説明

ポリイオンのための可逆電気化学センサー

本発明は、ポリイオンに対する可逆的電気化学センサーを目的とする。本センサーは、電気化学的に調節される、積極的イオン引き込みおよびイオン剥離を用いる。自発的ポリイオン引き込みは、イオン交換性を持たない、親油性の高い電解質を含む膜によって抑制される。ポリイオンの可逆的引き込みは、膜を横切って印加される、持続時間一定の定常電流パルスによって誘発される。その後、ポリイオンは、定常剥離電位を印加することによって除去される。センサーは優れた安定性および可逆性を持ち、全血サンプル中における、プロタミン滴定によるヘパリン濃度測定を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明はポリイオンセンサーに関する。本発明はさらに、ポリイオン、例えば、プロタミンおよびヘパリンの検出に用いられる膜、および、電気化学セルに膜を組み込むことによって上記検出を実行する方法にも関する。特に、本発明は、膜を通過させてポリイオンを強制的に移動させることによるポリイオンの検出法であって、ポリイオンの移動は可逆的であるために、膜の再使用が可能である検出法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
ここ十年、イオン選択性電極の分野では、ポリイオン性巨大分子の検出用としてプラスチック製高分子膜を備えた電位センサーが発達すると共に新しい方向が出現している。この分野における初期の研究では、親油性陰イオン交換体を含む高分子膜が提案された。非特許文献1を参照されたい。さらに、ヘパリン選択的高分子膜電極が、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0003】
ヘパリンは、平均荷電量−70および平均分子量15,000ダルトンを持つ極めて硫酸基に富むポリサッカリドである。ヘパリン化合物1単位の分子式は下記のように示される。
【0004】
【化1】

ヘパリンは、大きな外科処置および体外治療処置、例えば、開胸手術、バイパス手術、および透析における抗凝固剤として用いられる。しかしながら、医学処置におけるヘパリンの過度の使用は有害である可能性があり、ヘパリン投与の厳密な監視を必要とする。術中の過度の出血の危険を抑え、かつ、術後の合併症を低減させるためには、血中ヘパリン濃度のリアルタイム監視が特に有効である。全血中におけるヘパリン濃度の推定にもっとも一般的に用いられる方法は活性化凝固時間(ACT)の測定である。この方法は広く用いられているけれども、非特異的かつ間接的であり、その結果は、多数の変数によって影響される可能性がある。ACTとは対照的に、ヘパリン選択性電極は、全血または血漿サンプルにおけるヘパリン濃度を直接検出することが可能である。
【0005】
同様に、ポリ陽イオン性プロタミンを感受するための電極も提案されている。非特許文献2を参照されたい。ポリペプチドプロタミンは一般的にヘパリン活性の中和のために(すなわち、凝固を促進するために)使用される。下記に図示されるプロタミンは、平均荷電+20を持つポリ陽イオンであり、アルギニン残基に富む。
【0006】
【化2】

