説明

ポリエステルの製造方法

【課題】1,4―BGの蒸気エゼクターを備えた減圧付加装置を必須とするポリエステルの製造方法において、加熱による1,4−BGからTHFへの生成を抑制し、原単位並びに減圧度の悪化を引き起こすことなく、ポリエステルの重縮合反応を長期間安定に行い、品質良好なポリエステルを得る方法を提供する。
【解決手段】1,4−BGを主成分とするジオール成分とジカルボン酸成分とをエステル化反応及び/又はエステル交換反応、並びに、重縮合反応させてポリエステルを連続的に製造する方法において、(a)重縮合反応を減圧下で行い、(b)その減圧付加装置が1,4―ブタンジオールの蒸気エゼクターを備え、(c)該蒸気エゼクターに用いた1,4-ブタンジオール蒸気を凝縮させた後、ジオール成分として使用し、かつ(d)蒸気エゼ
クター駆動用の蒸気発生装置に供給する1,4−BGのpHが7.0以上11.5以下であるポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの製造方法に関し、詳しくは、加熱された1,4−ブタンジオールを原料としてポリエステルを製造するに際し、副生するテトラヒドロフラン(以下、THFと表すことがある)量を低減し、効率的かつ、安定的に品質良好なポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジカルボン酸成分とジオール成分とを原料として、エステル化反応及び/又はエステル交換反応、並びに、重縮合反応して得られるポリエステルは種々の用途に利用されている。ジオールの主成分として1,4−ブタンジオール(以下1,4−BGと表すことがある)を用いたポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンンサクシネートなどは、エンジニアリングプラスチックや生分解ポリマーとして有用に利用されている。
【0003】
重縮合反応、特に溶融重縮合反応は通常高温、減圧下に行われるが、この減圧付加装置に蒸気エゼクターがあり、蒸気として1,4−BGの蒸気を使用することは知られている(特許文献1)。
しかしながら、我々の検討では1,4−BG蒸気を用いたエゼクターを減圧付加装置として用い、エゼクターに用いた1,4−BG蒸気を凝縮してこれを重縮合反応原料として使用して長期間運転すると、1,4−BGの熱安定性が低下し、テトラヒドロフランを副生することで、1,4−BGの原単位を悪化させたり、減圧度の悪化を引き起こし、得られるポリエステルの品質を悪化させる傾向があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/026938号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、1,4―BGの蒸気エゼクターを備えた減圧付加装置を必須とするポリエステルの製造方法において、加熱による1,4−BGからTHFへの生成を抑制し、原単位並びに減圧度の悪化を引き起こすことなく、ポリエステルの重縮合反応を長期間安定に行い、品質良好なポリエステルを得る方法を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記課題に対し鋭意検討した結果、蒸気発生のために1,4−BGを加熱する際、1,4−BGのpHや窒素化合物量を調整することにより、加熱時の1,4−BGからTHFの生成を抑制し、安定した減圧付加装置の運転方法を見出し本発明に到達した。
即ち本発明の要旨は下記[1]〜[4]に存する。
[1] 1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とジカルボン酸成分とをエステル化反応及び/又はエステル交換反応、並びに、重縮合反応させてポリエステルを連続的に製造する方法において、
(a)重縮合反応を減圧下で行い、
(b)その減圧付加装置が1,4―ブタンジオールの蒸気エゼクターを備え、
(c)該蒸気エゼクターに用いた1,4-ブタンジオール蒸気を凝縮させた後、ジオール
成分として使用し、かつ
(d)蒸気エゼクター駆動用の蒸気発生装置に供給する1,4−ブタンジオールのpHが
7.0以上11.5以下である、
ことを特徴とするポリエステルの製造方法。
[2] 前記蒸気エゼクター駆動用の蒸気発生装置に供給する1,4−ブタンジオール中に、窒素原子として0.1重量ppm以上150重量ppm以下の窒素化合物を含有することを特徴とする[1]に記載の製造方法。
[3] 前記蒸気エゼクター駆動用の蒸気発生装置に供給する1,4−ブタンジオール中
に、窒素化合物を含有し、該窒素化合物がアミン化合物及び/又はアミノアルコール化合物であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記1,4−ブタンジオールがバイオマス資源由来であることを特徴とする[1]乃至[3]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1,4―BGの蒸気エゼクターを備えた減圧付加装置を用いて、1,4−BGをジオールの主成分とするポリエステルを製造するに際して、加熱による1,4−BGからTHFへの生成を抑制し、原単位ならびに減圧度の悪化を引き起こすことなく、ポリエステルの重縮合反応を長期間安定に行い、品質良好なポリエステルを生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明で採用するエステル化反応工程の一例の説明図である。
【図2】本発明で採用する重縮合反応工程の一例の説明図である。
【図3】本発明で採用する減圧付加装置の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ポリエステル原料>
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
本発明におけるポリエステルとは、ジカルボン酸成分とジオール成分がエステル結合した構造を有する高分子であり、ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカ
ルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、
グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができ、機械的物性や用途の広さ、原料の入手容易さ等の観点からは、芳香族ジカルボン酸の中では、テレフタル酸、イソフタル酸、脂肪族ジカルボン酸の中ではコハク酸、アジピン酸が好ましい。
【0010】
これらジカルボン酸成分は、ジカルボン酸として、またはジカルボン酸無水物として、またはジカルボン酸のアルキルエステル、好ましくはジアルキルエステルとして反応に供することができ、ジカルボン酸とジカルボン酸アルキルエステルの混合物としてもよい。ジカルボン酸アルキルエステルのアルキル基に特に制限はないが、アルキル基が長いとエステル交換反応時に生成するアルキルアルコールの沸点の上昇を招き反応液中から揮発せず、結果的に末端停止剤として働き重合を阻害するため、炭素数4以下のアルキル基が好ましく、中でもメチル基が好適である。
【0011】
特に、(1)ジカルボン酸成分の主成分が、テレフタル酸またはそのエステル誘導体であるか、又は(2)コハク酸またはその無水物であるのが好ましい。尚、本明細書において、主成分とは、これを含有する成分(ジカルボン酸成分又はジオール成分)中、モル換
算で最も多量の成分を意味する。
【0012】
本発明において、ジオール成分の主成分は1,4−BGである。1,4−BG以外の成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペ
ンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シ
クロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロールなどの脂環式ジオール
、キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオール、
イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、エリトリタンなどの植物原料由来のジオール等を挙げることができ、又、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−BGなども植物原料由来のものを使用することができる。
【0013】
全ジオール成分中、1,4−BGは、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
