説明

ポリエステルの合成装置および合成方法

【課題】副生成物や未反応原料などが含まれる排気ガスを湿式コンデンサ方式により洗浄するポリエステル合成装置において、メンテナンスの負担を低減させ原料収率を向上させること。
【解決手段】上記ポリエステル合成装置において、湿式コンデンサに循環させる循環液を冷却する熱交換器の前段にストレーナと液体サイクロンとを組み合わせたろ過装置を設け、循環液から析出した固形物が蓄積するストレーナのメンテナンスを容易にすると共に、液体サイクロンによって原料を非常に多く含むスラリーである該固形物から原料を回収可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの合成装置および合成方法に関し、特にポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートなどの縮重合系ポリエステル、およびポリ乳酸、ポリグリコール酸などの開環重合系ポリエステルの合成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは機械的性質、物理的性質および化学的性質に優れたポリマーであり、様々な用途に利用されている。ポリエステルとしては、例えば縮重合系ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートなど)や、開環重合系ポリエステル(ポリ乳酸、ポリグリコール酸など)が挙げられる。
【0003】
縮重合系ポリエステルについては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールなどのグリコールとテレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸などの二塩基酸をエステル化し、減圧環境下で縮重合反応を行い、さらに未反応原料や低分子量ポリマーなどを減圧環境下で揮発させる脱揮を行うことにより連続的に合成する方法が知られている。ここで縮重合反応や脱揮では、グリコールや低分子量ポリマーおよび未反応の末端基によるエステル化反応で発生する水などが揮発するが、これらを含む排気ガスは凝縮器に送られ、グリコール、低分子量ポリマー、水などを凝縮もしくは凝固させることにより分離した後、エジェクターや真空ポンプなどから系外に排出される。
【0004】
一方、ポリ乳酸やポリグリコール酸などの開環重合系ポリエステルについては、ヒドロキシカルボン酸を縮合してオリゴマーを生成させ、これに触媒を添加して解重合することにより環状縮合物を生成させ、さらに触媒を添加して開環重合反応を行い、その後未反応原料や低分子量ポリマーなどを減圧環境下で揮発させる脱揮を行うことにより連続的に合成する方法が知られている。ここで開環重合反応や脱揮では未反応原料や低分子量ポリマーなどが揮発するが、これらを含む排気ガスは凝縮器に送られ、未反応原料や低分子量ポリマーを凝縮もしくは凝固させることにより分離した後、エジェクターや真空ポンプなどから系外排出される。
【0005】
上記凝縮器としては、例えば縮重合系ポリエステルを合成する場合ならば、原料の一つであるグリコールを排気ガスに噴霧して揮発物を凝縮もしくは凝固させると共に、固形分を噴霧したグリコール中に溶解させるという湿式コンデンサ方式が知られている。例えば特許文献1にはポリエチレンテレフタレートの合成で湿式コンデンサ方式が用いられている例が、また特許文献2にはポリブチレンテレフタレートの合成で湿式コンデンサ方式が用いられている例が、それぞれ開示されている。なお開環重合系ポリエステルの縮合や脱揮においても、グリコールの代わりに原料のヒドロキシカルボン酸と水を任意の割合で含む混合物を用いた湿式コンデンサ方式が適用可能である。
【0006】
湿式コンデンサ方式では、グリコールを噴霧するコンデンサ部分、コンデンサからのドレン液を回収するホットウェル、ホットウェルの滞留液を抜き出してコンデンサに循環させるための送液ポンプ、循環液の冷却を行うための熱交換器がこの順番に配置され、冷やされた循環液は再びコンデンサでの噴霧に用いられる。
【0007】
コンデンサでの凝縮もしくは凝固により生成する固形分で噴霧グリコールに溶解しないものについては、ホットウェルの後段に簡易的なストレーナを設けることである程度分離除去することができる。また重合器と凝縮器系の間の排気配管にて凝固が起こり、固形物が配管壁面などに付着する場合については、配管内部に設置された掻取棒により機械的にメンテナンスする方式が知られている(特許文献1参照)。
【0008】
ところで、上記の湿式コンデンサ方式では、熱交換器で循環液を冷却する際に、循環液に溶解していた低分子量ポリマーなどが析出し、熱交換器に付着して伝熱効率を低下させることがある。これを防止するため熱交換器の前段にストレーナを設けて予め固形物を除去する必要があるが、ストレーナには頻繁に固形物が蓄積することになり、これらの除去するメンテナンス作業も併せて必要となる。
【0009】
ストレーナのメンテナンス作業は、ストレーナを並列に複数系統設置することで、湿式コンデンサ方式におけるグリコールなどの循環液の循環を妨げずに実施する。しかしながら、規模の大きなプラントなどでは固形物の蓄積が多く、メンテナンス作業を頻繁に行わなくてはならない。そのような場合、メンテナンス作業が追いつかず、プラントの連続運転に影響を与える場合がある。また、メンテナンス作業自体が非常に煩雑なものであるため、その負担は非常に大きい。
【0010】
このような問題を解決するべく、例えば特許文献3に記載の発明ではコンデンサの凝縮液にアルカリなどの薬剤を添加して固形物の溶解や溶解物の析出を抑制する方法が開示されている。しかしながらこの方法には、廃液処理に酸による中和が必要となり、メンテナンス作業が複雑になる上、二次廃棄物が発生するという問題がある。
【0011】
一方、近年ストレーナに付着した固形物を機械的に掻き取ったり、あるいは逆洗を行ったりすることで、メンテナンス作業を自動化することができる機器が販売されている。しかしながら、ストレーナで発生する固形物はグリコールを非常に多く含むスラリーであり、メンテナンスが頻繁な場合は原料であるグリコールを大量に廃棄しなくてはならない。この場合、二次廃棄物発生量の増大や原料収率の低下を招く問題があった。
【0012】
【特許文献1】特開2002-105187号公報
【特許文献2】特許第3812564号公報
【特許文献3】特開2003-82086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、揮発する低分子量ポリマー、副生成物もしくは未反応原料を湿式コンデンサ方式で凝縮もしくは凝固させるポリエステル重合装置においては、ストレーナのメンテナンスの負担や二次廃棄物発生量を減らし、原料収率を向上させることが求められている。そこで本発明は、ストレーナのメンテナンスの負担や二次廃棄物発生量を低減させ原料収率を向上させたポリエステルの合成装置、および合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、上記のような湿式コンデンサ方式を採用したポリエステルの合成装置もしくは合成方法において、熱交換器の前段にストレーナと液体サイクロンとを組み合わせたろ過装置を設けることによって、メンテナンスの負担や二次廃棄物発生量を低減させることができることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)エステル重合体を生成する反応装置を備えるポリエステル合成装置であって、反応装置から生じた低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を含むガスを原料を含む液体で洗浄することにより、原料を含む液体中に低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を回収する湿式コンデンサ、湿式コンデンサから原料を含む液体を回収するホットウェル、回収された原料を含む液体をろ過するろ過装置、およびろ過された原料を含む液体を冷却して湿式コンデンサへ循環させる熱交換器を少なくとも一つの反応装置に備え、ろ過装置は、フィルタを有するストレーナと、その後段に液体サイクロンとを備え、ストレーナは、フィルタに付着したスラリーを機械的に除去する掻取装置もしくは逆洗を行う逆洗装置の少なくとも一方を備え、通常時はフィルタにより原料を含む液体をろ過してろ液を熱交換器へ送り、メンテナンス時は掻取装置もしくは逆洗装置によってフィルタに付着したスラリーを除去して液体サイクロンへ送り、液体サイクロンは、スラリーを固液分離して、分離により得られた原料を含む液体をホットウェルに送る、上記ポリエステル合成装置。
