説明

ポリウレタンシーリング材

【課題】ポリウレタンシーリング材に塗布した水系塗料の塗膜の経年変色、汚染の防止。
【解決手段】ウレタンプレポリマーを含有する基剤、1分子中に1以上の活性水素基を有する硬化剤、および、可塑剤としてエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合によって得られるポリアルキレングリコールの末端水酸基の封止化物を含有するポリウレタンシーリング材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可塑剤を含有する塗装性に優れるポリウレタンシーリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンシーリング材には、通常可塑剤として、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジエステルなどが配合されている。これらの可塑剤を含有するポリウレタンシーリング材を建造物の目地等に施工した後、水系塗料を塗装すると、経年によりポリウレタンシーリング材中の可塑剤が水系塗料の塗膜に移行し、塗膜に著しい変色や汚染をもたらす問題があった。
【0003】
可塑剤を含有するポリウレタンシーリング材に、液状炭化水素を配合し、可塑剤の水系塗料の塗膜への移行を低減させる提案があるが(特許文献1)、ポリウレタンシーリング材に対する水系塗料の塗膜の付着性が劣化する問題や、ポリウレタンシーリング材が経年で痩せる問題があった。
可塑剤を配合しない場合には、該問題を回避することができるが(特許文献2)、ポリウレタンシーリング材の粘度が高くなり、施工時の作業性が悪く、硬化後のポリウレタンシーリング材が硬くなるという問題が避けられなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−354946号公報
【特許文献2】特開2002−363243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、可塑剤を含有するポリウレタンシーリング材に係る前記問題を解決することが目的である。すなわち、該ポリウレタンシーリング材に塗布した水系塗料の塗膜の経年変色、汚染を防止することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は下記の通りである。
【0007】
(1)ウレタンプレポリマーを含有する基剤、1分子中に1以上の活性水素基を有する硬化剤、および、可塑剤を含有するポリウレタンシーリング材において、可塑剤がエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合によって得られるポリアルキレングリコールの末端水酸基の封止化物であることを特徴とするポリウレタンシーリング材。
(2)前記硬化剤がポリプロピレンエーテルポリオールであることを特徴とする前記(1)に記載のポリウレタンシーリング材。
(3)前記可塑剤のエチレンオキサイドの付加率が1.0〜30.0%であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のポリウレタンシーリング材。
(4)前記可塑剤のポリアルキレングリコールがランダム型、交互型、ブロック型またはグラフト型であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
(5)前記可塑剤の末端水酸基がアセチル基、メチル基、ベンゾイル基、アリル基またはピバロイル基を有する封止剤により封止されていることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
(6)前記可塑剤の重量平均分子量が400〜20,000であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
(7)前記可塑剤の数平均官能基数が1.0〜6.0であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
(8)前記可塑剤の硬化剤全体に占める割合が1.0〜10.0質量%であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
(9)前記ポリウレタンシーリング材が、基剤と、可塑剤を含有する硬化剤の2液型であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリウレタンシーリング材は、水系塗料の塗膜との付着性が良好で、その成分、特に可塑剤が水系塗料の塗膜へ移行しないので、塗膜の経年変色、汚染がない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリウレタンシーリング材は、ウレタンプレポリマーを含有する基剤、1分子中に1以上の活性水素基を有する硬化剤、および、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合によって得られるポリアルキレングリコールの末端水酸基の封止化物である可塑剤を含有する。好ましくは、基剤と、可塑剤を含有する硬化剤とからなる2液型ポリウレタンシーリング材である。
【0010】
本発明のシーリング材を構成する基剤のウレタンプレポリマー、硬化剤のポリプロピレンエーテルポリオール、および、可塑剤のポリアルキレングリコールの末端水酸基の封止物、添加剤、混合方法等について、主に2液型の場合に関して詳述する。