プロタミンの塩基性のグアニジニウム基は、ヘパリンのスルホン酸基と静電的に複合体を形成し、ヘパリンの抗凝固活性を無効にする。しかしながら、プロタミンの過度の使用も有害となる可能性がある。例えば、プロタミンの使用は、多くの場合、血液動態学的および血清学的副作用、例えば、高血圧、酸素消費低下、肺血小板壊死分離による血小板減少症、および白血球減少症をもたらす。従って、生物学的流体、例えば、血液におけるプロタミン濃度を正確に検出および測定することができるようにすることは有用である。
【0007】
プロタミンを高い信頼性をもって検出できるようになれば、その薬剤を精確に投与することが可能となり、前述した付随問題が回避される。さらに、イオン選択性電極によってプロタミンの検出が可能となると共に、プロタミンによってサンプルを滴定することによってサンプル中のヘパリン濃度を定量することも可能となる。これは、前述の、ヘパリン−プロタミン間の特異的相互作用によって可能となる。この作用も非特許文献3に記載されている。
【0008】
従来技術で公知のヘパリン特異的膜電極において観察される反応は、古典的な平衡法の観点からは説明することはできない。ヘパリンおよびプロタミンのイオンの荷電量が高いため、両方について電極機能に関するネルンスト方程式の勾配をそれぞれ求めると1mV/ディケードおよび2mV/ディケード未満が得られる筈である。後に、この異常な機構を説明するための擬似定常状態モデルも記載された。非特許文献4を参照されたい。電位差計ポリイオンセンサーの反応は本来動的である。ポリイオンは高分子膜に自発的に引き込まれ、同時に膜由来の親水イオンとの交換が起こるために、ポリイオンの強力なフラックスが、水溶液と膜相の両方に起こる。このため、ポリイオンが存在すると電位変化がもたらされる。
【0009】
ポリイオンの引き込みは、従来技術のヘパリン特異的膜電極を用いた場合非可逆的過程であるので、通常、強力な電位ドリフトが観察される。ポリイオン溶液と接触してから比較的短時間後に、センサーは反応をしなくなり始める。引き込まれたポリイオンについては、このセンサーを塩化ナトリウム濃縮液においてセンサーを再調整することによって、膜から取り除かなければならない。膜表面にポリイオンが集中してしまうことによって生じる反応消失に対処するために、従来技術ではこれまで複数の方法が提案されている。pHクロスセンシティブ電位測定ヘパリンセンサーが提案されている。この場合、センサーは、イオン交換体と、帯電したHイオノフォアを含む。この方法によれば、ヘパリン剥離は、サンプルのpHを調節することによって実現され得る。センサー反応消失に対処するための、もう一つの方法は、使い捨て(ディスポーザブル)センサーを使用することである。
【0010】
このように、選択的な引き込みの原理がわかっているにも拘わらず、これまで可逆性ポリイオンセンサーを設計することは不可能であった。上記のように、ポリイオンセンサーは、救命医療処置上決定的に重要な応用用途において極めて有用性が高いにも拘わらず、その使用は、センサーが急速に反応しなくなるという欠陥のために限定されていた。1回使いきりセンサーは出費の増加を招くし、また、センサーを取り出し、別の方法によってそれを再調整しなければならない場合は、明らかに手間がかかり、かつ、センサーの利便性を限定するという悪影響を及ぼす。従って、完全に可逆的で、しかも、その逆転が、速やかに、繰り返され、センサーを別の溶液に移す必要なく実行可能とされ得る、ポリイオン検出センサーが得られたならば、それは有用であろうと思われる。
【特許文献1】米国特許第5,236,570号
【特許文献2】米国特許第5,453,171号
【非特許文献1】Ma,S.C.,Yang,V.C.,およびMeyerhoff,M.E.,Anal.Chem.1992,64,694
【非特許文献2】Yun,J.H.,Meyerhoff,M.E.,およびYang,V.C.,Anal.Biochem.1995,224,212
【非特許文献3】Ramamurthyら,Clin.Chem.1998,606
【非特許文献4】Fu,B.ら,Anal.Chem.1994,66,2250
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、ポリイオンに対する可逆的電気化学センサーを提供する。本センサーは、ポリイオン分析対象の濃度を定量するための電位差計反応機構を含むが、イオン引き込みおよびイオン剥離の過程は電気化学的に調節される。自発性ポリイオン引き込みは、イオン交換特性を持たない、極めて親油度の高い電解質を含む膜を用いることによって抑制される。一定持続の、定常電流パルスを、本発明の膜電極を横切って印加すると、ポリイオンの可逆的引き込みが誘発される。その後、ポリイオンは、定常な剥離電位を印加することによって取り除く。センサーを効果的に再生する、このポリイオン剥離能力は、従来提案されたポリイオンセンサーの当面する問題を解決するものである。すなわち、従来のポリイオンセンサーの場合、ドリフトに陥りがちで、また、次の測定を実行する前に、濃縮塩溶液に長時間接触させてセンサー膜からポリイオンを剥ぎ取る必要があった。
【0012】
親油性電解質を含む膜は、電極を再調整または交換するために取り出すことを要することなく、サンプル溶液中のポリイオン濃度の連続測定を実行する電気化学的セルと一緒に使用することが可能である。従って、ポリイオン、例えば、ヘパリンの滴定が可能である。例えば、全血サンプルにおけるヘパリン濃度の定量が、プロタミン滴定を用いることによって可能である。
【0013】
本発明の一つの局面によれば、電気化学的セルで用いられるポリイオン選択性膜が提供される。この膜は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質を含む。親油性陽イオン成分および親油性陰イオン成分の内の一方は、ある特定のポリイオンに対して選択的であることが好ましい。本発明による検出にとって特に好ましいポリイオンは、ヘパリンおよびプロタミンである。本発明の膜によって検出されてもよい、その他のポリイオンとしては、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、フミン酸、カラゲナン、およびその他のポリイオン巨大分子が挙げられる。
【0014】
前述したように、親油性電解質の親油性陽イオン成分および親油性陰イオン成分の内の一方は、特定のポリイオンに対して選択的である。従って、本発明の一つの実施形態では、親油性電解質は、プロタミンに対して選択的な親油性陰イオン成分を含む。この実施形態では、その親油性電解質は、テトラドデシルアンモニウム 1,3−ジノニルナフタレン−4−スルホネート(TDDA−DNNS)であることが好ましい。同様に、別の実施形態では、親油性電解質は、ヘパリンに対して選択的な親油性陽イオン成分を含む。この実施形態では、その親油性電解質は、ドデシルグアニジニウム テトラキス(p−クロロフェニル)ボレート(DDG−TClPB)であることが好ましい。
【0015】
本発明の別の実施形態では、高分子フィルム形成材料、可塑剤、および親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質(親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分のどちらか一方がある特定のポリイオンに対して選択的である)を含む、ポリイオン選択膜が提供される。高分子フィルム形成材料はポリ塩化ビニルであり、可塑剤は2−ニトロフェノールオクチルエーテルであることが好ましい。
【0016】
本発明によるさらに別の実施形態では、電気化学的セルに使用されるポリイオン選択膜が提供される。この膜は、可塑剤、および、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを含む親油性電解質を含む混合物を、内部に分散させた、疎水性多孔性物質を含む。親油性陽イオン成分および親油性陰イオン成分の内の一方は、ある特定のポリイオンに対して選択的であることが好ましい。
【0017】
本発明の別の局面では、電気化学的セルに使用される、ポリイオン選択的膜電極が提供される。一つの実施形態では、このポリイオン選択的膜電極は、筐体、筐体内部に含まれる参照液、および、筐体内部に、参照液と接触するように作動可能に配置される電極を含む。さらに、本実施形態によれば、ポリイオン選択膜は、筐体の一端に配される。この膜は、筐体内において参照液と接触し、膜は、筐体外部のサンプル液に接触するよう作動可能に配置される。膜は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを含む親油性電解質を含み、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分の内の少なくとも一つはある特定のポリイオンに対して選択的である。
【0018】
本発明の別の実施形態では、サンプル液におけるポリイオン種の濃度の測定法が提供される。本発明のこの局面による方法は、膜を横切って、ポリイオン種を電気化学的調節下に可逆的に輸送することが可能である。従って、本法は、サンプル液、例えば、生物学的サンプル中のポリイオン種の濃度を連続的に測定するのに有用である。
【0019】
本法の一つの実施形態によれば、ポリイオン種を有するサンプル液が提供される。このサンプル液は、さらにバックグラウンド電解質を含むことが好ましい。溶液は、電気的に接続される、参照電極と膜電極とに接触させられる。膜電極の膜は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質から成り、その親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分の内の少なくとも一つはある特定のポリイオンに対して選択的である。サンプル液がこれらの電極に接触させられると、外部の電流パルスが、膜電極とサンプル液を含む回路に印加され、この印加電流は、サンプル液から、膜へ向かうポリイオン種の輸送を駆動する。外部電流パルスの持続は一定である。膜電極と参照電極の間の電位差計反応の測定は、電流パルスの間に実行することが可能である。次に、ポリイオン種の濃度は、電位差計反応の関数として計算することが可能である。
【0020】
本発明の本局面の別の実施形態では、膜電極および参照電極に対し外部の電極電位を印加し、そうすることによって膜からポリイオン種を駆出する。この実施形態では、この方法によって膜の可逆性、すなわち、ポリイオンの後戻り引き込みが可能となり、従って、膜は再調整されて以後の使用に回すことが可能となる。
【0021】
この局面における本発明のさらに別の実施形態では、サンプル液におけるポリイオン種の濃度の測定法が提供される。この方法は下記の工程を含む。すなわち、
a)ポリイオン種およびバックグラウンド電解質を含むサンプル液を準備すること;
b)電気化学セル装置であって、i)親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質であって、その親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分の内の少なくとも一つはある特定のポリイオンに対して選択的である親油性電解質を含む膜を含むポリイオン選択性膜電極、および、ii)該膜電極に電気的に接続される参照電極、iii)該膜電極に電気的に接続されるカウンター電極、iv)これらの電極に作動可能に接続される電気化学的装置、およびv)電気化学的装置と交信する制御装置を含む電気化学セル装置を準備すること;
c)サンプル液を、電気化学セル装置の諸電極と接触させること;
d)膜電極、カウンター電極、およびサンプル液を含む回路に対して一定持続の外部電流パルスを印加すること;
e)電流パルスの通流中に電位差計反応を測定すること;
f)電位差計反応の関数としてポリイオン種濃度を計算すること;および、
g)膜電極と参照電極に対して外部電極電位を印加し、膜からポリイオン種を駆出すること、を包含する工程である。好ましい実施形態では、工程d)から工程g)を繰り返して、ポリイオン種の濃度についてさらに1回以上の測定値を得る。
【0022】
本発明の別の局面では、電気化学的セル装置が提供される。この装置は、サンプル液中のポリイオンの濃度を測定するのに有用である。一つの実施形態による装置は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質であって、その親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分の内の少なくとも一つはある特定のポリイオンに対して選択的である親油性電解質を含む膜を含むポリイオン選択性膜電極;該膜電極に電気的に接続される参照電極;および、膜電極および参照電極に作動可能に接続される電気化学的装置を含む電気化学セル装置を含む。
【0023】
本発明の本局面による別の実施形態では、電気化学セル装置はさらに、膜電極に電気的に接続されるカウンター電極を含む。
【0024】
本発明の本局面によるさらに別の実施形態では、電気化学セル装置はさらに、電気化学装置と交信する制御装置を含む。ある好ましい実施形態では、制御装置は、コンピュータ制御器である。この制御器によって、電気化学セル装置の、部分的または完全自動化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
次に、本発明を以下にさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は、様々な態様において実現することが可能であるから、本明細書に記載されるものに限定されるものと考えてはならない。これらの実施形態は、むしろ、本開示が、適用される法的要求を満たすように提供されるものである。本明細書および特許請求項で用いられる、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかに別様と示されない限り、複数の参照対象を含む。
【0026】
本発明は、可逆性ポリイオンセンサーであって、測定の間のマス輸送制限ポリイオン引き込み過程、および、それに続く、継時的装置制御による、再調整のための逆引き込み過程を組み合わせた、可逆性ポリイオンセンサーを提供する。本発明は、親油性電解質を含むポリイオン選択膜を用いる。膜を横切るイオンフラックスを装置制御することによって、イオンを膜に引き込み、かつ、膜からイオンを剥ぎ落とすことが繰り返し可能となり、極めて再現性の高いセンサー反応が得られる。さらに、センサー膜を、速やかに、かつ測定手順の間に回復することが可能なので、液中のポリイオン濃度についてリアルタイム値を与えるための連続的な作動が可能になる。
【0027】
従来技術で公知の電位測定式ポリイオン選択性センサーは受動的センサーである。このようなセンサーは、親油性陽イオン交換分子(一般に、式RNaによって表される)と、電解質の水溶液を含む膜を有する。このようなセンサーにおけるサンプルと膜との間の相境界電位は、式(1)によって求められる。すなわち、
【0028】
【化3】

式中、aNaは、水溶液におけるナトリウムイオンの活量であり、[Na]は、膜相の相境界におけるナトリウムイオンの所謂遊離濃度であり、Eは、水から膜相へと移動するナトリウムの移動自由エネルギーを体現する。RおよびTという語は、それぞれ、気体定数および絶対温度である。サンプル中にプロタミン(または他のポリ陽イオン)が欠如している場合、イオン対形成を無視することによって、膜相におけるナトリウムイオンの濃度は、親油性陽イオン交換体の全体濃度Rによって決められ、これは式(2)に従って計算することが可能である。
【0029】
【化4】

従って、膜は、イオン交換体型ナトリウム電極のように振る舞い、ネルンスト型の反応勾配が期待される。
【0030】
プロタミンが水溶液中に存在する場合、プロタミン陽イオンの強力なフラックスが膜相の表面および内部の両方に起こり、二つの拡散停留層が形成される。水相の停留層における拡散が律速段階となるので、界面では擬似定常状態拡散が観察され得る。プロタミン陽イオンは、膜相境界からナトリウム陽イオンを押し退ける。このイオン交換過程によって、膜相におけるナトリウムイオンの濃度は低下し、式(1)で計算されるように観察される電位は増大する。このシステムにおける陽イオンの全体濃度は、式(3)によって記述される電気的中性条件を満たさなければならないことから、観察されたこの電位の増大は説明される。
【0031】
【化5】

式中、「PAZ+pbは、膜相境界において電荷zを持つプロタミンの濃度である。この濃度は、擬似定常状態フラックスに基づいて、式(4)によって計算される、プロタミンのバルク濃度の関数として定式化することが可能である。すなわち、
【0032】
【化6】

式中、Dorg、Daq、δorg、およびδaqは、それぞれ、膜相、水溶液におけるプロタミンの拡散係数、および得られた拡散層の厚さである。次に、式(4)を式(3)および式(1)に代入すると、低濃度におけるプロタミンの反応が得られる。得られた式(5)を下記に示す。
【0033】
【化7】

