説明

ポリエステルの製造方法

【課題】
低分子量のポリエステルプレポリマー粒子を熱処理して、融着させることなく高速で固相重縮合するポリエステルの製造方法を提供。
【解決手段】
固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のポリエステルプレポリマーを固体状態で熱処理して、該ポリエステルプレポリマーの固有粘度を0.50dL/g以上増加させて、ポリエステルを得る熱処理工程を含むポリエステルを製造する方法であって、前記熱処理工程がn段階に分割されており、かつ、各段階の熱処理温度および固有粘度を制御することを特徴とする、ポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの製造方法に関する、詳しくは、低分子量のポリエステルプレポリマーを固体状態で熱処理して固相重縮合を行う、ポリエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、中でもポリエチレンテレフタレート(以下PETと略すことがある)は数多くの材料および製品、例えば繊維、生地、成形用樹脂および飲料用ボトルなどで幅広く用いられている。
【0003】
上記用途に必要な成形加工性、機械的特性を引き出すためには分子量(固有粘度)を所定のレベルまで上げる必要があり、その方法として溶融重縮合に引き続き固相重縮合を行う方法が工業的に広く用いられている。固相重縮合は通常溶融重縮合によって得られたポリエステルプレポリマーを不活性ガス雰囲気下または減圧下で熱処理することにより行うが、比較的長時間を要するために、より生産性に優れた製造方法が望まれている。かかる方法として、溶融重縮合で比較的低重合度のポリエステルプレポリマーを得、このプレポリマーを高温で固相重縮合する方法が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、溶融重縮合で得られた平均重合度約5から約35(固有粘度約0.10から0.36dL/g)の低分子量プレポリマーを、みかけ結晶子サイズが9nm以上となるように結晶化させてから固相重縮合する方法が開示されている。しかしながら、我々の検討によれば、固相重縮合スタート時の重合度が低すぎるためかあるいは結晶が成長して分子の移動を抑制するためか、必ずしも満足な固相重合速度は得られない。
【0005】
また、特許文献2には固有粘度0.08から0.5dL/gのポリエステルプレポリマーの粒子をそのガラス転移温度より140℃以上の高温で固相重縮合することが記載されているが、平均粒子径が1mm程度以上で、粒子同士が融着しない程度の温度範囲では必ずしも十分な固相重縮合反応速度が得られない。更に特許文献3には、重合の進行が結晶化の進行より優先される固相重縮合方法、即ち、低分子量ポリエステルプレポリマー粒子を熱伝導媒体と接触させて約205℃〜240℃の範囲の温度まで10分未満で昇温した後、不活性ガス流中で固相重縮合する方法が開示されている。しかし、開示されている方法では熱衝撃を与えて約205℃〜240℃の範囲の温度まで極めて短時間で昇温するため、粒子同士が融着しやすく、これを防止するためには、ポリエステルプレポリマー粒子同士を接触させないように設備的工夫が要ること、また、この方法では固相重縮合反応に要する時間を短縮する効果が得られないことなど、必ずしも満足できる方法ではなかった。
一方、特許文献4には固相重縮合工程において2段以上の移動床を用いることが開示されているが、開示された技術は中程度の分子量(固有粘度概ね0.5〜0.65dL/g)のポリエステルプレポリマー粒子を固相重縮合するにあたり粒子同士が融着しないように段階的に昇温するものであり、重縮合反応速度は必ずしも改良されるものではない。また、中程度の分子量のプレポリマーを得るための溶融重縮合設備は低分子量のプレポリマーを得る設備より高価になり必ずしも満足できる方法ではなかった。
【特許文献1】特許3626758号公報
【特許文献2】特開2004−67997号公報
【特許文献3】特表2004-537622号公報
【特許文献4】US5408035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記技術背景に鑑み、低分子量のポリエステルプレポリマー粒子を熱処理して、融着させることなく高速で固相重縮合するポリエステルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に対し検討した結果、高温で固相重縮合を行う前にその固相重縮合温度より15℃以上低い温度で予備的に固相重縮合を行うことにより高温での固相重縮合反応速度が大きくなることを見出し本発明に到達した。
即ち本発明の要旨は以下の通りである。
固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のポリエステルプレポリマーを固体状態で熱処理して、該ポリエステルプレポリマーの固有粘度を0.50dL/g以上増加させて、ポリエステルを得る熱処理工程を含むポリエステルを製造する方法であって、前記熱処理工程がn段階に分割されており、かつ、以下の条件を満足することを特徴とする、ポリエステルの製造方法。
【0008】
1)第j段の温度(Tj)が190℃以上230℃以下であり、かつ第j段での固有粘度上昇値が0.03dL/g以上である。
【0009】
2)第j段の温度(Tj(℃))及び第k段の温度(Tk(℃))が下記(式1)を満たす第j段、第k段の組み合わせが、少なくとも1組存在する。
(式1)Tj+15≦Tk≦245
【0010】
3)上記第j段、第k段の組み合わせにおいて、第j段終了時の固有粘度と第k段開始時の固有粘度の差が0.10dL/g以下である。
【0011】
4)nは2以上の整数であり、かつ、j及びkは1≦j<k≦nを満たす整数である。