【0011】
(基剤)
本発明の基剤を構成するウレタンプレポリマーは、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを、水酸基に対してイソシアネート基が過剰になるように、すなわち、NCO基/OH基(当量比)が1.2〜2.5になるように、好ましくは1.5〜2.0になるように反応させて得られるものである。その結果、0.5〜5質量%のNCO基を分子末端に含有するウレタンプレポリマーが得られ、粘度が5.0〜30.0Pa・s、好ましくは8.0〜15.0Pa・sであることから、基剤としての流動性が適当である。
【0012】
ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、TDI[例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)]、MDI[例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)]、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0013】
このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)が、得られるウレタンプレポリマーが低粘度となり、ウレタンプレポリマーを含む基剤の取扱いが容易となる理由から特に好ましい。
【0014】
ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、これらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の付加重合体であるポリエーテルに、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびペンタエリスリトールからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリオールを付加して得られるが、具体的には、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリオキシプロピレンエーテルトリオールが好適である。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンおよびその他の低分子ポリオールからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリオールと、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の脂肪族カルボン酸およびオリゴマー酸からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリカルボン酸との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体等が挙げられる。
【0017】
その他のポリオールとしては、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子量のポリオール等が挙げられる。
【0018】
このようなポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオールが、基剤の粘度を好適範囲にすることができ、また、これらを基剤に用いて得られる本発明のシーリング材の硬化物の伸びと強度が適当で、水浸漬後の膨潤による物性の低下が少ないという理由から好ましい。
【0019】
本発明に使用されるウレタンプレポリマーは、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなる群から選ばれる少なくとも一種と、ポリプロピレンエーテルジオールおよび/またはポリプロピレンエーテルトリオールとの組合せによるものが好適である。ウレタンプレポリマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明に使用されるウレタンプレポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、前記の当量比のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを、50〜130℃で加熱攪拌することによって製造される。また、必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0021】
(硬化剤)
本発明に使用される硬化剤は1分子中に1以上の活性水素基を有する化合物である。活性水素含有化合物は、ウレタンプレポリマーと反応可能な活性水素を有する化合物であれば特に限定されない。
活性水素基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、水酸基が挙げられる。
活性水素含有化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミン(脂環式ポリアミンを含む。)、芳香族ポリアミンのようなポリアミン;ポリオール化合物等が挙げられる。
ポリオールとしては、前記のポリオール化合物が挙げられる。
【0022】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ヘキサメチレンジアミンカルバメートのような脂肪族ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンのような3官能以上の脂肪族アミン等が挙げられる。