【0016】
(2)エステル重合体を生成する反応装置と、生成したポリエステルに含まれる低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を除去する脱揮装置とを備えるポリエステル合成装置であって、反応装置あるいは脱揮装置から生じた低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を含むガスを原料を含む液体で洗浄することにより、原料を含む液体中に低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を回収する湿式コンデンサ、湿式コンデンサから原料を含む液体を回収するホットウェル、回収された原料を含む液体をろ過するろ過装置、およびろ過された原料を含む液体を冷却して湿式コンデンサへ循環させる熱交換器を少なくとも一つの反応装置もしくは脱揮装置に備え、ろ過装置は、フィルタを有するストレーナと、その後段に液体サイクロンとを備え、ストレーナは、フィルタに付着したスラリーを機械的に除去する掻取装置もしくは逆洗を行う逆洗装置の少なくとも一方を備え、通常時はフィルタにより原料を含む液体をろ過してろ液を熱交換器へ送り、メンテナンス時は掻取装置もしくは逆洗装置によってフィルタに付着したスラリーを除去して液体サイクロンへ送り、液体サイクロンは、スラリーを固液分離して、分離により得られた原料を含む液体をホットウェルに送る、上記ポリエステル合成装置。
【0017】
(3)ストレーナがさらにろ過前の原料を含む液体を冷却する冷却装置を備える、(1)または(2)に記載のポリエステル合成装置。
【0018】
(4)原料を含む液体が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、乳酸およびグリコール酸からなる群から選択される原料ならびに水を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステル合成装置。
【0019】
(5)エステル重合体を生成する反応工程を含むポリエステルの合成方法であって、反応工程において発生した低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応物を含むガスを湿式コンデンサに送って原料を含む液体で洗浄し、原料を含む液体中に低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を回収すること、湿式コンデンサから原料を含む液体をホットウェルで回収すること、回収した原料を含む液体をろ過装置でろ過すること、およびろ過した原料を含む液体を熱交換器で冷却して湿式コンデンサへ循環させることを含み、ろ過装置は、フィルタを有するストレーナと、その後段に液体サイクロンとを備え、ストレーナは、通常時はフィルタにより原料を含む液体をろ過してろ液を熱交換器へ送り、メンテナンス時はフィルタに付着したスラリーを機械的に掻き取るかあるいは逆洗を行うかの少なくとも一方により液体サイクロンへ送り、液体サイクロンは、スラリーを固液分離して、分離により得られた原料を含む液体をホットウェルに送る、上記方法。
【0020】
(6)エステル重合体を生成する反応工程と、生成したポリエステルに含まれる低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を除去する脱揮工程とを含むポリエステルの合成方法であって、反応工程と脱揮工程の少なくとも一方において、発生した低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応物を含むガスを湿式コンデンサに送って原料を含む液体で洗浄し、原料を含む液体中に低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を回収すること、湿式コンデンサから原料を含む液体をホットウェルで回収すること、回収した原料を含む液体をろ過装置でろ過すること、およびろ過した原料を含む液体を熱交換器で冷却して湿式コンデンサへ循環させることを含み、ろ過装置は、フィルタを有するストレーナと、その後段に液体サイクロンとを備え、ストレーナは、通常時はフィルタにより原料を含む液体をろ過してろ液を熱交換器へ送り、メンテナンス時はフィルタに付着したスラリーを機械的に掻き取るかあるいは逆洗を行うかの少なくとも一方により液体サイクロンへ送り、液体サイクロンは、スラリーを固液分離して、分離により得られた原料を含む液体をホットウェルに送る、上記方法。
【0021】
(7)前記通常時において原料を含む液体をストレーナによりろ過する前に冷却する、(5)または(6)に記載のポリエステル合成方法。
【0022】
(8)原料を含む液体が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、乳酸およびグリコール酸からなる群から選択される原料ならびに水を含む、(5)〜(7)のいずれかに記載のポリエステル合成方法。
【0023】
なお、上記で用いた用語は以下の意味を有する。
【0024】
エステル重合体とは、2分子以上のモノマーがエステル化反応により重合したものを意味する。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマーや、これらのポリマーに対応するオリゴマー、またはラクチドのような、2分子のヒドロキシカルボン酸(例えば乳酸やポリグリコール酸)が縮合した環状縮合物(環状二量体)のようなものがエステル重合体に含まれる。
【0025】
反応装置とは、上記のエステル重合体を合成するための装置を意味する。例えば縮重合系ポリエステル合成装置であれば、エステル化槽、ならびに重合器(三段階で重合を行う場合は、初期重合器、中間重合器および最終重合器)が、開環重合系ポリエステル合成装置であれば、オリゴマー化反応槽、解重合槽、ならびに重合器(二段階で重合を行う場合は中間重合器および最終重合器)が反応装置に該当する。
【0026】
低分子量エステル重合体とは、重合度が低いエステル重合体を意味し、例えば上記のエステル重合体のうち、オリゴマーと環状縮合物が該当する。副生成物とは、エステル化反応により生じる副生成物を意味し、例えば水が該当する。
【0027】
原料とは合成するエステルの原料を意味する。例えば、ポリエチレンテレフタレートを製造する場合の原料はエチレングリコールとテレフタル酸、ポリトリメチレンテレフタレートを製造する場合では1,3-プロパンジオールとテレフタル酸、ポリブチレンテレフタレートを製造する場合では1,4-ブタンジオールとテレフタル酸、ポリブチレンサクシネートを製造する場合では1,4-ブタンジオールとコハク酸であり、ポリ乳酸、ポリグリコール酸を製造する場合では、それぞれ乳酸、グリコール酸である。
【0028】
湿式コンデンサ、ホットウェル、ろ過装置および熱交換器を循環させる原料を含む液体とは上記した原料を含む液体を意味し、特にエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリ乳酸およびグリコール酸からなる群から選択される原料を含む液体が好ましい。また原料を含む液体は、原料の他に水を含むことが好ましい。
【0029】
