説明

ポリエステルフィルムと水系分散液との密着性向上方法、ポリエステルフィルムの製造方法

【課題】ポリエステルを主成分とする樹脂フィルムの塗布層との密着性を改善でき、製膜適性が良好なポリエステルフィルムの製造方法の提供。
【解決手段】ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム基材の表面をコロナ処理する工程と、前記コロナ処理後の前記樹脂フィルム基材を該樹脂フィルム基材のTgを超えて、Tmeta以下に加熱処理するコロナ処理後加熱工程と、前記コロナ処理後加熱工程の後に前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面上にポリマー溶液を塗布する工程とを含むことを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法(ここで、Tgはガラス転移温度、Tmetaは示差走査熱量測定にて求められる微小吸熱ピーク(単位:℃)を表す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムと水系分散液との密着性向上方法、ポリエステルフィルムの製造方法に関する。特に好ましくは、ハロゲン化銀感光材料を塗布したポリエステルフィルムの製造方法、各種光学用フィルム、または、太陽電池素子の太陽光入射側の反対側に設けられる太陽電池裏面保護シート用のポリエステルフィルムの製造方法、並びにそれらの製造方法で得られるポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、機械的強度特性、寸法安定性、透明性、光学特性、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性等の特性に優れ、コスト的にもバランスのとれたフィルムであることから、従来医療用フィルムや磁気テープ、写真フィルム、印刷製版用フィルム等に用いられてきたが、近年では、LCD部材のプリズムシート、光拡散シート、反射板、タッチパネル用フィルム、反射防止用フィルム、PDPフィルター用フィルム等の各種光学用フィルムに多く用いられるようになった他、太陽電池モジュールの保護シートとして従来のガラスやフッ素樹脂の代替として注目、使用されており、今後より一層重要性が増す材料である。
【0003】
しかしながら、ポリエステルフィルムは非極性であるため濡れ性が低く、他のポリマー層を塗布により積層したときの界面の密着性に問題があることが一般に知られており、感光材料や太陽電池保護シートの分野などの長期保存や長期運転が求められる分野ではその密着性の改善が強く求められていた。
【0004】
ポリエステルフィルムと塗布層との密着力を向上させる方法としては、コロナ処理や低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、火炎処理等の各種表面処理方法があり、その中でもコロナ処理は効果とコストとのトータルバランスの点から広く採用されている手法である。コロナ処理はコロナ処理用電極を用いて、処理するフィルムを好ましくは電極対向ロールで搬送しながら実施し、フィルム表面に水酸基やカルボキシル基等の官能基を生成することで表面を改質するものである。ただし、コロナ処理については、表面処理後の官能基の生成量が他の表面処理方法に比べて小さいことや、生成した官能基の減衰が早いといったことが知られており、樹脂フィルム基材と塗布層との密着力が不十分となることがあった。そこで、更なる樹脂フィルム基材の表面改質を高め、塗布層との密着性の向上を課題として様々な改良がなされていた。
【0005】
コロナ処理による官能基付与を改善する技術としては、コロナ処理前に基材を加熱する技術や、コロナ処理の雰囲気を窒素ガスやその他の不活性ガスに変える技術等が知られている。例えば、特許文献1には、ポリプロピレンフィルムを予熱処理し、コロナ放電処理するときに60℃以上の処理雰囲気とすることで、被処理フィルム表面での雰囲気ガスを高活性に維持し、インキの付着性や金属の蒸着性などのフィルムの表面接着性を改善する方法が記載されている。
特許文献2には、熱可塑性樹脂フィルムを60〜130℃に加熱した予備加熱ロールで搬送し、70〜130℃に加熱した電極対向ロールで搬送しながらフィルムの一方の表面をコロナ処理し、その後70〜130℃に加熱した電極対向ロールで搬送しながらフィルムのもう一方の表面(裏面)をコロナ処理することによって、特許文献1に記載の方法で得られるフィルムよりもシワや均質性などの品質ができることが記載されている。
特許文献3には、結晶性樹脂の融点以上または非結晶性樹脂の軟化点以上の温度でコロナ処理を行うことで、塗装性、印刷性および接着性を改善する方法が記載されている。
【0006】
一方、ポリエステルフィルムでは、コロナ処理によってカルボキシル基等の官能基を生成すると同時に、フィルム表面に脆弱層(WBL層、Weak Boundary Layer)が形成され、それが密着を低下させる一因となっていることが特許文献4などに記載されている。特許文献4ではコロナ処理後に水や有機溶媒でぬらした状態で物理的機械力を加えることによって形成したWBL層を除去する方法が記載されている。
また、特許文献5の請求項3および4には、プラズマ処理後に形成したWBL層を除去する方法として、O2またはCO2プラズマの場合とN2またはNH3プラズマの場合においてそれぞれ形成される官能基の組成の最適範囲を規定する方法が記載されており、フィルム表面と塗布層との密着性を向上させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−168631号公報
【特許文献2】特開平5−140355号公報
【特許文献3】特開平10−1550号公報
【特許文献4】特開平9−48863号公報
【特許文献5】特開2007−270066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが特許文献1〜3に記載の事前にフィルムを加熱することでコロナ処理効果を向上させる方法を検討したが、十分な密着性向上効果は得られなかった。その理由としては、コロナ処理前に加熱を行っても密着を低下させるWBL層を除去することができなかったためと考えられる。また、特許文献2に記載の方法を検討したが、電極対向ロール自体を加熱ロールとする場合、表面樹脂の材質によっては加熱温度に制約が発生し、十分な加熱が出来ないために密着向上効果が得られず、それ以外にも、表面材質の劣化やロールの変形といった製膜適性上の問題があることがわかった。
本発明者らが特許文献4に記載の方法を検討したところ、フィルムにキズが付くなどの観点から、製膜適性に問題があることがわかった。
また、特許文献5に記載のリモートプラズマでは、気流の影響を受けやすく、高速時などエアー同伴によって処理効率が落ちるという問題がある他、CO2、NH3等のガスが必要であり、ランニングコストが高くなるといった問題があることが分かった。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム基材の塗布層との密着性を改善でき、製膜適性が良好なポリエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが、樹脂フィルム基材をコロナ処理した後に加熱し、フィルム表面温度が常温に下がった後に塗布層を形成したところ、事前に加熱してコロナ処理した場合に比べて、樹脂フィルム基材と塗布層の間の密着力が向上することがわかった。本発明者らにて、コロナ処理だけを行ったフィルム、および、コロナ処理後に加熱処理を行ったフィルムの表面を削り取り、DSCによる結晶化温度(降温結晶化;Tc’)を測定した結果、コロナ処理だけを行ったフィルム表面のTc’は、未処理の場合よりも高温側(結晶化が早い、すなわち低分子化)にシフトすることが判明し、また、コロナ処理後に加熱処理を行ったフィルム表面のTc’では高温側へのシフトは見られず(未処理と同等または低温側にシフト)、低分子化が抑制(または高分子化)されていることが分かった。いかなる理論に拘泥するものでもないが、コロナ処理による樹脂フィルム基材の表面のポリマーの低分子化を抑制できたことにより、これが密着低下を抑え、結果として密着向上に繋がっていると推定している。
また、コロナ処理によって粗面化するのは表面分子の切断(コロナ処理で生じたラジカルのうち、COOH、OH等の官能基に変化しなかったものが残存し、結果としてポリエステル分子鎖が切断(すなわちWBL層の生成)されると推測)が原因であるが、本発明者らによる検討結果では、コロナ処理後に熱処理した場合は、未処理時に比べて表面粗さに顕著な変化は見られなかった。いかなる理論に拘泥するものでもないが、コロナ処理後に加熱することでラジカルが再結合(架橋)し、表面に残存しない(すなわち分子鎖の切断がなく、結果としてWBL層の生成を抑制される)ことが原因であると推定している。このように本発明では、粗面化せずに官能基を増やし、かつWBL層の生成を抑制することができるという特徴も持っている。
また、コロナ処理前に加熱処理を行い、塗布を行った場合は密着向上効果が無かったことからWBL層の除去ができないと推測され、特許文献1〜3に記載の方法でコロナ処理後に塗布を行った後に乾燥してもWBL層が除去されずに残ると推測されるため、コロナ処理後から塗布工程の前までの間に加熱処理を行う必要があることを見出すに至った。
さらに、このような樹脂フィルム基材をコロナ処理した後に加熱し、加熱後に塗布層を形成する方法は、特許文献2や4に記載の方法と比べて製膜適性も良好であることがわかった。
すなわち、以下の構成により、前記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
上記課題を解決するための具体的な手段は以下の通りである。
[1] ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム基材の表面をコロナ処理する工程と、前記コロナ処理後の前記樹脂フィルム基材を該樹脂フィルム基材のTgを超えて、Tmeta以下に加熱処理するコロナ処理後加熱工程と、前記コロナ処理後加熱工程の後に前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面上にポリマー溶液を塗布する工程とを含むことを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法(ここで、Tgはガラス転移温度、Tmetaは示差走査熱量測定にて求められる微小吸熱ピーク(単位:℃)を表す)。
[2] 前記樹脂フィルム基材がポリエチレンテレフタレートまたはポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)の単層フィルム、あるいは、それらのうち1種または2種を含む積層体であることを特徴とする[1]に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
[3] 前記コロナ処理後加熱工程における前記樹脂フィルム基材の表面温度が70〜220℃であることを特徴とする[1]または[2]に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
[4] 前記コロナ処理工程の前に前記樹脂フィルム基材を加熱するコロナ処理前加熱工程を含み、前記コロナ処理前加熱工程と、前記コロナ処理後加熱工程を、異なる加熱処理装置によって行うことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
[5] 前記コロナ処理後加熱工程の後に、前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面に再度のコロナ処理を行うことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
[6] 前記コロナ処理と、前記再度のコロナ処理を、異なるコロナ処理装置によって行うことを特徴とする[5]に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
[7] 前記加熱処理が、加熱気体の送風、赤外線の照射または加熱ロールとの接触であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
[8] 前記加熱ロールが、前記コロナ処理における電極対向ロールとは異なるロールであることを特徴とする[7]に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
[9] 前記コロナ処理工程および前記加熱処理を、いずれも前記樹脂フィルム基材を搬送しながら行うことを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
[10] 前記コロナ処理工程の前に、前記樹脂フィルム基材を二軸延伸する工程を含むことを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
[11] [1]〜[10]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法を含むことを特徴とする太陽電池保護シートの製造方法。
[12] [1]〜[10]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法を含むことを特徴とする感光材料の製造方法。
[13] [1]〜[10]のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするポリエステルフィルム。
[14] ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム基材の表面をコロナ処理する工程と、前記コロナ処理後の前記樹脂フィルム基材を該樹脂フィルム基材のTgを超えて、Tmeta以下に加熱処理するコロナ処理後加熱工程と、前記コロナ処理後加熱工程の後に前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面上にポリマー溶液を塗布する工程を含み、前記ポリマー溶液が水系分散液であることを特徴とするポリエステルフィルムと水系分散液との密着性向上方法(ここで、Tgはガラス転移温度、Tmetaは示差走査熱量測定にて求められる微小吸熱ピーク(単位:℃)を表す)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム基材の塗布層との密着性を改善でき、製膜適性が良好なポリエステルフィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のポリエステルフィルムの製造方法におけるコロナ処理および加熱処理の態様の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のポリエステルフィルムの製造方法におけるコロナ処理および加熱処理の態様の他の一例を示す概略図である。
【図3】本発明のポリエステルフィルムの製造方法におけるコロナ処理および加熱処理の態様の他の一例を示す概略図である。
【図4】本発明のポリエステルフィルムの製造方法におけるコロナ処理および加熱処理の態様の他の一例を示す概略図である。
【図5】本発明のポリエステルフィルムの製造方法を適用して製造できるハロゲン化銀感光材料の断面の一例を示す概略図である。
【図6】本発明のポリエステルフィルムの製造方法を適用して製造できる太陽電池保護シートを用いた太陽電池モジュールの断面の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のポリエステルフィルムおよびその製造方法について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
[ポリエステルフィルムの製造方法]
本発明のポリエステルフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム基材の表面をコロナ処理する工程と、前記コロナ処理後の前記樹脂フィルム基材を該樹脂フィルム基材のTgを超えて、Tmeta以下に加熱処理するコロナ処理後加熱工程と、前記コロナ処理後加熱工程の後に前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面上にポリマー溶液を塗布する工程とを含むことを特徴とする(ここで、Tgはガラス転移温度、Tmetaは示差走査熱量測定にて求められる微小吸熱ピーク(単位:℃)を表す)。また、Tmetaは例えばWO2010/110119号公報等に記載されているTmetaと同義であり、Tmetaの測定方法も同文献に記載の方法で行うことができる。
このような構成により、樹脂フィルム基材の塗布層との密着性を改善でき、製膜適性が良好なポリエステルフィルムの製造方法を提供することができる。いかなる理論に拘泥するものでもないが、以下のメカニズムを推定している。コロナ処理によって樹脂フィルム基材の表面にラジカルが生成され、そのラジカルの一部は酸素原子と反応し官能基(−OH、−COOH等)を生成し、密着性の向上に寄与する。一方、ラジカルの一部は酸素原子と結合せず、樹脂フィルム基材を構成する表層の樹脂自体を低分子化してWBL層を形成させ、樹脂フィルム基材と塗布層との密着性が低下する原因となる。従来の方法ではコロナ処理で生じたラジカルのうち、COOH、OH等の官能基に変化しなかったものが多く残存し、結果としてポリエステル分子鎖が切断(すなわちWBL層が生成)される。これに対し、本発明では、コロナ処理後に加熱することで、コロナ処理で生じたラジカルを再結合(架橋)させ、WBL層形成に寄与するラジカルが樹脂フィルム基材の表面に残存しないようにする(ポリエステル分子鎖の切断がなく、結果としてWBL層の生成を抑制し、密着低下を防ぐ)ことができると推定している。
以下、本発明の製造方法について説明する。
【0016】
<樹脂フィルム基材の調製>
(ポリマー種)
樹脂フィルム基材に主成分として用いられるポリマー種としては、ポリエステルである。ここで、本発明における主成分とは、樹脂フィルム基材の50質量%以上を構成する成分のことをいう。前記樹脂フィルム基材は、樹脂フィルム基材の80質量%以上を構成する成分がポリエステルであることが好ましく、90質量%以上を構成する成分がポリエステルであることがより好ましい。
本発明の製造方法では、これらの中では、コストや機械強度などの点から、前記樹脂フィルム基材がポリエステルであることが好ましい。
【0017】
前記樹脂フィルム基材(支持体)として用いられるポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0018】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよく、また、例えばトリメリット酸エステルのような可塑剤を配合してもよく、トリメリット酸エステルはポリエステルの重合前に添加してもよい。
【0019】
(ポリマーの合成)
本発明におけるポリエステルを重合する際には、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、Ti系の化合物を触媒として用いることが好ましい。ただし、Sb触媒は重金属であり、環境影響の点で好ましくない他、重合反応の過程で析出する金属Sb粒子がPET中に含まれるため、製膜工程において異物化する問題がある。また、Ge触媒は高価であり、コストアップが避けられない他、エチレングリコールへの溶解性が低く、微小不溶物がPET中に残存し、押出工程においてダイリップ汚れを引き起こすといった問題がある。その点でTi触媒系が好ましく、また、Ti触媒で重合したPET樹脂はSbやGeに比べて末端COOH基が低い傾向があり、例えば、耐加水分解性を要する太陽電池保護シートに用いる場合に好適である。
【0020】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号各公報等に記載の方法を適用できる。
【0021】
本発明の製造方法で得られたポリエステルフィルムを太陽電池保護シートに用いる場合では、前記樹脂フィルム基材がポリエステル系樹脂を含み、前記ポリエステル中のカルボキシル基含量は35当量/t以下が好ましく、より好ましくは20当量/t以下である。カルボキシル基含量が35当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。カルボキシル基含量の下限は、ポリエステルに形成される層(例えば着色層)との間の密着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。すなわち、本発明では、前記ポリエステル樹脂のカルボキシル基の含量が2〜20当量/tであることが特に好ましい。
ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合条件(触媒種類や重合温度、槽内圧力)、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
【0022】
(固相重合)
上記の重縮合工程を終了した後には、得られたポリエステル樹脂をペレット状等に加工し、これを用いて固相重合を行なってもよい。
固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、順次送り出す方法)でもよく、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固相重合として、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号等に記載の方法を用いることができる。
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。温度が上記範囲内であると、耐加水分解性を達成する上で好ましい。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。時間が上記範囲内であると、耐加水分解性を達成する上で好ましい。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
固相重合後のポリエステル樹脂組成物のIVとしては、0.65以上の範囲が好ましく、より好ましくは0.70以上の範囲がより好ましい。
ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであれば固相重合後のポリエステル樹脂組成物のIVは、0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましい。また、ポリエステルがポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)であれば固相重合後のポリエステル樹脂組成物のIVの好ましい範囲の上限は1.2、より好ましくは1.15、さらに好ましくは1.1である。
このような熱処理は低酸素雰囲気下で行うのが好ましく、例えば窒素雰囲気下または真空中で行うことが好ましい。
【0023】
固相重合は、バッチ式(容器内に樹脂を入れ、この中で所定の時間熱を与えながら撹拌する方式)で実施してもよく、連続式(加熱した筒の中に樹脂を入れ、これを加熱しながら所定の時間滞流させながら筒中を通過させて、順次送り出す方式)で実施してもよい。
【0024】
(カルボジイミド化合物)
カルボジイミド化合物はポリエステルの末端基を封止してポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上させるものであり、本発明の樹脂フィルム基材の塗布層との密着改良効果には直接関係しないものの、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用に使用する場合は前記樹脂フィルム基材がカルボジイミド化合物を含むことが好ましい。
前記カルボジイミド化合物の中でも、環状カルボジイミドが好ましい。
【0025】
−環状カルボジイミド−
本発明のポリエステルフィルムの製造方法に用いられる前記樹脂フィルム基材は、カルボジイミド基を1個有し、その第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含む化合物を含むことが好ましい。前記カルボジイミド基を1個有し、その第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含む化合物は、いわゆる末端封止剤として前記ポリエステルの末端カルボキシル基を封止して、ポリエステルフィルムの湿熱耐久性を改善することができる。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法に用いられる前記樹脂フィルム基材は、前記ポリエステル100質量部に対して、前記カルボジイミド基を1個有し、その第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含む化合物を0.05〜20質量部含むことが好ましい。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法に用いられる前記樹脂フィルム基材は、前記カルボジイミド基を1個有し、その第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含む化合物の分子量が400以上であることが好ましく、500〜1500であることがより好ましい。
【0028】
前記カルボジイミド基を1個有し、その第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含む化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
【0029】
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に、10〜15が好ましい。
【0030】
ここで、環状構造中の原子数とは、環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0031】
環状構造は、下記式(1)で表される構造であることが好ましい。
【0032】
【化1】

