ポリウレタン弾性糸およびその製造方法
【課題】
X線造影性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸であって、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
X線造影性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸であって、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線造影性に優れたポリウレタン弾性糸に関する。具体的には、X線造影性に優れ、X線撮影によって存在の確認が可能な布帛やガーゼ等の部材を得るのに好適なポリウレタン弾性糸およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどの伸縮性衣料用途、紙おむつや生理用ナプキンなどのサニタリー用途(衛材用途)、産業資材用途に幅広く使用されている。
【0003】
近年、加工や編織物の組織の複雑化に伴って、存在位置の制御や工程トラブル時に存在有無の確認が可能なポリウレタン弾性糸が要求されている。また、手術により織編物や不織布ガーゼ等が体内に残存していないかを確認できるようにと、存在有無の確認が容易なポリウレタン弾性糸が求められている。
【0004】
例えば、特開昭59−59912号公報(特許文献1)や特表平8−511585号公報(特許文献2)には、X線造影剤として知られている硫酸バリウムを含有するポリウレタン弾性糸が開示されている。しかしながら、これら文献に記載のポリウレタン弾性糸は、染色加工性や粘着性を高めることを目的とするものであって、十分なX線造影性を発揮するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−59912号公報
【特許文献2】特表平8−511585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、X線造影性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための本発明は、以下のいずれかの手段を採用する。
(1)ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸であって、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
(2)破断伸度が400%以上であることを特徴とする、前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(3)ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に硫酸バリウムを含有する硫酸バリウム分散液を混合し、該紡糸原液から硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有するポリウレタン弾性糸を紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性糸の製造方法。
(4)硫酸バリウム分散液が、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩、およびポリエーテルリン酸エステル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする、前記(3)に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
(5)紡糸方法が乾式紡糸であることを特徴とする、前記(3)または(4)に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主構成成分がポリマージオールおよびジイソシアネートであるポリウレタン弾性糸が硫酸バリウムを20〜70重量%の範囲で含有するので、伸縮性とX線造影性の両方に優れたポリウレタン弾性糸となる。そのため、かかるポリウレタン弾性糸はX線撮影によって加工時の存在位置や編織物等の組織における存在有無を確認することができる。また、本ポリウレタン弾性糸を織編物や不織布ガーゼ等に加工したものを手術時に使用することで、織編物や不織布ガーゼ等が体内に残存していないかの確認が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図2】実施例2で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図3】実施例3で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図4】実施例4で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図5】実施例5で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図6】実施例6で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図7】実施例7で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図8】実施例8で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図9】実施例9で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図10】比較例1で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図11】比較例2で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図12】比較例3で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明について、さらに詳細に述べる。
【0011】
まず本発明で使用するポリウレタンについて述べる。
【0012】
本発明に使用されるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。また、その合成法も特に限定されるものではない。すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンからとなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとからなるポリウレタンであってもよい。また、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグライコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0013】
ここで、本発明のポリウレタン糸を構成する代表的な構造単位について述べる。
【0014】
本発明に使用されるポリマージオールはポリエーテル系、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
【0015】
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3−メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG(以下、3M−PTMGと略する)、THFおよび2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が好ましく使用される。これらポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0016】
また、ポリウレタン弾性糸として耐摩耗性や耐光性を得る観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61−26612号公報などに開示されている側鎖を有するポリエステルポリオールなどのポリエステル系ジオールや、特公平2−289516号公報などに開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0017】
また、こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0018】
本発明に使用されるポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1800以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を容易に得ることができる。
【0019】
次に本発明に使用されるジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン糸の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
次に本発明における鎖伸長剤は、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうちの少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。
【0021】
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を容易に得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果が失わない程度に加えてもよい。
【0022】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオールなどが代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性がより高くなり、また、より強度の高い糸を得ることができるのである。
