説明

ポリアミド樹脂組成物及びそれよりなる成形体

【課題】 押出成形性が良好であり、かつ得られる成形体がクリープ特性や衝撃特性に優れるポリアミド11及び/又は12樹脂組成物及びそれよりなる成形体を提供する。
【解決手段】 (A)末端アミド基濃度が15(μeq/ポリマー1g)以上であるポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)100重量部に対し、(B)下記一般式(I)で表されるN,N’−カルボニルビスラクタム0.05〜1.0重量部を配合してなり、JIS K−6920により測定した相対粘度(96%硫酸中、ポリマー濃度10g/dm、25℃)が2.3〜3.0であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【化1】


[式中、Rは、アルキル基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物及びそれよりなる成形体に関し、更に詳しくは溶融混合により高分子量化され、押出成形性が良好であり、かつ得られる成形体がクリープ特性や衝撃特性に優れるポリアミド11及び/又は12樹脂組成物及びそれよりなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド11又は12は、強度、靭性、耐薬品性、柔軟性、寸法安定性に優れており、各種産業分野で射出成形品用材料やチューブ、シート、フィルム等の押出成形品用材料として使用されている。近年、ポリアミド11又は12を使用した自動車、各種産業用チューブ、ホース等、押出成形品分野での用途開発が進み、特に該分野での要求は高度化、多様化の一途である。
【0003】
特に押出成形品分野の中でも、地中に埋設される、ガス、水道等インフラ搬送用パイプ分野においては、発錆の問題や地震への耐性の問題から、金属から樹脂への素材の代替が進みつつある。特に、金属代替材料として、クリープ特性をはじめとする強度、衝撃特性、柔軟性、磨耗性、耐薬品性に優れるポリアミド11又は12への期待が高まりつつあり、該分野において使用されうる材料の創出が求められている。さらに、これらインフラ搬送用パイプをはじめとする肉厚押出成形物の成形において、材料の溶融粘度が低いと、ドローダウンと称される自重変形が問題となり、偏肉が少なく均一な肉厚分布を有し、十分な肉厚の確保が困難となる場合がある。よって、良好な寸法精度を有する成形品を得るのことが可能な、押出成形性に優れたポリアミド11又は12が望まれている。また、インフラ搬送用パイプをはじめとする成形体において、クリープ特性や衝撃特性は性能上、特に重要視される物性の一つであり、押出成形性が良好であり、かつクリープ特性や衝撃特性に優れたポリアミド11又は12に対する要求が高まっている。
【0004】
一般に、ポリマーは高分子量になるほど、クリープ特性や衝撃特性等の耐久性に関係する特性は良くなると言われている。ポリアミドを高分子量化する方法に関しては、例えば、比較的低分子量のポリアミドを溶融状態でリン系化合物と混合した後、ペレットや粉体等の形状にしてから、固相重合法により高分子量化する方法が開示されている(特許文献1参照)。しかし、固相重合法は、所望の分子量を得るために長時間を要すともに、新たな設備が必要となり生産コストが増大する。
【0005】
一方、比較的低い分子量を有するポリアミドにビスラクタムを溶融混合することにより高分子量化ポリアミドを得る方法が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、該文献においては、ポリアミド11又は12に関する記載は見当たらず、さらに該樹脂組成物を使用した成形品、特に肉厚押出成形品、中空成形品及び積層中空成形品等に関する技術的記載、示唆はなされていない。
【0006】
【特許文献1】特開平3−97732号
【特許文献2】特表2001−521576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、押出成形性が良好であり、かつ得られる成形体がクリープ特性や衝撃特性に優れるポリアミド11及び/又は12樹脂組成物及びそれよりなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、特定の末端アミド基濃度を有するポリアミド11及び/又はポリアミド12とN,N’−カルボニルビスラクタムを配合してなる樹脂組成物が、押出成形性が良好であり、該樹脂組成物よりなる成形体が、クリープ特性や衝撃特性に優れることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、
(A)末端アミド基濃度が15(μeq/ポリマー1g)以上であるポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)100重量部に対し、(B)下記一般式(I)で表されるN,N’−カルボニルビスラクタム0.05〜1.0重量部を配合してなり、JIS K−6920相対粘度(96%硫酸中、ポリマー濃度10g/dm、25℃)が2.3〜3.0であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物及びそれよりなる成形体に関するものである。
【0010】
【化1】


[式中、Rは、アルキル基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。]
【0011】
また、該ポリアミド11及び/又は12樹脂組成物よりなる成形体が、チューブ、ホース、パイプ、ボトル、タンク、ダクトからなる群から選ばれる中空成形体に関し、さらに、上記ポリアミド11及び/又は12樹脂組成物からなる層、及び薬液透過防止性樹脂からなる層を含む積層中空成形体に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
特定の末端アミド基濃度を有するポリアミド11及び/又はポリアミド12とN,N’−カルボニルビスラクタムを配合してなる樹脂組成物は、押出成形性が良好であり、得られる成形体は、クリープ特性や衝撃特性に優れている。よって、該ポリアミド11及び/又は12樹脂組成物は、チューブ、ホース、パイプ、ボトル、タンク、ダクト等の中空成形品、特に厚肉中空成形品として使用されることが好ましい。さらに、該樹脂組成物は、溶融粘度の増大により、従来困難であった高い成形加工温度での積層中空成形体の製造が可能となるとともに、製造された積層中空成形体は、クリープ特性、衝撃特性等の特性に優れており、今後大いに使用拡大が期待されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される(A)ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)は、酸アミド結合(−CONH−)を有する次式:(−CO−(CH10−NH−)nで示されるポリアミドが代表的なものであり、11−アミノウンデカン酸又はウンデカンラクタムを重合させて得ることができる。また、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)は、酸アミド結合(−CONH−)を有する次式:(−CO−(CH11−NH−)nで示されるポリアミドが代表的なものであり、12−アミノドデカン酸又はドデカンラクタムを重合させて得ることができる。
【0014】
(A)ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)は、前記モノマーを主成分(60重量%以上)とする共重合体であってもよい。共重合成分としては、ラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩が挙げられる。
