140をモニタに表示する。ユーザは予めこの制御パネル140を操作してポインタを制御するための制御領域130をモニタの表示領域のどこに設置するか、またその制御領域でポインタをどのように動作制御するかの設定を行う。設定されたデータは定義データ180として記録される。制御領域定義部170はポインタ制御部160により参照され、モニタに表示されているポインタの位置を監視する。ポインタの位置を監視することで単位時間の移動距離が分かるので自ずとポインタの移動速度も計算される。
【0031】
ポインタ制御部160はポインタ150が制御領域130に進入したか、移動速度はどのぐらいか、脱出したかを監視し、その制御内容に応じて所定の制御を行う。所定の制御内容は制御パネルを用いてユーザが設定した定義データ180に記録されている。なお制御領域130は制御パネルにより可視にも不可視にも設定できる。
【0032】
図2は、本発明の制御パネル140で設定される定義データ180の内容である。左側が制御項目で右側がその制御内容を設定する。制御項目と制御内容のペアは少なくとも1つ設定され、設定された値は定義データとして記憶装置に記録される。定義データは1つの制御領域130について1つ定義される。以下、各制御項目について説明する。
【0033】
識別名はその制御領域を一意に決定する名前である。図2ではD1(Domain 1)という名前になる。
【0034】
制御領域プロパティは制御領域の領域形状、位置、サイズ、属性を定義する場所である。図2の例では形状は矩形(R)であり、その位置は座標であるが好適には仮想画面内での絶対位置である。図2では(100,100)-(200,200)と設定されている。ここでもし形状が円(C)であれば位置は中心座標を、サイズは半径を指定することになる。また属性は制御領域を不可視(0)にするか可視(0以外:色属性番号)にするかにするかを指定する。
【0035】
移動速度閾値は制御領域内の制御が有効になるポインタの移動速度の閾値を指定する制御項目である。例えばここに20(dot/s)と定義されるとポインタ速度が20(dot/s)を超えたポインタがその制御対象になり、20(dot/s)未満のポインタは制御対象から外れる。移動速度はポインタが前に居た座標(前回の読み取り座標)を記録しておき、これと現在の座標(新しい座標)との差分を計算することで得られる。閾値の省略値は0である。
【0036】
移動可能方向はポインタの移動方向を抑制するための制御項目である。例えば右方向への移動を抑制するためには制御内容にONを設定する。X座標が閾値以上増加している場合、X座標を前回の読み取り位置に戻す。同様に左方向への動きを抑制するためには制御内容にONを設定する。X座標が閾値以上減少している場合、X座標を前回の読み取り位置に戻す。
【0037】
このポインタ制御により、制御領域内でポインタが高速で移動した場合に、画面外に飛び出し見失うというようなことを防ぐことができる。逆に閾値以下のゆっくりとした動きについては制御を受けない。図2の例では右方向ONで左方向OFFであるので右方向への移動はできない。例えば閾値を10と設定した場合、右方向へ速度10を超える速い動きを止めることが可能になり、速度10未満のゆっくりした動きであればこの制御領域を通過できる。図2の場合はなお本発明は左右の方向についての抑制を実施しているが同様な仕組みで上下(Y座標)方向への抑制も可能である。
【0038】
偏向量は目的の方向への移動を誘導するための制御項目である。図3は移動方向の偏向を説明する図である。ポインタ150が制御領域130に左方向から右方向に侵入した場合に移動先をY軸方向で下方に誘導したい場合には、制御項目の偏向量について、図3のように、右、目標値(Y軸)10、パターン1などと指定する。パターンは誘導する移動曲線の種類を表し、実施例では3通りが指定できる。図3の定義例は、左側に表示領域の大きいモニタ、右に表示領域の小さいモニタを設置した場合に、左から右にポインタが移動する際にスムーズに移動を制御することができる。
【0039】
移動先は制御領域からポインタが出た場合にどこへポインタを移動させるかを指定する制御項目である。例えばここに座標が書かれている場合にはその座標位置へジャンプする。座標については好適には複数のモニタを含む仮想画面内での絶対位置を指定する。その他、モニタ番号および該モニタの表示領域の座標としても良い。
【0040】
好適には、座標指定の移動先へのジャンプはポインタが進入した方向と同一方向に制御領域から出る場合にのみ機能し、制御領域に進入した方向と逆方向に戻る(すなわちバックする)場合には機能しない。なお移動先に制御領域の識別名が指定してある場合にはその指定制御領域にジャンプする。また移動先にはアプリケーション識別子を指定することも可能である。
【0041】
図4は、移動先にアプリケーション識別子を指定した場合の制御動作について説明する図である。アプリケーション識別子とは、アプリケーション名、アプリケーションのプロセスID、アプリケーションのパス名の何れかであるが、アプリケーションを一意に特定できる情報であればこれに限定されず使用できる。
【0042】
本発明ではアプリケーションのプロセスIDをアプリケーション識別子として使用する。プロセスIDはOSの上で稼動しているアプリケーションに対して一意に番号が付与される。このプロセスIDはOSに問い合わせることで容易に取得できる。好ましくはプロセスIDと共にアプリケーション名も表示する。
【0043】
