説明

ポリアクリルアミドゲル上で分離される生体分子の分解能を改善するための組成物および方法

スタッキングゲル中に直鎖状ポリアクリルアミドを含有する、ポリアクリルアミドゲルのようなゲルが提供される。スタッカー中に直鎖状ポリアクリルアミドを含有する未変性ゲルは、タンパク質複合体のような生体分子複合体を分離するために使用することができる。前面プレートと背面プレートとの間の間隙幅が、カセットの上側エッジで5%より大きくは変動しないゲルカセットもまた提供される。ゲルカセットは、スタッカー中に直鎖状ポリアクリルアミドを含有する未変性ゲルのような未変性ゲル上でのタンパク質およびタンパク質複合体の電気泳動による分離のために使用することができる。未変性ゲルは、少なくとも1つの試料および/または少なくとも1つの分子量標準を電気泳動するための複数個のウェルを有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、「ポリアクリルアミドゲル上で分離される生体分子の分解能を改善するための組成物および方法」と題する、2005年12月29日出願の米国特許仮出願第60/754,328号、および「ポリアクリルアミドゲル上で分離される生体分子の分解能を改善するための組成物および方法」と題する、2006年1月24日出願の米国特許仮出願第60/761,342号に対する優先権の恩典を主張する。これらの特許出願の各々は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、電気泳動ゲルにおけるスカーティング(skirting)効果を最少にするための電気泳動方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
ゲル電気泳動は、生体分子および分子複合体の分離、特性解析ならびに同定におけるその有用性から、生化学、分子生物学、および細胞生物学の基本的な技術となっている。ゲル電気泳動を最適に使用するためには、生体分子を高分解能で分離することが必要である。ゲル電気泳動を採用する生化学者が直面する1つの問題は、「スカーティング」である。これは、そのゲル上にロードされた試料の分子が、そのゲル自体を通ってではなく、そのゲルとゲルプレートとの間を移動することである。このことが起こると、そのゲル内で移動する生体分子または複合体の主要バンドよりも、素早く移動する影バンドが現れることになる。これによって、そのゲルの像が分析されるときの曖昧さが生み出される。なぜなら、そのようなバンドがアーチファクトであるのか、または存在量の少ない生体分子もしくは複合体の結果であるのかを知ることは困難だからである。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本明細書中に提供されるのは、ゲル電気泳動で見られるスカーティング効果を低減するための電気泳動ゲル、カセットおよび方法である。例示的な実施形態では、本明細書中で提供される電気泳動ゲル、カセットおよび方法は、非変性ゲル電気泳動で見られるスカーティング効果を低減するために使用することができる。また、本明細書中で提供されるのは、変性ゲル電気泳動で見られるスカーティング効果を低減するために使用される電気泳動ゲル、カセットおよび方法である。
【0005】
1つの局面では、本明細書中で提供されるのは、生体分子の分離のための電気泳動ゲルである。この電気泳動ゲルは、スタッキングゲルおよび分離ゲルを有し、そしてこのスタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。このような電気泳動ゲルの1つの実施形態では、この電気泳動ゲルは、ポリアクリルアミドゲルであり、上記スタッキングゲルおよび分離ゲルは、ポリアクリルアミドゲルであり、そしてこのスタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。さらなるまたは代替的な実施形態では、このスタッキングゲルのアクリルアミド濃度は、約2%と約6%との間であるが、他方、さらなるまたは代替的な実施形態では、上記スタッキングゲルのアクリルアミド濃度は約2.5%と約5%との間である。さらなるまたは代替的な実施形態では、上記スタッキングゲルの直鎖状アクリルアミド濃度は約0.005%〜約1%であるが、さらなるまたは代替的な実施形態では、上記スタッキングゲルの直鎖状アクリルアミド濃度は約0.01%〜約0.5%である。なおさらなるまたは代替的な実施形態では、上記スタッキングゲルの直鎖状アクリルアミド濃度は約0.02%〜約0.1%である。他の実施形態では、上記分離ゲルは、直鎖状アクリルアミドを含まない。
【0006】
この局面の他の実施形態では、上記電気泳動ゲルは、変性ゲルであるが、他方、さらなるまたは代替的な実施形態では、この電気泳動ゲルは、変性ゲルであるポリアクリルアミドゲルである。さらなるまたは代替的な実施形態では、このような変性ゲルは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有する。
【0007】
この局面の他の実施形態では、上記電気泳動ゲルは非変性ゲルであるが、他方、さらなるまたは代替的な実施形態では、この電気泳動ゲルは、非変性ゲルであるポリアクリルアミドゲルである。さらなるまたは代替的な実施形態では、このような非変性ゲルは勾配ゲルであるが、他方、特定の実施形態では、このような非変性ゲルは、ブルーネイティブ(Blue Native)ゲルである。
【0008】
本明細書中で提供される別の局面は、電気泳動ゲル上で生体分子を分離するための方法である。このような方法は、1つまたは複数の生体分子を含む1つまたは複数の試料を、スタッキングゲル部分および分離ゲル部分を備える電気泳動ゲルに適用する工程、ならびに次いでこの1つまたは複数の生体分子をこの電気泳動ゲル上で電気泳動により分離する工程を包含する。このスタッキングゲル部分は、直鎖状ポリアクリルアミドを含む。この局面の1つの実施形態では、上記分離ゲルは、直鎖状アクリルアミドを含まない。
【0009】
この局面のさらなるまたは代替的は実施形態では、上記電気泳動ゲルは、変性ゲルであるが、他方、さらなるまたは代替的な実施形態では、この電気泳動ゲルは、変性ゲルであるポリアクリルアミドゲルである。さらなるまたは代替的な実施形態では、このような変性ゲルは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有する。
【0010】
この局面の他の実施形態では、上記電気泳動ゲルは非変性ゲルであるが、他方、さらなるまたは代替的な実施形態では、この電気泳動ゲルは、非変性ゲルであるポリアクリルアミドゲルである。さらなるまたは代替的な実施形態では、このような非変性ゲルは勾配ゲルであるが、他方、特定の実施形態では、このような非変性ゲルは、ブルーネイティブゲルである。
【0011】
この局面の他の実施形態では、上記方法はまた、1つまたは複数の分子量マーカーセットを上記電気泳動ゲルに適用する工程を包含し、そしてさらなるまたは代替的な実施形態では、このような方法はまた、電気泳動ゲル上の電気泳動された1つまたは複数の生体分子もしくは生体分子複合体の分子量を見積もるかまたは計算する工程を包含する。
【0012】
本明細書中で提供される別の局面は、ゲル電気泳動を実施するためのカセットである。このカセットは、その断面にわたって一定の間隙幅を有する。この局面の特定の実施形態では、このようなカセットは、その上側エッジにわたって一定の間隙幅を有する。この局面の特定の実施形態では、このようなカセットは、0.1ミリメートル〜5ミリメートルの範囲の、その上側エッジにわたって一定の間隙幅を有する。さらなるまたは代替的な実施形態では、このようなカセットの間隙幅は、5%未満で変動し、他の実施形態では、このようなカセットの間隙幅の変動は、2%以下である。さらなるまたは代替的な実施形態では、このようなカセットは、ポリアクリルアミドゲルを含有する。他の実施形態では、このようなカセットは、非変性ゲル電気泳動を実施するために使用され、そしてこのゲルは非変性ゲルである。特定の実施形態では、このような非変性ゲルは、ブルーネイティブゲルである。さらなるまたは代替的な実施形態では、このようなカセットに含有されるゲルは勾配ゲルである。さらなるまたは代替的な実施形態では、このような勾配ゲルは、ポリアクリルアミド勾配ゲルである。
【0013】
この局面のさらなるまたは代替的な実施形態では、このカセットはプラスチックから製作されるが、他方、さらなるまたは代替的な実施形態では、このプラスチックカセットは、前面プレートを背面プレートに一緒に溶接することにより製作される。さらなるまたは代替的な実施形態では、この前面プレートを背面プレートに溶接することで、一定の間隙幅をもったカセットが作り出される。
【0014】
本明細書中に提供される別の局面は、電気泳動ゲル上で生体分子を分離するための方法である。この方法は、1つまたは複数の生体分子を含む1つまたは複数の試料を、一定の間隙幅をもったカセット中に含有される電気泳動ゲルに適用する工程、ならびに次いでこの1つまたは複数の生体分子をこの電気泳動ゲル上で電気泳動により分離する工程を包含する。
【0015】
この局面の1つの実施形態では、このカセットは、その断面にわたって一定の間隙幅を有するが、他の実施形態では、このようなカセットは、その上側エッジにわたって一定の間隙幅を有する。この局面の特定の実施形態では、このようなカセットは、0.1ミリメートル〜5ミリメートルの範囲の、その上側エッジにわたって一定の間隙幅を有する。さらなるまたは代替的な実施形態では、このようなカセットの間隙幅は、5%未満で変動し、他方、他の実施形態では、このようなカセットの間隙幅の変動は、2%以下である。さらなるまたは代替的な実施形態では、このようなカセットは、ポリアクリルアミドゲルを含有する。他の実施形態では、このようなカセットは、非変性ゲル電気泳動を実施するために使用され、そしてこのゲルは非変性ゲルである。特定の実施形態では、このような非変性ゲルは、ブルーネイティブゲルである。さらなるまたは代替的な実施形態では、このようなカセットに含有されるゲルは勾配ゲルである。さらなるまたは代替的な実施形態では、このような勾配ゲルは、ポリアクリルアミド勾配ゲルである。この局面の他の実施形態では、このようなカセットに含有される電気泳動ゲルは、スタッキングゲルおよび分離ゲルを含有する。さらなるまたは代替的な実施形態では、このようなスタッキングゲルは直鎖状アクリルアミドを含有する。
【0016】
このような方法のさらなるまたは代替的な実施形態では、上記方法はまた、1つまたは複数の分子量マーカーセットを上記電気泳動ゲルに適用する工程を包含する。さらなるまたは代替的な実施形態では、上記方法はまた、電気泳動ゲル上で電気泳動された1つまたは複数の生体分子もしくは生体分子複合体の分子量を見積もるかまたは計算する工程を包含する。このような方法のさらなるまたは代替的な実施形態では、上記方法はまた、上記ゲルを染色する工程を包含する。
【0017】
発明の詳細な説明
本明細書中に開示されるのは、ゲル電気泳動で見られるスカーティング効果を低減するために使用される電気泳動ゲル、カセットおよび方法である。例示的な実施形態では、本明細書中で提供される電気泳動ゲル、カセットおよび方法は、非変性ゲル電気泳動で見られるスカーティング効果を低減するために使用することができるが、他方、他の実施形態では、本明細書中で提供される電気泳動ゲル、カセットおよび方法は、変性ゲル電気泳動で見られるスカーティング効果を低減するために使用することができる。
【0018】
定義
別段の定義がされない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が共通に理解するのと同じ意味を有する。一般的に、本明細書中で使用される命名法は、当該分野では周知であり、共通に採用されている。「上へ(up)」および「下へ(down)」、「上側(top)」および「下側(bottom)」、「上に(above)」および「下に(underneath)もしくは「上側の(upper)」もしくは「下側の(lower)」などのような方位を示す用語は、装置を使用するあいだの部品の方位についていう。用語が単数形で提供される場面では、発明者らは、その用語の複数形をも企図している。参考として援用される引用文献において使用される用語および定義において不一致が存在する場合には、本願において使用される用語は、本明細書中で与えられる定義を有するものとする。本開示全体を通して採用される場合、以下の用語は、そうではないと示されない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0019】
本明細書中で使用される場合の用語「周囲温度」は、20℃〜25℃の範囲の温度をいう。
【0020】
本明細書中で使用される場合、生体高分子または生体分子は、核酸、タンパク質、多糖、脂質および他の高分子を含むが、これらに限定されない核酸は、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ならびにそれらのフラグメントおよびアナログを含む。核酸配列は、ゲノムDNA、RNA、ミトコンドリア核酸、葉緑体核酸、および別個の遺伝物質を有する他のオルガネラから誘導されてもよい。
【0021】
用語「カオトロピック薬(chaotropic agent)」または「カオトロープ(chaotrope)」は、本明細書中で使用される場合、タンパク質および核酸の二次または三次構造を変える能力を有する任意の物質をいう。
【0022】
用語「電気泳動ゲル」は、本明細書中で使用される場合、試料の電気泳動分離のために使用されるゲルをいう。電気泳動ゲルは、分離ゲルのみであってもよく、または電気泳動ゲルは、スタッキングゲルおよび分離ゲルの両方を含有していてもよい。
【0023】
用語「直鎖状ポリアクリルアミド」または「直鎖状アクリルアミド」は、本明細書中で使用される場合、アクリルアミドの直鎖状の非架橋のポリマーをいい、そしてまた単に「高分子量アクリルアミド」と呼ばれることもあり得る。直鎖状アクリルアミドは、直鎖状ポリマーの長さに対応して、1,000ダルトン〜6,000,000ダルトンの範囲の分子量を有する、乾燥した化学形態であってもよく、または液体形態(すなわち、重量/体積の溶液)であってもよい。
【0024】
本明細書中で使用される場合、タンパク質は、1つまたは複数の長い、折り畳まれたポリペプチド鎖を含む複雑な三次元的な物質である。そして、これらの鎖はアミノ酸と呼ばれる小さい化学単位を含む。すべてのアミノ酸は、炭素、水素、酸素および窒素を含有する。いくつかは、硫黄をも含有する。「ペプチド」は、2つ以上のアミノ酸を含有する化合物である。このアミノ酸は、線状に一緒に連結し、ペプチド鎖を形成する。20種類の異なる天然アミノ酸が存在し、それらがペプチドの生物学的生産に関与する。そして、ペプチド鎖を形成するために、任意の数のそれら天然アミノ酸が任意の順序で連結されてもよい。ペプチドの生物学的生産に用いられる天然アミノ酸は、すべてL配置を有する。合成ペプチドは、慣用的な合成方法を採用し、L−アミノ酸、D−アミノ酸または2つの異なる配置のアミノ酸の種々の組合せを使用して調製することができる。いくつかのペプチド鎖は、いくつかのみのアミノ酸単位を含有する。例えば10個よりも少ないアミノ酸単位を有する短いペプチド鎖は、「オリゴペプチド」と呼ばれることがある。この接頭辞「オリゴ」は、「いくつか(few)」を意味する。他のペプチド鎖は、例えば100までかそれより多い大きな数のアミノ酸単位を含有し、そしてそれらは「ポリペプチド」と呼ばれる。接頭辞「ポリ」は「多く(many)」を意味する。固定された数のアミノ酸単位を含有するさらに他のペプチド鎖は、その鎖中の単位の固定された数を意味する接頭辞を用いて、例えばオクタペプチドと呼ばれる。接頭辞「オクタ」は8を意味する。慣用的に、「ポリペプチド」は、3個以上のアミノ酸を含有する任意のペプチド鎖であると考えることができ、他方、「オリゴペプチド」は、通常は、特定のタイプの「短い」ポリペプチド鎖であると考えられる。従って、本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド」に言及するときはいつでもオリゴペプチドをも含んでいることが理解される。さらに、「ペプチド」に言及するときはいつでもポリペプチド、オリゴペプチドを含んでいる。アミノ酸形態の各々の異なる配列は、異なるポリペプチド鎖を形成する。特定の非限定的な例では、このポリペプチドは、40と4000との間のアミノ酸、50と3000との間のアミノ酸、または75と2000との間のアミノ酸を含有する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「核酸分子」は、一重鎖形態または二重鎖らせんのいずれかの、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、もしくはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、もしくはデオキシシチジン;「DNA分子」)、あるいはそれらのリン酸エステルアナログ(例えば、ホスホロチエオエートおよびチオエステル)のリン酸エステルポリマー形態をいう。二重鎖DNA−DNAらせん、二重鎖DNA−RNAらせんおよび二重鎖RNA−RNAらせんが可能である。核酸分子、および特にDNAまたはRNA分子という用語は、その分子の一次構造および二次構造のみを指し、いずれかの特定の三次形態に限定するものではない。従って、この用語は、とりわけ直鎖状DNA分子または環状DNA分子(例えば、制限断片)、プラスミドならびに染色体において見出される二重鎖DNAを含む。特定の二重鎖DNA分子の構造を議論する際には、DNAの転写されない鎖(すなわち、mRNAに相同的な配列を有する鎖)に沿って5’−3’方向の配列のみを提示するという通常の慣用法に従って、本明細書中に配列が開示されることもあり得る。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作(Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと)を受けたDNA分子である。