【0023】
また、本発明に用いられるポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0024】
さらに、ポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
【0025】
本発明においては、以上のような基本構成を有するポリウレタンからなるポリウレタン弾性糸に、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有させることで、伸縮性を維持しながらX線造影性を大幅に向上させることが可能となる。
【0026】
本発明における硫酸バリウムの含有量は、ポリウレタン弾性糸全重量に対して20重量%以上70重量%以下の範囲である。硫酸バリウムの含有量が20重量%未満だと、X線撮影した際の造影性が悪くなるので好ましくない。好ましくは30重量%以上である。一方含有量が70重量%を越えると、紡糸性が著しく悪化するので好ましくない。好ましくは60重量%以下である。X線造影性とより良好な紡糸性を両立させるという観点からは、30重量%以上60重量%以下の範囲が好ましい。
【0027】
本発明において硫酸バリウムは、紡糸原液の紡糸口金への詰まりを抑えるという観点から、平均一次粒子径が3μm以下のものが好ましい。また、硫酸バリウムの分散性を向上させるという観点から、表面処理されたものを使用することも好ましい。
【0028】
本発明のポリウレタン弾性糸には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)P−16などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタンなどの各種顔料、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN−150などの酸化窒素補足剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などの熱酸化安定剤、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ”(登録商標)300♯622などの光安定剤が使用されることも好ましい。
【0029】
次に本発明のポリウレタン弾性糸の製造方法について詳細に説明する。
【0030】
本発明においては、出発物質としてポリマージオールおよびジイソシアネートを用い、それらから得られるポリウレタンの紡糸原液に、硫酸バリウムを含有させて紡糸する。重合を安定化させるという観点から、予めポリウレタン溶液を作製しておき、それに硫酸バリウム分散液を添加することが好ましい。ポリウレタン溶液の製法、また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性糸を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0031】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1500以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成されたものが挙げられる。
【0032】
ポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述の鎖伸長剤と反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0033】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、耐熱性に優れたものを得るという観点から、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上260℃以下の範囲に調節することが好ましい。代表的な方法は、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
【0034】
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0035】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0036】
アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0037】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0038】
こうして得られるポリウレタン溶液におけるポリウレタンの濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0039】
本発明においては、かかるポリウレタン溶液に硫酸バリウムを添加する。硫酸バリウムのポリウレタン溶液への添加方法としては、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。
そして、本発明においては、伸縮性を維持しながらX線造影性を大幅に向上させるため、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲でポリウレタン弾性糸に含有させるが、そのためには、紡糸前のポリウレタン紡糸原液に、硫酸バリウムを斑なく分散させる必要があり、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を溶媒とするポリウレタンの紡糸原液に、上述の硫酸バリウムを加え、斑なく分散するよう攪拌、混合処理することが好ましい。具体的には、硫酸バリウムを、あらかじめN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶媒に分散して硫酸バリウム分散液とし、その分散液をポリウレタン紡糸原液に混合することが好ましい。
【0040】
ここで、添加される硫酸バリウム分散液の溶媒は、ポリウレタン溶液への均一な添加を行う観点から、ポリウレタン溶液と同一の溶剤を用いることが好ましい。
【0041】
そして、X線造影性をさらに高めるべく硫酸バリウムを例えば30重量%以上の高濃度でポリウレタン弾性糸に含有させるとともに紡糸性を確保するためには、硫酸バリウム分散液に、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩、およびポリエーテルリン酸エステル化合物の少なくとも1種の分散剤を含有させることが好ましい。かかる分散剤を用いることで、硫酸バリウム粒子の沈降性やポリマ溶液と混合した際に生じる2次凝集を抑えることができ、硫酸バリウム分散液の分散安定性を向上することができ、その結果、硫酸バリウムを30重量%以上70重量%以下という高濃度で含有するポリウレタン弾性糸を安定に紡糸することができる。なお、硫酸バリウムと分散剤との比率は硫酸バリウムの粒子径や分散剤の種類、濃度等によって適宜選択して決定することが好ましい。
【0042】
また、硫酸バリウムのポリウレタン溶液への添加の際には、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤や顔料などを同時に添加してもよい。
【0043】
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明のポリウレタン弾性糸を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0044】
本発明のポリウレタン弾性糸の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0045】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0046】
たとえば、本発明のポリウレタン弾性糸の永久歪率と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。そして、特に高い永久歪率と低い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.15以上1.4以下の範囲がより好ましく、1.15以上1.35以下の範囲がさらに好ましい。一方、低い永久歪率と高い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.25以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましく、1.35以上1.65以下の範囲がより好ましい。
【0047】
また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性糸の強度を向上させる観点から、250m/分以上であることが好ましい。
【実施例】
【0048】
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0049】
[紡糸性]
紡糸を連続して24時間行い、その時の糸切れ回数にて判定した。回数の少ない方が紡糸性に優れていることを示す。
【0050】
[X線造影性]
無伸張状態の試料を10本束ねてフィルムに敷き、その上に含水したセルローススポンジを25cm厚となるように重ねた。そこに、管電圧74kV、管電流200mAのX線発生装置(陽極:タングステン)にて、X線照射距離を1mとし、照射時間を0.02秒とした撮影条件にて得られたX線写真を用いて、目視によりその造影性の見え具合を以下の4段階で評価した。
◎ :非常に鮮明に見える。
○ :鮮明に見える。
× :鮮明に見えない。
××:見えない
[強度、伸度]