【0012】
また本発明の別の要旨は以下の通りである。
固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のポリエステルプレポリマーを固体状態で熱処理して、該ポリエステルプレポリマーの固有粘度を0.50dL/g以上増加させて、ポリエステルを得る熱処理工程を含むポリエステルを製造する方法であって、前記熱処理工程が、温度T1(℃)で前記ポリエステルプレポリマーを結晶化する第1段、結晶化されたポリエステルプレポリマーを温度T2(℃)で固相重縮合する第2段、第2段で得られた産物を温度T3(℃)に昇温する第3段、第3段で得られた産物を温度T4(℃)で固相重縮合する第4段を、この順に全て含み、前記第2段での固有粘度上昇値が0.03dL/g以上であり、前記第2段終了時の固有粘度と第4段開始時の固有粘度の差が0.10dL/g以下であり、前記T1、T2、T3、T4(℃)が下記(式4)〜(式7)を満足することを特徴とする、ポリエステルの製造方法。
【0013】
(式4)100≦T1≦200
(式5)190≦T2≦230
(式6)T4≦T3≦250
(式7)T2+15≦T4≦245
【発明の効果】
【0014】
本発明により、低分子量のポリエステルプレポリマー粒子を融着させることなく高速で固相重縮合するポリエステルの製造方法を提供することができる。この方法により得られるポリエステルは、飲料用ボトルや工業用繊維など幅広い用途に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のポリエステルの製造方法は、溶融重縮合によって得られたポリエステルプレポリマーを不活性ガス雰囲気下または減圧下、固体状態で熱処理し、重縮合(固相重縮合)を進めて成形に適したポリエステルを効率よく製造するのに際し、プレポリマーとして低分子量のものを使用し、比較的低温での固相重縮合を行いその後15℃以上昇温して比較的高温で所定の分子量のポリエステルを得るまで固相重縮合を行うことを特徴とする。こうすることにより、はじめから比較的高温で固相重縮合する場合よりも、高分子量領域において大きな重縮合反応速度が得られる。その理由は明らかではないが、以下のように推定している。即ち、低分子量で結晶化させた場合、結晶構造が形成されることでポリエステル分子鎖の運動性が低下し、一部の末端基が不活性化するが、特に低分子量で結晶化させた場合、不活性化する末端基数の絶対値が大きくなるため、固相重縮合後半に重縮合反応速度が小さくなる。これに対し、途中で温度差15℃以上という加熱熱処理を与えることにより、固体状態は保つものの、結晶の溶融と再結晶化が起こり、再度、多数の末端基が存在する非晶領域が形成されるため、不活性化していた末端基の一部が活性を取り戻し、重縮合反応速度が増大すると推定している。
【0016】
<本発明のポリエステルの製造方法>
本発明のポリエステルの製造方法(以下、本発明の方法ともいう)は、固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のポリエステルプレポリマーを固体状態で熱処理して、該ポリエステルプレポリマーの固有粘度を0.50dL/g以上増加させて、ポリエステルを得る熱処理工程を含むポリエステルを製造する方法であって、熱処理工程がn段階に分割されており、かつ、特定の条件を満足することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の方法において、熱処理工程とは、乾燥工程、昇温工程、結晶化工程、固相重縮合工程等を含み、常温を超える温度条件下で固体状態のポリエステルプレポリマーを処理する工程をいう。
また、本発明の方法においては、分子量の指標として固有粘度を用いる。
以下に本発明の詳細を説明する。
【0018】
<1>本発明の方法に用いるポリエステルプレポリマー
本発明の方法に用いるポリエステルプレポリマーは、例えば、ポリエステルプレポリマーの製造に慣用の方法を用いて製造することができる。具体的には、通常、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とジオールとを、エステル化反応及び/又はエステル交換反応を経て、重縮合触媒を使用して溶融重縮合させることにより製造することができる。詳しくは、例えば、ジカルボン酸とジオールとを、スラリー調製槽に投入して攪拌・混合して原料スラリーとし、エステル化反応槽で常圧〜加圧下、加熱下で、反応によって生ずる水などを留去しつつエステル化反応させた後、得られたエステル化反応物としてのポリエステル低分子量体(オリゴマー)を重縮合槽に移送し、減圧下、加熱下で、重縮合触媒を使用して溶融重縮合させポリエステルを得る。
【0019】
上記重縮合触媒としては特に制限されず、公知の触媒を用いることができる。例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等のゲルマニウム化合物、三酸化二アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、メトキシアンチモン等のアンチモン化合物、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム等のチタン化合物等を、単独で或いは併用して用いることができる。なかでもチタン化合物は重縮合反応活性が高いため好ましく用いられる。
上記重縮合触媒の使用量は、得られるポリエステルプレポリマーに対して通常1〜400質量ppmである。
【0020】
また、正リン酸、正リン酸アルキルエステル、エチルアシッドホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート、亜リン酸、亜リン酸アルキルエステル等のリン化合物を安定剤として用いることができる。その使用量は、得られるポリエステルプレポリマーに対して1〜1000質量ppmとなる量とするのが好ましく、2〜200質量ppmとなる量とするのが特に好ましい。