【0026】
本明細書中で使用される場合、非変性ゲルは、変性剤(例えば、変性作用を有する界面活性剤、尿素、ホルムアミド、および他のカオトロープのようなもの)を含有しない電気泳動ゲルをいう。非変性(すなわち、「未変性」)ゲルは、「未変性」ゲル電気泳動において一般に使用され、この場合、ランニング緩衝液および試料緩衝液もまた変性剤を欠く。これらのゲルは、分子相互作用(例えば、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−核酸相互作用、などのようなもの)を調べることにおいて、そしてゲル内活性アッセイ(in−gel activity assay)を実施するために特に有用であり得る。
【0027】
用語「ポリアクリルアミド」は、本明細書中で使用される場合、アクリルアミドモノマーとN,N’−メチレンビスアクリルアミド(「ビス」または「ビスアクリルアミド」)との混合物をいい、このアクリルアミドおよびビスは、架橋されて分枝状の分子構造を形成する。
【0028】
用語「試料」は、本明細書中で使用される場合、ゲル電気泳動を使用して分離することができる複数の独特の分子種の混合物をいう。例としてのみであるが、試料は、核酸の混合物、オリゴヌクレオチドの混合物、DNAの混合物、RNAの混合物、またはこれらの組合せであってもよい。さらに、例としてのみであるが、試料は、アミノ酸の混合物、ペプチドの混合物、タンパク質の混合物またはこれらの組合せであってもよい。
【0029】
用語「分離ゲル」または、あるいは「分離ゲルの本体」は、生体分子の分離が起こり、そして電気泳動分離が行われたあとに目的の分離された生体分子が局在する、電気泳動ゲルの領域をいう。
【0030】
用語「スカーティング」または「スカーティング効果」は、本明細書中で使用される場合、試料が電気泳動ゲルと、そのゲルを保持するか含有する上記カセットの壁、すなわちプラスチックプレートまたはガラスプレートとの間を移動することができるときをいう。上記ゲルと上記カセットの壁、すなわちプラスチックプレートまたはゲルプレートとの間を移動することができる試料の一部分は、その試料の残りの部分よりも速く移動し、それによって影バンド(shadow band)またはスカートバンド(skirt band)の出現がもたらされる。
【0031】
電気泳動におけるスカーティングアーチファクトを低減するための電気泳動ゲル、組成物およびゲルカセット
本明細書中に開示される組成物、ゲルカセットおよび方法で使用される電気泳動ゲルは、分離ゲルの本体を含み、そして必要に応じてスタッキングゲルを含む。このような分離ゲルは、試料成分(生体分子が挙げられるが、これに限定されない)を分離するために使用され、他方、スタッキングゲルは、分離ゲルへの移動の前に、その試料成分を狭いバンドへ集束させるのを補助するために使用される。この集束によって、近接して移動する試料成分の分解能を向上させることが可能になる。この分離ゲル中で生体分子が分離するプロセスとしては、大きさによる分離、電荷による分離、または大きさと電荷の組合せによる分離が挙げられるが、これらに限定されない。このような分離ゲルを使用して分離される生体分子は、(電気泳動の前か、電気泳動の後か、もしくは電気泳動の間に)目的の生体分子を死滅させるか、染色するかまたは標識するかし、そして電気泳動分離後に分離ゲル内でのそれらの位置を観察(可視化)することによって検出される。
【0032】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の特定の実施形態では、色素、染色剤、標識または他の指示薬が、ロードの前にその試料に添加される。他の実施形態では、色素、染色剤、標識または他の指示薬は、試料が分離ゲルまたはスタッキングゲル中に置かれたローディングウェルに添加される前に、このようなローディングウェルに添加される。他の実施形態では、色素、染色剤、標識または他の指示薬は、試料が分離ゲルまたはスタッキングゲル中に置かれたローディングウェルに添加された後に、このローディングウェルに添加される。本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の特定の実施形態では、分離ゲルは、電気泳動が実行されたのちに、少なくとも1つの色素、染色剤、標識または他の指示薬に曝露される。これによって、試料成分は、このような色素、染色剤、標識または他の指示薬と会合するようになる。あるいは、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の特定の実施形態では、色素、染色剤、標識または他の指示薬は、分離ゲルに添加される。これにより、それらは、電気泳動の移動の間に、試料成分と会合するようになる。本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法のさらに他の実施形態では、色素、染色剤、標識または他の指示薬は、試料成分に共有結合で結びつけられる。次いで、分離ゲル中の試料バンドの可視化が、その分離ゲルを適切な波長の光で照らして、その試料バンドと会合した色素、染色剤、標識または他の指示薬の観察を可能にすることにより達成される。
【0033】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の分離ゲルは、ゲルを形成する任意の材料を含むことができる。ゲルを形成する材料としては、合成ポリマー、天然ポリマーおよびそれらの組合せが上げられるが、これらに限定されない。このような合成ポリマーの例としては、直鎖状ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミドおよびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。このような天然ポリマーとしては、アガロースのような多糖が挙げられるが、これに限定されない。本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の特定の実施形態では、このような分離ゲルは、アガロース、ポリアクリルアミド、またはアガロースとポリアクリルアミドとの組合せを含むことができる。特定の実施形態では、このような分離ゲルは、アガロース、ポリアクリルアミド、またはアガロースとポリアクリルアミドとの組合せを含むことができる。特定の実施形態では、この分離ゲルは、直鎖状アクリルアミドおよびアガロース、直鎖状アクリルアミドおよびポリアクリルアミド、または直鎖状アクリルアミドおよびアガロースとポリアクリルアミドとの組合せを含むことができる。
【0034】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法のスタッキングゲルは、ゲルを形成する任意の材料を含むことができる。ゲルを形成する材料としては、合成ポリマー、天然ポリマーおよびそれらの組合せが上げられるが、これらに限定されない。このような合成ポリマーの例としては、直鎖状ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミドおよびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。このような天然ポリマーの例としては、アガロースのような多糖が挙げられるが、これに限定されない。本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の特定の実施形態では、このようなスタッキングゲルは、アガロース、ポリアクリルアミド、またはアガロースとポリアクリルアミドとの組合せを含むことができる。特定の実施形態では、このスタッキングゲルは、直鎖状アクリルアミドおよびアガロース、直鎖状アクリルアミドおよびポリアクリルアミド、または直鎖状アクリルアミドおよびアガロースとポリアクリルアミドとの組合せを含む。
【0035】
記載される組成物、ゲルカセットおよび方法の特定の実施形態では、この電気泳動ゲルは、分離ゲルおよびスタッキングゲルを含有し、ここでこのスタッキングゲルは直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。このスタッキングゲル中に直鎖状アクリルアミドを含有させることで、スカーティングアーチファクトを最少化または防止する。
【0036】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の特定の実施形態では、分離ゲルおよびスタッキングゲルは、ポリアクリルアミドゲルであり、ここでこのスタッキングゲルはまた、直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の特定の実施形態では、分離ゲルおよびスタッキングゲルは、ポリアクリルアミドゲルであり、ここでこの分離ゲルはまた、直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の特定の実施形態では、分離ゲルおよびスタッキングゲルは、ポリアクリルアミドゲルであり、ここでこの分離ゲルおよびスタッキングゲルの両方が、直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。
【0037】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法のポリアクリルアミドゲルは、モノマーのアクリルアミドとビスアクリルアミドとの混合物である「アクリルアミド」の溶液を使用して作製される。重合開始剤、および必要ならば触媒を使用するアクリルアミドおよびビスアクリルアミドの重合によって、架橋ポリアクリルアミドゲルが製造される。本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法のポリアクリルアミドゲルを作製するために上記混合物中で使用される、ビスアクリルアミドに対するモノマーアクリルアミドの比は、約15:1〜約50:1の範囲である。例としてのみであるが、このようなポリアクリルアミドゲル中の(モノマー)アクリルアミド:ビスアクリルアミド比は、15:1、19:1、24:1、29:1、37.5:1、40:1、45:1および50:1であり得る。本明細書中で開示される特定の実施形態では、タンパク質およびタンパク質複合体の分析のための、ビスアクリルアミドに対する(モノマー)アクリルアミドの比は、約19:1〜約45:1の範囲である。
【0038】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法で使用される電気泳動ゲルの特定の実施形態では、スタッキングゲルは、上記のようなアクリルアミドとビスアクリルアミドとの混合物を使用して作製されたポリアクリルアミドを含む。特定の実施形態では、このスタッキングゲルは、上記分離ゲルを作製するために使用されるアクリルアミド濃度よりも低いアクリルアミド濃度で作製される。例としてのみであるが、スタッキングゲルは、約2%〜約8%、約2.5%〜約7.5%のアクリルアミド、約3%〜約7%のアクリルアミド、約3.5%〜約6.5%のアクリルアミド、約4%〜約6%のアクリルアミド、約4.5%〜約5.5%のアクリルアミド、または約2.5%〜約6%のアクリルアミドの範囲の(重量/体積)アクリルアミド濃度を有することができる。例としてのみであるが、スタッキングゲルは、2%〜8%、2.5%〜7.5%のアクリルアミド、3%〜7%のアクリルアミド、3.5%〜6.5%のアクリルアミド、4%〜6%のアクリルアミド、4.5%〜5.5%のアクリルアミド、または2.5%〜6%のアクリルアミドの範囲の(重量/体積)アクリルアミド濃度を有することができる。
【0039】
特定の実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルの分離ゲルおよびスタッキングゲルは、(個々に、またはともに)直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。他の実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルのポリアクリルアミド分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルは、(個々に、またはともに)直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。このようなゲルに含有される直鎖状アクリルアミドの(重量/体積)濃度は、約0.005%〜約1%、0.005%〜約0.75%、0.005%〜約0.5%、0.005%〜約0.1%、0.01%〜約1%,0.01%〜約0.75%、0.01%〜約0.5%、0.01%〜約0.1%、0.02%〜約1%、0.02%〜約0.75%、0.02%〜約0.5%、0.02%〜約0.2%、または0.02%〜約0.1%の範囲であってもよい。例示的な実施形態では、このようなゲルに含有される直鎖状アクリルアミドの(重量/体積)濃度は、0.005%〜1%、0.005%〜0.75%、0.005%〜0.5%、0.005%〜0.1%、0.01%〜1%,0.01%〜0.75%、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.1%、0.02%〜1%、0.02%〜0.75%、0.02%〜0.5%、0.02%〜0.2%、または0.02%〜0.1%の範囲であってもよい。さらに、このようなゲルに含有される直鎖状アクリルアミドの分子量は、約1,000ダルトン〜約6,000,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約5,000,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約2,000,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約1,000,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約750,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約500,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約300,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約200,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約100,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約50,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約25,000ダルトン、または約1,000ダルトン〜約10,000ダルトンの範囲であってもよい。さらに、このようなゲルに含有される直鎖状アクリルアミドの分子量は、1,000ダルトン〜6,000,000ダルトン、1,000ダルトン〜5,000,000ダルトン、1,000ダルトン〜2,000,000ダルトン、1,000ダルトン〜1,000,000ダルトン、1,000ダルトン〜750,000ダルトン、1,000ダルトン〜500,000ダルトン、1,000ダルトン〜300,000ダルトン、1,000ダルトン〜200,000ダルトン、1,000ダルトン〜100,000ダルトン、1,000ダルトン〜50,000ダルトン、1,000ダルトン〜25,000ダルトン、または1,000ダルトン〜10,000ダルトンの範囲であってもよい。当業者は、種々の分子量範囲の直鎖状アクリルアミドを試験して、上記スタッキングゲルにおいて使用される直鎖状ポリアクリルアミドについての有用な分子量を決定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルのスタッキングゲルにおいて使用される直鎖状ポリアクリルアミドの分子量は、約10,000ダルトンよりも大きい。いくつかの実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルのスタッキングゲルにおいて使用される直鎖状ポリアクリルアミドの分子量は、約100,000ダルトンよりも大きい。いくつかの例示的な実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルのスタッキングゲルにおいて使用される直鎖状ポリアクリルアミドの分子量は、約100,000ダルトンと約1,000,000ダルトンとの間である。いくつかの例示的な実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルのスタッキングゲルにおいて使用される直鎖状ポリアクリルアミドの分子量は、約600,000ダルトンと約1,000,000ダルトンとの間である。いくつかの例示的な実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルのスタッキングゲルにおいて使用される直鎖状ポリアクリルアミドの分子量は、600,000ダルトンと1,000,000ダルトンとの間である。