【0033】
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0034】
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【0035】
【化2】

【0036】
式中、Ar1およびAr2は各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0037】
1およびR2は各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0038】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0039】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0040】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0041】
上記式(1−1)、(1−2)においてX1およびX2は各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0042】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0043】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていてもよい。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0044】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0045】
上記式(1−1)、(1−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。s及びkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX1、あるいはX2が、他のX1、あるいはX2と異なっていてもよい。
【0046】
上記式(1−3)においてX3は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0047】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0048】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0049】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていてもよい。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0050】
また、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2およびX3はヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2およびX3は全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2およびX3の内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2およびX3の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0051】
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として、以下(a)〜(c)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
−−環状カルボジイミド化合物(a)−−
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(2)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(a)」ということがある。)を挙げることができる。
【0053】
【化3】

【0054】
式中、Qaは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(2)の化合物においては、脂肪族基、脂環族基、芳香族基は全て2価である。Qaは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基であることが好ましい。
【0055】
【化4】

【0056】
式中、Ara1、Ara2、Ra1、Ra2、Xa1、Xa2、Xa3、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr1、Ar2、R1、R2、X1、X2、X3、sおよびkと同じである。但し、これらは全て2価である。
かかる環状カルボジイミド化合物(a)としては、以下の化合物が挙げられる。
【0057】
【化5】


【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

【0060】
−−環状カルボジイミド化合物(b)−−
さらに、本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(3)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(b)」ということがある。)を挙げることができる。
【0061】
【化8】

