説明

ポリウレタンエラストマー、その製造方法、及びその使用

【課題】本発明は、ポリウレタンエラストマー、該ポリウレタンエラストマーの製造方法、及び該ポリウレタンエラストマーを含んでなるエラストマー成形品の製造に関する。
【解決手段】本発明のエラストマーは、ポリオール成分、連鎖延長剤及び/又は架橋剤、1以上のアミン触媒、少なくとも1つの有機チタン化合物及び少なくとも1つの有機亜鉛化合物、及び必要に応じて有機カルボン酸リチウム及び/又は有機カルボン酸ビスマスを含有する触媒混合物と、ポリイソシアネート成分との反応生成物を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマー、その製造方法、及びこれらのポリウレタンエラストマーを含んでなるエラストマー成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン(PUR)エラストマーはかなり以前から知られており、米国特許第5,952,053号に記載されているように、非常に広範囲の種々の要求につき、既に開発され、受注生産されてきた。それらの重合速度を調節するために、数多くの種々の金属触媒が既に試験され使用されている。広く使用されている有機錫化合物の他に、既知の金属触媒は、例えばリチウム、チタン、ビスマス、亜鉛、ジルコニウムのような種々の他の元素の有機化合物または有機塩も包含する。一例として、チタン、リチウム及びビスマスの触媒混合物が米国特許第6,590,057号に記載されている。しかし、この触媒系を用いる場合には、良好な流動性を達成すると同時にPUR系における良好な機械的特性を得ることは可能でない。
【0003】
PURエラストマーの重要な適用分野は、とりわけ、靴底の製造である。靴底を作る場合、使用される触媒系は、靴底の良好な加工性を確保しなければならない。より具体的には、この加工性は、短い離型時間、および高い離型硬度、ならびに金型の全ての部分が充填されることを確実にする長いクリーム時間と良好な流動性を包含する。また、触媒は、例えば長期曲げ応力下の高い引張強度、高い破断伸び、及び低い孔膨張のようなエラストマーの良好な最終特性を可能とするものでなければならない。従来の市販された有機錫触媒を用いて製造された既知のPURエラストマーは、この要求一覧を部分的にしか充足しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、良好な加工特性(例えば長い流動時間、短い離型時間)を有することに加え、向上したガス発生量に関連する良好な機械的特性(例えば良好な長期特性、及び高い機械的強度)も有するPURエラストマーを提供することであった。
【0005】
驚くべきことに,ここに記載された特定の触媒混合物から製造されるPURエラストマーは、所望の良好な加工特性、良好な機械的特性及び向上したガス発生量を有することが判明した。本発明によって求められる特定の触媒混合物は、従来の市販された有機錫化合物と比較すると、遥かに低い発泡フォーム嵩密度とより低い成形品密度も達成する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリウレタンエラストマー、及び該ポリウレタンエラストマーの製造方法に関する。このようなポリウレタンエラストマーは、
(A)下記を含んでなるポリオール配合物
a)下記を含んでなるポリオール成分:
a1)OH価20〜112及び官能価2を有し、ポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られた、少なくとも1つのポリエーテルポリオール;及び
a2)必要に応じ、OH価20〜112及び官能価>2〜3.5を有し、ポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られた、1以上のポリエーテルポリオール、
(ここで、a)前記ポリオール成分は、必要に応じ、(i)スチレン及び/又はアクリロニトリルのグラフトコポリマー、(ii)ジアミンとジイソシアネートの重付加ポリマー、及び(iii)それらの混合物からなる群から選択されるポリオールを含有する固形物を含んでよい)
b)分子量60〜499g/molを有する1以上の連鎖延長剤及び/又は架橋剤;
c)必要に応じ、1以上の発泡剤;
d)1以上のアミン触媒;
e)(1)少なくとも1つの有機チタン化合物、(2)少なくとも1つの有機亜鉛化合物、(3)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸リチウム、及び(4)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸ビスマスを、含んでなる触媒混合物;及び
f)必要に応じ、添加剤;