なお、湿式コンデンサ、ホットウェル、ろ過装置および熱交換器により構成される湿式コンデンサシステムは、上記した反応装置のうち少なくとも一つに備えられていればよい。なお、ポリエステル合成装置が脱揮装置を備える場合は、反応装置もしくは脱揮装置のうちの少なくとも一つに備えられていればよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、副生成物もしくは未反応原料が含まれる排気ガスを湿式コンデンサ方式により洗浄するポリエステルの合成装置もしくは合成方法において、湿式コンデンサに循環させる循環液を冷却する熱交換器の前段にストレーナと液体サイクロンとを組み合わせたろ過装置を設けたことにより、循環液から析出した固形物が蓄積するストレーナのメンテナンスを容易にすると共に、液体サイクロンによって原料を非常に多く含むスラリーである該固形物から原料を回収可能とするため、二次廃棄物発生量を減らし原料収率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照してさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0032】
図1は、本発明の縮重合系ポリエステル合成装置の全体を説明する図である。図2は本発明の開環重合系ポリエステル合成装置の全体を説明する図である。図3は、本発明のポリエステル合成装置における湿式コンデンサ方式の排気ガス洗浄装置の概要図である。図4はストレーナと液体サイクロンから構成されるろ過装置の図である。
【0033】
図1に示した縮重合系ポリエステル合成装置では、原料の混合工程、エステル化工程、重合工程、溶融脱揮工程、ペレット化工程、乾燥工程の各工程を経てポリエステルが合成される。このうち溶融脱揮工程、乾燥工程は場合により省略することができる。図1に示した縮重合系ポリエステル合成装置では、重合工程を初期重合、中間重合、最終重合の三段階の工程で実施しているが、必要となる真空度などに応じて工程数を任意の数に増減させてもかまわない。
【0034】
以下、図1に示した縮重合系ポリエステル合成装置を用いてポリブチレンテレフタレートを製造する場合について説明する。
【0035】
混合工程ではタンク1、3、5からそれぞれ1,4-ブタンジオール、テレフタル酸、添加物が、配管2、4、6から混合槽7に添加される。1,4-ブタンジオールは融点が25℃近傍であるため、必要に応じて加熱溶融して液体で添加する。テレフタル酸は粉体であり、配管4には必要に応じて、スネークポンプ等、粉体を移送する機構を設ける。添加物の例としては、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、無機粒子、各種フィラー、離型剤、可塑剤などが挙げられる。これらの添加剤の添加率は任意であるが、主成分に対し50重量%以下、特に30重量%以下とすることが好ましい。混合槽7ではこれらを十分に混合すると共に、粉体が液体から分離するのを抑制する。混合槽7で製造した原料混合物は配管8からエステル化槽9に連続移送される。
【0036】
エステル化工程では、エステル化槽9は配管8から原料混合物の連続供給を受け、さらにタンク10から配管11を経由して触媒の連続供給を受け、反応液を配管18から連続排出する。なお、本実施形態ではエステル化触媒としてテトラブチルチタンを使用するが、場合によっては触媒を添加しなくてもよい。エステル化槽9では不活性雰囲気下、常圧から弱負圧の圧力条件において、槽外周に設置される熱媒ジャケットや槽内部に設置される熱交換器により200〜260℃の加熱を行う。これによりテレフタル酸の両カルボキシル基に1,4-ブタンジオールがエステル結合してオリゴマー(重合度2〜10程度)と水が生成する。水、1,4-ブタンジオール、オリゴマーは揮発し、これらを含む蒸気は配管12を通って分縮装置13に送られる。分縮装置13では冷却を行い、低沸点である水蒸気、1,4-ブタンジオール熱劣化物(テトラヒドロフラン)を配管15、排風機16、ノズル17を経由して系外放出する。一方、高沸点の1,4-ブタンジオール、オリゴマーは分縮装置13で凝縮して、配管14を経由してエステル化槽9に還流する。オリゴマーを含む反応液は配管18を経由して、エステル化槽9から初期重合器19を中心とした初期重合工程に移送される。
【0037】
初期重合工程では、初期重合器19は配管18からオリゴマーの連続供給を受け、さらにタンク20から配管21を経由して触媒の連続供給を受け、ポリマーを含む反応液を配管26から連続排出する。なお、本実施形態では重合触媒としてエステル化の際と同様にテトラブチルチタンを使用するが、エステル化工程で添加した触媒に活性が十分残存する場合は触媒の添加量を減らしてもよいし、あるいは触媒を添加しなくてもよい。逆に、エステル化工程で触媒が未添加の場合、あるいは生成する水分により触媒が失活している場合は、十分な触媒添加が必要である。
【0038】
初期重合器19では真空装置24により達成される10〜100torr程度の圧力条件にて、槽外周に設置されている熱媒ジャケットや槽内部に設置される熱交換器により200〜260℃の加熱を行う。これにより、ポリマーの重合度は20〜40程度になる。重合反応の促進はオリゴマー末端のエステル交換反応によるものであり、その際に生成する副生成物である1,4-ブタンジオールは脱揮する必要がある。脱揮することにより、1,4-ブタンジオールはその他の副生成物である低分子量ポリマー(低分子量エステル重合体)や一部末端基のエステル化反応により生成する水分、あるいは未反応原料と共に揮発し、これらを含む蒸気は配管22を経由して湿式コンデンサシステム170に送られる。湿式コンデンサシステム170は図3に記載されたもので、配管57、58、62、63を通してタンク1とつながっており、1,4-ブタンジオールを流通させることができる。また、この流通させた1,4-ブタンジオールを冷媒として用いた凝縮により、配管22から移送される蒸気から副生成物である1,4-ブタンジオール、低分子量ポリマー、水分あるいは未反応原料を除去し、残渣の排気ガスを配管23、真空装置24、ノズル25を経由して系外放出する。ポリマーを含む反応液は配管26を経由して、初期重合器19から中間重合器27を中心とした中間重合工程に移送される。
【0039】
中間重合工程では、中間重合器27は配管26からポリマーを含む反応液の連続供給を受け、より重合度が高まったポリマーを含む反応液を配管33から連続排出する。中間重合器27では真空装置31により達成される3〜10torr程度の圧力条件において、槽外周に設置されている熱媒ジャケットにより200〜260℃の加熱を行う。これにより、ポリマーの重合度は60〜130程度になる。重合反応の促進はポリマー末端のエステル交換反応によるものであり、その際に生成する副生成物である1,4-ブタンジオールは脱揮する必要がある。脱揮することにより、1,4-ブタンジオールはその他の副生成物である低分子量ポリマーや一部末端基のエステル化反応により生成する水分、あるいは未反応原料と共に揮発し、これらを含む蒸気は配管28を経由して湿式コンデンサシステム29に送られる。湿式コンデンサシステム29は図3に記載されたものであり、配管57、59、62、64を通してタンク1とつながっており、1,4-ブタンジオールを流通させることができる。また、この流通させた1,4-ブタンジオールを冷媒として用いた凝縮により、配管28から移送される蒸気から副生成物である1,4-ブタンジオール、低分子量ポリマー、水分、あるいは未反応原料を除去し、残渣の排気ガスを配管30、真空装置31、ノズル32を経由して系外放出する。さらに、ポリマーを含む反応液は配管33を経由して、中間重合器27から最終重合器34を中心とした最終重合工程に移送される。
【0040】