【0021】
更に、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、炭酸マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の化合物も上記重縮合触媒と共に使用することもできる。
【0022】
なお、ジカルボン酸成分がジカルボン酸のエステル形成性誘導体、例えばテレフタル酸ジメチルなど適度な融点のものである場合、ジオールとのスラリーとせずに溶融してからジオールとのエステル交換反応に供することもできる。
【0023】
なお、これらは連続式、回分式、半回分式の何れか1以上の方法でなされ、また、エステル化反応槽(又はエステル交換反応槽)、溶融重縮合反応槽は、それぞれ一段としても多段としてもよい。
【0024】
本発明の方法に、特に好ましく適用できるポリエステルプレポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレートプレポリマー、及び/又は、ポリブチレンテレフタレートプレポリマーを挙げることができ、これらは通常、ジカルボン酸の主成分をテレフタル酸及び/又はテレフタル酸ジメチルとし、ジオールの主成分をエチレングリコール及び/又は1,4−ブタンジオールとして製造されるポリエステルプレポリマーである。
ここで、上記「主成分」とは、テレフタル酸が全ジカルボン酸成分の85モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上を占め、エチレングリコール、及び/又は1,4ブタンジオールが全ジオール成分の85モル%以上好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上を占めることを意味する。
【0025】
上記テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及び、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、等及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0026】
上記エチレングリコール、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分としては、ジエチレングリコールの他、例えば、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチ ロール等の脂環式ジオール、及び、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(
4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、並びに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
【0027】
更に、官能基数が3個以上の化合物、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸及びそれらの無水物、及び、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオール等のポリオール、及び、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸等の一種又は二種以上を、共重合成分として用いてもよい。
【0028】
上記溶融重縮合反応で得られたポリエステルは、溶融重縮合反応槽に配管及び/又はギヤポンプ及び/又はフィルターを介して接続されたダイヘッドに供給され、ダイの先端に設けられた複数のダイホールから、ストランド状又は滴状に吐出される。吐出されたポリエステルは、例えばストランドカッターなどで粒子化し、本発明の方法に用いるポリエステルプレポリマーとすることができる。
【0029】
本発明の方法に用いる上記ポリエステルプレポリマーは、通常、平均粒径は0.5mm以上3.0mm以下が好ましく、0.6mm以上が更に好ましく、特に好ましくは0.65mm以上であり、一方、2.0mm以下が更に好ましく、より好ましくは1.8mm以下であり、特に好ましくは1.6mm以下である。平均粒径が0.5mm未満であると粒子化する時に微粉が多くなりその後の工程で移送中のトラブルが起き易い。平均粒径が3.0mmを超えると本発明の効果の有無に関わらず、必要な固相重縮合反応時間が非常に長くなる。
上記範囲の平均粒径を有するポリエステルプレポリマーは、例えば、ストランドカッターで粒子化する場合、ダイホイール径や、プレポリマー吐出量とストランドの引取速度を調節することによって得ることができる。
【0030】
上記平均粒径は、JISK0069に記載の乾式ふるい分け試験法に従い、積算分布曲線を作成し、積算百分率が50%になるときの値を平均粒径とする。
【0031】
本発明の方法に用いるポリエステルプレポリマーの固有粘度は0.18dL/g以上0.40dL/g以下である。好ましくは0.20dL/g以上である。一方、0.38dL/g以下が好ましく、特に0.35dL/g以下が好ましい。固有粘度が0.18dL/g未満の場合、粒子化する時に微粉が発生しやすく、また、本発明の効果を加味しても、必要な固相重縮合反応時間が非常に長くなるので好ましくない。固有粘度が0.40dL/gを超える場合、溶融重縮合工程において高粘度液体撹拌、高真空反応を行う為の高価な設備が必要となり、本発明の効果が減殺される。
上記範囲の固有粘度を有するポリエステルプレポリマーは、重縮合反応温度、時間、減圧度を制御することで得ることができる。
【0032】