本発明においては、さらに、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分(ヒドロキシ基又はカルボキシル基を1ケ有する成分)、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、リンゴ酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトールなどの三官能以上の多官能成分(ヒドロキシ成分及び/又はカルボン酸成分を3ケ以上有する成分)などを共重合成分として用いることができる。
【0014】
中でも、(1)ジカルボン酸単位の50モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上がテレフタル酸単位からなり、ジオール単位の70モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上が1,4−BG単位から成
るポリブチレンテレフタレートや、(2)ジカルボン酸単位の50モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上がコハク酸単位からなり、ジオール単位の70モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上が1,
4−BG単位から成るポリブチレンサクシネートにおいては、生産規模が大きく、本発明の効果が大きい。
【0015】
<ポリエステルの製造>
以下のポリエステルの製造方法の説明ではジカルボン酸としてテレフタル酸、ジオールとして1,4−BGを用いた、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと表すことがある)の製造を一例として説明するが、本発明のポリエステルの製造方法はこれに限定されるものではない。
【0016】
PBTの製造は、重縮合反応における減圧付加方法として特定のpH範囲の1,4−BGを用いた蒸気エゼクターを用いる以外は公知の製造方法に基づくことが出来る。これら公知の方法は大きく分けてテレフタル酸を主原料として用いるいわゆる直接重合法と、テレフタル酸ジアルキルエステルを主原料として用いるエステル交換法がある。前者は初期のエステル化反応で水が生成し、後者は初期のエステル交換反応でアルコールが生成するという違いがあるが、原料の入手安定性、留出物の処理の容易さ、原料原単位の高さ、また本発明による改良効果という観点からは直接重合法が好ましい。
【0017】
直接重合法の一例としては、テレフタル酸と1,4−BGとを、テレフタル酸に対する1,4−BGの仕込みモル比1.0〜2.5、好ましくは1.1〜2.0で、単数又は複数段のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒を使用して、温度が180〜260℃、好ましくは200〜250℃、特に好ましくは210〜245℃、また、圧力が10〜133kPa、好ましくは13〜101kPa、特に好ましくは50〜90kPa、反応時間が0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間で、連続的にエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、複数段の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒を使用して連続的に、温度が210〜260℃、好ましくは220〜250℃、特に好ましくは220〜245℃、圧力が27kPa以下、好ましくは20kPa以下、特に好ましくは13kPa以下、中でも少なくとも1つの重縮合反応槽においては好ましくは2kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜12時間、好ましくは2〜10時間で重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0018】
一方、エステル交換法の一例としては、テレフタル酸ジメチルと1,4−BGとを、単数又は複数段のエステル化反応槽内で、エステル交換反応触媒の存在下に、温度が110〜260℃、好ましくは140〜245℃、特に好ましくは180〜220℃、また、圧力が10〜133kPa、好ましくは13〜101kPa、特に好ましくは60〜90kPa、反応時間が0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間で、連続的にエステル交換反応させ、得られたエステル交換反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、複数段の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に連続的に、温度が210〜260℃、好ましくは220〜250℃、特に好ましくは220〜245℃、圧力が27kPa以下、好ましくは20kPa以下、特に好ましくは13kPa以下の減圧下、中でも少なくとも1つの重縮合反応槽においては好ましくは2kPa以下の減圧下で、攪拌下に2〜12時間好ましくは2〜10時間で重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0019】
重縮合反応により得られたPBTは、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜出ダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状の粒状体とされる。粒状体は引き続き公知の方法で固相重縮合させて固有粘度を上げることもできる。
【0020】
本発明におけるエステル化反応またはエステル交換反応触媒としては、例えば、三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等、のチタン化合物、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸、等のスズ化合物、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウムなどのマグネシウム化合物、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム、等のカルシウム化合物の他、マンガン化合物、亜鉛化合物等を挙げることができるが、中でも触媒活性の点からチタン化合物、スズ化合物が好ましく、特にテトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
【0021】
触媒の使用量は特に限定されないが、多すぎると異物の原因となるばかりでなくPBTの熱滞留時の劣化反応や、ガス発生の原因となる傾向にあり、少なすぎると、主反応速度
が低下し副反応が起こりやすくなる傾向があるため、通常PBT中の金属濃度として、1〜300重量ppm、好ましくは5〜200重量ppm、更に好ましくは5〜150重量ppm、特に好ましくは10〜100重量ppm、中でも20〜90重量ppmが好適であり30〜60重量ppmが最も好ましい。
【0022】
また、重縮合反応触媒としては、エステル化反応またはエステル交換反応時に添加した触媒を引き続いて重縮合反応触媒として用いることとして新たな触媒の添加を行わなくてもよいし、前記触媒を更に添加してもよい。重縮合反応触媒の使用量に特に制限はないが、多すぎると前記と同様の理由から、PBT中の金属濃度として、300重量ppm以下、好ましくは200重量ppm以下、更に好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは50重量ppm以下であり、最も好ましくは30重量ppm以下である。
【0023】
また、触媒として有機チタン化合物を用いる場合には、異物抑制の観点から、最終的にはPBT中のチタン金属濃度は、250重量ppm以下であることが好ましく、更に好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは60重量ppm以下、最も好ましくは50重量ppm以下である。これらの金属濃度は、湿式灰化等の方法でPBT中の金属を回収した後、原子発光、Induced Coupled Plasma(ICP)等を用いて測定することができる。
【0024】
また、前記エステル化反応、エステル交換反応、及び重縮合反応において、前記触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、およびそれらのエステルや金属塩等の燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸リチウム、水酸化カリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物等の反応助剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物等の抗酸化剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸およびそのエステル、シリコーンオイル等の離型剤等を添加使用しても良い。