【0015】
ラクタムとしては、ピロリドン、ピペリドン、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ウンデカンラクタム(ポリアミド11を除く)、ドデカンラクタム(ポリアミド12を除く)等、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸(ポリアミド11を除く)、12−アミノドデカン酸(ポリアミド12を除く)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
ナイロン塩を構成するジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、1,19−ノナデカンジアミン、1,20−エイコサンジアミン、2/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
ナイロン塩を構成するジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸ジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸、ジメチルマロン酸、2−メチルアジピン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4/2,6/2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,3/1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
また、本発明において使用される(A)ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)は、単独重合体であってもよいし、前記記載の共重合体との混合物、あるいは他のポリアミド系樹脂との混合物であってもよい。混合物中のポリアミド11及び/又はポリアミド12の含有率は、60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0019】
他のポリアミド系樹脂としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)(ポリアミド11を除く)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)(ポリアミド12を除く)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、アゼラミドポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、アゼラミドポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンウンデカミド(ポリアミド911)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンウンデカミド(ポリアミド1111)、ポリウンデカメチレンドデカミド(ポリアミド1112)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)、ポリイソホロンイソフタラミド(ポリアミドIPDI)やこれらポリアミド原料モノマーを数種用いた共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
(A)ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)は、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置を使用して製造される。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0021】
また、(A)ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)のJIS K−6920に準拠して測定した相対粘度(96%硫酸中、ポリマー濃度10g/dm、25℃)は、1.8〜2.8であることが好ましく、1.9〜2.7であることがより好ましい。相対粘度が前記の値未満であると、得られる成形品の機械的性質が不十分なことがあり、また、前記の値を超えると、押出圧力やトルクが高くなりすぎて、成形品の製造が困難となることがある。
【0022】
本発明において使用される、(A)ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)の末端アミド基濃度は、後述の(B)N,N’−カルボニルビスラクタムとの反応性を考慮すると、15μeq/ポリマー1g以上である必要がある。末端アミノ基濃度が20μeq/ポリマー1g以上であることが好ましく、30μeq/ポリマー1g以上であることがより好ましい。さらに、ポリアミドの溶融安定性、ゲル状物発生抑制の点から、80μeq/ポリマー1g以下であることがより好ましい。
なお、末端アミノ基濃度は、該ポリアミドをフェノール・メタノール混合溶液に溶解し、0.05Nの塩酸で滴定して測定することができる。
【0023】
通常、ポリアミドは、分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加する場合が多い。本発明において使用される(A)ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)において、分子量調節剤の使用量は、上記に規定された末端アミド基濃度及び相対粘度により、適宜決められる。
【0024】
(A)ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)において、末端アミノ基濃度の条件を満たすために、ジアミンを重合時の段階で添加することが好ましい。ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記ジアミンの中でも、ゲル発生抑制という観点から、脂肪族ジアミン及び/又は脂環式ジアミンであることがより好ましい。
【0025】
添加されるジアミン類の使用量は、製造しようとするポリアミドの末端アミノ基濃度、及び相対粘度を考慮して、公知の方法により適宜決められる。通常、ポリアミド原料に対して(繰り返し単位を構成するモノマー又はモノマーユニット1モル)、ジアミンの添加量は、それぞれ、0.5〜20meq/モルであることが好ましく、1.0〜10meq/モルであることがより好ましい(アミノ基の当量は、カルボキシル基と1:1で反応してアミド基を形成するアミノ基の量を1当量とする。)。添加量が、前記の値を超えると所望の粘度を有するポリアミドの製造が困難となる場合がある。
【0026】
本発明において使用される(B)N,N’−カルボニルビスラクタムは、下記式(I)で表される化合物である。
【0027】
【化2】

【0028】
式中、Rは、アルキル基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。Rの炭素を含んで環を形成する炭素数が4〜16であることがより好ましく、炭素数が5〜12であることがさらに好ましい。Rの好ましい具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン等が挙げられる。
【0029】
一般式(I)で表される(B)N,N’−カルボニルビスラクタムは、ベンゼン中、触媒としての第三アルキルアミンの存在下、ラクタムをホスゲン、(COCl)と反応させることにより製造することができる。これらの方法に限定されるものではなく、他の方法も適宜使用できる。
【0030】