【0062】
式中、Qbは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(3)の化合物においては、Qbを構成する基の内一つは3価である。
bは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
【0063】
【化9】

【0064】
式中、Arb1、Arb2、Rb1、Rb2、Xb1、Xb2、Xb3、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr1、Ar2、R1、R2、X1、X2、X3、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(b)としては、下記化合物が挙げられる。
【0065】
【化10】


【0066】
−−環状カルボジイミド化合物(c)−−
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(c)」ということがある。)を挙げることができる。
【0067】
【化11】

【0068】
式中、Qcは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。Z1およびZ2は、環状構造を担持する担体である。Z1およびZ2は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qcは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
cは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
【0069】
【化12】

【0070】
Arc1、Arc2、Rc1、Rc2、Xc1、Xc2、Xc3、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar1、Ar2、R1、R2、X1、X2、X3、sおよびkと同じである。但し、Arc1、Arc2、Rc1、Rc2、Xc1、Xc2およびXc3は、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。Z1およびZ2は各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Z1およびZ2は結合部であり、複数の環状構造がZ1およびZ2を介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(c)としては、下記化合物を挙げることができる。
【0071】
【化13】

【0072】
−環状カルボジイミド化合物の製造方法−
前記環状カルボジイミド化合物は、特開2011−256337号公報に記載の方法などに基づいて合成することができる。
【0073】
(樹脂フィルム基材の成形)
上記の重縮合工程もしくは固相重合工程を終了した後、得られた既述の本発明のポリエステル樹脂組成物をフィルム状やシート状に成形することによって、ポリエステルフィルムを得ることができる。フィルム状やシート状に成形する場合、ポリエステル樹脂を例えばシリンダ内部にスクリュを備えた一軸混練押出機などの溶融押出機等を用いて溶融混練し、ダイから押出して成形することができる。このとき、好ましい成形温度は、250℃以上300℃以下の範囲、より好ましくは260℃以上290℃以下の範囲である。
押出し機は、一軸でも二軸でもよいが、前記カルボジイミド化合物を添加する場合は、一軸押出機で行うときは原料ポリエステル樹脂と前記カルボジイミド化合物を含有するマスターバッチをホッパー内で混合した状態で押し出すことが好ましく、二軸押出機で行うときはサイドフィーダーから前記マスターバッチを押出し、溶融状態で混合して押し出すことが好ましい。
剪断発熱による熱分解を抑制し、末端COOHの増加を抑制できるという点で二軸の方が好ましく、押出し機内を窒素置換して行なうのがより好ましい。
【0074】
溶融された前記ポリエステル樹脂の溶融樹脂(メルト)は、ギヤポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから押出すことが好ましい。このとき、単層で押出してもよいし、多層で押出してもよい。
【0075】
本発明では、前記樹脂フィルム基材が、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)由来の構造をジオール成分に含むCHDM系ポリエステルを含有する層を少なくとも1層有してもよい。なお、CHDM系ポリエステルとは、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)由来の構造をジオール成分に含むポリエステルのことを言う。
【0076】
−CHDM系ポリエステルを含有する層の組成−
前記CHDM系ポリエステルは、1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の構造をジオール成分(全ジオール中)に、0.1〜20モル%または80〜100モル%含むことが好ましく、より好ましくは、0.5モル%以上16モル%以下あるいは83〜100モル%含むことがより好ましく、1モル%以上12モル%以下あるいは86〜100モル%含むことが特に好ましい。このようにCHDM由来の構造が低い領域(0.1〜20モル%)、高い領域(80〜100モル%)の二つの領域が存在するのは、この領域に於いてポリエステルが結晶構造を取りやすく、高い力学強度、耐熱性を発揮し易いためである。
【0077】
前記CHDM系ポリエステルの1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の構造以外のユニットを形成するための材料としては、ジオール成分として、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオールなどが代表例としてあげられるが、これらに限定されるものではない。その中でも、エチレングリコールを用いることが好ましい。
【0078】
前記CHDM系ポリエステルの1,4−シクロヘキサンジメタノール由来の構造以外のユニットを形成するための材料としては、ジカルボン酸成分として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルインダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などが代表例としてあげられるが、これらに限定されるものではない。
前記CHDM系ポリエステルのジカルボン成分として、少なくともテレフタル酸由来の構造を含むことが好ましい。
本発明では前記CHDM系ポリエステルのジカルボン酸成分にテレフタル酸以外にイソフタル酸(IPA)を加えてもよい。好ましいIPA量は全ジカルボン酸中0モル%以上15モル%以下が好ましく、より好ましくは0モル%以上12モル%以下、さらに好ましくは0モル%以上9モル%以下である。
【0079】
−積層−
本発明では前記樹脂フィルム基材が前記CHDM系ポリエステルを含有する層を有していても有していなくてもよく、有している場合も単層であっても、2以上の層を有していてもよい。すなわち、前記CHDM系ポリエステルを含有する層以外のその他の層と積層されていてもよい。特にCHDM由来の構造が80〜100モル%のとき、積層構造にすることが好ましい。これは、CHDM由来の構造の比率が高くなると、ポリエチレンテレフタレート(PET)に対し、耐候性(耐加水分解性)は高くなり易いが、力学強度が弱くなり易い。
このため、他のポリエステル(例えばPET)と積層することで相補することができ、好ましい。
【0080】
本発明のポリエステルフィルムは、前記CHDM系ポリエステルを含有する層(P1層と称する)と、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルを含有する層(P2層と称する)とが積層された態様も好ましい。
【0081】
P2層は、ジカルボン酸ユニット中テレフタル酸ユニットを95%以上有し、かつジオールユニット中エチレングリコールユニットを95モル%以上含むものをさす。
またP2層のIVは0.7以上0.9以下が好ましく、より好ましくは0.72以上0.85以下、さらに好ましくは0.74以上0.82以下である。このようにIVを高めにすることでwet、dryサーモでの分解(分子量低下)を抑制することができる。
【0082】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法に用いられる前記樹脂フィルム基材は、P1層とP2層の層数の和は、2層以上が好ましく、より好ましくは2層以上5層以下、さらに好ましくは2層以上4層以下である。中でも好ましいのが、P2層の両側をP1層で挟んだ3層構造、あるいはP1層の両側をP2層で挟んだ3層構造、P2層とP1層を積層した2層構造である。
【0083】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法に用いられる前記樹脂フィルム基材が2層以上の場合、厚みはP1層の総和が全厚みの5%以上40%以上が好ましく、より好ましくは7%以上38%以上、さらに好ましくは10%以上35%以下である。この下限値以上にすることで高い耐候性を発現でき、この上限値以下にすることで高い力学強度を発現し易い。
このような積層構造は定法により調製することができ、複数の押出し機から供給されたメルト(樹脂の融体)をマルチマニフォールドダイ、フィードブロックダイを用い積層し押出すことで達成できる。
ポリエステルフィルムの各層の厚みは、フィルムの断面を、SIMSを用い測定し、P1層の特徴フラグメント、P2層の特徴フラグメントでイメージングすることで求めることができる。
【0084】
溶融押出しされたメルトは、キャスティングドラム上で冷却され、固化されてフィルム状に成形される。また、キャスティングドラム以外の方式としては、溶融物を均一な圧力で挟圧するタッチロール方式でもよい。
【0085】
冷却ロール自体の温度は、10℃〜80℃が好ましく、より好ましくは15℃〜70℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。
【0086】
帯状に吐出された溶融樹脂(メルト)の固化後(延伸前)の厚みは、2600μm〜6000μmの範囲であることで、その後の延伸を経て、所望の厚みのポリエステルフィルムを得ることができる。前記メルトの固化後の厚みは、3100μm〜6000μmの範囲が好ましく、より好ましくは3300μm〜5000μmであり、さらに好ましくは3500μm〜4500μmの範囲である。固化後延伸前の厚みが6000μm以下であることで、メルト押出し中に皺が発生し難く、ムラの発生が抑えられる。また、固化後延伸前の厚みが2600μm以上であることが、メルトの腰が弱いために発生するチルロール(固化するための冷却ロール)への密着むらを抑制し、フィルムのむら低減の観点から好ましい。
【0087】
本発明の製造方法では、上記製膜工程の後に、作製された押出フィルム(未延伸フィルム)を縦方向および横方向に延伸後、テンター内の熱処理ゾーンで熱固定および熱緩和を施し、冷却して巻き取る工程を含むことが好ましい。
後述するコロナ処理工程後に感光性層を作製するために感光材料用塗布液を塗布する場合は、縦方向および横方向に延伸後のフィルムの厚みは50〜300μmであることが好ましく、100〜250μmであることがより好ましく、150〜200μmであることが特に好ましい。
また、後述するコロナ処理工程後に太陽電池用バックシートを作製するために任意の塗布液を塗布する場合は、縦方向および横方向に延伸後のフィルムの厚みは100〜400μmであることが好ましく、150〜350μmであることがより好ましく、200〜300μmであることが特に好ましい。
【0088】
<コロナ処理>
本発明の製造方法は、ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム基材の表面をコロナ処理する工程を含む。
前記基材の一方の面のみに前記表面処理が施されていても、前記基材の両表面に前記表面処理が施されていてもよく、例えば前記樹脂フィルム基材に後述する他の機能層を塗布により両面に形成する場合は、両表面に前記表面処理が施されていることが好ましい。
前記コロナ処理の好ましい態様は、樹脂フィルム基材に対して、0.1〜2.0kJ/m2であることが特に好ましく、0.15〜1.0kJ/m2が更に好ましい。
【0089】
<コロナ処理工程後加熱>
本発明の製造方法は、前記コロナ処理後の前記樹脂フィルム基材を該樹脂フィルム基材のTgを超えて、Tmeta以下に加熱処理するコロナ処理後加熱工程を含む(ここで、Tgはガラス転移温度(単位:℃)を表す)。
前記コロナ処理工程後加熱において、樹脂フィルム基材のTgを超えて加熱処理することにより、密着性を大きく改善することができる。また、Tmeta以下で加熱処理することにより、樹脂フィルム基材が加熱ロールなどの加熱装置に粘着したり、搬送ロールに粘着したりすることがなく、製膜適性が良好となる。ここで、コロナ処理工程後に加熱するとは、コロナ処理と同時に電極対向ロールを加熱する態様を含まないことを意味する。また、コロナ処理後の加熱は、前記コロナ処理を施した側とは反対側の面にコロナ処理を施すための電極対向ロールで行わずに、コロナ処理装置とは独立した加熱装置を用いることが、製造適性の観点から好ましい。