強度、伸度は、試料糸をインストロン4502型引張試験機にて、引張テストをすることにより測定した。測定回数はn=3で測定し、それらの平均値を採用した。これらは下記により定義される。
【0051】
すなわち、5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で試料糸が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G1)、破断時の試料糸の長さを(L2)とした。以下、前記特性は下記式により与えられる。
強度 =(G1)
伸度 =100×((L2)−(L1))/(L1)。
【0052】
[実施例1]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体のDMAC溶液(35重量%)を調整し、ポリマ溶液A1とした。
【0053】
次に、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)とを2対1(重量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35重量%)を調整し、これをその他添加剤溶液B1(35重量%)とした。
【0054】
さらに、堺化学社(株)製硫酸バリウムBF−20(平均一次粒子径:0.03μm、比重:4.0)を用い、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:0.3mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C1(35重量%)とした。
【0055】
A1、B1、C1を73重量%、2重量%、25重量%で均一に混合し、溶液D1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が25重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0056】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性は良好で、伸度、強度およびX線造影性に十分な性能を有するものであった。
【0057】
[実施例2]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)を用い、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C2(35重量%)とした。
【0058】
A1、B1、C2を63重量%、2重量%、35重量%で均一に混合し、溶液D2とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が35重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0059】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸時に糸切れがやや見られたものの、優れたX線造影性を有するものであった。
【0060】
[実施例3]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)製のポリエーテルエステル酸のアミン塩系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−234とを10:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C3(40重量%)とした。
【0061】
A1、B1、C3を61重量%、2重量%、37重量%で均一に混合し、溶液D3とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が36重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0062】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度およびX線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0063】
[実施例4]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)性のポリエーテルリン酸エステルのアミン塩系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−325とを20:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C4(40重量%)とした。
A1、B1、C4を64重量%、2重量%、34重量%で均一に混合し、溶液D4とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が35重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0064】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度およびX線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0065】
[実施例5]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)性のポリエーテルリン酸エステル化合物系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−375とを20:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C5(40重量%)とした。
【0066】
A1、B1、C5を64重量%、2重量%、34重量%で均一に混合し、溶液D5とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が35重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0067】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度およびX線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0068】
[実施例6]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)性のポリエーテルリン酸エステルのアミン塩系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−325とを10:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C6(45重量%)とした。
【0069】
A1、B1、C6を54重量%、2重量%、44重量%で均一に混合し、溶液D6とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が45重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0070】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度およびX線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0071】
[実施例7]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)性のポリエーテルエステル酸のアミン塩系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−234とを10:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C7(50重量%)とした。
【0072】
A1、B1、C7を51重量%、2重量%、47重量%で均一に混合し、溶液D7とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が50重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0073】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度に優れ、X線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0074】
[実施例8]
A1、B1、C7を34重量%、1重量%、65重量%で均一に混合し、溶液D8とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が65重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0075】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性時に糸切れがやや認められたものの、優れたX線造影性を有するものであった。
【0076】
[実施例9]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と理研ビタミン(株)性のソルビタン脂肪酸エステル系分散剤“ポエム”(登録商標)O−80Vとを10:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C8(40重量%)とした。
【0077】
