説明

ポリアミド樹脂組成物

【課題】 本発明の課題は、100W/mK以上の熱伝導率をもつ炭素繊維を使用しなくとも、高い熱伝導性及び機械物性が両立でき、かつ生産性に優れたポリミド樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 本発明は、ポリアミド樹脂(A)100体積部に対し、鱗片状黒鉛(B)50体積部以上100体積部未満、炭素繊維(C)5体積部以上40体積部未満及び多価アルコール(D)0.1体積部以上5体積部以下を含むポリアミド樹脂組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱伝導性に優れたポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂に黒鉛を配合し、その量に応じて熱伝導性が向上するが、溶融混練にて、溶融しない黒鉛を熱可塑性樹脂に大量に配合させることは、溶融する熱可塑性樹脂の割合が少なくなる為、単軸や二軸の押出機で生産性を維持することは困難である。特許文献1には、押出機のヘッド部を開放した状態で混練することが開示されているが、得られたフレーク状のペレットの熱を効率に排除する為の水槽等の冷却装置の開示もなく、得られたペレット同士が固着することが懸念され、成形加工上好ましくない。
【0003】
また、熱可塑性樹脂に対し、黒鉛単体の配合では強度等の物性が不十分であることから、特許文献2には、熱可塑性樹脂に黒鉛と100W/mK以上の熱伝導率をもつ炭素繊維を特定量配合することにより、曲げ強度と熱伝導性が向上することが記載されているが、一般的に使用されている10W/mK程度のポリアクリロニトリル繊維を炭素化して得られるPAN系の炭素繊維での開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−1663号公報
【特許文献2】特開2003−49081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、100W/mK以上の熱伝導率をもつ炭素繊維を使用しなくとも、高い熱伝導性及び機械物性が両立でき、かつ生産性に優れたポリミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、以下に示す本発明によって解決される。
即ち、本発明は、ポリアミド樹脂(A)100体積部に対し、鱗片状黒鉛(B)50体積部以上100体積部未満、炭素繊維(C)5体積部以上40体積部以下及び多価アルコール(D)0.1体積部以上5体積部以下を含むポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、100W/mK以上の熱伝導率をもつ炭素繊維を使用しなくとも、熱伝導性が優れ、機械物性も優れたポリミド樹脂組成物の提供ができ、それを一般的な二軸混練機で安定してペレット化できる製造方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ポリアミド樹脂(A)100体積部に対し、鱗片状黒鉛(B)50体積部以上100体積部未満、炭素繊維(C)5体積部以上40体積部以下及び多価アルコール(D)0.1体積部以上5体積部以下を含むポリアミド樹脂組成物である。
尚、本発明で用いる体積部は、ポリアミド樹脂(A)、鱗片状黒鉛(B)、炭素繊維(C)、多価アルコール(D)の体積を常圧(1気圧)、25℃での質量と比重からそれぞれ求め、ポリアミド樹脂(A)を100体積部として、鱗片状黒鉛(B)、炭素繊維(C)、多価アルコール(D)の体積部をそれぞれ求める。
【0009】
[ポリアミド樹脂(A)]
本発明に用いられるポリアミド樹脂(A)としては、例えば、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカンラクタム(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)やこれらの原料モノマーを用いたポリアミド共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。このなかでも、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体(ポリアミド6とポリアミド66の共重合体、以下、共重合体は同様に記載)、ポリアミド6/69共重合体、ポリアミド6/610共重合体、ポリアミド6/611共重合体、ポリアミド6/612共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体、ポリアミド6/IPD6共重合体、ポリアミドMXD6であることが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/IPD6共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体であることがより好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体であることがさらに好ましく、成形加工性の観点から、ポリアミド6が特に好ましい。
【0010】
本発明のポリアミド樹脂(A)の末端基の種類及びその濃度や分子量分布に特別の制約は無く、分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、分子量調節剤として、酢酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸、メタキリレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン、モノアミン、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得られる。
【0011】
