説明

ポリウレタン弾性糸およびその製造方法

【課題】
ホットメルトの接着剤に対する接着性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリウレタン弾性糸であって、該ポリウレタンの主構成成分がポリマージオール、ジイソシアネートであり、かつ、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジンおよび/又はその誘導体とを含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法、さらには、少量のホットメルト接着剤で、かつ、高ドラフトで加工しても、良好な接着性を発現する、低応力で伸長できる伸縮性シートを得るのに好適なポリウレタン弾性糸およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどの伸縮性衣料用途、紙おむつや生理用ナプキンなどのサニタリー用途(衛材用途)、産業資材用途に幅広く使用されている。
【0003】
特に紙おむつや生理用ナプキンなどの使い捨てサニタリー用途には、着用者への密着性を向上させるため伸縮可能に形成されることが要求される。特に、使い捨て紙おむつでは、ウェスト周囲、脚周り、胴部周囲等を伸縮可能にする様々な工夫がなされている。素材そのものに伸縮力を有する織布(ストレッチ布)を利用することも考えられるが、使い捨て着用物品に用いるにはコストが高い。このため、通常は、例えば、特開2002−35029号公報(特許文献1)に開示されているように、不織布やプラスチックフィルム等の非伸縮性部材に糸状や帯状の伸縮部材を伸長状態で貼り付けて、これらの非伸縮性部材を伸縮可能にして、伸縮性シートやギャザーと云われる部材を形成する。
【0004】
これらの非伸縮性部材に接着して伸縮性を付与する部材としては、具体的には、帯状のゴムひもや糸状のポリウレタン弾性糸が用いられ、貼り付けにはホットメルト接着剤が用いられる。しかしながら、従来から使われている伸縮性を付与するためのポリウレタン弾性糸では、ドラフトアップして取り付けた場合、伸長させた時のポリウレタン弾性糸の抵抗力が高くなるため、糸抜けが発生することがあった。これを回避するため、ホットメルト接着剤を多くした場合は、糸抜けが減少する替わりに、部材が硬く仕上がり、製品としての伸縮性が不満足になることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−35029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術の問題点を解決し、ホットメルト接着材による接着性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法、さらには、少量のホットメルト接着剤で、かつ、高ドラフトで加工しても、良好な接着性を発現する、低応力で伸長できる伸縮性シートが得られると共に、感触の柔らかなサニタリー用品を得るのに好適なポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記の課題を解決するため、以下のいずれかの手段を採用する。
(1)ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸であって、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジンおよび/又はその誘導体とを含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
(2)前記ポリウレタンがポリウレタンウレアであることを特徴とする、前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(3)前記ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体の含有量が0.5重量%以上25重量%未満であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のポリウレタン弾性糸。
(4)前記ロジン及び/又はその誘導体の熱軟化点が70℃以上150℃以下であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
(5)前記ロジン及び/又はその誘導体の含有量が0.1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
(6)ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンの紡糸原液に、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジンおよび/又はその誘導体とを含有させて紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性糸の製造方法。
(7)鎖伸長剤として低分子量ジアミンを用い溶液重合法でポリウレタンを重合してポリウレタン溶液を得、該ポリウレタン溶液を重合直後の溶液粘度よりも増粘させるとともに重合直後の濁度の1.5倍〜10倍となるように制御した後、該ポリウレタン溶液にポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジンおよび/又はその誘導体とを含有させて紡糸することを特徴とする、前記(6)に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
(8)紡糸方法が乾式であることを特徴とする、前記(6)または(7)に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主構成成分がポリマージオールおよびジイソシアネートであるポリウレタン弾性糸がポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジン及び/またはその誘導体とを含有するので、優れた伸縮性を有しつつもホットメルトを使用した際の接着性が良好なポリウレタン弾性糸となる。そのため、かかるポリウレタン弾性糸では、少量のホットメルト接着剤、かつ、高ドラフトで加工しても、良好な接着性を発現し、低応力で伸長できる伸縮性シートが得られる。また、紙おむつ、衛生ナプキン等のサニタリー製品の製造の際に加工上の自由度が上がり、ホットメルト接着剤を減らすことによるコスト削減も可能となる。さらに、ホットメルト接着剤を減らしたサニタリー製品においては、ホットメルト接着剤による部材の硬化が減り、よりソフトな風合いに仕上がるため、着用感やフィット性に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明について、さらに詳細に述べる。
【0010】
まず本発明で使用するポリウレタンについて述べる。