A1、B1、C8を57重量%、2重量%、41重量%で均一に混合し、溶液D9とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が40重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0078】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性時に糸切れがやや認められたものの、優れたX線造影性を有するものであった。
【0079】
[比較例1]
ポリマ溶液A1、B1を98重量%、2重量%で均一に混合し、溶液E1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメントのポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0080】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度は良好であったが、X線造影性は全く認められないものであった。
【0081】
[比較例2]
ポリマ溶液A1、B1、C1を90重量%、2重量%、8重量%で均一に混合し、溶液E2とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が8重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0082】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。X線造影性は不十分な性能であった。
【0083】
[比較例3]
ポリマ溶液A1、B1、C2を83重量%、2重量%、15重量%で均一に混合し、溶液E3とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が15重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0084】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。X線造影性は不十分な性能であった。
【0085】
[比較例4]
ポリマ溶液A1、B1、C2を18重量%、2重量%、80重量%で均一に混合し、溶液E4とした。これの乾式紡糸を試みたが、紡糸が不可能で糸を得ることができなかった。
【0086】
[比較例5]
ポリマ溶液A1、B1、C7を20重量%、2重量%、78重量%で均一に混合し、溶液E5とした。これの乾式紡糸を試みたが、紡糸が不可能で糸を得ることができなかった。
【0087】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリウレタン弾性糸は、X線造影性を有するものである。X線造影性を有することから、加工工程や編織物や不織布におけるポリウレタン弾性糸の確認がX線撮影により容易になる。
【0089】
また、優れたX線造影性を利用して手術時に使用される織編物や不織布ガーゼ等に加工したものに特に好適である。本発明のポリウレタン弾性糸を織編物や不織布ガーゼ等に加工したものを手術時に使用することで、目視ではわかりづらい織編物や不織布ガーゼ等が体内に残存しているかの確認が容易になる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線造影性に優れたポリウレタン弾性糸に関する。具体的には、X線造影性に優れ、X線撮影によって存在の確認が可能な布帛やガーゼ等の部材を得るのに好適なポリウレタン弾性糸およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどの伸縮性衣料用途、紙おむつや生理用ナプキンなどのサニタリー用途(衛材用途)、産業資材用途に幅広く使用されている。
【0003】
近年、加工や編織物の組織の複雑化に伴って、存在位置の制御や工程トラブル時に存在有無の確認が可能なポリウレタン弾性糸が要求されている。また、手術により織編物や不織布ガーゼ等が体内に残存していないかを確認できるようにと、存在有無の確認が容易なポリウレタン弾性糸が求められている。
【0004】
例えば、特開昭59−59912号公報(特許文献1)や特表平8−511585号公報(特許文献2)には、X線造影剤として知られている硫酸バリウムを含有するポリウレタン弾性糸が開示されている。しかしながら、これら文献に記載のポリウレタン弾性糸は、染色加工性や粘着性を高めることを目的とするものであって、十分なX線造影性を発揮するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−59912号公報
【特許文献2】特表平8−511585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、X線造影性に優れたポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための本発明は、以下のいずれかの手段を採用する。
(1)ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸であって、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
(2)破断伸度が400%以上であることを特徴とする、前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(3)ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に硫酸バリウムを含有する硫酸バリウム分散液を混合し、該紡糸原液から硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有するポリウレタン弾性糸を紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性糸の製造方法。
(4)硫酸バリウム分散液が、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩、およびポリエーテルリン酸エステル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする、前記(3)に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
(5)紡糸方法が乾式紡糸であることを特徴とする、前記(3)または(4)に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主構成成分がポリマージオールおよびジイソシアネートであるポリウレタン弾性糸が硫酸バリウムを20〜70重量%の範囲で含有するので、伸縮性とX線造影性の両方に優れたポリウレタン弾性糸となる。そのため、かかるポリウレタン弾性糸はX線撮影によって加工時の存在位置や編織物等の組織における存在有無を確認することができる。また、本ポリウレタン弾性糸を織編物や不織布ガーゼ等に加工したものを手術時に使用することで、織編物や不織布ガーゼ等が体内に残存していないかの確認が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図2】実施例2で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図3】実施例3で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図4】実施例4で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図5】実施例5で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図6】実施例6で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図7】実施例7で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図8】実施例8で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図9】実施例9で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図10】比較例1で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図11】比較例2で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【図12】比較例3で得られたポリウレタン弾性糸のX線写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明について、さらに詳細に述べる。
【0011】
まず本発明で使用するポリウレタンについて述べる。
【0012】
本発明に使用されるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。また、その合成法も特に限定されるものではない。すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンからとなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとからなるポリウレタンであってもよい。また、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグライコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0013】
ここで、本発明のポリウレタン糸を構成する代表的な構造単位について述べる。
【0014】
本発明に使用されるポリマージオールはポリエーテル系、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