(B)ポリイソシアネート成分;
との反応生成物を含んでなる。
(A)と(B)の反応は、(B)ポリイソシアネート成分中のNCO基と、イソシアネート基と反応可能なa)、b)、c)、d)及びe)成分中の水素原子の総和との当量比を、0.8:1〜1.2:1、好ましくは0.95:1〜1.15:1、より好ましくは0.98:1〜1.05:1に、保持しながら行われる。
【0007】
本発明はまた、これらのポリウレタンエラストマーの製造方法にも関する。この方法は、
(A)下記を含んでなるポリオール配合物(A)
a)下記を含んでなるポリオール成分:
a1)OH価20〜112及び官能価2を有し、ポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られた、少なくとも1つのポリエーテルポリオール;及び
a2)必要に応じ、OH価20〜112及び官能価>2〜3.5を有し、ポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られた、1以上のポリエーテルポリオール、
(ここで、a)前記ポリオール成分は、必要に応じ、(i)スチレン及び/又はアクリロニトリルのグラフトコポリマー、(ii)ジアミンとジイソシアネートの重付加ポリマー、及び(iii)それらの混合物からなる群から選択されるポリオールを含有する固形物を含んでよい)
b)分子量60〜499g/molを有する1以上の連鎖延長剤及び/又は架橋剤;
c)必要に応じ、1以上の発泡剤;
d)1以上のアミン触媒;
e)(1)少なくとも1つの有機チタン化合物、(2)少なくとも1つの有機亜鉛化合物、(3)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸リチウム、及び(4)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸ビスマスを、含んでなる触媒混合物;及び
f)必要に応じ、添加剤;

(B)ポリイソシアネート成分;
とを、
(B)ポリイソシアネート成分中のNCO基と、イソシアネート基と反応可能なa)、b)、c)、d)及びe)成分中の水素原子の総和との当量比を、0.8:1〜1.2:1、好ましくは0.95:1〜1.15:1、より好ましくは0.98:1〜1.05:1に、保持しながら反応させる工程を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、成分e)として用いられるべき適当な触媒混合物は、(1)少なくとも1つの有機チタン化合物、(2)少なくとも1つの有機亜鉛化合物、(3)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸リチウム、及び、(4)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸ビスマスを含んでなる。
【0009】
e)触媒混合物の成分(1)として用いられるべき適当な有機チタン化合物は、好ましくは、下記式:
【化1】

〔式中:
MはTi4+を表し、
nは1〜20の値を表し、
pは0〜4の値を表し、及び
L1、L2、L3及びL4は、それぞれ独立して、O、S又はN原子で配位結合した同じまたは異なる基を表す。〕
で示される化合物を含む。
【0010】
酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子で配位結合し、及び、L1、L2、L3及びL4が表し得る適当な基のいくつかの例には、例えば:
(1)アルコラート、フェノラート、グリコラート、チオラート、カルボン酸塩又はアミノアルコラート〔これらはそれぞれ1〜20個の炭素原子を含んでよく、及び、必要に応じ、1以上の官能基(例えば、ヒドロキシル、アミノ、カルボニルなど)を含んでよく、又は、必要に応じ、炭素原子(例えば、エーテル、チオエーテル、アミン又はカルボニル基など)間に酸素、硫黄又は窒素の群を含んでよい〕、
及び
(2)様々なフッ素非含有の非立体障害キレート配位子であって、例えば、1-ジケトン〔例えば、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、酢酸エチルベンゾイル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及び2,4-ペンタンジオン(即ち、アセチルアセトン)などを含むもの、及び他のキレート配位子であって、例えば、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、サリチルアルデヒド、サリチルアミド、サリチル酸フェニル、シクロペンタノン-2-カルボン酸、ビスアセチルアセチルアセトン、チオアセチルアセトン、及びN,N'-ビス(サリチリデン)エチレンジアミンなどを含むもの、
などの基が含まれる。
【0011】
好適な有機チタン化合物には、例えば、チタン(IV)イソプロポキシド,チタン(IV)n-ブトキシド,チタン(IV)2-エチルヘキソキシド、チタン(IV)n-ペントキシド、チタン(IV)(トリエタノールアミナート)イソプロポキシド、チタン(IV)(トリエタノールアミナート)-n-ブトキシド、チタン酸イソプロピルトリイソステアリル、ビス(8-キノリノラート)-チタン(IV)ジブトキシド、ビス(エチルアセトアセテート)チタン(IV)ジイソブトキシド等が含まれる。
【0012】
チタン化合物は、第2の群、即ち上記の群(2)からの配位子を有するものを含むことが、より好適である。そのような化合物には、例えば、チタン(IV)ビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(IV)-ジイソプロポキシド-ビス(2,4-ペンタンジオナート)、チタン(IV)トリイソプロポキシド-(2,4-ペンタンジオナート)、エトキシビス(ペンタン-2,4-ジオナート-0,0')(プロパン-2-オラート)チタン、チタン(IV)オキシドアセチルアセトナート、ビス(ジアセチルアセトナート)チタン(IV)-ブトキシド-イソプロポキシド、ビス(ジアセチルアセトナート)チタン(IV)-エトキシド-イソプロポキシド等が含まれる。
【0013】
e)触媒混合物の成分(2)についての有機亜鉛化合物として用いられるべき適当な化合物のいくつかの例は、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族又は脂環式又は芳香族のカルボン酸亜鉛を含む。これらの適当な亜鉛化合物は、通常、下記式:
【化2】