上の計算から求められるように、aNaが固定されている場合、膜の相境界電位はプロタミンの直接反応を示す。従って、プロタミンが高濃度の場合、ナトリウムイオンは、膜から定量的に置換され、プロタミンに対し、ネルンストに近い反応勾配が期待される。このような定量的置換は、プロタミンの希釈濃度の場合にも起こるが、長時間の暴露を必要とする(およそ24時間)。得られる反応勾配は小さすぎて分析の役には立たない。
【0034】
このような自発性イオン引き込みセンサーは、前述の問題点、例えば、長時間の使用時における信号ドリフト、多くのセンサーが単回使用に限定される等に悩まされる。従って、本発明までは、連続使用の可能なセンサーを再調整するための簡単で信頼度の高い方法は無かった。
【0035】
イオン引き込み過程において自発性イオン交換に依存する前述の受動的電位測定型センサーとは対照的に、本発明は、定常電流パルスを印加することによって電気化学的にイオン引き込みを誘発する。自発的引き込みを阻止するために、膜は、一般的に、式Rによって定義される極めて親油度の高い電解質を含み、内在性のイオン交換特性を持たない。このような状態であるから、膜総体におけるプロタミンまたはナトリウム陽イオンの初期濃度はゼロと考えられる。印加されたカソード電流iは、膜相の方向に陽イオンのネット(プラスマイナス差引きの)フラックスJを誘起する。結果の方程式を単純化するために、ナトリウムイオンとプロタミンイオンのみが膜相に引き込まれ得ると仮定することが可能である。この仮定に従えば、電流IとナトリウムフラックスJNa、およびプロタミンフラックスJPAの間の関係は、式(6)によって計算することが可能である。
【0036】
【化8】

式中、Aは膜の露出面積である。簡単のために直線的濃度勾配を仮定し、膜総体におけるナトリウム濃度はゼロであることを想起するならば、ナトリウムフラックスは、有機相境界を横切る濃度勾配と、下式(7)のような関係を持ち得る。すなわち、
【0037】
【化9】

プロタミンが無い場合には、式(6)および式(7)を式(1)に代入して、下に示す式(8)が得られる。すなわち、
【0038】
【化10】

一定の持続および大きさのカソード電流パルスを印加し、その後、膜総体をナトリウムイオン無しとするためにポテンシオスタット型剥落パルスを印加すると、ほぼネルンスト的電極勾配が得られる。サンプル液にプロタミンが存在する場合には、プロタミンが、この引き込み過程においてナトリウムイオンと効果的に競合する。式(6)は、式(7)との類似から下式(9)のように書き改めることが可能である。
【0039】
【化11】

ここで印加電流は、ポリ陽イオンの拡散のみによって維持され得るフラックスよりも常に大きいフラックスを強制的に誘発すると仮定すると、式(4)は依然として有効であり、式(9)に代入することが可能である。その結果、ナトリウムフラックスJNaは減少し、そのため式(1)に従って電位は増加する。式(4)を式(9)に代入し、[Napbについて解き、式(1)に代入すると、ポリイオン低濃度の場合の予想されたプロタミン反応が得られるが、それは、下記の式(10)によって与えられる。すなわち、
【0040】
【化12】

従来技術で知られるように、式(10)と、電位測定型センサーについて式(5)において示されるプロタミン反応の間には相違がある。重要なことは、膜相における拡散層の厚みはここでは定電流的に決定され、パルス間のポテンシオスタット型膜再生によって、パルスからパルスへ再現可能なδ値が確保されることである。本発明で提供される実施形態は、主に、最大電位範囲を与えるように選ばれた電流を用いるが、本発明はそのように限定されることを意図するものではない。従って、印加電流パルスの大きさを用いて、ポリイオン反応の測定範囲を調整することが可能である。イオン交換体ではなく、印加電流が、パルス負荷され、クロノポテンショメトリー的に制御される膜へのナトリウムイオンの引き込みを決めているのであるから、膜相における拡散係数は、プロタミン反応の範囲には影響を及ぼさない。これは、プロタミンによるナトリウムの競合的引き込みと、膜拡散係数との間に直接的な依存関係のあることが既知である、式(5)によって支配される従来の型センサーと好対照を為す。
【0041】
前記バックグラウンド理論が定まっているのであるから、本発明によって提供される利点は簡単に見て取れる。特に、本発明は、電気化学的セルに使用されるポリイオン選択膜を提供する。さらに、このポリイオン選択膜は、電気化学的セル電極の一体部分となることも可能である。ポリイオン選択膜と膜電極とは、サンプル液中におけるポリイオン種濃度測定のための可逆法に使用される。
【0042】
本発明のポリイオン選択膜は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質であって、その親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分の内の少なくとも一つはある特定のポリイオンに対して選択的である親油性電解質を含むことを特徴とする。親油性という用語は、一般に、脂肪に対して親和性を有し、高い脂質可溶性を有する種を記載するために用いられるものと理解される。親油性とは、ある特定の種の、水と、非混和の有機溶媒との間における分配平衡を記述する物理化学的特性である。親油性とはさらに、水相も共存する場合において、ある種の、脂質相に溶解する能力と記述することも可能である。この関係は、その種の、二つの相における濃度の平衡定数(すなわち、分配係数)と定義される。比較のための標準は、一般に、1−オクタノール/水の分配係数である。この分配係数は、下式(11)によって計算される。すなわち、
P=[分子]脂質/[分子]・・・・・(11)
式(11)によれば、高い親油度を示す分子は、水に対してよりも、脂質に対してより高い溶解傾向を示すことが期待される。
【0043】
親油度を求めるための一つの機能的テストは、テストされる対象化合物を、50%水と50%脂質(例えば、1−オクタノール)の混合物を含む容器に入れることである。対象化合物を容器に入れ、この化合物を両方の相に強制的に分布するように混ぜ合わせる力を印加することが可能である。次に、容器を静置して、化合物が、これらの相の間において濃度平衡に達するようにさせることが可能である。次に、各相における化合物の濃度を測定し、その濃度を式(11)に用いて親油度を求めることが可能である。
【0044】
ある種の親油度を求めるためにコンピュータソフトウェアを用いることも可能である。親油度を求めるためのコンピュータプログラムの一つの例は、http://146.107.217.178/lab/alogpsにおいてオンラインで入手可能なALOGPSプログラムである。親油度をめぐる原理も、Bakker,E.and Pretsch,E.,“Lipophilicity of tetraphenylborate derivatives as anionic sites in neutral carrier−based solvent polymeric membranes and the lifetime of corresponding ion−selective electrochemical and optical sensors”Analytical Chimica Acta,1995,309,7−17によって論じられている。なお、この文書全体を引用することにより本明細書に含める。
【0045】
一般に、100,000を超える計算値Pを持つ化合物は、高い親油性を持つと考えられ、従って本発明において有用である。しかしながら、さらに高いP値を持つ化合物を用いるならば、一般に、センサーの寿命の延長をもたらすことが期待される。従って、本発明に従って用いられる親油性化合物は、100,000を超えるP値を持つことが好ましく、より好ましくは1,000,000、もっとも好ましくは10,000,000を超えるものである。
【0046】
従来技術で公知のポリイオン選択膜は、親油性電解質および親水性カウンター陽イオンを含む(すなわち、RNa)。本発明によれば、親水性カウンターイオンは、親油性カウンターイオンによって置き換えられる。従って、本発明のポリイオン選択膜は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質(すなわち、R)を含む。2種類の親油性電解質を用いることによって、親油性カウンターイオンは、サンプル中の測定対象であるポリイオン種と自発性に交換することはもはや無くなり得る。親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分の内の一方はある特定のポリイオンに対して選択的であり、そのポリイオンの検出を促進するものである。検出が望まれる特定のポリイオンの非限定的例としては、プロタミン、ヘパリン、フミン酸、カラゲナン、デオキシリボ核酸、リボ核酸、およびその他のポリイオン性巨大分子が挙げられる。
【0047】
本発明の一つの実施形態では、親油性電解質の親油性陰イオン成分は、プロタミンに対して選択的である。この親油性陰イオン成分のプロタミン選択性は、その陰イオンの官能基に依存する。プロタミンは、塩基性のグアニジニウム基(すなわち、アルギニン残基)を含む。従って、プロタミンに対して選択的であるためには、親油性陰イオンは、プロタミンのグアニジニウム基とイオンペアを形成することが可能な官能基を含んでいなければならない。ある好ましい実施形態では、プロタミン選択性のために、カルボキシル基(COOH)、スルホン基(SOH)、または硫酸基(OSOH)を持つ親油性陰イオンが用いられる。特に好ましいある実施形態では、親油性電解質の親油性陰イオン成分は、1,3−ジノニルナフタレン−4−スルホネート、2,6−ジノニルナフタレン−4−スルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、および3,9−ジエチル−6−トリデシルスルフェートから成るグループから選ばれる。これらの化合物の化学式を下記に示す。
【0048】
【化13】

前述したように、公知の膜電解質材料の親水性カウンターイオンが、第2の親油性電解質によって置き換えられると、サンプルからポリイオン選択膜への、イオンの自発的引き込みが阻止される。一般に、親水性カウンターイオンはナトリウムである。なぜなら、ナトリウムは、サンプル液においてもっとも豊富に存在するカウンターイオンだからである。ナトリウムイオンは、化学的合成によって親油性カウンターイオンによって置換される。ポリイオン選択性陰イオンがプロタミンに対して選択的である場合、約4〜約16のアルキル側鎖長を持つ、親油性第4アンモニウム陽イオンが、好適なカウンターイオンとなることが期待される。
【0049】
ある好ましい実施形態では、プロタミン選択親油性陰イオンとペアを組む親水性カウンターイオンは、テトラドデシルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、およびドデシルトリメチルアンモニウムから成るグループから選択される陽イオンである。これら陽イオンの化学式を下記に示す。
【0050】
【化14】

