説明

ポリウレタン系硬化性組成物

【課題】耐ブリードアウト性、硬化物表面塗膜の安定性及び耐光性に優れたポリウレタン系硬化性組成物を提供する。
【解決手段】
一般式(1)で示される化合物(A)、多官能(メタ)アクリレート(B)及び末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(C)を含有するポリウレタン系硬化性組成物である。
X−O−(RO)n−Y (1)
式中、nは4〜40の数;Rは炭素数2〜4のアルキレン基又は置換アルキレン基であって好ましいのはプロピレン基;X及びYはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基及びアシル基、又は炭素数7〜18の芳香族アシル基である。また前記多官能(メタ)アクリレート(B)のうち好ましいのは3〜6官能のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタン系硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、特定のポリオキシアルキレン化合物及び多官能(メタ)アクリレートを含有するポリウレタン系硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン系硬化性組成物は、常温でも硬化し、硬化物が良好なゴム弾性を有することから、塗料、防水材、床材及びシーリング材等として使用されている。このようなポリウレタン系硬化性組成物には、通常、柔軟性を付与する目的で可塑剤が配合されている。従来、この種の可塑剤としてはジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル、ジオクチルアジペート等の脂肪酸エステル、塩素化パラフィン等が使用されている。しかし、前記可塑剤を使用したポリウレタン系硬化性組成物をシーリング材等に使用した場合、可塑剤の硬化物表面への溶出(ブリードアウト)が発生し、硬化物の表面にべたつきが生じ、埃の付着等により汚れを生じさせる。また、硬化物表面に塗装を施す場合には、ブリードアウトした可塑剤が塗膜を軟化させたり、剥離させる等、硬化物の外観を著しく損なう。さらに、可塑剤がブリードアウトすることにより硬化物の柔軟性が失われ、特に屋外で光に暴露されるような用途に使用した場合、クラックが発生する等の問題がある。これらの可塑剤のブリードアウトに起因する問題を改善する目的で、ポリエーテルポリオールと二塩基酸から合成されるポリエステル系可塑剤を使用するウレタンシーラント組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このものは主成分であるポリウレタンと可塑剤の相溶性が悪く、可塑剤のブリードアウトを抑えられていない。
【0003】
【特許文献1】特開2001−064624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、硬化物表面への可塑剤のブリードアウトが少なく、硬化物表面の塗膜の軟化性が少ないポリウレタン系硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、一般式(1)で示される化合物(A)、多官能(メタ)アクリレート(B)及び末端イソシアネート基含有プレポリマー(C)を含有するポリウレタン硬化剤組成物である。
X−O−(RO)n−Y (1)
(式中、nは4〜40の数;Rは炭素数2〜4のアルキレン基又は置換アルキレン基;X及びYはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基及びアシル基、又は炭素数7〜18の芳香族アシル基を表す。)
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリウレタン硬化剤組成物は、硬化物表面への可塑剤の溶出が少なく、硬化物表面の塗膜の軟化性が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における一般式(1)で示される化合物(A)[以下において、単に(A)と表記する場合がある]は可塑剤としての作用を示す。一般式(1)において、nは4〜40の数であり、好ましくは6〜20、特に好ましくは8〜10である。nが40を超えると可塑剤としての粘度が高くなり、取り扱い時の作業性が悪くなる。nが4未満の場合は(A)がブリードアウトしやすくなり好ましくない。
【0008】
一般式(1)において、Rは炭素数2〜4のアルキレン基又は置換アルキレン基である。これらのアルキレン基又は置換アルキレン基は、通常、アルコール類、フェノール類に環状エーテル化合物を付加することで生成する。これらのRを誘導する環状エーテル化合物としては、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、1,2−もしくは2,3−ブチレンオキサイド(BO)、テトラヒドロフラン(THF)等があげられる。これら環状エーテル化合物は単独でも2種類以上で併用してもよく、後者の場合はブロック付加でもランダム付加でも両者の混合形でもよい。これら環状エーテル化合物のうちで好ましいものは、炭素数3〜4のものであり、さらに好ましくはPO単独、BO単独、THF単独、PO及びBOの併用、PO、BO及びTHFの併用(併用の場合ランダム、ブロック及び両者の混合系)であり、特に好ましくはPO単独である。