〔式中、Rは、1〜25個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。〕
で示される
【0014】
好適な亜鉛化合物には、例えば、メタクリル酸亜鉛(II)などのアクリル酸亜鉛(II)、酢酸亜鉛(II)、クエン酸亜鉛(II)、3,5-ジ-tert.-ブチルサリチル酸亜鉛(II)などのサリチル酸亜鉛(II)、シュウ酸亜鉛(II)、アジピン酸亜鉛(II)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(II)などのカルバミン酸亜鉛(II)、亜鉛(II)オクタブチルオキシフタロシアニンなどの亜鉛(II)フタロシアニン、亜鉛(II)チオラート及びステアリン酸亜鉛(II)等が含まれる。より好適な亜鉛化合物には、例えば、ナフテン酸亜鉛(II)、デカン酸亜鉛(II)、4-シクロヘキシル酪酸亜鉛(II)などの酪酸亜鉛(II)、ネオデカン酸亜鉛(II)、イソ酪酸亜鉛(II)、安息香酸亜鉛(II)、並びに亜鉛(II)ビス-2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート及びp-トルエンスルホン酸亜鉛(II)が含まれる。オクチル酸亜鉛(II)及び2-エチルヘキサン酸亜鉛(II)は、e)触媒混合物の成分(2)として最も好適である。
【0015】
e)触媒混合物が更に(3)1以上の有機カルボン酸ビスマスを含む場合、これらは飽和又は不飽和の、脂肪族又は脂環式又は芳香族カルボン酸ビスマスであることが好ましい。カルボン酸ビスマスは、好ましくは、下記式:
【化3】

〔式中、
Rは、1〜25個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。〕
及び
【化4】

〔式中、
R'は、1〜25個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。〕
のいずれかで示されるものである。
【0016】
好適なカルボン酸ビスマスには、ビスマス(III)バーサテート、タル油酸ビスマス(III)、ステアリン酸ビスマス(III)、アジピン酸ビスマス(III)及びシュウ酸ビスマス(III)が含まれる。ナフテン酸ビスマス(III)、デカン酸ビスマス(III)、酪酸ビスマス(III)、イソ酪酸ビスマス(III)、ビスマス(III)ノネート及びビスマス(III)カプリオエートは、e)触媒混合物の成分(3)として使用されるべき好適な化合物である。ビスマス(III)ネオデカノエート、ビスマス(III)2-エチルヘキサノエート及びビスマス(III)オクタノエートは、e)触媒混合物の成分(3)として特に好ましい。
【0017】
e)触媒混合物が更に(4)1以上の有機カルボン酸リチウムを含む場合、適当なリチウムカルボン酸塩には、固形物として又は溶液中のいずれかで用い得るものが含まれる。
【0018】
e)触媒混合物の成分として適当な化合物の多くは、凝集体及び/又は高分子量の縮合生成物であって、1以上の架橋配位子によって互いに結合する2個以上の金属中心を含むものを生成し得る。
【0019】
d)1以上のアミン触媒とe)触媒混合物は、どちらも本発明において固形物として又は溶液の形態で使用し得る。一般式:
【化5】