最終重合工程では、最終重合器34は配管33からポリマーを含む反応液の連続供給を受け、さらに重合度が高まったポリマーを含む反応液を配管40から連続排出する。最終重合器34では真空装置38により達成される1〜5torr程度の圧力条件において、槽外周に設置されている熱媒ジャケットにより200〜260℃の加熱を行う。これにより、ポリマーの重合度は100〜200程度になる。重合反応の促進はポリマー末端のエステル交換反応によるものであり、その際に生成する副生成物である1,4-ブタンジオールは脱揮する必要がある。脱揮することにより、1,4-ブタンジオールはその他の副生成物である低分子量ポリマーや一部末端基のエステル化反応により生成する水分、あるいは未反応原料と共に揮発し、これらを含む蒸気は配管35を経由して湿式コンデンサシステム36に送られる。湿式コンデンサシステム36は図3に記載されたものであり、配管57、60、62、65を通してタンク1とつながっており、1,4-ブタンジオールを流通させることができる。また、この流通させた1,4-ブタンジオールを冷媒として用いた凝縮により、配管35から移送される蒸気から副生成物である1,4-ブタンジオール、低分子量ポリマー、水分、あるいは未反応原料を除去し、残渣の排気ガスを配管37、真空装置38、ノズル39を経由して系外放出する。さらにポリマーを含む反応液は配管40を経由して、最終重合器34から溶融脱揮装置41を中心とした溶融脱揮工程に移送される。
【0041】
溶融脱揮工程では、溶融脱揮装置41は配管40からポリマーを含む反応液の連続供給を受け、脱揮されたポリマーを配管47から連続排出する。溶融脱揮装置41では真空装置45により達成される0.5〜3torr程度の圧力条件において、槽外周に設置される熱媒ジャケットにより200〜260℃の加熱を行う。これにより、残存する副生成物である1,4-ブタンジオール、水分、低分子量ポリマー、あるいは未反応原料は揮発し、これらを含む蒸気は配管42を経由して湿式コンデンサシステム43に送られる。湿式コンデンサシステム43は図3に記載されたものであり、配管57、61、62、66を通してタンク1とつながっており、1,4-ブタンジオールを流通させることができる。また、この流通させた1,4-ブタンジオールを冷媒として用いた凝縮により、配管42から移送される蒸気から副生成物である1,4-ブタンジオール、低分子量ポリマー、水分、あるいは未反応原料を除去し、残渣の排気ガスを配管44、真空装置45、ノズル46を経由して系外放出する。
【0042】
溶融脱揮工程から排出されたポリマーはペレット化工程に移送される。水冷装置48で冷却および固化された後チップカッター49でペレット化され、配管50により乾燥工程に移送される。乾燥工程に移送されたペレットはベルトコンベア51上を移動し、その際、送風機52により送られる風により、水冷時に付着した水分が除去される。その際、送風機52の風が温風であると乾燥効果が向上する場合がある。乾燥したペレットは、その後、配管53を経由してタンク54に受けられ、配管56から排出される。なお、図1に示した縮重合系ポリエステル合成装置を用いてポリエチレンテレフタレートを合成する際には、タンク54に受けられたペレットに送風機55を用いて温風を当てて固相重合を行うことが望ましい。
【0043】
次に図2に示した開環重合系ポリエステル合成装置について説明する。図2の開環重合系ポリエステル合成装置では、原料の濃縮工程、オリゴマー化工程、オリゴマーから環状縮合物を生成する解重合工程、精製工程、重合工程、溶融脱揮工程、ペレット化工程、乾燥工程の各工程を経てポリエステルが合成される。このうちエステル重合体を生成する工程にはオリゴマー化工程、解重合工程、重合工程が該当する。図2に示した開環重合系ポリエステル合成装置では、重合工程を中間重合、最終重合の二段階の工程で実施しているが、必要に応じて工程数を任意の数に増減させてもかまわない。
【0044】
以下、図2に示した開環重合形ポリエステル合成装置を用いてポリ乳酸を製造する場合について説明する。
【0045】
濃縮工程では、原料乳酸がタンク67から配管68を経由して濃縮槽69に移送される。装置の運転効率の観点から、原料乳酸は80%以上の濃縮度であること、およびL-乳酸またはD-乳酸の光学純度は90%以上あることが望ましい。濃縮槽69では原料乳酸の供給を受け、濃縮乳酸を配管76から排出する。濃縮乳酸に含まれる水分等の不純物濃度は2%以下が望ましい。濃縮槽69にはその外部に熱媒ジャケットが設置されているか、あるいは内部に熱交換器を設けることにより、乳酸を大気圧、不活性雰囲気下において、100〜150℃程度に加熱する。その際に不純物である水や乳酸の一部が揮発し、これらを含む蒸気が配管70を経由して分縮装置71に移送される。分縮装置71では冷却を行い、低沸点である水蒸気を配管73、排風機74、ノズル75を経由して系外放出する。一方、高沸点の乳酸は分縮装置71で凝縮して、配管72を経由して濃縮槽69に還流する。
【0046】
オリゴマー化工程では、濃縮乳酸が濃縮槽69から配管76を経由してオリゴマー化反応槽77に移送される。オリゴマー化反応槽77では濃縮乳酸の供給を受け、オリゴマーを配管86から解重合工程に向けて排出する。このとき、オリゴマーの重量平均分子量は300〜10000程度が望ましい。本実施形態においてオリゴマー化反応槽77は横型連続重合器となっているが、乳酸およびオリゴマーの溶融粘度があまり高くないことから、プラグフロー性維持のためには重合器内部に複数段の堰が設けられていることが望ましい。また、連続式ではなくバッチ式の反応槽でもかまわない。オリゴマー化反応槽77にはその外部に熱媒ジャケットが設置され、またオリゴマー化反応槽77は真空装置84と接続されており、乳酸を10〜100torr程度の真空度において100〜200℃に加熱し、乳酸同士でエステル化反応させて重合度を増大させる。エステル化反応により生成する副生成物である水分、残存不純物である水分や未反応原料である乳酸、ならびにオリゴマー(低分子量エステル重合体)の一部が揮発し、これらを含む蒸気が配管78を経由して分縮装置79に移送される。分縮装置79では冷却を行い、配管81を経由して低沸点である水蒸気を湿式コンデンサシステム82に移送する。一方、高沸点の乳酸は分縮装置79で凝縮して、配管80を経由してオリゴマー化反応槽77に還流する。なお、還流液の乳酸濃度が低い場合は、濃縮槽69に還流してもかまわない。湿式コンデンサシステム82は図3に記載されたもので、配管122、123、126、127を通してタンク67とつながっており、原料乳酸を流通させることができる。また、この原料乳酸を冷媒として用いた凝縮により、配管81から移送される蒸気から乳酸や水分、オリゴマーを除去し、残渣の排気ガスを配管83、真空装置84、ノズル85を経由して系外放出する。
【0047】
解重合工程では、オリゴマー化反応槽77から配管86を経由してオリゴマーが解重合槽87に移送される。解重合槽87では、配管86からオリゴマーの連続供給を受け、さらにタンク88から配管89を経由して解重合触媒の連続的または断続的な添加を受け、これらを混合する。解重合反応により生成した粗ラクチドは、ラクチドの他に未反応のオリゴマーおよびオリゴマー同士のエステル化反応に伴い発生する副生成物である水分を含むものであり、粗ラクチドは揮発して配管90を経由し間接熱交換器91に移送される。間接熱交換器91では、粗ラクチドを凝縮して配管92から排出すると共に、配管94を経由して残渣ガスを湿式コンデンサシステム95に移送する。なお、間接熱交換器91で粗ラクチドを凝固させる場合については、本熱交換器を複数系統用意しておき、一方が運転中に、もう一方にて凝固物を熱交換器の温度を高く設定することで加熱溶融して回収する等の操作が必要となる。解重合槽87の反応残渣については連続的または断続的に配管99から系外排出する。解重合槽87にはその外部に熱媒ジャケットが設置されているか、または内部に熱交換器が設置されていて、これらにより内部の反応液を加熱することができる。また、解重合槽87は真空装置97と接続しており、オリゴマーを1〜20torr程度の真空度において、触媒の共存下において180〜220℃に加熱し、解重合反応を促進させる。解重合槽87は、本実施形態に記載されているような通常のタンク式のほか、遠心力や重力等を利用して薄膜式として生成物の揮発を加速させて熱履歴を軽減することで乳酸骨格に関する光学異性体生成等、原料の熱劣化を低減することができる場合がある。湿式コンデンサシステム95は図3に記載されたもので、配管122、124、126、128を通してタンク67とつながっており、原料乳酸を流通させることができる。また、この原料乳酸を用いた凝縮により、配管94から移送される蒸気から副生成物である水分や、未反応原料である乳酸、ならびにオリゴマーやラクチド(オリゴマーとラクチドは共に低分子量エステル重合体に該当する)を除去し、残渣の排気ガスは配管96、真空装置97、ノズル98を経由して系外放出される。配管92から排出された粗ラクチド凝縮物は精製工程に移送される。