また、このような温度範囲でコロナ処理工程後加熱を行うことで、WBL層の形成を抑制することがきる。WBL層の形成の抑制については、コロナ処理未処理のフィルム、コロナ処理だけを行ったフィルム、および、コロナ処理後に加熱処理を行ったフィルムの表面を削り取り、DSCによる結晶化温度(降温結晶化;Tc’)を測定して、コロナ処理だけを行ったフィルム表面のTc’が未処理の場合よりも高温側(結晶化が早い、すなわち低分子化)にシフトし、また、コロナ処理後に加熱処理を行ったフイルム表面のTc’では高温側へのシフトが見られないことを確認することで、抑制の有無を判断することができる。
【0090】
本発明の製造方法では、前記コロナ処理工程後加熱の温度は、Tg〜Tmetaであることが好ましく、Tg+30℃〜Tg+120であることがより好ましく、Tg+60℃〜Tg+90℃であることが特に好ましい。また、前記ポリエステルがPETの場合、前記コロナ処理工程後加熱の温度は、70〜200℃であることが好ましく、100〜180℃であることがより好ましく、130〜160℃であることが特に好ましい。
前記コロナ処理をしてから好ましくは30秒以内、より好ましくは20秒以内、更に好ましくは10秒以内に前記コロナ処理工程後加熱をするのがよい。前記コロナ処理をしてから30秒以内に加熱すると、コロナ効果が減衰(ラジカルが消失)し難く、前記コロナ処理工程後加熱による密着向上効果が得られやすい。
【0091】
本発明の製造方法では、前記加熱処理の方法や用いる加熱処理装置については特に制限はない。その中でも、前記加熱処理が、加熱気体(加熱エアー)の送風、赤外線の照射または加熱ロールとの接触であることが好ましいが、フィルム加熱温度の制御性や、エアーによる異物付着の問題、赤外線照射によるバルク物性変化の問題が起こりにくい観点から、加熱ロールとの接触であることがより好ましい。
【0092】
<再度のコロナ処理>
本発明の製造方法は、前記コロナ処理後加熱工程の後に、前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面に再度のコロナ処理を行ってもよい。また、再度のコロナ処理における出力の好ましい範囲は、いずれも同様である。
前記コロナ処理と、前記再度のコロナ処理を、異なるコロナ処理装置によって行ってもよい。
また、前記コロナ処理と前記再度のコロナ処理の間に前記樹脂フィルム基材を一度も巻き取らずに、前記再度のコロナ処理をオンラインで行うことが、巻き取りまたは送り出し時にキズ等が余計につく可能性を減らす観点から好ましい。
さらに、本発明の製造方法に含まれる全てのコロナ処理と全ての加熱処理が完了するまでの間に、前記樹脂フィルム基材を一度も巻き取らずに、オンラインで行うことがより好ましい。
【0093】
本発明の製造方法では、コロナ処理工程を複数回行う場合、コロナ処理工程を連続して行わず、複数回のコロナ処理の間に加熱工程を行うことが、WBL層の形成を抑制する観点から好ましい。さらに、コロナ処理と熱処理をともに複数回行なう場合、コロナ処理と加熱処理を交互に行うことが好ましい。すなわち、コロナ処理とその後の加熱処理を1組の複合処理として行うことが好ましい。
なお、コロナ処理と熱処理をともに複数回行なう場合もコロナ処理の回数と加熱工程の回数は同じでなくてもよく、2回目以降のコロナ処理の後に加熱工程を行わずに、後述する塗布工程を行なってもよい。また、本発明の製造方法において、加熱ロールが2個以上連続して配置されている態様や、複数個の加熱ヒーターを用いる態様を否定するものではない。
コロナ処理とその後の加熱処理を1組の複合処理を考えた場合、この複合処理は複数回行ってもよい。本発明者らにて、コロナ処理および加熱処理を交互に繰り返し行い、各過程での接触角および結晶化温度(Tc’)がどのように変化するかを調べた結果、コロナ処理によって接触角は低下するが、加熱することで増加し、例えば、コロナ→加熱→コロナ→加熱の複数回処理を行った後の接触角は、未処理の場合よりも増加した。また、Tc’については、同じ処理を行った結果では、未処理の場合よりも低温側にシフトした。
このことから、コロナ処理とその後の加熱処理の複合処理を繰り返すことで、官能基をより増やすことができ、更にWBL層の生成を抑制するだけでなく、ラジカルの架橋が進行し、表面が強化(分子量が増大)する効果があると考えられる。また、表面が強化された状態であれば、加熱後にコロナ処理を行ってもWBL層の生成が少なく、著しい密着低下を引き起こさない。
コロナ処理とその後の熱処理の複合処理は、複合処理として1〜3回であることが好ましく、1〜2回であることがより好ましい。なお、2回目以降の加熱処理の好ましい態様についても、前記コロナ処理後加熱工程と同様である。
具体的に図面を参照して、本発明の製造方法におけるコロナ処理と加熱処理の好ましい態様について説明する。図1〜図4に記載の本発明の製造方法に用いられる製造装置では、巻き出しロール10から樹脂フィルム基材が巻き出され、コロナ処理用電極1と電極対向ロール12などから構成されるコロナ処理装置によって樹脂フィルム基材の少なくとも一方の表面に、好ましくは搬送されながらコロナ処理を施される。コロナ処理後、樹脂フィルム基材に対し、図1および図4に記載の加熱ロール2に接触させたり、図2に記載の加熱気体送風ゾーン3中で加熱気体を送風したり、図3に記載の赤外ヒーター4(カーボンヒータなど)から赤外線を照射したりすることで、本発明で規定する温度範囲となるように樹脂フィルム基材表面が加熱される。加熱ロール2の加熱方法や配置方法については特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。加熱気体送風ゾーン3における送風の方法や送風口の配置、送風の向き、フィルムのいずれの面に対して送風するかなどについても特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。赤外ヒーター4における赤外線の照射量、配置などについても特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
前記コロナ処理後加熱工程の後、図1に記載のようにそのまま巻き取りロール11に巻き取られてもよい。また、図4に記載のように、再度のコロナ処理や、再度の加熱処理を行ってもよく、その場合はオンラインでフィルムを一度も巻き取らずにすべてのコロナ処理および加熱処理を行ってもよい。
【0094】
<塗布工程>
本発明の製造方法は、前記コロナ処理後加熱工程の後に前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面上にポリマー溶液を塗布する工程を含む。
本発明の製造方法は、前記コロナ処理後加熱工程の後に塗布工程を行う場合、前記コロナ処理後加熱工程と塗布工程の間にその他の工程を含んでいても、含まなくてもよい。
すなわち、前記コロナ処理後加熱工程の直後に塗布工程を行ってもよく、前記コロナ処理後加熱工程の後に再度のコロナ処理を行った後に塗布工程を行ってもよい。さらに前記再度のコロナ処理後の後に加熱処理を行った後に、塗布工程を行ってもよい。
【0095】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法では、前記塗布工程においてポリマー溶液により形成される塗布層は、特に機能に制限はなく、任意の機能層として用いることができる。
また、前記塗布層は、前記樹脂フィルム基材の表面に接触させて配置される層である。前記塗布層は、表面処理された樹脂フィルム基材との密着が改善される。
【0096】
前記塗布工程によって前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面に形成された塗布層は、ポリエステルフィルムを構成する任意の層に適用することができる。ポリマー層は、例えば、後述する下塗り層やその他の機能層として適用することができる。その中でも下塗り層として用いることが特に好ましい。
【0097】
(1)下塗層の形成
本発明の製造方法では、前記塗布工程として、下塗層用塗布液を前記樹脂フィルム基材に塗布する工程を含むことが好ましい。
【0098】
(2)その他の塗布層の形成
本発明の製造方法では、前記下塗り層としての塗布層の上に、さらにその他の層を積層する工程を含んでいてもよい。
本発明の製造方法では、その他の機能層を塗布により設けてもよい。
【0099】
(1−1)感光材料の製造方法への適用時の下塗層の形成
本発明の製造方法を感光材料の製造方法に適用する場合の塗布液については、例えば特開2007−270066号公報に記載の構成の材料を用いることができる。
【0100】
具体的に図面を用いて、本発明の感光材料の製造方法について説明する。本発明の感光材料の製造方法は、以下の工程により、図5に記載の感光材料が形成されることが好ましい。ハロゲン化銀感光材料の製造工程では、まず、支持体24(ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム基材)の表面側にラテックス系下塗液を塗布し(ステップS1)、これを乾燥させることにより(ステップS2)、ラテックス系下塗層23を形成することが好ましい。次に、ラテックス系塗布層の表面にゼラチン系下塗液を塗布した後(ステップS3)、ゼラチン系下塗層の表面側に感材塗布液を塗布し(ステップS4)、乾燥させることによって(ステップS5)、感材塗布層21を形成する。
【0101】
本発明の製造方法における前記コロナ処理工程および前記コロナ処理後加熱工程方法は、たとえば上記のステップS1、S2で下塗層を形成する際に適用することができる。本発明の製造方法を適用することによって、ラテックス系下塗層と樹脂フィルム基材との密着性を向上させることができる。
【0102】
前記下塗層用塗布液は、親水性コロイドを含むが、親水性コロイドとしては、ゼラチン、フタル化ゼラチン、マレイン化ゼラチンなどのアシル化ゼラチン:カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体:アクリル酸、メタクリル酸もしくはアミド(アクリルアミド等)などをゼラチンにグラフトさせたグラフト化ゼラチン:ポリビニルアルコール:ポリヒドロキシアルキルアクリレート:ポリビニルピロリドン:ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体:ガゼイン:アガロース:アルブミン:アルギン酸ソーダ:ポリサッカライド:寒天:でんぷん:グラフトでんぷん:ポリアクリルアミド:ポリエチレンイミンアシル化物:これらの部分加水分解物などの合成もしくは天然の親水性高分子化合物:等が挙げられる。これらの材料は、単独もしくは混合して使用できる。これらの中でもゼラチンが好ましい。また、親水性コロイドの他に、バインダーとして、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、SBR、PVDC樹脂等も併用することができる。
【0103】
前記下塗層用塗布液は、下塗層形成前に、温度50〜80℃で10分〜5時間保持することが好ましいが、より好ましくは、温度60〜70℃で30分〜3時間、さらに好ましくは温度60〜70℃で1〜2時間である。
【0104】
前記下塗層用塗布液は、そのpHが4〜8であることが塗布液の安定性の観点から好ましく、より好ましくはpHが5〜8であり、さらに好ましくはpHが6〜7である。
【0105】
前記下塗層用塗布液は、炭素数3以下の一価の飽和アルコールを含むことが、塗布時のハジキ故障を抑制する観点から好ましい。この一価の飽和アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が好適に挙げられる。これら一価の飽和アルコールは一種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これら一価の飽和アルコールは、上記目的のために意図的に添加されるが、例えば、後述するような溶媒を兼ねて添加される場合もあり、また、塗布液中に含まれる素材の溶媒、素材の合成、精製過程等で使用する溶媒等として、あるいは薬品貯蔵タンク・配管等の洗浄溶剤として使用される場合に、塗布液に混ざってしまうことがある。ただし、塗布液中のアルコール含有量は、20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。
【0106】
前記下塗層塗布液には、架橋剤、マット剤、染料、フィラー、界面活性剤などを含んでもよい。架橋剤としては、エポキシ、イソシアネート、メラミンなどの公知の化合物が用いられる。また、特開昭51−114120号公報などに記載されている活性ハロゲン架橋剤も好ましい。マット剤は、製造における高速搬送性を良くする目的で好適に用いられる。マット剤としては、平均粒径が0.1〜8μm、好ましくは0.2〜5μm程度のスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカなどの微粒子が用いられている。マット剤の使用量は、熱現像感光材料1m2当たり1〜200mgが好ましく、2〜100mgがより好ましい。フィラーとしては、コロイダルシリカ等を用いることができる。界面活性剤としては、アニオン、ノニオン、カチオン界面活性剤を用いることができる。染料としては、アンチハレーション、色調調整用染料などを用いることができる。
【0107】