及び
【化6】

〔式中、R及びR'は、それぞれ独立して1〜25個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。〕
で示される飽和又は不飽和の、脂肪族又は脂環式又は芳香族カルボン酸は、特に溶媒として使用し得る。
【0020】
そのような溶媒の適当な例には、ネオデカン酸、2-エチルヘキサン酸及びナフテン酸などの化合物が含まれる。これら3つの化合物は好適な溶媒である。
【0021】
本発明によると、触媒混合物e)は、好ましくは、化合物a)、b)、c)、d)及びf)100重量%に基づき、0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜1重量%の量で用いられる。
【0022】
本発明に従いd)アミン触媒として用いられるべき適当な触媒には、好ましくは、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N,N'N'-テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチル-ジエチレン-トリアミン及び高級類似体などの第3級アミン、1,4-ジアザ-ビシクロ-[2.2.2]-オクタン、N-メチル-N'-ジメチルアミノエチル-ピペラジン、ビス(ジメチルアミノアルキル)-ピペラジン、N,N-ジメチル-ベンジルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジエチルベンジル-アミン、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、単環式及び二環式アミジン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルなどのビス(ジアルキルアミノ)アルキルエーテル、並びにアミド基含有化合物が含まれる。
【0023】
本発明によると、a)ポリオール成分は、好ましくは2.0〜3.0の平均官能価を有する。本発明の最広義においては、ポリオール成分a)は、
a1)OH価20〜112及び官能価2を有し、得られるポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドで適当なスターターをアルコキシル化することによって得られた、少なくとも1つのポリエーテルポリオール
を含んでなる。
【0024】
また、a)ポリオール成分は、必要に応じて、
a2)OH価20〜112及び官能価>2〜3.5を有し、得られるポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドで適当なスターターをアルコキシル化することによって得られた、1以上のポリエーテルポリオール
を含んでよい。
【0025】
最後に、ポリオール成分a)は、必要に応じ、所謂有機高分子充填剤、又は微分散固形物を含有するポリオールを含んでよい。固形物を含有するこれらのポリオールは、(i)スチレン及び/又はアクリロニトリルをベースポリオール(該ベースポリオールには、上記a1)及び/又はa2)に記載したようなポリオールが含まれる)にグラフトすることによって得ることのできるグラフトコポリマー、又は(ii)例えば溶媒としてのポリオール中でのジアミンとジイソシアネートの重付加ポリマーからなる群から選択される。(i)と(ii)のブレンド又は混合物もまた使用し得る。
【0026】
本発明によれば、ここで(B)ポリイソシアネート成分として使用されるべき適当な化合物には、好ましくは芳香族ポリイソシアネートが、より好ましくはジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)が含まれる。イソシアネートは、例えば、純粋化合物の形態で、若しくは、例えば、ウレットジオン、イソシアヌレート、ビウレット及びアロファネート、並びにそれらから製造されたプレポリマーであってNCO含有量が10〜28%のもの等の変性MDI組成物として、使用してよい。(B)ポリイソシアネート成分として使用されるべき適当なプレポリマーは、例えば、1)ジイソシアナト-ジフェニルメタンの、2)OH価20〜112及び平均官能価2.0〜3.0を有する1以上のポリオール成分と、3)分子量135〜700g/molを有する1以上のポリオール成分との反応によって製造し得る。イソシアネートは、カルボジイミド基を含有してもよい。
【0027】
成分(B)として使用されるべき好適なポリイソシアネート成分には、
1)4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はカルボジイミド化によって変性された4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートと、
2)OH価10〜112を有する1以上のポリエーテルポリオール、及び
3)分子量135g/mol〜700g/molを有する1以上のポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール
との反応生成物を含むプレポリマーが含まれる。
【0028】
本発明によれば、成分(b)、即ち、(A)ポリオール配合物の一部として使用されるべき1以上の連鎖延長剤及び/又は架橋剤には、化合物、例えば、60〜499の範囲の分子量を有する二官能性又は三官能性アルコールが含まれる。そのような化合物のいくつかの例には、例えば、1,2-エタンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリエタノールアミン、並びに既知の様々な芳香族及び/又は脂肪族ジアミンが含まれ、これらを成分b)として好ましく使用し得る。
【0029】