【0025】
エステル化反応槽またはエステル交換反応槽としては、公知のものが使用でき、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等の型式のいずれであってもよく、又、単数槽としても、同種又は異種の槽を直列させた複数槽としてもよい。中でも攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部および軸受、軸、攪拌翼からなる通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転するタイプも用いることができる。
【0026】
攪拌の形態にも制限はなく、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、反応液の一部を反応槽の外部に配管等で持ち出してラインミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法もとることができる。
攪拌翼の種類も公知のものが選択でき、具体的にはプロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等が挙げられる。
【0027】
重縮合反応槽としては、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽等公知のものを挙げることができる。反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は、反応速度よりも物質移動が分子量増大の支配因子になる傾向があるため、副反応を抑制しつつ主反応を押し
進めるには、可能な限り温度を下げ、表面更新性を上げた方が本発明の目的を達成するためには有利であり、表面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した単数または複数の横型攪拌重合機を選定することが好ましい。
また、本発明の製造方法で得られたPBTは、引き続き公知の方法で固相重縮合させて分子量を上げることもできる。
【0028】
以下、添付図面に基づき、本発明のポリエステルの製造方法をPBTを例として好ましい実施態様を説明する。図1は、本発明で採用するエステル化反応工程の一例の説明図、図2は、本発明で採用する重縮合工程の一例の説明図である。
図1において、原料のテレフタル酸は、通常、原料混合槽(図示せず)で1,4−ブタンジオールと混合され、原料供給ライン(1)からスラリーの形態で反応槽(A)に供給される。また、本発明の触媒は、好ましくは触媒調整槽(図示せず)で1,4−ブタンジオールの溶液とした後、触媒供給ライン(3)から供給される。図1では再循環1,4−ブタンジオールの再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)を連結し、両者を混合した後、反応槽(A)の液相部に供給する態様を示した。
【0029】
反応槽(A)から留出するガスは、留出ライン(5)を経て精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離される。通常、高沸成分の主成分は1,4−ブタンジオールであり、低沸成分の主成分は、水およびTHFである。
精留塔(C)で分離された高沸成分は抜出ライン(6)から抜き出され、ポンプ(D)を経て、一部は再循環ライン(2)から反応槽(A)に循環され、一部は循環ライン(7)から精留塔(C)に戻される。また、余剰分は抜出ライン(8)から外部に抜き出される。一方、精留塔(C)で分離された軽沸成分はガス抜出ライン(9)から抜き出され、コンデンサ(G)で凝縮され、コンデンサ凝縮液ライン(10)を経てタンク(F)に一時溜められる。タンク(F)に集められた軽沸成分の一部は、抜出ライン(11)、ポンプ(E)及び循環ライン(12)を経て精留塔(C)に戻され、残部は、抜出ライン(13)を経て外部に抜き出される。コンデンサ(G)はベントライン(14)を経て排気装置(図示せず)に接続されている。反応槽(A)内で生成したオリゴマーは、抜出ポンプ(B)及びオリゴマーの抜出ライン(4)を経て抜き出される。
【0030】
図1に示す工程においては、再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)が連結されているが、両者は独立していてもよい。また、原料供給ライン(1)は反応槽(A)の液相部に接続されていてもよい。
周期表1族および2族から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物は、調製槽(図示せず)で所定濃度に調製した後、図2におけるライン(L7)を経て、1,4−ブタンジオールの供給ライン(L8)に連結され、1,4−ブタンジオールで更に希釈された後、前述の図1に示すオリゴマーの抜出ライン(4)に供給される。
【0031】
次に、第1重縮合反応槽(a)に供給されたオリゴマーは、減圧下に重縮合されてプレポリマーとなった後、抜出用ギヤポンプ(c)及び抜出ライン(L1)を経て第2重縮合反応槽(d)に供給される。第2重縮合反応槽(d)では、通常、第1重縮合反応槽(a)よりも低い圧力で更に重縮合が進みポリマーとなる。得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプ(e)及び抜出ライン(L3)を経て、第3重縮合槽(k)に供給される。第3重縮合反応槽(k)は、複数個の攪拌翼ブロックで構成され、2軸のセルフクリーニングタイプの攪拌翼を具備した横型の反応槽である。抜出ライン(L3)を通じて第2重縮合反応槽(d)から第3重縮合反応槽(k)に導入されたポリマーは、ここで更に重縮合が進められた後、抜出用ギヤポンプ(m)及び抜出ライン(L5)を経てダイスヘッド(g)から溶融したストランドの形態で抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッター(h)で切断されてペレットとなる。符号(L2)、(L4)、(L6)は、それぞれ、第1重縮合反応槽(a)、第2重縮合反応槽(d)、第3重縮合反応槽(k)のベントライ
ンである。フィルターR、S、T、Uは必ずしも全部設置する必要はなく、異物除去効果と運転安定性を考慮して適宜設置することができる。
【0032】
<エゼクター>
ここで本発明においては、重縮合反応槽への減圧付加は1,4−BGの蒸気エゼクターによってなされる。
1,4−BGを蒸気発生装置に供給して得られる蒸気を、エゼクター駆動用蒸気として用いる。エゼクターはエゼクター下流部に設置されたコンデンサ、及び該コンデンサと大気脚を介して接続されたホットウェルタンクを組み合わせて用いる。この方法を用い、吸引ガス中に含まれる有機成分を、コンデンサの封液である1,4−BG中に凝縮させることが可能で、この凝縮液をそのまま又は蒸留精製して、ポリエステル原料用のジオール成分として使用することができる。
【0033】
本発明において、ポリエステルのジオール成分として、または、エゼクター駆動用蒸気として使用する1,4−BGは、従来から公知である製法で得ることが可能である。例えば、原料ブタジエン、酢酸及び酸素を用いてアセトキシ化反応を行って得られる中間体であるジアセトキシブテンを得て、そのジアセトキシブテンを水添、加水分解することで得る1,4−BG、マレイン酸、コハク酸、無水マレイン酸及び/又はフマル酸を原料として、それらを水素化して得られる1,4−BG、アセチレンを原料してホルムアルデヒド水溶液と接触させて得られるブチンジオールを水素化して得られる粗1,4−BG、プロピレンの酸化を経由して得られる1,4−BG、発酵法により得たコハク酸を水添した1,4−BG、糖などのバイオマスから直接発酵により得た1,4−BGなどである。
【0034】
<バイオマス資源由来1,4−BG>
本発明のPBTの製造に用いるジオール成分は、バイオマス資源由来であるのが環境保護の点から好ましい。
バイオマス資源とは、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれる。具体的には、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。この中でも、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは、木材、稲わら、籾殻、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣が挙げられ、最も好ましくはとうもろこし、さとうきび、キャッサバ、サゴヤシが挙げられる。
【0035】
バイオマス資源は、一般に、窒素元素やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含有する。