(B)N,N’−カルボニルビスラクタムの添加量は、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12 100重量部に対して、0.05〜1.0重量部である。0.1〜0.75重量部であることが好ましく、0.15〜0.5重量部であることがより好ましい。添加量が0.05重量部未満であると、得られる発明効果が小さく、配合量が1.0重量部を超えると、添加量に見合うだけの本発明の効果は発現せず、経済的に不利となる。
【0031】
かかるに、本発明の(A)末端アミド基濃度が15(μeq/ポリマー1g)以上であるポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)100重量部に対し、(B)N,N’−カルボニルビスラクタム0.05〜1.0重量部なるポリアミド11及び/又は12樹脂組成物は、JIS K−6920に準拠して測定した相対粘度(96%硫酸中、ポリマー濃度10g/dm、25℃)が2.3〜3.0である。相対粘度が前記の範囲内にあることにより、後述の通り、押出成形性が良好であり、かつクリープ特性や衝撃特性に優れた成形体を得ることが可能となる。該樹脂組成物の相対粘度は、2.35〜2.9であることが好ましく、2.4〜2.8であることがより好ましい。前記の値未満であると、本発明の優れた効果が得られず、また、前記の値を超えると、押出圧力やトルクが高くなりすぎて、成形品の製造が困難となる。また、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートが、0.1〜19g/10分であることが好ましく、0.2〜15g/10分であることがより好ましく、0.3〜10g/10分であることがさらに好ましい。さらに、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートと、上記相対粘度とが数式(1)
【0032】
【数1】

(ここで、ηrは相対粘度、MFRはメルトフローレートである。)
【0033】
の関係にあることが特に好ましい。上記式を満たすことにより、原料である(A)ポリアミド11及び/又は12が(B)N,N’−カルボニルビスラクタムにより架橋構造をほとんど有することなく、効果的に鎖延長されていることを示す。
【0034】
本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物の製造は、ペレット状態、又はパウダー状態の(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12及び(B)N,N’−カルボニルビスラクタムの所定量を通常の混合に使用されるヘンシェルミキサー等の高速回転混合機やコーンブレンダー、タンブラー等の低速回転混合機等を用いて室温で予めブレンドしておき、該混合物をさらにバンバリーミキサー、スーパーミキサー、ミキシングロール、二軸連続ミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等の装置を使用し、該混合物物の溶融が十分に進行しかつ分解しない温度で溶融混練する溶融混練法により一般的に行われる。また、予め高濃度の(B)N,N’−カルボニルビスラクタムを(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12に1軸又は二軸の押出機を使用して練り込み、これを成形時に希釈して使用するいわゆるマスターバッチ法を採用してもよい。また、溶融混練時においては、不活性気体流通下又は減圧下において、発生する水を揮発除去することが好ましい。
【0035】
さらに、本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物には、必要に応じて、フェノール系、チオエーテル系、ホスファイト系、アミン系、イソシアヌレート系等の酸化防止剤、有機スズ系、銅系の熱安定剤、レゾルシノ−ル系、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系、金属錯塩系等の紫外線吸収剤やヒンダードアミン系等の光安定化剤、ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類、多価アルコール類等の可塑剤、脂肪酸金属塩類、ビスアミド化合物等の滑剤、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、ワラステナイト、ゼオライト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、アルミノシリケート、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等の充填材、アルキルアミン、アルキルアミド、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルホスフェート、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン等の帯電防止剤、赤リン、酸化スズ、水酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ハロゲン系、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等の燐酸エステル系、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンジシアヌレート等のメラミン又はシアヌル酸系等の難燃剤、無機フィラー類、脂肪酸金属塩等の有機結晶核剤、低分子量ポリアミド、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、高級脂肪族アルコール類等の結晶化促進剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物等の離型剤、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸系共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸エステル系共重合体、アイオノマー重合体、未水添又は水添芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体やこれらの酸変性物等の耐衝撃改良剤、発泡剤、ペリレン系、ペリノン系、複素環系、ジスアゾ系、モノアゾ系、ナフトールアゾ系、アゾレーキ系、アゾメチン系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アンスラキノン系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、イソインドリノン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、キノリン系、ベンズイミダゾロン系、トリフェニールメタン系、クロム酸モリブデン酸系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系、パナジウム酸ビスマス、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化チタン、イエローチタン等の着色剤が挙げられる。
【0036】
本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物においては、さらに、下記一般式(II)で表される(C)環状イミノエーテルを添加することも可能である。
【0037】
【化3】

【0038】