前記下塗層塗布液は、水系、有機溶媒系いずれでもよいが、コストや環境の点からは水系分散液であることが好ましい。ここで「水系分散液」とは、塗布液の溶媒(分散媒)の30質量%以上、より好ましくは50質量%以上が水である塗布液をいう。具体的な溶媒組成としては、例えば、水以外に以下の混合溶液が挙げられる。水/メタノール=85/15、水/メタノール=70/30、水/メタノール/ジメチルホルムアミド(DMF)=80/15/5、水/イソプロピルアルコール=60/40等(ただしここで数字は質量比を表す)。
【0108】
前記下塗層は、上記の下塗層用塗布液を用いて、塗布・乾燥し、形成されたものである。本発明では、塗布方法としてバーコーターが用いられる。その際の条件として、Wet塗布量が7.0ml/m2以上30ml/m2以下、好ましくは8.0ml/m2以上10ml/m2以下に設定される。Wet塗布量を7.0ml/m2未満だと、塗布液に凝集が発生した際にすぐに面状故障が発生するが、7.0ml/m2以上とすることによって、凝集が発生しても面状故障の発生を防止できる。また、Wet塗布量が30ml/m2を超えると、塗布ムラ等の面状故障が発生するが、Wet塗布量を30ml/m2以下とすることによってこれを防止できる。
【0109】
前記下塗層は1層のみ設けても、2層以上設けてもよい。ただし、複数の下塗層を設ける場合には、各下塗層をバーコーターによって逐次塗布するとともに、その各塗布時においてWet塗布量を7.0ml/m2以上30ml/m2以下、好ましくは8.0ml/m2以上10ml/m2以下に設定する。これにより、各下塗層において面状故障の発生を防止できる。なお、各下塗層の厚さは、1層あたり0.05〜5μm、より好ましくは0.1〜3μm程度が好ましい。
【0110】
前記下塗層の塗布後の乾燥方法は特に限定されるものではないが、例えば25〜200℃程度の温度で0.5〜20分間程度とすればよく、この条件で乾燥させることができる。
【0111】
以上はハロゲン化銀感光材料の下塗りに適用した例であるが、その他の感光材料、光学フィルム材料の下塗りに対しても好適に用いることができる。また、下塗り素材としても、水分散系ラテックス、ゼラチン、PVA等、ポリエステル樹脂バインダー、ポリウレタン樹脂バインダー、UV効果樹脂、グラフト重合用素材等を用いた場合においても同様の効果が得られる。
【0112】
(2−1)感光材料の製造方法への適用時のその他の塗布層の形成
本発明の製造方法で得られた本発明のポリエステルフィルムを感光材料に用いる場合、前記その他の機能層としては、感光性層(感材塗布層)や画像形成層を挙げることができる。
【0113】
前記感光性層や有機銀塩含有層について説明する。感光性層は、感光性ハロゲン化銀を含有することが好ましい。画像形成層は有機銀塩を含有する有機銀塩含有層である。通常、画像形成層は感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(乳剤層)でもあり、このような場合、以下、感光性層と画像形成層とを区別無く用いる場合がある。
【0114】
前記感光性層における、ハロゲン化銀の粒子サイズ、形状、ハロゲン化銀粒子最表面に存在させる金属錯体の種類、ハロゲン化銀粒子に含有させることのできる金属原子、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法、感光性層中に含まれる感光性ハロゲン化銀の種類と添加量、感光性ハロゲン化銀の形成方法、感光性ハロゲン化銀と併用される有機銀塩、感光性ハロゲン化銀と有機銀塩との混合方法や比率、ハロゲン化銀を感光性層中に添加するタイミング、還元剤、現像促進剤、カブリ防止剤、安定剤、安定剤前駆体、色調剤、可塑剤、潤滑剤、かぶらせ物質、超硬調化剤、各種染料や顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、被覆助剤については特開2007−270066号公報に記載の態様を好ましく用いることができる。
【0115】
前記感光性層に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンを使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0116】
前記画像形成層である有機銀塩含有層のバインダーは、いかなるポリマーであってもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは、水もしくは有機溶媒又はエマルションから被覆形成してもよい。
バインダーとなるポリマーは単独種で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その重量平均Tgが上記の範囲に入ることが好ましい。
【0117】
前記有機銀塩含有層塗布液のバインダーは水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。
前記水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。
前記ポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。
【0118】
前記有機銀塩含有層塗布液には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。
前記有機銀塩含有層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。
【0119】
前記画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0120】
本発明の適用例においては、上記各層は、いかなる方法で塗布されてもよい。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、又は米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著"LIQUID FILM COATING"(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、又はスライドコーティングが好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1にある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791号明細書及び英国特許第837,095号明細書に記載の方法により2層又はそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0121】
その他の各層の好ましい態様については特開2007−270066号公報に記載の態様を挙げることができる。
【0122】
前記感光性層以外のその他の層については特開2007−270066号公報に記載の非感光性層を用いることでき、例えば表面保護層、バック層、アンチハレーション層を挙げることができ、同文献に記載の態様を好ましく用いることができる。
【0123】
(1−2)太陽電池保護シートの製造方法への適用時の下塗層の形成
本発明の製造方法を太陽電池保護シートの製造方法に適用する場合、前記下塗層を塗布するための方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はなく、例えば、特開2011−29397に記載の構成の材料等も用いることができるが、本発明はそれに拘るものではない。
前記塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。
前記下塗層用塗布液に用いる溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、塗布は、2軸延伸した後の樹脂フィルム基材に塗布してもよいし、1軸延伸後の樹脂フィルム基材に塗布した後に初めの延伸と異なる方向に延伸する方法でもよい。さらに、延伸前の基材に塗布した後に2方向に延伸してもよい。
前記下塗層用塗布液の塗布量は、求める下塗層の厚みに応じて変えることが好ましく、2g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは0.05g/m2〜2g/m2であり、更に好ましくは0.1g/m2〜1.5g/m2である。
前記下塗層用塗布液が前記無機酸化物フィラーを含む場合、その塗布量は0.005〜0.05g/m2であることが好ましく、0.005〜0.03g/m2であることがより好ましく、0.005〜0.02g/m2であることが特に好ましい。
【0124】
前記下塗層用塗布液の厚みは、好ましくは0.05μm〜2μmであり、更に好ましくは0.1μm〜1.5μmである。厚みが0.05μm以上であることにより、必要な接着性を確保しやすい。
【0125】
前記下塗層用塗布液(好ましくは、後述する複合ポリマーを含むポリマー層用塗布液)は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0126】
前記下塗層用塗布液としては、これに含まれる溶媒中の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上が水である水系分散液であることが好ましい。水系分散液は、環境負荷の点で好ましく、また水の割合が50質量%以上であることにより、環境負荷が特に小さくなる点で有利である。
【0127】
前記下塗層用塗布液には、必要に応じて、架橋剤、界面活性剤、フィラー、複合ポリマーなどのバインダー等を添加してもよい。
【0128】
前記下塗層用塗布液が、架橋剤を含むことが、得られるポリエステルフィルムの塗布層を架橋構造にして、より湿熱耐久性を改善する観点から好ましい。
本発明では、前記下塗層用塗布液に架橋剤を添加して、後述する得られるポリマー層が架橋構造を有するようにすることが好ましい。
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。その中でも、湿熱経時後の密着性を確保する観点から、本発明ではオキサゾリン系の架橋剤を用いることが好ましい。
【0129】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく用いられる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS−500、同WS−700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
【0130】
前記カルボジイミド系架橋剤の具体例として、カルボジライトV−02−L2(日清紡ケミカル(株)製)の他、以下の化合物などを挙げることができる。カルボジライトSV−02(日清紡ケミカル(株)製)、カルボジライトE−01(日清紡ケミカル(株)製)。
【0131】
本発明の製造方法では、前記下塗層用塗布液が、バインダーに対して5〜50質量%の架橋剤を含有することが、好ましく、10〜40質量%の架橋剤を含有することがより好ましく、20〜40質量%の架橋剤を含有することが特に好ましい。架橋剤の添加量が5質量%以上であると、塗布層の強度及び密着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0132】
前記界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1〜15mg/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/m2である。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m2以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m2以下であると、接着を良好に行うことができる。
【0133】
前記下塗層用塗布液には、更に、フィラーを添加してもよい。
前記無機酸化物フィラーとしては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましく、シリカがより好ましい。
【0134】
前記無機酸化物フィラーの粒径は、体積平均粒径で10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0135】
前記無機酸化物フィラーの形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0136】
前記無機酸化物フィラーの含有量は、前記下塗層用塗布液中のバインダーに対して、5〜400質量%の範囲とすることが好ましい。無機微粒子の含有量は、5質量%以上であれば湿熱雰囲気に曝されたときに良好な接着性が保持でき、400質量%以下であれば下塗層の上に積層する白色含有層の面状が悪化しにくくなる。
中でも、前記無機酸化物フィラーの含有量は、50〜300質量%の範囲がより好ましい。
【0137】
前記前記下塗層用塗布液は、バインダーを含有することができる。本発明の製造方法では、バインダーとして、下塗層が後述の複合ポリマー、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、後述の複合ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることがより好ましい。また、これらのバインダーは単独で用いても、2種以上用いてもよい。
【0138】
前記下塗層用塗布液は、分子中に下記一般式(I)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とを含む前記複合ポリマーを少なくとも一種を含有することが好ましい。
一般式(I)
【化14】

