説明

ポリイソシアネート組成物

【課題】本発明は、特定のポリイソシアネートを使用することにより、2液型ポリウレタン被覆組成物用硬化剤に関し、優れた貯蔵安定性の硬化剤を提供することを目的とする。
【解決手段】脂肪族及び/または脂肪族のジイソシアネートから得られるポリイソシアネート組成物であって、イソシアヌレート化反応の前または後でビウレット化反応を行い、未反応のジイソシアネートを実質的に除去したビウレット構造とイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート組成物であって、ビウレット構造のモル(A)とイソシアヌレート構造のモル(B)が(A)/(B)=1/99〜60/40であることを特徴とするポリイソシアネート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料、接着剤、粘着剤などに使用される貯蔵安定性、特に水分に対する安定性に優れたポリイソシアネート組成物及びそれを用いた2液型ポリウレタン被覆組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族及び/または脂環族のジイソシアネートから得られるポリイソシアネートは、耐候性、耐薬品性、付着性に優れるため自動車補修用、橋梁、建物などの構築物用、プラスチック用、木工用など広範囲のウレタン塗料や接着剤、粘着剤用硬化剤として使用されている。その中でも特にイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートは、イソシアヌレート構造の化学的安定性が高いことから、耐候性や耐久性に特に優れていることが知られている。
このように、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートはきわめて優れた特性を有するものであるところから、一層幅広い産業上の用途に利用されていくことが望まれている。しかしながら、このイソシアヌレート構造を有するポリイソシアヌレートを塗料として使用するため有機溶剤で希釈する際、また、希釈後貯蔵する際、有機溶剤由来の水分等が原因になり、白濁、固化などの現象が起こることがあった。
【0003】
耐水分安定性をあげるために様々な方法が提案されている。例えば、非特許文献1にはイミノオキサジアジンジオンを添加することが耐水分安定性に良好であることが示されているが、イミノオキサジアジンジオンを合成するためには高価なフッ素を含む触媒を調整する必要があり、また、触媒調整も多段階必要なので経済的に不利になり、反応の制御も困難である。さらに、熱安定性も低い。
オルト蟻酸エステルや単官能モノイソシアネートを添加して水分と優先的に反応させて耐水分安定性をあげる方法もあるが、水と反応した付加物がポリイソシアネート中に残り最終的な物性の低下をまねく。
【非特許文献1】Congr FATIPEC、Vol.24th、D PAGE.D.131−D.145、1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特定のポリイソシアネートを使用することにより、優れた貯蔵安定性、特に水分に対する安定性の優れたポリイソシアネート組成物及びそれを用いた2液型ポリウレタン被覆組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討の結果、特定のポリイソシアネート組成物を用いることにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1)脂肪族及び/または脂環族のジイソシアネートから得られるポリイソシアネート組成物であって、イソシアヌレート化反応の前または後でビウレット化反応を行った後、未反応のジイソシアネートを実質的に除去した、ビウレット構造とイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート組成物であって、ビウレット結合のモル数(A)とイソシアヌレート結合のモル数(B)が(A)/(B)=1/99〜60/40であることを特徴とするポリイソシアネート組成物。
2)ジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートである1)記載のポリイソシアネート組成物。
3)1)または2)記載のポリイソシアネート組成物と多価アルコール化合物とからなる2液型ポリウレタン被覆組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、特定のポリイソシアネートを使用することにより、優れた貯蔵安定性、特に水分に対する安定性の優れたポリイソシアネート組成物及びそれを用いた2液型ポリウレタン被覆組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明に用いるジイソシアネートは、脂肪族及び/または脂環族である。特に耐候性などが要求される分野でなければ、一部芳香族ジイソシアネートを用いることもできる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4〜30のものが、脂環族ジイソシアネートとしては炭素数8〜30のものが好ましく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)−シクロヘキサン、4,4‘−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。なかでも、耐候性、工業的入手の容易さから、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましく、単独で使用しても、併用しても良い。
