説明

ポリエステルの製造方法

【課題】複雑な装置を必要とせず、単純バッチ方式に比べてエステル化反応時間を短縮してポリエステルを製造することのできる方法を提供する。
【解決手段】酸成分とアルコール成分とをエステル化反応釜にエステル化反応物が存在している状態で投入して、エステル化反応を行うポリエステルの製造方法において、アルコール成分の少なくとも一部として芳香族ジオールを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリエステルの製造方法として、原料調整釜にて酸成分とアルコール成分をスラリー化し、該スラリー化物をエステル化反応釜に投入してエステル化反応を行い、次いで該エステル化反応物を重縮合反応釜に移液して重縮合反応を行い、該重縮合反応物を吐出する単純バッチ方法が知られている。
【0003】
この単純バッチ方式では、エステル化反応の際、原料となる酸成分およびアルコール成分を反応釜に移液後内容物を反応温度まで昇温するのに多くの時間を要するため、これに続く重縮合反応よりも相当に長くなるため、エステル化反応がポリエステル製造の大きな律速となるといった問題点がある。
【0004】
この問題を解決するための方法として、種々のエステル化反応プロセスが提案されている。具体的には、リアクター中で所定の滞在時間を介して原料の供給とエステル化反応物の取出しを連続的に行う連続エステル化方式が知られている(特許文献1)。しかしながら、連続エステル化方式では、原料の供給とエステル化反応物の取出しを連続的に行うため、次工程である重縮合反応工程の前にエステル化反応物を貯蔵するためのバッファタンクが必要となり、設備が複雑になるといった問題の他、このバッファタンクを加温し内容物の温度を流動可能な状態に保つために必要となるエネルギーコストがかかるといった問題があった。
【0005】
また、少量のエステル化反応物にテレフタル酸とエチレングリコールを連続的に供給しながらバッチ的にエステル化を行うセミバッチ方式が知られている(特許文献1)。しかし、従来のセミバッチ方式は、副生するジエチレングリコールの生成を抑制してポリエチレンテレフタレートの品質を向上させることが目的である。また、高温のエステル化反応釜に低沸点のエチレングリコールを移液するため、余剰のエチレングリコールが精留塔を経由して系外に留出してしまうという問題がある。従って、仕込み組成を維持するためにはエステル化反応温度を高く設定できず、単純バッチ方式に比べて反応時間短縮の効果は得られ難い。更に、反応性の高い脂肪族アルコールを用いているため、セミバッチ方式によるエステル化反応時間短縮の効果は得られ難い。
【0006】
【特許文献1】特開昭53−91996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複雑な装置を必要とせず、単純バッチ方式に比べてエステル化反応時間を短縮してポリエステルを製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の1〜5からなる。
1.酸成分とアルコール成分とをエステル化反応釜にエステル化反応物が存在している状態で投入して、エステル化反応を行うポリエステルの製造方法において、アルコール成分の少なくとも一部として芳香族ジオールを用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。
2.アルコール成分として炭素数が2〜5の脂肪族アルコールを酸成分100モル部に対して80モル部以下で使用する、上記1に記載のポリエステルの製造方法。
3.酸成分とアルコール成分をエステル化反応釜に投入する工程から、得られるエステル化反応物をエステル化反応釜から取出す工程までの、エステル化反応釜の内温が150〜300℃の範囲である、上記1または2に記載のポリエステルの製造方法。
4.触媒としてチタン化合物を用いる上記1〜3のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
5.ポリエステルがトナー用バインダー樹脂である、上記1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエステルの製造方法を用いることにより、芳香族アルコール成分を原料として用いるポリエステルの製造方法において、単純バッチ方式に比べてエステル化反応時間を短縮してポリエステルを製造することのできる方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい態様について説明するが、本発明はこれらの態様のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な変更が可能であることを理解されたい。
【0011】
本発明の方法においては、反応性が低位である芳香族ジオールをポリエステル製造の原料に用いることでエステル化反応時間を著しく短縮することができる。ここで、原料の反応釜への移液方法としては、酸成分、アルコール成分を、それぞれ別々に投入しても、酸成分とアルコール成分を混合して投入してもよい。また、エステル化反応物とは酸成分とアルコール成分とが反応して生成した化合物であり、本発明の製造方法ではこのエステル化反応物がエステル化反応釜中に存在している状態でエステル化反応が行われる。また、酸成分とアルコール成分の投入手順としては、酸成分とアルコール成分とを、それぞれ別々にまたは一緒に、エステル化反応釜の内温が一定温度以上に保持されるようにしながら、連続的または間欠的に投入することができる。