親油性イオンに関する前記説明によれば、プロタミンに対して選択的な親油性陰イオンと、サンプル液との自発的イオン交換を阻止する親油性カウンター陽イオンとの組み合わせを選ぶことが可能である。従って、本発明に従って用いられるプロタミン選択親油性電解質は、前述のプロタミン選択性陰イオンとカウンターイオンとの可能な組み合わせの内から任意に選ばれるものであってよい。一つの好ましい実施形態によれば、溶液からプロタミンを選択的に引き込むために使用される親油性電解質は、テトラドデシルアンモニウム 1,3−ジノニルナフタレン−4−スルホネート(TDDA−DNNS)である。
【0051】
本発明による別の実施形態では、親油性電解質は、ヘパリンに対して選択的な親油性陽イオン成分を含む。この陽イオン成分のヘパリン選択性は、その化合物の官能基に依存する。ヘパリンはスルホン基およびカルボキシル基を含む。従って、ヘパリンに対して選択的であるためには、好適な陽イオンは、ヘパリンのスルホン基およびカルボキシル基とイオンペアを形成することが可能な、1個以上の基を含んでいなければならない。ヘパリン選択性を付与するのに特に有効なのはグアニジン基である。さらに、サンプルから、感受性を持つ有機相(例えば、本発明による膜)中に引き込まれるヘパリンは、隣接陽イオンの、長い脂肪族側鎖、または芳香環によってスタッキングされて安定化される。従って、高い親油度を持つ陽イオンは、約4〜約18の炭素原子の鎖長を持つ脂肪族鎖、および/または、適当な芳香族官能基に、1個以上のグアニジニウム基を結合させることによって調製される。ある好ましい実施形態では、親油性電解質の親油性陽イオン成分は、ドデシルグアニジニウム、およびN,N’−1,10−デカンジイルビス(グアニジニウム)から成るグループから選ばれる。これらの陽イオンの化学式を下記に示す。
【0052】
【化15】

この場合も、親水性カウンターイオンが、第2の親油性電解質によって置換されると、サンプルからのイオンの自発的引き込みは阻止される。一般に、試験液においてもっとも豊富な陰イオンは塩化物であるが、これは、化学的合成によって、親油性陰イオンによって置換される。本発明によるカウンターイオンとして有用な陰イオングループは、テトラフェニルボレート誘導体、例えば、下記に示す3種のホウ酸塩である。
【0053】
【化16】