【0008】
また、これらジイソシアネートモノマーと1〜3官能性のアルコールとの予備ウレタン化反応物も原料として好適に使用されうる。ここに用いられる1〜3官能性のアルコールの例としては、例えば、メタノール、エタノール、各種ブタノール、2−エチル−ヘキサノール、エチレングリコール、1,2−または1,3−プロピレングリコール、1,3−または1,4−または2,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステル、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール等の低分子量化合物および分子量約200〜10,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。アルコールとジイソシアネートモノマー予備反応時のNCO/OH当量比は5〜100、好ましくは10〜50、さらに好ましくは10〜30程度の値から目的に応じ選択される。
【0009】
合成を行う際の反応温度は通常、イソシアヌレート化反応は40〜120℃、ビウレット化反応は60〜180℃の範囲から選ばれる。反応の進行は反応液のイソシアネート含量(NCO%)測定や屈折率測定等で追跡することができる。
本発明のポリイソシアネート組成物はイソシアヌレート化反応の前または後にビウレット化反応を行った後、未反応のジイソシアネートを実質的に除去したビウレット構造とイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート組成物であって、ビウレット結合のモル数(A)とイソシアヌレート結合のモル数(B)が(A)/(B)=1/99〜60/40であることが好ましい。(A)/(B)=3/97〜50/50がさらに好ましい。最も好ましくは(A)/(B)=3/97〜30/70である。(A)/(B)=1/99〜60/40であると、優れた貯蔵安定性、特に水分に対する安定性の優れたポリイソシアネート組成物を得ることができるので好ましい。
【0010】
本発明において、未反応のジイソシアネートを実質的に除去したとは反応生成物であるポリイソシアネート組成物中の未反応のジイソシアネート含有量が1質量%以下の事を示す。
本発明のポリイソシアネートとは1分子内にビウレット構造またはイソシアヌレート構造の一方のみを有するもの及び/または1分子内にビウレット構造とイソシアヌレート構造の両方を有するものを指す。
【0011】
イソシアヌレート化反応は、熱安定性の低い環状2量体であるウレトジオン構造のものを併発すると一般に言われている。そのため反応を低転化率で停止した場合、製品中のウレトジオン濃度が高くなりやすい。従って、製品中のウレトジオン含有量を抑えるため、触媒としてはウレトジオン残留の少ないものを選択することが好ましい。かかる条件に好適な触媒としては、a)例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩、b)例えば、トリヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩、c)例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、及びd)上記アルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩、e)例えばヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物等が挙げられる。
【0012】
触媒濃度は、使用する触媒および反応濃度により異なるが、通常、ジイソシアネートに対して10〜1000ppmの範囲から選択される。また、イソシアヌレート化反応が進みすぎると、生成物の粘度が上昇し、イソシアヌレート環状3量体含有量が低下して目的とする物性の製品が得られないため、反応の転化率はおおむね25%以下に止めるのが好ましい。しかしながら、イソシアヌレート化反応は初期の反応速度が非常に速いため、反応の進行を初期で停止することは困難が伴い、反応条件、特に触媒の添加量及び添加方法に関しては、慎重に選択することが好ましい。例えば、触媒の一定時間ごとの分割添加方法等が好適なものとして推奨される。
【0013】
反応が目的の転化率に達したならば、例えば硫酸、リン酸、リン酸エステル類等の触媒失活剤を添加し、イソシアヌレート化反応を停止する。必要であれば、失活触媒を除去した後、余剰のジイソシアネート及び溶剤を除去して製品を得る。このジイソシアネートおよび溶剤の除去は、例えば薄膜蒸留や溶剤抽出法により行われる。
【0014】
次にビウレット化反応について述べる。ビウレット化反応は、水、tert−アルコール好ましくはtert−ブタノールを用いる。反応時に有機溶媒として、ジイソシアネートと水、もしくはtert−アルコールをそれぞれ溶解し、反応条件下で均一相になし得るもので、かつ、均一相になし得るのに必要にして十分な量を添加してもよい。水を例にとれば、水の溶解度の低いものはそれだけ多量に添加しなければならないので、反応終了後溶媒を分離し、回収する際に不経済となり好ましくない。水の溶解度が0.5%以上が好ましい。例えば、一般的にはリン酸トリアルキルエステル類、アルキレングリコール類、エーテル類、エステル類などの溶剤が挙げられる。一方、ベンゼン、トルエン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどは好ましくない。イソシアネートは一般に極めて反応性に富む官能基であるので多くのものと反応する。従って、親水性であってもイソシアネートと反応するものは好ましくない。例えば、アミン、アルコール、カルボン酸類、リン酸類、ジケトン類は好ましくない。