【0040】
特定の実施形態では、本明細書中で開示されるような、直鎖状アクリルアミドを含有するポリアクリルアミド分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルは、少なくとも、以下の直鎖状アクリルアミド、モノマーアクリルアミド、ビスアクリルアミド架橋剤、および重合開始剤の混合物を含有する混合物の重合によって作製される。この混合物は、必要に応じて、触媒を含有してもよい。このような混合物の重合は、当業者に周知である任意の適切な手段で開始されてよく、その手段としては、適切な薬剤および随意の触媒を添加することによる化学的開始、光開始剤を使用して続いて適切な波長で照射することによる光化学的開始、熱開始、およびこれらの組合せが挙げられる。このような混合物の重合によって、上記直鎖状アクリルアミドが、上記重合ゲル中へ組込まれ、それにより上記ゲルが強靭化される。さらに、直鎖状アクリルアミドを上記スタッキングゲル中へ組込むことにより、スカーティング効果が低減するか、または排除される。
【0041】
このような混合物の重合を開始するために使用することができる化学的開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸アンモニウムとテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)との混合物、過硫酸ナトリウム、過硫酸ナトリウムとテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)との混合物、過硫酸カリウム、過硫酸カリウムとテトラメチルエチレンジアミンとの混合物、過酸化物、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]HCl(AZIP)、アゾビス(2−アミジノプロパン)HCl(AZAP)、4,4’−アゾ−ビス−4−シアノペンタン酸、アゾビスイソブチルアミド;アゾビスイソブチルアミジン.2HCl、2−2’−アゾ−ビス−2−(メチルカルボキシ)プロパン、2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンが挙げられるが、これらに限定されない。このような混合物の重合を開始するために使用することができる光開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、多環式のキノン、フルオレセイン、アゾビスニトリル、ベンゾキノン、キサントフェノン、ベンゾイン、キサントン、フルオレノン、アントロキノン、エオシン、エリトロシン、ニトロキシド、リボルフラビン、リボルフラビン5’−ホスフェート、およびこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
特定の実施形態では、上記直鎖状アクリルアミドは、ビスアクリルアミド架橋剤、開始剤、および随意の触媒を添加して、これにより本明細書中で開示されるような直鎖状アクリルアミドを含有するポリアクリルアミド分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルを作製するために使用される、直鎖状アクリルアミド、モノマーアクリルアミド、ビスアクリルアミド架橋剤、重合開始剤(、および随意の触媒の混合物を得る前に、モノマーアクリルアミドの溶液に添加される。特定の実施形態では、上記直鎖状アクリルアミドは、ビスアクリルアミド架橋剤、過硫酸アンモニウムおよびテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を添加して、これにより本明細書中で開示されるような直鎖状アクリルアミドを含有するポリアクリルアミド分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルを作製するために使用される混合物を得る前に、モノマーアクリルアミドの溶液に添加される。
【0043】
特定の実施形態では、上記直鎖状アクリルアミドは、開始剤および随意の触媒を添加して、これにより本明細書中で開示されるような直鎖状アクリルアミドを含有するポリアクリルアミド分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルを作製するために使用される、直鎖状アクリルアミド、モノマーアクリルアミド、ビスアクリルアミド架橋剤、重合開始剤、および触媒の混合物を得る前に、モノマーアクリルアミドおよびビスアクリルアミド架橋剤の溶液に添加される。特定の実施形態では、上記直鎖状アクリルアミドは、過硫酸アンモニウムおよびテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を添加して、これにより本明細書中で開示されるような直鎖状アクリルアミドを含有するポリアクリルアミド分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルを作製するために使用される混合物を得る前に、モノマーアクリルアミドおよびビスアクリルアミド架橋剤の溶液に添加される。
【0044】
特定の実施形態では、上記直鎖状アクリルアミドは、モノマーアクリルアミド溶液、ビスアクリルアミド架橋剤、開始剤および随意の触媒の溶液に添加され、これにより、本明細書中で開示されるような直鎖状アクリルアミドを含有するポリアクリルアミド分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルを作製するために使用される、直鎖状アクリルアミド、モノマーアクリルアミド、ビスアクリルアミド架橋剤、重合開始剤および随意の触媒の混合物が得られる。特定の実施形態では、上記直鎖状アクリルアミドは、モノマーアクリルアミド、ビスアクリルアミド架橋剤、過硫酸アンモニウムおよびテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)の溶液に添加され、これにより、本明細書中で開示されるような直鎖状アクリルアミドを含有するポリアクリルアミド分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルを作製するために使用される混合物が得られる。
【0045】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法の電気泳動ゲルは、勾配分離ゲルであってもよく、ここで(任意の添加された直鎖状ポリマーの濃度は除いて)上記ポリマーの濃度は、分離ゲルの中で、一般に上記ゲル本体の上側の低濃度からゲル本体の下側の高濃度へ、変動する。このような勾配分離ゲル中の上記ポリマーの濃度範囲は、分離されるべき分子の適用、および特に大きさに依存する。特定の実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルのこのような分離ゲルは、約2%〜約30%、約2.5%〜25%、約3%〜約20%、約3%〜約8%、約4%〜約16%、約3%〜約12%、約4%〜約20%、または約5%〜約20%の範囲の(重量/体積)アクリルアミド濃度を伴う濃度勾配を有する勾配のあるポリアクリルアミド分離ゲルであってもよい。特定の実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルのこのような分離ゲルは、2%〜30%、2.5%〜25%、3%〜20%、3%〜8%、4%〜16%、3%〜12%、4%〜20%、または5%〜20%の範囲の(重量/体積)アクリルアミド濃度を伴う濃度勾配を有する勾配のあるポリアクリルアミド分離ゲルであってもよい。
【0046】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、勾配分離ゲルおよびスタッキングゲルの両方を含有することができ、ここでこのスタッキングゲルポリマーの濃度は、この勾配分離ゲルにおいて使用されるポリマーの最低濃度と等しいか、またはそれよりも低い。特定の実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、ポリアクリルアミド勾配分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルの両方を含有することができ、ここでこのスタッキングゲルのアクリルアミドの濃度は、この勾配分離ゲルにおいて使用されるアクリルアミドの最低濃度と等しいか、またはそれよりも低い。他の実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、ポリアクリルアミド勾配分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルの両方を含有することができ、ここでこのスタッキングゲル中のアクリルアミドの濃度は、この勾配分離ゲルにおいて使用されるアクリルアミドの最低濃度と等しいか、またはそれよりも低く、そしてこのスタッキングゲルは、約0.005%〜約1%、0.005%〜約0.75%、0.005%〜約0.5%、0.005%〜約0.1%、0.01%〜約1%、0.01%〜約0.75%、0.01%〜約0.5%、0.01%〜約0.1%、0.02%〜約1%、0.02%〜約0.75%、0.02%〜約0.5%、0.02%〜約0.2%または0.02%〜約0.1%の(重量/体積)濃度で直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。他の実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、ポリアクリルアミド勾配分離ゲルおよびポリアクリルアミドスタッキングゲルの両方を含有することができ、ここでこのスタッキングゲルのアクリルアミドの濃度は、この勾配分離ゲルにおいて使用されるアクリルアミドの最低濃度と等しいか、またはそれよりも低く、そしてこのスタッキングゲルは、0.005%〜1%、0.005%〜0.75%、0.005%〜0.5%、0.005%〜0.1%、0.01%〜1%、0.01%〜0.75%、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.1%、0.02%〜1%、0.02%〜0.75%、0.02%〜0.5%、0.02%〜0.2%または0.02%〜0.1%の(重量/体積)濃度で直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。別の実施形態では、本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、4%〜16%のポリアクリルアミド濃度を含む平板状の勾配のあるポリアクリルアミド分離ゲル、ならびに0.05%(重量/体積)の直鎖状ポリアクリルアミドに加えて3%のポリアクリルアミド濃度を有するポリアクリルアミドスタッキングゲルを含有することができる。
【0047】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される勾配分離ゲルはまた、約0.005%〜約1%、0.005%〜約0.75%、0.005%〜約0.5%、0.005%〜約0.1%、0.01%〜約1%、0.01%〜約0.75%、0.01%〜約0.5%、0.01%〜約0.1%、0.02%〜約1%、0.02%〜約0.75%、0.02%〜約0.5%、0.02%〜約0.1%、または0.02%〜約0.1%の(重量/体積)濃度で存在する直鎖状ポリアクリルアミドを含有することができる。特定の実施形態では、このような勾配分離ゲルは、0.005%〜1%、0.005%〜0.75%、0.005%〜0.5%、0.005%〜0.1%、0.01%〜1%、0.01%〜0.75%、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.1%、0.02%〜1%、0.02%〜0.75%、0.02%〜0.5%、0.02%〜0.1%、または0.02%〜0.1%の(重量/体積)濃度で存在する直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。特定の実施形態では、このような勾配分離ゲルは、約2%〜約30%、約2.5%〜25%、約3%〜約20%、約3%〜約8%、約4%〜約16%、約3%〜約12%、約4%〜約20%、または約5%〜約20%の範囲の(重量/体積)アクリルアミド濃度を伴う濃度勾配を有するポリアクリルアミド勾配分離ゲルである。特定の実施形態では、このような勾配分離ゲルは、2%〜30%、2.5%〜25%、3%〜20%、3%〜8%、4%〜16%、3%〜12%、4%〜20%、または5%〜20%の範囲の(重量/体積)アクリルアミド濃度を伴う濃度勾配を有するポリアクリルアミド勾配分離ゲルである。
【0048】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルのより具体的な局面では、この電気泳動ゲルは、スタッキングゲルおよび分離ゲルを含み、ここで直鎖状アクリルアミドは、このスタッキングゲル中にのみ存在し、この分離ゲル中には存在しない。特定の実施形態では、このようなスタッキングゲルおよび分離ゲルはともに、ポリアクリルアミドを含むが、このスタッキングゲルのみが直鎖状アクリルアミドを含む。この分離ゲル中に直鎖状アクリルアミドを添加することは、潜在的には、この分離ゲルの透明性に影響を及ぼし得、それによってこの分離ゲル中に局在する試料バンドの検出に影響を及ぼし得る。このような影響は、「曇り効果」としても公知である。
【0049】
特定の実施形態では、上記ポリアクリルアミドスタッキングゲルは、ポリアクリルアミド分離ゲルのアクリルアミド濃度範囲に関して、最低濃度のアクリルアミドを含有する。全アクリルアミド(アクリルアミド:ビスアクリルアミド)濃度が約3.5%(重量/体積)未満である実施形態では、得られるポリアクリルアミドマトリクスは、破損しやすいことに加えて、スカーティングのアーチファクトをもたらすこともあり得る軟質ゲルである。このような低百分率のアクリルアミドスタッキングゲル中に直鎖状ポリアクリルアミドを含有させることによって、ゲルの強度を改善することができ、そしてスカーティングのアーチファクトの発生を低減するかまたは排除することもできる。