これらのバイオマス資源は、その方法は特に限定はされないが、例えば、酸やアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理、物理的処理等の公知の前処理・糖化の工程等を経て炭素源へと誘導される。その工程には、バイオマス資源をチップ化する、削る、擦り潰す等の前処理による微細化工程が含まれることが多く、必要に応じて、更にグラインダーやミルによる粉砕工程も含まれる。こうして微細化されたバイオマス資源は、通常、更に前処理・糖化の工程を経て炭素源へと誘導される。その具体的な方法としては、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸等の強酸による酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理、酸化剤処理等の化学的方法;微粉砕、蒸煮爆砕法、マイクロ波処理、電子線照射等の物理的方法;微生物や酵素処理による加水分解等生物学的処理等が挙げられる。
【0036】
上記のバイオマス資源から誘導される炭素源としては、通常、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース;アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース;ペントサン、サッカロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類;酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の油脂;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられる。このうち、グルコース、フルクトース、キシロース等のヘキソース又はペントースが好ましく、特にグルコースが好ましい。より広義の植物資源由来の炭素源としては、紙の主成分であるセルロースも好ましい。
【0037】
通常、これらの炭素源を用いて、微生物変換による発酵法や加水分解・脱水反応・水和反応・酸化反応等の反応工程を含む化学変換法ならびにこれらの発酵法と化学変換法の組み合わせによりジオールが合成される。これらの中でも、微生物変換による発酵法が好ましい。
本発明のPBTを製造するのに用いるジオールは、グルコース等の炭素源から発酵法により直接ジオールを製造してもよいし、発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル等を還元触媒により水添してジオール化合物に変換しても良いし、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造する等してもよい。
【0038】
炭素源から発酵法により直接ジオールを製造する方法は、例えば、特表2010−521182号公報に記載の方法で行ってもよい。コハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル等を還元触媒により水添してジオール化合物に変換する方法は、例えば、特開2008−101143号公報に記載の方法で行ってもよい。
コハク酸を水添する触媒の例としては、例えば、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Cu、Co及びその化合物等が挙げられる。具体的には、Pd/Ag/Re、Ru/Ni/Co/ZnO、Cu/Zn酸化物、Cu/Zn/Cr酸化物、Ru/Re、Re/C、Ru/Sn、Ru/Pt/Sn、Pt/Re/アルカリ、Pt/Re、Pd/Co/Re、Cu/Si、Cu/Cr/Mn、ReO/CuO/ZnO、CuO/CrO、Pd/Re、Ni/Co、Pd/CuO/CrO、リン酸Ru、Ni/Co、Co/Ru/Mn、Cu/Pd/KOH、Cu/Cr/Zn等が挙げられる。この中でも、Ru/Sn又はRu/Pt/Snが触媒活性の点で好ましい。
【0039】
また、更に、バイオマス資源から公知の有機化学触媒反応との組み合わせにより1,4−BGを製造する方法も用いられる。例えば、バイオマス資源としてペントースを利用する場合には公知の脱水反応、触媒反応の組み合わせで容易にブタンジオール等のジオールを製造できる。
【0040】
本発明において蒸気発生器に供給する1,4−BGのpHは7.0以上11.5以下であり、下限は好ましくは7.5、より好ましくは8.0である。上限は好ましくは11.0、より好ましくは10.5である。pHが下限未満であると凝縮液中のTHF量の増加が多くなりエゼクターの減圧付加能力が低下する傾向にある。上限超過であるとこの凝縮液をジオール成分として使用したポリエステルの色調が悪化する傾向にある。pHが本願範囲であることにより長期間運転しても減圧付加能力の低下が少なく安定に運転でき、品質も良好なポリエステルが得られる。
【0041】
蒸気発生器に供給する1,4−BGのpHの調節はアミン化合物、アミノアルコールを
1,4−BGに添加する方法、1,4−BGを陰イオン交換樹脂を通過させる方法、発酵法により得られる1,4−BGを使用する方法などにより行うことが出来る。発酵法による1,4−BGのpHは、例えば、バイオマス資源の発酵により得られるコハク酸を水添してBGを得る場合は、その発酵条件、アンモニアによる中和条件、コハク酸の晶析条件、コハク酸を水添して得られる1,4−BGの、蒸留を含む精製条件により、調節できる。また、1,4−BGがバイオマス資源の発酵により直接得られる場合にも、その発酵条件、アンモニアによる中和条件、得られた1,4−BGの蒸留を含む精製条件などにより調節できる。
【0042】
アミン化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンがあげられる。具体的にはオクチルアミン、ノニルアミン、1−アミノデカン、アニリン、フェネチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、N
−メチルアニリン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジシクロヘキシルアミン、1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N−ブチルピロール、N−ブチル−2,3−ジヒドロピロール、N−ブチルピロリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2,3−ジヒドロ−1H−インドール、4−アミノメチルピペリジン、4−アミノ−5,6−ジヒドロ−2−メチルピリミジン、2,3,5,6−テトラメチルピラジン、3,6
−ジメチルピリダジンであり、中でもトリブチルアミン、N−ブチルピロリジンが好ましく用いられる。
【0043】
アミノアルコールとしては4−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−1−ブタノール、プロリノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロリノールがあげられ、中でも4−アミノ−1−ブタノール、プロリノールが好ましく用いられる。
本発明に使用される陰イオン交換樹脂としては、特に制限されず、低架橋度のもの、高架橋度のもののいずれも使用することができる。また、ゲル型、ポーラス型、ハイポーラス型いずれの形態であってもよい。具体的には、市販されているダイヤイオンSA−10A、SA−12A、SA−11A、NSA100、SA−20A、SA−21A、PA306S、PA308、PA312、PA316、PA318L、PA408、PA412、PA418、HPA25(三菱化学株式会社製)、またはこれらの他グレードの製品等挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
1,4−BG中に含まれる窒素原子の量としては0.1重量ppm以上150重量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1重量ppm以上120重量ppm以下、更に好ましくは0.5重量ppm以上100重量ppm以下である。窒素原子が下限未満であると凝縮液中のTHF量の増加が多くなりエゼクターの減圧付加能力が低下する傾向にある。上限超過であるとこの凝縮液をジオール成分として使用して製造したポリエステルの色調が悪化する傾向にある。
【0045】
エゼクター駆動用蒸気として用いる1,4−BGは、ポリエステルのジオール成分としての1,4−BGとは別個に調製することもできるし、ポリエステルのジオール成分としての1,4−BGの一部をエゼクター駆動用蒸気として用いることも可能である。
図3には減圧付加装置の一例の説明図を示す。
本説明では重縮合反応槽が第1から第3までの3槽ある例で説明する。それぞれの重縮合反応槽(a、d、k)の圧力は図3に示した減圧付加装置を用いてコントロールする。図3において、1,4−BGを外部からの供給ライン(19)を通じて、エゼクター駆動用の1,4−BGの蒸気発生装置(K)へ連続的に供給し、240℃に加熱し発生する1,4−BG蒸気を供給ライン(20)を通じて、各エゼクター(第1重縮合反応槽用:A