【0012】
本発明の方法により製造されるポリエステルは、2価以上の酸成分と2価以上のアルコール成分とを基本構成成分とするものである。
【0013】
2価以上の酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フタル酸、セバシン酸、イソデシル琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物等を用いることができる。これらのジカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、モノメチルエステル、モノエチルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステル等が挙げられる。また、3価以上の多価カルボン酸を使用することもでき、かかる多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸およびそれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物を挙げることができる。
【0014】
2価以上のアルコール成分としては、特に制限されず、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、3価以上の多価アルコール等が使用できる。芳香族ジオールとしては、例えば、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のエチレンキサイドを付加したビスフェノールA誘導体、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のプロピレンオキサイドを付加したビスフェノールA誘導体等が挙げられ、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等が挙げられ、ポリエーテルグリコールとしてジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0015】
また、3価以上の多価アルコールを使用することもでき、かかる多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
これらの酸成分およびアルコール成分は、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明で用いられる芳香族ジオールは、全酸成分100モル部に対して、20モル部以上の範囲であるのが好ましい。本発明の方法では、エステル化反応は高温での反応となるが、沸点の高い芳香族ジオールが20モル部以上の場合に、脂肪族アルコール成分が精留塔を経由して系外に留出し難くなるので、エステル化反応温度を高く設定することが可能となり、エステル化反応時間が短縮される。この芳香族ジオールは、全酸成分100モル部に対して、30モル部以上の範囲であることがより好ましく、45モル部以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、110モル部以下であることが好ましく、100モル部以下であることがより好ましく、90モル部以下であることが特に好ましい。
【0017】
本発明で用いられるエチレングリコールなどの炭素数2〜5の脂肪族アルコールは、全酸成分100モル部に対して、80モル部以下の範囲であることが好ましい。本発明の方法では、エステル化反応は高温での反応となるが、沸点の低い炭素数2〜5の脂肪族アルコールが80モル部以下の場合に、脂肪族アルコールが精留塔を経由して系外に留出し難くなるので、エステル化反応温度を高く設定することが可能となり、エステル化反応時間が短縮される。この炭素数2〜5の脂肪族アルコールは、全酸成分100モル部に対して、70モル部以下の範囲であることがより好ましく、60モル部以下であることが特に好ましい。また、下限値としては、20モル部以上であることが好ましく、30モル部以上であることがより好ましく、45モル部以上であることが特に好ましい。
【0018】
また、エステル化反応に用いる触媒としては、チタン化合物、錫化合物、亜鉛化合物、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の公知の触媒を用いることができる。このエステル化に用いる触媒としては、反応性及び環境負荷の観点からチタン化合物が好ましく、チタンブトキシドなどのチタンアルコキシドが特に好ましい。
【0019】
次に、本発明のポリエステルの製造方法の具体的手順について述べる。
本発明の方法では、下記(I)および(II)の工程を1サイクルとして、複数サイクルにより酸成分とアルコール成分とを反応させて同一品種のポリエステルを連続的に製造することができる。