【0011】
本発明に使用されるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。また、その合成法も特に限定されるものではない。すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンからとなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとからなるポリウレタンであってもよい。また、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグライコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0012】
ここで、本発明のポリウレタン糸を構成する代表的な構造単位について述べる。
【0013】
本発明に使用されるポリマージオールはポリエーテル系、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
【0014】
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3−メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG(以下、3M−PTMGと略する)、THFおよび2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が好ましく使用される。これらポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0015】
また、ポリウレタン弾性糸として耐摩耗性や耐光性を得る観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61−26612号公報などに開示されている側鎖を有するポリエステルポリオールなどのポリエステル系ジオールや、特公平2−289516号公報などに開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0016】
また、こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0017】
本発明に使用されるポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1800以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を容易に得ることができる。
【0018】
次に本発明に使用されるジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン糸の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
次に本発明における鎖伸長剤は、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうちの少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。また、ポリウレタン弾性糸の熱軟化点を上げ、乾式紡糸での安定性を向上させるという観点から、低分子量ジアミンを使用することがより好ましい。
【0020】
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を容易に得ることができる。これらの鎖伸長剤に、架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果が失わない程度に加えてもよい。
【0021】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオールなどが代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性がより高くなり、また、より強度の高い糸を得ることができるのである。
【0022】
また、本発明のポリウレタン弾性糸の分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0023】
本発明においては、以上のような基本構成を有するポリウレタン弾性糸が、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体と、ロジンおよび/又はその誘導体とを含有する。ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジン及び/又はその誘導体の両者を同時に含有させることで、ホットメルトを使用した際の接着性を大幅に向上させることが可能となる。
【0024】
本発明におけるポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体は、その含有量の合計が、0.5重量%以上25重量%以下の範囲であることが好ましく、応力緩和、永久歪率、伸度が特に良好なものにするという観点から、1重量%以上10重量%以下の範囲がより好ましい。含有量の合計が0.5重量%未満だと、ホットメルトを使用した際の接着性が悪くなるので好ましくない。また逆に含有量の合計が25重量%を越えると、応力緩和、永久歪率、伸度が悪化するので好ましくない。なお、含有量は事前にテストし、所望値を適宜決めるのが好ましい。
【0025】
ポリビニルピロリドンの共重合体を合成する際に用いる共重合化合物は特に限定されるものではないが、例えば、N−イソプロペニル2−ピロリドン、N−ビニル4−メチル2−ピロリドン、N−ビニルペピリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルエナントラクタム、N−ビニルバレロラクタム、N−ブテニル−2,4−ジ(1−ブテニル)−2−ピロリドンビニルアセテート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸等を用いることが出来る。これらの共重合体は、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であっても構わない。
【0026】
また、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体は、ポリウレタン弾性糸からの脱落を防ぐという観点から、K値は20以上70以下のものが好ましい。本発明においてK値とは、毛細管粘度計により測定される相対粘度値ηrel(25℃)を用いて下記のフィケンシャーの粘度式から算出されるもののことをいう。
K=(1.5 logηrel−1)/(0.15+0.003c)+(300clogηrel+(c+1.5clogηrel1/2/(0.15c+0.003c
ηrel : ポリビニルピロリドン水溶液の水に対する相対粘度