本発明の方法に用いるポリエステルプレポリマーの末端カルボキシル基濃度は100当量/トン以下であることが好ましい。より好ましくは70当量/トン以下、更に好ましくは40当量/トン以下、特に好ましくは20当量/トン以下である。100当量/トンを超えるとその後工程である固相重縮合において重縮合速度が小さくなる傾向がある。
また、上記末端カルボキシル基濃度(AV)は、試料を溶媒に溶解後、水酸化ナトリウムで滴定することにより測定が可能である。
更に、上記末端カルボキシル基濃度(AV)は、エステル化反応工程及び/又は重縮合反応工程の温度、圧力、混合状態、或いは触媒やエチレングリコールの追加方法により制御が可能である。
【0033】
<2>本発明の方法における熱処理工程
上記のようにして得られたポリエステルプレポリマーは、本発明の方法により、固体状態で熱処理をされ所定の固有粘度まで重縮合される。本発明の方法における熱処理工程は、昇温、結晶化、固相重縮合、再昇温などの複数段(n段)の工程に分割されている。本発明の方法における熱処理工程は回分法でも行うことができるが連続法で行うことが生産効率の点で好ましい。
また、本発明の方法は、上記ポリエステルプレポリマーを固体状態で熱処理して、固有粘度を0.50dL/g以上増加させ、ポリエステルを得る熱処理工程を含むポリエステルを製造する方法である。好ましくは、上記熱処理工程での固有粘度の増加量が0.53dL/g以上、更に好ましくは0.55dL/g以上、特に好ましくは0.58dL/g以上である。一方、上記固有粘度の増加量は、通常、2.00dL/g以下となる。
上記固有粘度の増加量が0.50dL/g未満の場合、本発明の固相重縮合速度を大きくできるという効果が生産性向上に結びつかない。
【0034】
上記熱処理工程の固相重縮合工程は、少なくとも第j段、第j段より下流の第k段の2段を有し、第j段の温度(Tj(℃))及び第k段の温度(Tk(℃))が(式1)Tj+15≦Tk≦245を満たす第j段及び第k段の組み合わせが、少なくとも1組存在する。更に、上記j及びkは1≦j<k≦nを満たす整数であり、かつ、nは2以上の整数である。
上記第j段の温度Tjは190℃以上230℃以下であり、下限は好ましくは200℃である。一方、上限は好ましくは220℃、更に好ましくは215℃である。上記下限が190℃未満であると、第j段での固相重縮合速度が小さくなり後工程である第k段の負荷が大きくなる。上記上限が230℃を超える場合は、第k段の温度Tkが245℃を超え、ポリエステル粒子同士の融着が起き易いなど不都合である。また上述の如く、Tkの範囲は、(式1)Tj+15℃≦Tk≦245℃で表現されるがTkがTj+15℃未満であると本発明の固相重縮合速度の向上効果が得られない。
【0035】
上記第j段における固有粘度の上昇は0.03dL/g以上であり、好ましくは0.05dL/g以上である。0.03dL/g未満であると第k段での固相重縮合速度の向上効果が十分得られない。第j段における固有粘度の上昇幅の上限は、本熱処理工程全体の時間が最短になる、及び/又は、投入熱量が最小になるように設定すればよく、通常0.30dL/g以下、好ましくは0.25dL/g以下、更に好ましくは0.20dL/g以下程度である。
また、上記第j段終了時のポリエステルの固有粘度と第k段開始時のポリエステルの固有粘度の差は0.10dL/g以下であり、好ましくは0.05dL/g以下である。0.10dL/gを超える場合、第j段終了時から第k段開始時までの熱処理時間が長くなる結果、第j段から第k段に短時間で昇温することにより得られる本発明の効果が発揮されず、好ましくない。
さらに、上記第j段及び/又は第kは移動床、特に連続式移動床で実施されることが好ましい。
【0036】
上記第j段から第k段への移行をスムースに行うため第j段と第k段との間に第h段(昇温工程)を設けることが好ましい。その温度Th(℃)は(式3)Tk≦Th≦250℃を満足することが好ましい。ThがTk以上であることにより第k段でのポリエステル粒子同士の融着が起こりにくくすることができる。また、Tj、Th、Tkは当然のことながら本発明のポリエステルの融点以下である。第h段の滞留時間は、第j段終了時のポリエステルの固有粘度と第k段開始時のポリエステルの固有粘度の差が0.10dL/g以下となるよう設定すれば良く、通常、90分以内、好ましくは60分以内、より好ましくは40分以内である。上記昇温工程の滞留時間が上記範囲である場合は本発明の方法による固相重縮合反応時間を短縮する効果が大きい。第h段はポリエステル粒子を加熱昇温
できる設備であれば特に制限されず、不活性ガスを用いた流動床で行うと粒子同士の融着などが少なく、好ましい。
【0037】
上記熱処理工程において第j段固相重縮合工程より前に実質的に非晶状態のポリエステルプレポリマー粒子を結晶化する第c段(結晶化工程)があることが好ましい。非晶状態のポリエステルプレポリマー粒子を結晶化することで、その後の第j段、第k段などでのポリエステル粒子同士の融着を軽減することができる。上記第c段の温度Tc(℃)は100≦Tc≦200℃を満足することが好ましい。Tcが、100℃未満ではポリエステルプレポリマー粒子同士が融着しない程度に結晶化させるのに長時間を要し本発明の効果を減ずる。Tcが200℃を超えると第c段でポリエステルプレポリマー粒子同士の融着が生じ易い傾向となる。第c段はポリエステルプレポリマー粒子を加熱できる設備であれば特に制限されず、不活性ガスを用いた流動床で行うと粒子同士の融着などが少なく、好ましい。
また、第c段の前にTcまで昇温する工程を有することもできるし、第c段で昇温及び結晶化を行ってもよい。また第c段でポリエステルプレポリマー粒子の乾燥を行ってもよい。ポリエステルプレポリマー粒子の乾燥は固相重縮合の初期に行ってもよい。
【0038】
