説明

ポリイノシン酸‐ポリシチジル酸に基づくアジュバント

本発明は、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物、および、免疫反応を誘発しているときに使用する方法を提供する。また、本発明は抗原と一緒にポリヌクレオチドのアジュバント組成物を(例えばワクチンの中などに)含有している免疫原性組成物も提供する。本発明のアジュバント組成物は、増強された免疫反応を誘発するための安全なアジュバントの必要性に応える特定の物理的性質(例えば、分子量、濃度、およびpH)を有している。また、本発明は、特に、抗原性化合物に対する免疫反応が誘発されているときに、そのようなアジュバント組成物を使用する方法を意図する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明分野〕
本発明は、一般的に、アジュバント組成物、および、免疫反応を増強するときに当該アジュバント組成物を使用する方法に関し、より具体的には、化合物、ワクチン、および、抗原の免疫原性を増強するための方法に関し、さらに具体的には、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を含有しているワクチン、および、宿主において免疫反応を増強するための、上記ポリヌクレオチドのアジュバント組成物およびワクチンを用いる方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
‐1.関連技術の説明‐
免疫システムは、特異的免疫および非特異的免疫の両方を表すことがある。一般的に、Bリンパ球およびTリンパ球は、所定の抗原に対して、それらの細胞表面上に特異的な受容体を提示し、これにより特異的な免疫を生産する。免疫システムは、(1)体液性免疫および(2)細胞性免疫(CMI)の2つの様式によって、異なる抗原に反応することがある。上記体液性免疫は、B細胞の刺激および抗体(免疫グロブリン)の生産、抗原提示細胞(APC)、および、ヘルパーT細胞(Th1およびTh2)を含んでいる。上記細胞性免疫は、一般的に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)などのT細胞と関係している。しかし、他の細胞(Th1細胞および/またはTh2細胞、ならびに、APC)もCTL反応の発生に関係している。
【0003】
非特異的免疫は、様々な細胞、および、ファゴサイトーシス(外来の粒子または抗原を飲み込むこと)などの機構を含んでいる。なお、上記ファゴサイトーシスは、特にマクロファージまたは顆粒球、およびナチュラルキラー(NK)細胞によって行われる。非特異的免疫は、進化がより進んでいない古い機構を基にしており、特異的免疫反応の典型的な特徴である特異性および記憶という進化の結果、獲得された性質を示さないものである。特異的免疫と非特異的免疫との決定的な違いは、B細胞およびT細胞の特異性に基づいている。これらの細胞は、主に、特異的な抗原により活性化した後に、その特異的な抗原に対する反応性を獲得し、そして、上記特異的な抗原に将来さらされた場合に、記憶を示す機構を有している。その結果、(特異性および記憶に関係する)ワクチン接種が、有害な病原体から身を守るための効果的なプロトコールになる。
【0004】
アジュバントは、一般的に、抗原と一緒に投与されたときに(抗原と混合されるか、または、抗原が投与される前に与えられたときに)、特定の上記抗原に対する免疫反応を増強するか、または、改良する化合物である。
【0005】
免疫反応を増強するために用いられる典型的なアジュバントとしては、アルミニウム化合物類(アルミニウム化合物類の全てを一般に「Alum」と記載する)、水中油型乳剤(完全フロインドアジュバントは、乾燥・熱殺菌されたヒト型結核菌を含んでいる水中型乳剤である)、サポニン(サポニンはシャボンノキの皮から単離され、アジュバント活性成分がクイルAとして知られている)、CpG ODN(メチル化されていないCpGジヌクレオチドを含んでいる合成オリゴデオキシヌクレオチド)、MPL(サルモネラ・ミネソタRe595のリポ多糖類に由来する)、リポソーム(一般的にリン脂質などの生分解性材料から構成される)、および、生分解性の高分子ミクロスフィアー(PLGA、ポリホスファゼン、およびポリ無水物などの様々な高分子から作製される)などが挙げられる。これらの化合物のアジュバント特性が評価され、各アジュバントの長所と欠点とが示されてきた。
【0006】
ヒトのワクチンへのアジュバントの使用(特に子供の予防接種)に関する最大の問題は、ほとんどのアジュバント製剤に毒性と有害な副作用とが存在することである。新技術をワクチン開発に適用することにより、より弱い免疫原性を有する傾向にある、精製されて、且つ、合成されたサブユニット抗原がもたらされている。免疫原性/有効性が改良され、且つ、副作用が減少した新規アジュバントの開発が、ワクチンの研究および開発における主要な課題の1つである。
【0007】
ポリヌクレオチド複合体は、その様々な適用(アジュバントとしての作用など)について研究されてきた。2本鎖RNA(dsRNA)は、ナノモルの濃度において、細胞に大きな影響を与えることができる非常に強力な生物修飾物質である。dsRNAの修飾効果としては、分子レベルおよび細胞レベルにおける、広範囲の作用などが知られている。
【0008】
分子レベルでは、dsRNAは、インターフェロンの合成などの生物効果、プロテインキナーゼの誘導、組織適合抗原の増強、および代謝の阻害を誘発することができる。また、細胞レベルでは、dsRNAは、発熱原性(pyrogenicity)、マイトジェニシティ(mitogenicity)、マクロファージの活性化、細胞性免疫の活性化、および、抗ウィルス状態の誘導を誘発することができる。dsRNAの有望な可能性の1つに、抗菌療法における免疫調節効果がある。米国特許第4,124,702号明細書には、2本鎖ポリヌクレオチドによって、動物の生細胞にインターフェロンの誘導が引き起こされたことが開示されている。米国特許第3,906,092号明細書には、アジュバント型のワクチンに対する抗体反応が、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド複合体をワクチンへ混入することによって、増加したことが開示されている。Houstonらは、追加のアジュバントを用いずに、1次抗体の反応を増加させることによって、強力なアジュバントとしてのPICLC(ポリイノシン酸・ポリシチジル酸・ポリ‐L‐リジンカルボキシ‐モエチルセルロース複合体)を確立した(Houstonら, Infection and Immunity, 14: 318-9, 1976C)。菌ウィルスのdsRNAによって、ヒツジの赤血球(sRBC)を凝集する抗体反応が大幅に増強されることが発見された(Wright and Adler-Moore, Biochemical and Biophysical Research Communications, 131: 949-45, 1985)。
【0009】
しかしながら、PIC(ポリイノシン酸・ポリシチジル酸)を動物に用いたとき、それによって深刻な毒性が現れる。例えば、Phillipsらは、PICを2.0mg/mlの用量でイヌに亜慢性投与したときに、深刻な毒性の徴候が誘発されたことを報告した。毒性の特徴は、自発的活動の減少、協調運動不全、嘔吐、食欲不振、体重減少、造血の減少を反映する血液学的変化、アルカリホスファターゼおよびトランスアミナーゼの活性の増加、胸腺の変性、骨髄の破損、小葉中心領域における肝洞様毛細血管の拡張、生細胞のネクローシス、肝構造の崩壊、および、全身性の関節炎である(Phillipsら, Toxicology and Applied Pharmacology; 18: 220 - 30, 1971を参照のこと)。
【0010】
最も研究されているポリヌクレオチドの複合体の1つであるPICは、サルおよびヒトに用いられたときに、投与後に体の中では不安定であるため、効果的ではなかった。したがって、PICは、欠点のうちのどれかを克服するために多くの方法で改変されてきた。例えば、ポリ‐L‐リジン臭化水素酸塩を含んでいるポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸の複合体は、親のPICと比べて、膵リボヌクレアーゼによる加水分解への耐性について約5〜15倍である。もう1つ別の例は、dsRNA・ポリICLC、すなわち略してPICLCである。このPICLCは、抗ウィルス剤または抗腫瘍剤としての優れた効果を持つことが見つかった。PICLCは、ポリリボイノシン酸鎖およびポリリボシチジル酸鎖(PIC)を備える合成dsRNAである。PICLCは、抗菌療法および抗腫瘍療法に対する大いなる可能性を秘める有望な免疫調節剤であるが、特にPICLCが高用量で繰り返し投与されたときに、ヒトにおいて深刻な副作用が引き起こされることが示された。報告された副作用のいくつかには、発熱、低血圧、白血球減少、筋肉痛、血小板減少、および、多発関節痛が含まれる。PICLCをヒトへ安全に使用するために、固有の毒性に関する問題を解決する必要がある。また、ポリICLCの治療効能が、インビボでのポリICLCの安定性によって制限される。
【0011】
ポリイノシン酸‐ポリシチジル酸(ポリI:C)、カナマイシンおよびカルシウムを含有している抗ウィルス薬(Av‐PICKCa)が、ウィルス感染を治療するために用いられている。Av‐PICKCaは、インターフェロンおよびインターロイキン2の産生を誘導できることが示された。抗ウィルス薬として単独で投与されたAv‐PICKCaは、非特異的免疫反応を刺激する、すなわち、任意の特定の抗原に特異的ではない種類のインターフェロンを刺激する。この抗ウィルス反応は、アジュバントが抗原と併用されて投与されるときに生じる抗原特異的免疫反応とは、大きく異なる。
【0012】
さらに重要なことに、本発明の発明者は、Av‐PICKCaがアジュバントの性質を有していること、すなわちAv‐PICKCaを抗原と併せて投与したときに特異的免疫反応を誘発する能力を有していることを発見した。さらに、本発明の発明者は、Av‐PICKCaを狂犬病抗原および出血熱抗原と併せて用いたときに、Av‐PICKCaが効果的なアジュバントになることを発見した。
【0013】
Linらは、Av‐PICKCaをアジュバントとして用いることができることを記載した(「Linら, A new immunostimulatory complex (PICKCa) in experimental rabies: antiviral and adjuvant effects, Arch Virol, 131: 307-19, 1993」、および、中国特許第93105862.7号明細書)。中国特許第93105862.7号明細書には、ヒトおよび哺乳類に適用するためのワクチンのアジュバントとしてのポリI:C、カナマイシン、およびカルシウムを含有している一般的な組成物(PICKCa)の使用が開示されている。
【0014】
Av‐PICKCaの試料は、分子サイズおよび分子量に関して不均質である。Av‐PICKCaは、スベドベリにより測定されたような沈降係数(S)の値の平均値または範囲という観点で文献に記載されている。1態様では、抗ウィルス薬であるAv‐PICKCaの沈降係数の範囲は、5から8Sまで(源A)である(「Zhung J.C., Research recollection of polyinosinic-polycytidylic acid (PIC). The paper of fifth Chinese interferon conference in clinical application and theory, Siam 1985, pp23-28.」を参照のこと)。他の態様では、Av‐PICKCaの沈降係数の平均値が6Sであり、その沈降係数の範囲が4から12Sまで(源B)であるか、あるいは、その沈降係数の平均値が7Sであり、その沈降係数の範囲が5から12Sまで(源C)であるか、あるいは、その沈降係数の範囲が8から10Sまで(源D)である(「Hu Q.G., Tianjin Av‐PICKCa’s laboratory research and clinical application, Fujian Medical Journal, 1983.12; (6): 28-30」、および、「Hu Q.G. Chinese Medical and Pharmaceutical Industry Journal, 1983 (9) 3134.」を参照のこと)。
【0015】
Av‐PICKCaの分子のこの不均質な収集物における沈降係数を、変換式(mw=1,100×S2.2)を用いて等価な分子量(ダルトンで表されるmw)に変換することができる(「Su B. X.ら; Introduction of Biochemical Technology, 1stEdition, Zhongshan University, 1978, 356-357」を参照のこと)。ダルトンに変換した結果を以下の表に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
LinらによるアジュバントとしてのAv‐PICKCaに対する最初の研究において、源Aと同様の特徴を持つ分子を有する試料、すなわち沈降係数の範囲が5から8Sまでの試料が用いられた(上記のLinらを参照のこと)。なお、この沈降係数の範囲は、38,000から107,000ダルトンまでの分子量の範囲と等価である。
【0018】
Av‐PICKCaがPICKCaの基本的な1つの形態であったことと、さらに抗ウィルス薬としてのAv‐PICKCaが伝統的に使用されていたこととを考慮に入れると、PICKCaの全ての形態が、一様に安全で且つ効果的であると信じられていた。しかしながら、このことが事実ではないと分かった。PICKCaが抗原と併用されるアジュバントとして用いられたときに、PICKCaの有効性と毒性とが分子量の違いに伴って実際に変化することが、本発明の発明者によって実施された研究により実証された。本発明の発明者は、Av‐PICKCaが、アジュバントとしての使用に関する最適な有効性/安全性プロフィールを提供していないことを発見し、また、PICKCaが特定の条件下において、許容し難い有害な副作用を誘導することを発見した。したがって、ヒトへの使用にさらに適切であるとともに、所望の免疫原性効果を提供するときに安全で且つ効果的なアジュバントが必要とされている。本発明は、この必要性に取り組み、そして、詳細な説明を参照することによって明らかになる他の利点を提供する。
【0019】
‐文献‐
以下の参考文献が注目に値する:
・特許第1093540号明細書;
・米国特許第4,124,702号明細書;
・米国特許第3,692,899号明細書;
・米国特許第3,906,092号明細書;
・米国特許第4,389,395号明細書;
・米国特許第4,349,538号明細書;
・米国特許第4,024,241号明細書;
・米国特許第3,952,097号明細書;
・Houstonら, Infection and Immunity, 14: 318-9, 1976C;
・Wright and Adler-Moore, Biochemical and Biophysical Research Communications, 131: 949-45, 1985;
・Phillipsら, Toxicology and Applied Pharmacology, 18 : 220-30, 1971;
・Linら, A new immunostimulatory complex (PICKCa) in experimental rabies: antiviral and adjuvant effects, Arch Virol, 131: 307-19, 1993;
・中国特許第93105862.7号明細書;
・Zhung J.C., Research recollection of polyinosinic-polycytidylic acid (PIC). The paper of fifth Chinese interferon conference in clinical application and theory, Siam 1985, pp23-28;
・Hu Q.G., Tianjin Av‐PICKCa’s laboratory research and clinical application, Fujian Medical Journal, 1983.12; (6): 28-30;
・Hu Q.G. Chinese Medical and Pharmaceutical Industry Journal, 1983 (9) 3134.;
・Su B.X.ら; Introduction of Biochemical Technology, 1st Edition, Zhongshan University, 1978, 356-357;
・Gupta R.K.ら, Adjuvants - a balance between toxicity and adjuvanticity, Vaccine, 11:293-306, 1993;
・Arnon, R. (Ed.) Synthetic Vaccines 1:83-92, CRC Press, Inc., Boca Raton, FIa., 1987;
・SeIa, M., Science 166:1365-1374 (1969) ;
・米国特許第6,008,200号明細書;
・Ellouzら, Biochem. & Biophy. Res. Comm., 59:1317, 1974;
・米国特許第4,094,971号明細書;
・米国特許第4,101,536号明細書;
・米国特許第4,153,684号明細書;
・米国特許第4,235,771号明細書;
・米国特許第4,323,559号明細書;
・米国特許第4,327,085号明細書;
・米国特許第4,185,089号明細書;
・米国特許第4,082,736号明細書;
・米国特許第4,369,178号明細書;
・米国特許第4,314,998号明細書;
・米国特許第4,082,735号明細書;
・米国特許第4,186,194号明細書;
・米国特許第6,468,558号明細書;
・New Trends and Developments in Vaccines, edited by Vollerら, University Park Press, Baltimore, Md., USA, 1978;
・Klein, J.,ら, Immunology (2nd), Blackwell Science Inc., Boston (1997);
・Gupa R.K. and Siber G.R., Adjuvants for human vaccines-current status, problems and future prospects, Vaccine, 13 (14): 1263-1276, 1995;
・Richard T Kenneyら Meeting Report - 2nd meeting on novel adjuvants currently in / close to human clinical testing, Vaccine 20 2155-2163, 2002;
Laboratory Techniques in Rabies Edited by F X Meslin, M M Kaplan, H Koprowski 4th Edition ISBN 92 4 1544 1。
【0020】
〔発明の要旨〕
本発明は、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物、および、免疫反応を誘発しているときに使用する方法を提供する。また、本発明は、抗原とポリヌクレオチドのアジュバント組成物とを(例えばワクチンの中などに)含有している免疫原性組成物も提供する。本発明のアジュバント組成物は、増強された免疫反応を誘発するための、効果的で且つ安全なアジュバントの必要性に応えるための特定の物理的性質(例えば、分子量、濃度、およびpH)を有している。また、本発明は、特に、抗原性化合物に対する免疫反応が誘発されているときに、そのようなアジュバント組成物を使用する方法を意図する。
【0021】
1実施の形態において、本発明は、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、抗生物質、および、陽イオンを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記抗生物質がカナマイシンであってもよく、上記陽イオンがカルシウムなどの2価イオンであってもよい、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を提供する。また、本発明は抗原またはワクチンとポリヌクレオチドのアジュバント組成物とを含有している免疫原性組成物も提供する。
【0022】
本発明は、安全で且つ効果的に用いられることができる新規組成物を、動物またはヒトの宿主における免疫反応を増強、および/または、改良するためのアジュバントとして規定することにより知識の本体を進歩させることに役立つ。抗ウィルス剤のAv‐PICKCaがアジュバントとしての使用に適用されることが、以前の公表により実証されているが、PICKCaのこの形態は、抗原と一緒に投与されたときに、ごく限定された特異的免疫反応を誘発するということが観察されていた。また、PICKCaによって、特定の条件下において許容できない有害な副作用を引き起こされることが知られていた。
【0023】
本発明は、本明細書において「PIKA」と一般的に呼ばれるアジュバント組成物を提供することによって、これらの問題に対処するものである。上記アジュバント組成物は、ヒトなどの動物において最も安全で且つ効果的に投与されてもよい。
【0024】
アジュバントとして特別に開発されたPIKAは、ポリヌクレオチド、抗生物質、および、陽イオンを含有している組成物である。本発明には、ユニークな製品特質を有する組成物が含まれる。この製品特性によって、上記組成物が、動物および/またはヒトに投与される免疫原性組成物に含有されているアジュバントとしての使用に最も適するようになる。
【0025】
より具体的に、本発明は、ポリヌクレオチド、抗生物質、および、陽イオンを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記ポリヌクレオチドがポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)であってもよく、上記抗生物質が、カナマイシン、アントラサイクリン、硫酸ブチロシン(butirosin sulfate)、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、アミカシン、ジベカシン、ネブラマイシン、メトルザマイド(metrzamide)、ネオマイシン、ピューロマイシン、ストレプトマイシン、または、ストレプトゾトシンであってもよく、上記陽イオンが、カルシウム、カドミウム、リチウム、マグネシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、重水素、ガリウム、ヨウ素、鉄、または、亜鉛であってもよい、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を提供する。
【0026】
より具体的に、本発明は、最も望ましい免疫反応を誘発する安全なアジュバントの必要性に応える、ポリヌクレオチド、抗生物質および陽イオンを含有している組成物の規格を提供する。上記規格には、分子量、濃度、およびpHが含まれる。
【0027】
また、本発明は、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物および抗原またはワクチンを含有している免疫原性組成物も提供する。