c : ポリビニルピロリドン水溶液中のポリビニルピロリドン濃度(%)
さらに、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体がイソプロピルアルコールを溶媒として合成されたものは、製造工程などで熱を受けたときに着色しにくく、好ましい。
【0027】
本発明の弾性糸においては、上記のポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とともに、ロジンおよび/又はその誘導体を含有させる。本発明におけるロジンは、3つの環構造、共役2重結合、カルボキシル基を有するアビエチン酸とその異性体の混合物を主成分とするものであり、採取方法からの分類としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンのいずれでも良い。また、ロジン誘導体としては、例えば、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン化ロジン、アクリル化ロジン、ロジンエステル、ロジン含有ジオール等が挙げられる。また、こうしたロジン及び/又はその誘導体は単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0028】
そして、ロジン及び/又はその誘導体は、熱軟化点が70℃以上150℃以下であることがホットメルト接着剤との接着性を発現させる観点で好ましい。
【0029】
糸中のロジン及び/又はその誘導体の熱軟化点を測定する方法としては、始めに糸を溶剤(トルエン/アセトン、体積比1/1)に3時間浸漬し、糸を取り出す。次に、溶剤を室温で蒸発させ、ロジン及び/又はその誘導体を析出させる。析出させたロジン及び/又はその誘導体の熱軟化点は、JIS K5902(1969年)に準じた環球法を用いて測定する。即ち、ロジン及び/又はその誘導体を蒸発皿の中で、なるべく低温で溶解させ、あらかじめ適温に加熱したリングの中に満たし、放冷後、少し加熱した小刀でリングの上端を含む平面から盛り上がった部分を切り取る。次に、上記粘着付与樹脂を詰め込んだリングを、支持器の所定の孔にはめ込み、ガラス容器(径85mm、高さ127mm以上)に入れる。ガラス容器中の熱媒体であるグリセリンの液温は、所定の軟化点より、45℃以上低くならないように15分保つ。次に、リングの中の上記ロジン及び/又はその誘導体の中央に鋼球を載せ、支持器の上の定位置に置く。リングの上端より、グリセリン液までの距離を50mm以上に保ちながら加熱する。加熱が始まって所定の軟化点よりも45℃前より、1分間につき5.0±0.5℃で昇温させ、軟化して底板に接触したときの温度を熱軟化点とする。
【0030】
ポリウレタン弾性糸におけるロジン及び/又はその誘導体の含有量は、良好な紡糸性、バランスの良い機械物性、熱接着性、耐熱性を得る観点から、0.1重量%以上20重量%以下の範囲が好ましく、より良好な熱接着性および耐熱性を得る観点から、0.3重量%以上10重量%以下がより好ましい。なお、これらの含有量は、用途に応じて事前にテストし、適宜決定することも好ましく行われる。
【0031】
さらに、本発明で使用されるロジン及び/又はその誘導体は、適度な透明度のポリウレタン糸を得ること、および紡糸工程で熱などを受けて糸が変色することを防止する観点から、400ハーゼンカラー以下のものが好ましい。
【0032】
さらに、本発明のポリウレタン弾性糸には、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
【0033】
また、本発明のポリウレタン弾性糸には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA−80”などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザーP−16”などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタンなどの各種顔料、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN−150などの酸化窒素補足剤、例えば、住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA−80”などの熱酸化安定剤、例えば、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ300♯622”などの光安定剤が使用されることも好ましい。
【0034】
次に本発明のポリウレタン弾性糸の製造方法について詳細に説明する。
【0035】
本発明においては、出発物質としてポリマージオールおよびジイソシアネートを用い、それらから得られるポリウレタンの紡糸原液に、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジン及び/又はその誘導体とを含有させて紡糸する。ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体やロジン及び/又はその誘導体は、ポリウレタンの重合段階で合わせて添加してもよいが、予めポリウレタン溶液を作製しておき、その後で添加するのが好ましい。
【0036】
ポリウレタン溶液の製法、また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性糸を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0037】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1500以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、ジオールとしてエチレングリコール、1,3プロパンジオールおよび1,4ブタンジオールのうちの少なくとも1種を使用して合成され、かつ、高温側の融点が200℃以上260℃以下の範囲のものが挙げられる。
【0038】
ポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述のジオールと反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0039】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上260℃以下の範囲に調節する代表的な方法は、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
【0040】
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0041】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0042】
アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0043】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0044】
こうして得られるポリウレタン溶液の濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0045】
本発明においては、かかる紡糸前のポリウレタン溶液に、上述のポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジン及び/又はその誘導体とを添加するのが好ましい。このとき、ポリウレタン溶液が、溶液重合法によって得られたポリウレタンウレアを含むポリウレタン溶液(すなわち、低分子量ジアミンによって鎖伸張反応されたポリウレタン溶液)である場合には、該ポリウレタン溶液を、重合直後の溶液粘度よりも増粘させるとともに重合直後の濁度の1.5倍以上10倍以下の範囲となるように制御することで、得られるポリウレタン弾性糸のホットメルト接着剤による接着性をさらに向上することができる。ポリウレタン溶液の制御方法としては特に限定されず、所定の粘度、濁度となるように任意の温度下で保存すればよいが、制御時間の短縮とポリウレタン溶液の急激なゲル化を抑制させるという観点で、20℃以上70℃以下の温度下で制御することが好ましい。また、制御状態としては静置または攪拌のいずれで行っても良い。溶液粘度に関して、重合直後よりも増粘していれば数値は特に限定されず、紡糸可能な範囲でコントロールすればよい。濁度に関しては重合直後の溶液粘度から1.5倍未満の増加ではホットメルト接着性の向上効果が少なく、また、10倍を超えて増加すると、工程でのフィルター詰まりが発生しやすくなり、生産性が劣るものとなる。
【0046】
ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジン及びその誘導体とをポリウレタン溶液へ添加し、斑なく分散もしくは溶解するよう攪拌、混合処理するにあたっては、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。ここで、添加されるポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジン及びその誘導体とは、ポリウレタン溶液への均一な添加を行う観点から、予め同様の溶剤に均一分散または溶解させた溶液にして添加することが好ましい。
【0047】
なお、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体がN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶剤に溶解しない場合は、平均粒子径10ミクロン以下の微粒子状として、ポリウレタン紡糸原液に分散させる事もできる。また、ロジン及び/又はその誘導体についても同様に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶剤に溶解しない場合は、平均粒子径10ミクロン以下の微粒子状として、ポリウレタン紡糸原液に分散させる事もできる。
【0048】
また、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジン及び/またはその誘導体とのポリウレタン溶液への添加の際には、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤や顔料などを同時に添加してもよい。
【0049】
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明のポリウレタン糸を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0050】
本発明のポリウレタン弾性糸の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0051】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0052】
たとえば、本発明のポリウレタン弾性糸の永久歪率と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。
【0053】
すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。そして、特に低い永久歪率と、低い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.15以上1.4以下の範囲がより好ましく、1.15以上1.35以下の範囲がさらに好ましい。一方、高い永久歪率と、高い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.25以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましく、1.35以上1.65以下の範囲がより好ましい。
【0054】
また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性糸の強度を向上させる観点から、300m/分以上であることが好ましい。
【実施例】
【0055】
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。まず、以下に本発明における各種特性の評価方法を説明する。
【0056】
[糸中のポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体の分析方法]
糸試料約1gにジクロロメタンを溶媒としたソックスレー抽出器に入れ、ポリビニルピロリドン及び/またはその共重合体のうち少なくとも1種を抽出した。溶媒溜去後、メタノール20mlを加え、残渣を溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより分析を行った。定量には濃度の決定しているポリビニルピロリドン及び/またはその共重合体の溶液により検量線を予め作成し用いた。下記式により含有率を求めた。
【0057】
含有率(重量%)=(糸試料ピーク面積/検量線ピーク面積)×検量線試料量/糸試料重量×100
[糸中のロジン及び/又はその誘導体の分析方法]
糸を溶剤(トルエン/アセトン、体積比1/1)に3時間浸漬し、溶剤をIR計で測定した。1580cm−1付近の吸収から、既知溶剤濃度溶剤を用いた検量線により糸中の含有量を求めた。
[ポリウレタン紡糸原液の粘度測定方法]
40℃における鋼球落下式粘度測定法により求めた。なお、測定値はn=3回の平均値で求めた。
[ポリウレタン紡糸原液の濁度測定方法]