本発明の方法における熱処理工程の、より好ましい分割方法とその温度条件の例を説明する。すなわち、上記熱処理工程が、温度T1(℃)で実質的に非晶状態のポリエステルプレポリマーを結晶化する第1段、結晶化されたポリエステルプレポリマーを温度T2(℃)で固相重縮合する第2段、第2段で得られた産物を温度T3(℃)に昇温する第3段、第3段で得られた産物を温度T4(℃)で固相重縮合する第4段を、この順に全て含み、第2段での固有粘度上昇値が0.03dL/g以上であり、第2段終了時の固有粘度と第4段開始時の固有粘度の差が0.10dL/g以下であり、T1、T2、T3、T4(℃)が下記(式4)〜(式7)を満足することが好ましい。
(式4)100≦T1≦200
(式5)190≦T2≦230
(式6)T4≦T3≦250
(式7)T2+15≦T4≦245
【0039】
本発明の製造方法により得られるポリエステルは繊維、フィルム、ボトルなどの成形原料に好適に使用できる。特に射出成形や押出成形によりプリフォームを成形後、延伸ブロー成形により、飲料包装等に用いられるボトルにすることができる。また、ダイレクトブロー成形により、ボトルにすることができる。
【0040】
また、押出成形や延伸成形によりフィルム、シートにして包装材料など各種用途に供することができる。また、押出・延伸成形により、繊維とすることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
なお、本発明における物性評価方法は以下の通りである。
【0043】
<1>固有粘度(IV)
試料約0.25gを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒約25mLに、濃度が1.00×10-2kg/Lとなるように、非晶状態のポリエステルは110℃30分で、固相重縮合後のポリエステルは140℃30分で溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(センテック社製「2CH型DJ504」)にて、濃度が1.00×10-2kg/Lの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定
し、下式(8)により算出した。なお、上記全自動溶液粘度計の測定原理は、単位体積の溶液が、キャピラリー(細管)中を落下する落下時間と、溶媒単独の場合の落下時間とを比較するものである。
【0044】
(式8)IV=[(1+4KHηsp0.5―1]/(200KHC)
ここで、ηsp=η/η0−1であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(kg/L)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
【0045】
<2>ポリエステル粒子の平均粒径
JIS K0069に記載の乾式ふるい分け試験法により、積算分布曲線を作成し、積算百分率が50%になるときの値を平均粒径とした。
【0046】
<3>ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(AV)
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて、140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した。得られた乾燥試料0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料を使用せずに同様の操作を実施し、以下の式(9)により算出した。
(式9)AV(当量/トン)=(A−B)×0.1×f/W
ここで、Aは滴定に要した0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(ml)、Bはブランクでの滴定に要した0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(ml)、Wはポリエステル樹脂試料の量(g)、fは0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。
尚、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、試験管にメタノール5mlを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mlで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1規定の塩酸水溶液を標準液として0.2ml採取して加え、再度、0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定し、以下の式(10)によって力価(f)を算出した。(以上の操作は、乾燥窒素ガスを吹き込みながら行った。)
(式10)力価(f)=0.1規定の塩酸水溶液の力価×0.1規定の塩酸水溶液の採取料(ml)/0.1規定の水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(ml)
【0047】
(ポリエステルプレポリマーの製造例1)
<ポリエステルプレポリマーAの製造>
撹拌機、エチレングリコール仕込み配管およびテレフタル酸仕込み配管を有するスラリー調製槽;スラリーを第一エステル化反応槽へ移送する配管;撹拌機、分離塔、原料受入れ口、触媒仕込み配管、反応物移送配管を有する完全混合型第一および第二エステル化反応槽;エステル化反応物(オリゴマー)を溶融重縮合反応槽へ移送する配管;撹拌機、分離塔、オリゴマー受入れ口、触媒仕込み配管、を有する完全混合型第一溶融重縮合反応槽;撹拌機、分離塔、ポリマー受入れ口、ポリマー抜き出し口を有するプラグフロー型第二及び第三溶融重縮合反応槽;ポリマーを抜き出し口よりギヤポンプを介してダイプレートからストランド状に取り出し水冷下ストランドカットする粒子化装置(ストランドカッターはリーター・オートマチック社製ペレタイザー(P−USG100))を備えたポリエステル連続製造装置を用いた。