(I)エステル化反応釜内に前バッチのエステル化反応物が存在している状態で、酸成分とアルコール成分とを、それぞれ別々にまたは一緒に、全量投入してエステル化反応またはエステル交換反応を行う。次いで、常法に従って該反応で生じた水またはアルコールを除去し、留出水またはアルコールがなくなった時点で反応を終了させ、エステル化反応物を得る工程。
(II)エステル化反応物を、一定量残して、取出す工程。
【0020】
前記工程(I)において、エステル化反応物をエステル化反応釜に存在させる量としては、1サイクル当たりの製造量に対して20質量%以上であることが好ましい。20質量%以上である場合に、エステル化反応の温度を高温で保持出来る傾向にあり、エステル化反応速度が速くなり、生産性が向上する。エステル化反応釜内に残すエステル化反応物の量としては、25質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることが特に好ましい。
【0021】
また、エステル化反応またはエステル交換反応の温度が150〜300℃に保持されるように時間をかけて原料を移液することが好ましい。エステル化反応温度が150℃以上である場合に反応率を十分上げることができる傾向にあり、300℃以下である場合には分解反応を抑制することができる傾向にある。この反応温度の下限値は、180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、220℃以上が特に好ましく、240℃以上が最も好ましい。また、上限値は、290℃以下がより好ましく、280℃以下が特に好ましい。
【0022】
また、前記工程(II)によってポリエステルを得てもよく、引き続き重縮合反応を行ってポリエステルを得てもよい。
なお、重縮合反応を実施する場合には、150mmHg(20kPa)以下の減圧下でアルコール成分を留出除去させながら反応を行う。重縮合反応の温度は、150〜300℃であることが好ましい。重縮合反応の温度が150℃以上である場合に反応率を十分上げることができる傾向にあり、300℃以下である場合に分解反応を抑制することができる傾向にある。この反応温度の下限値は、180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、220℃以上が特に好ましい。また、上限値は、290℃以下がより好ましく、280℃以下がさらに好ましく、260℃以下が特に好ましい。
【0023】
また、真空度は、100mmHg(13.3kPa)以下がより好ましく、50mmHg(6.7kPa)以下が特に好ましい。また、重合釜内を減圧する方法としては、エゼクターを使用して減圧する方法や真空ポンプを使用して減圧する方法等が挙げられるが、工業的な設備の簡素化、減圧操作の容易さの観点から、エゼクターを使用して減圧する方法が好ましい。この減圧方法を用いると、作業性が良く、また重合釜から反応物を吐出させる際に重合釜内の樹脂の増粘や樹脂物性の吐出経時に対する変化をより効果的に抑制することができる。
また、重合釜内の攪拌翼の形状としては、十字型、パドル型、ディスクタービン型、ダブルヘリカル型、マックスブレンド、アンカー型、ファウドラー型、フルゾーン型、リボン型等があるが、釜内の樹脂温度の均一化や重縮合反応による樹脂粘度の上昇等から、マックスブレンドが好ましい。
【0024】
また、架橋構造を有するポリエステルを製造する場合には、高真空下でアルコール成分を留出除去させながら重縮合を進めてゆく過程で、ゲル化反応が生じ反応系内の粘度が急激に上昇するので、この粘度上昇に対応しながら、反応系内の真空度を調整してゲル化反応を制御するのが好ましい。
【0025】
重縮合反応の終了後、反応系内の圧力を常圧に戻し、窒素により加圧して重合釜より得られた重縮合反応物を吐出させる。また、重縮合反応の反応物の吐出先としては、冷却ベルト、ピンクラッシャーを有するベルトクーラーやドラムクーラー、自然放冷をさせるバット出し等があるが、工業的作業性からはベルトクーラーに吐出させるのが好ましい。ベルトクーラーを用いると、作業性が良く、樹脂が冷却されるため、樹脂温度の均一化をはかることができる。さらに、吐出中の樹脂温度は、軟化温度よりも30℃以上高いほうが好ましい。この温度を保つことにより、吐出の際に閉塞なく吐出させることができる。
【0026】
また、本発明の製造方法によって得られるポリエステルの用途は、特に限定されないが、トナー用バインダー樹脂であることが好ましい。
トナー用バインダー樹脂は、トナーの結着樹脂として使用されるものである。トナーの結着樹脂としては、本発明で得られるポリエステルを単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができ、またさらに本発明で得られるポリエステル以外の樹脂を併用してもよい。
【0027】
トナーの結着樹脂としてポリエステルと併用するその他の樹脂としては、例えば、公知の非線状ポリエステル樹脂、線状ポリエステル樹脂、環状オレフィン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種以上を選択して使用することができ、これらの樹脂と本発明で得られるポリエステル樹脂とを混合して使用することにより、定着性を向上させることができる傾向にある。