【0015】
また、イソシアネートと共存することにより着色が促進されうるものも好ましくなく、できるだけ化学的に安定なことが好ましい。
本発明のポリイソシアネート組成物を得るためには、イソシアヌレート化反応の前または後にビウレット化反応を行う。イソシアヌレート化反応の前にビウレット化反応を行うとは、上述のビウレット化反応を行った後、続けてイソシアヌレート化反応を行うことである。また、イソシアヌレート化反応の後にビウレット化反応を行うとは、上述のイソシアヌレート化反応を行った後に、続けてビウレット化反応を行うことである。
本発明の方法によりポリイソシアネート組成物を得ることによって、同一分子内にイソシアヌレート結合とビウレット結合を持つものが得られ、単独に反応させて得られたポリイソシアネート組成物を単純に混合するよりも、耐久性、耐候性が優れる。
【0016】
本発明で言う2液型ポリウレタン被覆組成物とは、本発明のポリイソシアネート組成物と水酸基をもったプレポリマーを混合して使用する被覆組成物のことである。水酸基をもったプレポリマーとしては、当該分野で公知のポリオール、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどがあり単独で使用しても、2種以上を混合しても良い。
ポリウレタン被覆用組成物として、当該分野で公知の溶剤、顔料、着色剤、分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などの添加剤を添加しても支障がない。
【実施例】
【0017】
次に、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。実施例中の部、%は各々質量部、質量%である。
〔粘度測定法〕JIS K5600−2−3
〔イソシアネート含有量測定法〕 ASTM D2572
〔ガスクロマトグラフィー測定方法〕
使用機器 (株)島津製作所製 GC−8A
カラム 信和化工(株)製 Silicone OV−17
検出方法 FID
測定条件 インジェクション/デテクター温度 160℃
カラム温度 120℃一定
〔赤外線吸収スペクトラム測定方法〕
使用機器 日本分光(株)製 FT/IR−600
〔13C−NMR測定方法〕
使用機器 日本電子(株)製 JNM−LA400
【0018】
[実施例1]
冷却管、窒素導入管と温度計、滴下漏斗、攪拌機を備えた2Lの4ツ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートを610部仕込み、窒素気流下、60℃に昇温した後、テトラメチルアンモニウムカプリエートの45.7%溶液0.4部を2時間かけて4回に分けて添加した。さらに60℃で1時間反応させた後、85%りん酸を0.9部加え90℃に昇温して1時間反応させた。ついで水0.48部を溶解させたトリメチルリン酸210部を加え、90℃で1時間、160℃で1時間反応させた。室温にまで冷却し、濾過を行い、流下式薄膜蒸留器で2回操作をして未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去した。この流下式薄膜蒸留の条件は、1回目は0.5Torr/150℃、2回目0.1Torr/160℃で行い、ポリイソシアネート1を得た。
【0019】
得られたポリイソシアネート1は、黄色、透明の液体であり、25℃での粘度が1640mPa.s、イソシアネート含量(以下、NCO%と略)22.0%、残存ヘキサメチレンジイソシアネートは0.2%であった。
なお、粘度はJIS K5600−2−3、NCO%はASTM D2572に規定される方法で行った。残存ヘキサメチレンジイソシアネート量はガスクロマトグラフィー法でFID検出器を用いて行った。得られたポリイソシアネートの赤外線吸収スペクトラムを測定したところ、1770cm−1にビウレットの特性吸収、1690cm−1にイソシアヌレートの特性吸収が観察された。また、13C−NMRの測定から、ビウレット/イソシアヌレートモル比は11/89であった。
【0020】
[実施例2]
水0.6部を溶解させたトリメチルリン酸を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリイソシアネート2を得た。
得られたポリイソシアネート2は、黄色、透明の液体であり、25℃での粘度が1800mPa.s、イソシアネート含量(以下、NCO%と略)21.2%、残存ヘキサメチレンジイソシアネートは0.2%であった。IR測定を実施したところ、1690cm−1にイソシアヌレート、1770cm−1にビウレットの吸収を確認した。また、13C−NMRの測定から、ビウレット/イソシアヌレートモル比は16/84であった。
【0021】
[実施例3]
水0.38部を溶解させたトリメチルリン酸を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリイソシアネート3を得た。