ポリウレタン紡糸原液をガラス製試験管に満たし、ポリウレタン紡糸原液中のエアーを遠心分離器にて除去し、25℃にて1時間保管した。測定にはハック社製2100N型ラボ用濁度計を25℃下にて使用し、NTUモードにて行った。なお、測定値はn=3回の平均値で求めた。
[ポリウレタン弾性糸の強度、応力緩和、永久歪率、伸度]
ポリウレタン弾性糸の強度、応力緩和、永久歪率、伸度は、試料糸をインストロン4502型引張試験機にて、引張テストをすることにより測定した。
【0058】
これらは下記により定義される。
【0059】
すなわち、5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で300%伸長を5回繰返した。この5回目の応力を(G1)とした。次に、そのまま300%伸長を30秒間保持した。30秒間保持後の応力を(G2)とした。次に伸長を回復せしめ応力が0になった際の試料糸の長さを(L2)とした。さらに6回目に試料糸が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料糸の長さを(L3)とした。
【0060】
以下、前記特性は下記式により与えられる。
【0061】
強度 =(G3)
応力緩和=100×((G1)−(G2))/(G1)
永久歪率=100×((L2)−(L1))/(L1)
伸度 =100×((L3)−(L1))/(L1)。
【0062】
なお、引張テストは5回行い、平均値で評価する。
【0063】
[ホットメルト接着性]
ポリウレタン弾性糸を130m/分の速度で走行している幅15cmのポリプロピレン製不織布の上を規定のドラフト(ドラフト2.0,3.0)で伸張させながら同一方向に等間隔に8本走行させながら、150℃のポット中で溶解させた水添スチレンブタジエンスチレン共重合体を主成分とするホットメルト接着剤をコームガンにてポリウレタン糸1本あたり規定量(0.03g/m,0.07g/m)の割合で塗布した後、上方から別のポリプロピレン製不織布をかぶせて圧着、巻き取り、伸縮性シートを得た。
【0064】
こうして得られた伸縮性シートを不織布が完全に伸張する状態で、木製平板に固定し、伸縮性シートの上から、剃刀端を用いて、不織布中のポリウレタン弾性糸8本について30cm長さの両端、計16箇所を切断した。この伸張板を、40℃、80%RHで2時間保管し、ホットメルト接着剤で固定されたポリウレタン弾性糸がポリプロピレン製不織布中に収縮、すなわちスリップインした後の糸長(L4)および原長として両切断部間の長さ(L5)を測定する。なお、測定は合計24本の弾性繊維について行い、それら24本のホットメルト接着性保持率の平均値で評価する。
【0065】
ホットメルト接着性(%)=100×(L4)/(L5)
[伸縮性シートの伸度]
前述方法で得た伸縮性シートを無緊張で、チャック間距離を20cmに設定した引張試験機にセッティングし、速度50cm/分で10cNまでの伸張、20cmまでの収縮、を2回繰り返した。さらにその後20cN応力で伸長させ、その時の長さ(L6)を測定し、下記の式により伸縮性シートの伸度を算出した。
【0066】
伸度 =100×((L6)−20)/20
[実施例1]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体のDMAC溶液(35重量%)を調整し、ポリマ溶液A1とした。なお、このときのA1のポリマ溶液粘度は2213ポイズ、濁度は0.25であった。次に、日本触媒社製ポリビニルピロリドンK−30のDMAc溶液(35重量%)を25℃下で攪拌して調整し、溶液(B1)とした。次に、荒川化学社製ロジン(品名パインクリスタル(R)KR−612、熱軟化点83℃)のDMAc溶液(35重量%)を25℃下で攪拌して調整し、溶液(C1)とした。さらに、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)を25℃下で攪拌して調整し、酸化防止剤溶液D1(35重量%)とした。ポリマ溶液A1、B1、C1、D1を92重量%、6重量%、1重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が6重量%、ロジンの含有量が1重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0067】
得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。得られた伸縮性シートは高ドラフトでホットメルト接着剤の塗布量が少なくても良好なホットメルト接着性を示し、伸縮性も十分な性能を有するものであった。
【0068】
[実施例2]
ポリマ溶液A1、B1、C1、D1を94重量%、3重量%、2重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E2とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が6重量%、ロジンの含有量が1重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0069】
得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。得られた伸縮性シートは高ドラフトでホットメルト接着剤の塗布量が少なくても良好なホットメルト接着性を示し、伸縮性も十分な性能を有するものであった。
【0070】
[実施例3]
荒川化学社製ロジンエステル(品名パインクリスタル(R)KE−100、熱軟化点103℃)のDMAc溶液(35重量%)を25℃下で攪拌して調整し、溶液(C2)とした。
【0071】
ポリマ溶液A1、B1、C2、D1を88重量%、6重量%、5重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E3とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が6重量%、ロジンエステルの含有量が5重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0072】
得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。得られた伸縮性シートは高ドラフトでホットメルト接着剤の塗布量が少なくても良好なホットメルト接着性を示し、伸縮性も十分な性能を有するものであった。
【0073】
[実施例4]
アイエスピー・ジャパン(品名(ビニルピロリドン/酢酸ビニル)コポリマー、S―630)のDMAc溶液(35重量%)を25℃下で攪拌して調整し、溶液(B2)とした。
【0074】
ポリマ溶液A1、B2、C1、D1を88.3重量%、10重量%、0.7重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E4とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体の含有量が10重量%、ロジンの含有量が0.7重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0075】