また、ポリアミド樹脂(A)の製造は、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等のポリアミド製造装置で製造することができる。また、その重合方法としては、たとえば、溶融重合、溶液重合や固相重合等がある。これらの重合方法は、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができ、単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0012】
JIS K−6920に準じて、96質量%の硫酸中、ポリアミド濃度1質量%、温度25℃の条件下にて測定したポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、1.5以上5.0以下であることが好ましく、1.7以上4.5以下であることがより好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度が前記の値未満であると、得られる成形品の機械的性質が低くなることがある。一方、前記の値を超えると、溶融時の粘度が高くなり、成形品の成形が困難となることがある。さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物の生産性や成形品の成形性の観点から、2.0以上3.0以下であることがさらに好ましい。
【0013】
また、JIS K−6920に規定する低分子量物の含有量の測定方法に準じて測定したポリアミド樹脂(A)の水抽出量は、特に制限はないが、成形加工時に発生するガス等の環境上の問題、製造設備への付着による生産性の低下や製品ペレットへの付着による外観不良等を引き起こす可能性があるため、5質量%以下であることが好ましい。
【0014】
ポリアミド樹脂(A)の粒形は、鱗片状黒鉛(B)や他の添加剤を均一に混合させる観点から、平均粒径1mm以下の粉末状が好ましい。尚、粉末状にする方法としては、特に制限はないが、粉末の生産性の観点から冷凍粉砕が好ましい。
【0015】
本発明のポリアミド樹脂(A)には、得られる成形品の特性を損なわない範囲内で、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、結晶核剤、離型剤、可塑剤、架橋剤、発泡剤、着色剤(顔料、染料等)等を添加することができ、その添加方法に特に制限がなく、従来から知られている各種の方法を採用することができる。例えば、ドライブレンドする方法、必要に応じて配合される他の成分と共に、溶融混練する方法等により添加することができる。溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して行うことができる。
【0016】
[鱗片状黒鉛(B)]
本発明で使用する鱗片状黒鉛(B)は、天然黒鉛を精錬し純度を上げ鱗片状に加工したものである。その平均粒径は、特に制限はないが、一般的に、1μm以上100μm以下であり、好ましくは5μm以上80μm以下である。平均粒径が1μm未満の場合は、嵩比重が大きくなり単位体積あたりの空気の容量が増し、溶融混練時のホッパーへの黒鉛の投入重量が減少し、投入回数が増加する為、生産効率上好ましくない。また、平均粒径が100μm以上の場合は、衝撃強度に代表される機械強度が低下する傾向がある。
【0017】
本発明で使用する鱗片状黒鉛(B)のアスペクト比(平均粒径/平均厚み)は、特に限定するものでは無いが、衝撃強度等の機械物性や熱伝導性の観点から、平均30以上300以下、好ましくは平均30以上200以下、より好ましくは平均30以上150以下である事が好ましい。
【0018】
鱗片状黒鉛(B)の配合量は、ポリアミド系樹脂(A)100体積部に対し、生産性及び熱伝導性及び機械物性の観点から、50体積部以上100体積部未満が好ましく、60体積部以上97体積部以下がより好ましく、70体積部以上93体積部以下がさらに好ましく、80体積部超過91体積部以下が特に好ましい。
【0019】
[炭素繊維(C)]
本発明で用いる炭素繊維(C)としては、ポリアクリロニトリル繊維を炭素化して得られるPAN系の炭素繊維である。
【0020】
炭素繊維(C)の繊維長は、用途により短繊維のもののほか、1000mmに及ぶ長繊維でもよいが、二軸混練機へのフィード性等の生産性の観点から、混練前の繊維長が0.1mm以上20mm以下であることが好ましく、1mm以上15mm以下であることがより好ましい。
【0021】
また、炭素繊維(C)の繊維径は、特に制限はされないが、小さい方が樹脂組成物や成形品にしたときの強度を発現しやすいが、小さすぎると混練機へのフィード時などに炭素繊維の解繊により混練時の生産効率が低下する場合もあり、混練機での生産性や強度等の機械物性の観点より、5μm以上15μm以下のものが好ましい。事前に樹脂に炭素繊維を高含有させたマスターバッチや、炭素繊維を顆粒化したものは、本発明のポリアミド樹脂組成物製造時に炭素繊維の解繊が発生しにくいため、微細炭素繊維を用いる場合、好ましい。
【0022】
本発明で使用する炭素繊維(C)の配合量は、ポリアミド系樹脂(A)100体積部に対し、生産性及び熱伝導性及び機械物性の観点から、5体積部以上40体積部未満が好ましく、6体積部以上30体積部以下がより好ましく、8体積部以上20体積部以下がさらに好ましい。
【0023】
[多価アルコール(D)]
本発明に用いる多価アルコールは、特に制限はないが、融点が150℃以上280℃以下であるものが好ましい。尚、融点とは、樹脂の融点、凝固点の測定に使用される示差走査熱量分析(DSC)で測定した時の吸熱ピーク(融点)の温度を意味する。融点が150℃以上280℃以下である多価アルコール(D)としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタンなどが挙げられ、これらは混合して用いることもできる。混練性や成形性の観点から、ペンタエリスルトールおよび/またはジペンタエリスリトールが好ましい。