【0009】
X及びYはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基及びアシル基、又は炭素数7〜18の芳香族アシル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基及びtert−ブチル基等が挙げられる。これらのうちポリウレタン硬化剤組成物のTg低下の観点から好ましくはイソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基及びtert−ブチル基である。炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、n−ブチリル基及びイソブチリル基等が挙げられる。これらのうちTg低下の観点から好ましいのはアセチル基又はプロピオニル基である。炭素数7〜18の芳香族アシル基としては、例えば、ベンゾイル基、ナフトイル基、ピリジルカルボニル基等が挙げられる。これらのうちポリウレタン硬化剤組成物のTg低下の観点から好ましくはベンゾイル基である。X及びYのうち好ましいのは、炭素数1〜4のアルキル基、アセチル基、プロピオニル基及びベンゾイル基から選ばれる基である。
【0010】
前記(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記)は、通常300〜20000、好ましくは400〜10000、特に好ましくは500〜5000である。Mnが300未満の場合、硬化物から(A)のブリードアウトが増加し、20000を超えると硬化性組成物の粘度が高くなり、取り扱い時の作業性が低下して好ましくない。
【0011】
本発明で用いられる多官能(メタ)アクリレート(B)[以下において、単に(B)と表記することがある]は、前記(A)のブリードアウトを抑制する効果がある。(B)としては、(メタ)アクリル酸と多価アルコール類とのエステル[例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等]、(メタ)アリルアルコールと多価カルボン酸類とのエステル[例えばジアリルフタレート、トリメリット酸トリアリルエステル等]、多価アルコール類のポリ(メタ)アリルエーテル[例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アリルエーテル等]、多価アルコール類のポリビニルエーテル[例えばエチレングリコールジビニルエーテル等]、多価アルコール類のポリプロペニルエーテル[例えばエチレングリコールジプロペニルエーテル等]、マレイン酸とジオールとのエステル[例えばエチレンジマレエート等]、イタコン酸とジオールとのエステル[例えばエチレンジイタコネート等]が挙げられる。これらのうち好ましいものは、ブリードアウト抑制効果の点で、(メタ)アクリル酸と多価アルコール類とのエステル、アリルアルコールと多価カルボン酸類とのエステル及び多価アルコール類のポリアリルエーテルであり、特に好ましいものはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。上記(B)1分子あたりの不飽和基数は、通常2〜10、好ましくは3〜6、特に5〜6である。官能基数が3未満では(A)のブリードアウト抑制効果が不十分であり、10を越える化合物は高分子量となるため粘度が高くなり取り扱いが困難となる。
【0012】
本発明における末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(C)[以下において、単にプレポリマー(C)又は(C)と表記することがある]としては、具体的には、有機ポリ(2〜4価又はそれ以上)イソシアネート(c1)とポリオール(c2)との反応で得られるウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0013】
有機ポリイソシアネート(c1)としては、通常のポリウレタン製造に使用されているものが使用できる。これらのうち、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であるのが、反応性が高い理由から好ましい。本発明においては、このような理由から好適に例示される各種有機ポリイソシアネート化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
ポリオール(c2)としては、2〜6価の高分子ポリオール(好ましくはOH当量が500〜4000)が挙げられ、例えば、アルコール類、フェノール類及びアミン類のアルキレンオキサイド付加物等を用いることができる。具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ブチルアミン、エチレンジアミン等の活性水素を有する化合物に、EO、PO、BO及びTHF等の1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加(2種以上付加する場合の重合形式はランダムでもブロックでも良い)したポリオールが挙げられる。