1・A3、第2重縮合反応槽用:B1・B3・B5、第3重縮合反応槽用:C1・C3・C5)へ供給する。
【0046】
第1重縮合反応槽(a)から留出したテトラヒドロフラン、水を主成分とするガスはライン(21)を経て、エゼクター(A1)に導入され、この時エゼクター(A1)から排出される1,4−BG蒸気は、バロメトリックコンデンサー(A2)で凝縮され、凝縮液
は大気脚(25)を通じてホットウェルタンク(H2)に集められる。一方、バロメトリックコンデンサー(A2)で凝縮しない成分は2段目のエゼクター(A3)に送られ、凝縮液は大気脚(26)を通じてホットウェルタンク(H3)に集められる。1段目と同様にバロメトリックコンデンサー(A4)で凝縮しない成分は真空ポンプ(A5)を用いてライン(24)から系外に排出する。ライン(22、23)は1,4−BGの供給ラインであり、全量をホットウエルタンク(H2、H3)から循環供給する(図示せず)。
【0047】
第2重縮合反応槽(d)から留出したテトラヒドロフラン、水を主成分とするガスはライン(31)を経て、エゼクター(B1)に導入され、この時エゼクター(B1)から排出される1,4−BG蒸気は、バロメトリックコンデンサー(B2)で凝縮され、凝縮液
は大気脚(36)を通じてホットウェルタンク(H1)に集められる。一方、バロメトリックコンデンサー(B2)で凝縮しない成分は2段目のエゼクター(B3)に送られ、凝縮液は大気脚(37)を通じてホットウェルタンク(H2)に集められる。1段目と同様にバロメトリックコンデンサー(B4)で凝縮しなかった成分は3段目のエゼクター(B5)に送られ、凝縮液は大気脚(38)を通じてホットウェルタンク(H3)に集められた。2段目と同様にバロメトリックコンデンサー(B6)で凝縮しなかった成分は真空ポンプ(B7)を用いてライン(35)から系外に排出した。ライン(32、33、34)は1,4−BGの供給ラインであり、全量をホットウエルタンク(H1、H2、H3)から循環供給する(図示せず)。
【0048】
第3重縮合反応槽(k)から留出したテトラヒドロフラン、水を主成分とするガスはライン(41)を経て、エゼクター(C1)に導入され、この時エゼクター(C1)から排出される1,4−BG蒸気は、バロメトリックコンデンサー(C2)で凝縮され、凝縮液
は大気脚(46)を通じてホットウェルタンク(H1)に集められる。一方、バロメトリックコンデンサー(C2)で凝縮しなかった成分は2段目のエゼクター(C3)に送られ、凝縮液は大気脚(47)を通じてホットウェルタンク(H2)に集められる。1段目と同様にバロメトリックコンデンサー(C4)で凝縮しなかった成分は3段目のエゼクター(C5)に送られ、凝縮液は大気脚(48)を通じてホットウェルタンク(H3)に集められる。2段目と同様にバロメトリックコンデンサー(C6)で凝縮しなかった成分は真空ポンプ(C7)を用いてライン(45)から系外に排出する。ライン(42、43、44)は1,4−BGの供給ラインであり、全量をホットウエルタンク(H1、H2、H3)から循環供給する(図示せず)。
【0049】
ホットウェルタンク(H1、H2、H3)に集められた1,4−BGを主成分とする液
体は、ライン(54)、ポンプ(H4)を通してバッファータンク(H5)に送られ、その全量をポンプ(H6)、ライン(55)を通じて、未精製のまま原料スラリー調製槽へ移送・ポリエステル原料ジオールの一部とした。 ライン(51、52、53)は、ホットウェルタンク(H1、H2、H3)への1,4−BGの外部から供給ラインである。尚、連続重縮合プロセスの運転安定時の外部からの1,4−BGの供給は、ライン(19)とライン(51、52、53)のみであり、それぞれ一定流量に設定する。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性およ
び評価項目の測定方法は次の通りである。
<減圧発生装置内のTHF発生量>
エゼクターへの蒸気1,4−BGの供給ライン(20)で蒸気化された1,4−BG蒸気をSUSボンベに採取し、冷却凝縮した後、島津製キャピラリガスクロマトグラフ(GC−2025)を用いて、THF発生量を算出した。カラムには、J&W社のDB−1(内径:0.25mm、長さ:30m、膜圧:1.0μm)を使用した。注入部及び検出器温度は240℃、カラム温度は50℃で7分間保持後、230℃まで10℃/minで昇温した。キャリヤガスには窒素(100kPa)を用いた。定量分析の方法としては、予めTHF水溶液で検量線を作成しておき、GC測定時のArea値より1,4−BG中のTHF量を導出した。
【0051】
<固有粘度(IV)>
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、ポリブチレンテレフタレートの場合には濃度1.0g/dL、ポリブチレンサクシネートの場合には0.5g/dLのポリマー溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(1)より求めた。
【0052】
IV=((1+4Kηsp0.5−1)/(2KC) (1)
(ここで、ηSP=η/η0−1であり、ηはポリマー溶液落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用した。)
<末端カルボキシル基濃度>
試料を粉砕した後、熱風乾燥機にてポリブチレンテレフタレートの場合には140℃で15分間、ポリブチレンサクシネートの場合には60℃で30分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料を溶解させずに同様の操作を実施し、以下の式(2)によって末端カルボキシル基量(酸価)を算出した。
【0053】
末端カルボキシル量(当量/トン)=(a−b)×0.1×f/w (2)
(ここで、aは、滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、bは、ブランクでの滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、wはポリエステル樹脂の試料の量(g)、fは、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。)
なお、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価(f)は以下の方法で求めた。試験管にメタノール5mlを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液の指示薬として1〜2滴加え、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液0.4mlで変色点まで滴定し、次いで力価既知の0.1Nの塩酸水溶液を標準液として0.2ml採取して加え、再度、0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。)。以下の式(3)によって力価(f)を算出した。
【0054】
力価(f)=0.1Nの塩酸水溶液の力価×0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μl)/0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の滴定量(μl)(3)
<ペレット色調>
ペレット状ポリエステルを内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定用セルに充填し、測色色差計Z300A(日本電色工業(株)社製)を使用して、JIS Z873
0の参考例1に記載されるLab表示系におけるハンターの色差式の色座標によるb値を、反射法により、測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
【0055】
<溶液ヘーズ>
フェノール/テトラクロロエタン=3/2(重量比)の混合溶媒20mLにPBT2.70gを110℃で30分間溶解させた後、30℃の恒温水槽で15分間冷却し、日本電色(株)製濁度計(NDH−300A)を使用し、セル長10mmで測定した。値が低いほど透明性が良好であることを示す。
【0056】
<1,4−BGのpH>
ビーカーに1,4−BGを50mL採取し、東亜DKK社製pH−Meter(HM−25R)を用い、大気下でpH電極を浸して測定した。
<1,4−BG中の窒素原子含有量(質量ppm)の測定方法>
試料15mgを石英ボートへ採取して、微量全窒素分析装置(ダイヤインスツルメンツ
社製「TN−10型」)を用いて試料を燃焼し、燃焼・化学発光法により定量した。また