一般式(I)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、nは1以上の整数を表す。R1およびR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のR1は互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0139】
この複合ポリマーを含有することにより、支持体である表面処理された樹脂フィルム基材との間の湿熱環境下における長期の密着耐久性、すなわち熱や水分が与えられて劣化しやすい剥離耐性、形状安定性を従来に比べて飛躍的に向上させることができる。
【0140】
前記複合ポリマーは、下記一般式(I)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とが共重合した共重合体であり、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。前記複合ポリマーはブロック共重合体であることが好ましい。前記一般式(I)で表されるポリシロキサン構造単位、及び共重合される非ポリシロキサン系構造単位は、それぞれ一種単独でもよく、二種以上であってもよい。
【0141】
前記一般式(I)で表されるポリシロキサン構造単位は、線状、分岐状あるいは環状の構造を有する、各種のポリシロキサンに由来するポリシロキサンセグメントである好ましい。
【0142】
前記複合ポリマー中の前記一般式(I)で表されるポリシロキサンセグメント構造単位について、好ましい態様を説明する。
前記R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表す。
【0143】
前記R1及びR2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0144】
前記1価の有機基は、Si原子と共有結合可能な1価の有機基を表すことが好ましい。
1およびR2で表される前記「Si原子と共有結合可能な1価の有機基」は、無置換でも置換基を有してもよく、例えば、アルキル基(例:メチル基、エチル基など)、アリール基(例:フェニル基など)、アラルキル基(例:ベンジル基、フェニルエチルなど)、アルコキシ基(例:メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)、アリールオキシ基(例;フェノキシ基など)、メルカプト基、アミノ基(例:アミノ基、ジエチルアミノ基など)、アミド基等が挙げられる。
その中でも、樹脂フィルム基材との密着性及び湿熱環境下での耐久性の点で、前記R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、無置換の又は置換された炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基、エチル基)、無置換の又は置換されたフェニル基、メルカプト基、無置換のアミノ基およびアミド基が好ましい。前記R1およびR2はそれぞれ独立により好ましくは、湿熱環境下での耐久性の点で、無置換の又は置換されたアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4の無置換アルコキシ基である。
【0145】
前記nは1〜5000であることが好ましく、1〜1000であることが特に好ましい。
【0146】
前記複合ポリマー分子全体に対して、前記一般式(I)で表されるポリシロキサン構造単位は15〜85質量%であることが好ましく、その中でも樹脂フィルム基材との密着性及び湿熱環境下での耐久性の点で、20〜80質量%の範囲がより好ましい。
ポリシロキサン構造単位の比率は、15質量%以上であれば樹脂フィルム基材との密着性及び湿熱環境下に曝された際の密着耐久性が改善し、85質量%以下であれば塗布液が安定になる。
【0147】
また、前記複合ポリマー中、前記一般式(I)で表されるポリシロキサン構造単位部分と共重合する、非ポリシロキサン系構造単位部分としては、非ポリシロキサン系構造単位が繰り返し単位として共重合している以外は特に制限されるものではなく、任意のポリマーに由来のポリマーセグメントのいずれであってもよい。ポリマーセグメントの前駆体である重合体(前駆ポリマー)としては、例えば、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体等の各種の重合体等が好ましく挙げられ、すなわち、本発明では前記非ポリシロキサン系構造単位が、ビニル系構造単位、ポリエステル系構造単位およびポリウレタン系構造単位の少なくとも一種であることが好ましい。すなわち、本発明では複合ポリマーの非ポリシロキサン系構造単位が、ビニル系構造単位、ポリエステル系構造単位およびポリウレタン系構造単位の少なくとも一種であることが好ましい。調製が容易なこと及び耐加水分解性に優れる点から、ビニル系重合体及びポリウレタン系重合体がより好ましい。
【0148】
前記ビニル系重合体の代表的な例としては、アクリル系重合体、カルボン酸ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体、フルオロオレフィン系重合体等の各種の重合体が挙げられる。中でも、設計の自由度の観点から、アクリル系重合体が特に好ましい。
なお、非ポリシロキサン系構造単位を構成する重合体は、1種単独でもよいし、2種以上の併用であってもよい。
【0149】
また、非ポリシロキサン系構造単位をなす前駆ポリマーは、酸基及び中和された酸基の少なくとも1つ並びに/又は加水分解性シリル基を含有するものが好ましい。このような前駆ポリマーのうち、ビニル系重合体は、例えば、(a)酸基を含むビニル系単量体と加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系単量体とを、これらと共重合可能な単量体と共重合させる方法、(2)予め調製した水酸基並びに加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系重合体にポリカルボン酸無水物を反応させる方法、(3)予め調製した酸無水基並びに加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系重合体を、活性水素を有する化合物(水、アルコール、アミン等)と反応させる方法などの各種方法を利用して調製することができる。
このような前駆ポリマーは、例えば、特開2009−52011号公報の段落番号0021〜0078に記載の方法を利用して製造、入手することができる。
【0150】
前記下塗層用塗布液は、バインダーとして、前記複合ポリマーを単独で用いてもよいし、他のポリマーと併用してもよい。他のポリマーを併用する場合、前記複合ポリマーの比率は、全バインダーの30質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。複合ポリマーの比率が30質量%以上であることにより、樹脂フィルム基材との密着性及び湿熱環境下での耐久性により優れる。
【0151】
前記複合ポリマーの分子量は5000〜100,000であることが好ましく、10000〜50,000であることがより好ましい。
【0152】
前記複合ポリマーの調製には、(i)前記非ポリシロキサン系構造単位の前駆ポリマーと、前記一般式(I)で表されるポリシロキサン構造単位を有する特定のポリシロキサンとを反応させる方法、(ii)前記非ポリシロキサン系構造単位の前駆ポリマーの存在下に、R1及び/又はR2が加水分解性基である前記一般式(I)で表されるポリシロキサン構造単位の構造を有するシラン化合物を加水分解縮合させる方法、等の方法を利用することができる。
前記(ii)の方法で用いられるシラン化合物としては、各種シラン化合物が挙げられるが、アルコキシシラン化合物が特に好ましい。
【0153】
前記(i)の方法により複合ポリマーを調製する場合、例えば、前駆ポリマーとポリシロキサンの混合物に、必要に応じて水と触媒を加え、20〜150℃程度の温度で30分〜30時間程度(好ましくは50〜130℃で1〜20時間)反応させることにより調製することができる。触媒としては、酸性化合物、塩基性化合物、金属含有化合物等の各種のシラノール縮合触媒を添加することができる。
また、前記(ii)の方法により複合ポリマーを調製する場合、例えば、前駆ポリマーとアルコキシシラン化合物の混合物に、水とシラノール縮合触媒を添加して、20〜150℃程度の温度で30分〜30時間程度(好ましくは50〜130℃で1〜20時間)加水分解縮合を行うことにより調製することができる。
【0154】
(2−2)太陽電池保護シートの製造方法への適用時のその他の塗布層の形成
本発明の製造方法を太陽電池保護シートの製造方法に適用する場合、前記その他の機能層としては、白色顔料層、易接着性層、バック層などを挙げることができる。
【0155】
白色顔料層の形成は、顔料を含有するポリマーシートを基材に貼合する方法、基材形成時に白色顔料層を共押出しする方法、塗布による方法等により行なえる。具体的には、樹脂フィルム基材の表面に直にあるいは厚み2μm以下の下塗層を介して、貼合、共押出し、塗布等することにより白色顔料層を形成することができる。形成された白色顔料層は、樹脂フィルム基材の表面に直に接した状態であっても、あるいは下塗層を介して積層した状態であってもよい。
上記のうち、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。
【0156】
塗布による場合、塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。
塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
白色顔料層用塗布液を前記下塗層上に塗布することが好ましい。
【0157】
本発明における白色顔料層の機能は、入射光のうち太陽電池セルを通過して発電に使用されずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることにある。
【0158】
前記白色顔料層は、白色顔料の少なくとも一種を含有する。
前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料を、適宜選択して含有することができる。
【0159】
前記白色顔料層に好適なバインダーは、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等であり、耐久性の観点からは、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂としては、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例としては、ポリオレフィンの例としてケミパールS−120、S−75N(ともに三井化学(株)製)、アクリル樹脂の例としてジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬(株)製)、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例としてセラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)、H7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0160】
本発明における白色顔料層には、バインダーおよび顔料以外に、必要に応じて、更に架橋剤、界面活性剤、フィラー等の添加剤を添加してもよい。
【0161】
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。中でも、オキサゾリン系の架橋剤が好ましく、具体的には後述の易接着性層に使用可能なものを好適に用いることができる。
架橋剤を添加する場合、その添加量としては、白色顔料層中のバインダーに対して、5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であると、白色顔料層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保てる。
【0162】
前記界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1〜15mg/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/m2である。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m2以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m2以下であると、接着を良好に行なうことができる。
【0163】
前記白色顔料層には、上記の顔料とは別に、さらに、シリカ等の無機酸化物フィラーを添加してもよい。無機酸化物フィラーを添加する場合、その添加量は、白色顔料層中のバインダーに対して、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。無機酸化物フィラーの添加量が20質量%以下であると、顔料の比率低下を抑えつつ必要な反射率を得ることができる。
【0164】
本発明の太陽電池保護シートには、特に太陽電池用のバックシートとして用いる場合、前記複合ポリマーを含有するポリマー層(特に白色顔料層)の上に、さらに易接着性層が設けられていてもよい。易接着性層は、バックシートを電池側基板(電池本体)の太陽電池素子(以下、発電素子ともいう)を封止する封止材と強固に接着するための層である。
【0165】
易接着性層は、バインダー、無機微粒子を用いて構成することができ、必要に応じて、さらに添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。易接着性層は、電池側基板の発電素子を封止するエチレン−ビニルアセテート(EVA;エチレン−酢酸ビニル共重合体)系封止材に対して、10N/cm以上(好ましくは20N/cm以上)の接着力を有するように構成されていることが好ましい。接着力が10N/cm以上であると、密着性を維持し得る湿熱耐性が得られやすい。
【0166】
なお、接着力は、易接着性層中のバインダー及び無機微粒子の量を調節する方法、バックシートの封止材と接着する面にコロナ処理を施す方法などにより調整が可能である。
【0167】
易接着性層は、バインダーの少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられ、中でも耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。
【0168】
好ましいバインダーの例としては、ポリオレフィンの具体例としてケミパールS−120、S−75N(ともに三井化学(株)製)、アクリル樹脂の具体例としてジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬(株)製)、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の具体例としてセラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)とH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0169】
バインダーの易接着性層中における含有量は、0.05〜5g/m2の範囲とする。中でも、0.08〜3g/m2の範囲が好ましい。バインダーの含有量は、0.05g/m2未満であると所望とする接着力が得られず、5g/m2を超えると良好な面状が得られない。