微孔質PURエラストマーを製造するため、成分c)発泡剤が、(A)ポリオール配合物の一部として存在することが好ましい。本発明のこの局面では、水は好適な発泡剤である。発泡剤、好ましくは、水は、成分(B)ポリイソシアネート成分とその場で反応して、炭素ジオキシドとアミノ化合物を形成し、次に、これらがその後、他のイソシアネート基と更に反応して尿素成分を形成し、それによって連鎖延長剤として作用する。
【0030】
他の適当な発泡剤には、例えば、-40℃〜+70℃の沸点を有する気体又は高揮発性の無機或いは有機物質などの物理発泡剤が含まれる。これらの気体及び他の物理発泡剤は、水に代えて、又は好ましくは水と併用して、成分c)発泡剤として使用してよい。使用されるべき適当な発泡剤には、例えば、R134a、R141b、R365mfc、R245faなどのハロゲン置換アルカン或いはパーハロゲン化アルカン、又は、例えば、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン又はジエチルエーテル等の炭化水素も含まれる。空気、CO2又はN2Oも、発泡剤として使用するのに適している。また、例えば、エチレンジアミンとCO2から形成される付加物などのカルバメートを、発泡剤として使用してよい。
【0031】
ポリオール配合物(A)は更に、必要に応じて、例えば、表面活性物質、気泡安定剤、気泡調節剤、ミクロスフェアなどの内部発泡剤、内部離型剤、着色剤、顔料、制カビ及び/又は 制菌物質、光保護物質、抗酸化剤及び帯電防止剤等のf)1以上の添加剤及び/又は助剤物質を含んでよい。
【0032】
本発明のポリウレタンエラストマーを製造するために、(B)ポリイソシアネート成分中のNCO基と、イソシアネート基と反応可能な成分a)、b)、c)、d)、e)及びf)中の水素原子の総和との当量比が0.8:1〜1.2:1、好ましくは0.95:1〜1.15:1、より好ましくは0.98:1〜1.05:1の範囲となるような量で、成分を反応させる。
【0033】
本発明の方法を実行するための手順は、従来技術に開示された方法で用いられたものと同様である。つまり、一般論として、成分a)、b)、c)、d)及びe)を混合して(A)「ポリオール成分」を形成し、これを(B)ポリイソシアネート成分と、例えば、密閉された金属又はプラスチック金型などの密閉金型内において1ステップで反応させ、ここで通常の二成分 混合機を使用する。金型中に導入された反応混合物量、並びに発泡剤量は、とりわけ水が発泡剤である場合、該方法によって、100〜1050kg/m3、好ましくは250〜950kg/m3の嵩密度を有する構造用フォームが形成されるように、計算される。得られた本発明の生成物は、緻密表面を有する半硬質構造用フォームであることが好ましい。より具体的には、これらの半硬質構造用フォームは、DIN 53 505に準じて決定されたショアーA硬度が15〜85の範囲である。
【0034】
本発明のこれらのPURエラストマーにとっての重要な使用分野は、靴の製造、特に、例えば、発泡靴底又は靴インサートの製造である。
【0035】
次に、実施例を挙げて本発明の方法を更に詳しく説明する。前記において開示した本発明は、本発明の精神においても、本発明の技術的範囲においても、これらの実施例に限定されるものではない。当業者ならば、下記手順の条件の既知の変法を採用し得ることを、容易に、理解するであろう。特に断らない限り、温度は全て摂氏温度であり、割合は全て重量%である。
【実施例】
【0036】
A成分をB成分(即ち、プレポリマー)と低圧発泡設備中で30℃にて混合し、50℃に予熱されたアルミニウム製ヒンジ付金型(サイズ:200×70×10mm)に混合物を充填し、ヒンジ付金型を閉じ、約4分後にエラストマーを取り出すことによって、PURエラストマーを製造した。
【0037】
本発明に従い、e)(1)少なくとも1つのチタンの有機カルボン酸塩、及びe)(2)少なくとも1つの亜鉛の有機化合物を、d)少なくとも1つの第3級アミン触媒と混合し、ポリオール成分、即ち成分A)中の触媒系として用いた。触媒を、下記実施例中に記載した適切な比率でポリオール配合物に添加した。
【0038】
上記のようにして製造して得られたエラストマーのショアーA硬度(DIN 53505に準じる)を、取り出し直後と24時間保存後に測定した。更に、60,000回の曲げサイクル後の、試験片(寸法2cm×15cm×1cm)の曲げ線での2mm幅カットについて、穴膨張(DIN 53522に準じる)を測定した。これらの結果を下表1にまとめる。
【0039】
〔出発物質〕
以下の開始成分を実施例において使用した。
【0040】
〔ポリエーテルポリオール〕
1)得られるポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含有するように、プロピレンオキシド70%とエチレンオキシド30%を、スターターとしてのプロピレングリコールでアルコキシル化することによって製造された、OH価28のポリエーテルポリオール
2)ベースポリオールがOH価23を有し、グリセリンをスターター化合物とした、SANグラフトポリエーテルポリオール
3)(i)トリプロピレングリコールと、(ii)プロピレンオキシドに基づくポリエーテルポリオールとの混合物であって、(i)と(ii)の混合物が平均OH価173を有するもの
【0041】
〔ポリイソシアネート成分〕
1)4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン(4,4'-MDI)66重量部、NCO含有量30重量%を有する変性4,4'-MDI(部分カルボジイミド化によって製造したもの)5重量部、及びポリエーテルポリオール3)29重量部を反応させることによって製造された、NCO基含有量19.8重量%を有するプレポリマー