、その際に使用した標準試料は、トルエン中にアニリンを溶解し、窒素換算で0,0.5,1.0,2.0μg/mLを作製し使用した。
【0057】
[実施例1]
<ポリブチレンテレフタレートの製造>
図1に示すエステル化工程と図2に示す重縮合工程及び、図3の減圧付加装置により、以下のようにしてポリブチレンテレフタレートを製造した。
先ず、テレフタル酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオール1.80モルの割合で混合した60℃のスラリーをスラリー調製槽から原料供給ライン(1)を通じ、予め、エステル化率99%の低分子量体オリゴマーを充填したスクリュー型攪拌機を有するエステル化反応槽(A)に、40kg/hとなる様に連続的に供給した。同時に、再循環ライン(2)から185℃の精留塔(C)の塔底成分(98重量%以上が1,4−ブタンジオール)を13.2kg/hで供給し、再循環ライン(2)に連結されている触媒供給ライン(3)から3.0重量%1,4−ブタンジオール溶液に調製された60℃の触媒溶液を345g/hで供給した。触媒には、テトラ−n−ブトキシチタネートを用いた。
【0058】
反応槽(A)の内温は230℃、圧力は70kPaとし、生成する水とテトラヒドロフラン及び余剰の1,4−ブタンジオールを、留出ライン(5)から留出させ、精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は、98重量%以上が1,4−ブタンジオールであり、精留塔(C)の液面が一定になる様に、抜出ライン(8)を通じてその一部を外部に抜き出した。一方、水とTHFを主体とする低沸成分は塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサ(G)で凝縮させ、タンク(F)の液面が一定になる様に、抜出ライン(13)より外部に抜き出した。
【0059】
反応槽(A)で生成したオリゴマーの一定量は、抜出ポンプ(B)を使用し、オリゴマーの抜出ライン(4)から抜き出し、反応槽(A)内液のテレフタル酸ユニット換算での平均滞留時間が3hrになる様に液面を制御した。オリゴマーの抜出ライン(4)から抜き出したオリゴマーは、第1重縮合反応槽(a)に連続的に供給した。系が安定した後、反応槽(A)の出口で採取したオリゴマーのエステル化率は97.5%であった。
【0060】
第1重縮合反応槽(a)の内温は246℃、圧力2.4kPaとし、滞留時間が120分になる様に液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L2)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応槽(d)に連続的に供給した。
【0061】
第2重縮合反応槽(d)の内温は239℃、圧力150Paとし、滞留時間が90分になる様に液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L4)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、更に重縮合反応を進めた。得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプ(e)により抜出ライン(L3)を経由し、第3重縮合反応槽(k)に連続的に供給した。第3重縮合反応槽(k)の内温は238℃、圧力は130Pa、滞留時間は60分とし、更に、重縮合反応を進めた。得られたポリマーは、フィルター(U)を経由して、ダイスヘッド(g)からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター(h)でカッティングした。尚、それぞれの重縮合反応槽(a、d、k)の圧力は図3に示した減圧付加装置を用いてコントロールした。
【0062】
エゼクター駆動用の蒸気として、4−アミノ−1−ブタノールが20重量ppmとなるように添加調製された1,4−ブタンジオール(pH=9.3)を用いた。該1,4−ブタンジオールを供給ライン(19)を通じて、エゼクター駆動用の1,4−ブタンジオールの蒸気発生装置(K)へ連続的に供給し、240℃に加熱し発生1,4−ブタンジオール蒸気を供給ライン(20)を通じて、各エゼクター(第1重縮合反応槽用:A1・A3、第2重縮合反応槽用:B1・B3・B5、第3重縮合反応槽用:C1・C3・C5)へ供給した。このとき、蒸気発生装置(K)でのTHF発生量は2300重量ppmであった。
【0063】
第1重縮合反応槽(a)から留出したテトラヒドロフラン、水を主成分とするガスはライン(21)を経て、エゼクター(A1)に導入され、この時エゼクター(A1)から排出される1,4−ブタンジオール蒸気は、バロメトリックコンデンサー(A2)で凝縮さ
れ、凝縮液は大気脚(25)を通じてホットウェルタンク(H2)に集められた。一方、バロメトリックコンデンサー(A2)で凝縮しなかった成分は2段目のエゼクター(A3)に送られ、凝縮液は大気脚(26)を通じてホットウェルタンク(H3)に集められた。1段目と同様にバロメトリックコンデンサー(A4)で凝縮しなかった成分は真空ポンプ(A5)を用いてライン(24)から系外に排出した。ライン(22、23)は1,4−ブタンジオールの供給ラインであり、全量をホットウエルタンク(H2、H3)から循環供給した(図示せず)。
【0064】
第2重縮合反応槽(d)から留出したテトラヒドロフラン、水を主成分とするガスはライン(31)を経て、エゼクター(B1)に導入され、この時エゼクター(B1)から排出される1,4−ブタンジオール蒸気は、バロメトリックコンデンサー(B2)で凝縮さ
れ、凝縮液は大気脚(36)を通じてホットウェルタンク(H1)に集められた。一方、バロメトリックコンデンサー(B2)で凝縮しなかった成分は2段目のエゼクター(B3)に送られ、凝縮液は大気脚(37)を通じてホットウェルタンク(H2)に集められた。1段目と同様にバロメトリックコンデンサー(B4)で凝縮しなかった成分は3段目のエゼクター(B5)に送られ、凝縮液は大気脚(38)を通じてホットウェルタンク(H3)に集められた。2段目と同様にバロメトリックコンデンサー(B6)で凝縮しなかった成分は真空ポンプ(B7)を用いてライン(35)から系外に排出した。ライン(32、33、34)は1,4−ブタンジオールの供給ラインであり、全量をホットウエルタンク(H1、H2、H3)から循環供給した(図示せず)。
【0065】
第3重縮合反応槽(k)から留出したテトラヒドロフラン、水を主成分とするガスはライン(41)を経て、エゼクター(C1)に導入され、この時エゼクター(C1)から排出される1,4−ブタンジオール蒸気は、バロメトリックコンデンサー(C2)で凝縮さ
れ、凝縮液は大気脚(46)を通じてホットウェルタンク(H1)に集められた。一方、バロメトリックコンデンサー(C2)で凝縮しなかった成分は2段目のエゼクター(C3)に送られ、凝縮液は大気脚(47)を通じてホットウェルタンク(H2)に集められた
。1段目と同様にバロメトリックコンデンサー(C4)で凝縮しなかった成分は3段目のエゼクター(C5)に送られ、凝縮液は大気脚(48)を通じてホットウェルタンク(H3)に集められた。2段目と同様にバロメトリックコンデンサー(C6)で凝縮しなかった成分は真空ポンプ(C7)を用いてライン(45)から系外に排出した。ライン(42、43、44)は1,4−ブタンジオールの供給ラインであり、全量をホットウエルタンク(H1、H2、H3)から循環供給した(図示せず)。
【0066】
ホットウェルタンク(H1、H2、H3)に集められた1,4−ブタンジオールを主成
分とする液体は、ライン(54)、ポンプ(H4)を通してバッファータンク(H5)に送られ、その全量をポンプ(H6)、ライン(55)を通じて、未精製のまま原料スラリー調製槽へ移送し、ポリエステル原料ジオールの一部とした。
ライン(51、52、53)は、ホットウェルタンク(H1、H2、H3)への1,4−ブタンジオールの外部から供給ラインであり、4−アミノ−1−ブタノールを20質量ppm含有した1,4−ブタンジオール溶液を供給した。尚、連続重縮合プロセスの運転安定時の外部からの1,4−ブタンジオール溶液の供給は、ライン(19)とライン(51、52、53)であり、それぞれ一定流量に設定した。
【0067】
運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表1に示す。
[実施例2]
エゼクター駆動用の蒸気として、4−アミノ−1−ブタノールが100重量ppmとなるように添加調製された1,4−ブタンジオール(pH=10.8)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。蒸気発生装置(K)でのTHF発生量は2300重量ppmであり、ポリマーの色調は良好であった。運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表1に示す。
【0068】