【0023】
活性水素含有化合物としての芳香族ポリアミンは、芳香環に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基が結合しているものであれば特に限定されない。
このような芳香族ポリアミンとしては、例えば、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,5−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン、メチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。
【0024】
活性水素含有化合物の使用量は、本発明のシーリング材の硬化物の物性(例えば、引張物性、剪断物性等)と耐熱安定性の観点から、基剤のウレタンプレポリマーのイソシアネート基と、硬化剤の活性水素含有化合物の合計との当量比[イソシアネート基/活性水素基]が0.8〜1.3であることが好ましく、0.9〜1.2であることがより好ましい。
【0025】
(可塑剤)
本発明に使用される可塑剤は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合により得られるポリアルキレングリコールの末端水酸基が封止剤により封止されている封止化物である。ポリアルキレングリコールはランダム型、交互型、ブロック型、グラフト型のいずれでもよい。
ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は500〜10,000が好ましく、1,000〜5,000がより好ましい。500未満であると可塑剤の揮発性、接触する物質への移行性が高くなり、10,000超であると粘度が高くなり、可塑剤としての流動性、可塑性付与効果が不十分である。
エチレンオキサイドの付加率は1.0〜30.0%が好ましく、1.0〜10.0%がより好ましい。1.0%未満であると親水性が不十分で、水性塗料との付着性の効力が得られない。逆に30.0%超であると付加重合体が結晶化し、可塑剤に要求される減粘効果を満足させることが難しい。
【0026】
ポリアルキレングリコールの末端水酸基の封止剤による封止は従来公知の方法により実施される。
封止剤としては、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、ベンジル基、アリル基、メチル基等を有する化合物が挙げられる。好ましいのはアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、ベンジル基等のアセタール系官能基を有する化合物である。具体的には酢酸、アセチルクロライド、メチルクロライド、塩化ベンゾイル、アリルクロライド、ピバリン酸クロライド等が挙げられる。末端水酸基は全量封止されていることが好ましいが、95%以上の末端水酸基が封止されていれば差支えない。
ポリアルキレングリコールの封止剤に由来する数平均官能基数は1.0〜6.0であることが好ましく、3.6〜6.0であることがより好ましい。また、ポリアルキレングリコールの封止化後の水酸基価は1.0未満であることが好ましい。1.0超では基剤成分のイソシアネートを封止して強度が低下する。
【0027】
(シーリング材)
本発明のポリウレタンシーリング材は、基剤と、可塑剤を含有する硬化剤の2液型とする方が、可塑剤の添加効果が顕著であり好ましいが、1液型であってもよい。ただし、1液型の場合には、湿気型硬化剤または潜在性硬化剤を使用する必要がある。
可塑剤を硬化剤に含有させる方法としては、従来法が採用できる。本発明における可塑剤と硬化剤はその骨格が同じなので、均一混合が容易である。
混合の際、各種添加剤を配合することができる。
【0028】
本発明のポリウレタンシーリング材の製造方法は特に限定されないが、例えば、ウレタンプレポリマーを含有する基剤と、可塑剤を含有する硬化剤とを別々に窒素ガス雰囲気下で十分に混合する方法により調製することができる。
また、本発明においては、調製された基剤を窒素ガス等で置換された容器に、調製された硬化剤を別の容器にそれぞれ充填し保存することができ、使用時に基剤と硬化剤とを十分に混合して調製することもできる。
【0029】
具体的には、例えば、建築物等の工事現場において、基剤と硬化剤を攪拌機により混合し、施工に供される。例えば、建築用の専用攪拌機は、フープ径229cmの硬化剤容器を混合速度36rpmでパドルを回転させ、パドルの抵抗により両者を混合する方式であるが、これを用いると、混合中にシーリング材に空気を巻き込むことが少なく、施工後のあばたや発泡による外観上の不具合が低減され、硬化後のシーリング材の美観が良好に保持されるという利点がある。
【0030】
(添加剤)
本発明のシーリング材に、基剤、硬化剤、前記可塑剤以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、硬化触媒、老化防止剤、酸化防止剤、反応調整剤、充填剤、希釈剤、チクソトロピー剤、増粘剤、分散剤、顔料等を添加することができる。
【0031】
硬化触媒としては、例えば、有機金属系触媒が挙げられる。
