説明

ポリアミド樹脂の製造方法

【課題】短時間でかつ高品質のポリアミド樹脂を効率的に得ることができるポリアミド樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂の従来の重合法である溶融重合法、固相重合法あるいは溶融押出重合法と比較して、極めて短時間にかつ高品質のポリアミド樹脂を得る製造方法として、ポリアミド原料あるいはポリアミド樹脂に特定周波数のマイクロ波を照射することが有効であることを見いだした。これにより、ポリアミドの重合あるいはポリアミド樹脂の高分子量化が簡便に行えるとともに、得られるポリアミド樹脂は、従来の製造方法と比較して、短時間で高分子量化ができるため、高品質のポリアミド樹脂を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂の製造方法および該製造方法で得られるポリアミド樹脂に関わる。より詳細にはマイクロ波を照射し得られるポリアミド樹脂およびその製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、エンジニアリング樹脂、フィルム、タイヤコード、エアーバック用繊維、衣料繊維などに成形され、得られる成形品はその強度、耐熱性、耐疲労特性等の優れた特性を有している。従来のポリアミド樹脂の製造方法は、溶融重合方法(例えば、特許文献1参照。)、固相重合方法(例えば、特許文献2参照。)、押出機による溶融押出重合法あるいはこれらを組み合わせて行う方法であり、当業界ではよく知られまた用いられる方法である。また、特許文献1にはガス抜きゾーンを有する2軸スクリューで溶融押出による高分子量化が開示されている。
【特許文献1】特開昭62−79225号公報
【特許文献2】米国特許第3562206号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の溶融重合方法、固相重合方法あるいは溶融押出重合法と比較して、極めて短時間にかつ高品質のポリアミド樹脂を得る製造方法およびその方法により得られるポリアミド樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアミド原料あるいはポリアミド樹脂にマイクロ波を照射しすることにより上記課題を解決できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
[1]ポリアミド原料またはポリアミド樹脂にマイクロ波を照射して重合し、ポリアミド樹脂の製造またはポリアミド樹脂の高分子量化を行うことを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法、
[2]マイクロ波の周波数が2.45GHzであることを特徴とする[1]に記載のポリアミド樹脂の製造方法、
[3][1]または[2]に記載の製造方法により得られるポリアミド樹脂、
である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の製造方法により、短時間でかつ高品質のポリアミド樹脂を効率的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂は、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体であれば特に限定されないが、本発明の課題を達成するための好ましいポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド12T、ポリアミドMXD6及びこれらのうち少なくとも2種類の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体並びにこれらの混合物などである。
また、本発明のポリアミド原料は、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体を製造するために用いられている周知の原料であれば特に限定されないが、重合可能なアミノ酸、重合可能なラクタム、あるいは重合可能なジアミンとジカルボン酸との塩あるいは混合物、及び重合可能なオリゴマーを挙げることができる。本発明の課題を達成するための好ましいポリアミド原料は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド12T、ポリアミドMXD6及びこれらのうち少なくとも2種類の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体を製造するための原料である。
【0007】
本発明のマイクロ波は一般的には、例えば、“マイクロ波の新しい工業利用技術(吉田隆著、2003年)”の第1章4頁図7に記載の如く、周波数3×108〜3×1010Hzの電磁波をいう。中でも2.45G(2.45×109)Hzのマイクロ波を用いることが好ましい。
本発明のマイクロ波の照射は、ポリアミド原料、あるいはポリアミド樹脂のいずれに実施してもかまわない。また、従来の溶融重合工程、固相重合工程、溶融押出工程のいずれかの工程間でマイクロ波を照射してもかまわない。更には、水や有機溶媒中のポリアミド原料やポリアミド樹脂、溶融させたポリアミド原料やポリアミド樹脂、固体状態のポリアミド原料やポリアミド樹脂などのいずれにマイクロ波を照射してもかまわない。
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂は、従来の製造方法と比較し、短時間で高分子量化できるため、高品質のポリアミド樹脂を得ることがでる。従って、得られたポリアミド樹脂は、公知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、溶融紡糸等一般に知られているプラスチック成形方法を用いても、良好に成形加工ができる。
【実施例】
【0008】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、
以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した物性評価は、以下のように行った。
(1)ポリアミド樹脂の分子量(Mn)
ゲルパーミッショクロマトグラフィー(GPC)により求めた。装置は東ソー(株)製HLC−8020、検出器は示差屈折計(RI)、溶媒はヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、カラムは東ソー(株)製TSKgel−GMHHR−Hを2本とG1000HHRを1本用いた。溶媒流量は0.6ml/min、サンプル濃度は、1〜3(mgサンプル)/1(ml溶媒)であり、フィルターでろ過し、不溶分を除去し、測定試料とした。得られた溶出曲線をもとに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算により、ポリマーの割合及び平均分子量を算出した。
(2)マイクロ波の照射
周波数2.45GHzのマイクロ波を照射した。
【0009】
[実施例1]
ポリアミド66原料(ヘキサメチレンジアミンアジパミド)固体塩に2分間マイクロ波を照射した。92.9%が高分子量化しており、その数平均分子量(Mn)は5600であった。
【0010】
[実施例2]
ポリアミド66/6T/6I共重合原料(ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド=56/38/6)固体塩に2分間マイクロ波を照射した。86.8%が高分子量化しており、その数平均分子量(Mn)は8800であった。
【0011】
[実施例3]
ポリアミド612/6T原料(ヘキサメチレンドデカミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド=47/53)固体塩に6分間マイクロ波を照射した。14.0%が高分子量化しており、その数平均分子量(Mn)は3060であった。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明の方法は、高速或いは高密度ニューマーなどを用いた移送あるいは射出成形などの各種成形において添加剤の脱落などが少なく、かつ各種成形での可塑化性やそのばらつきが少ないという成形性に優れた添加剤をその表面に含有するポリアミド樹脂ペレットを製造する方法に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド原料またはポリアミド樹脂にマイクロ波を照射して重合し、ポリアミド樹脂の製造またはポリアミド樹脂の高分子量化を行うことを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項2】
マイクロ波の周波数が、2.45GHzであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により得られることを特徴とするポリアミド樹脂。

【公開番号】特開2006−225591(P2006−225591A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44107(P2005−44107)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】