別の好適な陰イオングループは、親油性(過ハロゲン化、またはアルキル化)ドデカカルボラン類である。ドデカカルボラン類は、完全に未置換の形では、化学式CB1112を持つ、二十面体カルボラン陰イオンを基本とする。ハロゲン化ドデカカルボラン、例えば、1−H−CB11Cl11、1−H−CB11Br11、および1−H−CB1111は、本発明に従って使用するのに特に有効であるが、これらについては、Peper S.et al.,“Ion−pairing Ability,Chemical Stability,and Selectivity Behavior of Halogenated Dodecacarborane Cation Exchanges in Neutral Carrier−Based Ion−Selective Electrodes,”Analytical Chemistry,(2003)75(9),2131−2139にさらに詳細に記載される。なお、この文書全体を引用することにより本明細書に含める。本発明において同様に有用なものはアルキル化ドデカカルボラン類である。この場合、前述のハロゲン基が各種アルキル基によって置換される。ある好ましい実施形態では、ヘパリン選択親油性陽イオンとペアを組む親水性カウンターイオンは、テトラキス(p−クロロフェニル)ボレート陰イオンである。
【0054】
親油性イオンに関する上記説明に従って、サンプル液との自発的イオン交換を抑制するように、ヘパリンに対して選択的な親油性陽イオンと、親油性カウンターイオンとの組み合わせを選ぶことが可能である。従って、本発明に従って使用されるヘパリン選択親油性電解質は、前述のヘパリン選択陽イオンとカウンター陰イオンの可能な組み合わせの内から任意に選択される。一つの好ましい実施形態によれば、溶液からヘパリンを選択的に引き込むのに使用される親油性電解質は、ドデシルグアニジニウム テトラキス(p−クロロフェニル)ボレート(DDG−TClPB)である。
【0055】
上に概説した原理を用いて、プロタミンまたはヘパリン以外の特定のポリイオンに対して選択的な、親油性陽イオンまたは親油性陰イオン成分を持つ親油性電解質を決めることが可能である。従って、このような親油性電解質を含む膜も、本発明によって包含される。
【0056】
本発明による膜の中に存在する親油性電解質の量は、その膜における塩の溶解度を限定することが可能な、膜の物理的特性に応じて変動してもよい。親油性電解質は、膜の全重量に対して約1〜約15重量パーセントの割合で存在することが好ましい。より好ましいのは、親油性電解質が、膜の全重量に対して約5〜約12パーセントの割合で存在することである。一つの好ましい実施形態では、親油性電解質は、膜の全重量に対して約10重量パーセントの割合で存在する。
【0057】
親油性電解質の他に、本発明による膜はさらに1種以上の可塑剤を含んでもよい。この可塑剤は、混合物の均一性を促進し、また、サンプル液から膜表面、および膜総体へ移動する、ポリイオンのフラックスを調節するのに役立つ。本発明の膜には様々の可塑剤の使用が可能であり、例えば、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、フタル酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、1−デカノール、5−フェニル−1−ペンタノール、テトラウンデシルベンズヒドロール3,3’,4,4’−テトラカルボキシレート、ベンジルエーテル、ジオクチルフェニルホスホネート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、および、2−ニトロフェニルオクチルエーテルから成るグループから選ばれる可塑剤が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。本発明によるある好ましい実施形態では、膜に使用される可塑剤は、2−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)である。
【0058】
本発明の膜は、親油性電解質および可塑剤の他に、膜の総体形成材料として機能する基質材料をさらに含むことが一般に好ましい。当業者には、透過膜を形成するのに使用される多数の基材が既知であるが、本発明は、このような基材を全て網羅することが意図される。
【0059】
一つの実施形態では、基質材料は、高分子フィルム形成材料である。本実施形態による高分子フィルム形成材料は、親油性電解質および可塑剤と化学的に適合するものであるならばいずれの高分子材料であってもよい。さらに、この高分子材料は、例えば、溶媒型流し込み法によってフィルムを形成可能となっていなければならない。本発明に従って有用な高分子材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、三酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、シリコーンゴム、および、これらのコポリマーおよびターポリマーが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。一つの実施形態では、高分子フィルム形成材料はポリ塩化ビニルである。
【0060】
本発明の一つの実施形態では、ポリイオン選択膜は、約1〜約15重量パーセントの量として親油性電解質を含む。本実施形態による膜はさらに、約28〜約49.5重量パーセントのポリマーフィルム形成材料、および、約42.5〜約66重量パーセントの可塑剤を含む(重量は全て、膜の総重量に対するものである)。高分子フィルム形成材料と可塑剤は、約1:1から約1:2の重量比で存在することが好ましい。
【0061】
ある好ましい実施形態では、ポリイオン選択膜は、約10重量パーセントのテトラドデシルアンモニウム1,3−ジノニルナフタレン−4−スルホネート、約30重量パーセントのポリ塩化ビニル、および、約60重量パーセントの2−ニトロフェニルオクチルエーテルを含む(重量は全て、膜の総重量に対するものである)。
【0062】
上記実施形態の内の一つによるポリイオン選択膜は、薄層フィルムに型流し込みするのに好適な有機溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)による、有機溶媒型流し込み法によって調製することが可能である。高分子フィルム形成材料、可塑剤、および親油性電解質は、溶媒において均一な溶液として調製される。次に、この溶液を型に流し込んで薄層フィルムとすることが可能である。一旦薄層フィルムとして調製されたならば、この膜は、特定の任意のサイズに裁断し、後にポリイオンセンサーにおいて使用される場合に備えることが可能である。薄層フィルムに形成するのではなく、この膜溶液を、基質、例えば、電極に塗布し、その電極上で乾燥させ、電極上に直接フィルムを形成することが可能である。
【0063】
本発明の一つの実施形態によれば、親油性陰イオン成分および親油性陽イオン成分の少なくとも一方を、高分子フィルム形成材料のバックグラウンド構造に対して共有的に結合させることが可能である。例えば、陰イオン成分を、ビニル基連結、またはその他の適当な化学反応形式によるコポリマー形成を通じてポリマー鎖に結合することも可能である。さらに、ポリマー構造に結合することが可能な親油性陽イオンまたは陰イオン成分は、ポリイオン選択成分、またはカウンターイオン成分であってもよい。
【0064】
別の実施形態では、基質材料は、微細な孔を持つ、疎水性多孔性物質である。この実施形態によれば、可塑剤と親油性電解質を合わせて混合物とし、次に、これを、疎水性多孔性基質に分散させる。この場合、可塑剤と親油性電解質の混合物は、基質の孔に捕捉されて固着する。次に、この、可塑剤と親油性電解質をその内部に分散させた疎水性多孔性基質を、ポリイオンセンサーとして使用できるように加工することが可能である。本発明の一つの実施形態による疎水性多孔性基質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル系コポリマー、ポリエーテルスルホン、および、これらのコポリマーおよびターポリマーから成るグループから選ぶことが可能である。一つの好ましい実施形態によれば、微細な孔を持つ疎水性多孔性基質はポリエチレンである。疎水性微細多孔基質として特に好ましいのは、Celgard社、Charlotte,ノースカロライナ州から市販されるCelgard(登録商標)である。Celgard(登録商標)膜は、平坦なシート状膜および中空線維膜として市販されるポリエチレン系膜である。
【0065】
本発明の一つの好ましい実施形態では、ポリイオン選択膜は、膜の総重量に対し、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分を含む親油性電解質を約1〜約15重量パーセント、可塑剤を約85〜約99重量パーセント含む混合物に対してあらかじめ接触させた疎水性微細多孔基質を含む。
【0066】
本発明はさらに、電子化学的セルにおいて有用なポリイオン選択膜電極を提供する。本発明の一つの実施形態では、ポリイオン選択膜電極は、筐体、筐体内部に含まれる参照液、および、筐体内部に、参照液と接触するように作動可能に配置される電極を含む。さらに、本実施形態によれば、ポリイオン選択膜は、筐体の一端に配される。この膜は、筐体内において参照液と接触し、膜は、筐体外部のサンプル液に接触するよう作動可能に配置される。前述のように、膜は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを含む親油性電解質を含み、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分の内の少なくとも一つはある特定のポリイオンに対して選択的である。
【0067】
任意の標準電極を、その電極が前述のようにポリイオン選択膜を組み込むことが可能である限り、本発明のこの実施形態に従って使用することが可能である。本発明の特に好ましい実施形態では、膜電極は、標準電極、例えば、フィリップス電極本体(IS−561、Glasblaeserei Moller、チューリッヒ、スイス)に組み込まれたポリイオン選択膜を含む。
【0068】
電極筐体において用いられる参照液は、当業者に有用なものとして一般的に知られているものならばいずれの電解液であってもよい。一つの好ましい実施形態では、この電解液は、塩化ナトリウム液、特に、1MのNaCl液である。さらに、電極そのものも、後述のような電位および電流値を持つ電気化学的セルにおいて使用が可能な電極であればいずれのタイプのものであってもよい。特に有用なのはAg/AgCl電極である。
【0069】
膜電極に組み込まれたポリイオン選択膜は、一つの好ましい実施形態によれば、プロタミンに対して選択的である。この実施形態によれば、ポリイオン選択膜に用いられる親油性電解質は、TDDA−DNNSである。
【0070】
膜電極と共に用いる場合、ポリイオン選択膜は、約10mm〜約100mmの表面積を有することが好ましい。より好ましいのは約20mm〜約50mmの表面積である。この表面積を実現するには、前述のように薄層フィルムを調製し、その薄層フィルムを、電極と連結されるように、例えば、コーク穿孔機によって所望のサイズに裁断する。さらに、このポリイオン選択膜は、約10μm〜約1000μm、より好ましくは約20μm〜約300μmの厚みを持つことが好ましい。
【0071】
本発明はさらに、電気化学的セル装置に向けられる。一つの実施形態では、電気化学的セル装置は、前述のポリイオン選択膜電極、その膜電極に電気的に接続される参照電極、および、膜電極および参照電極に作動可能に接続される電気化学機器を含む。
【0072】
本発明による電気化学的セル装置の一つの実施形態が図1に示される。この図は、サンプル中のポリイオン種の測定に有用な電気化学セル装置5を示す。図1は、サンプル液65を中にいれておく試験サンプル容器60に作動可能に設置されたポリイオン選択膜電極10、参照電極30、およびカウンター電極50を示す。膜電極10は、電極筐体15、参照液17、および、参照電極線21を含む。電極筐体15の一端には、本発明によるポリイオン選択膜25が配される。図1に示すように、参照電極30はダブルジャンクション電極である。ただし、その他のタイプの参照電極であっても本発明から逸脱することなく使用することが可能である。参照電極30は、外部筐体33、内部筐体36、外部筐体参照液39、内部筐体参照液41、および参照電極線43を含む。