【0024】
また、多価アルコールの配合量は、ポリアミド樹脂100体積部に対し、混練性や成形性の観点から、0.1体積部以上5体積部以下が好ましく、0.5体積部以上3体積部以下がより好ましい。
【0025】
[ポリアミド樹脂組成物]
ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド系樹脂(A)100体積部に対し、鱗片状黒鉛(B)が生産性及び熱伝導性及び機械物性の観点から、50体積部以上100体積部未満が好ましく、97体積部以下がより好ましく、70体積部以上93体積部以下がさらに好ましく、80体積部超過91体積部以下が特に好ましい。炭素繊維(C)は、ポリアミド系樹脂(A)100体積部に対し、生産性及び熱伝導性及び機械物性の観点から5体積部以上40体積部未満が好ましく、6体積部以上30体積部以下がより好ましく、8体積部以上20体積部以下がより好ましい。多価アルコール(D)は、ポリアミド系樹脂(A)100体積部に対し、混練性や成形性の観点から、0.1体積部以上5体積部以下であることが好ましく、0.5体積部以上3体積部以下がより好ましい。
【0026】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、溶融混練する方法であれば、特に制限がなく、従来から知られている各種の方法を採用することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して製造することができる。この中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物は、単軸押出機や二軸押出機を使用して好適に製造することができる。
【0027】
本発明のポリアミド系樹脂組成物を成形品に成形する方法としては、射出、押出、プレス、などの成形加工法が可能である。これらの成形法によって成形品、シートなどに加工することができる。
【0028】
本発明のポリアミド系樹脂組成物を用いた成形物は、従来ポリアミド樹脂組成物の
成形物が用いられてきた各種成形品、シート、フィルム等として自動車部材、コンピューター及び関連機器、光学機器部材、電気・電子機器、情報・通信機器、精密機器、土木・建築用品、医療用品、家庭用品など広範な用途に使用できる。とりわけ、自動車、電気・電子機器などの用途に有用である。
【実施例】
【0029】
以下において例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。各種評価方法と使用した原材料を次に示す。
【0030】
(使用原料)
[ポリアミド樹脂(A)]
・ポリアミド樹脂(A−1):ポリアミド6(宇部興産株式会社製P1011F、12メッシュのスクリーンメッシュを通過する平均粒径1mm以下の粉末、相対粘度2.22、水抽出量0.3質量%、比重1.14)
・ポリアミド樹脂(A−2):ポリアミド6(宇部興産株式会社製P1022、12メッシュのスクリーンメッシュを通過する平均粒径1mm以下の粉末、相対粘度3.36、水抽出量0.2質量%、比重1.14)
【0031】
[鱗片状黒鉛(B)]
・黒鉛(B−1):鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製SP−10、平均粒径20μm、嵩比重0.2g/cc、固定炭素分99質量%、比重2.23)
・黒鉛(B−2):球状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製LB−BG、平均粒径30μm、嵩比重0.6g/cc、固定炭素分99質量%、比重2.23)
【0032】
〔炭素繊維(C)〕
・炭素繊維(C−1):PAN系炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製TR06NEB3E、繊維径7μm、カット長10mm、比重1.8)
【0033】
[多価アルコール(D)]
・多価アルコール(D−1):ペンタエリスリトール(日本合成化学工業株式会社製、融点260℃、比重1.4)
【0034】
(評価方法)
(1)混練性
混練性は、日本製鋼株式会社製の混練機であるTEX44を用いて、設定温度290℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrの混練条件でポリアミド樹脂組成物を製造する際の良否を以下の○と×で判定した。
×:混練機から吐出されたストランドがもろく、ストランド切れをおこし、1時間以上連続してペレット化ができないもの。又は、混練負荷が大きく、混練機の許容電流負荷の上限である150Aを超えるもの。
○:連続して1時間以上、ペレット化でき、かつ混練負荷が150Aを超えないもの。
【0035】
(2)熱伝導性
熱伝導性は、JIS R−2616に準拠して測定した。(非定常熱線プローブ法)
熱伝導性の判定は以下の◎、○、△、×で行った。
×:4W/m・K未満のもの
△:4W/m以上7W/m・K未満のもの
○:7W/m以上10W/m・K未満のもの
◎:10W/m・K以上のもの
【0036】
(3)引張り強さ
引張り強さは、ASTM D−638に準拠して測定した。
判定は以下の○と×で行った。
○:引張強さが50MPa以上のもの
×:引張強さが50MPa未満のもの
【0037】
実施例1