【0050】
上記組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、非変性ゲルである分離ゲルを含有することができる。特定の実施形態では、このような非変性分離ゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むが、他方、他の実施形態では、このような非変性分離ゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むポリアクリルアミド分離ゲルである。
【0051】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、非変性ゲルであるスタッキングゲルを含有することができる。特定の実施形態では、このような非変性スタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むが、他方、他の実施形態では、このような非変性スタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むポリアクリルアミドスタッキングゲルである。
【0052】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、非変性ゲルである分離ゲルおよびスタッキングゲルの両方を含有することができる。特定の実施形態では、このような非変性分離ゲルおよびスタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むが、他方、他の実施形態では、このような非変性分離ゲルおよびスタッキングゲルは、ポリアクリルアミド分離ゲルおよびスタッキングゲルであり、ここでこのスタッキングゲルは直鎖状ポリアクリルアミドを含む。他の実施形態では、このような非変性分離ゲルおよびスタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むポリアクリルアミド分離ゲルおよびスタッキングゲルである。
【0053】
タンパク質およびタンパク質複合体を分離するために使用される非変性ゲルの例は、ブルーネイティブゲル(「BNゲル」)である。このようなBNゲルは、Schagger Hおよびvon Jagow G(1991)「Blue native electrophoresis for isolation of membrane protein complexes in enzymatically active form」 Anal.Biochem.199:223−231;Schagger H,Cramer WA,およびvon Jagow G(1994)「Analysis of molecular masses and oligomeric states of protein complexes by blue native electrophoresis and isolation of membrane protein complexes by two−dimensional native electrophoresis」 Anal.Biochem.217:220−230;ならびにSchagger H(2001)「Blue−native gels to isolate protein complexes from mitochondria」 Methods Cell Biol. 65: 231−244によって説明されている。これらの文献の各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される。手短に言えば、BNゲル中において、タンパク質は、そのタンパク質を変性することなくそのタンパク質に負電荷を付与するCoomassie G−250で染色される。Coomassie G−250によるタンパク質のこの電荷シフトは、それらの大きさに基づいて、このような「ブルーネイティブゲル」上で分離されることをもたらす。これによって、未変性のタンパク質およびタンパク質複合体の正確な大きさの見積もりが可能となる。
【0054】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルの特定の実施形態では、このような電気泳動ゲルは、スタッキングゲル中に直鎖状ポリアクリルアミドを含有する非変性ブルーネイティブポリアクリルアミドゲルであり、そしてタンパク質およびタンパク質複合体の分離のために使用される。他の実施形態では、BNゲルを含む非変性ゲルは、約2%〜約30%、約2.5%〜25%、約3%〜約20%、約3%〜約8%、約4%〜約16%、約3%〜約12%、約4%〜約20%、または約5%〜約20%の範囲の(重量/体積)アクリルアミド濃度を伴う濃度勾配を有する勾配分離ゲルを含有する。他の実施形態では、BNゲルを含む非変性ゲルは、2%〜30%、2.5%〜25%、3%〜20%、3%〜8%、4%〜16%、3%〜12%、4%〜20%、または5%〜20%の範囲の(重量/体積)アクリルアミド濃度を伴う濃度勾配を有する勾配分離ゲルを含有する。さらに、このような非変性ゲルは、濃度が約1%〜約6%、約2%〜約5%、または約2.5%〜約4%のポリアクリルアミドのアクリルアミド(重量/体積)濃度を有するスタッキングゲルを含有する。さらに、このような非変性ゲルは、濃度が1%〜6%、2%〜5%、または2.5%〜4%のポリアクリルアミドのアクリルアミド(重量/体積)濃度を有するスタッキングゲルを含有する。このようなスタッキングゲルはまた、約0.005%〜約1%、0.005%〜約0.75%、0.005%〜約0.5%、0.005%〜約0.1%、0.01%〜約1%、0.01%〜約0.75%、0.01%〜約0.5%、0.01%〜約0.1%、0.02%〜約1%、0.02%〜約0.75%、0.02%〜約0.5%、約0.02%〜約0.2%、または0.02%〜約0.1%の(重量/体積)濃度で直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。特定の実施形態では、このようなスタッキングゲルはまた、0.005%〜1%、0.005%〜0.75%、0.005%〜0.5%、0.005%〜0.1%、0.01%〜1%、0.01%〜0.75%、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.1%、0.02%〜1%、0.02%〜0.75%、0.02%〜0.5%、0.02%〜0.2%、または0.02%〜0.1%の(重量/体積)濃度で直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。
【0055】
特定の実施形態では、上記分離ゲルは、勾配ゲルであってもよいが、それは直鎖状アクリルアミドを含有しない。
【0056】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、変性ゲルであってもよく、ここでこのゲルは、界面活性剤、カオトロピック薬またはそれらの組合せを含有する。カオトロピック薬としては、トリフルオロ酢酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、尿素、塩化グアニジウムおよびグアニジンイソチオシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。変性作用を有する界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられるが、これに限定されない。
【0057】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、変性ゲルである分離ゲルを含有することができる。特定の実施形態では、このような変性分離ゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むが、他方、他の実施形態では、このような変性分離ゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むポリアクリルアミド分離ゲルである。
【0058】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、変性ゲルであるスタッキングゲルを含有することができる。特定の実施形態では、このような変性スタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むが、他方、他の実施形態では、このような変性スタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むポリアクリルアミドスタッキングゲルである。
【0059】
本明細書中で開示される組成物、ゲルカセットおよび方法において使用される電気泳動ゲルは、変性ゲルである分離ゲルおよびスタッキングゲルの両方を含有することができる。特定の実施形態では、このような変性分離ゲルおよびスタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むが、他方、他の実施形態では、このような変性分離ゲルおよびスタッキングゲルは、ポリアクリルアミド分離ゲルおよびスタッキングゲルであり、ここでこのスタッキングゲルは直鎖状ポリアクリルアミドを含む。他の実施形態では、このような変性分離ゲルおよびスタッキングゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含むポリアクリルアミド分離ゲルおよびスタッキングゲルである。
【0060】
B.長さに沿って一定のプレート−プレート間隔を有するゲルカセット
本明細書中で開示される方法および組成物の別の局面は、前面プレートと背面プレートとの間に一定の内側間隙を有するゲルカセットである。図示の目的のために、図2は、中央で切り落とされたカセット(21)を示しており、このカセットでは、背面プレート(23)と前面プレート(22)との間の間隙(24)は、カセット(27)の中央にあるカセットの上側エッジ(25)に沿う点とカセット(26)の外側エッジにあるカセットの上側エッジ(25)に沿う点との間で、実質的に同一である。カセットの「前面プレートと背面プレートとの間の一定の内側間隙」は、上記ゲルを保持するカセット内の空間が、上記ゲルを含有する空間全体にわたって実質的に同一の前面−背面間深さを有することを意味する。すなわち、この空間の上側エッジ(櫛が挿入されてウェルが形成されるカセットの端部)での前面−背面間深さは、この空間の中央領域、この空間の下側領域、およびこの空間の外側エッジにおける前面−背面間深さと実質的に同一である。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「実質的に同一」または「実質的に等しい」は、上記カセットの上側エッジにおける(櫛が挿入され得るカセットの端部における)プレート間の内側間隙幅が、上記カセットのエッジとそのカセットの中央領域との間の最大間隙幅の約5%より大きくは変動せず、そして好ましくは、上記カセットのエッジからカセットの中央領域までの2つのプレート間の内側幅の約2%より大きくは変動しないことを意味する。いくつかの好ましい実施形態では、前面プレートと背面プレートとの間の間隙幅は、上記カセットの頂部(または櫛が挿入されて試料ウェルが形成され得る場所に対応する、上記カセットの領域)にわたって約1%より大きくは変動しない。例えば、カセットは、厚さ1mmのゲルを保持するように設計されてもよい。この厚さは、上記カセットの内側間隙幅に対応する。この場合、このカセットの内側空間の幅は、上記カセットの頂部(または櫛が挿入される場所に対応する、上記カセットの領域)にわたって約0.05mm以下だけ、約0.02mm以下だけ、または0.01mm以下だけしか変動しない。別の例では、カセットは、厚さ1.5mmのゲルを保持するように設計されてもよい。この場合、このカセットの内側空間の幅は、上記カセットの頂部(または櫛が挿入される場所に対応する、上記カセットの領域)にわたって約0.075mm以下だけ、約0.03mm以下だけ、または0.015mm以下だけしか変動しない。
【0062】
特定の実施形態では、上記ゲルカセットは、前面プレートと背面プレートとの間の内側距離がカセットの上側エッジに沿って実質的に変動しない、前面プレートと背面プレートとの間の内側間隙を有する。
【0063】
ゲルカセットは、任意の適切な材料から構築される前面プレートおよび背面プレートを有することができ、この適切な材料としては、プラスチック、ポリマー、ガラス、セラミクス、または標準的な電気泳動条件下で流体に対して浸透性ではなく、かつ非伝導性である任意の材料が挙げられる。本明細書中で開示されるゲルカセットは、可視光に対して透明であるか、紫外線に対して透明であるか、赤外線に対して透明であるか、紫外線および赤外線の両方に対して透明であるポリマーから作製することができる。本明細書中で開示されるゲルカセットを作製するために使用されるポリマーの非限定的な例は、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル系ベースのポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリプロピレン、アセタール、およびこれらのコポリマーである。本明細書中で開示されるゲルカセットのプレートは、ゲルに面する側面が1つまたは複数のポリマー(例えば、例としてのみであるが、ラテックス)でコーティングされていてもよく、これにより電気泳動ののちゲルが取り除かれるべきときにゲルがこのプレートに固着することが防止される。本明細書中で開示されるゲルカセットまたはゲルカセットを形成するために取り付けられるプレートは、成形技術、熱エンボス加工方法、注型プロセス、熱成形方法、ステレオリソグラフィプロセス、機械加工方法および磨砕プロセスを使用して製作されてもよい。さらなるまたは代替的な実施形態では、このような成形技術としては、射出成形および圧縮成形が挙げられる。
【0064】
上記前面プレートおよび背面プレートは、任意の実行可能な手段により、互いに取り付けられてもよく(これによりゲルカセットが形成される)、この任意の実行可能な手段としては、その側面で前面プレートおよび背面プレートを連結するエッジ片とともに単一片として成形すること、一緒に溶接すること(例としてのみであるが、超音波溶接)、接着剤で一緒に固着すること、熱処理すること、または取り付け手段(ねじ、ピン、スナップ、またはクランプ)で保持することが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で開示されるゲルカセットの特定の実施形態では、カセットの前面プレートと背面プレートのいずれかまたはその両方は、例としてのみであるが、溶接によってこのカセットが取り付けられるエッジのまわりに一段高い境界を有する。この一段高い境界は、取付けられたプレート間の距離を確立するスペーサを提供する。いくつかの実施形態では、そのように設計されたプレートは、カセットのプレート間の距離を確立するスペーサの厚みが、そのカセットの上側エッジに沿ってそのカセットの外側エッジから少なくともそのカセットの中点まで実質的に同一であるような仕様で、一緒に溶接される。
【0065】
本明細書中で開示されるゲルカセットは、任意の電気泳動システムにおいて使用される任意の大きさであり得る。一定の間隙幅を有するゲルカセットの寸法は限定的ではなく、そしてそのゲルカセットとしては、幅が約5cm〜約30cm、長さが約5cm〜60cm、そしてプレート厚さが1mm〜5mmの前面プレートおよび背面プレートを有するカセットが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、上記ゲルカセットのプレートは、厚さ約4mm以下、厚さ3mm以下、厚さ約2.5mm以下、厚さ約2mm以下、厚さ約1.5mm以下、または厚さ1mm以下であってもよい。他の実施形態では、カセットの背面プレートは、上記ゲルを含有する領域で厚さが2.5mmと3mmとの間であり、そしてカセットの前面プレートは、上記ゲルを含有する領域で厚さが1.5mmと2mmとの間である。
【0066】