【0073】
図1に見られるように、ポリイオン選択膜電極10、参照電極30、およびカウンター電極50は、それぞれ作動可能に電気化学機器75に接続される。電気化学機器75はさらに、制御デバイス90と交信する。電気化学的機器75は、ガルバノスタット−ポテンシオスタットであることが好ましい。この場合、電気化学機器は、電気化学的セルを通流する電流を、あらかじめ設定した一定の値に制御し、さらに、動作電極(例えば、ポリイオン選択膜電極10)と参照電極30の間の電位をあらかじめ設定した一定の値に制御することが可能である。後述の機能を実行する場合、電気化学機器75は、所望の電位を維持するために、動作電極(例えば、ポリイオン選択膜電極10)とカウンター電極50との間に、必要であればどのような電流でも送り出せることが可能である。一つの特に好ましい実施形態では、電気化学的機器75は、Pine Instruments(Grove City,ペンシルバニア州)から市販されているAFCBP1 Bipotentiostatのような二重定電位器である。
【0074】
図1に示すように、制御デバイス90はコンピュータであって、電流、電位、または電気化学的活性を望むように調節するよう電気化学機器75の機能を自動的に制御するように設計されたアルゴリスムを実行することが可能なコンピュータであることが好ましい。制御デバイス90はまた、電気化学機器75からデータを収集し、そのデータをユーザーに視覚的に提示すること、および/または、そのデータを保存することが可能であることが好ましい。もちろん、図1の電気化学的機器75および制御デバイス90は、電源(図示せず)に接続されているのは当然である。
【0075】
本発明はさらに、サンプル液中のポリイオン種の濃度の測定法にを目的とする。この方法は、一般的に、a)ポリイオン種およびバックグラウンド電解質を含むサンプル液を準備する工程;b)サンプル液を、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質を含む膜を持つポリイオン選択性膜電極と接触させる工程であって、その親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分の内の少なくとも一つはある特定のポリイオンに対して選択的であるものとする工程;c)サンプル液を参照電極と接触させる工程であって、ポリイオン選択性膜電極と参照電極は電気的に接続されるものとする工程;d)ポリイオン選択性膜電極およびサンプル液を含む回路に対して一定持続の外部電流パルスを印加し、それによってサンプル液から膜中に向けたポリイオン種の輸送を駆動する工程;e)電流パルスの通流中に、ポリイオン選択性膜電極と参照電極の間の電位差計反応を測定する工程;および、f)電位差計反応の関数としてポリイオン種濃度を計算する工程、を含む。
【0076】
一定持続の外部電流パルスは、約0.1秒〜約2秒の持続時間として印加されることが好ましい。一般に、印加電流パルスの全持続時間の間電位差計反応を測定する必要はない。むしろ、印加した外部電流パルスの持続時間の一部においてのみ電位差計反応を測定する方が好ましい。特に好ましい実施形態では、電位差計反応は、外部電流パルスの一定持続時間の最後の約100ミリ秒の間測定される。
【0077】
前記方法において測定される電位の値は、サンプル中に存在するポリイオンの種類に依存する。例えば、プロタミンのような陽イオンが存在する場合は、カソード電流(負)がセルに印加される。この電流が印加されると、測定される電位はさらに負になる。例えば、ヘパリンのような陰イオンが存在する場合、アノード電流(正)がセルに印加される。この電流が印加されると、測定される電位はさらに正になる。
【0078】
外部電流が印加される回路は、一般に、ポリイオン選択膜電極およびサンプル液を含むが、回路はまた、電気化学的セルの1個以上のさらに別の要素を含む。例えば、本発明による一つの実施形態では、回路はさらにカウンター電極を含む。この実施形態は、従来「3本電極」電気化学セルと呼ばれる電気化学システムを含む。さらに、また別の実施形態では、回路はさらに参照電極を含む。この実施形態は、通常「2本電極」電気化学セルと呼ばれる電気化学的システムを含む。通常、3本電極の方が、外部電流をこれらの電極に印加した場合に起こ得る参照電極の変性を回避するためには望ましい。
【0079】
前記方法において測定される電位の絶対値は、一般に、膜の、拡散層の漸増する厚みのために時間と共に減少することが予想される。前述したように、プロタミンのようなポリ陽イオンの存在について試験する場合、カソード電流が印加され、負電位が観察される。プロタミン(または別のポリ陽イオン)がサンプル中に存在する場合、測定される電位は、ポリ陽イオンが存在しない場合よりも有意により正となる。逆に、ポリ陰イオンの存在について試験する場合、アノード電流が印加され、観察される電位は正である。もしもヘパリン(または別のポリ陰イオン)がサンプル中に存在する場合、測定される電位は、ポリ陽イオンが存在しない場合よりも有意により負となる。いずれの場合も、より正の、またはより負の荷電に向かう移動は、サンプル液から膜へのポリイオン引き込みを示す。十分な時間が経過すると、膜におけるポリイオンの蓄積のために測定が難しくなり始める。
【0080】
本発明の好ましい実施形態では、膜は回復される。この実施形態では、前記方法はさらに、ポリイオン選択膜電極と参照電極に対して外部電極電位を印加し、それによって、膜からのポリイオン種の輸送を促すことを含む。一旦膜からポリイオンが効果的に剥離したならば、そのポリイオン選択膜電極は再び、サンプル液中のポリイオンの測定に使用することが可能である。外部電流パルス、それに続く外部電位パルスから構成されるパルス列を繰り返し印加することによって、ポリイオン種の可逆的検出が可能となる。
【0081】
膜からポリイオンを剥離するために印加される外部電極電位は、基準電位であることが好ましい。基準電位の値は、電気化学的セルの対称性に依存して変動してもよい。例えば、一つの実施形態では、膜電極と参照電極とは、同一の電極を使用し、サンプル液と組成が類似する内部参照液を有する。この好ましい実施形態では、基準電位はゼロである。これらの電極の対称性が比較的低く、様々の程度の対称性を示しても、これらは、別の実施形態として本発明の範囲の内にある。これら追加の実施形態では、基準電位は、ゼロVから変動していることが予想される。至適基準電位は、電気化学的機器(図1参照)の接続を外し、これを、高インピーダンス電圧計によって置換し、膜電極と参照電極との間のゼロ電流電位を測定することによって求めることが可能である。
【0082】
膜からポリイオンを効果的に剥離するためには、できれば外部電位は、外部電流パルスの一定持続時間よりも約10倍〜約20倍長い持続時間印加することが好ましい。
【0083】
本発明のさらに別の実施形態が、下記の実験的実施例に基づいてより明瞭に記載される。
【実施例】
【0084】
実験的手法
本発明が、下記の実施例に基づいてより詳細に説明される。ただし、この実施例は、本発明を具体的に説明するために記載されるのであって、本発明を限定するものと考えてはならない。別様に指示しない限り、全てのパーセント値は、ポリイオン選択膜の総重量に対するパーセントを指す。
【0085】
実施例1
プロタミン選択膜の調製
電気化学セルに使用される、本発明によるポリイオン選択膜を組み込んだセンサーの能力を試験した。ポリ陽イオン選択膜を、特に、ポリ陽イオンプロタミンに対して選択的となるように作製した。この膜は、2−ニトロフェニルオクチルエーテルとポリ塩化ビニルの2:1重量比混合物の中に10重量パーセントTDDA−DNNSを溶解して作製した。膜は、THFを溶媒として用いて溶媒型流し込み法によって調製した。混合物を乾燥させてフィルムとし、約200μm厚のプロタミン選択膜が調製された。この膜を直径6mmのコーク穴あけ器で裁断し、電極組み込み用の膜を調製した。
【0086】
実施例2
プロタミン選択膜電極の調製
実施例1で調製したプロタミン選択膜を電極に組み込んだ。電極は、フィリップス電極本体(IS−561)、0.1MのNaClから成る内部参照液、および、Ag/AgClの電極線を含むとした。プロタミン選択膜は、実験に使用する前に、内部参照液と同じ液に一晩馴らしておいた。
【0087】
1組10本の電極を上述のように調製し、実際の実験で使用する前に0.1MのNaCl液において定常性を試験した。試験によって、0から−10μAの範囲の任意の電流に対して、+/−7mVの電極間変動(標準偏差)が示された。
【0088】
この膜電極についてさらに可逆性についてテストした。この膜を、一方は0.1MのNaClを含み、他方は0.1MのNaClと10mg/Lプロタミンを含む二つの別々の液に繰り返しさらした。同じテストを、従来のイオン選択電極を用いて行った。テストの結果を図2に示す。この図において、本発明のプロタミン選択電極膜は曲線Aに示され、従来電極は曲線Bに示される。二つの曲線から見て取れるように、プロタミンが存在する場合により大きな電位が観察される。曲線Aでは、+/−1mVの変動を持ちながら再現可能であった。一方、曲線Bでは、僅か5サイクル以内に50mVを超える変動が見られた。
【0089】
実施例3
プロタミン添加および無添加のサンプルのクロノポテンショメトリー反応
プロタミン添加、および無添加の0.1MのNaClにおけるクロノポテンショグラムを作成した。図1に示したものと同様の電気化学セルを、実施例2に記載したプロタミン選択膜電極を用いてセットアップした。参照電極は、1MのLiOAc架橋電解質を持つ二重接合Ag/AgCl電極であった。カウンター電極は白金線であった。
【0090】
ボルタンメトリー実験を、PCI−MIO−16E4インターフェイスボード制御AFCBP1双方向定電位器(Pine Inst.,Grove City、ペンシルバニア州)、および、マッキントッシュコンピュータに載せたLabVIEW5.0ソフトウェア(National Instruments,オースチン、テキサス州)を用いて行った。実験前に、双方向定電位器の第1電極出力の動作(K1)を電流制御に切り替え、第2作業電極(K2)の出力をポテンシオスタット制御とした。電流パルスを印加するために、作業電極を、外部ソフトウェアによって制御されるアナログスイッチを介してK1出力に接続した。電流パルス間に基準電位が印加される際、作業電極はK2出力に接続された。
【0091】
クロノポテンショメトリー実験の間、−3μA(1秒持続)の、印加される各定電流パルスの後に、0V(10秒持続)の定電位パルスが続いた。センサー反応を表すサンプリング電位は、各電流パルスの最後の100msにおける平均値として得られた。全ての実験は、実験室の室温(21.5±0.5℃)で行われた。信頼区間は95%レベルで計算した。
【0092】
実験は二つのサンプルで行った。第1サンプルは0.1MのNaClしか含んでおらず、第2サンプルは、0.1MのNaClと、10mg/L濃度のプロタミン(PA)を含んでいた。−3μAのカソード電流を印加すると、膜へのプロタミンの引き込みが起こり、観察された電位は、プロタミン無添加サンプルに比べ、プロタミン添加サンプルにおいて有意に異なっていた。このクロノポテンショメトリー実験における電流−時間トレースおよび電位−時間トレースを図3に示す。
【0093】
実施例4
増大レベルのプロタミン添加および無添加サンプルのクロノポテンショメトリー反応
実施例2に示したものと同じ実験セットアップを用いて、プロタミン添加および無添加の0.1MのNaClにおける第2のクロノポテンショグラムを作成した。クロノポテンショメトリー実験の間、−2μA(1秒持続)の、印加される各定電流パルスの後に、0V(15秒持続)の定電位パルスが続いた。センサー反応を表すサンプリング電位は、各電流パルスの最後の100msにおける平均値として得られた。全ての実験は、実験室の室温(21.5±0.5℃)で行われた。信頼区間は95%レベルで計算した。
【0094】
実験はこの場合も二つのサンプルで行った。第1サンプルは0.1MのNaClしか含んでおらず、第2サンプルは、0.1MのNaClと、50mg/L濃度のプロタミンを含んでいた。−3μAのカソード電流を印加すると、膜へのプロタミンの引き込みが起こり、観察された電位は、プロタミン無添加サンプルに比べ、プロタミン添加サンプルにおいて有意に異なっていた。このクロノポテンショメトリー実験における電流−時間トレースおよび電位−時間トレースを図4に示す。