ポリアミド樹脂(A−1)(宇部興産株式会社製ポリアミド6 P1011F)100体積部に対し、黒鉛(B−1)(日本黒鉛工業株式会社製鱗片状黒鉛 SP−10)90体積部、炭素繊維(C−1)(三菱レイヨン株式会社製PAN系炭素繊維 TR06NEB3E)10体積部、多価アルコール(D−1)(日本合成化学工業株式会社製ペンタエリスリトール)1体積部になるように、それぞれの比重から計算した重量分を円筒型混合機に投入し混合した。その混合物を日本製鋼株式会社製混練機であるTEX44に導入し、設定温度290℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrで溶融混練し、紐状に押出し、水槽で冷却後、ペレタイザーを用いて、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。混練性については、ポリアミド樹脂組成物の製造時に評価した。また、得られたポリアミド樹脂組成物のペレットをシリンダー温度290℃、金型温度80℃、冷却時間20秒の条件で射出成形により、熱伝導率用に150mm×150mm×3mmの試験片を、引張強さ用に厚み3.2mmのASTM1号ダンベル片を作成した。作成した試験片を用いて熱伝導性と引張強さを評価した。これらの結果を表1に示す。
【0038】
実施例2
実施例1において、黒鉛(B−1)(日本黒鉛工業株式会社製鱗片状黒鉛 SP−10)の配合量を80体積部、炭素繊維(C−1)(三菱レイヨン株式会社製PAN系カーボン繊維 TR06NEB3E)の配合量を10体積部に変えた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0039】
実施例3
実施例1において、黒鉛(B−1)(日本黒鉛工業株式会社製鱗片状黒鉛 SP−10)の配合量を80体積部、炭素繊維(C−1)(三菱レイヨン株式会社製PAN系炭素繊維 TR06NEB3E)の配合量を20体積部に変えた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0040】
実施例4
実施例1において、ポリアミド樹脂(A−1)(宇部興産株式会社製ポリアミド6 P1011F)をポリアミド樹脂(A−2):ポリアミド6(宇部興産株式会社製P1022)に変えた以外は比較例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0041】
比較例1
ポリアミド樹脂(A−1)(宇部興産株式会社製ポリアミド6 P1011F)100体積部に対し、黒鉛(B−1)(日本黒鉛工業株式会社製鱗片状黒鉛 SP−10)100体積部を円筒型混合機で混合した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0042】
比較例2
比較例1において、黒鉛(B−1)(日本黒鉛工業株式会社製鱗片状黒鉛 SP−10)の配合量を80体積部に変えた以外は比較例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0043】
比較例3
比較例1において、黒鉛(B−1)(日本黒鉛工業株式会社製鱗片状黒鉛 SP−10)を黒鉛(B−2)(日本黒鉛工業株式会社製球状黒鉛 LB−BG)に変えた他は比較例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0044】
比較例4
比較例1において、黒鉛(B−1)(日本黒鉛工業株式会社製鱗片状黒鉛 SP−10)80体積部を炭素繊維(C−1)(三菱レイヨン株式会社製PAN系炭素繊維 TR06NEB3E)100体積部に変えた以外は比較例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0045】
比較例5
実施例1において、多価アルコール(D−1)(日本合成化学工業株式会社製ペンタエリスリトール)を混合しない混合物に変えた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0046】
比較例6
実施例1において、黒鉛(B−1)(日本黒鉛工業株式会社製鱗片状黒鉛 SP−10)の配合量を60体積部、炭素繊維(C−1)(三菱レイヨン株式会社製PAN系炭素繊維 TR06NEB3E)の配合量を40体積部に変えた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0047】
比較例7
実施例1において、炭素繊維(B−1)(日本黒鉛工業株式会社製鱗片状黒鉛 SP−10)の配合量を46体積部、炭素繊維(C−1)(三菱レイヨン株式会社製PAN系炭素繊維 TR06NEB3E)の配合量を8体積部に変えた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0048】
比較例8
比較例1において、炭素繊維(B−1)(三菱レイヨン株式会社製PAN系炭素繊維 TR06NEB3E)の配合量を54体積部に変えた以外は比較例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
【0049】
表1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)100体積部に対し、鱗片状黒鉛(B)50体積部以上100体積部未満、炭素繊維(C)5体積部以上40体積部未満及び多価アルコール(D)0.1体積部以上5体積部以下を含むポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
多価アルコール(D)が、融点150℃〜280℃の多価アルコールである請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミド樹脂組成物が溶融混練により得られることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。

【公開番号】特開2012−72340(P2012−72340A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220337(P2010−220337)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】