本明細書中で開示されるゲルカセットでは、前面プレートと背面プレートとが、等しい寸法であることは必要ではない。さらに、前面プレート、背面プレート、またはその両方は、例えば例としてのみであるが、差し込まれているか湾曲しているかの外側エッジの部分を少なくとも有することにより、1つまたは複数の側面に沿って不規則な形状になっていてもよい。組立てられたカセットのプレート間の間隙幅は、約0.1mm〜約10mm、約0.1mm〜約5mm、約0.25mm〜約5mm、約0.25mm〜約3mm、約0.25mm〜約2.5mm、約0.25mm〜約2mm、約0.25mm〜約1.5mm、約0.25mm〜約1mm、約0.5mm〜約5mm、約0.5mm〜約3mm、約0.5mm〜約2.5mm、約0.5mm〜約2mm、約0.5mm〜約1.5mm、または約0.5mm〜約1mmであり得る。例示的な実施形態では、組立てられたカセットのプレート間の間隙幅は、0.1mm〜10mm、0.1mm〜5mm、0.25mm〜5mm、0.25mm〜3mm、0.25mm〜2.5mm、0.25mm〜2mm、0.25mm〜1.5mm、0.25mm〜1mm、0.5mm〜5mm、0.5mm〜3mm、0.5mm〜2.5mm、0.5mm〜2mm、0.5mm〜1.5mm、または0.5mm〜1mmである。上記間隙幅は、上記プレートの外側エッジ(頂部および下側)に沿うプレート間のスペーサによるか、または溶接方法(例としてのみであるが、超音波溶接)、熱処理、接着剤、ガスケット、クランプ、またはファスナーを使用して一緒に固着することができるプレートの境界領域(頂部および下側)により確立することができる。特定の実施形態では、カセットプレートは、1つまたは複数のプラスチック(例えば)から作製され、そして背面プレートまたは前面プレートのうちの1つもしくはその両方は、相手のプレートに溶接または熱融着されたに一段高い境界を有する。そして、溶接プロセスは、上記カセットの溶接または熱融着されたプレート間に留まる境界領域の厚さを決定することによって、一部は、上記間隙幅を決定する。
【0067】
前面プレートと背面プレートとの間の一定の内側間隙を有するゲルカセットの非限定的な例は、10cm×10cmである前面プレートおよび背面プレートを有し、ここでこの前面プレートは厚さが約1.75mmであり、背面プレートは厚さ約2.55mmであり、この2つのプレートは、櫛が挿入されてウェルを形成することになっている領域におけるカセットの間隙幅が約1mmで一定であるように、一緒に溶接されている。
【0068】
前面プレートと背面プレートとの間の一定の内側間隙を有するゲルカセットの別の非限定的な例は、10cm×10cmである前面プレートおよび背面プレートを有し、ここでこの前面プレートおよび背面プレートは、それぞれ、厚さが約1.75mmおよび約2.5mmであり、プレートは、カセットの間隙幅が約1.5mmで一定であるように、一緒に溶接されている。
【0069】
前面プレートと背面プレートとの間の一定の内側間隙を有するゲルカセットの別の非限定的な例は、15cm×15cmである前面プレートおよび背面プレートを有し、ここでこの前面プレートおよび背面プレートは、それぞれ、厚さが約1.75mmおよび約2.55mmであり、この2つのプレートは、櫛が挿入されてウェルを形成することになっている領域におけるカセットの間隙幅が約1mmで一定であるように、一緒に溶接されている。
【0070】
前面プレートと背面プレートとの間の一定の内側間隙を有するゲルカセットの別の非限定的な例は、15cm×15cmである前面プレートおよび背面プレートを有し、ここでこの前面プレートおよび背面プレートは、それぞれ、厚さ約1.75mmおよび約2.55mmであり、この2つのプレートは、櫛が挿入されてウェルを形成することになっている領域におけるカセットの間隙幅が約1.5mmで一定であるように、一緒に溶接されている。
【0071】
前面プレートと背面プレートとの間の一定の内側間隙を有するゲルカセットのこれらの例は、例示の目的のためのみのものであり、決して限定することを意図しているわけではない。
【0072】
本明細書中で開示されるゲルカセットとしては、試料のローディングが起こるカセットの上側エッジにわたる一定の間隙幅を有するゲルカセットも挙げられ、ここでこの間隙幅は、約5%未満、いくつかの好ましい実施形態では、わずかに約2%以下、またはわずかに約1%以下変動する。
【0073】
本明細書中で開示される一定の間隙幅を有するゲルカセットは、任意の適切なゲル形成ポリマーを含むゲルを含有することができる。そしてこのゲル形成ポリマーとしては、合成ポリマー、天然ポリマーおよびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。このような合成ポリマーの例としては、直鎖状ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミドまたはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。このような天然ポリマーの例としては、アガロースのような多糖が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態では、このようなゲルは、アガロース、ポリアクリルアミド、またはアガロースとポリアクリルアミドとの組合せを含むことができる。
【0074】
本明細書中で開示される一定の間隙幅を有するゲルカセットは、本明細書中で開示される任意のスタッキングゲルおよび/または分離ゲルを含有することができる。特定の実施形態では、このゲルカセットは、本明細書中に記載されるように、直鎖状アクリルアミドを含有するゲルを含有する。スタッカー(stacker)を含有するゲル中に存在する場合は、直鎖状アクリルアミドは、このスタッカー中に存在することができ、そして分離ゲル中には存在しないことができる。代替的な実施形態では、直鎖状アクリルアミドは、このスタッカー中にも、分離ゲル中にも存在することができる。このゲルは、本明細書中で開示されるような任意のポリマー濃度を有することができ、この濃度としては、例としてのみであるが、アガロースの場合は約0.3%〜約3%、または約1%〜約30%のアクリルアミドが挙げられる。存在する場合には、上記直鎖状アクリルアミドは、本明細書中で開示される任意の(重量/体積)濃度で存在することができ、この濃度としては、約0.005%〜約1%および約0.01%〜約0.5%が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で開示される一定の間隙幅を有するゲルカセット中の分離ゲルは、本明細書中で開示されるような勾配ゲルであってもよい。本明細書中で開示される一定の間隙幅を有するゲルカセット中の分離ゲルは、必要に応じて、本明細書中で開示されるようなスタッキングゲルを含有することができ、ここでこのスタッキングゲルは、分離ゲル中の濃度よりも低い濃度のゲルポリマーを有する。組合せのゲルを使用する場合には、各成分の最適の濃度を、経験的に、または刊行されたプロトコルを案内役として決定することができる。
【0075】
本明細書中に記載されるようなゲルカセット中に含有されるゲルはまた、以下の、1つまたは複数の緩衝液、塩、還元剤、酸化剤、アルキル化剤、変性剤、キレート剤、ポリマーまたは界面活性剤のうちの少なくとも1つを含有することができる。いくつかの実施形態では、このようなカセット中に含有されるゲルは、核酸の分離のために使用されるべきゲルである。いくつかの実施形態では、このようなカセット中に含有されるゲルは、ポリペプチドの電気泳動のために使用されるべきゲルである。いくつかの実施形態では、このようなカセット中に含有されるゲルは、電気泳動の前または電気泳動のあいだタンパク質およびタンパク質複合体が変性されない、タンパク質の未変性電気泳動のために使用される。他の実施形態では、このようなカセット中に含有されるゲルは、ポリペプチドの電気泳動のために使用されるべきゲルである。いくつかの実施形態では、このようなカセット中に含有されるゲルは、電気泳動の前または電気泳動のあいだタンパク質およびタンパク質複合体が変性されず、しかも上記ゲルおよび上記ランニング緩衝液が変性剤(例えば、変性作用を有する界面活性剤、尿素、ホルムアミド、カオトロープなどが挙げられるが、これらに限定されない)を含有しない、タンパク質の未変性電気泳動のために使用される。非限定的な例では、ブルーネイティブゲルは、本明細書中に記載される一定の内側間隙幅を有するカセットにおいて使用される。特定の実施形態では、ブルーネイティブゲルは、スタッキングゲルを有する。他の実施形態では、ブルーネイティブゲルは、直鎖状アクリルアミドを含有するスタッキングゲルを有する。
【0076】
本明細書中に記載されるようなゲルカセット中に含有されるゲル中に含有される緩衝液は、任意の電気泳動緩衝液であってよく、その例としては、双性イオン性の緩衝液が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、周囲温度において5と9との間のpHを有する。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、周囲温度において6と8.5との間のpHを有する。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、周囲温度において6と8との間のpHを有する。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、周囲温度において6と7との間のpHを有する。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、周囲温度において7と8との間のpHを有する。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、25℃において5と9との間のpHを有する。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、25℃において6と8.5との間のpHを有する。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、25℃において6と8との間のpHを有する。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、25℃において7と8との間のpHを有する。特定の実施形態では、このゲル緩衝液は、25℃において6と7との間のpHを有する。
【0077】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるようなゲルカセット中に含有されるゲル中に含有される緩衝液は、周囲温度において約5と約8.5との間のpKaを有する緩衝液を含む。特定の実施形態では、上記ゲル緩衝液は、周囲温度において約6と約8.5との間のpKaを有する緩衝液を含む。特定の実施形態では、上記ゲル緩衝液は、周囲温度において約6と約8との間のpKaを有する緩衝液を含む。特定の実施形態では、上記ゲル緩衝液は、周囲温度において約6と約7との間のpKaを有する緩衝液を含む。特定の実施形態では、上記ゲル緩衝液は、周囲温度において約7と約8との間のpKaを有する緩衝液を含む。特定の実施形態では、上記ゲル緩衝液は、25℃において約5と約8.5との間のpKaを有する緩衝液を含む。特定の実施形態では、上記ゲル緩衝液は、25℃において約6と約8.5との間のpKaを有する緩衝液を含む。特定の実施形態では、上記ゲル緩衝液は、25℃において約6と約8との間のpKaを有する緩衝液を含む。特定の実施形態では、上記ゲル緩衝液は、25℃において約6と約7との間のpKaを有する緩衝液を含む。特定の実施形態では、上記ゲル緩衝液は、25℃において約7と約8との間のpKaを有する緩衝液を含む。
【0078】
本明細書中に記載されるようなゲルカセット中に含有されるゲル中に含有される緩衝液としては、スクシネート、シトレート、ボレート、マレエート、カコジレート、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、ピペラジン−N,N’−2−エタンスルホン酸(PIPES)、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、3−(N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(HEPPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(Tris)、トリス−アセテート−EDTA(TAE)、グリシン、ビス[2−ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン(ビストリス(BisTris))またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、このようなゲル緩衝液は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有することができる。
【0079】
本明細書中に記載されるようなゲルカセット中に含有されるゲル中に含有される緩衝液の濃度は、約10mM〜約1.5Mであり得る。特定の実施形態では、その濃度は約10mMと約1Mとの間であり得る。特定の実施形態では、その濃度は約20mMと約500mMとの間であり得、そして他の実施形態では、その濃度は約50mMと約300mMとの間である。特定の実施形態では、その濃度は約10mMと約200mMとの間であり得、そして他の実施形態では、その濃度は約10mMと約500mMとの間である。特定の実施形態では、その濃度は約50mMと約200mMとの間であり得、そして他の実施形態では、その濃度は約50mMと約500mMとの間である。特定の実施形態では、その濃度は約5mMと約200mMとの間であり得、そして他の実施形態では、その濃度は約5mMと約500mMとの間である。特定の実施形態では、その濃度は約5mMと約1Mとの間であり得る。特定の実施形態では、本明細書中に記載されるようなゲルカセット中に含有されるゲル中に含有される緩衝液の濃度は、10mM〜1.5Mであり得る。特定の実施形態では、その濃度は10mMと1Mとの間であり得る。特定の実施形態では、その濃度は20mMと500mMの間であり得、そして他の実施形態では、その濃度は50mMと300mMとの間である。特定の実施形態では、その濃度は10mMと200mMの間であり得、そして他の実施形態では、その濃度は10mMと500mMとの間である。特定の実施形態では、その濃度は50mMと200mMの間であり得、そして他の実施形態では、その濃度は50mMと500mMとの間である。特定の実施形態では、その濃度は5mMと200mMの間であり得、そして他の実施形態では、その濃度は5mMと500mMとの間である。特定の実施形態では、その濃度は5mMと1Mの間であり得る。
【0080】
種々のゲルカセットが、米国特許第7,122,104号、同第6,562,213号、同第5,582,702号、同第5,865,974号、同第6,379,516号、米国特許出願第11/470,308号および同第10/056,050号に記載されている。これらの特許および特許出願の各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される。このようなカセット(マルチウェル型カセットが挙げられるが、これに限定されない)は、本明細書中で開示される電気泳動ゲルを含有することができ、そして本明細書中に記載される組成物および方法において使用することができる。
【0081】