【0028】
特定の実施の形態では、本発明は、ポリヌクレオチドのアジュバントおよび免疫原性組成物を含有しているキットの形態である。
【0029】
さらに、本発明は、宿主に免疫原性組成物を投与することによって、抗原性化合物に対する免疫反応を増強するための方法を提供する。上記宿主はヒトであってもよいし、または動物であってもよい。投与を、注射(筋肉注射、腹腔内注射、静脈注射、皮下注射)によって、または、吸入によって実施することができる。他の実施の形態では、免疫原性組成物を、経直腸的に、経膣的に、経鼻的に、経口的に、経目的に(opthamalically)、局所的に、経皮的に、または、皮内的に、送達することができる。
【0030】
したがって、本発明は、ヒトおよび動物に安全に用いられることができるアジュバント組成物および免疫原性組成物を提供する。
【0031】
したがって、1つの態様では、本発明は、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、抗生物質、および、陽イオンを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記アジュバント組成物が、分子量に関して不均質なポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子を含んでおり、上記分子量の範囲が約66,000から1,200,000ダルトンまでであることを特徴としている。
【0032】
関連する実施の形態では、組成物におけるポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子は、分子量に関して不均質であり、当該分子量が、約300,000から1,200,000ダルトンまで、約66,000から660,000ダルトンまで、約300,000から660,000ダルトンまで、約300,000から2,000,000ダルトンまで、約300,000から4,000,000ダルトンまで、約500,000から1,000,000ダルトンまで、約1,000,000から1,500,000ダルトンまで、約1,500,000から2,000,000ダルトンまで、約2,000,000から2,500,000ダルトンまで、約2,500,000から3,000,000ダルトンまで、約3,000,000から3,500,000ダルトンまで、約3,500,000から4,000,000ダルトンまで、約4,000,000から4,500,000ダルトンまで、または、約4,500,000から5,000,000ダルトンまでの範囲である。
【0033】
関連する実施の形態では、組成物におけるポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子は、150,000ダルトン以上、250,000ダルトン以上、350,000ダルトン以上、500,000ダルトン以上、650,000ダルトン以上、750,000ダルトン以上、1,000,000ダルトン以上、1,200,000ダルトン以上、1,500,000ダルトン以上、または、2,000,000ダルトン以上の平均分子量を有している。
【0034】
したがって、1つの態様では、本発明は、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、抗生物質、および、陽イオンを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記アジュバント組成物が、分子サイズに関して不均質なポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子を含んでおり、上記分子サイズの範囲が約6.43から24.03Sまでという沈降係数(スベドベリ(S))の範囲であることを特徴としている。
【0035】
関連する実施の形態では、組成物におけるポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子は、分子サイズに関して不均質であり、当該分子サイズは、約12.8Sから24.03Sまで、約6.43から18.31Sまで、約12.8から18.31Sまで、約12.8Sから30.31Sまで、約12.8Sから41.54Sまで、約13.5Sから18.31Sまで、約13.5Sから24.03Sまで、約16.14から22.12Sまで、約22.12Sから26.6Sまで、約26.6Sから30.31Sまで、約30.31Sから33.55Sまで、約33.55Sから36.45Sまで、約36.45Sから39.1Sまで、約39.1Sから41.54Sまで、約41.54Sから43.83Sまで、または、約43.83Sから45.95Sまでの範囲である。
【0036】
さらに関連する実施の形態では、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物は、9よりも大きい、12よりも大きい、13.5よりも大きい、15よりも大きい、16よりも大きい、17よりも大きい、18よりも大きい、19よりも大きい、20よりも大きい、21よりも大きい、22よりも大きい、25よりも大きい、または、30よりも大きい平均沈降係数(スベドベリ)を有している。
【0037】
関連する実施の形態では、組成物における抗生物質は、カナマイシン、ネオマイシン、アントラサイクリン、硫酸ブチロシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、アミカシン、ジベカシン、ネブラマイシン、メトルザマイド、ピューロマイシン、ストレプトマイシン、または、ストレプトゾトシンである。
【0038】
さらに関連する実施の形態では、アジュバント組成物は、カルシウムイオンの源をさらに含有している。
【0039】
もう1つ別の関連する実施の形態では、組成物における陽イオンは、カルシウム、カドミウム、リチウム、マグネシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、重水素、ガリウム、ヨウ素、鉄、または、亜鉛である。陽イオンは、無機塩または有機複合体の形態であってもよい。
【0040】
カルシウムイオンの源としては、例えば、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、または、硫酸カルシウムを挙げることができる。
【0041】
特に有益な1つの態様では、本発明は、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、カナマイシン、および、カルシウムを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記アジュバント組成物が、分子量に関して不均質なポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子を含んでおり、上記分子量の範囲が約66,000から1,200,000ダルトンまでの範囲である、アジュバント組成物を提供する。
【0042】
関連する実施の形態では、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、カナマイシン、および、カルシウムの分子は、約300,000から1,200,000ダルトンまで、約66,000から660,000ダルトンまで、約300,000から660,000ダルトンまで、約300,000から2,000,000ダルトンまで、約300,000から4,000,000ダルトンまで、約500,000から1,000,000までダルトンまで、約1,000,000から1,500,000ダルトンまで、約1,500,000から2,000,000ダルトンまで、約2,000,000から2,500,000ダルトンまで、約2,500,000から3,000,000ダルトンまで、約3,000,000から3,500,000ダルトンまで、約3,500,000から4,000,000ダルトンまで、約4,000,000から4,500,000ダルトンまで、または、約4,500,000から5,000,000ダルトンまでの範囲の分子量を有している。
【0043】
他の関連する実施の形態では、分子量に関して不均質なアジュバントにおける、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、カナマイシン、および、カルシウムの分子は、150,000ダルトン以上、250,000ダルトン以上、350,000ダルトン以上、500,000ダルトン以上、650,000ダルトン以上、750,000ダルトン以上、1,000,000ダルトン以上、1,200,000ダルトン以上、1,500,000ダルトン以上、または、2,000,000ダルトン以上の平均分子量を有している。
【0044】
特に有益な1つの態様では、本発明は、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、カナマイシン、および、カルシウムを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記アジュバント組成物が、分子サイズに関して不均質なポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子を含んでおり、上記分子サイズの範囲が約6.43から24.03Sまでという沈降係数(スベドベリ(S))の範囲である、アジュバント組成物を提供する。
【0045】
関連する実施の形態では、アジュバント組成物におけるポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子は、分子サイズに関して不均質であり、当該分子サイズは、約12.8Sから24.03Sまで、約6.43から18.31Sまで、約12.8から18.31Sまで、約12.8Sから30.31Sまで、約12.8Sから41.54Sまで、約13.5Sから18.31Sまで、約13.5Sから24.03Sまで、約16.14から22.12Sまで、約22.12Sから26.6Sまで、約26.6Sから30.31Sまで、約30.31Sから33.55Sまで、約33.55Sから36.45Sまで、約36.45Sから39.1Sまで、約39.1Sから41.54Sまで、約41.54Sから43.83Sまで、または、約43.83Sから45.95Sまでの範囲である。
【0046】
さらに他の関連する実施の形態では、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、カナマイシン、および、カルシウムは、9よりも大きい、12よりも大きい、13.5よりも大きい、15よりも大きい、16よりも大きい、17よりも大きい、18よりも大きい、19よりも大きい、20よりも大きい、21よりも大きい、22よりも大きい、25よりも大きい、または、30よりも大きい平均沈降係数を有している。
【0047】
いくつかの実施の形態では、本発明は、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、カナマイシン、および、カルシウムを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記アジュバント組成物にとって、分子が除かれることが好ましいことがある、アジュバント組成物を提供する。特に、除かれる分子は、有効な免疫原性効果をもっておらず、当該除かれる分子の分子量が、約30,000ダルトンより小さい、約40,000ダルトンより小さい、約50,000ダルトンより小さい、約60,000ダルトンより小さい、約70,000ダルトンより小さい、約80,000ダルトンより小さい、約90,000ダルトンより小さい、約100,000ダルトンより小さい、約150,000ダルトンより小さい、約200,000ダルトンより小さい、約250,000ダルトンより小さい、約300,000ダルトンより小さい、約350,000ダルトンより小さい、約400,000ダルトンより小さい、約450,000ダルトンより小さい、約500,000ダルトンより小さい、約600,000ダルトンより小さい、約700,000ダルトンより小さい、約800,000ダルトンより小さい、約900,000ダルトンより小さい、または、約1,000,000ダルトンより小さいというような範囲であることが好ましい。
【0048】
いくつかの実施の形態では、本発明は、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、カナマイシン、および、カルシウムを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記組成物にとって、分子が除かれていることが好ましいことがある、アジュバント組成物を提供する。特に、除かれる分子は、有効な免疫原性効果をもっておらず、当該除かれる分子の分子サイズが、約4.49Sより小さい、約5.12Sより小さい、約5.67Sより小さい、約6.16Sより小さい、約6.6Sより小さい、約7.02Sより小さい、約7.4Sより小さい、約7.77Sより小さい、約9.34Sより小さい、約10.64Sより小さい、約11.78Sより小さい、約12.8Sより小さい、約13.73Sより小さい、約14.59Sより小さい、約15.39Sより小さい、約16.14Sより小さい、約17.54Sより小さい、約18.81Sより小さい、約19.99Sより小さい、約21.09Sより小さい、または、約22.12Sより小さいというような範囲であることが好ましい。
【0049】
特に有益な1つの態様では、本発明は、抗原性化合物の抗原性を増強するための、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を含有している免疫原性組成物を提供する。
【0050】
関連する実施の形態では、上記免疫原性組成物はポリヌクレオチドのアジュバントと抗原とを含有している。
【0051】
関連する実施の形態では、抗原の源は、ヒト抗原、ヒトではない動物抗原、植物抗原、細菌抗原、真菌抗原、ウィルス抗原、寄生虫抗原、または、腫瘍抗原である。
【0052】
関連する実施の形態では、上記免疫原性組成物はポリヌクレオチドのアジュバントと狂犬病抗原とを含有している。
【0053】
特定の実施の形態では、抗原は、自然源から精製されてもよいし、または、固相合成をもちいて合成されてもよいし、あるいは、遺伝子組み換えを用いて得られてもよい。抗原は、分子の1以上の免疫原性領域を含有しているタンパク質断片を含んでいてもよい。また、抗原は、細胞全体もしくは微生物(例えばウィルス粒子)の形態で提供されることもできる。それらは生きていてもよいし、弱毒化されていてもよいし、切断されていてもよいし、または、殺されていてもよい。
【0054】
他の実施の形態では、抗原は、病原菌、植物抗原、癌、アレルギー性物質、および、他のヒト抗原(例えば自己免疫疾患を発症させるような抗原)に由来する1以上の作用物質を含んでいる。他の実施の形態では、抗原は、ウィルス、細菌、マイコバクテリウム、真菌、および、寄生虫の何れかに由来する1以上の病原菌を含んでいる。
【0055】
また、本発明のポリヌクレオチドのアジュバント組成物は、DNAワクチンの使用によって産生される抗原に対する免疫反応を増強するために利用されてもよい。上記DNAワクチンにおける、抗原をコードするDNA配列は、「裸」であってもよいし(裸のDNA)、または、リポソームなどの送達システムに含まれていてもよい。
【0056】
さらに他の実施の形態では、狂犬病抗原は、ヒト2倍体細胞ワクチン(HDCV)、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病ワクチン(HKC‐IPRV)、ハムスター腎細胞不活性化未精製狂犬病ワクチン(HKC‐ICRV)、精製ベロ細胞狂犬病ワクチン(PVRV)、精製ニワトリ胚細胞(PCEC)、精製アヒル胚ワクチン(PDEV)、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)、または、ハムスター腎細胞不活性化未精製狂犬病抗原(HKC‐ICRA)から選択される。
【0057】
特に有益な1つの態様では、本発明は、抗原性化合物の抗原性を増強させるための、免疫原性組成物を提供する。当該免疫原性組成物は、抗原特異的な細胞性免疫反応を誘発することができるポリヌクレオチドのアジュバント組成物を含有している。
【0058】
特に有益な1つの態様では、本発明は、抗原性化合物の抗原性を増強させるための、B細胞の抗原特異的な免疫反応を誘発することができる、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を含有している、免疫原性組成物を提供する。
【0059】
特に有益な1つの態様では、本発明は、抗原性化合物の抗原性を増強させるための、T細胞およびB細胞が組み合わされた抗原特異的な免疫反応を誘発することができる、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を含有している、免疫原性組成物を提供する。
【0060】
特に有益な1つの態様では、本発明は、抗原性化合物の抗原性を増強させるための、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物、および、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原を含有している免疫原性組成物であって、上記抗原の含有量が、最小量(例えば1国際単位(IU)よりも多い量)であるべきである、免疫原性組成物を提供する。
【0061】
関連する実施の形態では、免疫原性組成物は、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物、および、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原を含有しており、上記抗原の含有量が、最少量(例えば、0.25国際単位よりも多い量、0.5国際単位よりも多い量、1.2国際単位よりも多い量、1.4国際単位よりも多い量、1.6国際単位よりも多い量、1.8国際単位よりも多い量、2.0国際単位よりも多い量、2.2国際単位よりも多い量、2.4国際単位よりも多い量、2.6国際単位よりも多い量、2.8国際単位よりも多い量、3.0国際単位よりも多い量、3.2国際単位よりも多い量、3.4国際単位よりも多い量3.6国際単位よりも多い量、3.8国際単位よりも多い量、または4.0国際単位よりも多い量)にであるべきである。
【0062】
特に有益な1つの態様では、本発明は、化合物の抗原性を増強させるための、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物、および、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原を含有しており、上記アジュバント組成物と上記狂犬病抗原との存在比が、約1:1である、免疫原性組成物を提供する。
【0063】
関連する実施の形態では、免疫原性組成物は、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物、および、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原を含有しており、上記アジュバント組成物と上記狂犬病抗原との存在比が、1よりも小さい:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、10よりも大きい:lである、免疫原性組成物を提供する。
【0064】
特に有益な1つの態様では、本発明は、免疫原性組成物または免疫原性組成物に含有しているアジュバント組成物が、固体もしくは液体の状態であるか、または、溶液もしくは懸濁液である、アジュバント組成物または免疫原性組成物を提供する。
【0065】
特に有益な1つの態様では、本発明は、免疫原性組成物または免疫原性組成物に含有されているアジュバント組成物が、凍結乾燥されている、アジュバント組成物または免疫原性組成物を提供する。
【0066】
関連する実施の形態では、本発明は、アジュバント組成物および抗原性化合物を含有しているキットを提供する。
【0067】
特に有益な1つの態様では、本発明は、宿主の免疫原性反応を増強するための薬物を調製するための、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物の使用を提供する。
【0068】
特に有益な1つの態様では、本発明は、抗原性化合物に対する免疫反応を増強するための方法であって、抗原性化合物の抗原性を増強するための、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を含有している免疫原性組成物を宿主に投与する工程を含んでいる、方法を提供する。
【0069】
関連する実施の形態では、免疫原性組成物を宿主に投与する方法は、非経口的注射、筋肉注射、腹腔内注射、静脈注射、皮下注射、吸入、経直腸的送達、経膣的送達、経鼻的送達、経口的送達、経目的送達、局所的送達、経皮的送達、または、皮内的送達を含んでいる群から選ばれる1つの方法によって実施されることができる。
【0070】
特に有益な1つの態様では、本発明は、抗原性化合物に対する免疫反応を増強するための方法であって、抗原性化合物の抗原性を増強するための、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を含有している免疫原性組成物を宿主に投与する工程を含んでおり、上記宿主がヒトである、方法を提供する。
【0071】
特に有益な1つの態様では、本発明は、抗原性化合物に対する免疫反応を増強するための方法であって、抗原性化合物の抗原性を増強するための、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を含有している免疫原性組成物を宿主に投与する工程を含んでおり、上記宿主が動物である、方法を提供する。
【0072】
本発明におけるこれらの特徴および利点、ならびに、他の特徴および利点は、添付の図面と関係する好ましい実施の形態の詳細な説明から明らかになる。
【0073】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、Av‐PICKCaおよびPIKAの試料に関する相対分子量を示す図である。
【0074】
図2は、PIKAによって、特異的なインターフェロン‐ガンマのサイトカインの用量依存的な産生が誘導されることを示す図である。
【0075】
〔発明の典型的な実施の形態の詳細な説明〕
以下に記載されている本発明の特定の実施の形態および本明細書に本明細書に含まれている実施例の詳細な説明を参照することによって、本発明がより簡単に理解されることがある。
【0076】
本出願書類全体に渡って、出版物が参照されている。本発明に関連する従来技術をより徹底的に記述するために、当該出版物における発表の全てが、参照によって本出願書類に、組み込まれる。
【0077】
本発明がさらに記載される前に、この発明は、言うまでもなく、変更され得るような、本明細書に記載された特定の実施の形態に限定されないことが理解される。また、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるので、本明細書に用いられている学術用語は、特定の実施の形態だけを記述するという目的であり、限定することを意図していないことが理解される。
【0078】