【0170】
易接着性層は、無機微粒子の少なくとも一種を含有することができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの密着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
【0171】
無機微粒子の粒径は、体積平均粒径で10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0172】
無機微粒子の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0173】
無機微粒子の含有量は、易接着性層中のバインダーに対して、5〜400質量%の範囲とする。無機微粒子の含有量は、5質量%未満であると、湿熱雰囲気に曝されたときに良好な接着性が保持できず、400質量%を超えると、易接着性層の面状が悪化する。
中でも、無機微粒子の含有量は、50〜300質量%の範囲が好ましい。
【0174】
易接着性層には、架橋剤の少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適な架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。中でも、湿熱経時後の密着性を確保する観点から、オキサゾリン系架橋剤が特に好ましい。
【0175】
架橋剤の易接着性層中における含有量としては、易接着性層中のバインダーに対して、5〜50質量%が好ましく、中でもより好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の含有量は、5質量%以上であると、良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や密着性を保持することができ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0176】
本発明における易接着性層には、必要に応じて、更に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0177】
易接着性層の形成は、易接着性を有するポリマーシートを基材に貼合する方法や、塗布による方法が挙げられる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の塗布法を利用することができる。塗布液の調製に用いる塗布溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0178】
易接着性層の厚みには、特に制限はないが、通常は0.05〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であると必要な易接着性を好適に得ることができ、8μm以下であると面状がより良好になる。
また、易接着性層は、着色層の効果を低減させないために、透明であることが好ましい。
【0179】
<太陽電池モジュール>
太陽電池モジュールは、太陽光が入射する透明性の基板と、太陽電池素子と、太陽電池裏面保護シートとを含む。前記太陽電池モジュールは、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と本発明のポリエステルフィルムを含む太陽電池裏面保護シートとの間に配置し、該基板とバックシートとの間をエチレン−ビニルアセテート系封止材で封止して構成されていることが好ましい。
【0180】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0181】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0182】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0183】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0184】
[実施例1]:感光材料用の塗布液との密着性の検討
下記にて作製する樹脂フィルム基材に対して、後述の感光材料用の塗布層塗布液との密着性の検討を行った。
【0185】
<樹脂フィルム基材の作製>
−PETの作製−
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、ポリエステル樹脂を得た。
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更にクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度251℃、攪拌下で、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は500eq/トンであった。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させ、酸価が190eq/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が3ゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で75ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10-3MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力3.0torr(3.99×10-4MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.0torr(1.33×10-4MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、ポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステル樹脂のペレット<断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm>を作製した。
このペレットの固有粘度を測定した結果、IV=0.65であった。
【0186】
−固相重合−
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。
【0187】
−樹脂フィルム基材の成形−
以上のように固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの樹脂フィルム基材を作成した。上記製膜工程の後に、作製された押出フィルム(未延伸フィルム)を縦方向および横方向に延伸後、テンター内の熱処理ゾーンで225℃で熱固定を行った後、熱緩和を施し、冷却して巻き取る工程を行った。こうして、厚み175μmの樹脂フィルム基材(以下、「PET基材」と称する。)を得た。このフィルムについて、DSCによりTmetaを求めたところ、215℃であった。
【0188】
<感光材料用の樹脂フィルム基材の塗布前処理>
(コロナ処理条件)
得られたPET基材に対して、コロナ処理および加熱処理工程をこの順序で行った。用いた装置の概略図を図1〜図4に示す。
実施例1では、得られたPET基材を、巻き出しロール10から巻き出し、電極対向ロール12によって搬送しながら、コロナ処理用電極1によってコロナ処理を以下の条件で行った。すなわち、後述の塗布液を塗布する前のPET基材の一方の表面に対して、20W・min/m2の出力でコロナ処理を施した。
製造順序、並びに、コロナ処理の回数および出力を下記表1に記載した。
<コロナ処理設備>
高周波電源AGI−023(春日電機製)およびSUS5型4山300mm電極(春日電機製)を使用した。
<放電量(出力)(単位:kJ/m2)>
コロナ処理時に印加した電力量(kJ/s)と、コロナ処理幅(電極幅:m)およびフィルムの引取り速度(m/min)を用いて、放電量(kJ/m2)を算出した。
【0189】
(加熱処理工程条件)
上記にて一方の表面に対してコロナ処理を施したPET基材について、加熱ロール2を用いて搬送しながら、以下の条件で加熱した。すなわち、加熱ロールに接しているフィルム表面温度が130℃(上記PET基材のガラス転移温度Tgに対して、Tg+60℃となるよう加熱ロールの温度を制御した。また、加熱処理工程後のPET基材は巻き取りロール11に巻き取った。
加熱処理工程の有無、方法、温度について、下記表1に記載した。
コロナ処理後から、コロナ処理工程後加熱を始めるまでの時間は3秒とした。なお、他の実施例でもこの時間は同様とした。
【0190】
<塗布工程>
(感光材料用の塗布液の調製、樹脂フィルム基材の塗布前処理面への塗布)
前記コロナ処理後加熱工程の後の、前記コロナ処理を施した側のPET基材の表面に、下記組成のラテックス系下塗層用とゼラチンの下塗層を手塗り塗布(バーコーター)でこの順に形成し、恒温槽で乾燥した。
下塗層の塗布では、ラテックス系下塗層用の塗布液として、トリアジン系硬膜剤を含有したスチレンブタジエンゴム(SBR)液を、乾燥後厚み0.3μmとなるように行った。
その後、ゼラチン系液を、乾燥後厚み0.1μmとなるように行った。
その後、更にその上に、ハロゲン化銀塩を含有したゼラチン分散液(エマルジョン層)(乾燥後厚み:2μm)を塗布した。
得られたフィルムを実施例1のポリエステルフィルムとした。
【0191】
<感光材料用のポリエステルフィルムの評価>
−1.密着性−
上記のようにして作製した実施例1のポリエステルフィルムのサンプルシートを特開2007−270066号公報の[0046]に記載の方法で密着性試験を行った。すなわち、実施例1のポリエステルフィルムのサンプルを水に浸し、密着試験機(ふちこすり機)でこすり、乾燥後に5段階で下記の基準にしたがって評価を行った。
1:1.5mmを超えて剥離
2:1.0mmを超えて、1.5mm以下で剥離
3:0.5mmを超えて、1.0mm以下で剥離
4:0.3mmを超えて、0.5mm以下で剥離
5:0.3mm以下で剥離
密着性の評価は、数字が大きいほど下塗層との密着性が大きく、3以上が実用上許容可能な範囲である。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0192】
−2.工程適性−
上記の方法に従ってポリエステルフィルムに下塗液を塗布した。その際のハンドリング性を検討したとき、特に問題がない場合に○評価とし、問題がある場合を×評価とした。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0193】
−3.塗布工程前のフィルム表面近傍における樹脂フィルム基材の結晶化温度−
塗布工程前のフィルム表面近傍における樹脂フィルム基材の結晶化温度について、表面を切削し、GPCによって熱分析で結晶化温度を測定した。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0194】
[実施例2〜11、比較例1〜6]
実施例1において、フィルム製造方法を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各実施例および比較例のポリエステルフィルムフィルムを作製した。
比較例1および2では、加熱ロールを除去した設備を用いて、コロナ処理を1回または2回行った樹脂フィルム基材に対して、塗布工程を行った。比較例3では、加熱ロールを用いて加熱処理を行った後にコロナ処理を行い、コロナ処理後に加熱をしなかった。比較例4では、コロナ処理と加熱処理を同時に行った。比較例5では、樹脂フィルム基材のTg未満の温度で、コロナ処理後の加熱処理を行った。実施例4および6では、加熱処理後に樹脂フィルム基材をそのまま図4のように搬送し、オンラインで2回目以降のコロナ処理や2回目以降の加熱処理を行った。
【0195】
実施例7では、樹脂フィルム基材を以下の方法で製造したPENに変更した。
(PENの製造方法)
2,6ーナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル100部とエチレングリコール(EGと略記する)51部とを酢酸コバルト四水塩0.005部(0.2モル)、酢酸カルシウム一水塩0.014部(0.02モル)および酢酸マグネシウム四水塩0.036部(1.7モル)をエステル交換触媒として用い、常法に従ってエステル交換反応させ、三酸化アンチモンのEG1%溶液0.98部(1.0モル)を添加したのち、トリメチルフォスフェート0.045部(3.2モル)を添加し、エステル交換反応を終了せしめた。次に引き続き常法通り高温高真空下で重縮合反応を行い、その後ストランド型のチップとした。上記にて得られたPEN基材のガラス転移温度Tgは約120℃であった。また、このポリエチレンナフタレートを押出機に投入して溶融押出後、縦方向次いで横方向に延伸して175μm厚みのフィルムを作成した。これについて示差走査熱量測定を行い、微小吸熱ピークTmetaを測定した結果、約230℃であった。
【0196】
実施例8では、樹脂フィルム基材を以下の方法で製造したポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(以下、PCDMTとも言う)に変更した。
(1)CHDM系ポリエステルの調製
第1工程:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモンを150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。
第2工程:エステル交換反応終了後、リン酸をエチレングリコールに溶解したエチレングリコール溶液を添加した。
第3工程:重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、ポリエステルを得、これをペレット化した。
第4工程:上記で得られたポリエステルペレットを、窒素気流中210℃で24時間、固相重合した。
上記樹脂を乾燥した後、2軸押出し機で真空下、285℃で溶融、キャストドラム上に押出し、剥離ロールにて剥離後、縦方向に3.5倍、横方向に4倍延伸した。なお、延伸時の温度は、縦延伸が90℃、横延伸が120℃である。
このあと210℃で熱固定したあと、205℃で縦、横方向にそれぞれ5%ずつ緩和させて250μm厚みの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。これについて示差走査熱量測定を行い、微小吸熱ピークTmetaを測定した結果、195℃であった。
【0197】
実施例9では、樹脂フィルム基材を以下の方法で製造したPCDMTとPETの積層体に変更した。
実施例1にて得られたPET樹脂と、実施例8にて得られたPCDMT樹脂を2軸押出し機で真空下、285℃で溶融押出し、フィードブロックダイを用いてキャストドラム上に押出し、下記構成の積層フィルムを作成した。
PCDMT/PET/PCDMT、3層、厚み比率1.5/7/1.5
これを縦方向に3.5倍、横方向に4倍延伸した。なお、延伸時の温度は、縦延伸が100℃、横延伸が130℃である。
このあと210℃で熱固定したあと、205℃で縦、横方向にそれぞれ5%ずつ緩和させて250μm厚みの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0198】
実施例10では図3に記載の製造装置を用いてコロナ処理を行った後、赤外ヒーターを用いてコロナ処理後加熱処理を行った。実施例11では図2に記載の製造装置を用いてコロナ処理を行った後、加熱気体送風ゾーンにおける加熱気体の送風によってコロナ処理後加熱処理を行った。
【0199】
各実施例および比較例の樹脂フィルムについて、実施例1のポリエステルフィルムと同様に評価を行った。その結果を下記表1に記載した。
【0200】
【表1】