【0048】
精製工程において、精製装置93は蒸留装置、晶析装置等であり、ここで粗ラクチドから未反応原料である乳酸、オリゴマー、ならびに副生成物である水分、および熱劣化物であるメソラクチドが除去される。除去された不純物、熱劣化物はノズル100から排出される。精製ラクチドは温度100〜120℃程度に加熱溶融し、配管101を経由して重合工程に移送される。
【0049】
重合工程において、配管101からの精製ラクチドは、重合開始剤添加装置171から配管172を経由して重合開始剤(ヒドロキシル基を有するもの、高級アルコールなど)が、および触媒添加装置173から配管174を経由して触媒が添加された後、中間重合器102に移送される。中間重合器102では、ラクチドの重合反応を促進させてポリマーを含む反応液を配管103から最終重合器104へと排出する。本実施形態において中間重合器102は横型連続重合器となっているが、溶融ラクチドやポリマーの粘度はあまり大きくないため、プラグフロー性維持のためには重合器内部に複数段の堰が設けられていることが望ましい。中間重合器102にはその外部に熱媒ジャケットが設置されており、大気圧、不活性雰囲気下において100〜220℃に加熱し、開環重合反応を促進させ重合度を増大させる。このときポリマーの転化率、すなわち原料がポリマーに転化した割合は30〜60%程度が望ましい。配管103から排出されたポリマーを含む反応液は最終重合器104に移送される。
【0050】
最終重合器104では、ラクチドの重合反応をさらに促進させて、ポリマーを配管105から溶融脱揮装置106へと排出する。本実施形態において、最終重合器104は伝熱性、除熱性向上の観点から縦型連続重合器となっているが、重合反応が進んだポリマーの粘度が大きいので、混合性維持のためには重合器内部に二軸以上の攪拌翼が設けられていることが望ましい。最終重合器104にはその外部に熱媒ジャケットが設置されており、大気圧、不活性雰囲気下において、100〜220℃に加熱し、開環重合反応を促進させて重合度を増大させる。このとき、ポリマーの転化率、すなわち原料がポリマーに転化した割合は80〜95%程度が望ましい。
【0051】
ポリマーは配管105を経由して、最終重合器104から溶融脱揮装置106を中心とした溶融脱揮工程に移送される。溶融脱揮工程では、溶融脱揮装置106が配管105からポリマーの連続供給を受けつつ、脱揮されたポリマーを配管115から連続排出する。溶融脱揮装置106では真空装置113により達成される0.5〜3torr程度の圧力条件下にて、槽外周に設置される熱媒ジャケットにより180〜220℃の加熱を行う。これにより、残存する未反応原料もしくは副生成物である乳酸、オリゴマー、ラクチド、水分などは揮発し、これらを含む蒸気は配管107を経由して分縮装置108に移送される。分縮装置108では冷却を行い、低沸点である水蒸気や乳酸を、配管110を経由して湿式コンデンサシステム111に移送する。一方、高沸点のラクチドは分縮装置108で凝縮して、配管109を経由して精製装置93に還流する。なお、還流液中における水分、乳酸、およびオリゴマーの濃度が低い場合は、精製装置93を経由せず、直接配管101に還流してもかまわない。湿式コンデンサシステム111は図3に記載されたもので、配管122、125、126、129を通してタンク67とつながっており、原料乳酸を冷媒として流通させることができる。また、この原料乳酸を冷媒として用いた凝縮により、配管107から移送される蒸気から未反応原料もしくは副生成物である乳酸、オリゴマー、ラクチド、水分を除去し、残渣の排気ガスを配管112、真空装置113、ノズル114を経由して系外放出する。
【0052】
溶融脱揮工程から排出されたポリマーはペレット化工程に移送され、水冷装置116で冷却および固化された後、チップカッター117でペレット化され、配管118により乾燥工程に移送される。乾燥工程に移送されたペレットはベルトコンベア119上を移動し、その際、送風機120により送られる風により、水冷時に付着した水分が除去される。その際、送風機120の風が温風であると乾燥効果が向上する場合がある。乾燥したペレットは配管121から排出される。
【0053】
なお、図1および図2を用いて説明した上記のポリエステル合成装置において用いるエステル化反応、縮重合反応、開環重合反応、解重合反応のための触媒としては、上記したものに限定されず、合成するポリマーによって好適なものを適宜選択できる。例えば、従来公知のエステル化または縮重合触媒を、具体的には周期表IVB族から選択される少なくとも1種の金属を含む触媒を用いることができる。IVB族に属する金属としては、例えばテトラプロピルチタネート等のチタン系化合物、ジルコニウムイソプロポキシド等のジルコニウム系化合物等が挙げられる。また、従来公知の乳酸、グリコール酸のオリゴマー解重合および環状縮合物の開環重合触媒としては、周期表IVA族およびVA族から選択される少なくとも1種の金属を含む触媒を用いることができる。IVA族に属する金属としては、例えば有機スズ系の触媒(例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α-ナフトエ酸スズ、β-ナフトエ酸スズ、2-エチルヘキサン酸スズ等)、および粉末スズ等が挙げられる。VA族に属する金属としては、例えば三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、乳酸、グリコール酸のオリゴマー解重合および環状縮合物の開環重合触媒としては有機スズ系触媒またはスズ化合物が活性の点から特に好ましい。触媒は液体、または粉末状の固体のものであれば、当技術分野で通常用いられる触媒添加装置により原料や溶融ポリマー等に添加してから混合液を反応槽に連続供給し反応物を連続排出する方法、および反応槽に直接添加し、連続供給されてきた原料や溶融ポリマーと槽内で接触させる方法のいずれも可能である。
【0054】
次に、図3および図4を用いて実施形態1および2に共通する湿式コンデンサシステム29、36、43、82、95、111、170について説明する。
【0055】
図3において、配管130は図1の配管22、28、35、42、図2の配管81、94、110に対応し、配管133は図1の配管23、30、37、44、図2の配管83、96、112に対応し、配管136は図1の配管58、59、60、61、図2の配管123、124、125に対応し、配管175は図1の配管63、64、65、66、図2の配管127、128、129に対応する。なお、図3に示した湿式コンデンサシステムは図1においては初期重合器19、中間重合器27、最終重合器34、溶融脱揮装置41に、図2においてはオリゴマー化反応槽77、解重合槽87、溶融脱揮装置106にそれぞれ設けられているが、場合によりこれらのいずれかを省略してもかまわない。また上記以外の湿式コンデンサシステムが設けられていないもの、例えば図1におけるエステル化槽9や図2における濃縮槽69、精製装置93、中間重合器102、最終重合器104の排気系にも、図3に示した湿式コンデンサシステムを必要に応じて設けてもかまわない。
【0056】
各種装置から移送される蒸気は配管130を経由して湿式コンデンサ131に供給される。ここで用いる湿式コンデンサとは、ガスに多量の冷媒を直接接触させてガスに含まれる成分を凝縮もしくは凝固させ冷媒に取り込む混合凝縮器であり、向流の多段接触式、並流のジェット式等、いずれの方式のものでもよい。湿式コンデンサ131では配管132を経由して冷媒が蒸気に向けて噴霧される。1,4-ブタンジオール、低分子量ポリマー、乳酸、オリゴマー、ラクチド、水分等の成分は噴霧された冷媒に取り込まれることで、排気が洗浄される。
【0057】