〔DABCO〕:ジアザビシクロオクタン
〔Silicon DC 190〕:Air products製ポリシロキサン気泡安定剤
【0042】
〔実施例1〕(比較)
ポリオール成分(A)は、下記:
1887.50重量部の二官能性ポリエーテルポリオール1)、
250.00重量部のポリエーテルポリオール2)、
250.00重量部の1,4-ブタンジオール、
1.00重量部のネオデカン酸ビスマス(III)、
2.00重量部の2-(2-エトキシエトキシ)エタノール中の2-エチルヘキサン酸リチウム、
2.00重量部のビス(ジアセチルアセトナート)チタン(IV)-エトキシド-イソプロポキシド、
25.00重量部のDABCO、
20.00重量部の2-エチルヘキサン酸でブロックされたDABCO、
5.00重量部の気泡安定剤 Silicon DC 190、
7.50重量部の水
を含むものであった。
このポリオール成分100重量部を、70重量部のプレポリマー1)と混合した。
【0043】
〔実施例2〕(本発明による)
ポリオール成分は、下記:
1875.00重量部の二官能性 ポリエーテルポリオール1)、
250.00重量部のポリエーテルポリオール2)、
250.00重量部の1,4-ブタンジオール、
0.375重量部のビス(ジアセチルアセトナート)チタン(IV)-エトキシド-イソプロポキシド、
17.50重量部のオクチル酸亜鉛(II)、
25.00重量部のDABCO、
20.00重量部の2-エチルヘキサン酸でブロックされたDABCO、
5.00重量部の気泡安定剤 Silicon DC 190、
7.50重量部の水
を含むものであった。
このポリオール成分100重量部を、70重量部のプレポリマー1)と混合した。
【0044】
〔実施例3〕(本発明による)
ポリオール成分は、下記:
1888.50重量部の二官能性 ポリエーテルポリオール1)、
250.00重量部のポリエーテルポリオール2)、
250.00重量部の1,4-ブタンジオール、
0.375重量部のビス(ジアセチルアセトナート)チタン(IV)-エトキシド-イソプロポキシド、
5.00重量部のオクチル酸亜鉛(II)、
25.00重量部のDABCO、
20.00重量部の2-エチルヘキサン酸でブロックされたDABCO、
5.00重量部の気泡安定剤 Silicon DC 190、
7.50重量部の水
を含むものであった。
このポリオール成分100重量部を、70重量部のプレポリマー1)と混合した。
【0045】
〔実施例4〕(本発明による)
ポリオール成分は、下記:
1888.50重量部の二官能性ポリエーテルポリオール1)、
250.00重量部のポリエーテルポリオール2)、
250.00重量部の1,4-ブタンジオール、
0.375重量部のビス(ジアセチルアセトナート)チタン(IV)-エトキシド-イソプロポキシド、
7.50重量部のオクチル酸亜鉛(II)、
5.00重量部のDABCO、
20.00重量部の2-エチルヘキサン酸でブロックされたDABCO、
5.00重量部の気泡安定剤 Silicon DC 190、
5.00重量部の水
を含むものであった。
このポリオール成分100重量部を、68重量部のプレポリマー1)と混合した。
【0046】
〔実施例5〕(本発明による)
ポリオール成分は、下記:
1867.00重量部の二官能性ポリエーテルポリオール1)、
250.00重量部のポリエーテルポリオール2)、
250.00重量部の1,4-ブタンジオール、
0.375重量部のビス(ジアセチルアセトナート)チタン(IV)-エトキシド-イソプロポキシド、
25.00重量部のオクチル酸亜鉛(II)、
25.00重量部のDABCO、
20.00重量部の2-エチルヘキサン酸でブロックされたDABCO、
5.00重量部の気泡安定剤 Silicon DC 190、
7.50重量部の水
を含むものであった。
このポリオール成分100重量部を、70重量部のプレポリマー1)と混合した。
【0047】
【表1】