【0095】
ポテンシオスタット安静パルスの間、イオンの、膜からの後戻り拡散が観察される。この拡散は、サンプルにプロタミンが存在するとより遅くなる。これは、拡散の振る舞いにおいて、ナトリウムイオンとプロタミンイオンの間に差のあることを示す。15秒間の安静パルス全体に渡って電流を積分すると、計算された荷電量は、電流パルスの印加時に負荷された荷電量の90%に相当した。
【0096】
実施例5
本発明のプロタミン選択膜電極を、従来型ポリイオン選択膜と比較する較正曲線
プロタミンの連続的、可逆的検出は、図3および図4に示したようなパルス列を繰り返し印加し、各電流パルスの終端において電位読み取り値をサンプルすることによって可能となる。この場合、プロタミン較正曲線を得ることが可能である。
【0097】
0.1MのNaClにおけるプロタミン較正曲線の時間トレースを、実施例3および4で記載した方法を用いて得た。これらの曲線は、実施例2に記載したプロタミン選択膜電極と、従来型のイオン選択電極を用いて得たものである。二つの曲線の比較例を図5に示す。この図において、本発明のプロタミン選択膜電極を用いて得られた曲線は曲線Aに示され、従来型電極を用いて得られた曲線は曲線Bに示される。曲線Bに観察される強度の電位ドリフトは、膜側の拡散層の厚みを十分制御できないために生じたものである。トレースには、プロタミン濃度(mg/L)の対数が示されている。
【0098】
実施例6
攪拌のセンサー反応に及ぼす作用
従来型の電位差計ポリイオンセンサーの場合、観察される電位は、サンプルの攪拌速度に大きく影響されることが知られている。なぜなら、攪拌は、水溶液の攪拌層を変え、そのために膜に対するポリイオンのフラックスを変動させるからである。事実、最近の研究によって、測定範囲と、回転型電極セットアップにおける回転速度との間には明瞭な関係のあることが確認されている。定電流パルス実験において、攪拌が、本発明によるポリイオン選択膜電極の反応にどのように影響するかを調べるために、攪拌されない溶液と、100rpmの攪拌速度の溶液において電位を測定した。両者の比較を図6に示す。
【0099】
あるヘパリン反応膜では、サンプル攪拌の突然の停止は、約20mVの電位変化をもたらしたが、この電位差計測結果とは対照的に、本発明のパルス型定電流センサーの反応は、攪拌速度によって目立った影響を受けなかった。攪拌サンプルと未攪拌サンプルの間の電位差は、2−3mVを超えない。
【0100】
実施例7
pHのセンサー反応に及ぼす作用
プロタミンセンサーは、7.4という生理的pHにおいて全血中で動作することが意図されているものではあるが、pHのセンサー反応に及ぼす影響についても調べた。図7は、−2μAのカソード電流における観察電位を示す。下のトレースは、0.1MのNaCl、6.6mmolクエン酸、11mmolホウ酸、および、10mmolリン酸を含むブランク液で、1MのNaOHを用いてpHを調整した液である。上のトレースは、25mg/Lのプロタミンを含む同じ溶液をサンプルに加えた場合に観察された電位である。高濃度のプロタミンのために、二つの電位の差は、0.1MのNaClにおける最大センサー反応、すなわち電位ウィンドウと見なされてよいものである。
【0101】
実施例8
膜の選択性
膜の選択性を、pH7.4において、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩化物に関して、別々の較正曲線を記録することによって求めた。電位、対、塩濃度の対数の曲線を図8に示す。得られた選択性係数は、DNNS組み込みISE膜であって、その他のイオン搬送体を含まない膜について従来報告されていた値とよく一致した。0.001M〜0.1Mの濃度範囲における勾配は全て、ややネルンスト(70〜72mV)を上回っており、選択性係数をやや偏倚させていることが判明した。この勾配は、単純な理論モデルではまだ十分に考察されていない、ネルンスト−プランク方程式に基づく、膜境界部におけるイオン移動によるものと説明され得る。10−4付近の急激な電位跳躍は、膜表面における消失過程によるものである。図8には、0.1MのNaClにおけるプロタミン較正曲線も示してある。より高い電位読み取り値が得られるが、これは、この膜が、他の試験陽イオンのどれに対してよりもプロタミンに対して強い指向性を持つことを示している。
【0102】
実施例9
バックグラウンド電解質濃度の作用
バックグラウンド電解質濃度は、プロタミン反応曲線に影響を及ぼすことが予想される。なぜなら、反応原理は、ポリイオンとナトリウムイオンの間の競合的引き込みに基づくからである。例えば、ナトリウムのバックグラウンド濃度が低くなれば、プロタミン反応における電位範囲はより大きくなることが予想され(式10参照)、より低いプロタミン濃度の方にシフトする可能性がある(式10)。図9Aは、10mM、30mM、および100mMという3種の塩化ナトリウム濃度の存在下における実験的プロタミン較正曲線を示す。プロタミンの電位範囲は、NaCl濃度の増加と共に減少する。
【0103】
図9Bには、プロタミン反応に対するカリウムの僅かな影響が示される。この図では、10mMのKCl添加、および無添加の場合の、2種類の、0.1MのNaClにおけるプロタミン較正曲線が示される。プロタミンの低濃度で観察される反応の最大変位は、実際には5mVを超えない。
【0104】
実施例10
全血におけるプロタミンの較正曲線
図10は、全血におけるプロタミンの較正曲線、−2μAのカソード電流における較正曲線の対応する電位−時間トレースを示す。全血では、反応の電位範囲は約60mVであることが判明した。これは、全血サンプルにおいて実際にプロタミンを定量するに当たって容認できる大きさである。電位の標準偏差は、NaClバッファー液で観察される0.7mVに比べて1.5mVに増加した。この結果は、この電流パルスクロノポテンショメトリーセンサーによって、僅か0.5mg/Lのプロタミン濃度でも定量が可能であることを示す。
【0105】
実施例11
全血サンプルの滴定
電位差計センサーによる従来の研究と同様に、プロタミン滴定の終末点検出によって血液中のヘパリンを定量するには、実験プロトコールの使用が可能である。0.25から2μMの範囲(0.6から4.5kU/L)のヘパリンの各種モデル濃度を得られるよう、ヘパリン保存液(2×10−5M、1.5g/L)の少量のストック液を全血サンプルに加え、1g/Lプロタミンによって滴定した。得られた滴定曲線を図11Aに示す。
【0106】
各点は、1.5mVを超えない標準偏差を持つ10回の連続電位読み取り値の平均として計算した。再現性は、各滴定を4回繰り返し、サンプル間において開始と終わりの電位変動が最大7mVであり、滴定時の電位の全体変化は同じであることをもって評価した。各採集管は、7.2mgのEDTAのカリウム塩を含み、かつ、各管に採取される血液量は2から4mLまで変動していたので、変動の多くは、カリウム濃度の変動によるものと考えられる(図9B参照)。
【0107】
観察された終末点は、全血におけるヘパリン濃度の関数として図11Bにプロットしたところ、予想通り直線関係が認められた(相関係数0.995)。得られたこの較正曲線の回帰直線は、
ヘパリン=V(6.6±0.4)×10−3M/L−0.6μM
と確定された。
【0108】
実施例12
寿命およびセンサーの安定性
センサーの寿命と安定性は重要なパラメータである。特に、測定が生理的媒体の中で行われる場合はそうである。10mg/Lのプロタミンを含む0.1MのNaClのpH緩衝液において、1分間の測定間隔を置いて3時間、連続パルスによるクロノポテンショメトリー測定を行った場合、目に見える電位ドリフトは無く、最大電位変動は2mVであった。全血サンプルでは、同じセンサーで、図11Bに示す滴定曲線が得られたが、血液中の合計計測時間は2.5時間を超えた(各点について、10回の電位測定を集めた)。血液に暴露後、センサーは、0.1MのNaCl緩衝液に入れたが、基準電位は、初期値(各センサーについて±5mV)に戻るのが観察された。基準電位シフトが20mVを超えない時間と定義した場合のセンサーの寿命は、希釈していない全血サンプルに対する暴露時間の合計10時間を含む、少なくとも2週間であった。
【0109】
本発明の関係する当業者にとっては、前述の説明において教説を提示されるという恩恵を受けたわけであるから、本明細書に記載される本発明については、多くの修正案や、その他の実施形態が思い浮かんだことであろう。従って、本発明は、ここに開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、修正や、その他の実施形態も、付属の特許請求項の範囲内に含まれることが意図されることを理解しなければならない。本明細書には特定の用語が用いられているが、それらは、一般的、記述的な意味でのみ使用されているのであって、限定のために用いられているのではない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態による、ポリイオン選択膜電極を含む電気化学的セル装置の模式図である。
【図2】図2は、本発明によるポリイオン選択膜(A)、および、従来型のイオン選択電極(B)において、0.1MのNaClと、10mg/Lプロタミンを含む0.1MのNaClとの間で交互に繰り返した場合の電極再現性を示すチャートである。
【図3】図3は、本発明によるポリイオン選択膜電極を組み込んだ測定法によって、0.1MのNaCl溶液、および、0.1MのNaClと10mg/Lプロタミンの溶液について定電流パルス測定を行った際に見られる電流/時間トレースおよび電位/時間トレースを示すチャートである。
【図4】図4は、本発明によるポリイオン選択膜電極を組み込んだ測定法によって、0.1MのNaCl溶液、および、0.1MのNaClと50mg/Lプロタミンの溶液について定電流パルス測定を行った際に見られる電流/時間トレースおよび電位/時間トレースを示すチャートである。
【図5】図5は、本発明によるポリイオン選択膜電極(A)、および、従来型のイオン選択電極(B)を用いて行った定電流パルス測定で得られた、0.1MのNaClにおけるプロタミンの較正曲線を示すチャートである。
【図6】図6は、0.1MのNaClから成るブランク液、および、10mg/Lのプロタミンの存在下において−2μAのカソード電流を印加した場合に見られる、本発明によるポリイオン選択膜電極の反応に及ぼす攪拌の作用を示すチャートである。
【図7】図7は、本発明によるポリイオン選択膜電極に対するサンプルpHの影響を示すチャートであって、−2μAのカソード電流においてプロタミン無添加(下の曲線)、および25mg/Lのプロタミン添加(上の曲線)の場合を示す。
【図8】図8は、NaCl、KCl、MgCl、CaClの純粋溶液、および、0.1MのNaClのバックグラウンド電解液に溶解させたプロタミンにおける、本発明によるポリイオン選択膜電極の較正曲線を示すチャートである。
【図9】図9は、様々な濃度の支持電解質(0.01MのNaCl、0.03MのNaCl、および0.1MのNaCl)の存在下におけるプロタミンの較正曲線(A)、および、0.01MのKCl添加、および無添加の0.1MのNaClにおけるプロタミン較正曲線に対するKCl濃度の作用(B)を示す2枚のチャートである。
【図10】図10は、本発明によるポリイオン選択膜電極によって全血中のプロタミンを滴定した場合の、電位の振幅−時間挙動を示すチャートである。
【図11】図11は、0mM、0.25mM、0.5mM、1mM、および2mMのヘパリン濃度を含む全血サンプルを、本発明によるポリイオン選択膜電極を用いて、1g/Lのプロタミン液によって滴定した結果(A)、および、本発明によるポリイオン選択膜電極を用いて全血のヘパリン−プロタミン滴定を行って得られた、対応する較正曲線を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的セルで用いられるポリイオン選択性膜であって、該膜は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質を含み、該親油性陽イオン成分および親油性陰イオン成分の内の少なくとも一方は、特定のポリイオンに対して選択的である、ポリイオン選択膜。
【請求項2】