ここで冷媒は、製造するポリエステルの原料を用いる。具体的には、ポリエチレンテレフタレートを製造する場合ではエチレングリコール、ポリトリメチレンテレフタレートを製造する場合では1,3-プロパンジオール、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートを製造する場合では1,4-ブタンジオールであり、ポリ乳酸、ポリグリコール酸を製造する場合では、それぞれ乳酸、グリコール酸である。これらはそれぞれ任意の割合で水を含んでいてもかまわない。特に、乳酸、グリコール酸の場合は水分濃度が低下すると粘度が上昇し、混合や伝熱の特性が低下するため、1〜10%程度、望ましくは5〜10%程度の水分を含んでいることが望ましい。なお、冷媒にヒドロキシカルボン酸またはこれと水の混合物を用いる場合、湿式コンデンサシステムは耐有機酸の金属またはこれを用いた多層材料により製作するのが望ましい。特に高温となるコンデンサ本体、ホットウェル等の場所は、冷媒と直接接触するため耐食材料を用いるのがプラントの安定な連続運転にとって有効である。また、冷媒が水分を多く含む場合についても、酸の電離が促進されるので、冷媒と接触する場所では耐食材料を用いるのが望ましい。
【0058】
洗浄された排気は配管133から各真空装置に移送される。噴霧後の冷媒は配管134を経由してホットウェル135に回収される。その際、配管134またはホットウェル135に簡易ストレーナを設置し、冷媒に不溶な固形物をある程度分離除去できると好ましい。これにより、後段側への固形分の移送が低減される。その際、不溶分は少ない上、ストレーナ上に滞留している間に冷媒に溶解するので、簡易ストレーナのメンテナンス頻度は小さい。
【0059】
ホットウェル135は図1のタンク1(ポリブチレンテレフタレートを製造する場合は原料である1,4-ブタンジオールが入っている)または図2のタンク67(ポリ乳酸を製造する場合は原料である乳酸が入っている)と連結しており、冷媒滞留量を調節することができる。ここでホットウェルは通常の密閉式タンクであり、さらに熱媒ジャケットが設置されていて必要に応じて内部の滞留液を加熱または冷却し、固形物の析出を抑制できるようにすることが望ましい。また、加熱により固形物を冷媒中に溶解させる場合は攪拌機器が設置されていることが望ましい。ホットウェル135からは冷媒が配管137へ連続的に排出されており、送液ポンプ176によりろ過装置140または145に移送される。
【0060】
ろ過装置140、145は並列配置であり、一方が運転している際には、もう一方はメンテナンス作業を実施する。運転の切り替えはろ過装置140側のバルブ138、141、148、およびろ過装置145側のバルブ144、146、150の開閉をセットで切り替えることで実施する。 例えば、ろ過装置140側を運転する場合にはろ過装置140側のバルブ138、141、148を開くと共に、ろ過装置145側のバルブ144、146、150を閉じて、配管139を経由して冷媒を流す。ろ過装置140のろ液は、熱交換器142で冷却を受けた後、配管132を経由して湿式コンデンサ131に戻る。その際、ろ過装置140内部において、ろ過残渣から回収された冷媒は配管147から排出され、ホットウェル135に回収される。一方、ろ過装置145側を運転する場合にはろ過装置140側のバルブ138、141、148を閉じると共に、ろ過装置145側のバルブ144、146、150を開いて、配管143を経由して冷媒を流す。ろ過装置145のろ液は、熱交換器142で冷却を受けた後、配管132を経由して湿式コンデンサ131に戻る。その際、ろ過装置145内部において、ろ過残渣から回収された冷媒は配管149から排出され、ホットウェル135に回収される。なお、この実施例ではろ過装置は2個を並列に配置しているが、これに限定されずろ過装置は3個以上を並列に配置してもよい。
【0061】
熱交換器142は隔壁式の間接熱交換器であり、例えば多管円筒型熱交換器が望ましい。熱交換器の固定頭部の形式については蓋板分離型、ボンネット型、管板一体型、管板胴一体型、特殊高圧型等があり、どのタイプでもかまわない。また、胴部の形式については、1パス型、長手邪魔板2パス型、分流型、二重分流型、分割流型、ケトル型、クロス流型等、どのタイプでもかまわない。後頭部の形式についても、A式固定管板型、B式固定管板型、N式固定管板型、遊動頭グランド型、遊動頭割フランジ型、遊動頭引き抜き型、U字管型、遊動管板型等、どのタイプでもかまわない。
【0062】
次に、ろ過装置140、145について述べる。ろ過装置140、145は、フィルタに付着した固形物を機械的に掻き取るかあるいは逆洗を行うことでメンテナンス作業を自動化することができるストレーナと、液体サイクロンとを直列に設けたものである。ストレーナは被処理液の流量が少なくても固形物との分離ができるが、固形物はスラリー状となり原料である液体を多く含んでしまうという欠点を有する。一方で液体サイクロンは、固液分離に優れているが、旋回流の形成のために被処理液の流量、すなわち流速を大きくする必要があるため、湿式コンデンサ方式においてろ過装置として単独で用いると冷媒の循環に影響を与えるという欠点を有する。しかしながら、上記のようにストレーナと液体サイクロンとを直列に設けた場合、その両者の間に送液ポンプを設置することで、ストレーナで生成する固形物を液体サイクロンに高速送液して分離操作して、スラリー状の固形物に含まれる液、すなわち原料を回収可能とする。さらに湿式コンデンサ方式における冷媒の循環に影響を与えずに処理することができ、両方式の欠点を補うことができる。
【0063】
ストレーナは各種市販のものが適用可能であるが、特に円筒状ストレーナで、内部にフィルタを有し、内部から外部に向けて被処理液が流れ、フィルタ内面に固形物が付着するものが望ましい。その際、内部に掻き取りの翼が設置されていて、常時または必要に応じて、外部動力または被処理液の流れにより翼が回転し、フィルタ内面を浄化できるものが望ましい。また、フィルタ外部から圧縮ガスまたは液体による逆洗を行い、付着物をフィルタ内面に剥ぎ落とす機能を有することが望ましい。
【0064】
液体サイクロンは被処理液に所定の流速を与えるための送液ポンプを備えることが好ましい。その際、分離する固形物の粒子径Dpc、密度ρp、入口径Di、オーバーフロー出口管径De、サイクロン径Dc、被処理液の供給流量Qf、粘度μ、密度ρ、圧力損失△Pの間には以下の関係式が成立する。
【0065】
Dpc=0.2・{μ/(ρp-ρ)}0.5・Dc0.1・Di0.6・De0.8/Qf0.5
△P=44.1・Qf2/{ Dc0.9・Di1.2・De1.9}・ρ
【0066】
必要となる送液ポンプの動力Pは効率ηを用いると以下のようになる。
【0067】
P=△P・Qf
【0068】
その際、Dcは10−2〜1m、入口流速は5〜15m/s、△Pは50〜200kPa、Dpcは10−6〜10−4m程度である。また、アンダーフロー流量QuとQfの比は通常0.1〜0.2程度である。なお、送液ポンプを用いる代わりに、槽側を回転させる遠心分離機を用いてもかまわない。
【0069】
図4はストレーナと液体サイクロンから構成されるろ過装置の詳細を示した図である。図4において、配管151、157は図3のろ過装置140または145をはさむ配管139または143に対応し、配管168は図3の配管147または149に対応する。ろ過装置が被処理液の流通を行う際には、バルブ158は閉じている。被処理液はノズル151からストレーナケーシング152、ポート154を経由してフィルタ155内部に流入する。フィルタ155の内部には熱交換器153が備えられているとより好ましい。流入した被処理液は熱交換器153で冷却されることで、固形物が析出しやすくなる。フィルタ155外部はパンチングで大きめの穴があいたフィルタケーシング156により形状を保持されている。フィルタ155内部に流入した被処理液はフィルタ155にて固形物と分離された後、フィルタケーシング156を経由して、ストレーナケーシング152に設置されているノズル157から排出される。
【0070】