有機金属系触媒としては、例えば、オクテン酸鉛、オクチル酸鉛のような鉛系触媒;オクチル酸亜鉛のような有機亜鉛化合物;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレートのような有機スズ化合物;オクチル酸カルシウム、ネオデカン酸カルシウムのような有機カルシウム化合物;有機バリウム化合物;有機ビスマス化合物等が挙げられる。
硬化触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
硬化触媒の使用量は、硬化剤全量に対して0.2〜5質量%であることが好ましい。
なお、硬化触媒は、可塑剤とともに硬化剤中に配合してもよいし、主剤と硬化剤の混合時に添加してもよい。
【0033】
老化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシトルエンアニソール(BHA)、ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0034】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシトルエンアニソール(BHA)、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、亜リン酸トリフェニル等を挙げることができる。
【0035】
反応調整剤は可使時間と硬化性のバランスを整えるものであり、オクチル酸、ネオデカン酸、ステアリン酸等のカルボン酸が適している。また、カルボン酸と水酸化カルシウムとの当量配合によって得られるカルボン酸のカルシウム塩等を反応調整剤として使用することもできる。配合量は硬化剤全量に対して0.1〜2.0質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましい。
【0036】
充填剤は充填効果のほかに、シーリング材の硬化物に伸びと強度を付与し、補強効果をもたらす。補強剤は特に限定されないが、従来公知の酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレー、生石灰、カオリン、ゼオライト、けいそう土、微粉末シリカ、疎水性シリカ、カーボンブラック等が挙げられる。補強剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。好ましいのは硬化剤および可塑剤との濡れ性の観点から、酸化チタン、疎水性シリカ、カーボンブラック、重質炭酸カルシウムである。充填剤の含有量は、硬化物の破断伸びに優れ、破断強度を補うという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して40〜160質量部、好ましくは50〜150質量部である。
【0037】
希釈剤としては、例えば、ヘキサン、トルエンのような炭化水素化合物;テトラクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル;酢酸エチルのようなエステル;ミネラルスピリット等が挙げられる。配合量は特に制限されないが、硬化剤全量に対して10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましい。
【0038】
チクソトロピー剤は特に限定されないが、合成炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)が好適である。合成炭酸カルシウムとしては、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。チクソトロピー剤は、硬化剤全量に対して15〜60質量%、好ましくは25〜55質量%配合される。
【0039】
本発明のシーリング材には、可塑剤のポリアルキレンオキサイドの末端水酸基の封止化物のほかに、該可塑剤の作用効果を損ねない範囲の割合で、例えば、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、20質量部以下、好ましくは10質量部以下の割合で、その他の可塑剤を含有させてもよい。可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、トリオクチルフォスフェート(TOP)、トリス(クロロエチル)フォスフェート(TCEP)、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート(TDCPP)、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0040】
顔料は、無機顔料と有機顔料とに大別される。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、群青、ベンガラのような金属酸化物;リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウムの硫化物、これらの塩酸塩またはこれらの硫酸塩等が挙げられる。
有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0041】
本発明のウレタンシーリング材を1液型とするときには、前記の1分子中に1以上の活性水素基を有する硬化剤以外にも、潜在性硬化剤が使用できる。
潜在性硬化剤は特に制限されないが、オキサゾリジン環含有化合物等が挙げられる。
【0042】
本発明のシーリング材を建築物の目地に施工する場合、従来の二液型建築用ポリウレタンシーリング材の場合と同様な方法と条件で可能である。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0044】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