図4ではモニタ410とモニタ420が拡張デスクトップで表示されている。ポインタはこの2つのモニタ間で自由に行き来できる。モニタ410には制御領域430が設置されおり、またモニタ420にはアプリケーション440が表示されている。このアプリケーション440のプロセスIDは22である。
【0044】
ここで制御領域430の定義データの移動先にプロセスID22が指定されていると仮定する。この場合、ポインタ450が制御領域430に進入するとポインタ450はモニタ420のアプリケーション440の表示領域にジャンプする。ポインタ450はアプリケーション440内で自由に移動できるが、アプリケーション440の表示領域から少しでも(例えば上方向に)出るとポインタ450はモニタ410の制御領域430の上部にジャンプする。
【0045】
図4の下部にアプリケーション440とその制御領域430の拡大関連図を示す。ポインタ450が制御領域430に進入すると、進入した位置に相応するアプリケーション440の位置に、また進入した角度と同等の角度でアプリケーション440の表示領域内に進入する。出るときも同様に、アプリケーション440から出る角度、部位に相応する制御領域430の部位からポインタ450が脱出する。好ましくは制御領域430はアプリケーション440の表示領域を縮小したサイズが望ましい。
【0046】
なお移動先にアプリケーション識別子を指定した場合、制御領域の領域形状とサイズを自動で設定することもできる。こうすることで形状とサイズの入力が不要になり、またユーザは制御領域の形状がアプリケーションの表示領域の縮小コピーであるかの認識できるようになる。
【0047】
このように図4の制御領域430はモニタ420に表示されたアプリケーション440が縮小された領域のように使用することが可能になる。つまり移動先にアプリケーションのプロセスIDを指定することにより、制御領域とアプリケーションを関連付けることが可能になる。
【0048】
図5にモニタが3台設置され中央のモニタ520を作業画面として使用するユーザの例を図示する。図5でモニタ510はプロセスID23のアプリケーション560が表示され、モニタ520にはユーザの主な作業画面が表示され左下に制御領域580、590が設置されている。制御領域580の制御項目である移動先にはプロセスID23が、制御領域590の制御項目である移動先にはプロセスID24が指定されている。そしてモニタ530にはプロセスID24のアプリケーション570が表示されていると仮定する。
【0049】
ここでユーザは主な作業画面で仕事を行うがモニタ520での使用アプリケーションでは不足の情報を得るために制御領域580にポインタ550を移動させる。するとポインタ550はアプリケーション560の表示領域に移動する。ユーザはここで何らかの仕事をして情報を得た後、アプリケーション560の表示領域からポインタ550を移動させる。ポインタ550はモニタ520の制御領域580の近辺に移動する。
【0050】
さらにユーザはモニタ520を主な作業画面として仕事を行うが、また別の情報を得るために制御領域590にポインタ550を移動させる。するとポインタ550はアプリケーション570の表示領域に移動する。ユーザはここで何らかの仕事をして情報を得た後、アプリケーション570の表示領域からポインタ550を移動させる。ポインタ550はモニタ520の制御領域590の近辺に移動する。このようにアプリケーションと制御領域を関連付けることで、ユーザの作業環境にあったポインタ制御が可能になる。
【0051】
仮に本発明の制御領域がなければユーザはポインタ550をモニタ520からモニタ510のアプリケーション560まで移動し、さらにモニタ520へ戻り、モニタ530のアプリケーション570まで移動し、最後にモニタ520へ戻るというポインタ移動距離を要する。これに対して本発明の方法によればポインタ550と同一モニタ内の制御領域580および制御領域590への往復のみの移動距離で済むことになる。
【0052】
図6に、制御パネルにおいて移動先にアプリケーション識別子を指定するGUIを示す。制御パネル140は制御領域定義部170が表示および管理を行う。ユーザはモニタ120の制御パネル140の移動先の制御内容190を所定の動作(例えばマウスのクリック)をする。それに応じて現在稼動中のアプリケーションリスト610が表示される。
【0053】
稼動中のアプリケーションはOSに問い合わせることで、アプリケーション名とそのプロセスIDの情報が得られるので、制御領域定義部170が稼動中のアプリケーション名をリスト610として表示する。ここでユーザが所望のアプリケーションを選択すると、そのプロセスIDが移動先の制御内容としてセットされる。
【0054】
図6の例ではアプリケーションとして表計算ソフトが選択され、その表計算ソフトのプロセスIDが移動先の制御内容としてセットされる。制御領域定義部170は制御パネルで設定された値を定義データ180に記録する。
【0055】
図6において移動先の制御内容190を別の所定の動作(たとえばキーボードの改行キーの押下)を行うと移動先を直接キーボードから入力できる。例えばアプリケーションのプロセスIDを直接入力可能とするとともに、別の制御領域の識別番号(例えばD4)も入力可能とする。また好ましくは移動先にプロセスIDを表示する場合にはそれと共にアプリケーション名を表示するようにする。その他、種々のアプリケーション識別子の表示態様が可能である。
【0056】