他に定義されない限り、本明細書に用いられている全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術における当業者のうちの一人によって一般的に理解されるものと同じ意味である。本発明を実施するときか、または、検証するときに、本明細書に記載されている方法および材料と同等か、または同じである任意の方法および材料を用いることができるが、以下では好ましい方法および材料を記載する。本明細書において言及された全ての出版物は、当該出版物が引用する方法および/または材料に関連する方法および/または材料を開示して、記述するために、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0079】
なお、本明細書および添付の請求項において用いられているような、単数形の「a」、「and」、および「the」は、文脈が明らかに別のものを指示しない限り、複数形の対象を含んでいる。したがって、例えば、「1つのテキスト」への言及は、複数のそのようなテキストへの言及も含んでいるし、「1つのその部分」への言及は、1以上の部分への言及、および当業者に公知である上記部分と同等なものへの言及などを含んでいる。なお、請求項は任意の構成を除くためにさらに立案されることもある。このため、本明細書は、「単独で」および「唯一の」などの、請求項の構成の記述(recitation)に関するそのような排他的な術語を使用するか、または、「否定的な」限定を使用するための根拠としてはたらくことを意図されている。
【0080】
‐用語の定義‐
本発明の詳細を説明する前に、本明細書に用いられているいくつかの用語の定義を説明することで、本発明の理解に役立つことがあると考えられる。
【0081】
本明細書に用いられている用語「アジュバント」は、抗原性化合物に対する宿主の免疫反応を増加するか、または多様化する任意の基質もしくはその基質の混合物のことをいう。
【0082】
具体的には、
1.用語「PICKCa」は、特定の物理的性質および免疫的性質に関係のない、ポリI:C、カナマイシン、およびカルシウムの組成物のことを一般的にいう;
2.「Av‐PICKCa」は、抗ウィルス薬として商業上用いられるPICKCaの形態のことをいう;
3.「PIKA」は、ポリI:C、抗生物質(例えばカナマイシン)、および陽イオン(例えばカルシウム)を含有している本発明の組成物のことをいう。PIKAの特徴は、物理的性質(例えば本明細書に記載されている分子量および分子サイズなど)であり、その結果、投与に応じてPIKAが、例えばPICKCaと比較して減少した副作用(例えば減少した毒性)、および、例えばAv‐PICKCaと比較してより大きな効能(増強した免疫反応を刺激する)を有するアジュバントの性質を示す。
【0083】
「PIC‐含有分子」または「PIC‐含有化合物」は、特に限定されないが、PIC含有分子を含んでいる組成物に存在する、抗生物質(例えばカナマイシン)および陽イオン(例えばカルシウム)の少なくとも1つと、または、それらの両方と状況に応じて複合体を形成していてもよいし、もしくは、他の様式で結合していてもよいPICのことをいう。
【0084】
本発明のアジュバント組成物に対して本明細書において用いられる「不均質」は、当該アジュバント組成物の成分(例えばPIC含有分子)が、物理特性(分子量、分子サイズ、または、それらの両方)に関して均一ではないことを示している。
【0085】
用語「動物」には、(i)ウシ、ウマ、乳牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、シカ、ミンク、ニワトリ、カモ、ガチョウ、七面鳥、およびゲームヘンなどの全ての家畜ならびに野生の哺乳類および鳥類と、(ii)ヒトとが含まれる。
【0086】
用語「抗体」には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびに、抗原性化合物に結合する抗体の断片(Fab、F(ab’)2、Fd、Fvフラグメントなど)、および、その一本鎖の誘導体が含まれる。さらに、用語「抗体」には、天然に生じた抗体、および、人工的に生じた抗体が含まれる。上記人工的に生じた抗体としては、例えば、キメラ抗体、2機能性抗体、および、ヒト化抗体、ならびに、関連する合成アイソフォームが挙げられる。
【0087】
本明細書において用いられている、用語「抗原性化合物」は、適切な条件下において、免疫システムにより認識される(例えば、抗体により結合される、または、細胞性免疫反応を誘発するように処理される)ことができる任意の基質のことをいう。
【0088】
「抗原」は、ワクチン形態の組成物などの基質のことをいう。当該ワクチンは、適切な経路から投与されると(例えば非経口に投与されると)、免疫反応を誘導するものである。また上記ワクチンは、抗原性化合物を含んでいるほかに、PIKA以外のアジュバントを含んでいてもよいし、あるいは、含んでいなくてもよい。上記免疫反応としては、例えば、抗原に対して特異的に結合する抗体などの抗体の形成が挙げられる。抗原の特性の2つは、免疫原性と抗原性とである。ここで、上記免疫原性とは、インビボにおいて免疫反応を誘導するという性質のことであり、上記抗原性とは、抗原がその抗原に基づいて発生した抗体によって選択的に認識されるという性質のことである。
【0089】
用語「細胞性免疫」および「細胞性免疫反応」は、リンパ球によって提供される免疫防御のこと、例えばT細胞リンパ球が対象の細胞に近づいたときに、当該T細胞リンパ球によって提供される防御のことに言及することを意図されている。細胞性免疫反応には、リンパ球の増殖が通常含まれる。「リンパ球の増殖」が測定されるとき、特異的な抗原に反応して増殖するリンパ球の能力が測定される。リンパ球の増殖は、B細胞、ヘルパーT細胞、または、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の増殖のことに言及することを意図されている。
【0090】
「抗原性化合物の効果的な量」は、抗原性化合物への特異的な免疫反応が被検体に引き起こされることになる、抗原性化合物の量のことをいう。なお、上記抗原性化合物は、必要に応じてアジュバントと組み合わせられる。
【0091】
「免疫反応を増加する」という表現、または、同様の表現は、免疫反応状態の前(例えば、本発明の免疫原性組成物が投与される前)と比べて、宿主の利益になるように、免疫反応を上昇するか、改善するか、あるいは、増強することを意味する。
【0092】
用語「体液性免疫」および「体液性免疫反応」は、抗体分子が抗原の刺激に反応して生産される免疫の形式のことをいう。
【0093】
用語「免疫反応」は、脊椎動物である被検体の免疫システムによる抗原性化合物への任意の反応のことをいう。典型的な免疫反応には、細胞性で、局所的および全身的な体液性免疫(例えば、(i)CTL反応(CD8+CTLの抗原特異的な誘導など)、(ii)ヘルパーT細胞の反応(T細胞の増殖反応およびサイトカインの放出など)、および、(iii)B細胞の反応(抗体反応など)など)が含まれるが、これに限定されない。
【0094】
本明細書で用いられている用語「免疫反応を誘発する」は一般的に、免疫反応を強化すること、および/または、誘導することを含んでいる。
【0095】
用語「免疫反応を誘導する」は、免疫反応を、刺激すること、開始させること、または、誘導することをいう。
【0096】
用語「免疫反応を強化する」は、前から存在している免疫反応を、改善すること、促進すること、補うこと、増幅すること、増強すること、増加させること、または、長引かせることをいう。
【0097】
用語「ポリI:C」または「PIC」は、ポリリボイノシン核酸‐ポリリボシチジル核酸(「ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸」といわれることもある)を含んでいる組成物のことをいう。
【0098】
用語「免疫原性量」は、本発明の組成物と一緒に投与されたときに、ポリヌクレオチドのアジュバントがない場合に観測される免疫反応と比較して、免疫反応を刺激するのに十分な抗原性化合物の量のことをいう。
【0099】
用語「免疫増強量」は、本発明の組成物に含まれる抗原性化合物と一緒に投与されたときに、ポリヌクレオチドのアジュバントがないときに観測される抗体の力価の増加、および/または、細胞性免疫のレベルの増加と比較して、抗体のタイター、および/または、細胞性免疫のレベルの増加に影響を与えるのに必要なアジュバントの量のことをいう。
【0100】
本明細書において用いられる用語「混合」には、組成物の成分を結合するための任意の方法が含まれる。そのような方法には、配合、調合、溶解、乳化、凝固、懸濁、または、組成物の成分を物理的に組み合わせるその他の方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
化合物の「薬学的に許容されることができる塩」は、薬学的に許容されることができ、親化合物の所望の薬学的活性を有している塩を意味する。そのような塩には、(1)無機酸または有機酸と一緒に形成された酸付加塩、あるいは、(2)親化合物に存在する酸性の水素イオンが、金属イオンによって置換されているときか、または、有機塩基と調和しているときに形成される塩が含まれる。上記無機酸としては、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。上記有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3‐(4‐ヒドロキシベンジル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2‐エタンスルホン酸、2‐ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4‐クロロベンゼンスルホン酸、2‐ナフタレンスルホン酸、4‐トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルコヘプトン酸、4,4’‐メチレンビス‐(3‐ヒドロキシ‐2‐エン‐l‐カルボン酸)、3‐フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert‐ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリル酸、ムコン酸などが挙げられる。上記金属イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは、アルミニウムイオンが挙げられる。上記有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N‐メチルグルカミンなどが挙げられる。
【0102】
用語「治療」には、脊椎動物(特にヒト)における病気の任意の治療が含まれ、また、(i)被検体が病気にかかることを予防すること、(ii)病気を抑制すること、すなわち病気の進行を食い止めること、(iii)病気を緩和すること、すなわち病気の症状の軽減を引き起こすことが含まれる。なお、上記被検体は、病気にかかり易い素因をもっていることがあるが、病気を発症しているとは診断されていないものである。
【0103】
本明細書に用いられる、用語「単位用量形態」は、ヒトおよび動物の被検体に対する単位用量として適切な物理的に明確な単位のことをいう。各単位には、薬学的に/生理的に許容可能な希釈剤、担体または賦形剤と合併している、所望の効果を奏するのに十分な量で計算された所定量の本発明の化合物が含まれる。
【0104】
‐発明の概説‐
本発明は、ヒト、動物、または細胞培養物において体液性免疫および/または細胞性免疫であってもよい、免疫反応の増強に役立つ、化合物および方法に関するものである。一般的に、本発明の組成物は、アジュバントを含有している免疫原性組成物を含んでいる。このアジュバントの存在により、免疫反応が増強されるか、または、改良される。したがって、アジュバントが存在しているために、体液性免疫反応および/または細胞性免疫反応が、より有効になる。さらに、アジュバントによって、産生される免疫グロブリンおよびサイトカインのサブクラス(アイソタイプ)が影響を受けることにより、免疫反応の質が変化することがある。
【0105】
上記アジュバントの主要な特徴は、有害な副作用を誘導することなく所望のレベルおよび種類の免疫反応を刺激する能力である。現在のところ、そのような特徴の組み合わせを有し、ヒトへの使用に関して承認されているアジュバントの数は、ごく限られたものである。免疫原性の基質および特定のワクチンに対する安全基準は、徹底的で且つ厳格に実施されている。それ故、成功するアジュバントを開発するための重要な制約は、適切な免疫反応を誘発するほど効力が十分強く、一方で、有害な副作用を誘導しない製品の開発といえる。
【0106】
本発明の好ましい実施の形態は、ポリヌクレオチドのアジュバントであって、当該ポリヌクレオチドは、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)である。PIC単独は、有効なアジュバントであることが示されていたが、許容することができない安全プロフィールを示し、ヒトおよび霊長類において不安定である。本発明は、抗生物質および陽イオンと組み合わされたPICの組成物を提供する。このPIC組成物は、アジュバントの所望の免疫原性の特質を増強し、安全性プロフィールおよび安定性プロフィールを改良するものである。
【0107】
また、本発明は、アジュバント組成物のPIKA分子の物理的および生物的性質が、免疫反応および有害な副作用の特徴に影響を与えるという発見に基づいている。調査研究の間に、ポリヌクレオチドのアジュバントの特定の特徴を調節することによって、以下に示される様に、当該ポリヌクレオチドのアジュバントの効能が、より強力になるか、もしくは、より弱くなる、および/または、その毒性がより強力になるか、もしくは、弱くなるということが意外なことに発見された。それ故、アジュバント組成物を、その物理的特徴の観点において規定することにより、好ましい免疫原性反応、および、好ましい安全性/安定性プロフィールを提供するアジュバント組成物の特質をより正確に記載することができる。
【0108】
それ故、本発明のアジュバント(本明細書では、便宜上「PIKAアジュバント」という。)は、化学組成の組み合わせと、アジュバントを構成する分子の基本的な物理的特質とによって、完全に規定される。したがって、非常に優れた免疫原性特性を示すとともに、動物およびヒトにおいて安全に用いられるPIKAの特定の形態は、組成、分子量、分子サイズ、濃度、およびpHを含む、1以上の特定の特質(通常は当該特質の組み合わせ)によって最良に規定される。
【0109】
PIKAは、一般的に、ポリヌクレオチド、抗生物質、および陽イオンを含んでおり、上記ポリヌクレオチドがポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)であってもよく、上記抗生物質が、アミノグリコシド(例えばカナマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン)、ネオマイシン、アントラサイクリン、硫酸ブチロシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、アミカシン、ジベカシン、ネブラマイシン、メトルザマイド、ピューロマイシン、または、ストレプトゾトシンであってもよく、上記陽イオンが、カルシウム、カドミウム、リチウム、マグネシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、重水素、ガリウム、ヨウ素、鉄、または、亜鉛である。
【0110】
上記「アミノグリコシド」抗生物質は、アミノサイクリトール環(ヘキソース環)にグリコシド結合によって付着したアミノ糖が構造に含まれている抗生物質のことをいう。アミノグリコシド抗生物質は、ストレプトマイセス属およびミクロモノスポラ属の様々な種から生じるか、あるいは、合成的に製造される。例えば、カナマイシンは、土壌細菌である、ストレプトマイセス・カナマイセチクスから得られるアミノグリコシド抗生物質であり、様々な感染症(特にグラム陰性菌によって引き起こされる感染症)の治療に用いられている。
【0111】
PIKA組成物は、ポリイノシン酸、ポリシチジル酸、抗生物質、および陽イオンの源を、pH6〜pH8の間のpHを有する塩化ナトリウム/リン酸緩衝液の中で混合することによって製造される。ポリイノシン酸およびポリシチジル酸の濃度は、一般的に0.1〜10mg/mlであり、好ましくは0.5〜5mg/mlであり、より好ましくは0.5〜2.5mg/mlである。濃色性値は、10%よりも大きく、好ましくは15%よりも大きく、より好ましくは20%よりも大きい。PICの調製とカナマイシンおよびカルシウムとの組み合わせは、好ましくは国際優良製造処理(international Good Manufacturing Process)に一致する品質基準の下で実施される。
【0112】
本発明の特定の実施の形態では、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物におけるカナマイシンは、トブラマイシン、アントラサイクリン、硫酸ブチロシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、アミカシン、ジベカシン、ネブラマイシン、メトルザマイド、ネオマイシン、ピューロマイシン、ストレプトマイシン、および、ストレプトゾトシンを含む群から選択される1以上の抗生物質と一緒に用いられてもよいし、または、上記抗生物質によって置換されてもよい。本発明のポリヌクレオチドのアジュバント組成物における抗生物質(例えばカナマイシンなど)の濃度は、約10ユニット/mlから100,000ユニット/mlまでであり、好ましくは約100ユニット/mlから10,000ユニット/mlまでであり、より好ましくは約500ユニット/mlから5,000ユニット/mlまでである。
【0113】
本発明の特定の実施の形態では、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物は、陽イオン(カチオン)をさらに含有している。上記陽イオンは、通常は2価のカチオンであり、普通はアルカリ金属のカチオンである。また、上記陽イオンは、本発明の組成物において塩または複合体(例えば、有機もしくは無機の塩、または、複合体であり、通常は無機塩もしくは有機複合体である)などの陽イオンの源として提供される。典型的な陽イオンとしては、カルシウム、カドミウム、リチウム、マグネシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、重水素、ガリウム、ヨウ素、鉄、または、亜鉛などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
本発明の組成物における陽イオン(例えばカルシウム)の濃度は、約10μmolから10mmol/mlであり、好ましくは約50μmolから5mmol/mlであり、より好ましくは、約100μmolから1mmol/mlである。
【0115】
上述したように、陽イオンは、塩化物、フッ化物、水酸化物、リン酸塩、または、硫酸塩などを含む任意の適切な塩または有機複合体の形態で提供されてもよい。例えば、陽イオンがカルシウムである場合は、イオンは、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、または、硫酸カルシウムの形態であってもよい。
【0116】
本発明のアジュバント組成物における陽イオンが、カルシウムである場合、カドミウム、リチウム、マグネシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、重水素、ガリウム、ヨウ素、鉄、および、亜鉛などの他の陽イオンと組み合わされて用いられてもよいし、または、上記他のイオンによって置換されてもよい。上記他のイオンは、無機塩または有機複合体の形態であってもよい。
【0117】
生じた組成物は、規定された分子量および/または分子サイズを有する分子の単離に関係する追加の製造工程を通して、PIKAに変えられる。ろ過、クロマトグラフィー、熱処理、遠心分離、電気泳動、および標準の処理である類似の方法を用いて、特定の特徴のポリヌクレオチド分子を分離する方法は、当業者に公知である。
【0118】
本発明の特定の実施の形態では、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物は、分子量という物理的特質によってさらに規定される。驚くことに、調査研究の間、分子量とポリヌクレオチドのアジュバント組成物の有効性との間に、正の相関があるということが発見された。ポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子量が増加するとき、免疫グロブリンおよびサイトカインの産生を誘発する能力を含んでいる、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を含有している免疫原性組成物の効能の観測レベルが増加する。ポリヌクレオチドのアジュバントの分子量を、実施例1に記載されているようなアガロースゲル電気泳動によって決定することができる。
【0119】
下記の〔実施例〕の区分において説明されるように、本発明の発明者は、様々な分子量のPIKAアジュバントを含有しているワクチン組成物が、分子量と抗原特異的な防御効能との間に直接的な相関を示すことを発見した(実施例2を参照のこと)。同様に、本発明の発明者は、PIKAのアジュバント組成物の分子量と、狂犬病抗原と組み合わされて宿主に投与されたときにインターフェロン‐ガンマの産生を誘発する能力との間に直接的な相関があることを発見した(実施例3を参照のこと)。
【0120】
また、本発明の発明者によって、驚くことに、特定の高分子量の規格であるPICKCaを含んでいるアジュバントと一緒に狂犬病ワクチンを用いた、1996年の中国におけるヒトの臨床試験の期間に、生じた組成物が、許容できないレベルの副作用を有していることを示すことが確認された。以前には出版されていない1996年の臨床試験の結果は、実施例4に示されている。分子量に関する研究は、実施例5および6に示されている。臨床試験は、中国国家食品薬品監督管理局の管轄のもと実施された。したがって、もし、そのような副作用がその時点における知識に基づいて予想されていたとしても、上記アジュバントは、管理された臨床試験の環境においてヒトに投与されていなかったと考えられる。
【0121】
本発明の発明者は、前臨床研究のときに、分子量が1.0×10以下である本発明のPIKAアジュバント組成物、および、分子量が5.5×10以下であるPIKAアジュバント組成物を含有しているワクチン組成物が、特異的な毒性試験において幅広い安全マージンを実証することを発見した(実施例7を参照のこと)。最大分子量が1.2×10であるPIKAは、前臨床研究において、首尾よく用いられた(実施例3を参照のこと)。また、本発明の発明者によって実施された研究により、ワクチンの形態で抗原性化合物と併用されて用いられたときの、PIKAの安全性が実証された。
【0122】
本発明の発明者により、2002年に中国で実施されたその後の実験の結果によれば、PIKAの使用によって、ヒトにおいて、安全で且つ有効なアジュバントが提供されることが実証された。この実験の結果は、以前に出版されておらず、実施例9に示されている。
【0123】
したがって、上記の観測に基づけば、PIKAの好ましい実施の形態では、効能および有効性の増加から利益を提供するとともに、任意の有害な副作用を誘導しないような十分な安全マージンの程度を提供する、分子量および/または分子サイズという物理的特徴を有する分子が含まれる。Av‐PICKCaに存在する分子(分子量がその範囲の低い方の端である)は、抗ウィルス組成物として有効でありえるが、その効果は、免疫原性組成物に含まれるアジュバントとして用いられたときのPIKA分子組成物の効果よりも、著しく弱い。さらに、PIKAは、PICKCaよりも好ましい安全プロフィールを有していることが示された。
【0124】
したがって、本発明の1態様は、本発明の組成物におけるPIKAの分子量である。
【0125】