ストレーナには入口と出口のノズル151、157に圧力計159、160を設置して差圧を計測する。差圧が所定値よりも増大する場合、本ろ過装置の運転を停止してメンテナンス操作を開始すると共に、本システムと並列に設置されている他の本ろ過装置を運転させる。そして、掻取板161を外部動力により回転させてフィルタ155内面に付着した固形物を除去すること、またはバルブ163を開き配管162から送られる逆洗液をノズル158からフィルタ155外面に吹き付けて内面に付着した固形物を除去することの少なくとも一方を実施する。逆洗液としては、原料または原料と水の任意の混合液が望ましい。これは後段の液体サイクロン処理で回収した液相を再利用するのに適するためである。なお原料は、具体的にはポリエチレンテレフタレートを製造する場合ではエチレングリコール、ポリトリメチレンテレフタレートを製造する場合では1,3-プロパンジオール、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートを製造する場合では1,4-ブタンジオールであり、ポリ乳酸、ポリグリコール酸を製造する場合では、それぞれ乳酸、グリコール酸である。なお、掻取板161の稼動については、メンテナンス操作時だけでなく本ろ過装置の運転時にも連続的または断続的に実施してもよい。その際、稼動を外部動力ではなく、被処理液の流通により実施することも可能である。これにより、メンテナンス操作の頻度が低減できる。
【0071】
メンテナンス操作時には、除去された固形物はフィルタ155内部に滞留している状態となる。次のメンテナンス操作として、バルブ158、167を開き固形物と被処理液の混合物スラリーを送液ポンプ164により配管165を経由して、液体サイクロン166に移送する。その際、スラリーによるバルブ158の閉塞を抑制するため、例えば、掻取板161の先端部分で槽底部に付着するスラリーを掻き取りバルブ158側に押し込む機能を持たせる等の手段をストレーナが有することが望ましい。液体サイクロン166に移送されたスラリーは槽内部で旋回流となって底部に向けて流れ落ちていく。底部にて固液が分離され、液相は上部ノズル168から排出され、固相が濃縮されたスラリーはバルブ169から系外放出される。操作終了後、送液ポンプ164の運転を停止し、バルブ158、167を閉じる。なおバルブ169から排出される固相が濃縮されたスラリーは廃棄するのみならず、加水分解して原料に戻すなどして再利用することも可能である。そのようにすることで、原料収率をさらに向上させることができる。
【0072】
以上、図1〜4により説明される本発明のポリエステル合成装置および当該装置を用いたポリエステル合成方法によれば、排気に含まれる副生成物もしくは未反応原料を効率よく回収することができ、原料収率向上を図ることができる。特にポリブチレンサクシネートやポリ乳酸、ポリグリコール酸等の脂肪族系ポリマーは、芳香族系のポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートと比較して、ポリマー骨格あたりの分子量が小さく、重合度が小さい低分子量ポリマーの状態のものは比較的揮発しやすいため、本実施形態によるポリエステル合成装置を用いることで原料収率をより向上させることができると考えられる。
【実施例】
【0073】
[実施例1]
図1で示した縮重合系ポリエステル合成装置を用いてポリブチレンテレフタレートを合成した。エステル化工程を温度230℃、圧力600torr、滞留時間1.5hの条件で実施したところ、エステル化率が96%のオリゴマーが生成された。これを初期重合器にて温度240℃、圧力30torrの環境下で1h滞留させることで、重量平均重合度30のプレポリマーを製造した。これを中間重合器にて温度250℃、圧力3torrの環境下で1h滞留させることで、重量平均重合度80のポリマーを製造した。これを最終重合器にて温度250℃、圧力1torrの環境下で1h滞留させることで、重量平均重合度120のポリマーを製造した。これをペレット化および乾燥の工程を経由して排出した最終ポリマーのIV値は0.85であった。エステル化工程の排気処理系に、本発明の並列ろ過装置を適用したところ、システムの切り替え頻度は24h毎となった。その際、プラントの連続運転を阻害する事象はなく、システム中のストレーナに作業員が直接触れることもなかった。また、本システムから排出されるスラリー中の1,4-ブタンジオール濃度は全工程で20wt%であった。
【0074】
[実施例2]
図2で示した開環重合系ポリエステル合成装置を用いてポリ乳酸を合成した。濃縮工程を温度130℃、滞留時間2.5hの条件で実施したところ、水分濃度が2%の濃縮乳酸が生成された。これをオリゴマー化反応槽にて温度170℃、圧力30torrの環境下で6h滞留させることで、重量平均分子量1500のオリゴマーを製造した。これを解重合槽に移送し、温度200℃、圧力10torrの環境にて解重合反応させ、生成したラクチドを蒸留により精製した。得られた精製ラクチドを温度120℃で中間重合器に供給した。中間重合器では反応液を平均温度170℃、滞留時間10時間で保持した。滞留時間の前半においては、反応槽外周部のジャケットからの熱伝導により加熱したことにより、また後半においては重合に伴う反応熱に伴い重合物自身の温度が上昇したが、一部の反応熱は反応槽の内壁を介して熱伝導により除去された。横型反応槽から排出されたポリ乳酸は、重合反応度(転化率)が55%(重合反応度=1−残存ラクチド濃度/初期ラクチド濃度として算出)、重量平均分子量17万、粘度250Pa・s程度であった。このポリマーを、次に最終重合器に供給し、平均温度190℃、滞留時間5時間で保持した。滞留時間の間、重合に伴う反応熱に伴い重合物自身の温度が上昇したが、一部の反応熱は反応槽の内壁を通して熱伝導により除去された。なお、重合反応の進展に伴い、単位体積当たりの発熱率は低下するため、発熱率が熱伝導による熱の除去率を上回る間は重合物自身の温度は上昇したが、下回るようになると重合物自身の温度は低下した。最終重合器から排出されるポリ乳酸は、重合反応度で90%、重量平均分子量27万、粘度2500Pa・s程度であった。これを溶融脱揮装置に送り、温度190℃、圧力1torrにて0.5hかけて脱揮処理を行った。ペレット化および乾燥の工程を経由して排出した最終ポリマーは残存する未反応ラクチドが1000ppmのものであった。オリゴマー化工程の排気処理系に、本発明の並列ろ過装置を適用したところ、システムの切り替え頻度は24h毎となった。その際、プラントの連続運転を阻害する事象はなく、システム中のストレーナに作業員が直接触れることもなかった。また、本システムから排出されるスラリー中の乳酸濃度は全工程で20wt%であった。
【0075】
[比較例1]
図1で示した縮重合系ポリエステル合成装置において、本発明の並列ろ過装置を適用せず、従来どおりの並列ストレーナシステムを適用したところ、ストレーナシステムの切り替え頻度は平均3h毎となった。その際、プラントの連続運転を阻害する大きな事象はなかったものの、頻繁なシステム切り替えにより湿式コンデンサの性能に安定性を欠き、一部の1,4-ブタンジオール蒸気が真空装置側に多く移行する場合があった。また、ストレーナに作業員が直接触れることとなり、煩雑な作業が頻繁に発生した。また、本システムから排出されるスラリー中の1,4-ブタンジオール濃度は全工程で90wt%であった。
【0076】
[比較例2]
図2で示した開環重合系ポリエステル合成装置において、本発明の並列ろ過装置を適用せず、従来どおりの並列ストレーナシステムを適用したところ、ストレーナシステムの切り替え頻度は平均6h毎となった。その際、プラントの連続運転を阻害する大きな事象はなかったものの、システム中のストレーナに多くの作業員が直接触れて作業することが必要となると共に、煩雑な作業が頻繁に発生した。また、本システムから排出されるスラリー中の乳酸濃度は全工程で90wt%であった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の縮重合系ポリエステル合成装置の全体を説明する図である。
【図2】本発明の開環重合系ポリエステル合成装置の全体を説明する図である。
【図3】本発明のポリエステル合成装置における湿式コンデンサ方式の排気ガス洗浄装置の概要図である。