得られたポリイソシアネート3は、黄色、透明の液体であり、25℃での粘度が1550mPa.s、イソシアネート含量(以下、NCO%と略)22.5%、残存ヘキサメチレンジイソシアネートは0.2%であった。IR測定を実施したところ、1690cm−1にイソシアヌレート、1770cm−1にビウレットの吸収を確認した。また、13C−NMRの測定から、ビウレット/イソシアヌレートモル比は8/92であった。
【0022】
[実施例4]
冷却管、窒素導入管と温度計、滴下漏斗、攪拌機を備えた2Lの4ツ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートを610部仕込み、窒素気流下、60℃に昇温した後、テトラメチルアンモニウムカプリエートの45.7%溶液0.4部を2時間かけて4回に分けて添加した。さらに60℃で1時間反応させた後、85%りん酸を0.9部加え90℃に昇温して1時間反応させた。ついでtert−ブタノールを2.0部加え、180℃ に昇温した。180℃で2時間反応させた後、室温まで冷却し濾過を行い、流下式薄膜蒸留器で2回操作をして未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去した。この流下式薄膜蒸留の条件は、1回目は0.5Torr/150℃、2回目0.1Torr/160℃で行い、ポリイソシアネート4を得た。
【0023】
得られたポリイソシアネート1は、黄色、透明の液体であり、25℃での粘度が1640mPa.s、イソシアネート含量(以下、NCO%と略)22.0%、残存ヘキサメチレンジイソシアネートは0.2%であった。IR測定を実施したところ、1690cm−1にイソシアヌレート、1770cm−1にビウレットの吸収を確認した。また、13C−NMRの測定から、ビウレット/イソシアヌレートモル比は10/90であった。
【0024】
[比較例1]
攪拌機、温度計、還流冷却管を取り付けた四つ口フラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを1000部、キシレンを300部仕込み、60℃、攪拌下、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート0.3部を4分割して30分ごとに加えた。
60℃で反応を続け、4時間後、反応液のNCO%滴定および屈折率測定により、ヘキサメチレンジイソシアネートの転化率が21%になった時点でリン酸0.2部を添加して反応を停止した。その後、さらに90℃で1時間加熱を続け、次いで、常温に冷却し、反応液の濾過を行なった後、薄膜蒸発器を用いて、1回目0.8Torr/160℃、2回目0.1Torr/160℃の条件下で、溶媒及び未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去、回収しポリイソシアネート5を得た。
得られたポリイソシアネート5は、微黄色、透明の液体で、25℃における粘度は1300mPa.s、NCO%は23.5%、残存ヘキサメチレンジイソシアネートは0.2%であった。
【0025】
[実施例5]
実施例1で得たポリイソシアネート1を40部、水分を0.2部含む酢酸n−ブチル30部とキシレン30部の混合溶媒を混合させた。温度20℃、に保った部屋に放置し、目視により外観が白濁するまでの日数を観察した。結果を表1に示す。
【0026】
[実施例6〜7]
表1で示した水を含む溶剤を使用した以外は、実施例4と同様にして目視による外観試験を実施した。結果を表1に示す。
【0027】
[比較例2]
ポリイソシアネート5を単独で使用し、表1で示した水を含む溶剤を使用した以外は、実施例4と同様に外観を観察した。結果を表1に示す。
【0028】
[実施例8]
実施例2で得たポリイソシアネート2を使用した以外は、実施例4と同様にして目視による外観試験を実施した。結果を表2に示す。
【0029】
[実施例9〜10]
表2で示した水を含む溶剤を使用した以外は、実施例7と同様にして目視による外観試験を実施した。結果を表2に示す。
【0030】
[実施例11]
製造例3で得たポリイソシアネート3を使用した以外は、実施例4と同様にして目視による外観試験を実施した。結果を表3に示す。
【0031】
[実施例12〜13]
表3で示した水を含む溶剤を使用した以外は、実施例10と同様にして目視による外観試験を実施した。結果を表3に示す。
【0032】
[実施例14]
実施例4で得たポリイソシアネート4を40部、水分を0.2部含む酢酸n−ブチル30部とキシレン30部の混合溶媒を混合させた。温度20℃、に保った部屋に放置し、目視により外観が白濁するまでの日数を観察した。結果を表4に示す。
【0033】
[実施例15]
表4で示した水を含む溶剤を使用した以外は、実施例14と同様にして目視による外観試験を実施した。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例16]
実施例5で外観試験を実施した後のポリイソシアネート溶液を50部、ポリオールとしてアクリルポリオールであるアクリディックA−801(OH価50mgKOH/g、固形分50%、大日本インキ化学工業(株)製、商品名)を110部配合した。配合液を、厚さ50μmになるようにアプリケーターで塗装し、120℃、30分焼き付けた。外観を目視により観察し、クリアな塗膜であることを確認した。
【0035】
[比較例3]
比較例2で外観試験を実施した後のポリイソシアネート溶液を50部、ポリオールとしてアクリルポリオールであるアクリディックA−801(酸価50mgKOH/g、固形分50%、大日本インキ化学工業(株)製、商品名)を110部配合した。配合液を、厚さ50μmになるようにアプリケーターで塗装し、120℃、30分焼き付けた。外観を目視により観察し、濁りのある塗膜であることを確認した。