本発明のPIKAの組成物は、一般的に、分子の収集物または集団を含んでおり、上記分子は、免疫反応を誘発するときに所望の効果を提供するとともに、好ましくは、有害な副作用(PICKCaの投与に関連する有害な副作用など)を緩和するか、もしくは、回避する物理的特徴(例えば分子量および/または分子サイズ)を有している。一般的に、PIKAの分子は、分子量および/または分子サイズに関して不均一である。
【0126】
本明細書に一般的に用いられるように、そして、他に具体的に指示されない限りは、本発明のアジュバント組成物であるPIKAは、抗生物質(例えばカナマイシン)および陽イオン(例えばカルシウム)と一緒に複合体を形成していてもよい、PICを含有している。PIKAの分子は、分子量または分子サイズにおいて不均質である。上記分子量は例えばダルトンによって評価され、上記分子サイズは沈降係数によって評価される。
【0127】
範囲が、PIKA分子の不均質な特徴(例えば分子量または分子サイズ)を参照することに用いられる場合、本明細書におけるそのような範囲の参照は、組成物におけるPIKA分子の分子量または分子サイズの、おおよその上限と下限とを示している。ゆえに上記参照は、上記組成物が、範囲内の全ての分子量あるいは分子サイズを代表する分子量または分子サイズを有するPIKA分子を含んでいることを暗示するわけでもないし、もしくは、意図するわけでもない。したがって、約66,000ダルトンから1,200,000ダルトンである分子量の範囲は、約66,000ダルトンおよび約1,200,000ダルトンのPIKA分子が、組成物に含まれていることを示し、88,000ダルトンのPIKA分子が、組成物に存在することを必要とするわけではない。しかし、そのようなものが、実際に存在していてもよい。
【0128】
本発明の組成物においてPIKA分子の物理的特徴が、分子量の範囲によって規定される場合、PIKA分子は分子量に関して不均質であり、当該分子量の範囲は、約300,000ダルトンから660,000ダルトンまで、約300,000ダルトンから1,200,000ダルトンまで、約66,000ダルトンから660,000ダルトンまで、または、約66,000から1,200,000ダルトンまでである。
【0129】
また、本発明は、分子量に関して不均質であるPIKA分子を有する組成物を意図しており、上記分子量の範囲は、約300,000ダルトンから2,000,000ダルトンまで、約300,000ダルトンから4,000,000ダルトンまで、約500,000ダルトンから1,000,000ダルトンまで、約1,000,000ダルトンから1,500,000ダルトンまで、約1,500,000ダルトンから2,000,000ダルトンまで、約2,000,000ダルトンから2,500,000ダルトンまで、約2,500,000ダルトンから3,000,000ダルトンまで、約3,000,000ダルトンから3,500,000ダルトンまで、約3,500,000ダルトンから4,000,000ダルトンまで、約4,000,000ダルトンから4,500,000ダルトンまで、または、約4,500,000ダルトンから5,000,000ダルトンまでである。これらの範囲の上限および下限、ならびに、これらの範囲内の分子量を有するPIKA分子が、組成物に存在している。
【0130】
本発明の組成物におけるPIKA分子の物理的特徴が、平均分子量によって規定される場合、PIKA分子の平均分子量は、150,000ダルトン以上、250,000ダルトン以上、350,000ダルトン以上、500,000ダルトン以上、650,000ダルトン以上、750,000ダルトン以上、1,000,000ダルトン以上、1,200,000ダルトン以上、1,500,000ダルトン以上、または、2,000,000ダルトン以上である。
【0131】
本発明の組成物におけるPIKA分子の物理的特徴が、分子量と分子サイズとの尺度である沈降係数によって規定される場合、PIKA分子の沈降係数は、9よりも大きくてもよいし、約12よりも大きくてもよいし、約13.5よりも大きくてもよいし、15よりも大きくてもよいし、16よりも大きくてもよいし、17よりも大きくてもよいし、18よりも大きくてもよいし、19よりも大きくてもよいし、20よりも大きくてもよいし、21よりも大きくてもよいし、22よりも大きくてもよいし、25よりも大きくてもよいし、または、30よりも大きくてもよい。
【0132】
いくつかの実施の形態では、本発明は、ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、カナマイシン、および、カルシウムを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、当該アジュバント組成物から、約30,000ダルトンより小さい、約40,000ダルトンより小さい、約50,000ダルトンより小さい、約60,000ダルトンより小さい、約70,000ダルトンより小さい、約80,000ダルトンより小さい、約90,000ダルトンより小さい、約100,000ダルトンより小さい、約150,000ダルトンより小さい、約200,000ダルトンより小さい、約250,000ダルトンより小さい、約300,000ダルトンより小さい、約350,000ダルトンより小さい、約400,000ダルトンより小さい、約450,000ダルトンより小さい、約500,000ダルトンより小さい、約600,000ダルトンより小さい、約700,000ダルトンより小さい、約800,000ダルトンより小さい、約900,000ダルトンより小さい、または、約1,000,000ダルトンより小さい分子量を有する分子が検出可能な量だけ除かれている組成物を提供する。この実施の形態では、そのような低分子量の分子の除去は、除去される分子が有効な免疫原性効果を有していない範囲で実施されることが、特に有益である。
【0133】
分子量が1.0×10ダルトン以下である分子を含有しているPIKAは、動物を用いた特異的な毒性試験において安全であることが、本発明の発明者によって示された(実施例7を参照のこと)。分子量が1.2×10ダルトン以下である分子を含有しているPIKAは、前臨床研究において安全に用いられた(実施例3を参照のこと)。また、PIKAを免疫原性組成物に用いたとき、PIKAは安全であることも示された(実施例8を参照のこと)。そのようなPIKA組成物は、有効性の観点から有益であるといえる。分子量が6.6×10ダルトン以下である分子を含有しているPIKAも、ヒトおよび動物に用いられたときに、より幅広い安全マージンを有する効果的な免疫反応を誘発する。存在する最小分子の分子量を6.6×10ダルトンまで、好ましくは、3.0×10まで上昇させることにより、安全基準を損なうことなくアジュバントの有効性が改良される。
【0134】
また、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物の濃度によって、当該組成物に含まれている分子の分子量が影響を受けうることが発見された。PICKCaの分子量は、アジュバント組成物の濃度が増加したときに(実施例5を参照のこと)、増加することが示された。本発明の発明者は、ポリヌクレオチドのアジュバントの濃度が増加することにより、PICKCa分子の合体(凝集)が引き起こされることがあり、その結果、大きい分子量を有する分子が生じることを観測した。この過程は不可逆であることが示された。したがって、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物を適切な媒質において希釈した後では、アジュバント分子の分子量は減少しない。実施例6において観測されるように、濃縮された巨大分子状のポリヌクレオチドのアジュバント組成物が、狂犬病抗原と組み合わされたとき、高分子量の範囲を保有する組成物が生まれる結果になる。このようにして形成された狂犬病ワクチンにおける、有害な副作用が、ヒトの臨床試験において実証された(実施例4を参照のこと)。
【0135】
本発明のPIKA組成物は、本明細書に用いられている任意の生理的に許容可能な緩衝液に溶解した状態で提供されることができる。上記緩衝液としては、リン酸緩衝液が好ましい。また、酢酸緩衝液、トリス緩衝液、重炭酸緩衝液、または炭酸緩衝液などの他の生理的に許容可能な緩衝液が、リン酸緩衝液の代わりに用いられてもよい。
【0136】
水性成分のpHは、好ましくは4.0〜10.0の間であってもよい。しかし、次のことが当てはまる場合は、系のpHが6から8.5までに調節されることが好ましい。すなわち、調節されるpHが組成物の他の成分の安定性を減少させず、且つ、その他の点において生理的に不適切ではない場合である。特定の実施の形態では、免疫原性組成物の水性部は、緩衝食塩水である。上述した組成物が非経口的に投与されることを意図されている場合、組成物と生理液とにおいてイオン濃度が異なるために、組成物が迅速に吸収されること、または、投与後に腫れることを防ぐために、張性(すなわち浸透圧)が、正常な生理液と基本的に同じであるように、上述した溶液が作成されていることが好ましい。
【0137】
上述した組成物において使用される緩衝食塩水の量は、組成物の値を1単位にするのに必要な量である。すなわち、100%にするのに十分な量の緩衝食塩水が、組成物を体積(volume)にするために他の成分と混合される。
【0138】
特定の実施の形態では、抗原は、自然源から精製されてもよいし、または、固相合成をもちいて合成されてもよいし、あるいは、遺伝子組み換えを用いて得られてもよい。抗原は、分子の1以上の免疫原性領域を含有しているタンパク質断片を含んでいてもよい。また、抗原は、細胞全体もしくは微生物(例えばウィルス粒子)の形態で提供されることもできる。それらは生きていてもよいし、弱毒化されていてもよいし、切断されていてもよいし、または、殺されていてもよい。
【0139】
他の実施の形態では、抗原は、病原菌、植物抗原、癌、アレルギー性物質、および、他のヒト抗原(例えば自己免疫疾患を発症させるような抗原)に由来する1以上の作用物質を含んでいる。他の実施の形態では、抗原は、ウィルス、細菌、マイコバクテリウム、真菌、および、寄生虫の何れかに由来する1以上の病原菌を含んでいる。
【0140】
また、本発明のポリヌクレオチドのアジュバント組成物は、DNAワクチンの使用によって産生される抗原に対する免疫反応を増強するために利用されることができる。上記DNAワクチンにおける、抗原をコードするDNA配列は、「裸」であってもよいし(裸のDNA)、または、リポソームなどの送達システムに含まれてもよい。
【0141】
特定の実施の形態では、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物は、ワクチンと組み合わせて用いられることができる。上記ワクチンにアジュバントが含まれていてもよいし、または、含まれていなくてもよい。ワクチンの種類には、抗感染症、抗癌、抗アレルギー、抗自己免疫疾患、および、免疫避妊が含まれる。
【0142】
また、本発明は、任意の適切な狂犬病抗原と組み合わせた、本発明のポリヌクレオチドのアジュバントの使用も意図している。
【0143】
特定の実施の形態では、上記狂犬病抗原は、ハムスター腎細胞不活性化未精製狂犬病抗原(HKC‐ICRA)などの不活性化された未精製の狂犬病抗原であってもよいし、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)などの不活性化された精製の狂犬病抗原であってもよい。
【0144】
特定の実施の形態では、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物は、狂犬病ワクチンと一緒に用いられてもよい。適切な狂犬病ワクチンは、(i)市販のワクチンか、または(ii)不活性化され、組み換えられた、ペプチドのサブユニットワクチン(ヒト2倍体細胞ワクチン(HDCV)、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病ワクチン(HKC‐IPRV)、ハムスター腎細胞不活性化未精製狂犬病ワクチン(HKC‐ICRV)、精製ベロ細胞狂犬病ワクチン(PVRV)、精製ニワトリ胚細胞(PCEC)、または、精製アヒル胚ワクチン(PDEV)など)を含む研究において開発されたワクチンである。しかしながら、全ての狂犬病ワクチンが、暴露前後の免疫化において重要である、細胞性免疫反応を誘発するわけではない。ポリヌクレオチドのアジュバント組成物(例えばPIKA)が狂犬病ワクチンと投与されたときに、誘導される免疫反応には、非特異的免疫反応(例えばマクロファージの機能が増加する)、体液性免疫反応(特異的抗体の産生が増加する)、および細胞性免疫反応(例えばインターフェロンおよびインターロイキン2を含むサイトカインが産生される)が含まれる。
【0145】
特定の実施の形態では、本発明は、ポリヌクレオチドのアジュバント、および、抗原性化合物を含有しているキットを提供する。
【0146】
PIKAを含有している免疫原性組成物は、(1)体液性免疫反応および(2)細胞性免疫反応(CMI)の2つの様式の特異的免疫反応を誘導することができる。上記体液性免疫は、B細胞の刺激および抗体(免疫グロブリン)の生産を含んでいる(また、他の細胞(例えば抗原提示細胞(APC、マクロファージなど)、および、ヘルパーT細胞(Th1およびTh2))も抗体反応の発生に関与している。)。上記細胞性免疫は、一般的に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)などのT細胞と関係している。しかし、他の細胞(例えばTh1細胞および/またはTh2細胞、ならびに、APC)もCTL反応の発生に関与している。個々における体細胞性免疫反応および/または細胞性免疫反応を評価する方法は、技術的に公知である(実施例10、11、12、および13を参照のこと)。
【0147】
また、ポリヌクレオチドのアジュバント組成物により、産生される免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)が影響を受けることによって、免疫反応の質およびそれらの親和性が変化することがある。上記サブクラスは、ヒトのIgGsについてはIgGl、IgG2、IgG3およびIgG4であり、マウスのIgGsについてはIgGl、IgG2a、IgG2b、およびIgG3である。
【0148】
マウスでは、Th1細胞によって調節される反応によって、IgGl、IgG2a、IgG2bが誘導されることになり、IgG3がより少ない程度で誘導されることになる。また、上記反応によって、抗原に対する細胞性免疫反応が促進されることにもなる。抗原に対するIgG反応がTh2型の細胞によって調節された場合、IgG1およびIgAの産生が主に増強されることになる。
【0149】
驚いたことに、PIKAのアジュバントおよびハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原の組成物を用いたNIH効能試験によれば、当該組成物の免疫原性効能が最小量の狂犬病抗原の存在を必要としていることを示した(実施例14を参照のこと)。上記組成物の効能は、追加の狂犬病抗原が1IUよりも多く存在するときと比較して、急激に増加した。したがって、上記組成物の効能の増加割合が、当該組成物に存在する狂犬病抗原が約1.5IU〜2.5IUであるときに最も大きいことが観測された。NIH効能試験は、「Laboratory Techniques in Rabies, Edited by F X Meslin, M M Kaplan H Koprowski, 4th Edition, ISBN 92 4 1544 1」に記載されている。
【0150】
PIKAアジュバントおよびハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原の組成物を用いた試験によって、上記組成物の免疫原性効能は、存在するアジュバントの量が、存在する抗原の量よりも多くなったときに、増加することが実証された。PIKAのハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原に対する比が、好ましくは3よりも大きい:1という比で増加したときに(すなわち、PIKAが上記狂犬病抗原の3倍よりも多くなったとき)、上記効能は増加した(実施例15を参照のこと)。
【0151】
本発明は、例えば、抗原に特異的な体液性免疫反応および/または抗原に特異的な細胞性(例えばT細胞)免疫反応を被検体に誘発するための、抗原と一緒に本発明のポリヌクレオチドのアジュバントを使用する方法を意図している。誘発された免疫反応は、未免疫の(ナイーブな)被検体の抗原と反応することもあるし、また、存在する免疫反応を追加免疫などで増強することに役立つこともある。
【0152】
特定の実施の形態では、PIKAのアジュバント組成物、および、PIKAのアジュバントと抗原性化合物とを含有している免疫原性組成物は、固体状で長期間安定に保存するために凍結乾燥されてもよい。凍結乾燥の方法は、当業者に公知である。PIKAと抗原性化合物とを含有している免疫原性組成物の凍結乾燥物を元に戻したもの(reconstitution)において、効能のレベルが維持されていることが実証された(実施例16を参照のこと)。
【0153】
免疫原性組成物は、注入可能物質、溶液、懸濁液、または、乳濁液として調製されることがある。所望の免疫原性組成物の製剤の調製は、一般的に、Vollerらによって編集された「New Trends and Developments in Vaccines, University Park Press, Baltimore, Md., USA, 1978」に記載されている。本発明の免疫原性組成物は、経口投与のための形態、あるいは、滅菌された液体の形態で使用されてもよい。上記経口投与のための形態としては、カプセル、溶液、乳濁液、懸濁液、または、エリキシール剤が挙げられる。上記滅菌された液体としては、溶液、乳濁液、懸濁液などが挙げられる。好ましくは、任意の不活性担体が用いられる。上記不活性担体としては、生理食塩水、または、リン酸緩衝液、あるいは、本発明の方法において使用するために、本発明の方法に用いられる化合物が、適切な溶解特性を有するような任意の担体が挙げられる。
【0154】
本発明の免疫原性組成物を、公知の様々な方法を用いて被検体に投与することができる。特定の実施の形態では、免疫原性組成物を、注射または吸入によって非経口的に送達することができる。上記注射としては、筋肉注射、腹腔内注射、静脈注射、または、皮下注射などが挙げられる。他の実施の形態では、免疫原性組成物を、経直腸的に、経膣的に、経鼻的に、経口的に、経目的に、局所的に、経皮的に、または、皮内的に、送達することができる。投与形態が注射であるとき、カプセルに包まれた抗原性化合物は、最大で2週間注射部位に留まり、これにより、インビボにおいて持続放出または脈動的放出を生み出すことになる抗原の蓄積所が提供される。そのような送達システムによって、免疫反応を誘発するために複数の注射を、ともすれば必要とするであろう抗原性化合物のための単発の免疫原性製剤を製造することが可能になることがある。
【0155】
水性の溶液による非経口的な投与のために、例えば、溶液は、必要に応じて適切に緩衝されているべきであり、始めに十分な生理食塩水またはグルコースと等張にされた液体希釈剤であるべきである。これらの特定の水性溶液は、静脈投与および腹腔内投与に特に適している。このことに関して、使用されることが可能な滅菌された水性媒質は、現在の開示の観点から当業者に公知である。本発明に用いられることが可能である典型的な注入媒質には、分散剤および/または防腐剤、食用油、鉱物油、タラ肝油、スクワレン、モノ‐、ジ‐、もしくはトリ‐グリセリド、および、それらの混合物を含んでいるか、または含んでいない緩衝液が含まれる。
【0156】
必要とされるそのような組成物の正確な量は、被検体の種、年齢、体重、および一般的な状態、病気の重症度、感染、または、治療もしくは予防される病気、用いられる特定の化合物、ならびに、投与形態などに応じて、被検体ごとに変化する。適切な量は、本明細書に技術を供給された単なる通常の実験法を用いる当業者によって決定されてもよい。初期投与の後に、被検体は、十分な間隔が空けられる追加免疫を1またはいくつか受けてもよい。
【0157】
上述した開示は、一般的に本発明を記載したものである。下記の実施例により、本発明がより理解し易くなるが、これらの実施例は、単なる説明のために記載されたものであって、本発明の範囲を限定することを意図していない。状況が都合のよいものを示唆または示すことがあるときは、形式の変化、および、同等物との置換が、意図されている。本明細書において特定の用語が用いられていたが、そのような用語は意味の記述を意図されているものであって、それに限定されるわけではない。
【0158】
〔実施例〕
(実施例1)PIKAおよびAv‐PICKCaの分子量の決定方法
本実施例では、Av‐PICKCaと比較したPIKAアジュバントのための分子量の決定方法について説明する。
【0159】
アガロースゲル電気泳動法に関しては、従来から公知な方法であるので、本明細書では、本発明に係る各事項のみについて記述される。本発明において使用されるアガロースゲルは、アガロース濃度が1.5%である。各分子マーカーは、100bpから1000bpまでの100bpDNAラダーである。100bpから1000bpまでの対応する分子量の範囲は、それぞれ、6.6×10ダルトンから6.6×10ダルトンまでである。試料の充填は、1mg/mlにて4μlであった。図1は、本文節にて示す技術的な開示に続く、アガロースゲル上での試料の展開結果を示す代表的な画像である。試験された5つの互いに異なる各バッチは、それらの分子量の分布において広い範囲を有するものであることを示している。上記各バッチの分子量の上限値は、Av‐PICKCaの2.3×10ダルトンから、PIKAの5.28×10ダルトンまでである。
【0160】
(実施例2)Av‐PICKCaと比較したPIKAの免疫の有効性
本実施例は、最大分子量が230,000のAv‐PICKCaの効能と、最大分子量528,000ダルトンまでのPIKAの各試料との間の相違点を示す。
【0161】
互いに分子量が異なるPIKAアジュバントの3つの各バッチ、および、Av−PIKAの分子量と対応する分子量を示すPIKAアジュバントの1つのバッチは、それぞれ、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)と組み合わされた。得られた各組成物について、NIHの有効性試験を行った。
【0162】
上記NIHの試験は、調査対象の各狂犬病ワクチンと、狂犬病ワクチンの標準品との間の厳密で、膨大な比較研究の結果である。ワクチン注射された各マウスは、生きた狂犬病ウィルスの1種(ストレイン)により感染させ、それら各マウスの生存率を測定した。上記各マウスの互いに異なる各グループは、互いに異なる希釈率の狂犬病ワクチンが投与された。各マウスにおける、実験用のワクチンと、標準化ワカチンとが投与された各グループの各生存率の比較により、上記実験用のワクチンの効能が決定された(Laboratory Techniques in Rabies, Edited by F. X. Meslin, M. M. Kaplan H. Koprowski, 4th Edition, ISBN 92 4 1544 1)。
【0163】
組み合わされたワクチン毎の有効性は、標準品の組み合わされていないワクチンに対して標準化された。上記組み合わされていないワクチンの有効性を、「1」として示した。相対的な有効性は、組み合わされたワクチンの有効性が、上記組み合わされていないワクチンに対して増加した時間として示された。表1は、上記各測定結果をまとめたものである。表1から分かるように、PICKCaアジュバントの分子量が高くなるほど、狂犬病ワクチンの有効性の増加という有効性がより高くなる。
【0164】
【表2】