[実施例3]
エゼクター駆動用の蒸気として、トリブチルアミンが20重量ppmとなるように添加調製された1,4−ブタンジオール(pH=8.9)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。蒸気発生装置(K)でのTHF発生量は2600重量ppmであり、ポリマーの色調は良好であった。運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表1に示す。
【0069】
[実施例4]
エゼクター駆動用の蒸気として、トリブチルアミンが1000重量ppmとなるように添加調製された1,4−ブタンジオール(pH=10.7)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。蒸気発生装置(K)で発生したTHF量は2100重量ppmであった。運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例5]
エゼクター駆動用の蒸気として、2−プロリノールが20重量ppmとなるように添加調製された1,4−ブタンジオール(pH=9.3)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。蒸気発生装置(K)でのTHF発生量は2200重量ppmであり、ポリマーの色調は良好であった。運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1]
エゼクター駆動用の蒸気として、市販品の1,4−ブタンジオール(pH=5.2)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。蒸気発生装置(K)でのTHF発生量は4900重量ppmと多かった。運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表1に示す。
【0072】
[比較例2]
エゼクター駆動用の蒸気として、4−アミノ−1−ブタノールが1000重量ppmとなるように添加調製された1,4−ブタンジオール(pH=11.9)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。蒸気発生装置(K)でのTHF発生量は2100重量ppmと少なかったが、ポリマーの色調が悪化した。運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表1に示す。
【0073】
[比較例3]
エゼクター駆動用の蒸気として、2−ピロリドンが20重量ppmとなるように添加調製された1,4−ブタンジオール(pH=5.5)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。蒸気発生装置(K)でのTHF発生量は3800重量ppmであったが、ポリマーの色調が悪化した。運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
[実施例6]
<重合用触媒の調製>
撹拌装置付きのガラス製ナス型フラスコに、酢酸マグネシウム・4水和物を100質量部入れ、更に1500質量部の無水エタノール(純度99質量%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合質量比は45:55)を65.3質量部加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを122質量部添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液を、ナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体を得た。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、5Torrの減圧下で更に濃縮を行い粘稠な液体を得た。この液体状の触媒を、1,4−ブタンジオールに溶解させ、チタン原子含有量が3.36質量%となるよう調製した。この触媒溶液の1,4−ブタンジオール中における保存安定性は良好であり、窒素雰囲気下40℃で保存した触媒溶液は少なくとも40日間析出物の生成が認められなかった。また、この触媒溶液のpHは6.3であった。
【0076】
<ポリブチレンサクシネートの製造>
図1に示すエステル化工程と図2に示す重縮合工程及び、図3に示す減圧付加装置により、以下のようにしてポリブチレンサクシネートを製造した。先ず、リンゴ酸を0.18重量%含有したコハク酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオールを1.30モルおよびリンゴ酸を総量0.0033モルの割合となるように混合した50℃のスラリーを、スラリー調製槽(図示せず)から原料供給ライン(1)を通じ、予め、窒素雰囲気下エステル化率99重量%の低分子量体オリゴマーを充填した攪拌機を有するエステル化反応
槽(A)に、45.5kg/hとなる様に連続的に供給した。
【0077】
エステル化反応槽(A)を内温230℃、圧力101kPaとし、生成する水、テトラヒドロフラン及び余剰の1,4−ブタンジオールを、留出ライン(5)から留出させ、精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は精留塔(C)の液面が一定になる様に、抜出ライン(8)を通じて、その一部を外部に抜き出した。一方、水とテトラヒドロフランを主体とする低沸成分は、塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサ(G)で凝縮させ、タンク(F)の液面が一定になる様に、抜出ライン(13)より外部に抜き出した。同時に、再循環ライン(2)より100℃の精留塔(C)の塔底成分(98重量%以上が1,4−ブタンジオール)全量を、また、触媒供給ライン(3)より、エステル化反応槽で発生したテトラヒドロフランと等モルの1,4−ブタンジオールを併せて供給し、エステル化反応槽内のコハク酸に対する1,4−ブタンジオールモル比が1.30となるように調整した。供給量は、再循環ライン(2)と触媒供給ライン(3)合わせて3.8kg/hであった。
【0078】
エステル化反応槽(A)で生成したエステル化反応物は、ポンプ(B)を使用し、エステル化反応物の抜出ライン(4)から連続的に抜き出し、エステル化反応槽(A)内液のコハク酸ユニット換算での平均滞留時間が3時間になる様に液面を制御した。抜出ライン(4)から抜き出したエステル化反応物は、第1重縮合反応槽(a)に連続的に供給した。系が安定した後、エステル化反応槽(A)の出口で採取したエステル化反応物のエステル化率は92.4%であり末端カルボキシル濃度は884当量/トンであった。
【0079】
予め前述手法で調製した触媒溶液を、触媒調製槽において、チタン原子としての濃度が0.12重量%となる様に、1,4−ブタンジオールで希釈した触媒溶液を調製した後、供給ライン(L8)を通じて、1.4kg/hで連続的にエステル化反応物の抜出ライン(4)に供給した(触媒は反応液の液相に添加された)。供給量は運転期間中安定していた。
【0080】
第1重縮合反応槽(a)の内温は240℃、圧力2.7kPaとし、滞留時間が120分間になる様に、液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L2)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応槽(d)に連続的に供給した。
【0081】
第2重縮合反応槽(d)の内温は245℃、圧力400Paとし、滞留時間が150分間になる様に、液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L4)から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、更に重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、抜出用ギヤポンプ(e)により抜出ライン(L3)を経由し、第3重縮合反応槽(k)に連続的に供給した。第3重縮合反応槽(k)の内温は245℃、圧力は130Pa、滞留時間は180分間とし、更に、重縮合反応を進めた。得られたポリエステルは、ダイスヘッド(g)からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター(h)でカッティングしペレットとした。
【0082】
尚、それぞれの重縮合反応槽(a、d、k)の圧力は図3に示した減圧付加装置を用いてコントロールした。