式中、R1は、エチレン、置換エチレン、トリメチレン及び置換トリメチレンよりなる群より選ばれる2価の有機基であり、かつ環構造は、5員環又は6員環である。R2はアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基よりなる群より選ばれる2価の有機基である。また、式中のnは0又は1である。
【0039】
一般式(II)におけるR1は、エチレン、置換エチレン、トリメチレン及び置換トリメチレンよりなる群より選ばれる2価の有機基であり、置換エチレン又は置換トリメチレンの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数5〜12のシクロアルキル基が挙げられる。具体的にはアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エチルヘキシル、ノニル、デシル等が挙げられ、アリール基としてはフェニル、ナフチル、ジフェニル及び下記一般式(III)で表されるアリール基、
【0040】
【化4】

【0041】
(ここで、R3は―O―、―CO―、―S―、―SO―、―CH―、―CHCH―、―C(CH ―等である。)等が挙げられ、またシクロアルキル基としては、シクロヘキシルが挙げられる。これらのうちR5としてはエチレン、トリメチレンがさらに好ましい。
【0042】
一般式(II)におけるR2は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基よりなる群より選ばれる2価の有機基であるが、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜15のアリーレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基、炭素数8〜20のアラールキレン基等であることが挙げられる。具体的にはアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ジメチルメチレン等が挙げられ、またアリーレン基としてはフェニレン、ナフチレン、ジフェニレン、及び下記一般式(IV)で表されるアリーレン基、
【0043】
【化5】

【0044】
(ここで、R4は―O―、―CO―、―S―、―SO―、―CH―、―CHCH―、―C(CH ―等である。)等が挙げられ、またシクロアルキレン基としてはシクロヘキシレンが挙げられる。
【0045】
一般式(II)で表される(C)環状イミノエーテルにおいて、5員環のものはビスオキサゾリンと呼ばれる化合物であり、6員環のものはビスオキサジンと呼ばれる化合物である。具体的には、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’ −ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4’−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p −フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(4−メチル− 2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル− 2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル− 2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−デカメチレンビス(2 −オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−9,9’−ジフェノキシエタンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2 −オキサゾリン)、2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等のビスオキサゾリン化合物、並びに2,2’−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−メチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−プロピレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ブチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−m−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ナフチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−p,p’−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)等のビスオキサジン化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
これらの化合物のうち、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4 H−1,3−オキサジン)、2,2’−m−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)が好ましい。
【0047】
これらの化合物は、対応するビスアミドアルコールに濃硫酸又は塩化チオニル等の脱水剤を作用させて閉環させる方法、あるいは対応するビスアミドハライドにアルカリを作用させて閉環する方法等により容易に合成できるが、これらの方法に限定されるものではなく、他の方法も適宜使用できる。
【0048】
(C)環状イミノエーテルの添加量は、(A)ポリアミド11及び/又はポリアミド12 100重量部に対して、0.1〜1.0重量部であることが好ましく、0.2〜0.75重量部であることがさらに好ましい。
【0049】
本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物は、公知の成形方法、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形、中空成形、溶融紡糸等により、フィルム状、シート状、チューブ状、ホース状、パイプ状、ボトル状、タンク状、ダクト状、その他各種形状の成形体への製造が可能である。さらに、該ポリアミド11及び/又は12樹脂組成物は、押出成形性が良好であり、かつクリープ特性や衝撃特性に優れているため、チューブ、ホース、パイプ、ボトル、タンク、ダクト等の中空成形品として使用されることが好ましい。
【0050】
チューブ又はホース又はパイプの製造は、押出機を用いて、溶融押出し、環状ダイを通じて円筒状に押し出し、寸法を制御するサイジングフォマーを通し賦型し、水槽等で冷却後、引取機により巻き取ることにより行われる。その際、本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物を使用することにより、押し出された溶融樹脂が、ダイとサイジングフォマーとの間で垂下することなく、偏肉が少なく均一な肉厚分布を有し、十分な肉厚の確保が可能となる。
【0051】
ボトル又はタンク又はダクトの製造は、押出機から樹脂を溶融状態で、円状の流路を有するダイに押出し、パリソンを作るとともに、ガス圧によってこのパリソンを膨張させ、金型に密着させることにより行われる。その際、本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物を使用することにより、ブローに供されるパリソン形成の際に、ドローダウンと称される自重変形が少なく、しかもブロー中空成形品がパンクせずに延伸され得る強度を有し、かつ偏肉が少なく均一な肉厚分布を有し、十分な肉厚の確保が可能となる。