【0165】
(実施例3)PIKAとAv‐PICKCaと間でのインターフェロン産生の比較
本実施例は、最大分子量が230,000のAv‐PICKCaの各試料と、最大分子量1,200,000ダルトンまでのPIKAの各試料との間でインターフェロンの産生を誘発する能力の違いを示す。
【0166】
上限分子量が1.2×10ダルトンおよび4.6×10ダルトンのPIKAの各試料を、上限分子量が2.3×10ダルトンのAv‐PICKCaのバッチとを比較した。
【0167】
PIKA、Av‐PICKCaの各組成物は、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)とそれぞれ組み合わされた。上記組み合わされた各組成物を、各マウスの皮下にそれぞれ注射した。2時間後、マウス毎に存在するインターフェロン量を決定した。インターフェロン量の測定のための一般的な方法については従来から公知である。上記測定の方法について簡単に述べると、96ウエルプレートにおいて、ウエル毎に、L929細胞を、約3万個の細胞となる0.15ml/ウエルにて予め接種する。上記各細胞が集合体に成長した3日後に、各ウエル内に、血清試料(0.1ml/ウエル)を、1:20から1:640までに希釈して添加する。上記各ウエルは、37度にて一晩培養する。上記各血清試料は洗浄により除去される。水疱性口内炎ウィルス(VSV)粒子が、インターフェロン産生量を決定するために使用される。
【0168】
表2は、上記混合物によって誘発されるインターフェロン産生量を示す。表2から分かるように、PIKAの各試料の分子量が高いほど、インターフェロンの誘発された産生量が良好なものとなった。
【0169】
【表3】