【0201】
上記表1より、実施例のポリエステルフィルムの製造方法で得られたポリエステルフィルムは、いずれも樹脂フィルム基材と塗布層との密着性が良好であり、製膜適性にも優れることがわかった。なお、得られたポリエステルフィルムの表面にキズなども生じていなかった。
一方、比較例1〜3および5のポリエステルフィルムは樹脂フィルム基材と塗布層との密着性が悪かった。比較例4のポリエステルフィルムは、連続製膜を行った時に電極対向ロールの寿命が短くなったため長期に亘って製膜できず、製膜適性の観点から問題があることがわかった。比較例6のポリエステルフィルムは、樹脂フィルム基材が加熱ロールに粘着してしまい、製膜適性に問題があることがわかった。
【0202】
[実施例12〜22、比較例7〜12]:太陽電池バックシート用の塗布層塗布液との密着性の検討
各実施例で形成した樹脂フィルム基材に対して、実施例1〜11および比較例1〜6と同様の態様でコロナ処理および加熱処理を行った。
【0203】
その後、前記コロナ処理後加熱工程の後の、前記コロナ処理を施した側のPET基材の表面に、下記の組成の太陽電池バックシート用の塗布層塗布液を塗布し、密着性の検討を行った。
【0204】
<複合ポリマー水分散物P−1の合成>
(工程1)
撹拌装置、滴下ロートを備え、窒素ガス置換した反応容器に、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(PNP)81部、イソプロピルアルコール(IPA)360部、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)110部、及びジメチルジメトキシシラン(DMDMS)71部を仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら80℃に昇温した。
(工程2)
次いで、この反応容器内に同温度で、メチルメタクリレート(MMA)260部、n−ブチルメタクリレート(BMA)200部、n−ブチルアクリレート(BA)110部、アクリル酸(AA)30部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)19部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート31.5部(TBPO)、及びPNP31.5部からなる混合物を4時間かけて滴下した。その後、同温度で2.5時間加熱撹拌を行い、重量平均分子量が29,300の、カルボキシル基と加水分解性シリル基を含むアクリル系ポリマーの溶液を得た。
(工程3)
次いで、これに脱イオン水54.8部を加え、16時間加熱撹拌を継続してアルコキシシランを加水分解し、さらにアクリル系ポリマーと縮合させることにより、不揮発分(NV)=56.3質量%、溶液酸価=22.3mgKOH/gの、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーに由来する構造単位とポリシロキサン構造単位とを有する複合ポリマーの溶液を得た。
(工程4)
次に、この溶液に同温度で、撹拌しながらトリエチルアミン42部を添加して10分間撹拌を行った。これにより、含有されるカルボキシル基の100%が中和された。
(工程5)
その後、同温度で脱イオン水1250部を1.5時間かけて滴下して転相乳化させた後、50℃に昇温して30分間撹拌を行った。次いで、内温40℃で3.5時間をかけて、有機溶剤とともに水の一部分を減圧下除去した。
【0205】
こうして固形分濃度が42質量%、平均粒子径が110nmの、ポリシロキサン構造単位とカルボキシル基含有アクリル系ポリマーに由来する構造単位とを含む複合ポリマーの水分散物P−1を得た。水分散物P−1は、ポリシロキサン構造単位が約25%であり、アクリル系ポリマー構造単位が約75%である。
【0206】
<太陽電池バックシート用の塗布層塗布液の調製>
下記の(i)〜(iv)の成分を混合し、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有する太陽電池バックシート用の塗布層塗布液を調製した。
(塗布層用塗布液1の組成)
(i)複合ポリマー水分散物P−1 ・・・45.9部
(バインダー、固形分濃度42質量%)
(ii)オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・7.7部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
(iii)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・2.0部
(ナ口アクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
(iv)蒸留水 ・・・44.4部
【0207】
<塗布層の形成>
得られた太陽電池バックシート用の塗布層塗布液を、前記PETの前記コロナ処理後加熱工程の後の、前記コロナ処理を施した側のPET基材の表面に、バインダー量が3.0g/m2になるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み3μmの、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有する塗布層を形成した。
得られたポリエステルフィルムを、実施例12〜22および比較例7〜12のポリエステルフィルムとした。
【0208】
(太陽電池バックシート用のポリエステルフィルム評価)
−1.密着性−
得られた実施例12〜22および比較例7〜12のポリエステルフィルムについて、100℃/15分の熱水処理を行った。
その後、実施例1と同様に密着評価試験機(ふちこすり機)を使用して剥離量を測定し、実施例1と同様に5段階で評価した。
【0209】
−2.連続製膜適性−
得られた実施例12〜22および比較例7〜12のポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に連続製膜時の安定性を検討したとき、特に問題がない場合に○評価とし、問題がある場合を×評価とした。
【0210】
実施例12〜22および比較例7〜12のポリエステルフィルムの評価は、それぞれ実施例1〜11および比較例1〜6と同様の傾向であった。
【符号の説明】
【0211】
1 コロナ処理用電極
2 加熱ロール
3 加熱気体送風ゾーン
4 赤外ヒーター
10 巻き出しロール
11 巻き取りロール
12 電極対向ロール
21 感光性層(感光剤層)
22 ゼラチン系下塗り層
23 ラテックス系下塗り層
24 支持体
25 帯電防止剤層(バック層)
26 プロテクト層(バック層)
31 バックシート(太陽電池保護シート)
32 支持体
33 塗布層(複合ポリマー層)
34 バック層
35 封止材
36 太陽電池素子
37 透明性のフロント基板
38 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム基材の表面をコロナ処理する工程と、
前記コロナ処理後の前記樹脂フィルム基材を該樹脂フィルム基材のTgを超えて、Tmeta以下に加熱処理するコロナ処理後加熱工程と、
前記コロナ処理後加熱工程の後に前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面上にポリマー溶液を塗布する工程と
を含むことを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法(ここで、Tgはガラス転移温度、Tmetaは示差走査熱量測定にて求められる微小吸熱ピーク(単位:℃)を表す)。
【請求項2】
前記樹脂フィルム基材がポリエチレンテレフタレートまたはポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)の単層フィルム、あるいは、それらのうち1種または2種を含む積層体であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記コロナ処理後加熱工程における前記樹脂フィルム基材の表面温度が70〜220℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記コロナ処理工程の前に前記樹脂フィルム基材を加熱するコロナ処理前加熱工程を含み、
前記コロナ処理前加熱工程と、前記コロナ処理後加熱工程を、異なる加熱処理装置によって行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記コロナ処理後加熱工程の後に、前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面に再度のコロナ処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記コロナ処理と、前記再度のコロナ処理を、異なるコロナ処理装置によって行うことを特徴とする請求項5に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記加熱処理が、加熱気体の送風、赤外線の照射または加熱ロールとの接触であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記加熱ロールが、前記コロナ処理における電極対向ロールとは異なるロールであることを特徴とする請求項7に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記コロナ処理工程および前記加熱処理を、いずれも前記樹脂フィルム基材を搬送しながら行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記コロナ処理工程の前に、前記樹脂フィルム基材を二軸延伸する工程を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法を含むことを特徴とする太陽電池保護シートの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法を含むことを特徴とする感光材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするポリエステルフィルム。
【請求項14】
ポリエステルを主成分とする樹脂フィルム基材の表面をコロナ処理する工程と、
前記コロナ処理後の前記樹脂フィルム基材を該樹脂フィルム基材のTgを超えて、Tmeta以下に加熱処理するコロナ処理後加熱工程と、
前記コロナ処理後加熱工程の後に前記樹脂フィルム基材の前記コロナ処理を施された側の表面上にポリマー溶液を塗布する工程を含み、
前記ポリマー溶液が水系分散液であることを特徴とするポリエステルフィルムと水系分散液との密着性向上方法(ここで、Tgはガラス転移温度、Tmetaは示差走査熱量測定にて求められる微小吸熱ピーク(単位:℃)を表す)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28799(P2013−28799A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139374(P2012−139374)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】