【0036】
[実施例17]
ポリイソシアネート1を40部、紫外線吸収剤としてチヌビン292を0.1部混合し、ポリオールとしてアクリルポリオールであるアクリディックA−801(OH価50mgKOH/g、固形分50%、大日本インキ化学工業(株)製、商品名)を251部配合した。配合液を、厚さ50μmになるようにアプリケーターで塗装し、120℃、30分焼き付けた後に、サンシャインウエザーメーターで耐候性試験を実施した。結果を表5に示す。ただし、光沢保持率は(耐候性試験後の塗膜の光沢)/(初期の塗膜の光沢)×100とする。配合液を、厚さ50μmになるようにアプリケーターで塗装し、120℃、30分焼き付けた。
【0037】
[比較例4]
ポリイソシアネート6:ヘキサメチレンジイソシアネート6700部とリン酸トリメチル1000部及びエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート2300部とを含む混合液を、還流冷却器をつけた反応器に入れ窒素雰囲気下良くかき混ぜながら水50部を加え160℃まで20分かけて昇温し、さらに160℃60分間常圧で反応させた。反応後液中にはなんらポリ尿素などの沈殿をみとめられず、この反応液を0.2Torr/180℃の条件で薄膜蒸発器で未反応のヘキサメチレンジイソシアネート及びリン酸トリメチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを回収し、ポリイソシアネート1190部を得た。
【0038】
得られたポリイソシアネートは、黄色、透明の液体であり、25℃での粘度が1200mPa.s、イソシアネート含量(以下、NCO%と略)23.9%、残存ヘキサメチレンジイソシアネートは0.2%であった。
得られたポリイソシアネートの赤外線吸収スペクトラムを測定したところ、1770cm−1にビウレットの特性吸収が観察された。
ポリイソシアネート7:攪拌機、温度計、還流冷却管を取り付けた四つ口フラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを1000部、キシレンを300部仕込み、60℃、攪拌下、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート0.3部を4分割して30分ごとに加えた。
【0039】
60℃で反応を続け、4時間後、反応液のNCO%滴定および屈折率測定により、ヘキサメチレンジイソシアネートの転化率が21%になった時点でリン酸0.2部を添加して反応を停止した。その後、さらに90℃で1時間加熱を続け、次いで、常温に冷却し、反応液の濾過を行なった後、薄膜蒸発器を用いて、1回目0.8Torr/160℃、2回目0.1Torr/160℃の条件下で、溶媒及び未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去、回収した。
得られたポリイソシアネートは、微黄色、透明の液体で、収量は210部、25℃における粘度は1300mPa.s、NCO%は23.5%、残存ヘキサメチレンジイソシアネートは0.2%であった。
【0040】
得られたポリイソシアネートの赤外線吸収スペクトラムを測定したところ、1690cm−1にイソシアヌレートの特性吸収が観察された。
ポリイソシアネート6を4部、ポリイソシアネート7を36部、紫外線吸収剤としてチヌビン292を0.1部混合し、ポリオールとしてアクリディックA−801(酸価50mgKOH/g、固形分50%、大日本インキ化学工業(株)製、商品名)を使用して表5に示した重量部で配合した。配合液を、厚さ50μmになるようにアプリケーターで塗装し、120℃、30分焼き付けた後に、サンシャインウエザーメーターで耐候性試験を実施した。結果を表5に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の被覆用組成物は、ウレタン塗料、接着剤、粘着剤、注型剤などの用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族及び/または脂環族のジイソシアネートから得られるポリイソシアネート組成物であって、イソシアヌレート化反応の前または後でビウレット化反応を行った後、未反応のジイソシアネートを実質的に除去した、同一分子内にビウレット構造とイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート組成物であって、ビウレット結合のモル数(A)とイソシアヌレート結合のモル数(B)が(A)/(B)=1/99〜60/40であることを特徴とするポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
ジイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のポリイソシアネート組成物と多価アルコール化合物類とからなる2液型ポリウレタン被覆組成物。

【公開番号】特開2007−169520(P2007−169520A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370763(P2005−370763)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】