前記親油性陰イオン成分はプロタミンに対して選択的である、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記親油性陰イオン成分は、1,3−ジノニルナフタレン−4−スルホネート、2,6−ジノニルナフタレン−4−スルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、および3,9−ジエチル−6−トリデシルスルフェートから成る群から選ばれる、請求項2に記載の膜。
【請求項4】
前記親油性陽イオン成分は、テトラドデシルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、およびドデシルトリメチルアンモニウムから成る群から選ばれる、請求項2に記載の膜。
【請求項5】
前記親油性陽イオン成分はヘパリンに対して選択的である、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
前記親油性陽イオン成分は、ドデシルグアニジニウム、およびN,N’−1,10−デカンジイルビス(グアニジニウム)から成る群から選ばれる、請求項5に記載の膜。
【請求項7】
前記親油性陰イオン成分は、テトラフェニルボレート、テトラキス(p−クロロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、および過ハロゲン化ドデカカルボランから成る群から選ばれる、請求項5に記載の膜。
【請求項8】
前記親油性電解質は、テトラドデシルアンモニウム1,3−ジノニルナフタレン−4−スルホネート(TDDA−DNNS)、およびドデシルグアニジニウムテトラキス(p−クロロフェニル)ボレート(DDG−TClPB)から成る群から選ばれる、請求項1に記載の膜。
【請求項9】
前記親油性電解質は、前記膜の全重量に対して約1〜約15重量パーセントの割合で存在する、請求項1に記載の膜。
【請求項10】
さらに可塑剤を含む、請求項1に記載の膜。
【請求項11】
前記可塑剤は、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、フタル酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、1−デカノール、5−フェニル−1−ペンタノール、テトラウンデシルベンズヒドロール3,3’,4,4’−テトラカルボキシレート、ベンジルエーテル、ジオクチルフェニルホスホネート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、および、2−ニトロフェニルオクチルエーテルから成る群から選ばれる、請求項10に記載の膜。
【請求項12】
前記可塑剤は、2−ニトロフェニルオクチルエーテルである、請求項11に記載の膜。
【請求項13】
疎水性の微細な多孔性基質をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の膜。
【請求項14】
前記疎水性の微細な多孔性基質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル系コポリマー、ポリエーテルスルホン、および、これらのコポリマーおよびターポリマーから成る群から選ばれる、請求項13に記載の膜。
【請求項15】
さらに高分子フィルム形成材料を含む、請求項10に記載の膜。
【請求項16】
前記高分子フィルム形成材料は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、三酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、シリコーンゴム、および、これらのコポリマーから成る群から選ばれる、請求項15に記載の膜。
【請求項17】
前記高分子材料はポリ塩化ビニルである、請求項16に記載の膜。
【請求項18】
前記膜の総重量に対して、前記高分子材料は28〜49.5重量パーセント、前記可塑剤は42.5〜66重量パーセント、および、前記親油性電解質は1〜15重量パーセント存在する、請求項15に記載の膜。
【請求項19】
前記高分子材料および前記可塑剤は、1:1〜1:2の比率で存在する、請求項15に記載の膜。
【請求項20】
前記可塑剤および前記親油性電解質は、前記疎水性の微細な多孔基質に分散された混合物を含む、請求項13に記載の膜。
【請求項21】
前記混合物は、該混合物の総重量に対し、約1〜約15重量パーセントの前記親油性電解質を含む、請求項20に記載の膜。
【請求項22】
ポリイオン選択膜電極であって、
筐体;
該筐体内部に含まれる参照液;
該参照液と接触するように、該筐体内部に作動可能に配置される電極;および、
ポリイオン選択膜であって、該筐体の一端に配され、該筐体内の該参照液に接触し、該筐体の外部のサンプル液に接触するよう作動可能に配置され、該膜は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを含む親油性電解質を含み、該親油性陰イオン成分と親油性陽イオン成分の内の少なくとも一つがある特定のポリイオンに対して選択的である、ポリイオン選択膜、
を含む、ポリイオン選択膜電極。
【請求項23】
前記親油性電解質は、テトラドデシルアンモニウム1,3−ジノニルナフタレン−4−スルホネート(TDDA−DNNS)、およびドデシルグアニジニウムテトラキス(p−クロロフェニル)ボレート(DDG−TClPB)から成る群から選ばれる、請求項22に記載の膜電極。
【請求項24】
前記参照液は電解液である、請求項22に記載の膜電極。
【請求項25】
前記電解質は塩化ナトリウムである、請求項24に記載の膜電極。
【請求項26】
前記電極はAg/AgCl電極である、請求項22に記載の膜電極。
【請求項27】
前記膜は、約10mm〜約100mmの表面積を持つ、請求項22に記載の膜電極。
【請求項28】
前記膜は、約20mm〜約50mmの表面積を持つ、請求項27に記載の膜電極。
【請求項29】
前記膜は、約10μm〜約1000μmの平均厚さを持つ、請求項22に記載の膜電極。
【請求項30】
前記膜は、約20μm〜約300μmの平均厚さを持つ、請求項29に記載の膜電極。
【請求項31】
サンプル液中のポリイオン種の濃度を測定する方法であって、
ポリイオン種およびバックグラウンド電解質を含むサンプル液を準備する工程と、
該サンプル液を、ポリイオン選択膜電極に接触させる工程であって、該ポリイオン選択膜電極は、親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質を含む膜を有し、該親油性陰イオン成分と親油性陽イオン成分の内の少なくとも一つは該ポリイオン種に対して選択的である工程と、
該サンプルを参照電極と接触させる工程であって、該膜電極と該参照電極とは電気的に接続される工程と、
該膜電極および該サンプル液を含む回路に対して一定持続時間の外部電流パルスを印加して、該サンプル液から該膜への該ポリイオン種の輸送を促す工程と、
該電流パルスの通流中に、該膜電極と該参照電極との間の電位差反応を測定する工程と、
該電位差反応の関数として該ポリイオン種の濃度を計算する工程と、
を含む、方法。
【請求項32】
電位差反応は、外部電流パルスの一定持続時間全体よりも短い時間間隔において測定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
外部電流パルスの一定持続時間は、約0.1から約2秒である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
電位差反応は、外部電流パルスの一定持続時間の最後の約100ミリ秒の間測定される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
ポリイオン選択膜電極および参照電極に対して外部電極電位を印加して、これによって膜からのポリイオン種の輸送を促す工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
外部電流パルスを印加する前記工程、電位差反応を測定する前記工程、ポリイオン種の濃度を計算する前記工程、および外部電位を印加する前記工程を連続的に繰り返すことを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
外部電極電位は基準電位である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
基準電位は0Vである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
外部電極電位は、外部電流パルスの一定持続時間よりも約10倍から約20倍長い持続時間印加される、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
一定持続時間の外部電流パルスが印加される回路は、さらに参照電極を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
一定持続時間の外部電流パルスが印加される回路は、さらにカウンター電極を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
カウンター電極は白金線から構成される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
参照電極は、ダブルジャンクション電極を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
サンプル液は生物学的成分を含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項45】
サンプル液は血液である、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリイオンは、プロタミンおよびヘパリンから成る群から選ばれる、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
膜は、ポリ塩化ビニル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、およびテトラドデシルアンモニウム・1,3−ジノニルナフタレン−4−スルホネートから構成される、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
電気化学セル装置であって、
i)親油性陽イオン成分と親油性陰イオン成分とを有する親油性電解質であって、該親油性陰イオン成分と親油性陽イオン成分の内の少なくとも一つが特定のポリイオンに対して選択的である親油性電解質、を含む膜を含むポリイオン選択膜電極、
ii)該膜電極に電気的に接続される参照電極、および、
iii)該膜電極および該参照電極に作動可能に接続される電気化学的機器
を含む、電気化学セル装置。
【請求項49】
前記親油性電解質は、テトラドデシルアンモニウム1,3−ジノニルナフタレン−4−スルホネート(TDDA−DNNS)、およびドデシルグアニジニウムテトラキス(p−クロロフェニル)ボレート(DDG−TClPB)から成る群から選ばれる、請求項48に記載の電気化学セル装置。
【請求項50】
前記膜電極に電気的に接続されるカウンター電極をさらに含む、請求項48に記載の電気化学セル装置。
【請求項51】
前記カウンター電極は白金線を含む、請求項50に記載の電気化学セル装置。
【請求項52】
前記電気化学機器と交信する制御デバイスをさらに含む、請求項48に記載の電気化学セル装置。
【請求項53】
前記制御デバイスはコンピュータを含む、請求項52に記載の電気化学セル装置。
【請求項54】
前記電気化学機器はガルバノスタット−ポテンシオスタット機器である、請求項48に記載の電気化学セル装置。
【請求項55】
前記電気化学機器はバイポテンショスタット機器である、請求項48に記載の電気化学セル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−528990(P2007−528990A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518878(P2006−518878)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/021770
【国際公開番号】WO2005/008232
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マッキントッシュ
【出願人】(506009109)オーバーン ユニバーシティ (5)