エゼクター駆動用の蒸気として、4−アミノ−1−ブタノールが20重量ppmとなるように添加調製された1,4−ブタンジオール(pH=9.3)を用いた。該1,4−ブタンジオール溶液を供給ライン(19)を通じて、エゼクター駆動用の1,4−ブタンジオールの蒸気発生装置(K)へ連続的に供給し、240℃に加熱し発生1,4−ブタンジオール蒸気を供給ライン(20)を通じて、各エゼクター(第1重縮合反応槽用:A1・A3、第2重縮合反応槽用:B1・B3・B5、第3重縮合反応槽用:C1・C3・C5
)へ供給した。このとき、蒸気発生装置(K)で発生したTHF量は2300重量ppmであった。
【0083】
第1重縮合反応槽(a)から留出したテトラヒドロフラン、水を主成分とするガスはライン(21)を経て、エゼクター(A1)に導入され、この時エゼクター(A1)から排出される1,4−ブタンジオール蒸気は、バロメトリックコンデンサー(A2)で凝縮さ
れ、凝縮液は大気脚(25)を通じてホットウェルタンク(H2)に集められた。一方、バロメトリックコンデンサー(A2)で凝縮しなかった成分は2段目のエゼクター(A3)に送られ、凝縮液は大気脚(26)を通じてホットウェルタンク(H3)に集められた。1段目と同様にバロメトリックコンデンサー(A4)で凝縮しなかった成分は真空ポンプ(A5)を用いてライン(24)から系外に排出した。ライン(22、23)は1,4−ブタンジオールの供給ラインであり、全量をホットウエルタンク(H2、H3)から循環供給した(図示せず)。
【0084】
第2重縮合反応槽(d)から留出したテトラヒドロフラン、水を主成分とするガスはライン(31)を経て、エゼクター(B1)に導入され、この時エゼクター(B1)から排出される1,4−ブタンジオール蒸気は、バロメトリックコンデンサー(B2)で凝縮さ
れ、凝縮液は大気脚(36)を通じてホットウェルタンク(H1)に集められた。一方、バロメトリックコンデンサー(B2)で凝縮しなかった成分は2段目のエゼクター(B3)に送られ、凝縮液は大気脚(37)を通じてホットウェルタンク(H2)に集められた。1段目と同様にバロメトリックコンデンサー(B4)で凝縮しなかった成分は3段目のエゼクター(B5)に送られ、凝縮液は大気脚(38)を通じてホットウェルタンク(H3)に集められた。2段目と同様にバロメトリックコンデンサー(B6)で凝縮しなかった成分は真空ポンプ(B7)を用いてライン(35)から系外に排出した。ライン(32、33、34)は1,4−ブタンジオールの供給ラインであり、全量をホットウエルタンク(H1、H2、H3)から循環供給した(図示せず)。
【0085】
第3重縮合反応槽(k)から留出したテトラヒドロフラン、水を主成分とするガスはライン(41)を経て、エゼクター(C1)に導入され、この時エゼクター(C1)から排出される1,4−ブタンジオール蒸気は、バロメトリックコンデンサー(C2)で凝縮さ
れ、凝縮液は大気脚(46)を通じてホットウェルタンク(H1)に集められた。一方、バロメトリックコンデンサー(C2)で凝縮しなかった成分は2段目のエゼクター(C3)に送られ、凝縮液は大気脚(47)を通じてホットウェルタンク(H2)に集められた。1段目と同様にバロメトリックコンデンサー(C4)で凝縮しなかった成分は3段目のエゼクター(C5)に送られ、凝縮液は大気脚(48)を通じてホットウェルタンク(H3)に集められた。2段目と同様にバロメトリックコンデンサー(C6)で凝縮しなかった成分は真空ポンプ(C7)を用いてライン(45)から系外に排出した。ライン(42、43、44)は1,4−ブタンジオールの供給ラインであり、全量をホットウエルタンク(H1、H2、H3)から循環供給した(図示せず)。
【0086】
ホットウェルタンク(H1、H2、H3)に集められた1,4−ブタンジオールを主成
分とする液体は、ライン(54)、ポンプ(H4)を通してバッファータンク(H5)に送られ、その全量をポンプ(H6)、ライン(55)を通じて、未精製のまま原料スラリー調製槽へ移送し、ポリエステル原料ジオールの一部とした。
ライン(51、52、53)は、ホットウェルタンク(H1、H2、H3)への1,4−ブタンジオールの外部から供給ラインであり、4−アミノ−1−ブタノールを20重量ppm含有した1,4−ブタンジオール溶液を供給した。尚、連続重縮合プロセスの運転安定時の外部からの1,4−ブタンジオール溶液の供給は、ライン(19)とライン(51、52、53)のみであり、それぞれ一定流量に設定した。
【0087】
運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表2に示す。
[比較例4]
エゼクター駆動用の蒸気として、市販品の1,4−ブタンジオール(pH=5.2)を用いた以外は、実施例6と同様に行った。蒸気発生装置(K)でのTHF発生量は4900重量ppmと多かった。運転開始1週間後のポリエステルペレットの品質評価結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のポリエステルの製造方法は、効率的に、THFへの転化が少ない。また、本発明の製造方法により得られるポリエステルは、色調が良好であり、更にバイオマス資源の有効利用にも寄与している。
【符号の説明】
【0090】
1 原料供給ライン
2 再循環ライン
3 触媒供給ライン
4 オリゴマーの抜出ライン
5 留出ライン
6 抜出ライン
7 循環ライン
8 抜出ライン
9 ガス抜出ライン
10 コンデンサ凝縮液ライン
11 抜出ライン
12 循環ライン
13 抜出ライン
14 ベントライン
15 触媒供給ライン
16 触媒供給ライン
19、51、52、53 外部からの1,4−ブタンジオールの供給ライン
20 エゼクターへの蒸気1,4−BGの供給ライン
21 第1重縮合反応槽からのベントライン
31 第2重縮合反応槽からのベントライン
41 第3重縮合反応槽からのベントライン
22、23、32、33、34、42、43、44 1,4−BGの供給ライン
24、35、45 真空ポンプからの吐出ガスライン
25、26、36、37、38、46、47、48 バロメトリックコンデンサーの大気脚
54 ホットウェルタンクからバッファ−タンクへの凝縮液の抜き出しライン
55 バッファータンクから原料スラリー調製槽への1,4−BGの供給ライン
56 バッファータンクから蒸留精製塔への1,4−BGの供給ライン
57 低沸点成分の抜き出しライン
58 蒸留精製塔から原料スラリー調製槽への1,4−BGの供給ライン
59 高沸点成分の抜き出しライン
A 反応槽
B 抜出ポンプ
C 精留塔
D、E ポンプ
F タンク
G コンデンサ
L1、L3 抜出ライン
L2、L4、L6:ベントライン
L5 ポリマー抜出ライン
L8 1,4−ブタンジオール供給ライン
L7 金属化合物供給ライン
a 第1重縮合反応槽
d 第2重縮合反応槽
k 第3重縮合反応槽
c、e、m 抜出用ギヤポンプ
g ダイスヘッド
h 回転式カッター
R、S、T、U フィルター
A1、A3、B1、B3、B5、C1、C3、C5 エゼクター
A2、A4、B2、B4、B6、C2、C4、C6 バロメトリックコンデンサー
A5、B7、C7 真空ポンプ
H1、H2、H3 ホットウェルタンク
H4、H6、J2、J4 ポンプ
H5 バッファータンク
J1 蒸留精製塔
J3 蒸留精製塔のリボイラー
K エゼクター駆動用1,4−ブタンジオールの蒸気発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とジカルボン酸成分とをエステル化反応及び/又はエステル交換反応、並びに、重縮合反応させてポリエステルを連続的に製造する方法において、
(a)重縮合反応を減圧下で行い、
(b)その減圧付加装置が1,4―ブタンジオールの蒸気エゼクターを備え、
(c)該蒸気エゼクターに用いた1,4-ブタンジオール蒸気を凝縮させた後、ジオール
成分として使用し、かつ
(d)蒸気エゼクター駆動用の蒸気発生装置に供給する1,4−ブタンジオールのpHが7.0以上11.5以下である、
ことを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記蒸気エゼクター駆動用の蒸気発生装置に供給する1,4−ブタンジオール中に、窒素原子として0.1重量ppm以上150重量ppm以下の窒素化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記蒸気エゼクター駆動用の蒸気発生装置に供給する1,4−ブタンジオール中に、窒素化合物を含有し、該窒素化合物がアミン化合物及び/又はアミノアルコール化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記1,4−ブタンジオールがバイオマス資源由来であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−28656(P2013−28656A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163558(P2011−163558)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】