【0015】
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3−メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG(以下、3M−PTMGと略する)、THFおよび2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が好ましく使用される。これらポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0016】
また、ポリウレタン弾性糸として耐摩耗性や耐光性を得る観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61−26612号公報などに開示されている側鎖を有するポリエステルポリオールなどのポリエステル系ジオールや、特公平2−289516号公報などに開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0017】
また、こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0018】
本発明に使用されるポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1800以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を容易に得ることができる。
【0019】
次に本発明に使用されるジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン糸の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
次に本発明における鎖伸長剤は、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうちの少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。
【0021】
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を容易に得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果が失わない程度に加えてもよい。
【0022】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオールなどが代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性がより高くなり、また、より強度の高い糸を得ることができるのである。
【0023】
また、本発明に用いられるポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0024】
さらに、ポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
【0025】
本発明においては、以上のような基本構成を有するポリウレタンからなるポリウレタン弾性糸に、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有させることで、伸縮性を維持しながらX線造影性を大幅に向上させることが可能となる。
【0026】
本発明における硫酸バリウムの含有量は、ポリウレタン弾性糸全重量に対して20重量%以上70重量%以下の範囲である。硫酸バリウムの含有量が20重量%未満だと、X線撮影した際の造影性が悪くなるので好ましくない。好ましくは30重量%以上である。一方含有量が70重量%を越えると、紡糸性が著しく悪化するので好ましくない。好ましくは60重量%以下である。X線造影性とより良好な紡糸性を両立させるという観点からは、30重量%以上60重量%以下の範囲が好ましい。
【0027】
本発明において硫酸バリウムは、紡糸原液の紡糸口金への詰まりを抑えるという観点から、平均一次粒子径が3μm以下のものが好ましい。また、硫酸バリウムの分散性を向上させるという観点から、表面処理されたものを使用することも好ましい。
【0028】
本発明のポリウレタン弾性糸には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)P−16などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタンなどの各種顔料、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN−150などの酸化窒素補足剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80などの熱酸化安定剤、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ”(登録商標)300♯622などの光安定剤が使用されることも好ましい。
【0029】
次に本発明のポリウレタン弾性糸の製造方法について詳細に説明する。
【0030】
本発明においては、出発物質としてポリマージオールおよびジイソシアネートを用い、それらから得られるポリウレタンの紡糸原液に、硫酸バリウムを含有させて紡糸する。重合を安定化させるという観点から、予めポリウレタン溶液を作製しておき、それに硫酸バリウム分散液を添加することが好ましい。ポリウレタン溶液の製法、また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性糸を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0031】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1500以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成されたものが挙げられる。
【0032】
ポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述の鎖伸長剤と反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0033】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、耐熱性に優れたものを得るという観点から、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上260℃以下の範囲に調節することが好ましい。代表的な方法は、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
【0034】
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0035】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0036】
アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0037】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0038】
こうして得られるポリウレタン溶液におけるポリウレタンの濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0039】
本発明においては、かかるポリウレタン溶液に硫酸バリウムを添加する。硫酸バリウムのポリウレタン溶液への添加方法としては、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。
そして、本発明においては、伸縮性を維持しながらX線造影性を大幅に向上させるため、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲でポリウレタン弾性糸に含有させるが、そのためには、紡糸前のポリウレタン紡糸原液に、硫酸バリウムを斑なく分散させる必要があり、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を溶媒とするポリウレタンの紡糸原液に、上述の硫酸バリウムを加え、斑なく分散するよう攪拌、混合処理することが好ましい。具体的には、硫酸バリウムを、あらかじめN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶媒に分散して硫酸バリウム分散液とし、その分散液をポリウレタン紡糸原液に混合することが好ましい。
【0040】
ここで、添加される硫酸バリウム分散液の溶媒は、ポリウレタン溶液への均一な添加を行う観点から、ポリウレタン溶液と同一の溶剤を用いることが好ましい。
【0041】
そして、X線造影性をさらに高めるべく硫酸バリウムを例えば30重量%以上の高濃度でポリウレタン弾性糸に含有させるとともに紡糸性を確保するためには、硫酸バリウム分散液に、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩、およびポリエーテルリン酸エステル化合物の少なくとも1種の分散剤を含有させることが好ましい。かかる分散剤を用いることで、硫酸バリウム粒子の沈降性やポリマ溶液と混合した際に生じる2次凝集を抑えることができ、硫酸バリウム分散液の分散安定性を向上することができ、その結果、硫酸バリウムを30重量%以上70重量%以下という高濃度で含有するポリウレタン弾性糸を安定に紡糸することができる。なお、硫酸バリウムと分散剤との比率は硫酸バリウムの粒子径や分散剤の種類、濃度等によって適宜選択して決定することが好ましい。
【0042】