得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。得られた伸縮性シートは高ドラフトでホットメルト接着剤の塗布量が少なくても良好なホットメルト接着性を示し、伸縮性も十分な性能を有するものであった。
【0076】
[実施例5]
ポリマ溶液A1、B2、C2、D1を85重量%、2重量%、12重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E5とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ビニルピロリドン/酢酸ビニルの共重合体の含有量が2重量%、ロジンエステルの含有量が12重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0077】
得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。得られた伸縮性シートは高ドラフトでホットメルト接着剤の塗布量が少なくても良好なホットメルト接着性を示し、伸縮性も十分な性能を有するものであった。
【0078】
[実施例6]
荒川化学社製ロジン含有ジオール(品名パインクリスタル(R)D−6011、熱軟化点87℃)のDMAc溶液(35重量%)を25℃下で攪拌して調整し、溶液(C3)とした。
【0079】
ポリマ溶液A1、B2、C3、D1を86重量%、4重量%、9重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E6とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体の含有量が4重量%、ロジン含有ジオールの含有量が9重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0080】
得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。得られた伸縮性シートは高ドラフトでホットメルト接着剤の塗布量が少なくても良好なホットメルト接着性を示し、伸縮性も十分な性能を有するものであった。
【0081】
[実施例7]
ポリマ溶液A1、B1、C1、D1を74.7重量%、24重量%、0.3重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E7とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が24重量%、ロジンの含有量が0.3重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。得られた伸縮性シートは高ドラフトでホットメルト接着剤の塗布量が少なくても良好なホットメルト接着性を示した。
【0082】
[実施例8]
ポリマ溶液A1、B2、C2、D1を78.5重量%、0.5重量%、20重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E8とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体の含有量が0.5重量%、ロジンエステルの含有量が20重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。得られた伸縮性シートは高ドラフトでホットメルト接着剤の塗布量が少なくても良好なホットメルト接着性を示し、伸縮性も十分な性能を有するものであった。
【0083】
[実施例9]
ポリマ溶液A1、B1、C1、D1を98重量%、0.5重量%、0.5重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E9とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が0.5重量%、ロジンの含有量が0.5重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。得られた伸縮性シートは高ドラフトでホットメルト接着剤の塗布量が少なくても良好なホットメルト接着性を示し、伸縮性にも優れた性能を有するものであった。
【0084】
[実施例10]
ポリマ溶液A1を40℃にて50時間静置し、溶液粘度2923ポイズ、濁度1.22のポリマ溶液A2とした。A2、B1、C1、D1を92重量%、6重量%、1重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E10とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が6重量%、ロジンの含有量が1重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。なお、紡糸時には糸切れ等のトラブルの発生は認められなかった。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。
【0085】
[実施例11]
ポリマ溶液A1を40℃にて75時間静置し、溶液粘度3506ポイズ、濁度2.28のポリマ溶液A3とした。A3、B2、C1、D1を92重量%、6重量%、1重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E11とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ビニルピロリドン/酢酸ビニルの共重合体の含有量が6重量%、ロジンの含有量が1重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。なお、紡糸時には糸切れ等のトラブルの発生は認められなかった。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。
【0086】
[実施例12]
ポリマ溶液A1を40℃にて100時間静置し、溶液粘度5210ポイズ、濁度2.95のポリマ溶液A4とした。A4、B2、C1、D1を92重量%、6重量%、1重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E12とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ビニルピロリドン/酢酸ビニルの共重合体の含有量が6重量%、ロジンの含有量が1重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。なお、乾式紡糸中には口金フィルター詰まりと思われる糸切れが散発した。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。