まず、スラリー調製槽にて、得られるポリエステル中のリンの濃度がリン原子として22質量ppmとなるよう正リン酸のエチレングリコール溶液(濃度:リン原子として0.50質量%)を添加したテレフタル酸/エチレングリコール(モル比1:1.5)スラリーを調製した。また、ビス−(ベータヒドロキシエチル)テレフタレート400質量部を第一エステル化反応槽に仕込み窒素雰囲気下で溶融し、温度262℃、圧力96kPaG(以下、Gは大気圧に対する相対圧力であることを示す)に保たれた中へ、前記のスラリー調製槽で調製されたスラリーを135質量部/時間で、ポリエステルとしての平均滞留時間が4.5時間になるように連続的に仕込み、生成する水を分離塔から留去しながらエステル化反応を行いつつ、反応液を連続的に第二エステル化反応槽へ移送した。
【0048】
第二エステル化反応槽では温度260℃、圧力5kPaG下、滞留時間1.5時間で、得られるポリエステルプレポリマー中のアンチモンの濃度がアンチモン原子として183質量ppmとなるよう三酸化二アンチモンのエチレングリコール溶液(濃度:アンチモン原子の濃度として1.8質量%)を連続的に添加しながらエステル化反応を行い、移送配管を通じ完全混合型第一溶融重縮合反応槽へ連続的に移送した。第一溶融重縮合反応槽では重縮合反応槽の圧力2.0kPaA(以下、Aは絶対圧力であることを示す)、温度278℃、滞留時間1.0時間にて反応を行い、得られたポリエステルプレポリマーを、第二溶融重縮合反応槽、第三溶融重縮合反応槽を通過させ、連続的にポリマー抜き出し口よりギヤポンプを介してダイプレートからストランド状に取り出し水流下ストランドカットしてポリエステルプレポリマーAの粒子(平均粒径1.2mm)4000質量部を得た。
得られたポリエステルプレポリマーAの固有粘度は0.247dL/g、末端カルボキシル基濃度は55当量/トンであった。
【0049】
(ポリエステルプレポリマーの製造例2)
<ポリエステルプレポリマーBの製造>
ポリエステルプレポリマーAの製造に用いたと同じポリエステル連続製造装置を用いてポリエステルプレポリマーBの製造を行った。
まず、スラリー調製槽にて、得られるポリエステルプレポリマー中のチタンの濃度がチタン原子として8質量ppmとなるようにテトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液(濃度:チタン原子として0.075質量%)を添加したテレフタル酸/エチレングリコール(モル比1:1.5)スラリーを調製した。また、ビス−(ベータヒドロキシエチル)テレフタレート400質量部を第一エステル化反応槽に仕込み窒素雰囲気下で溶融し、温度262℃、圧力96kPaGに保たれた中へ、前記のスラリー調製槽で調製されたスラリーを135質量部/時間で、ポリエステルとしての平均滞留時間が4.5時間になるように連続的に仕込み、分離塔から生成する水を留去しながらエステル化反応を行いつつ、反応液を連続的に第二エステル化反応槽へ移送した。
【0050】
第二エステル化反応槽では温度260℃、圧力5kPaG下、滞留時間1.5時間で反応を行い、移送配管を通じ完全混合型第一溶融重縮合反応槽へ連続的に移送した。
【0051】
第一溶融重縮合反応槽では酢酸マグネシウム4水塩のエチレングリコール溶液(濃度:マグネシウム原子として0.040質量%))を得られるポリエステルプレポリマー中のマグネシウム濃度がマグネシウム金属原子として8質量ppmとなるように、またエチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液(濃度:リン原子として0.030質量%)を得られるポリエステル中のリン濃度がリン原子として8質量ppmとなるように反応液相に連続的に添加しつつ、重縮合反応槽の圧力2.5kPaA、温度273℃、滞留時間1.0時間にて反応を行い、反応物を連続的に第二溶融重縮合反応槽へ移送した。第二溶融重縮合反応槽では圧力2.0kPaA、温度275℃、滞留時間1.0時間にて溶融重縮合反応を行い、反応物を、移送配管を通じ第三溶融重縮合反応槽へ連続的に移送した。第三溶融重縮合反応槽では圧力2.0kPaA、温度275℃、滞留時間1.2時間
にて溶融重縮合反応を行った。得られたポリエステルプレポリマーを連続的に抜き出し口よりギヤポンプを介してダイプレートからストランド状に取り出し、水流下ストランドカットしてポリエステルプレポリマーBの粒子(平均粒径1.2mm)4000質量部を得た。
得られたポリエステルプレポリマーBの固有粘度は0.373dL/g、末端カルボキシル基濃度は31当量/トンであった。
【0052】
(実施例1)
上記ポリエステルプレポリマーの製造例1で得たポリエステルプレポリマーA粒子30gを底面が130mm×170mmの角形で、深さが30mmのステンレス製バットに広げて置き、内部のガス温度が180℃のイナートオーブン(タバイエスペック社製IPHH−201M型)に入れ、イナートオーブンの内部に流通させる窒素の流量を50NL/分、温度を180℃の窒素流通下として、180℃で1時間の結晶化処理を行った。ここで、NLとは0℃1気圧における体積(L)のことである。