また、硫酸バリウムのポリウレタン溶液への添加の際には、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤や顔料などを同時に添加してもよい。
【0043】
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明のポリウレタン弾性糸を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0044】
本発明のポリウレタン弾性糸の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0045】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0046】
たとえば、本発明のポリウレタン弾性糸の永久歪率と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。そして、特に高い永久歪率と低い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.15以上1.4以下の範囲がより好ましく、1.15以上1.35以下の範囲がさらに好ましい。一方、低い永久歪率と高い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.25以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましく、1.35以上1.65以下の範囲がより好ましい。
【0047】
また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性糸の強度を向上させる観点から、250m/分以上であることが好ましい。
【実施例】
【0048】
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0049】
[紡糸性]
紡糸を連続して24時間行い、その時の糸切れ回数にて判定した。回数の少ない方が紡糸性に優れていることを示す。
【0050】
[X線造影性]
無伸張状態の試料を10本束ねてフィルムに敷き、その上に含水したセルローススポンジを25cm厚となるように重ねた。そこに、管電圧74kV、管電流200mAのX線発生装置(陽極:タングステン)にて、X線照射距離を1mとし、照射時間を0.02秒とした撮影条件にて得られたX線写真を用いて、目視によりその造影性の見え具合を以下の4段階で評価した。
◎ :非常に鮮明に見える。
○ :鮮明に見える。
× :鮮明に見えない。
××:見えない
[強度、伸度]
強度、伸度は、試料糸をインストロン4502型引張試験機にて、引張テストをすることにより測定した。測定回数はn=3で測定し、それらの平均値を採用した。これらは下記により定義される。
【0051】
すなわち、5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で試料糸が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G1)、破断時の試料糸の長さを(L2)とした。以下、前記特性は下記式により与えられる。
強度 =(G1)
伸度 =100×((L2)−(L1))/(L1)。
【0052】
[実施例1]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体のDMAC溶液(35重量%)を調整し、ポリマ溶液A1とした。
【0053】
次に、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)とを2対1(重量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35重量%)を調整し、これをその他添加剤溶液B1(35重量%)とした。
【0054】
さらに、堺化学社(株)製硫酸バリウムBF−20(平均一次粒子径:0.03μm、比重:4.0)を用い、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:0.3mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C1(35重量%)とした。
【0055】
A1、B1、C1を73重量%、2重量%、25重量%で均一に混合し、溶液D1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が25重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0056】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性は良好で、伸度、強度およびX線造影性に十分な性能を有するものであった。
【0057】
[実施例2]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)を用い、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C2(35重量%)とした。
【0058】
A1、B1、C2を63重量%、2重量%、35重量%で均一に混合し、溶液D2とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が35重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0059】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸時に糸切れがやや見られたものの、優れたX線造影性を有するものであった。
【0060】
[実施例3]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)製のポリエーテルエステル酸のアミン塩系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−234とを10:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C3(40重量%)とした。
【0061】
A1、B1、C3を61重量%、2重量%、37重量%で均一に混合し、溶液D3とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が36重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0062】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度およびX線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0063】
[実施例4]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)性のポリエーテルリン酸エステルのアミン塩系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−325とを20:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C4(40重量%)とした。
A1、B1、C4を64重量%、2重量%、34重量%で均一に混合し、溶液D4とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が35重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0064】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度およびX線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0065】
[実施例5]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)性のポリエーテルリン酸エステル化合物系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−375とを20:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C5(40重量%)とした。
【0066】
A1、B1、C5を64重量%、2重量%、34重量%で均一に混合し、溶液D5とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が35重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0067】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度およびX線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0068】
[実施例6]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)性のポリエーテルリン酸エステルのアミン塩系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−325とを10:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C6(45重量%)とした。
【0069】