【0052】
本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物は、押出成形性が良好であり、かつクリープ特性や衝撃特性に優れており、単独での利用価値が高いが、これに他の熱可塑性樹脂を積層することにより、さらに多くの特性を付加させることが可能である。
【0053】
特に、自動車配管用ホースは、ガソリンの消費節約、高性能化の観点から、エタノール等のアルコール類等をブレンドした含アルコーガソリン等が移送される。近年、環境汚染防止の観点から、配管用ホース隔壁を通じての揮発性炭化水素等の拡散による大気中への漏洩防止を含めた厳しい排ガス規制が実施されている。かかる厳しい規制に対しては、従来から使用されている、強度、靭性、耐薬品性、柔軟性に優れるポリアミド11又はポリアミド12を単独で使用した単層ホースでは、含アルコールガソリン透過防止性は十分でなく、この問題を解決する方法として、薬液透過防止性の良好な樹脂(薬液透過防止性樹脂と称する場合がある。)が配置された積層ホースが提案されている、薬液透過防止性樹脂としては、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン、/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(TFE/HFP/PAVE)、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(CTFE/TFE/Et)、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(CTFE/TFE/HFP)、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(CTFE/TFE/PAVE)等が挙げられる。この際、必要に応じて、本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物と薬液透過防止性樹脂からなる層の間に、接着層を設けてもよいし、本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物と接着可能な官能基を有する薬液透過防止性樹脂を使用してもよい。
【0054】
上記、薬液透過防止性樹脂は、一般に使用されるポリアミド11又はポリアミド12等と比較して、成形加工温度が高い。また、配管内を循環する薬液の内部摩擦あるいは管壁との摩擦によって発生した静電気が蓄積して、薬液に引火し爆発の危険性が有り、これを防止するために、該材料に導電性フィラーを配合した樹脂組成物においては、流動性を確保するために、極めて厳しい成形加工温度にてホースの製造が行われる。さらに、衝撃吸収性を有し、取り付け性が容易とするため、波形領域を有する成形体が製造される。該波形領域を有する成形体の製造時の成形加工温度は、成形を容易に行うため、波形領域を有さない成形体の成形加工温度より、通常10〜20℃高い。本発明のポリアミド11及び/又は12樹脂組成物は、溶融粘度の増大により、従来困難であった高い成形加工温度での積層成形体の製造が可能となり、今後大いに使用拡大が期待されるものである。
【0055】
本発明において、積層成形体としては、チューブ、ホース、パイプ、ボトル、タンク、ダクト等の積層中空成形体が好ましい。積層中空成形体の製造方法としては、層の数もしくは材料の数に対応する押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内に供給し、各々環状の流れをなした後、ダイ内あるいは外において同時に積層する方法(共押出法)、あるいは、一旦、単層中空成形体あるいは、上記の方法により製造された積層中空成形体を予め製造しておき、外側に順次、必要に応じては接着剤を使用し、樹脂を一体化せしめ積層する方法(コーティング法)が挙げられる。本発明の積層中空成形体においては、各種材料を溶融状態で共押出し、両者を熱融着(溶融接着)して一段階で積層構造の中空成形体を製造する共押出法により製造されることが好ましい。
【0056】
また、得られる積層中空成形体が複雑な形状である場合や、成形後に加熱曲げ加工を施して成形品とする場合は、成形品の残留歪みを除去するために、上記の積層中空成形体を形成した後、前記中空成形体を構成する樹脂の融点のうち最も低い融点未満の温度で、0.01〜10時間熱処理して目的の成形品を得る事も可能である。
【0057】
積層中空成形体においては、前記のように波形領域を有するものであってもよい。波形領域とは、波形形状、蛇腹形状、アコーディオン形状、又はコルゲート形状等に形成した領域である。波形領域は、積層ホース全長にわたり有するものだけではなく、途中の適宜の領域に部分的に有するものであってもよい。波形領域は、まず直管状の中空成形体を成形した後に、引き続いてモールド成形し、所定の波形形状等とすることにより容易に形成することができる。さらに、例えば、コネクター等の必要な部品を付加したり、曲げ加工によりL字、U字の形状等にする事が可能である。
【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における物性測定は次のように行った。
【0059】
ポリアミド11及び/又は12の特性は、以下の方法で測定した。
[相対粘度]
JIS K−6920に準じて、96%の硫酸中、ポリアミド濃度1%、温度25℃の条件下で測定した。
【0060】
[末端カルボキシル基濃度]
三つ口ナシ型フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、ベンジルアルコール40mLを加えた後、窒素気流下、180℃に設定したオイルバスに浸漬する。上部に取り付けた攪拌モーターにより攪拌溶解し、指示薬にフェノールフタレインを用いてN/20の水酸化ナトリウム溶液で滴定を行い、末端カルボキシル基濃度を求めた。
【0061】
[末端アミノ基濃度]
活栓付三角フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、あらかじめ調整しておいた溶媒フェノール/メタノール(体積比9/1)の40mLを加えた後、マグネットスターラーで攪拌溶解し、指示薬にチモールブルーを用いてN/20の塩酸で滴定を行い、末端アミノ基濃度を求めた。
【0062】
また、含フッ素系重合体の特性は、以下の方法で測定した。
[含フッ素系重合体の組成]
溶融NMR分析、フッ素含有量分析により測定した。
【0063】
[含フッ素系重合体中の末端カーボネート基数]
含フッ素系重合体中の末端カーボネート基数は、赤外吸収スペクトル分析により、カーボネート基(−OC(=O)O−)のカルボニル基が帰属するピークが1809cm−1の吸収波長に現われ、吸収ピークの吸光度を測定し、次式によって含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対するカーボネート基の個数を算出した。
[含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対するカーボネート基の個数]=500AW/εdf
A:カーボネート基(−OC(=O)O−)のピークの吸光度
ε:カーボネート基(−OC(=O)O−)のモル吸光度係数[cm−1・mol−1]。モデル化合物よりε=170とした。
W:モノマー組成から計算される組成平均分子量
d:フィルムの密度[g/cm
f:フィルムの厚さ[mm]
【0064】
(物性評価)
[クリープ特性]
ASTM 3号引張試験片の両端を切落し、中央平行部190mmのテストピースを準備した。クリープテスター(安田精機製作所(株)製)を用い、テストピースを110mmのチャック間に挟み、試験温度80℃、荷重46kgの条件でクリープ試験を行った。試験開始時のチャック間距離と100時間試験した後のチャック間距離との差からクリープ歪(%)の値を得た。クリープ歪の値が小さいほどクリープ特性は良好であることを示す。