【0028】
本発明で得られるポリエステルとその他の樹脂を混合してバインダー樹脂として用いる場合、本発明で得られるポリエステルの含有量は、樹脂全量中20質量%以上であることが好ましい。この含有量が20質量%以上の場合に目的の効果をより容易に達成できるためであり、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
【0029】
本発明で得られるポリエステルをトナー用バインダー樹脂として使用し、これに荷電制御剤、離型剤、着色剤、流動改質剤、磁性体等を配合することによって、トナーを得ることができる。
【0030】
荷電制御剤としては、特に制限はなく、従来電子写真用に用いられている荷電制御剤を使用することができる。負帯電性の荷電制御剤としては、例えば、オリエント化学社製のボントロンS−31、ボントロンS−32、ボントロンS−34、ボントロンS−36等、保土ヶ谷化学社製のアイゼンスピロンブラックTVH等の含金属アゾ染料;オリエント化学社製のボントロンE−85等のサリチル酸アルキル誘導体の金属錯体;ヘキスト社製のCopy Charge NX VP434等の四級アンモニウム塩;銅フタロシアニン染料等が挙げられる。また、正帯電性の荷電制御剤としては、例えば、四国化成社製のPLZ−2001、PLZ−8001等のイミダゾール誘導体;ヘキスト社製のCopy Charge BLUE PR等のトリフェニルメタン誘導体;オリエント化学社製のボントロンP−51、ヘキスト社製のCopy Charge PXVP435、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の四級アンモニウム塩;オリエント化学社製のAFP−B等のポリアミン樹脂等が挙げられる。本発明では、以上の荷電制御剤の1種または2種以上を使用することができる。また、主荷電制御剤と逆極性の荷電制御剤との併用も可能である。
【0031】
荷電制御剤の含有量は、特に制限されないが、トナー全量中0.5〜5質量%の範囲が好ましい。荷電制御剤の含有量が、0.5質量%以上の場合にトナーの帯電量およびゲル化が充分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下の場合に荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。この含有量の下限値は、1質量%以上であることがより好ましい。
【0032】
離型剤としては、特に制限されず、例えば、ポリオレフィン系ワックス、シリコン系ワックス、アミド系ワックス、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、高級アルコール、エステル系ワックス等が挙げられる。
離型剤の含有量は、特に制限されないが、トナー全量中0.3〜15質量%の範囲が好ましい。離型剤の含有量が、0.3質量%以上の場合に離型性が良好となる傾向にあり、15質量%以下の場合にトナーの保存性並びに定着性が良好となる傾向にある。この含有量の下限値は0.5質量%以上であることがより好ましく、また上限値は10質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
着色剤としては、一般に使用されているカーボンブラック等や、有彩色の顔料および染料が使用でき、特に限定はない。カラートナーの場合には、例えば、C.I.ソルベントイエロー21、C.I.ソルベントイエロー77、C.I.ソルベントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド128、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド13、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド48・2、C.I.ディスパースレッド11、C.I.ソルベントブルー25、C.I.ソルベントブルー94、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー15・3等が挙げられる。
着色剤の含有量は、特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、熱特性の点から、トナー全量中2〜10質量%の範囲が好ましい。この含有量の下限値は3質量%以上であることがより好ましく、また上限値は8質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
流動性向上剤としては、特に制限されないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウムチタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ藻土、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