(基剤ウレタンプレポリマーの調製)
ポリプロピレンエーテルトリオール(重量平均分子量4,000;「エクセノール4030」、旭硝子社製、)66.4質量部、ポリプロピレンエーテルジオール(重量平均分子量2000;「エクセノール2020」、旭硝子社製)20.3質量部、および、3−フェニル−3−オキサゾリジンエタノール (PHO;横浜ゴム社製)1.0質量部を反応容器に入れて、粘度調節のために減圧下で110℃に加熱し、6時間脱水を行った。
次いで、脱水後の反応容器に、トリレンジイソシアネート(TDI80/20;三井化学社製)12.1質量部をNCO基/OH基の当量比が2.0となるように攪拌しながら添加した。その後、反応容器内を80℃に加熱し、窒素雰囲気下でさらに24時間攪拌混合し、ウレタンプレポリマーを調製した。
得られたウレタンプレポリマーのNCO基の含有量(NCO%)は、ウレタンプレポリマー全質量に対して2.53質量%であった。
【0045】
(可塑剤)
可塑剤は下記を用いた。
PAG3005: ポリアルキレングリコールの末端水酸基のアセチル化物(重量平均分子量3000、エチレンオキサイドの付加率5.0%、水酸基価0.5;三洋化成工業社製)
PAG3010: ポリアルキレングリコールの末端水酸基のアセチル化物(重量平均分子量3000、エチレンオキサイドの付加率10.0%、水酸基価0.2;三洋化成工業社製)
PAG3020: ポリアルキレングリコールの末端水酸基のアセチル化物(重量平均分子量3000、エチレンオキサイドの付加率2.0%、水酸基価0.2;三洋化成工業社製)
PAG3030: ポリアルキレングリコールの末端水酸基のアセチル化物(重量平均分子量3000、エチレンオキサイドの付加率30%、水酸基価0.2;三洋化成工業社製)
DOP(ジオクチルフタレート)(ジェープラス社製)
PPG1000: ポリプロピレングリコールの末端水酸基のアセチル化物(重量平均分子量1000、エチレンオキサイドの付加率0%、水酸基価1.0;三洋化成工業社製)
PPG2000: ポリプロピレングリコールの末端水酸基のアセチル化物(重量平均分子量2000、エチレンオキサイドの付加率0%、水酸基価0.8;三洋化成工業社製)
PPG2200: ポリプロピレングリコールの末端水酸基のベンゾイル化物(重量平均分子量2000、エチレンオキサイドの付加率0%、水酸基価0.8;三洋化成工業社製)
【0046】
可塑剤のエチレンオキサイド付加率、重量平均分子量、粘度、数平均官能基数および水酸基価を表1に示した。
エチレンオキサイド付加率、重量平均分子量、粘度、数平均官能基数および水酸基価を下記の方法で測定した。
(エチレンオキサイド付加率)
可塑剤のエチレンオキサイド付加率(EO付加率)はPO/EOの添加部数により求めた値である。
(重量平均分子量)
可塑剤の重量平均分子量はテトラヒドロフランを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所製、「GC−14A」)により測定した。
(粘度)
可塑剤の粘度はBS型粘度計(東京計器社製)の7号ロータを用い、23℃、50%相対湿度における、回転速度1rpmで計測される粘度(Pa・s)を測定した。
(数平均官能基数)
可塑剤の数平均官能基数はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所製、「GC−14A」)により測定した。
(水酸基価)
可塑剤の水酸基価は電位差滴定装置(京都電子工業社製、{AT500})により測定した。
【0047】
(可塑剤含有硬化剤の調製)
硬化剤ポリプロピレンエーテルトリオール(重量平均分子量5,000;「エクセノール5030」、旭硝子社製)29.5質量部、硬化剤ポリプロピレンエーテルジオール(重量平均分子量5,000;「PML4007」、旭硝子社製)90.9質量部、前記可塑剤7種のそれぞれ19.7質量部と、下記硬化触媒2種、反応調整剤2種、充填剤5種および希釈剤1種を下記の量比(ただし、基剤ウレタンプレポリマーを100質量部としたときの質量比)で、電動攪拌機を用いて十分に混合して可塑剤含有硬化剤を調製した。
【0048】
硬化触媒:
有機オクチル酸ビスマス塩(「ブキャット10」;日本化学産業社製) 1.9部
有機オクチル酸亜鉛塩(「ニッカオクチックスス亜鉛8%EH」;日本
化学産業社製) 2.3部
反応調整剤:
オクチル酸 1.2部
水酸化カルシウム 0.6部
充填剤:
重質炭酸カルシウム(「スーパーSS」;丸尾カルシウム社製) 94.7部
表面処理軽質炭酸カルシウム(「Viccoexcel30」;白石工業社製) 37.9部
表面処理軽質炭酸カルシウム(「MS700」;丸尾カルシウム社製)75.7部
アクリロニトリル共重合体中空体(「MFL60CAS」松本油脂製薬
社製) 13.3部
酸化チタン(「CR90」;石原産業社製) 1.2部
希釈剤:
ミネラルスピリット(「A−ソルベント」(新日本石油社製) 21.2部
【0049】
前記ウレタンプレポリマー100質量部を、前記可塑剤含有硬化剤390.1質量部に加え、電動攪拌機により十分に混合してシーリング材を調製した。
シーリング材の物性・性能(粘度、押出性、チクソトロピー性、アスカーC硬度、塗料付着性、塗料汚染性)を表2に示した。
シーリング材の物性・性能(粘度、押出性、チクソトロピー性、アスカーC硬度、塗料付着性、塗料汚染性)は下記の方法で測定し、評価した。