【0170】
(実施例4)1996の人ワクチンの医療試験(毒性の副作用を有する)
本実施例は、ワクチンと組み合わせられたPICKCaアジュバント、人用に投与されたときの、許容できないレベルの副作用を生じることを示す。
【0171】
本実施例の研究の目的は、モル質量が69,700(本実施例では、モル質量はダルトンと等価ではないことに注意、実施例5を参照)であり、11.95mg/mlの濃度でのPICKCaアジュバントと、ハムスター腎細胞不活性化未精製狂犬病抗原(HKC−ICRA)とを含有している狂犬病ワクチンの安全な免疫反応を評価することであった。上記医療試験の結果および結論は、以前において、公的なドメイン(つまり、学会や報文や特許出願公開公報など)内に公開されていないものである。
【0172】
上記試験に参加した40名の患者は、20人ずつの2つの各グループに分けられた。それぞれのグループは、1日目、3日目、7日目、30日目に、2mlの5つの各投与量にて筋肉内に注射により投与された。1つのグループは、上記狂犬病抗原と共にPICKCaアジュバントが投与され、他のグループは、上記狂犬病抗原と共にアルミニウムアジュバントが投与された。
【0173】
安全性の観点から、各注射の後、24時間、48時間、72時間にて、体温、局所および全体での各病徴がそれぞれ観測された。以下に各観測結果を示した。
【0174】
【表4】