【図4】ストレーナと液体サイクロンから構成されるろ過装置の図である。
【符号の説明】
【0078】
1:タンク、3:タンク、5:タンク、7:混合槽、9:エステル化槽、13:分縮装置、19:初期重合器、170:湿式コンデンサシステム、27:中間重合器、29:湿式コンデンサシステム、34:最終重合器、36:湿式コンデンサシステム、41:溶融脱揮装置、43:湿式コンデンサシステム、48:水冷装置、49:チップカッター、51:ベルトコンベア、52:送風機、54:タンク、67:タンク、69:濃縮槽、71:分縮装置、77:オリゴマー化反応槽、79:分縮装置、82:湿式コンデンサシステム、87:解重合槽、91:間接熱交換器、93:精製装置、95:湿式コンデンサシステム、102:中間重合器、104:最終重合器、106:溶融脱揮装置、108:分縮装置、111:湿式コンデンサシステム、116:水冷装置、117:チップカッター、119:ベルトコンベア、131:湿式コンデンサ、135:ホットウェル、140:ろ過装置、142:熱交換器、145:ろ過装置、152:ストレーナケーシング、153:熱交換器、155:フィルタ、156:フィルタケーシング、159:圧力計、160:圧力計、161:掻取板、164:送液ポンプ、166:液体サイクロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル重合体を生成する反応装置を備えるポリエステル合成装置であって、
反応装置から生じた低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を含むガスを原料を含む液体で洗浄することにより、原料を含む液体中に低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を回収する湿式コンデンサ、湿式コンデンサから原料を含む液体を回収するホットウェル、回収された原料を含む液体をろ過するろ過装置、およびろ過された原料を含む液体を冷却して湿式コンデンサへ循環させる熱交換器を少なくとも一つの反応装置に備え、
ろ過装置は、フィルタを有するストレーナと、その後段に液体サイクロンとを備え、
ストレーナは、フィルタに付着したスラリーを機械的に除去する掻取装置もしくは逆洗を行う逆洗装置の少なくとも一方を備え、通常時はフィルタにより原料を含む液体をろ過してろ液を熱交換器へ送り、メンテナンス時は掻取装置もしくは逆洗装置によってフィルタに付着したスラリーを除去して液体サイクロンへ送り、
液体サイクロンは、スラリーを固液分離して、分離により得られた原料を含む液体をホットウェルに送る、上記ポリエステル合成装置。
【請求項2】
エステル重合体を生成する反応装置と、生成したポリエステルに含まれる低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を除去する脱揮装置とを備えるポリエステル合成装置であって、
反応装置あるいは脱揮装置から生じた低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を含むガスを原料を含む液体で洗浄することにより、原料を含む液体中に低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を回収する湿式コンデンサ、湿式コンデンサから原料を含む液体を回収するホットウェル、回収された原料を含む液体をろ過するろ過装置、およびろ過された原料を含む液体を冷却して湿式コンデンサへ循環させる熱交換器を少なくとも一つの反応装置もしくは脱揮装置に備え、
ろ過装置は、フィルタを有するストレーナと、その後段に液体サイクロンとを備え、
ストレーナは、フィルタに付着したスラリーを機械的に除去する掻取装置もしくは逆洗を行う逆洗装置の少なくとも一方を備え、通常時はフィルタにより原料を含む液体をろ過してろ液を熱交換器へ送り、メンテナンス時は掻取装置もしくは逆洗装置によってフィルタに付着したスラリーを除去して液体サイクロンへ送り、
液体サイクロンは、スラリーを固液分離して、分離により得られた原料を含む液体をホットウェルに送る、上記ポリエステル合成装置。
【請求項3】
ストレーナがさらにろ過前の原料を含む液体を冷却する冷却装置を備える、請求項1または2に記載のポリエステル合成装置。
【請求項4】
原料を含む液体が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、乳酸およびグリコール酸からなる群から選択される原料ならびに水を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル合成装置。
【請求項5】
エステル重合体を生成する反応工程を含むポリエステルの合成方法であって、
反応工程において発生した低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応物を含むガスを湿式コンデンサに送って原料を含む液体で洗浄し、原料を含む液体中に低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を回収すること、湿式コンデンサから原料を含む液体をホットウェルで回収すること、回収した原料を含む液体をろ過装置でろ過すること、およびろ過した原料を含む液体を熱交換器で冷却して湿式コンデンサへ循環させることを含み、
ろ過装置は、フィルタを有するストレーナと、その後段に液体サイクロンとを備え、
ストレーナは、通常時はフィルタにより原料を含む液体をろ過してろ液を熱交換器へ送り、メンテナンス時はフィルタに付着したスラリーを機械的に掻き取るかあるいは逆洗を行うかの少なくとも一方により液体サイクロンへ送り、
液体サイクロンは、スラリーを固液分離して、分離により得られた原料を含む液体をホットウェルに送る、上記方法。
【請求項6】
エステル重合体を生成する反応工程と、生成したポリエステルに含まれる低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を除去する脱揮工程とを含むポリエステルの合成方法であって、
反応工程と脱揮工程の少なくとも一方において、発生した低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応物を含むガスを湿式コンデンサに送って原料を含む液体で洗浄し、原料を含む液体中に低分子量エステル重合体、副生成物もしくは未反応原料を回収すること、湿式コンデンサから原料を含む液体をホットウェルで回収すること、回収した原料を含む液体をろ過装置でろ過すること、およびろ過した原料を含む液体を熱交換器で冷却して湿式コンデンサへ循環させることを含み、
ろ過装置は、フィルタを有するストレーナと、その後段に液体サイクロンとを備え、
ストレーナは、通常時はフィルタにより原料を含む液体をろ過してろ液を熱交換器へ送り、メンテナンス時はフィルタに付着したスラリーを機械的に掻き取るかあるいは逆洗を行うかの少なくとも一方により液体サイクロンへ送り、
液体サイクロンは、スラリーを固液分離して、分離により得られた原料を含む液体をホットウェルに送る、上記方法。
【請求項7】
前記通常時において原料を含む液体をストレーナによりろ過する前に冷却する、請求項5または6に記載のポリエステル合成方法。
【請求項8】
原料を含む液体が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、乳酸およびグリコール酸からなる群から選択される原料ならびに水を含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載のポリエステル合成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−132828(P2010−132828A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312018(P2008−312018)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】