結晶化処理後の試料ポリエステルプレポリマーAの固有粘度は0.250dL/gであった。これを図1に示すガラス製熱処理装置で熱処理を行った。図1に示す熱処理装置において、試料は、試料充填部の内径が45mmのガラス製熱処理管(1)に充填されている。熱処理管(1)には、流量計(2)、窒素導入管(3)、窒素予熱管(4)を経由して、オイルバス(5)に充填されたオイルにより加熱された窒素が導入される。導入された窒素は、熱処理管(1)下部にある分散板(6)により分散され、熱処理管(1)内部で略均一な線速度を有する上昇流となって、試料層(7)を通過する。試料層(7)を通過した窒素は、熱処理管(1)上部にあるフィルター(8)を経由して、ガスパージ口(9)から熱処理管(1)の外部に排出される。熱処理管(1)は枝管(10)を有しており、その上部にある開口部(通常はガラス栓にて閉止してある)から試料の投入やサンプルの採取が可能である。また、熱処理管(1)内部の試料の温度は、熱電対(11)を備えた温度計(12)で測定できる。本実施例の範囲の温度、空塔線速度においては、熱処理管(1)の内部温度は、オイルバス中のオイル温度よりも2℃低い温度となるため、目標とする固相重縮合温度に対して、オイルバスの温度は2℃高い温度に調節した。
【0053】
熱処理管(1)に、枝管(10)の開口部より結晶化処理後のポリエステルプレポリマーA粒子30gを仕込み、窒素を流通して内部を窒素置換した。その後熱処理管(1)内の窒素の空塔線速度(ここで「空塔線速度」とは、内径45mm部分の空塔線速度を意味する(以下同様))が200℃で0.30m/秒となるように窒素の流量を流量計(2)で設定し、202℃に調節された第一のオイルバス(5)に熱処理装置を浸漬した。この時点を200℃での第1段固相重縮合の開始点とする。4時間後に枝管(10)の開口部より、固有粘度測定用サンプルを採取した。サンプル採取後、窒素の空塔線速度が235℃で1.0m/秒となるように窒素の流量を変更し、237℃に調節された第二のオイルバス(5)に熱処理装置を移した。この時点を235℃での昇温工程の開始点とする。10分後に枝管(10)の開口部より、固有粘度測定用サンプルを採取した。サンプル採取後、窒素の空塔線速度が230℃で0.30m/秒となるように窒素の流量を変更し、232℃に調節されたオイルバス(5)に熱処理装置を移した。この時点を230℃での第2段固相重縮合開始点とした。第2段固相重縮合開始点から12時間、24時間、36時間の時点で固有粘度測定用サンプルを採取し固有粘度をそれぞれ測定した。熱処理条件と測定結果を表1に示す。表中、例えば、固有粘度(IV)が0.747dL/gに到達するまでの時間(IV=0.747到達時間)は、第2段固相重縮合工程で、IV=0.747の直近のデータを直交座標にて直線で結び、IV=0.747となる熱処理時間を第2段固相重縮合工程時間とし、これに第1段固相重縮合工程時間及び昇温工程時間を加算することで求めた。なお、結晶化工程時間は含めない。
【0054】
(実施例2)
実施例1において、第一のオイルバス温度を212℃にすることで第1段固相重縮合温度を210℃とし、その固相重縮合時間を2時間に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例3)
実施例2において第1段固相重縮合時間を4時間に変えた以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0056】
(比較例1)
実施例2において試料投入後、第1段固相重縮合操作をすべて省き、昇温工程及び第2段固相重縮合を実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0057】
(比較例2)
実施例2において第一のオイルバス温度を222℃にすることで第1段固相重縮合温度を220℃変えた以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0058】
(比較例3)
実施例2において第1段固相重縮合の後、引き続き第一のオイルバス(5)に浸漬した状態で、窒素の空塔線速度が220℃で1.0m/秒となるように窒素の流量を変更し、オイルバス(5)のオイルの温度を212℃から232℃まで120分掛けて連続的に昇温し、120分後に枝管(10)の開口部より、固有粘度測定用サンプルを採取し、引き続き第一のオイルバス(5)に浸漬した状態で、窒素の空塔線速度が230℃で0.30m/秒となるように窒素の流量を変更し、この時点を230℃での第2段固相重縮合開始点とした以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
(実施例4)
実施例2においてポリエステルプレポリマーAをポリエステルプレポリマーBに置き替え、第2段固相重縮合工程におけるサンプル採取時間を8時間、16時間、32時間の時点に変更した以外は実施例2と同様に行った。結晶化処理後ポリエステルプレポリマーBの固有粘度IVは0.380dL/gであった。結果を表2に示す。
【0061】
(実施例5)
実施例4において第1段固相重縮合後、235℃昇温工程を省き、ただちに230℃の第2段固相重縮合に移した以外は実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。
【0062】
(実施例6)
実施例4において第1段固相重縮合の後、引き続き第一のオイルバス(5)に浸漬した状態で、窒素の空塔線速度が220℃で1.0m/秒となるように窒素の流量を変更し、オイルバス(5)のオイルの温度を212℃から232℃まで20分掛けて連続的に昇温し、20分後に枝管(10)の開口部より、固有粘度測定用サンプルを採取し、引き続き第一のオイルバス(5)に浸漬した状態で、窒素の空塔線速度が230℃で0.30m/秒となるように窒素の流量を変更し、この時点を230℃での第2段固相重縮合開始とした以外は実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。
【0063】
(比較例4)
実施例4において試料投入後、第1段固相重縮合及び235℃昇温工程を省き、ただちに230℃の第2段固相重縮合に移した以外は実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