本明細書中に記載される電気泳動ゲルは、試料(分離している生体分子が挙げられるが、これに限定されない)の構成成分を分離するために使用することができる。このような電気泳動ゲル上で試料成分を分離する方法は、1つまたは複数の試料を電気泳動ゲルに適用する工程、およびこの電気泳動ゲル上で試料成分を電気泳動により分離する工程を包含するが、これらの工程に限定されない。特定の実施形態では、このような方法は、1つまたは複数の生体分子を含む1つまたは複数の試料を分離ゲルを含む電気泳動ゲルに適用する工程、およびこの分離ゲル上で1つまたは複数の生体分子または生体分子複合体を電気泳動により分離する工程を包含するが、これらの工程に限定されない。特定の実施形態では、このような方法は、1つまたは複数の生体分子を含む1つまたは複数の試料を、直鎖状ポリアクリルアミドを含む分離ゲルを含む電気泳動ゲルに適用する工程、およびこの分離ゲル上で1つまたは複数の生体分子または生体分子複合体を電気泳動により分離する工程を包含するが、これらの工程に限定されない。特定の実施形態では、このような方法は、1つまたは複数の生体分子を含む1つまたは複数の試料を、スタッキングゲル部分および分離ゲル部分を含む電気泳動ゲルに適用する工程、ならびにこの分離ゲル上で1つまたは複数の生体分子または生体分子複合体を電気泳動により分離する工程を包含するが、これらの工程に限定されない。特定の実施形態では、このような方法は、1つまたは複数の生体分子を含む1つまたは複数の試料を、直鎖状ポリアクリルアミドを含むスタッキングゲル部分および分離ゲル部分を含む電気泳動ゲルに適用する工程、ならびにこの分離ゲル上で1つまたは複数の生体分子または生体分子複合体を電気泳動により分離する工程を包含するが、これらの工程に限定されない。特定の他の実施形態では、このような方法としては、1つまたは複数の生体分子を含む1つまたは複数の試料を、スタッキングゲルおよび分離ゲルの両方が直鎖状ポリアクリルアミドを含むスタッキングゲル部分および分離ゲル部分を含有する電気泳動ゲルに適用し、そしてこの分離ゲル上で1つまたは複数の生体分子または生体分子複合体を電気泳動により分離することが挙げられるが、これに限定されない。
【0082】
上記スタッキングゲルが直鎖状ポリアクリルアミドを含む本発明の方法を実行する際には、分離ゲル上でのスカーティングバンドの出現が低減される。上記分離ゲルが直鎖状ポリアクリルアミドを含む本発明の方法を実行する際には、分離ゲル上でのスカーティングバンドの出現が低減される。上記スタッキングゲルおよび上記分離ゲルが直鎖状ポリアクリルアミドを含む本発明の方法を実行する際には、分離ゲル上でのスカーティングバンドの出現が低減される。「低減される」という表現は、同一条件下で実行され、そして(直鎖状ポリアクリルアミドを有することを除いて)同一組成を有する場合に、スカーティングバンドの外観、強度、または幅が、直鎖状ポリアクリルアミドを含まない電気泳動ゲル中よりも、直鎖状ポリアクリルアミドを有する電気泳動ゲル上でのほうがより少ないことを意味する。
【0083】
このような方法において使用されるゲルは、本明細書中に記載される任意の電気泳動ゲルであることができる。特定の実施形態では、そのゲルはポリアクリルアミドゲルである。他の実施形態では、そのゲルはアガロースゲルであるが、他方、他の実施形態では、そのゲルはアクリルアミドおよびアガロースの両方を含む。このような方法において使用されるゲルは、本明細書中で開示される変性ゲルであってもよく、その例としては、SDSポリアクリルアミドゲルが挙げられるが、これに限定されない。このような方法において使用されるゲルは、本明細書中で開示される非変性ゲルであってもよく、その例としては、ブルーネイティブ(BN)ゲルが挙げられるが、これに限定されない。このような方法において使用される分離ゲルは、任意の適切な組成を有していてよい。いくつかの実施形態では、このような方法において使用される分離ゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含有する。他の実施形態では、このような方法において使用される分離ゲルは、直鎖状ポリアクリルアミドを含有しない。特定の実施形態では、このような方法において使用される分離ゲルはポリアクリルアミドを含むが、他方、他の実施形態では、このような方法において使用される分離ゲルは、ポリアクリルアミドおよび直鎖状ポリアクリルアミドの両方を含む。いくつかの実施形態では、このような方法において使用される分離ゲルは、勾配ゲルである。特定の実施形態では、このような方法において使用される電気泳動ゲルは、マルチウェル型ゲルであり、そこでは2つ以上の試料、1つまたは複数の試料、または同一の試料の多数回のローディングが同時に電気泳動される。特定の実施形態では、このような方法において使用される電気泳動ゲルは、マルチウェル型ゲルであり、そこでは2つ以上の試料、1つまたは複数の試料、または同一の試料の多数回のローディングとともに1つまたは複数の分子量標準が同時に電気泳動される。
【0084】
本明細書中で開示される方法において使用される未変性ゲルまたは非変性ゲルは、上記ゲル中またはランニング緩衝液の中を、変性剤(例えば、タンパク質変成作用を有する界面活性剤、またはカオトロープのようなもの)なしで実行される。本明細書中で開示される方法において使用される未変性ゲルとしては、ブルーネイティブ(BN)ゲルが挙げられるが、これに限定されない。陰極緩衝液、タンパク質試料緩衝液、またはその両方がCoomassie G−250を含有するブルーネイティブゲルを使用することは、Schagger Hおよびvon Jagow G(1991)「Blue native electrophoresis for isolation of membrane protein complexes in enzymatically active form」Anal.Biochem.199:223−231;Schagger H,Cramer WA,およびvon Jagow G(1994)「Analysis of molecular masses and oligomeric states of protein complexes by blue native electrophoresis and isolation of membrane protein complexes by two−dimensionalnative electrophoresis」Anal.Biochem.217:220−230;ならびにSchagger H(2001)「Blue−native gels to isolate protein complexes from mitochondria」Methods Cell Biol.65:231−244に記載されている。Coomassie G−250は、タンパク質とその未変性状態で結合し、それによりそのタンパク質に負電荷を付与する。負に帯電したCoomassieで染色されたタンパク質は、次いで、その電荷および分子量に比例した速度で陽極に移動する。
【0085】
本明細書中に記載される電気泳動ゲル上で、そして本明細書中に記載される方法を使用して分離される生体分子は、任意の生体分子(タンパク質、核酸、多糖、脂質、および他の高分子が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。特定の実施形態では、本明細書中に記載される電気泳動ゲル上で、そして本明細書中に記載される方法を使用して分離される生体分子は、タンパク質、核酸、またはタンパク質もしくは核酸を含有する生体分子複合体である。例としてのみであるが、このような生体分子複合体は、会合したタンパク質、ペプチド、核酸および多糖の任意の組合せであり得る。例示的な実施形態では、上記ゲルのスタッキング部分に直鎖状ポリアクリルアミドを含む電気泳動ゲル上で分離される生体分子または複合体は、タンパク質またはタンパク質を含有する分子複合体である。特定の実施形態では、上記電気泳動ゲルは、少なくとも2つの標準の電気泳動のため、または少なくとも1つの試料と少なくとも1つの分子量標準の電気泳動のための2つ以上のウェルを有する。例示的な実施形態では、本明細書中で開示されるような一定の内部間隙を有するゲルカセット中に含有される電気泳動ゲル上で分離される生体分子または複合体は、タンパク質またはタンパク質を含有する分子複合体である。
【0086】
上記電気泳動ゲルに適用された、1つまたは複数の試料、または同一の試料の2つ以上の複製物は、生体分子を含有する任意の試料であり得、そして環境試料、組織試料、細胞抽出物または画分であり得る。この試料は、溶菌液、分画された試料、あるいは部分的にかもしくは実質的に加工されたかまたは精製された試料のような、粗試料であってもよい。電気泳動ゲル上のローディングの前に、試料を、可溶化剤、還元剤、変性剤もしくは処理剤、界面活性剤、カオトロピック薬、または他の試料調製剤で処理することができる。ブルーネイティブゲルでの電気泳動の場合には、タンパク質およびタンパク質複合体は、電気泳動の前に変性されないが、これらを、例えば、非変性界面活性剤のような可溶化剤に曝露してもよい。
【0087】
本明細書中に記載される方法、ゲルおよびゲルカセットは、生体分子および/または生体分子複合体を電気泳動により分離するために使用することができる。しかしながら、一般的な電気泳動法およびパラメータ(例えば、試料のローディングおよび電気泳動の実行時間)は、当業者に公知であり、そして十分に当業者の能力の範囲内である。さらに、電気泳動の間、ゲルアセンブリ、ゲルカセットおよびランニング緩衝液を保持するように設計された装置は、当業者には周知であり、広く市販されている。このような装置としては、SureLock(商標)ミニセル電気泳動装置(Invitrogen Corp,Carlsbad,CA)が挙げられるが、これに限定されない。このような装置は、本明細書中に記載される方法、ゲルおよびゲルカセットとともに使用することができる。
【0088】
しかしながら、電気泳動の条件は、当該分野で公知のプロトコルに基づいて、従事者により決定され得る。本明細書中で開示される電気泳動分離は、一定電圧、パルス電圧、段階勾配電圧、一定電流、パルス電流、段階勾配電流、一定電力、段階勾配電力またはパルス電力を使用して達成することができる。次いで、本明細書中で開示された方法における印加電場(V/cm)は、一定でもパルス型であってもよい。以下に提供される電場範囲を達成するための印加電圧、印加電流または印加電力の強さは、上記電気泳動カセットの寸法および緩衝液の伝導率に依存して変動することが理解される。例としてのみであるが、この印加電圧は、5V〜2000Vの範囲に及ぶことができ、特定の実施形態では、この印加電圧は、5V〜1000V、5V〜500V、5V〜250V、または5V〜100Vの範囲に及ぶことができる。他の実施形態では、この印加電圧は、約10V〜約1,000V、約25V〜約750V、または40V〜300Vの範囲に及ぶことができる。例としてのみであるが、上記印加電流は、5mA〜400mAの範囲に及ぶことができ、特定の実施形態では、上記印加電流は、5mA〜200mA、5mA〜100mA、5mA〜50mA、または5mA〜25mAの範囲に及ぶことができる。1つの実施形態では、印加電流は、15mAとすることができる。例としてのみであるが、上記印加電流は、5mA〜400mAの範囲に及ぶことができ、特定の実施形態では、上記印加電力は、25mW〜400W、25mW〜100W、25mW〜50W、または25mW〜25Wの範囲に及ぶことができる。1つの実施形態では、印加電力は、4.5Wすることができる。さらに、上記印加電圧(一定またはパルス型)の極性は、正であっても負であってもよく、上記印加電流(一定またはパルス型)の極性は、正であっても負であってもよい。
【0089】
特定の実施形態では、印加される一定電場の強さは、1V/cmと100V/cmとの間である。特定の実施形態では、印加される一定電場の強さは、1V/cmと50V/cmとの間である。特定の実施形態では、印加される一定電場の強さは、1V/cmと25V/cmとの間である。特定の実施形態では、印加される一定電場の強さは、1V/cmと15V/cmとの間である。特定の実施形態では、印加される一定電場の強さは、1V/cmと10V/cmとの間である。
【0090】
段階勾配電圧の印加のために、段階プロフィールは、1段階、2段階または2段階より多くてもよい。この段階電圧は、ベースライン電圧を印加することにより確立される、一定のベースラインの電場に印加され、そしてこのベースライン電場の強さは、0V/cm〜100V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜50V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜25V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜10V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電圧の強さは、0V〜1000Vであるが、他方、他の実施形態では、このベースライン電圧の強さは、0V〜500Vである。特定の実施形態では、このベースライン電圧の強さは、0V〜200Vであるが、他方、他の実施形態では、このベースライン電圧の強さは、0V〜100Vである。特定の実施形態では、このベースライン電圧の強さは、0V〜50Vであるが、他方、他の実施形態では、このベースライン電圧の強さは、0V〜10Vである。このベースライン電圧に印加される電圧段階の強さは、10V〜2000Vであるが、他方、他の実施形態では、この電圧段階は、10V〜1000Vである。特定の実施形態では、このベースライン電圧に印加される電圧段階の強さは、10V〜500Vであるが、他方、他の実施形態では、この電圧段階の強さは、10V〜200Vである。特定の実施形態では、このベースライン電場に印加される電圧段階の強さは、10V〜100Vであるが、他方、他の実施形態では、この電圧段階の強さは、10V〜50Vである。多段階(例えば、2段階以上)のために、各段階の強さは、対称的(すなわち、同一)とすることができ、または各段階の強さは、非対称的(すなわち、異なる)とすることができる。特定の実施形態では、2段階の対称的な段階勾配電圧プロフィールでは、0Vベースラインに最初の50Vの段階が印加され、次いで別の50Vの段階が印加される。特定の実施形態では、2段階の非対称的な段階勾配電圧プロフィールでは、0Vベースラインに最初の50Vの段階が印加され、次いで450Vの段階が印加される。特定の実施形態では、2段階の非対称的な段階勾配電圧プロフィールでは、0Vベースラインに最初の50Vの段階が印加され、次いで500Vの段階が印加される。他の実施形態では、2段階の非対称的な段階勾配電圧プロフィールでは、0Vベースラインに最初の75Vの段階が印加され、次いで175Vの段階が印加される。他の実施形態では、2段階の非対称的な段階勾配電圧プロフィールでは、0Vベースラインに最初の75Vの段階が印加され、次いで250Vの段階が印加される。1段階は、または多段階勾配の各段階は独立して、上記印加電圧の強さに依存して、約5分間〜約500分間、実行され得る。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約150分とすることができる。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約100分とすることができる。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約60分とすることができる。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約30分とすることができる。2段階の非対称的段階勾配電圧プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は45分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電圧プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は50分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電圧プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は55分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電圧プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は60分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電圧プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は65分間印加される。
【0091】