図7に、本発明の全体の処理フローを図示する。なお以下の説明ではポインタはマウスで操作されるものと仮定するがこれに限らず、トラックポイント、カーソルキーなどでも構わない。まずステップ710で、制御領域定義部170が、ユーザにより指定された制御パネル140の制御内容に従い定義データ180を作成する。これは制御領域を仮想画面内に設置することと同値である。
【0057】
次にステップ720でOSのマウスイベントをフックする。これによりマウスの座標、クリック動作が全て取得できる。なおマウスイベントのフック方法についてはよく知られているので詳細は省略する。簡単にフック方法を説明すると、マウスのメッセージ・イベントを横取りして、制御領域の制御内容に従い、必要に応じてデータを修正して(マウスの位置、マウス形状、動作等を書き換えて)OSに渡す。好ましくはグローバルフック(システムフック)を用いてDLLとして機能させる。
【0058】
次にステップ730でポインタが定義データ180で定義された制御領域に進入したか判断する。結果がYESならステップ740で定義データ180の制御項目とその制御内容に従ってポインタを制御する。より具体的にはマウスの新しい座標等をOSに渡す。次にステップ750でポインタが制御領域から出たか判断する。結果がNOなら処理はステップ740に戻る。結果YESなら処理はステップ730に進む。
【0059】
図8に、制御領域定義部170の動作を説明する。制御領域定義部170は制御パネル140を表示する。ステップ810で制御内容がブランクの定義データを表示し、ステップ815でユーザの入力を待つ。ステップ820で入力内容のチェックを行う。例えば各制御内容が許容範囲内かなどのチェックを行う。
【0060】
ステップ830で1つの制御領域の入力が完了したかを判断する。結果NOならステップ815へ戻る。ステップ830で入力完了の場合、処理はステップ840へ進む。ステップ840では制御領域の識別名ごとに定義データ180に保存される。次にステップ850で全ての制御領域についての設定が終了したかを判断し、終了していない場合はステップ810に戻る。終了した場合には処理を終了する。
【0061】
なおステップ740の処理の特例として移動先がアプリケーションの場合の処理を説明する。図9に、移動先としてアプリケーション識別子が指定された場合のフローチャートを示す。ステップ910でまず移動先がプロセスIDかどうかを判断する。結果がNOならステップ750へ進む。結果がYESならステップ920で現在の制御領域の識別名を記録しておく。この情報は後ほど飛び先のアプリケーションから帰ってくる際に必要になる。
【0062】
次にステップ930でプロセスIDからアプリケーションを特定し、そのアプリケーションのウィンドウの仮想画面の座標とサイズを取得する。次にステップ940でマウスポインタを、ウィンドウ内の所定の位置に移動する。所定の位置とは例えばアプリケーションウィンドウ座標(x、y)にサイズの2分の1を足した座標などである。
【0063】
ステップ950でポインタの座標がアプリケーションウィンドウ外に出たか判断する。結果がYESならステップ960で先ほど記録した識別名を持つ制御領域の近辺の所定の位置にポインタを移動する。ここでの所定の位置とは例えばアプリケーションウィンドウの上方から外へ出た場合には制御領域の上方にポインタを移動させる。つまりアプリケーションウィンドウからの脱出方向と同じ方向に制御領域の近辺に移動させる。そして処理はステップ730へ進む。
【0064】
図10に本発明のポインタ制御に使用されるコンピュータ・ハードウェアのブロック図を一例として示す。本発明の実施形態に係るコンピュータ・システム(1001)は、CPU(1002)とメイン・メモリ(1003)と含み、これらはバス(1004)に接続されている。CPU(1002)は好ましくは、32ビット又は64ビットのアーキテクチャに基づくものであり、例えば、インテル社のXeon(商標)シリーズ、Core(商標)シリーズ、Atom(商標)シリーズ、Pentium(商標)シリーズ、Celeron(商標)シリーズ、AMD社のPhenom(商標)シリーズ、Athlon(商標)シリーズ、Turion(商標)シリーズ及びSempron(商標)などを使用することができる。
【0065】
バス(1004)には、ディスプレイ・コントローラ(1005)を介して、LCDモニタなどのディスプレイ(1006)が接続されている。ディスプレイ(1006)は、アプリケーションおよびポインタの表示に使用する。バス(1004)にはまた、IDE又はSATAコントローラ(1007)を介して、ハードディスク又はシリコン・ディスク(1008)と、CD−ROM、DVDドライブ又はBlu−rayドライブ(1009)が接続されている。これらの記憶装置に、本発明にかかるプログラム、定義データを記憶するようにしても良い。本発明のプログラムおよび定義データは好ましくはハードディスク(1008)もしくはメイン・メモリ(1003)に格納されCPU(1002)により実行されポインタ制御が行われる。
【0066】
CD−ROM、DVD又はBlu−rayドライブ(1009)は、必要に応じて、コンピュータ可読の媒体であるCD−ROM、DVD−ROM又はBlu−rayディスクから本発明のプログラムをハードディスクにインストールするため、もしくはデータを読み取るために使用される。バス(1004)には更に、キーボード・マウスコントローラ(1010)を介して本発明のポインタ制御対象となる、キーボード(1011)及びマウス(1012)が接続されている。
【0067】