A1、B1、C6を54重量%、2重量%、44重量%で均一に混合し、溶液D6とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が45重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0070】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度およびX線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0071】
[実施例7]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と楠本化成(株)性のポリエーテルエステル酸のアミン塩系分散剤“ディスパロン”(登録商標)DA−234とを10:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C7(50重量%)とした。
【0072】
A1、B1、C7を51重量%、2重量%、47重量%で均一に混合し、溶液D7とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が50重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0073】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度に優れ、X線造影性に優れた性能を有するものであった。
【0074】
[実施例8]
A1、B1、C7を34重量%、1重量%、65重量%で均一に混合し、溶液D8とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が65重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0075】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性時に糸切れがやや認められたものの、優れたX線造影性を有するものであった。
【0076】
[実施例9]
堺化学社(株)製硫酸バリウムB−1(平均一次粒子径:0.8μm、比重:4.4)と理研ビタミン(株)性のソルビタン脂肪酸エステル系分散剤“ポエム”(登録商標)O−80Vとを10:1の重量比で混合し、そのDMAc分散液を調整した。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、80%アルミナビーズ(直径φ:1.0mm)を充填し、70g/分の流速の条件で均一に微分散させて、硫酸バリウムのDMAc分散液C8(40重量%)とした。
【0077】
A1、B1、C8を57重量%、2重量%、41重量%で均一に混合し、溶液D9とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が40重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0078】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性時に糸切れがやや認められたものの、優れたX線造影性を有するものであった。
【0079】
[比較例1]
ポリマ溶液A1、B1を98重量%、2重量%で均一に混合し、溶液E1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメントのポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0080】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。紡糸性、伸度、強度は良好であったが、X線造影性は全く認められないものであった。
【0081】
[比較例2]
ポリマ溶液A1、B1、C1を90重量%、2重量%、8重量%で均一に混合し、溶液E2とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が8重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0082】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。X線造影性は不十分な性能であった。
【0083】
[比較例3]
ポリマ溶液A1、B1、C2を83重量%、2重量%、15重量%で均一に混合し、溶液E3とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として300m/分のスピードで乾式紡糸し、700デシテックス、24フィラメント、硫酸バリウムの含有量が15重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。
【0084】
紡糸性、得られた糸の伸度、強度、X線造影性を表1に示した。X線造影性は不十分な性能であった。
【0085】
[比較例4]
ポリマ溶液A1、B1、C2を18重量%、2重量%、80重量%で均一に混合し、溶液E4とした。これの乾式紡糸を試みたが、紡糸が不可能で糸を得ることができなかった。
【0086】
[比較例5]
ポリマ溶液A1、B1、C7を20重量%、2重量%、78重量%で均一に混合し、溶液E5とした。これの乾式紡糸を試みたが、紡糸が不可能で糸を得ることができなかった。
【0087】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリウレタン弾性糸は、X線造影性を有するものである。X線造影性を有することから、加工工程や編織物や不織布におけるポリウレタン弾性糸の確認がX線撮影により容易になる。
【0089】
また、優れたX線造影性を利用して手術時に使用される織編物や不織布ガーゼ等に加工したものに特に好適である。本発明のポリウレタン弾性糸を織編物や不織布ガーゼ等に加工したものを手術時に使用することで、目視ではわかりづらい織編物や不織布ガーゼ等が体内に残存しているかの確認が容易になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸であって、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
【請求項2】
破断伸度が400%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項3】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に硫酸バリウムを含有する硫酸バリウム分散液を混合し、該紡糸原液から硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有するポリウレタン弾性糸を紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性糸の製造方法。
【請求項4】
硫酸バリウム分散液が、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩、およびポリエーテルリン酸エステル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項3に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
【請求項5】
紡糸方法が乾式紡糸であることを特徴とする請求項3または4に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
【請求項1】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸であって、硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
【請求項2】
破断伸度が400%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項3】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に硫酸バリウムを含有する硫酸バリウム分散液を混合し、該紡糸原液から硫酸バリウムを20重量%以上70重量%以下の範囲で含有するポリウレタン弾性糸を紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性糸の製造方法。
【請求項4】
硫酸バリウム分散液が、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、ポリエーテルリン酸エステルのアミン塩、およびポリエーテルリン酸エステル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項3に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
【請求項5】
紡糸方法が乾式紡糸であることを特徴とする請求項3または4に記載のポリウレタン弾性糸の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−132615(P2011−132615A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290591(P2009−290591)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(502179282)東レ・オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(502179282)東レ・オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】
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