【0065】
[ノッチ付きシャルピー衝撃強度]
ISO 179/1eAに準拠した方法にて、0℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
【0066】
(含アルコールガソリン透過防止性)
200mmにカットしたホースの片端を密栓し、内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とエタノールを90/10体積比に混合した含アルコールガソリンを入れ、残りの端部も密栓した。その後、全体の重量を測定し、次いで試験ホースを60℃のオーブンに入れ、一日毎に重量変化を測定した。一日当たりの重量変化を、ホース1mあたりの表面積で除して含アルコールガソリン透過量(g/m・day)を算出した。
【0067】
(層間接着性)
200mmにカットしたホースをさらに縦方向に半分にカットし、テストピースを作成した。テンシロン万能試験機を用い、50mm/分の引張速度にて180°剥離試験を実施した。S−Sカーブの極大点から剥離強度を読み取り、層間接着性を評価した。
【0068】
[実施例及び比較例で用いた材料]
(A1)ポリアミド11及び/又はポリアミド12樹脂組成物
(A−1)ポリアミド12の製造
70リットルのオートクレーブに、ドデカンラクタム20kg、水1kgを仕込み、重合槽内を窒素置換した後、100℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで重合槽内温度を260℃まで昇温させ、槽内圧力を3.5MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて常圧に放圧し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において4時間重合を行った。次いで、窒素をオートクレーブ内に導入し、常圧に復圧後、反応容器の下部ノズルからストランドとして抜き出し、カッティングしてペレットを得た。このペレットを減圧乾燥した。当該ポリマーの相対粘度は、2.42、末端アミノ基濃度28μeq/g、カルボキシル基濃度34μeq/g、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは5.5g/10分であった(以下、このポリアミド12を(A−1)という)。
【0069】
(A−2)ポリアミド11の製造
70リットルのオートクレーブに、11−アミノウンデカン酸20kg、水1kgを仕込み、重合槽内を窒素置換した後、100℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで重合槽内温度を260℃まで昇温させ、槽内圧力を0.4MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて常圧に放圧し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において4時間重合を行った。次いで、窒素をオートクレーブ内に導入し、常圧に復圧後、反応容器の下部ノズルからストランドとして抜き出し、カッティングしてペレットを得た。このペレットを減圧乾燥した。当該ポリマーの相対粘度は、2.40、末端アミノ基濃度30μeq/g、カルボキシル基濃度32μeq/g、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは8.5g/10分であった(以下、このポリアミド11を(A−2)という)。
【0070】
(A−3)ポリアミド11の製造
(A−2)ポリアミド11の製造において、さらに30%燐酸水溶液0.087kgを仕込んだ以外は、(A−2)ポリアミド11の製造と同様の方法にてペレットを得た。このペレットを二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給し、シリンダー温度180〜260℃で溶融混練し、減圧下においてベントから水を揮発除去し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥した。当該ポリマーの相対粘度は、2.75、末端アミノ基濃度0μeq/g、カルボキシル基濃度107μeq/g、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは6.5g/10分であった(以下、このポリアミド11を(A−3)という)。
【0071】
(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造
前記(A−1)ポリアミド12に、(B)N,N’−カルボニルビスカプロラクタム(CBC)(DSM(株)製、ALLINCO−CBC)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給した。シリンダー温度180〜260℃で溶融混練し、減圧下においてベントから水を揮発除去し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド1299.5重量%、N,N’−カルボニルビスカプロラクタム0.5重量%よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た。該樹脂組成物の相対粘度は2.58、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは1.9g/10分であった(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A1−1)という)。
【0072】
(A1−2)ポリアミド12樹脂組成物の製造
(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造において、(A)ポリアミド12と(B)N,N’−カルボニルビスカプロラクタム(CBC)の配合割合を表1に示す割合に変更した以外は、(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造と同様の方法にて、ポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た。該樹脂組成物の相対粘度は2.63、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは1.5g/10分であった(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A1−2)という)。
【0073】
(A1−3)ポリアミド12樹脂組成物の製造
(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造において、(A)ポリアミド12と(B)N,N’−カルボニルビスカプロラクタム(CBC)の配合割合を表1に示す割合に変更した以外は、(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造と同様の方法にて、ポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た。該樹脂組成物の相対粘度は2.50、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは2.8g/10分であった(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A1−3)という)。
【0074】
(A1−4)ポリアミド12樹脂組成物の製造