通信インタフェース(1014)は、例えばイーサネット(商標)・プロトコルに従う。通信インタフェース(1014)は、通信コントローラ(1013)を介してバス(1004)に接続され、コンピュータ・システム及び通信回線(1015)を物理的に接続する役割を担い、コンピュータ・システムのオペレーティング・システムの通信機能のTCP/IP通信プロトコルに対して、ネットワーク・インターフェース層を提供する。なお通信回線を通して、外部の文書データもしくは有向グラフを読みとり、CPU(1002)により処理するようにしても良い。
【0068】
本発明のポインタ制御プログラムは、C++、Java(登録商標)、Java(登録商標)Beans、Java(登録商標)Applet、Java(登録商標)Script、Perl、Rubyなどのオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現できる。また該プログラムをコンピュータ可読な記録媒体に格納して頒布または伝送して頒布することができる。
【0069】
これまで本発明を、特定の実施形態および実施例をもって説明してきたが、本発明は、特定の実施形態または実施例に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
110、120、410、420、510、520、530 モニタ
130、430、580、590 制御領域
140 制御パネル
150、450、520、550 ポインタ
160 ポインタ制御部
170 制御領域定義部
180 定義データ
190 制御内容
440、560、570 アプリケーション
610 アプリケーションリスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数モニタにおけるポインタの制御を行うシステムであって、
複数モニタの表示領域の所望の箇所に、ポインタに所望の動作を行わせる制御領域を定義する制御領域定義部であって、
制御領域を一意に識別するための識別名と、当該制御領域におけるポインタの制御項目とその制御内容のペアを含む、定義データを記録する、制御領域定義部と、
前記定義データを読み取り、ポインタの制御を行うポインタ制御部であって、
ポインタが制御領域に進入することに応じて、当該制御領域に対して定義された定義データの前記制御項目に対応する前記制御内容に従って前記ポインタの制御を行う、ポインタ制御部と、
を有し、
前記制御項目として、移動速度閾値、移動可能方向、または移動先を含む、
ポインタ制御システム。
【請求項2】
前記移動先の制御内容が、表示領域における座標、制御領域の識別名、またはアプリケーション識別子である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記アプリケーション識別子が、アプリケーション名、アプリケーションパス、またはアプリケーションのプロセスIDである、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記制御項目が、さらに、制御領域プロパティ、または偏向量を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記制御領域プロパティが、領域形状、位置、サイズ、属性を含む、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
コンピュータの処理により複数モニタにおけるポインタの制御を行う方法であって、
複数モニタの表示領域の所望の箇所に、ポインタに所望の動作を行わせる制御領域を定義するステップであって、
制御領域を一意に識別するための識別名と、当該制御領域におけるポインタの制御項目とその制御内容のペアを含む、定義データを記録するステップと、
前記定義データを読み取り、ポインタの制御を行うステップであって、
ポインタが制御領域に進入することに応じて、当該制御領域に対して定義された定義データの前記制御項目に対応する前記制御内容に従って前記ポインタの制御を行うステップと、
を有し、
前記制御項目として、移動速度閾値、移動可能方向、または移動先を含む、
ポインタ制御方法。
【請求項7】
前記移動先の制御内容が、表示領域における座標、制御領域の識別名、またはアプリケーション識別子である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記アプリケーション識別子が、アプリケーション名、アプリケーションパス、またはアプリケーションのプロセスIDである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記制御項目が、さらに、制御領域プロパティ、または偏向量を含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記制御領域プロパティが、領域形状、位置、サイズ、属性を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
請求項6乃至10の何れか1つに記載の方法の各ステップをコンピュータに実行させる、コンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−128579(P2012−128579A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278353(P2010−278353)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】