【0015】
プレポリマー(C)の製造におけるNCO/OHの仕込み当量比は、組成物の粘度の観点から好ましくは1.05〜3.0、さらに好ましくは1.2〜2.5である。また、生成したプレポリマー(C)のNCO含量は、ポリウレタン系硬化性組成物の発泡の危険性低下の観点から好ましくは10%以下、さらに好ましくは0.5〜3.5%である(以下において、特に限定しない限り、%は重量%を表す)。
【0016】
本発明のポリウレタン系硬化性組成物は、1液型又は2液型のいずれでもよい。ここでいう1液型とは、前記プレポリマー(C)、前記(A)、前記(B)及び必要によりその他の添加剤(D)を1液中に含有する組成物であり、(C)の末端イソシアネート(NCO)基が、施工後に大気中の水分で反応し硬化するものである。
【0017】
2液型とは、前記プレポリマー(C)を含有する主剤成分及び硬化剤(D)を含有する硬化剤成分からなり、主剤成分及び硬化剤成分のいずれかに、前記(A)及び前記(B)を含有し、必要によりその他の添加剤(E)を主剤成分若しくは硬化剤成分に含有してなる組成物であり、施工の直前に主剤成分と硬化剤成分を混合して得られるものである。2液型の場合の硬化剤成分に含まれる硬化剤(D)としては、通常はポリオールが用いられ、前記のプレポリマー(C)を得るためのポリオール(c2)として例示したものと同様のものが例示できる。
【0018】
必要により添加されるその他の添加剤(E)としては、硬化促進触媒、充填剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤等)、溶剤、着色剤(染料、顔料)、難燃剤、殺菌剤及び公知の可塑剤等が挙げられる。これらのその他の添加剤(E)は、1液型であっても、2液型であっても、同様のものが例示できる。
【0019】
硬化促進触媒としては、金属触媒[錫系触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド及びジメチルチンジラウレート等)及び鉛系触媒]、アミン触媒[トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン及びDBU等]及びこれらの2種以上の併用系が挙げられる。充填剤としては、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。安定剤としては、ヒンダードフェノール系及びヒンダードアミン系の酸化防止剤、並びにトリアゾール系及びベンゾフェノン系の紫外線吸収剤等が挙げられる。公知の可塑剤としては、エステル系可塑剤[ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート及びポリエチレングリコール(数平均分子量=200)ジアジペート等];タール系可塑剤(タール及びアスファルト等);石油樹脂系可塑剤等が挙げられる。
【0020】
本発明のポリウレタン系硬化性組成物において、ポリウレタン系硬化性組成物中における前記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の好ましい含有量は以下の通りである。
【0021】
前記(A)は、硬化物表面の塗膜の軟化性の観点から、好ましくは1〜50%、さらに好ましくは5〜30%である。1%以上であれば硬化物表面の塗膜の耐軟化性が良好に発揮でき、50%以下であれば硬化物の強度の点で好ましい。
【0022】
前記(B)は、耐ブリードアウト性の向上並びに樹脂物性の観点から、好ましくは0.1〜25%、さらに好ましくは、5〜15%である。
【0023】
前記(B)及び(A)は、耐ブリードアウト性の向上並びに樹脂物性の観点から、重量比(B)/(A)が好ましくは0.01〜0.5、さらに好ましくは、0.15〜0.3%である。
【0024】
前記(C)は、樹脂物性の観点から、好ましくは25〜98.8%、さらに好ましくは30〜70%である。
【0025】
前記(D)は、2液型の場合のみに含有するが、好ましくは10〜30%、さらに好ましくは15〜25%である。
【0026】
前記(E)は、樹脂物性並びに品質維持の観点から、好ましくは0〜70%、さらに好ましくは10〜65%である。また、(E)のうちの硬化促進触媒は、ポリウレタン系硬化性組成物中の好ましくは0〜2%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。また、(E)のうちの充填剤は、ポリウレタン系硬化性組成物中の好ましくは0〜70%、さらに好ましくは10〜65%である。また、(E)のうちの安定剤は、ポリウレタン系硬化性組成物中の好ましくは0〜8%、さらに好ましくは0.1〜5%である。また、(E)のうちの公知の可塑剤は、ポリウレタン系硬化性組成物中の好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0.1〜5%である。