【0050】
(粘度)
シーリング材の粘度は、BS型粘度計(東京計器社製)の7号ロータを用い、23℃、50%相対湿度における、回転速度1rpmで計測される粘度(Pa・s)を測定した。
【0051】
(チクソトロピーインデックス)
前記粘度の測定において、回転速度1rpmおよび10rpmで計測される粘度(Pa・s)の比からチクソトロピーインデックス(TI)〔(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度)〕を算出した。TIが5.5以上であると、シーリング材としての作業性に大変優れる。
【0052】
(押出性)
シーリング材のJIS A−1439の5.14試験用カートリッジにより押出試験に準拠した。
【0053】
(硬度)
アルミニウム板からなる目地(幅20mm、深さ20mm、長さ100mm)にシーリング材を打設し、20℃、50%相対湿度の条件で1日間、3日間、7日間養生した後の硬化物の硬度を、それぞれアスカーC硬度計(高分子計器社製)を用いて測定した。
【0054】
(塗料付着性)
シーリング材を金型に流し込み、23℃で7日間放置して硬化させた後、得られた試料にアクリルエマルジョンの下地調整塗材A(「水性ソフトサーフSG」、SK化研社製)またはアクリルエマルジョンの下地調整塗材B(「水性ミラクシーラーエコクリヤー」、SK化研社製)を塗布し、23℃で1時間乾燥した。そしてアクリルエマルジョンのトップコート(「水性ミラクシーラーエコクリヤー」、SK化研社製)を塗布して仕上げを行った。その後、20℃、55%RHで7日間養生した(標準)。また、別途、標準養生後、50℃温水に7日間浸漬した後、乾燥した(耐温水)。これらについて、JIS K−5800の5.8 クロスカット法の規定に従い、2mm角の升目25個を設け、セロファンテープによる剥離個数を数えた。
【0055】
(塗料汚染性)
シーリング材を金型に流し込み、23℃で7日間放置して硬化させた後、得られた試料にアクリルエマルジョンの下地調整塗材A(「水性ソフトサーフSG」、SK化研社製)またはアクリルエマルジョンの下地調整塗材B(「水性ミラクシーラーエコクリヤー」、SK化研社製)を塗布し、23℃で1時間乾燥した。そしてアクリルエマルジョンのトップコート(「水性ミラクシーラーエコクリヤー」、SK化研社製)を塗布して仕上げを行った。その後、20℃、55%RHで7日間養生し、さらに、80℃で、7日間、23」℃、55%RHで1日間養生した。
次に、硬化物を板上に固定し、珪砂7号(平均粒子径0.2μm)を0.2g/cmの割合で散布した。硬化物を逆さまにして板を軽くたたき、過剰の試験珪砂を払落し、試験体に付着した珪砂の状況を下記の基準で評価した。
A: 珪砂の付着なし
B: 珪砂の付着率10%以下
C: 珪砂の付着率10%超〜30%以下
D: 珪砂の付着率30%超〜60%以下
E: 珪砂の付着率60%超
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のシーリング材は、建造物の目地に施工した場合、水性塗料の塗膜を汚染することがないので、建造物の美観を永年にわたり維持することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーを含有する基剤、1分子中に1以上の活性水素基を有する硬化剤、および、可塑剤を含有するポリウレタンシーリング材において、可塑剤がエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加重合によって得られるポリアルキレングリコールの末端水酸基の封止化物であることを特徴とするポリウレタンシーリング材。
【請求項2】
前記硬化剤がポリプロピレンエーテルポリオールであることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンシーリング材。
【請求項3】
前記可塑剤のエチレンオキサイドの付加率が1.0〜30.0%であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタンシーリング材。
【請求項4】
前記可塑剤のポリアルキレングリコールがランダム型、交互型、ブロック型またはグラフト型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
【請求項5】
前記可塑剤の末端水酸基がアセチル基、メチル基、ベンゾイル基、アリル基またはピバロイル基を有する封止剤により封止されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
【請求項6】
前記可塑剤の重量平均分子量が500〜10,000であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
【請求項7】
前記可塑剤の数平均官能基数が1.0〜6.0であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
【請求項8】
前記可塑剤の硬化剤全体に占める割合が1.0〜10.0質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。
【請求項9】
前記ポリウレタンシーリング材が、基剤と、可塑剤を含有する硬化剤の2液型であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリウレタンシーリング材。