前記何れの実施例、比較例においても、本熱処理後の試料は熱処理管(1)から容易に取り出すことが可能で、試料同士の融着も見られなかった。
比較例1では、固相重縮合工程が高温の第2段固相重縮合工程だけであり固相重縮合速度が小さい。比較例2では、第1段固相重縮合工程と第2段固相重縮合工程における固相重縮合温度の差が15℃未満なので固相重縮合速度が小さい。比較例3では、第1段固相重縮合工程終了時と第2段固相重縮合工程開始時の固有粘度差が0.10dL/g以上となり、固相重縮合速度が小さい。比較例4では、高温の第2段固相重縮合工程だけである
ので固相重縮合速度が小さい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明により今後さらに市場の伸びが期待される飲料ボトル用などに適したポリエステルを効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例に用いる熱処理装置及びその付帯機器である。
【符号の説明】
【0068】
1: 熱処理管
2: 流量計
3: 窒素導入管
4: 窒素予熱管
5: オイルバス
6: 分散板
7: 試料層
8: フィルター
9: ガスパージ口
10: 枝管
11: 熱電対
12: 温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のポリエステルプレポリマーを固体状態で熱処理して、該ポリエステルプレポリマーの固有粘度を0.50dL/g以上増加させて、ポリエステルを得る熱処理工程を含むポリエステルを製造する方法であって、
前記熱処理工程がn段階に分割されており、かつ、以下の条件を満足することを特徴とする、ポリエステルの製造方法。
1)前記熱処理工程の第j段の温度(Tj)が190℃以上230℃以下であり、かつ第j段での固有粘度上昇値が0.03dL/g以上である。
2)前記熱処理工程の第j段の温度(Tj(℃))及び第k段の温度(Tk(℃))が下記(式1)を満たす第j段、第k段の組み合わせが、少なくとも1組存在する。
(式1)Tj+15≦Tk≦245
3)上記第j段、第k段の組み合わせにおいて、第j段終了時の固有粘度と第k段開始時の固有粘度の差が0.10dL/g以下である。
4)nは2以上の整数であり、かつ、j及びkは1≦j<k≦nを満たす整数である。
【請求項2】
前記第j段に先立ってポリエステルの結晶化を伴う第c段が存在し、その温度(Tc(℃))が下記(式2)を満たす請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
(式2)100≦Tc≦200
【請求項3】
前記第c段が流動床で実施される請求項2に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項4】
前記第j段と第k段の間に第h段が存在し、その温度(Th(℃))が下記(式3)を満たす請求項1乃至3の何れか1項に記載のポリエステルの製造方法。
(式3)Tk≦Th≦250
【請求項5】
前記第h段が流動床で実施される請求項4に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記熱処理工程が連続法である請求項1乃至5の何れか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項7】
前記第j段及び/又は第k段が連続式移動床で実施される請求項1乃至6の何れか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項8】
前記ポリエステルプレポリマーの平均粒径が0.5mm以上3.0mm以下である請求項1乃至7の何れか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項9】
前記ポリエステルプレポリマーの末端カルボキシル基濃度が100当量/トン以下である請求項1乃至8の何れか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項10】
前記ポリエステルがチタン化合物を含有する請求項1乃至9の何れか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項11】
固有粘度が0.18dL/g以上0.40dL/g以下のポリエステルプレポリマーを固体状態で熱処理して、該ポリエステルプレポリマーの固有粘度を0.50dL/g以上増加させて、ポリエステルを得る熱処理工程を含むポリエステルを製造する方法であって、
前記熱処理工程が、温度T1(℃)で前記ポリエステルプレポリマーを結晶化する第
1段、結晶化されたポリエステルプレポリマーを温度T2(℃)で固相重縮合する第2段、第2段で得られた産物を温度T3(℃)に昇温する第3段、第3段で得られた産物を温度T4(℃)で固相重縮合する第4段を、この順に全て含み、
前記第2段での固有粘度上昇値が0.03dL/g以上であり、
前記第2段終了時の固有粘度と第4段開始時の固有粘度の差が0.10dL/g以下であり、
前記T1、T2、T3、T4(℃)が下記(式4)〜(式7)を満足することを特徴とする、ポリエステルの製造方法。
(式4)100≦T1≦200
(式5)190≦T2≦230
(式6)T4≦T3≦250
(式7)T2+15≦T4≦245

【図1】
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【公開番号】特開2007−63458(P2007−63458A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253286(P2005−253286)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】