【0175】
全体的な各副作用は、発熱(1)、発疹(2)、関節痛(2)、リンパ節(1)、のどの腫れ(1)を含んでいた。局所的な各副作用は、注射部位での皮膚の赤変(6)を含んでいた。
【0176】
続いて、本発明者によって、上記アジュバント中での各分子の分子サイズにより観測された各副作用の原因について調べた(各実施例5および6を参照下さい)。
【0177】
(実施例5)PICKCaの濃度と分子量との間の関係
本実施例は、PICKCaアジュバントの濃度の増加が、PICKCaでの構成での分子量の増加を招来することを示した。
【0178】
PICKCaを、それぞれ異なる各濃度にて調製した。各ポリマーの複合体としてのPICKCaは、互いに異なる各濃度にて調製されたとき、異なる各形態にてそれぞれ存在しているものと仮定された。これら異なる各形態の測定目的のために、レーザ光散乱法が用いられた。レーザ光散乱法は、重量平均モル質量(Mw)および回転半径(Rg)の決定に広く使用されている。レーザ光散乱法の測定装置は、市販されていて容易に利用可能であり、その測定プロセスに関しては当業者であれば公知である。表4は、レーザ光散乱法によって測定されたPICKCaの分子量と上記PICKCaの濃度との相関を示す。
【0179】
【表5】

【0180】
(実施例6)PICKCaの前濃度とワクチンの分子量との間の関係
本実施例は、PICKCaアジュバントの増加させた分子量と、PICKCaおよびハムスター腎細胞不活性化未精製狂犬病抗原を含有している組成物の結果として得られた分子量との間の相関を示す。
【0181】
PICKCaの各試料の組み合わせる前の濃度が、各ワクチン内における各抗原に影響することも疑われた。PICKCaの各試料は、ハムスター腎細胞不活性化未精製狂犬病抗原と組み合わされた。上記影響を測定する目的のために、レーザ光散乱法が用いられた。レーザ光散乱法は、重量平均モル質量(Mw)および回転半径(Rg)の決定に広く使用されている。レーザ光散乱法の測定装置は、市販されていて容易に利用可能であり、その測定プロセスに関しては当業者であれば公知である。表5は、組み合わせる前のPICKCaの濃度の増加が、結果として各狂犬病ワクチンの分子量の増加を招来することを示す。
【0182】
【表6】

【0183】
(実施例7)PIKAの毒性試験
本実施例は、PIKAアジュバントの安全特性が、PIKAが最大分子量の限定のときに発揮されることを示す。
【0184】
毒性試験は、中国薬事標準(WSI-XG-050-2000)の各規定に基づいて実行された。簡潔に述べると、約18〜22グラムの体重を示す5匹の各マウスに対し、525,000ダルトンから1,000,000ダルトンまでの上限分子量を有する、0.3mgのPIKAアジュバントを含む0.5mlの塩化ナトリウム溶液を、マウス毎に静脈注射した。注射された各マウスは、7日間の間観察され、観察終了時の体重が測定された。表6は、PIKAアジュバントが、1.0×10ダルトンと高いと明確な毒性を示さなくなる結果を示す。
【0185】
【表7】

【0186】
(実施例8)ワクチン組成物内でのPIKAの毒性研究
本実施例での実験の目的は、PIKAアジュバントの安全性を評価することである。
【0187】
PIKAアジュバント(分子量が66,000ダルトンから660,000ダルトンまでのもの)が、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)に対し、PIKA:HKC‐IPRAの比が4:1の割合にて組み合わされた。
【0188】
PIKAおよびHKC‐IPRAの組成のワクチンは、アルミニウムアジュバントを含有している市販品のハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病ワクチンと比較された。
【0189】
各マウスは、上記ワクチン組成物が、5つの各投与量にて、初日、3日目、7日目、14日目、および28日目にて投与された。投与量は、通常の人への狂犬病の免疫設定規定下において、成人への投与量の約300倍に相当するものである。
【0190】
毒性の各観察結果は、以下の表7に示されている。
【0191】
【表8】

【0192】
上記表7の各数字は、(観察された発生数)/(トータル数)を示す。
【0193】
上述された結果は、PIKA/HKC‐IPRAの組み合わせが、市販品のIPRVの安全性が高いことである。
【0194】
(実施例9)人でのPIKAアジュバントの安全な使用
2002年において、5人の各志願者が、PIKA(分子量が66,000ダルトンから660,000ダルトンまでのもの)と、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)との組成物により免疫付与が試みられた。各志願者には、初日、3日目、7日目、14日目、および30日目に、上記ワクチン組成物が投与された。
【0195】
上記ワクチン投与毎の後において、上記各志願者である各患者にも、局所および全体的な各副作用が観察されなかった。
【0196】
上記ワクチンの効能を、標準NIH試験を用いて測定し、それらの結果を表8に示した。
【0197】
【表9】

【0198】
上記各結果は、PIKAとHKC‐IPRAとのワクチン組成物が、特有の免疫反応を誘発し、抗病原性の各中和抗体の産生を誘発していることを示す。
【0199】
(実施例10)ポスト暴露試験(免疫付与細胞)
ポスト暴露試験は、ワクチンが、感染したホスト体から病原を完全に除去する能力を最も厳密に証明する方法である。そのような証明は、上記ワクチンによって誘発される免疫付与細胞の応答の指標である。
【0200】
後露出試験では、各マウスは、狂犬病ウィルスの野生種にて感染させ、続いて、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)とPIKAアジュバント(分子量が1.65×10ダルトンから1.2×10ダルトンまでのもの)との組み合わせ、または、HKC‐IPRAと水酸化アルミニウム(Alum)アジュバントとの組み合わせ、または、市販品である精製ベロ細胞狂犬病ワクチン(PVRV)、またはリン酸バファ溶液(PBS)が接種された。結論としての各結果は、表9に示すように、PIKAアジュバントは、生存率を改善した。
【0201】
【表10】