【0048】
* 最小取り出し時間は、成形品を取り出し、180°で曲げた後にクラックを示さない成形品の製造に要する時間を意味する。
【0049】
表1からわかるように、本発明による実施例は、下記の特徴:
1)各実施例で使用した同程度の水量についての改善されたガス発生量、並びに遥かに低い発泡フォーム嵩密度(特に実施例3を参照)、
2)より良好な成形品取り出し挙動(即ち、より短い成形品取出時間、特に実施例5を参照)、
及び
3)遥かに良好な長期特性(特に実施例5を参照)、
を示している。
【0050】
以上のように本発明を例示の目的で詳細に説明したが、かかる詳細は単なる例示目的であって、クレームに限定し得たこと以外は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、当業者によって変形をなし得ると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンエラストマーであって、
(A)下記を含んでなるポリオール配合物
a)下記を含んでなるポリオール成分:
a1)OH価20〜112及び官能価2を有し、ポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られた、少なくとも1つのポリエーテルポリオール;
b)分子量60〜499g/molを有する1以上の連鎖延長剤及び/又は架橋剤;
c)必要に応じ、1以上の発泡剤;
d)1以上のアミン触媒;
e)(1)少なくとも1つの有機チタン化合物、(2)少なくとも1つの有機亜鉛化合物、(3)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸リチウム、及び(4)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸ビスマスを、含んでなる触媒混合物;及び
f)必要に応じ、添加剤;