(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造において、(A)ポリアミド12と(B)N,N’−カルボニルビスカプロラクタム(CBC)の配合割合を表1に示す割合に変更した以外は、(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造と同様の方法にて、ポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た。該樹脂組成物の相対粘度は2.43、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは4.1g/10分であった(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A1−4)という)。
【0075】
(A1−5)ポリアミド11樹脂組成物の製造
(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造において、(A−1)ポリアミド12を(A−2)ポリアミド11に変更した以外は、(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造と同様の方法にてポリアミド11樹脂組成物のペレットを得た。該樹脂組成物の相対粘度は2.56、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは3.8g/10分であった(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A1−5)という)。
【0076】
(A1−6)ポリアミド12樹脂組成物の製造
(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造において、(A−1)ポリアミド12、(B)N,N’−カルボニルビスカプロラクタム(CBC)(DSM(株)製、ALLINCO−CBC)に加えて、(C)2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)(1,3−PBO)(三国製薬(株)製、CPレジンA成分 1,3−PBO)を使用した以外は、(A1−1)ポリアミド12樹脂組成物の製造と同様の方法にて、ポリアミド12 99.0重量%、N,N’−カルボニルビスカプロラクタム0.5重量%、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)0.5重量%よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た。該樹脂組成物の相対粘度は2.48、250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは1.7g/10分であった(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A1−6)という)。
【0077】
(A1−7)ポリアミド12樹脂組成物の製造
前記(A−1)ポリアミド12に、(B)N,N’−カルボニルビスカプロラクタム(CBC)(DSM(株)製、ALLINCO−CBC)、衝撃改良材として無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7712SP)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダーの途中から、可塑剤として、ベンゼンスルホン酸ブチルアミドを定量ポンプにより注入し、シリンダー温度180〜260℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12樹脂84.5重量%、N,N’−カルボニルビスカプロラクタム0.5重量%、衝撃改良材10重量%、可塑剤5重量%よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た。該樹脂組成物の250℃、5000g荷重にて測定したメルトフローレートは1.0g/10分であった(以下、このポリアミド樹脂組成物を(A1−7)という)。
【0078】
含フッ素系重合体(薬液透過防止性樹脂)
(E−1)含フッ素系重合体の製造
内容積が174リットルの攪拌機付きオートクレーブを脱気し、イオン交換水の51kg、パーフルオロシクロブタン35kg、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(CF2=CFOCF3)〔PMVE〕10.4kgを仕込み、オートクレーブ内を35℃に保温した。次いで、テトラフルオロエチレン〔TFE〕を0.8MPaまで圧入した後、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.38kgを投入して重合を開始した。重合中圧力が一定になるようにTFE/PMVE=87/13のモル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。重合開始の20時間後、オートクレーブ内温を室温まで冷却するとともに重合層内の圧力を常圧までパージした。得られたスラリ状の含フッ素重合体を、水洗、乾燥することにより、含フッ素系重合体の粉末20kgが得られた。この粉末を短軸押出機を用いて、180〜285℃にて溶融し、含フッ素系重合体のペレットを作成し、その後、150℃にて加熱乾燥した(以下、この含フッ素系重合体を(E−1)という。)。
【0079】
含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/PMVEに基づく重合単位のモル比で87.3/12.7であり、含フッ素系重合体の重合開始剤に由来するカーボネート末端基の数は230個であった。また、融点は225℃であった。
【0080】
(E−1)含フッ素系重合体100重量部、及びカーボンブラック(電気化学(株)製)13重量部をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機(東芝機械(株)製、型式:TEM−48SS)に供給し、シリンダー温度240〜300℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、吐出したストランドを水冷し、ペレタイザーでストランドを切断し、水分除去のために120℃の乾燥機で10時間乾燥し、導電性含フッ素系重合体のペレットを得た(以下、この導電性含フッ素系重合体を(E−2)という。)。
【0081】
実施例1
ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)を用いて、射出成形法によりテストピースを成形し、クリープ特性、シャルピー衝撃強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
実施例2
実施例1において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)を(A1−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、クリープ特性、シャルピー衝撃強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0083】
実施例3
実施例1において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)を(A1−3)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、クリープ特性、シャルピー衝撃強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0084】