【0027】
なお、2液型の場合のプレポリマー(C)中のイソシアネート基と、硬化剤としてのポリオール(c2)中のOH基との当量比(NCO/OH比)は、好ましくは0.7〜1.3、特に好ましくは0.8〜1.2である。
【0028】
本発明の硬化性組成物の製法は特に限定しないが、1液型の場合、好ましくは、(A)、(B)、プレポリマー(C)、及び(E)を減圧下で十分に混練した後、(E)のうちの硬化促進触媒を加えて(この際、硬化促進触媒をトルエン等の溶媒に溶解しておいてもよい)、減圧下でさらに十分混練するのが良い。2液型の場合、硬化剤(D)及び(E)を十分に混合した硬化剤成分と、プレポリマー(C)を含む主剤成分を施工前に混合することで得られる。
【0029】
得られる硬化物の物性は特に限定されないが、好ましくは、JIS A5758の測定法による破断時の伸びが50%以上、さらに好ましくは100〜1000%となるものである。本発明のポリウレタン系硬化性組成物は、硬化後、たとえば、シーリング材、塗料、防水材、床材、接着剤及びポリウレタン成型物等として使用される。シーリング材としては、その用途は特に限定されないが、屋内外の建築物の床、壁等の目地、窓枠、電気機器等のシール材等が挙げられる。
【0030】
<実施例>
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0031】
製造例1
ポリプロピレングリコール(Mn2000)30部とトリメチロールプロパンのPO付加物(Mn4000)60部を反応容器に入れ、120℃で30mmHgの減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。次いで、80℃に冷却し、TDI10部を反応容器に投入し、80±5℃で4時間反応させ、末端NCO含量1.6%のプレポリマー(C−1)を得た。
【0032】
製造例2
ポリプロピレングリコール(Mn1000)15部とトリメチロールプロパンのPO付加物(Mn5000)70部を反応容器に入れ、120℃で30mmHgの減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。次いで、80℃に冷却し、TDI15部を反応容器に投入し、80±5℃で4時間反応させ、末端NCO含量3.0%のプレポリマー(C−2)を得た。
【0033】
<実施例1>
製造例1で得たプレポリマー(C−1)100部に、乾燥した炭酸カルシウム60部、乾燥した酸化チタン15部、(A)としてポリプロピレングリコールの両末端アセチル化物(Mn500)30部、(B)としてジペンタエリスリトールペンタアクリレート[「ネオマーDA−600」三洋化成工業(株)製]20部、キシレン20部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤〔イルガノックス1010、日本チバガイギー(株)製〕3部、及びトリアゾール系紫外線吸収剤〔チヌビン320、日本チバガイギー(株)製〕2部を混合し、常温、常圧で1時間混練した。次いで、コロイダルシリカ10部を投入し、常温、常圧で30分間、常温、30mmHgの減圧下で30分間それぞれ混練し、1液型硬化性組成物を得た。その後、前記組成物を型に流し込み、20℃で7日間養生し、厚さ3mmの硬化物シートを得た。
【0034】
<実施例2>
実施例1のポリプロピレングリコールの両末端アセチル化物(Mn500)を、ポリプロピレングリコールの両末端ベンゾイル化物(Mn500)に代える以外は、実施例1と同様にして、1液型硬化性組成物及び硬化物シートを得た。
【0035】
<実施例3>
製造例2で得たプレポリマー(C−2)100部、(A)としてポリプロピレングリコールの両末端アセチル化物(Mn500)60部、(B)としてジペンタエリスリトールペンタアクリレート[「ネオマーDA−600」三洋化成工業(株)製]20部、表面処理炭酸カルシウム120部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤〔イルガノックス1010、日本チバガイギー(株)製〕3部、トリアゾール系紫外線吸収剤〔チヌビン320、日本チバガイギー(株)製〕2部、及び硬化促進触媒(鉛オクトエート)3部をプラネタリーミキサーにて減圧下30分間混練して主剤成分を得た。得られた主剤成分に、硬化剤成分としてのポリプロピレングリコール(Mn2000)62部を添加し、プラネタリーミキサーにて減圧下30分間混練し、2液型硬化性組成物を得た。その後得られた組成物を型に流し込み、20℃で7日間養生し、厚さ3mmの硬化物シートを得た。
【0036】
<実施例4>
(A)として、ポリプロピレングリコールの両末端ベンゾイル化物(Mn500)を使用したこと以外は実施例3と同様にして、2液型硬化性組成物及び硬化物シートを得た。
【0037】
<比較例1>
実施例1のポリプロピレングリコールの両末端アセチル化物(Mn500)を、アジピン酸/Mn400のポリプロピレングリコール/2−エチルヘキサノールからなるMn3000のポリエステルに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、1液型硬化性組成物及び硬化物シートを得た。