【0087】
[実施例13]
分子量3500の3Me−PTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体のDMAC溶液(32重量%)を調整し、ポリマ溶液A5とした。なお、このときのA5のポリマ溶液粘度は1232ポイズ、濁度は0.13であった。ポリマ溶液A5、B1、C1、D1を92重量%、6重量%、1重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E13とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が6重量%、ロジンの含有量が1重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。
【0088】
[実施例14]
ポリマ溶液A1を45℃にて50時間静置し、溶液粘度1487ポイズ、濁度0.21のポリマ溶液A6とした。A6、B1、C1、D1を92重量%、6重量%、1重量%、1重量%で均一に混合し、溶液E14とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が6重量%、ロジンの含有量が1重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。なお、紡糸時には糸切れ等のトラブルの発生は認められなかった。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表2に示した。
【0089】
[比較例1]
ポリマ溶液A1、D1を99重量%、1重量%で均一に混合し、溶液F1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメントのポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表3に示した。得られた伸縮性シートはホットメルトの塗布量が少ない場合には接着性が悪くなった。
【0090】
[比較例2]
ポリマ溶液A1、B1、D1を87重量%、12重量%、1重量%で均一に混合し、溶液F2とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が12重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表3に示した。
【0091】
[比較例3]
ポリマ溶液A1、C1、D1を96重量%、3重量%、1重量%で均一に混合し、溶液F3とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ロジンの含有量が3重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表3に示した。
【0092】
[比較例4]
ポリマ溶液A2、B1、D1を93重量%、6重量%、1重量%で均一に混合し、溶液F4とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.3として350m/分のスピードで乾式紡糸し、470デシテックス、56フィラメント、ポリビニルピロリドンの含有量が6重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。得られた糸の伸度、強度、永久歪率、応力緩和を表1に示した。また、作成した伸縮性シートの伸度及びホットメルト接着性を表3に示した。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のポリウレタン弾性糸は、ホットメルト接着剤に対して優れた接着性を有するものであるので、着用感やフィット性に優れた紙おむつや衛生ナプキン等のサニタリー製品に、好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸であって、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジンおよび/又はその誘導体とを含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
【請求項2】
前記ポリウレタンがポリウレタンウレアであることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項3】
前記ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体の含有量が0.5重量%以上25重量%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項4】
前記ロジン及び/又はその誘導体の熱軟化点が70℃以上150℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項5】
前記ロジン及び/又はその誘導体の含有量が0.1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項6】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンの紡糸原液に、ポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジンおよび/又はその誘導体とを含有させて紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性糸の製造方法。
【請求項7】
鎖伸長剤として低分子量ジアミンを用い溶液重合法でポリウレタンを重合してポリウレタン溶液を得、該ポリウレタン溶液を重合直後の溶液粘度よりも増粘させるとともに重合直後の濁度の1.5倍〜10倍となるように制御した後、該ポリウレタン溶液にポリビニルピロリドン及び/又はその共重合体とロジンおよび/又はその誘導体とを含有させて紡糸することを特徴とする請求項6に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
【請求項8】
紡糸方法が乾式であることを特徴とする請求項6または7に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。

【公開番号】特開2010−168717(P2010−168717A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290592(P2009−290592)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(502179282)東レ・オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】