流動性向上剤の含有量は、特に制限されないが、トナー全量中0.5〜5質量%の範囲が好ましい。流動性向上剤の含有量が、0.5質量%以上の場合にフィルミングが抑制される傾向にあり、5質量%以下の場合に定着性が良好となる傾向にある。この含有量の下限値は1質量%以上であることがより好ましく、また上限値は3質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
上記のトナーは、磁性1成分現像剤、非磁性1成分現像剤、2成分現像剤のいずれの現像剤としても使用できる。
このトナーを磁性1成分現像剤として用いる場合にはトナー中に磁性体を含有させる。磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト等をはじめとする、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金;マンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含むいわゆるホイスラー合金等のように、化合物や強磁性元素を含まないが適当に熱処理することによって強磁性を表すようになる合金;二酸化クロム等が挙げられる。
【0036】
これらの磁性体の含有量は、特に制限されないが、トナー全量中30〜70質量%の範囲であることが好ましい。磁性体の含有量が30質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、70質量%以下の場合にトナーの定着性が良好となる傾向にある。この磁性体の含有量の下限値は40質量%以上であることがより好ましく、上限値は60質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
また、上記のトナーを2成分現像剤として用いる場合にはキャリアと併用して用いる。キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉などの磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリア等の公知のものを使用することができる。樹脂コーティングキャリアのための被覆樹脂としては、一般に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、それらの樹脂の混合物などを使用することができる。併用するキャリアの量としては、特に制限されないが、90質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何らの限定もされるものではない。なお、実施例および比較例における性能評価は以下の方法を用いて行った。
【0039】
樹脂評価方法
(1)軟化温度T4
島津製作所社製フローテスターCFT−500を用いて、1mmφ×10mmのノズル、荷重294N、昇温速度3℃/minの等速昇温下で、サンプル1.0g中の4mmが流出したときの温度を測定した。
(2)ガラス転移温度Tg
島津製作所社製示差走差熱量計DSC−60を用いて、昇温速度5℃/minにおけるチャートのベースラインと吸熱カーブの接線との交点から求めた。
(3)酸価(AV)
ポリエステル樹脂をベンジルアルコールに溶解させ、1/50NのNaOHベンジルアルコール溶液にて滴定し、KOH換算して求めた。
【0040】
実施例1
攪拌翼、釜内温度検出端、温度計、熱交換器、吐出口等を備えた容積0.03m3の原料調整釜に表1に示す仕込み組成にて、モノマー成分を16.5kg仕込んだ(ポリエステルの収量は15kg)。さらに、重合触媒として全酸成分に対して500ppmの三酸化アンチモンを添加した。次いで、原料調整釜中の攪拌翼の回転数を100rpmに保ちスラリーを調製した。その後、攪拌翼、蒸留塔、釜内温度検出端、温度計、窒素ガス導入管、コンデンサー、吐出口、熱交換器等を備えた容積0.05m3のエステル化反応釜にスラリーを一括供給し、攪拌翼の回転数を70rpmに保ち、熱媒ジャケットにより昇温を開始し、反応系内の温度を265℃になるように加熱し、この温度を保持した。エステル化反応は、水が留出しなくなった時点で終了させ、15kgのエステル化反応物を得た。その後、エステル化反応物を7.5kg重縮合反応釜に供給した。続いて、上記と同様の方法でスラリーを調製し、7.5kgのエステル化反応物が残ったエステル化反応釜に、釜内温度を240℃以上に保持するように、140分かけてスラリーを送液ポンプを用いて供給し、エステル化反応を行った。エステル化反応は、スラリーを全量移液し、水が留出しなくなった時点で終了させた。また、2回目のエステル化反応時間(移液開始〜水が留出しなくなった時点)を表1に示す。
【0041】
実施例2、3および4
仕込み組成、重合触媒およびエステル化反応釜内残存量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。また、2回目のエステル化反応時間を表1に示す。
【0042】
比較例1、2および4(単純バッチ方式)