【0038】
<比較例2>
実施例3のポリプロピレングリコールの両末端アセチル化物(Mn500)を、ジオクチルフタレート代えたこと以外は実施例3と同様にして、1液型硬化性組成物及び硬化物シートを得た。
<比較例3>
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、1液型硬化性組成物及び硬化物シートを得た。
【0039】
評価結果:
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた硬化性組成物の粘度を測定した。また、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた硬化物シートを用いて、耐ブリードアウト性、硬化物表面の塗膜の柔軟性及び耐光性試験を行った。結果を表1、2に示す。
【0040】
性能評価における試験方法は以下の通りである。
(1)硬化性組成物の粘度測定
硬化性組成物作成直後の粘度を測定[BL型粘度計(東京計器(株)製)、単位はPa・s(25℃)]。
(2)耐ブリードアウト性試験
硬化物シートを屋内に1ヶ月間放置し、硬化物表面への滲み出しの程度を目視により確認した。
○:滲み出し無し、△:やや滲み、×:滲み出し大
(3)硬化物表面の塗膜の耐軟化性試験
硬化物シートの表面にアクリルエマルション系塗料「エスダイン#7110、積水フーラー株式会社製」を塗布し、20℃、7日間乾燥させた後、60℃、1ヶ月放置し、指先にて塗膜を触診し、軟化の有無を確認した。
○:塗膜軟化なし、△:やや軟化、×:軟化大
(4)耐光性試験
硬化物シートをアイスーパーUVテスター〔SUV−W131型:岩崎電気(株)製〕に設置し、サイクル試験500時間、及び1000時間後のシート表面のクラックの有無を目視で確認した。
○:樹脂の変形なし、△:わずかに樹脂変形、×:樹脂変形大
【0041】
1液型硬化性組成物の評価結果を下記の表1に示し、2液型硬化剤組成物の評価結果を下記の表2に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のポリウレタン系硬化性組成物は、従来のポリウレタン系硬化性組成物に比較して、可塑剤のブリードアウトが少なく、硬化物表面の塗膜の耐軟化性及び耐光性に優れていることから、シーリング材、塗料、接着剤、防水材、床材、ポリウレタン成型物等の用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される化合物(A)、多官能(メタ)アクリレート(B)及び末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(C)を含有するポリウレタン系硬化性組成物。
X−O−(RO)n−Y (1)
(式中、nは4〜40の数;Rは炭素数2〜4のアルキレン基又は置換アルキレン基;X及びYはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基及びアシル基、又は炭素数7〜18の芳香族アシル基を表す。)
【請求項2】
湿気硬化性の1液型である請求項1記載のポリウレタン系硬化性組成物。
【請求項3】
硬化剤硬化性の2液型であって、前記末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(C)を含有する主剤成分及び硬化剤成分からなり、主剤成分及び硬化剤成分のいずれかに、前記化合物(A)及び前記多官能(メタ)アクリレート(B)を含有してなる請求項1記載のポリウレタン系硬化性組成物。
【請求項4】
前記多官能(メタ)アクリレート(B)が3〜6官能である請求項1〜3のいずれか記載のポリウレタン系硬化性組成物。
【請求項5】
一般式(1)におけるRがプロピレン基であり、X及びYがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基、アセチル基、プロピオニル基及びベンゾイル基から選ばれる基である請求項1〜4のいずれか記載のポリウレタン系硬化性組成物。
【請求項6】
硬化性組成物中の前記(A)の含有量が1〜50重量%であり、かつ前記(B)の含有量が0.1〜25重量%である請求項1〜5のいずれか記載のポリウレタン系硬化性組成物。
【請求項7】
前記(B)と前記(A)の重量比(B)/(A)が0.01〜0.5である請求項1〜6のいずれか記載のポリウレタン系硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載のポリウレタン系硬化性組成物を硬化して得られるポリウレタン系樹脂硬化物。

【公開番号】特開2010−37430(P2010−37430A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201715(P2008−201715)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】