【0202】
生きた狂犬病ウィルスが皮下注射されて感染した各マウスは、感染後、6時間、1日目、2日目、3日目にワクチンにて処理された。
【0203】
(実施例11)抗原により特有な免疫反応を示す細胞のインターフェロン‐ガンマの産生
インターフェロン‐ガンマの産生は、細胞に付与された免疫活性の指標である。
【0204】
本実施例での実験では、血の各試料を、2人の各試験患者および2人の各対照個人とから採取した。志願者である上記各試験患者は、上記血の各試料の採取の2年半前に、PIKA(分子量が66,000ダルトンから660,000ダルトンまでの範囲内もの)と、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)とを含有しているPIKA狂犬病ワクチンが接種されている。
【0205】
図2に示す各結果は、2人の各試験患者により産生されるインターフェロン‐ガンマが、2人の各対照個人と比較したとき顕著に相違する、つまり顕著に大きいことを示している。
【0206】
上記血の各試料から分離された各モノサイト(単球)を、上記試験と同様に、同一のHKC‐IPRAと共にそれぞれ培養した。培養3日後、細胞を含まない各上清液をそれぞれ採取し、上記各上清液内のインターフェロン‐ガンマの活性を、サイトカイン特異的なELISPOTにより測定した。上記ワクチンの接種量に依存した、上記活性の増加の効果が観測された。
【0207】
上記各観測結果から各結論は、以下の通りである。
・本発明のPIKAアジュバントを含有している狂犬病ワクチンは、細胞に免疫付与する応答を引き出すことが暗に示されたことによって、インターフェロン‐ガンマ産生を誘発する能力を有している。
・インターフェロン‐ガンマ産生の応答は、特有のものである。例えば、上記応答は、非特有な反応とは逆に、上記狂犬病抗原に対し方向づけられていた。もし、上記インターフェロン‐ガンマ産生の応答が、非特有なものであれば、抗原刺激体の濃度の増加に伴い、上記ワクチンが接種された各患者の血の、インターフェロン‐ガンマ産生のレベルにおいて変化しないはずである。
【0208】
(実施例12)PIKAの有効性試験
本実施例の実験の目的は、インターフェロン‐ガンマおよびインターロイキン12(IL‐12)の産生を引き出す、PIKAの能力を示すことである。
【0209】
通常の健康な各マウスからのスプレノサイトの各試料を、PIKA(分子量が66,000から660,000までの範囲内もの)の存在下、クリーンな環境内にて、3日の期間を通して培養した。上記期間の終了時に、上記各試料の各上清液内におけるサイトカインの活性レベルを、IL‐12(p40)およびインターフェロン‐ガンマに特異的なELISA試験により測定した。上記実験の各結果を以下の表10に示す。
【0210】
【表11】

【0211】
上記実験からの結論は、PIKAが、以上のように細胞に対し免疫反応を付与することにより、PIKAの投与量に依存して、インターフェロン‐ガンマおよびIL‐12の各サイトカインの産生増を引き出すことである。
【0212】
さらに他の実験では、4匹の各マウスに対し、PIKA(分子量が66,000ダルトンから660,000ダルトンまでの範囲内もの)を、500μg/1マウスにて腹腔内注射にて投与した。リン酸バッファ溶液(PBS)が、ネガティブ対照試験として使用された。注射の5時間後に、血の試料が採取され、その試料から血清が調製された。上記血清内の各サイトカインの活性レベルを、IL‐12(p40)およびインターフェロン‐ガンマに特異的なELISA試験により測定した。上記実験の各結果を以下の表11に示す。
【0213】
【表12】

【0214】
上記実験の結論は、PIKAが、細胞に対し免疫付与する応答を刺激、促進する効果を有することである。
【0215】
(実施例13)不活性化精製ベロ細胞狂犬病抗原と共のPIKAの使用
本実施例の実験の目的は、不活性化精製ベロ細胞狂犬病ワクチン(PVRV)と組み合わされたPIKAの効果を評価することである。
【0216】
PIKA(分子量が66,000ダルトンから660,000ダルトンまでの範囲内もの)を、PVRVと組み合わせて狂犬病ワクチンを形成した。NIH試験が、上記得られたワクチン組成物のワクチンの効能の評価に使用された。得られた各結果を以下の表12に示す。
【0217】
【表13】

【0218】
上記各結果から引き出されて結論は、PIKAが、不活性化精製ベロ細胞狂犬病ワクチンのワクチンの効能を増強することである。
【0219】
(実施例14)抗原の投与量
本実施例の実験は、特有の免疫反応における、実質的に増強されたレベルを引き起こす(トリガーする)ための、PIKA(分子量が66,000ダルトンから660,000ダルトンまでの範囲内もの)と共に上記組成物内に存在するハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)の最小量のための必要条件を示す。
【0220】
順次増加させた量の抗原を、0.1mgにて一定のPIKAアジュバントにそれぞれ添加した。上記各ワクチン組成物のワクチンの効能を、NIHの標準狂犬病ワクチンの効能試験を用いてそれぞれ測定した。上記各測定結果においては、ワクチンの効能の、予想可能な初期の増加に続いて、抗原の大幅な添加により予想されたワクチンの効能の低下の前に、顕著で大幅なワクチンの効能の増加が観測された(表13参照)。
【0221】
【表14】

【0222】
上記ワクチンの効能のマージナル増加とは、存在するHKC‐IPRAの1IUの添加により観測されたHKC‐IPRA/PIKAワクチンのワクチンの効能の増加である。
【0223】
上記実験結果から引き出される結論は、実質的な免疫反応を誘発する前に、最小限の存在でも抗原が必要なことである。その上、上記トリガー点を超える過剰量の抗原は、ワクチンの効能において、単にマージナルな増加を元に戻すのみなことである。
【0224】
(実施例15)抗原とアジュバントとの比
本実施例の実験は、ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)と、PIKA(分子量が66,000ダルトンから660,000ダルトンまでの範囲内もの)との最適な混合比を示す。
【0225】
種々な各量の抗原と、種々な各量のアジュバントとを混合し、PBSを用いて一定の合計量にとした。得られた各ワクチンのワクチンの効能を、NIHワクチンの効能試験を用いてそれぞれ決定した。得られた各知見は表14に示す。
【0226】
上記組み合わされた各ワクチンの試験結果の考察から、ワクチンの最適な組み合わせが、PIKAの抗原への比が少なくとも3:1の範囲内であることを示す。
【0227】
【表15】

【0228】
(実施例16)PIKAおよび狂犬病ワクチンと組み合わされたPIKAの凍結乾燥による貯蔵
本実施例は、PIKAが凍結乾燥の形態にて安定なものであることを示す。
【0229】
凍結乾燥技術は、狂犬病ワクチンの長期間(3年まで)での貯蔵に今まで使用されてきた。本発明者は、PIKA(分子量が66,000から660,000までの範囲内もの)およびPIKAを含有している各狂犬病ワクチンの凍結乾燥貯蔵が有効か否かを試験することについて研究した。以下に示す各組成物を凍結乾燥貯蔵のために用いた。i)元に戻された凍結乾燥のハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原(HKC‐IPRA)に添加された、未凍結のPIKA。ii)元に戻された凍結乾燥の(PIKA+HKC‐IPRA)組成物。iii)元に戻された市販品の凍結乾燥の狂犬病ワクチン(PIKAの添加無し)。iv)未凍結で、市販品の狂犬病ワクチン。表15は、凍結乾燥された、PIKAおよび狂犬病ワクチンを含有しているPIKAが、各狂犬病ワクチンの長期間での貯蔵に理想的なものであることを示す。
【0230】
【表16】

【0231】
本発明は、上記の特定な各実施例を参照して記述されている一方、上記各実施例は本発明を説明するものであって、本発明の権利範囲を何ら限定しないものであることが容易に理解されるであろう。本発明の他の各実施例は、本発明に関与する当業者には明白なものになるであろう。以上のような他の各実施例については、本発明の範囲と精神の範囲内にて容易に導き出されるものである。したがって、本発明の権利範囲は、添付された本発明の請求の各範囲によって記述され、上記明細書の記載によりサポートされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】Av‐PICKCaおよびPIKAの試料に関する相対分子量を示す図である。
【図2】PIKAによって、特異的なインターフェロン‐ガンマのサイトカインの用量依存的な産生が誘導されることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、抗生物質、および、陽イオンを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記アジュバント組成物が、分子量に関して不均質なポリヌクレオチドのアジュバント組成物の分子を含んでおり、上記分子量の範囲が、約66,000から1,200,000ダルトンまでの範囲であるか、または、分子サイズの範囲が約6.4から24.0スベドベリまでである、アジュバント組成物。
【請求項2】
上記ポリヌクレオチドのアジュバント組成物が、約300,000から1,200,000ダルトンまでの範囲の分子量を有しているか、または、約12.8から24.0スベドベリまでの範囲の分子サイズを有している、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項3】
上記ポリヌクレオチドのアジュバント組成物が、約66,000から660,000ダルトンまでの範囲の分子量を有しているか、または、約6.4から18.3スベドベリまでの範囲の分子サイズを有している、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項4】
上記ポリヌクレオチドのアジュバント組成物が、約300,000から660,000ダルトンまでの範囲の分子量を有しているか、または、約12.8から18.3スベドベリまでの範囲の分子サイズを有している、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項5】
ポリリボイノシン酸‐ポリリボシチジル酸(PIC)、抗生物質、および、陽イオンを含有しているポリヌクレオチドのアジュバント組成物であって、上記ポリヌクレオチドのアジュバント組成物が、150,000ダルトン以上の平均分子量を有しているか、または、9.3スベドベリ以上の平均分子サイズを有している、アジュバント組成物。
【請求項6】
上記ポリヌクレオチドのアジュバント組成物が、250,000ダルトン以上の平均分子量を有しているか、または、11.8スベドベリ以上の平均分子サイズを有している、請求項5に記載のアジュバント組成物。
【請求項7】
上記ポリヌクレオチドのアジュバント組成物が、350,000ダルトン以上の平均分子量を有しているか、または、15.3スベドベリ以上の平均分子サイズを有している、請求項5に記載のアジュバント組成物。
【請求項8】
上記抗生物質が、カナマイシン、ネオマイシン、アントラサイクリン、硫酸ブチロシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、アミカシン、ジベカシン、ネブラマイシン、メトルザマイド、ピューロマイシン、ストレプトマイシン、または、ストレプトゾトシンである、請求項1〜7の何れか1項に記載のアジュバント組成物。
【請求項9】
上記陽イオンが、カルシウム、カドミウム、リチウム、マグネシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、重水素、ガリウム、ヨウ素、鉄、または、亜鉛であり、当該陽イオンが、無機塩または有機複合体の形態である、請求項1〜8の何れか1項に記載のアジュバント組成物。
【請求項10】
上記陽イオンの源が、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、または、硫酸カルシウムである、請求項1〜9に記載のアジュバント組成物。
【請求項11】
上記抗生物質が硫酸カナマイシンであり、上記陽イオンが塩化カルシウムによって提供される、請求項1〜7に記載のアジュバント組成物。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載のアジュバント組成物と、抗原性化合物とを含有している、キット。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載のポリヌクレオチドのアジュバント組成物と、抗原とを含有している、免疫原性組成物。
【請求項14】
上記抗原の源が、ヒト、ヒトではない動物、植物、細菌、真菌、ウィルス、寄生虫、または、腫瘍である、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
上記抗原が、狂犬病抗原である、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
上記抗原が、不活性化精製狂犬病抗原である、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
上記ハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原の含有量が、1国際単位よりも多い量である、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
上記ポリヌクレオチドのアジュバント組成物とハムスター腎細胞不活性化精製狂犬病抗原との存在比が、3よりも大きい:1である、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
上記免疫原性組成物が、増強され、組み合わされた特異的な体液性免疫反応および/または細胞性免疫反応を誘発することができるアジュバントを含有している、請求項1〜18の何れか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
上記免疫原性組成物または上記免疫原性組成物に含有されている上記アジュバント組成物が、固体もしくは液体の状態であるか、または、溶液もしくは懸濁液である、請求項1〜19の何れか1項に記載のアジュバント組成物または免疫原性組成物。
【請求項21】
上記アジュバント組成物および/または免疫原性組成物が、凍結乾燥されている、請求項1〜20の何れか1項に記載のアジュバント組成物または免疫原性組成物。
【請求項22】
請求項1〜21の何れか1項に記載の組成物を、宿主に投与する工程を含有している、抗原性化合物に対する免疫反応を増強するための方法。
【請求項23】
上記免疫原性組成物が、非経口的注射、筋肉注射、腹腔内注射、静脈注射、皮下注射、吸入、経直腸的送達、経膣的送達、経鼻的送達、経口的送達、経目的送達、局所的送達、経皮的送達、または、皮内的送達を含んでいる群から選ばれる1つの方法によって投与されることができる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
宿主の免疫原性反応を増強するための薬物を調製するための、請求項1〜23の何れか1項に記載のポリヌクレオチドのアジュバント組成物の使用。
【請求項25】
上記宿主が、ヒトである、請求項1〜24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
上記宿主が、動物である、請求項1〜25の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−542405(P2008−542405A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515024(P2008−515024)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/CN2005/000810
【国際公開番号】WO2006/131023
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(507403023)ニューバイオメッド ピーアイケイエイ プライベート リミテッド (3)
【Fターム(参考)】