表1に示す仕込み組成にて、モノマーおよび全酸成分に対して500ppmの重合触媒(三酸化アンチモンまたはチタンブトキシド)を実施例1記載の原料調整釜に仕込みスラリーを調製した。次いで、スラリーを実施例1記載のエステル化反応釜に一括供給し、攪拌翼の回転数を70rpmに保ち、熱媒ジャケットにより昇温を開始し、反応系内の温度を265℃になるように加熱し、この温度を保持した。エステル化反応は、水が留出しなくなった時点で終了させた。また、エステル化反応時間(昇温開始〜水が留出しなくなった時点)を表1に示す。
【0043】
比較例3
仕込み組成およびエステル化反応釜内残存量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で反応を行った。しかし、スラリーを移液している途中でエチレングリコールが精留塔を経由して系外へ留出してしまったため反応を中止した。
【0044】
実施例5
実施例1の1回目のエステル化反応で得られたエステル化反応物7.5kgを攪拌翼、釜内温度検出端、温度計、窒素ガス導入管、コンデンサー、真空装置、真空計、トルク計、吐出口、熱交換器等を備えた容積0.05m3の重縮合釜に移液した後、反応系内の温度を245℃に保ち、反応容器内の真空度を約40分かけて1.0mmHg以下となるよう減圧し、反応系からジオール成分を留出させ、樹脂が所望の軟化温度となるまで縮合反応を行った。反応とともに、系内の粘度が徐々に上昇しはじめ、所望の軟化温度に相当する粘度となった時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止した後、反応物を窒素により加圧して約2時間かけて取り出し、ポリエステルを得た。得られたポリエステルの軟化温度は148℃、ガラス転移温度66℃、酸価16mgKOH/gであった。
【0045】
得られたポリエステル91質量部、キナクリドン顔料(クラリアント社製E02)を5質量部、カルナバワックス(東洋ペトロライト社製、カルナバワックス1号)3質量部、負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製E−81)1質量部をヘンシェルミキサーで30分間混合し、得られた混合物を二軸押出機(池貝製作所社製、PCM29)で溶融混練した。溶融混練は内温を樹脂の軟化温度に設定して行った。混練後、冷却してトナーを得、ジェットミル微粉砕機で微粉砕し、分級機でトナーの粒径を整え、粒径を7μmとした。得られた微粉末100質量部に対して、0.25質量部のシリカ(日本アエロジル社製、R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合してトナー表面へシリカを付着させ、トナーを得た。
【0046】
得られたトナーを用いて、シリコーンオイルが塗布されていない定着ローラーを有し、ローラー速度100mm/秒に設定した温度変更可能であるプリンター(カシオ電子工業株式会社製N4−612)を用いて印刷を行ったが、オフセット現象は発生しなかった。
【0047】
上記の実施例および比較例の結果から、以下のことが言える。
実施例1〜4のように酸成分とアルコール成分とをエステル化反応釜にエステル化反応物が存在している状態で投入して、エステル化反応を行うポリエステルの製造方法において、アルコール成分の少なくとも一部として芳香族ジオールを用いることにより、単純バッチ方式よりも短時間で反応を完結することが可能である。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、エステル化反応時間を短縮してポリエステルを製造する方法を提供することができるので、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸成分とアルコール成分とをエステル化反応釜にエステル化反応物が存在している状態で投入して、エステル化反応を行うポリエステルの製造方法において、アルコール成分の少なくとも一部として芳香族ジオールを用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項2】
アルコール成分として炭素数が2〜5の脂肪族アルコールを酸成分100モル部に対して80モル部以下で用いる、請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】
酸成分とアルコール成分をエステル化反応釜に投入する工程から、得られるエステル化反応物をエステル化反応釜から取出す工程までの、エステル化反応釜の内温が150〜300℃の範囲である、請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項4】
触媒としてチタン化合物を用いる請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】
ポリエステルがトナー用バインダー樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルの製造方法。

【公開番号】特開2009−24154(P2009−24154A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24214(P2008−24214)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】