(B)ポリイソシアネート成分;
とを、
(B)ポリイソシアネート成分中のNCO基と、NCO基と反応可能なa)、b)、c)、d)及びe)成分中の水素原子の総和との当量比を0.8:1〜1.2:1に保持しながら反応させた生成物を含んでなる、ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
a)前記ポリオール成分は、更に下記:
a2)OH価20〜112及び官能価>2〜3.5を有し、ポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られた、1以上のポリエーテルポリオール
を含んでなる、請求項1に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
a)前記ポリオール成分は、更に、(i)ベースポリオール中のスチレン/アクリロニトリルグラフトコポリマー、(ii)ジアミンとジイソシアネートの重付加ポリマー、及び(iii)それらの混合物からなる群から選択されるポリオールを含有する固形物を含んでなる、請求項1に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項4】
(B)前記ポリイソシアネート成分中のNCO基と、NCO基と反応可能なa)、b)、c)、d)及びe)成分中の水素原子の総和との当量比は0.95:1〜1.15:1である、請求項1に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項5】
当量比は0.98:1〜1.05:1である、請求項4に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項6】
e)前記触媒混合物は、a)、b)、c)、d)及びf)成分100重量%に基づき0.001〜10重量の量で存在する、請求項1に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項7】
e)は、a)、b)、c)、d)及びf)成分100重量%に基づき0.01〜1重量%の量で存在する、請求項6に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項8】
(B)前記ポリイソシアネート成分は、
1)4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド化によって変性された4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリイソシアネートと、
2)OH価10〜112を有する1以上のポリエーテルポリオール、及び
3)分子量135g/mol〜700g/molを有する1以上のポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール
との反応生成物を含むプレポリマーを含んでなる、請求項1に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項9】
ポリウレタンエラストマーの製造方法であって、
(A)下記を含んでなるポリオール配合物
a)下記を含んでなるポリオール成分:
a1)OH価20〜112及び官能価2を有し、ポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られた、少なくとも1つのポリエーテルポリオール;
b)分子量60〜499g/molを有する1以上の連鎖延長剤及び/又は架橋剤;
c)必要に応じ、1以上の発泡剤;
d)1以上のアミン触媒;
e)(1)少なくとも1つの有機チタン化合物、(2)少なくとも1つの有機亜鉛化合物、(3)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸リチウム、及び(4)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸ビスマスを、含んでなる触媒混合物;及び
f)必要に応じ、添加剤;

(B)ポリイソシアネート成分;
とを、
(B)ポリイソシアネート成分中のNCO基と、NCO基と反応可能なa)、b)、c)、d)及びe)成分中の水素原子の総和との当量比を0.8:1〜1.2:1に保持しながら反応させる工程を含んでなる、方法。
【請求項10】
a)前記ポリオール成分は、更に下記:
a2)OH価20〜112及び官能価>2〜3.5を有し、ポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られた、1以上のポリエーテルポリオール
を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
a)前記ポリオール成分は、更に、(i)ベースポリオール中のスチレン及び/又はアクリロニトリルグラフトコポリマー、(ii)ジアミンとジイソシアネートの重付加ポリマー、及び(iii)それらの混合物からなる群から選択されるポリオールを含有する固形物を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
(B)前記ポリイソシアネート成分中のNCO基と、NCO基と反応可能なa)、b)、c)、d)及びe)成分中の水素原子の総和との当量比は0.95:1〜1.15:1である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
当量比は0.98:1〜1.05:1である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
e)前記触媒混合物は、a)、b)、c)、d)及びf)成分100重量%に基づき0.001〜10重量の量で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
e)は、a)、b)、c)、d)及びf)成分100重量%に基づき0.01〜1重量%の量で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(B)前記ポリイソシアネート成分は、
1)4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド化によって変性された4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリイソシアネートと、
2)OH価10〜112を有する1以上のポリエーテルポリオール、及び
3)分子量135g/mol〜700g/molを有する1以上のポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール
との反応生成物を含むプレポリマーを含んでなる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
密度180〜1100kg/m3を有するエラストマー成形品の製造方法であって、該エラストマーは、
(A)下記を含んでなるポリオール配合物
a)下記を含んでなるポリオール成分:
a1)OH価20〜112及び官能価2を有し、ポリエーテルポリオールが主に第1級OH基を含むようにプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られた、少なくとも1つのポリエーテルポリオール;
b)分子量60〜499g/molを有する1以上の連鎖延長剤及び/又は架橋剤;
c)必要に応じ、1以上の発泡剤;
d)1以上のアミン触媒;
e)(1)少なくとも1つの有機チタン化合物、(2)少なくとも1つの有機亜鉛化合物、(3)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸リチウム、及び(4)必要に応じ、1以上の有機カルボン酸ビスマスを、含んでなる触媒混合物;及び
f)必要に応じ、添加剤;

(B)ポリイソシアネート成分;
とを、
(B)ポリイソシアネート成分中のNCO基と、NCO基と反応可能なa)、b)、c)、d)及びe)成分中の水素原子の総和との当量比を0.8:1〜1.2:1に保持しながら反応させた生成物を含んでなる、方法。

【公開番号】特開2007−2247(P2007−2247A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−172387(P2006−172387)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】