段階勾配電流プロフィールの印加のために、段階プロフィールは、1段階、2段階または2段階より多くてもよい。この段階電流は、ベースライン電流を印加することにより確立される、一定のベースラインの電場に印加され、そしてこのベースライン電場の強さは、0V/cm〜100V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜50V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜25V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜10V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電流の強さは、0mA〜10mAであるが、他方、他の実施形態では、このベースライン電流の強さは、0mA〜5mAである。特定の実施形態では、このベースライン電流の強さは、0mA〜2mAであるが、他方、他の実施形態では、このベースライン電流の強さは、0mA〜1mAである。特定の実施形態では、このベースライン電流の強さは、0mA〜0.5mAである。ベースライン電流に印加される電流段階の強さは、0.5mA〜100mAとすることができるが、他方、他の実施形態では、この電流段階は、0.5mA〜50mAである。特定の実施形態では、ベースライン電流に印加される電流段階の強さは、0.5mA〜25mAであるが、他方、他の実施形態では、この電流段階は、0.5mA〜10mAである。特定の実施形態では、ベースライン電流に印加される電流段階の強さは、0.5mA〜5mAであるが、他方、他の実施形態では、この電流段階は、0.5mA〜2mAである。多段階(例えば、2段階以上)のために、各段階の強さは、対称的(すなわち、同一)とすることができ、または各段階の強さは、非対称的(すなわち、異なる)とすることができる。特定の実施形態では、2段階の対称的な段階電流電流プロフィールでは、0mAベースラインに最初の7mAの段階が印加され、次いで別の7mAの段階が印加される。特定の実施形態では、2段階の非対称的な段階勾配電流プロフィールでは、0mAベースラインに最初の1mAの段階が印加され、次いで14mAの段階が印加される。1段階は、または多段階勾配の各段階は独立して、上記印加電流の強さに依存して、約5分間〜約500分間、実行され得る。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約150分とすることができる。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約100分とすることができる。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約60分とすることができる。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約30分とすることができる。2段階の非対称的段階勾配電流プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は45分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電流プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は50分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電流プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は55分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電流プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は60分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電流プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は65分間印加される。
【0092】
段階勾配電力プロフィールの印加のために、段階プロフィールは、1段階、2段階または2段階より多くてもよい。この段階電流は、ベースライン電力レベルを印加することにより確立される、一定のベースライン電場に印加され、そしてこのベースライン電場の強さは、0V/cm〜100V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜50V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜25V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜10V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電力の強さは、0W〜10Wであるが、他方、他の実施形態では、このベースライン電力の強さは、0W〜5Wである。特定の実施形態では、このベースライン電力の強さは、0W〜2Wであるが、他方、他の実施形態では、このベースライン電力の強さは、0W〜1Wである。特定の実施形態では、このベースライン電力の強さは、0W〜0.5Wである。ベースラインに印加される電力段階の強さは、0.5W〜10Wであってよいが、他方、他の実施形態では、この電力段階は、0.5W〜5Wである。特定の実施形態では、ベースラインに印加される電力段階の強さは、0.5W〜2Wであってよいが、他方、他の実施形態では、この電力段階の強さは、0.5mA〜1Wである。多段階(例えば、2段階以上)のために、各段階の強さは、対称的(すなわち、同一)とすることができ、または各段階の強さは、非対称的(すなわち、異なる)とすることができる。特定の実施形態では、2段階の対称的な段階勾配電圧プロフィールでは、0Wベースラインに最初の1.5Wの段階が印加され、次いで別の1.5Wの段階が印加される。特定の実施形態では、2段階の対称的な段階勾配電圧プロフィールでは、0mAベースラインに最初の0.5Wの段階が印加され、次いで3Wの段階が印加される。1段階は、または多段階勾配の各段階は独立して、上記印加電流の強さに依存して、約5分間〜約500分間、実行され得る。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約150分とすることができる。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約100分とすることができる。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約60分とすることができる。特定の実施形態では、前記段階の実行時間は、約5分〜約30分とすることができる。2段階の非対称的段階勾配電力プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は45分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電力プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は50分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電力プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は55分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電力プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は60分間印加される。2段階の非対称的段階勾配電力プロフィールについての特定の実施形態では、第1段階は、15分間印加され、そして第2段階は65分間印加される。
【0093】
パルス型電場(印加電圧、電流または電力)のプロフィールは、矩形波、三角波または正弦波であってよく、このようなプロフィールは、対称的または非対称的であってよい。パルス型電場は、一定ベースライン電場に印加され、そしてこのベースライン電場の強さは、0V/cm〜100V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場の強さは、0V/cm〜50V/cmである。このベースライン電場の強さは、0V/cm〜25V/cmである。このベースライン電場の強さは、0V/cm〜10V/cmである。特定の実施形態では、このベースライン電場に加えて印加されるパルス型電場の強さは、1V/cmと100V/cmとの間である。特定の実施形態では、このベースライン電場に加えて印加されるパルス型電場の強さは、1V/cmと50V/cmとの間である。特定の実施形態では、このベースライン電場に加えて印加されるパルス型電場の強さは、1V/cmと25V/cmとの間である。特定の実施形態では、このベースライン電場に加えて印加されるパルス型電場の強さは、1V/cmと10V/cmとの間である。
【0094】
対称的な矩形波であるパルス型電場について、ベースライン電場に加えてこのパルス型電場が印加される(オン)時間は、このパルス型電場が印加されない(オフ)時間と同一である。特定の実施形態では、オン時間およびオフ時間は、1msと60秒との間である。非対称的な矩形波であるパルス型電場について、ベースライン電場に加えてこのパルス型電場が印加される(オン)時間は、このパルス型電場が印加されない(オフ)時間と同一ではない。特定の実施形態では、オン時間は、独立に1msと60秒との間であり、そしてオフ時間は、独立に1msと60秒との間である。
【0095】
対称的な三角波であるパルス型電場について、印加される最大電場までの電圧傾斜速度(V/s)は、電圧傾斜速度(V/s)が印加されるベースライン電場まで下がる時間と同一である。特定の実施形態では、上向きの電圧傾斜および下向きの電圧傾斜は、10mV/sと100V/sとの間である。非対称的な三角波であるパルス型電場について、印加される最大電場までの電圧傾斜速度(V/s)は、電圧傾斜速度(V/s)が印加されるベースライン電場まで下がる時間と同一ではない。特定の実施形態では、上向きの電圧傾斜は、独立に10mV/sと100V/sとの間であり、そして下向きの電圧傾斜は、独立に10mV/sと100V/sとの間との間である。
【0096】
対称的な正弦波であるパルス型電場について、周期および周波数は一定であり、この正弦波の最少電場は、印加されるベースライン電場と同一である。非対称的な正弦波であるパルス型電場について、周期および周波数は変調され、この正弦波の最少電場は、印加されるベースライン電場と同一である。
【0097】
本明細書中で開示される方法の電気泳動の行程は、室温、周囲温度、またはより高温もしくはより低温で実施することができる。例としてのみであるが、使用者が、予め冷却された緩衝液を用いて冷蔵室で、または予め冷却された緩衝液を用いて室温でゲルを実行することが望ましいかも知れない。特定の実施形態では、上記電気泳動の行程は、より低温で実施される。このより低温としては、約1℃〜約10℃の温度が挙げられるが、これらに限定されない。低温での行程について、その行程の最後により高い電圧でゲルを実行することが好ましい場合があり得る。
【0098】
本明細書中で開示される方法はまた、生体分子を含む電気泳動されたゲル上で1つまたは複数のバンドを検出する工程を包含する。1つまたは複数の生体分子または生体分子複合体は、当該分野で周知の技術を使用して、電気泳動の前、電気泳動の間、電気泳動の後に染色するかまたは標識することができる。これらのバンドは、ライトボックス、スキャナーを使用して、または特別の設備を用いずに裸眼で観察することができる。必要に応じて、試料の1つまたは複数のバンドの移動距離を定量することができる。必要に応じて、1つまたは複数の試料とともにゲル上で1つまたは複数の組の分子量マーカーを電気泳動に適用することにより、分子量マーカーを、試料が電気泳動されるのと同一のゲル上で電気泳動することができる。試料に由来する1つまたは複数のバンドの分子量は、そのバンドの移動を分子量マーカーの1つまたは複数のバンドの移動と比較することにより、見積もるかまたは計算することができる。この1つまたは複数のバンドは、例えば、タンパク質、タンパク質複合体、核酸、または核酸−タンパク質複合体を表すことができる。
【0099】
上記電気泳動ゲル中で上記試料バンドを可視化することは、その分離ゲルを適切な波長の光で照らして、その試料バンドと会合した色素、染色剤または他の指示薬の観察を可能にすることにより達成される。本明細書中で開示される方法において使用される可視化方法の特定の実施形態では、色素、染色剤または他の指示薬は、上記電気泳動ゲル中のローディングの前に上記試料に添加される。他の実施形態では、上記色素、染色剤または他の指示薬は、上記試料を上記電気泳動ゲルのローディングウェルに添加する前にローディングウェルに添加されるが、他方、他の実施形態では、上記色素、染色剤または他の指示薬は、上記試料を上記電気泳動ゲルのローディングウェルに添加した後にローディングウェルに添加される。あるいは、本明細書中で開示される方法において使用される可視化方法の特定の実施形態では、色素、染色剤または他の指示薬は、上記電気泳動ゲルに添加される。これにより、それらは、電気泳動による移動の間に試料成分と会合するようになる。本明細書中で開示される方法において使用される可視化方法のさらに他の実施形態では、色素、染色剤または他の指示薬は、試料成分に共有結合で結びつけられる。
【0100】
可視化のために使用されるシステム、色素および染色剤は、蛍光性であってもよく、または非蛍光性であってもよい。本明細書中で開示される方法において使用されるシステム、色素および染色剤の非限定的な例は、銀染色またはCoumassie Blue染色である。
【0101】
可視化のために使用される光は、単色性であっても多色性であってもよい。例としてのみであるが、多色性光は、白色光、UV光または赤外光であってよく、他方、単色光は、レーザーまたは発光ダイオード(LED)を使用するか、または白色光、UV光または赤外光のような光源から特定の分光学的フィルタリングにより、達成することができる。このような単色光の所望の波長は、使用される色素または染色剤の特定の分光特性に依存し、そして当業者は、このような単色光を入手するための方法を知っていることが理解される。
【0102】
特定の実施形態では、可視化は、独立型の「ライトボックス」中で実施される。このライトボックスの中に、上記試料の電気泳動による分離の間または後に、上記電気泳動カセットが置かれる。このようなライトボックスの中で、上記電気泳動カセットは、上から、または下から照らされる。CCDカメラもしくはビデオカメラを使用すること、または使用者の直接観察により、モニタリングすることができる。このような可視化の他の実施形態では、モニタリング手段(CCDカメラもしくはビデオカメラ、または直接観察)および電場を印加するための手段が1つの装置に組み合わされている電気泳動/モニタリング装置が使用される。
【0103】
図1は、直鎖状アクリルアミドをスタッカー中に含有するゲルおよび直鎖状アクリルアミドをスタッカー中に含有しないゲル上でのタンパク質およびタンパク質複合体の電気泳動による分離を比較する。使用した電気泳動ゲルは、直鎖状アクリルアミドをスタッキングゲル中に含まない(上側ゲル)、または0.05%の直鎖状アクリルアミドをスタッキングゲル中に含む(下側ゲル)3〜12%ブルーネイティブ勾配ゲルであった。ゲルを、50mM ビストリス、50mM トリシンランニング緩衝液(陰極緩衝液においてのみ、0.02% Coomassie G−250)を使用して、90分間、150Vで実行し、そしてコロイド状Coomassieで染色した。レーン1、5および10に、5uLの未染色の未変性標準(Invitrogen,Carlsbad, California)をロードし、レーン2、4、7および9に1%ドデシルマルトシド中に可溶化したウシのミトコンドリア抽出物4uLをロードした。矢印は、スカーティングアーチファクト(上側ゲルにのみ存在する)を示す。直鎖状アクリルアミドをスタッキングゲル中に含まない電気泳動ゲルで観察されるように、スタッキングゲル中に直鎖状アクリルアミドが存在すると、スカーティング効果が低減される。
【0104】
実施例
実施例1:未変性タンパク質/タンパク質複合体のゲル電気泳動
ゲルおよびカセット:
ビストリス−Cl、pH 7.0および0.3mM CHAPS界面活性剤中にアクリルアミド/ビスアクリルアミドを25.5:1で含む、3〜12%ポリアクリルアミド勾配ゲルを注ぎこんだ。スタッカーは、3%のアクリルアミド/ビスアクリルアミド(25.5:1の比)、および0.05% 重量/体積の直鎖状アクリルアミド(600,000〜1,000,000ダルトン)であった。第1のゲルを、上側エッジに沿ったカセットの中央における間隙の測定値が0.923mmであるカセットに注ぎ、そして第2のゲルを、上側エッジに沿ったカセットの中央において0.991mmの間隙を有するカセットに注いだ。これらのカセットの左側エッジおよび右側エッジにおけるプレート間間隙は、1.01mmと1.02mmとの間であった。それゆえ、この第1のゲルカセットは、この第2のゲルカセットと比較してより狭い中央領域を有する。
【0105】
試料調製:
ウシのミトコンドリアを、以前(Graham,J.M.およびRickwood D.の編集による「Subcellular Fractionation: A Practical Approach」(Oxford University Press,New York)中の107−115頁、Rice,J.E.およびLindsay,J.G.(2002)「Subcellular fractionation of mitochondria」)に記載されたとおりに単離した。TESS緩衝液(250mM スクロース、1mM スクシネート、0.2mM EDTA、10mM Tris、4℃においてpH7.8)中に単離されたミトコンドリアを、250uLのアリコートで−80℃で保存した。アリコートを氷上で解凍してから、1% ドデシルマルトシドまたは2% ジギトニン、50mM ビストリス−CL、pH,7.0、50mM NaCl、10%重量/体積 グリセロールおよび0.001% Ponceau Sを含有する、冷たい1×試料緩衝液中でミトコンドリアタンパク質を抽出した。黄色いピペット先を通して吸上げ吸出しすることにより、そして上下反転させることにより、ミトコンドリアを緩衝液中に溶解した。氷上で15分間インキュベーションしたのち、ミトコンドリア抽出物を、4℃、20,000×gで30分間遠心分離した。ペレットを廃棄し、上清をアリコートに分けて、使用するまで−80℃で保存した。上記ゲルにロードする前に、5% Coomassie G−250および20.1% NDSB201を含有する5% G−250試料添加物を、G−250の最終濃度が上記試料中の界面活性剤濃度の1/4であるように、上記試料に添加した。5% G−250試料添加物を、試料が氷上にある間であって、ゲルにロードする直前に上記試料に添加した。界面活性剤を含有しない試料については、5% G−250試料添加物を使用しなかった。
【0106】
IgM、アポフェリチン、B−フィコエリトリン、乳酸デヒドロゲナーゼ、ウシ血清アルブミンおよびダイズトリプシンインヒビターを含む、5マイクロリットルの未染色の未変性タンパク質標準を、上記ゲル上の分子量マーカーとして使用した。
【0107】
Native PAGE(商標)ゲル上への試料のローディング:
櫛およびテープを取り除き、次いで試料ウェルを陰極緩衝液で1回リンスし、次いで陰極緩衝液でこの試料ウェルを再び満たすことにより、試料の適用のための未変性のゲルを調製した。試料を、SureLock(商標)ミニセル電気泳動装置(Invitrogen Corp,Carlsbad,CA)の外側か、そのミニセルの中かのいずれかで、上記ゲル上へロードし、その後ランニング緩衝液を添加した。その試料を、できるだけ薄い層で上記ウェルの底部に試料を送達することにより陰極の下にその試料を置くことによって、試料をロードした。上記ゲル上へ試料をロードするのと電気泳動を開始するのとの間の時間を最少にすることにも心掛けた。
【0108】
NativePAGE(商標)ゲルのランニング:
ランニング緩衝液を、以下の表に示すとおりに調製した。
【0109】
(表1)未変性ゲル電気泳動のためのランニング緩衝液

20×ランニング緩衝液は、1M ビストリス、1M トリシン、pH 7.5〜7.65であった。陰極添加剤は0.4% Coomassie G−250の水溶液であった。
【0110】
使用した陰極緩衝液の型は、実施した適用に応じて変更した。表2は、使用した種々の陰極緩衝液を詳細に示す。例としてのみであるが、濃青色の陰極緩衝液は、0.02%のG−250を含有しており、そして、図3に示すように、それを界面活性剤を含有する試料を使用した未変性電気泳動行程で使用した。0.002% G−250を含有する淡青色の陰極緩衝液を、試料が界面活性剤を含有しない場合、または濃青色の陰極緩衝液が下流の適用と干渉する場合の未変性電気泳動行程で使用した。淡青色の陰極緩衝液を使用することで利益を得る下流の適用は、ウエスタンブロット法、銀染色、および二次元未変性SDS PAGEである。淡青色の陰極緩衝液を必要とする下流プロセッシングのために意図した、界面活性剤を含有する試料の未変性電気泳動行程については、この行程を濃青色の陰極緩衝液を用いて開始し、色素移動前線がそのゲルの下の1/3となったのちに、その行程を休止し、この濃青色の陰極緩衝液を血清ピペットで取り除き、そして名青色の陰極緩衝液に置換してからその行程を再開した。
【0111】
(表2)未変性ゲル電気泳動のための陰極緩衝液

【0112】
電気泳動を150Vで実施した。電流限界を、ゲル1つあたり15mAにセットした。室温の緩衝液を用いて室温で実行する場合、3〜12%のゲルに対する実行時間は、代表的には90〜100分であり、4〜16%のゲルに対する実行時間は、代表的には105〜120分であった。
【0113】
NativePAGE(商標)ゲルの染色:
未変性ゲルのランニング後は、そのゲルは深い青色であり、いくつかの非常にタンパク質に富んだバンドが目で見えた。しかし、このゲルのさらなる染色が必要であった。この行程の最後では、すべてのタンパク質は、未だ、未変性の折り畳まれた状態にあり、そして最も鋭敏な染色を提供するために、そのタンパク質を少なくとも部分的に変性して、以下の方法に従う色素結合のために、より疎水的な部位を曝露させた。
【0114】
Coomassie G−250長期プロトコル、高感度染色:
上記ゲルを、100mLの定着液(40%メタノール、10%酢酸)中に置き、45秒間、マイクロ波処理して、15〜30分間振盪した。この定着ステップを、3〜12%ゲルについては1回繰返した。この定着液を傾瀉し、そして100mLの染色溶液をColloidal Blue Staining Kit(Invitrogen Corp.,Carlsbad, CA;55mL 水、20mL メタノール、20mL 染色剤A、5mL 染色剤B)から添加し、そしてこのゲルを浸透しながら一晩インキュベーションした。染色溶液を傾瀉し、そして100mLの8%酢酸を添加した。このゲルを、攪拌しながら5分間インキュベーションした(これにより、ゲルまたは染色容器の表面上に沈殿した任意のG−250が取り除かれる)。次いで、この酢酸を傾瀉し、そして100mLの蒸留水を添加して、所望のバックグラウンドレベルが得られるまでこのゲルを振盪した。
【0115】
図3は代表的な結果を示しており、図3は、上側の間隙の測定値と類似の中央の間隙の測定値を備えたカセットが、スカーティングがないゲルを生成したが、他方で、上側の間隙の測定値よりも有意に小さい中央の間隙の測定値を備えたカセットが、スカーティングゲルを生成したことを示す。ゲルAにおけるスカーティングアーチファクトを、矢印で示す。
【0116】
本発明が例示的な実施形態と関連させて開示されたが、本発明の範囲を示された特定の形態に限定することは意図されておらず、逆に、添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本発明の趣旨および範囲内に包含され得るような代替物、改変物、および等価物を網羅することが意図されている。
【0117】
上記の説明は本発明の例示にすぎないことを理解するべきである。見出しは便宜のためのみであり、見出しのもとに入る開示をその見出しのみに限定することは意図されていない。種々の代替物および改変物が、本発明から逸脱することなく当業者によって考案され得る。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るすべてのそのような代替物、改変物および変態物を包含することが意図されている。
【0118】
本明細書中で言及されたすべての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各々の個別の刊行物、特許および特許出願が、具体的にかつ個々に参考として援用されると示されたのと同程度に、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】スタッキングゲル中に0.05%の直鎖状アクリルアミドを含まないで(上側ゲル)、または含んで(下側ゲル)作製した3〜12%ブルーネイティブ勾配ゲルを示す。
【図2】中央で切り落とされたカセット(21)の模式図を示し、この図においてこのカセットは、前面プレート(22)および背面プレート(23)、ならびにその間の間隙(24)を有する。
【図3】プレート間に一定の間隙幅を有さなかったカセット中で実行されたゲル上(A)、ならびにプレート間に一定の間隙幅を有したカセット中で実行されたゲル上(B)で分離された試料のタンパク質/タンパク質複合体およびマーカータンパク質を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッキングゲルおよび分離ゲルを含み、前記スタッキングゲルが直鎖状ポリアクリルアミドを含む、生体分子の分離のためのポリアクリルアミドゲル。
【請求項2】
スタッキングゲルのアクリルアミド濃度が2%と6%との間である、請求項1記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項3】
スタッキングゲルのアクリルアミド濃度が2.5%と5%との間である、請求項2記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項4】
スタッキングゲルの直鎖状アクリルアミド濃度が0.005%〜1%である、請求項2記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項5】
スタッキングゲルの直鎖状アクリルアミド濃度が0.01%〜0.5%である、請求項4記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項6】
スタッキングゲルの直鎖状アクリルアミド濃度が0.02%〜0.1%である、請求項5記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項7】
分離ゲルが直鎖状アクリルアミドを含まない、請求項1記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項8】
変性ゲルである、請求項1記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項9】
SDSを含む、請求項8記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項10】
非変性ゲルである、請求項1記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項11】
非変性ゲルが勾配ゲルである、請求項10記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項12】
非変性ゲルがブルーネイティブ(Blue Native)ゲルである、請求項10記載のポリアクリルアミドゲル。
【請求項13】
以下の工程を含む、電気泳動ゲル上で生体分子を分離する方法:
1つまたは複数の生体分子を含む1つまたは複数の試料を、スタッキングゲル部分および分離ゲル部分を含むアクリルアミドゲルに適用する工程であって、前記スタッキングゲル部分は、直鎖状ポリアクリルアミドを含む、工程;ならびに
1つまたは複数の生体分子を前記ゲル上で電気泳動により分離する工程。
【請求項14】
分離ゲル部分が直鎖状アクリルアミドを含まない、請求項13記載の方法。
【請求項15】
電気泳動ゲルが変性ゲルである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
電気泳動ゲルが非変性ゲルである、請求項13記載の方法。
【請求項17】
非変性ゲルがブルーネイティブゲルである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
非変性ゲルが勾配ゲルである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
1つまたは複数の分子量マーカーセットを電気泳動ゲルに適用する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項20】
電気泳動ゲル上の1つまたは複数の生体分子もしくは生体分子複合体の分子量を見積もるかまたは計算する工程をさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
未変性ゲル電気泳動を実施するためのカセットであって、その上側エッジにわたって一定の間隙幅を有する、カセット。
【請求項22】
その上側エッジにわたって0.1ミリメートル〜5ミリメートルの範囲の間隙幅を有する、請求項21記載のカセット。
【請求項23】
間隙幅が、5%未満で変動する、請求項21記載のカセット。
【請求項24】
間隙幅の変動が2%以下である、請求項23記載のカセット。
【請求項25】
ポリアクリルアミドを含むゲルを含有する、請求項23記載のカセット。
【請求項26】
ゲルが非変性ゲルである、請求項25記載のカセット。
【請求項27】
ゲルがブルーネイティブゲルである、請求項26記載のカセット。
【請求項28】
ゲルが勾配ゲルである、請求項26記載のカセット。
【請求項29】
プラスチックを含む、請求項21記載のカセット。
【請求項30】
前面プレートを背面プレートに溶接することにより作製される、請求項29記載のカセット。
【請求項31】
以下の工程を含む、電気泳動ゲル上で生体分子を分離するための方法:
1つまたは複数の生体分子を含む1つまたは複数の試料を、その上側エッジにわたって一定の間隙幅を有するカセット内のゲルに適用する工程;ならびに
1つまたは複数の生体分子を前記ゲル上で電気泳動により分離する工程。
【請求項32】
カセットがその上側エッジにわたって、0.1ミリメートル〜5ミリメートルの範囲の間隙幅を有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ゲルがマルチウェル型ゲルである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
電気泳動ゲルが非変性ゲルである、請求項31記載の方法。
【請求項35】
非変性ゲルがブルーネイティブゲルである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
非変性ゲルが勾配ゲルである、請求項34記載の方法。
【請求項37】
ゲルがスタッキングゲルおよび分離ゲルを含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
スタッキングゲルが直鎖状アクリルアミドを含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
1つまたは複数の分子量マーカーセットを電気泳動ゲルに適用する工程をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項40】
電気泳動ゲル上の分離された1つまたは複数の生体分子もしくは生体分子複合体の分子量を見積もるかまたは計算する工程をさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
ゲルを染色する工程をさらに含む、請求項31記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−522554(P2009−522554A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548824(P2008−548824)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/062514
【国際公開番号】WO2007/076452
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)