実施例4
実施例1において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)をポリアミド11樹脂組成物(A1−5)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、クリープ特性、シャルピー衝撃強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
実施例5
実施例1において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)をポリアミド12樹脂組成物(A1−6)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、クリープ特性、シャルピー衝撃強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0086】
比較例1
実施例1において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)をポリアミド12(A−1)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、クリープ特性、シャルピー衝撃強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0087】
比較例2
実施例1において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)をポリアミド11(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、クリープ特性、シャルピー衝撃強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0088】
比較例3
実施例1において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)をポリアミド11(A−3)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、クリープ特性、シャルピー衝撃強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0089】
比較例4
実施例1において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)を(A1−4)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、クリープ特性、シャルピー衝撃強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
実施例6
ストレートダイ及び、サイジングフォーマを備えたPlabor(プラスチック工学研究所(株)製)パイプ成形機にて、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)を供給し、押出温度220℃にて溶融させ、吐出された溶融樹脂を、賦型、冷却し、引き取りを行い、内径137.5mm、外径168mmのパイプを得た。偏肉が少なく、均一な肉厚分布を有していた。
【0091】
比較例5
実施例6において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−1)をポリアミド11(A−3)に変更した以外は、実施例6と同様の方法にて、内径137.5mm、外径168mmのパイプを得ようとしたが、偏肉が大きく、均一な肉厚分布を有していなかった。
【0092】
実施例7
上記に示す(A)ポリアミド12樹脂組成物(A1−7)、(E)含フッ素系重合体(E−1)、導電性含フッ素系重合体(E−2)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)3層ホース成形機にて、(A)を押出温度250℃、(E−1)を押出温度260℃、(E−2)を押出温度300℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミド12樹脂組成物(A1−7)からなる(a)層(最外層)、(E)含フッ素系重合体(E−1)からなる(e)層(中間層)、(E)導電性含フッ素系重合体(E−2)からなる(e’)層(最内層)としたときの、層構成が(a)/(e)/(e’)=0.75/0.15/0.10mmで内径6mm、外径8mmの積層ホースを得た。当該積層ホースの物性測定結果を表2に示す。また、当該積層ホースの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。さらに、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)3層ホース成形機にて、(A)を押出温度260℃、(E−1)を押出温度280℃、(E−2)を押出温度320℃にて別々に溶融させ、直管積層ホースを押し出し後、真空タイプコルゲートホース成形機に導入して、両端平滑部の外径32mm、長さ100mm、蛇腹部の外径36mm、長さ300mm、層構成は(a)/(e)/(e’)=0.90/0.20/0.10mm、総肉厚1.2mm、全長500mmの積層コルゲートホースを得た。蛇腹部であっても強固な層間接着力を有することを確認した。
【0093】
比較例6
実施例7において、ポリアミド12樹脂組成物(A1−7)をポリアミド11(A−3)に変更した以外は、実施例7と同様の方法にて、積層コルゲートホースを得ようとしたが、成形温度が非常に高いため、直管積層ホースの表面平滑性が悪く、さらに、各材料の溶融粘度の差異に起因すると思われる、蛇腹部の層間接着力不足が確認された。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)末端アミド基濃度が15(μeq/ポリマー1g)以上であるポリウンデカンアミド(ポリアミド11)及び/又はポリドデカンアミド(ポリアミド12)100重量部に対し、(B)下記一般式(I)で表されるN,N’−カルボニルビスラクタム0.05〜1.0重量部を配合してなり、JIS K−6920により測定した相対粘度(96%硫酸中、ポリマー濃度10g/dm、25℃)が2.3〜3.0であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【化1】


[式中、Rは、アルキル基であり、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記(B)N,N’−カルボニルビスラクタムが、カルボニルビスカプロラクタム又はカルボニルビスドデカラクタムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに(C)環状イミノエーテルを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項5】
チューブ、ホース、パイプ、ボトル、タンク、ダクトからなる群から選ばれる中空成形体であることを特徴とする請求項4に記載の成形体。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる層、及び薬液透過防止性樹脂からなる層を含むことを特徴とする積層中空成形体。


【公開番号】特開2006−282950(P2006−282950A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108170(P2005−108170)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】