説明

ポリエステルフィルム

【課題】 耐スクラッチ性が高度に優れ、ポリエステルフィルムの表面に当該表面の裏面側に存在する突起による転写跡が発生することのない、光学フィルム用として好適なポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 平均粒径が0.2〜1.5μmであり、かつ粒径分布値(d25/d75)が1.0〜2.0である粒子を含有するポリエステルフィルムであり、フィルムのヘーズが4〜15%であることを特徴とする光学用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイ用途として好適に用いられる光学用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、急激に数量が伸びている液晶ディスプレイ装置は、光源からの光を視認側に集光し、かつ均一な面光源とする役割を果すバックライトユニットと、印加電圧を表示画素毎に調整し赤・緑・青の光を制御された光量表示させる液晶セル層ユニットの大きく分けて2つのユニットによって構成されている。
【0003】
このうち、バックライトユニットは赤・緑・青の波長領域に発光特性を有する蛍光体を用いた冷陰極管や、LED等の光源を視認側から見て側面に配置し、光を視認側に効率よく導く役割を有する導光板、視認側に導かれた光をディスプレイ面内に均一に分散する拡散フィルム、ディスプレイの側面側に向いている光を視認側に集光し、ディスプレイの輝度を向上させるプリズムフィルム、また、拡散、集光機能を1枚に集約した複合フィルム等によって構成される。
【0004】
一般的な液晶ディスプレイでは、導光板の上に通常、下拡散フィルムと呼称される拡散フィルムを1枚配置し、その上に2枚のプリズムフィルムをそれぞれ集光方向が縦横方向および左右方向となるよう配置し、さらにその上に通常、上拡散フィルムと呼称される拡散フィルムを1枚配置することでバックライトユニットは構成されている。
【0005】
バックライトの光を透過させて使用する、ポリエステルを基材としたこれら光学フィルムの用途においては、高い透明性が求められることが常識である。
【0006】
また、ディスプレイに絵や文字を表示させた際に欠点となって、画像に乱れが生じるため、光学フィルムの基材となるポリエステルフィルムにはキズがないことが求められている。
【0007】
フィルムの透明性を向上するために、基材となるポリエステルフィルム中に透明性を阻害する滑剤を添加しないフィルムが提案されている(特許文献1,2,3参照)が、滑剤を添加しないとフィルムの表面が極端に平坦になり、傷が発生しやすく、問題となる。
【0008】
これら、フィルムの透明性と、耐スクラッチ性を両立するため、光学フィルムの基材となるポリエステルフィルムには、透明性の高い粒子、すなわち、ポリエステルと屈折率の似た粒子、かつ、粒子とポリエステルとの界面に光を散乱させるボイドを作りにくい粒子を添加して得られた高透明ポリエステルフィルムが使用されている。
【0009】
前記のような粒子を使用する場合、滑剤の役割とボイドによる透明性悪化防止を両立するため、ある程度粒径が大きな粒子を選定する必要がある(特許文献4)。
しかし、このような粒径の大きな粒子を使用した場合、ロール状に巻かれたフィルム同士が接触することにより、表面の粒子による突起がフィルムに転写して、目視で確認できる斑点状の欠陥になることが問題となり、光学フィルム用には使用できない場合がある。
【0010】
しかし、このような粒径の大きな粒子を使用した場合、ロール状に巻かれたフィルム同士が接触することにより、表面の粒子による突起がフィルムに転写して、目視で確認できる斑点状の欠陥になることが問題となり、光学フィルム用には使用できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−142544号公報
【特許文献2】特開2007−268711号公報
【特許文献3】特開2008−6782号公報
【特許文献4】特開2004−277524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、光学用フィルムとして使用できる、耐スクラッチ性に優れ、フィルム表面に突起による転写跡が発生しない光学フィルム用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、平均粒径が0.2〜1.5μmであり、かつ粒径分布値(d25/d75)が1.0〜2.0である粒子を含有するポリエステルフィルムであり、フィルムのヘーズが4〜15%であることを特徴とする光学用ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐スクラッチ性に優れ、フィルム表面に突起による転写跡が発生しない光学フィルム用ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で言うポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出法により押出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、必要に応じ、延伸、熱処理を施したフィルムである。
【0017】
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。また、用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であればよい。かかる共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびオキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等から選ばれる一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
【0018】
本発明で使用するポリエステルには、本発明の要旨を損なわない範囲で、耐候剤、耐光剤、帯電防止剤、潤滑剤、遮光剤、抗酸化剤、蛍光増白剤、マット化剤、熱安定剤、および染料、顔料などの着色剤などを配合してもよい。
【0019】
フィルム中に配合する粒子としては、酸化ケイ素、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタンおよび特公昭59−5216号公報に記載されているような架橋高分子微粉体等を挙げることができる。これらの粒子は、単独あるいは2成分以上を同時に使用してもよい。これら粒子を添加するフィルム層の含有量は、通常1重量%以下、好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.02〜0.6重量%の範囲である。粒子の含有量が少ない場合には、フィルム表面が平坦化し、フィルム製造工程において、表面のキズが発生しやすかったり、巻き特性が劣ったりする傾向がある。また、粒子の含有量が1重量%を超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎて透明性が極端に損なわれることがある。
【0020】
ポリエステルフィルム中に含有する粒子の平均粒径は0.2〜1.5μmの範囲である。粒径が0.2μm未満の場合には、フィルム表面が平坦化し、フィルム製造工程における巻き特性や耐スクラッチ性が劣る。粒径が1.5μmを超える場合には、光学用フィルムとして用いられた場合、輝点となる。
【0021】
また、本発明で用いる粒子の粒度分布はシャープなものである必要がある。具体的には、粒度分布のシャープさを表す指標である粒度分布値が1.0〜2.0であり、さらには1.0〜1.8のものが好ましい。なお、ここで粒度分布値とは、粒度分布値d25/d75(d25、d75は粒子群の積算堆積を大粒子側から計算し、それぞれ総体積の25%、75%に相当する粒径(μm)を示す)により定義される値である。粒度分布値が2.0を超える場合、粗大粒子が輝点となる。
【0022】
また、フィルムの耐スクラッチ性を効率よく発揮させるため、2層以上の積層フィルムとした場合、表層のみに粒子を配合する方法も好ましく採用される。この場合の表層とは、少なくとも表裏どちらか1層であり、もちろん表裏両層に粒子を配合することもできる。
【0023】
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0024】
本発明において使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。本発明においては、透明性、ヘーズ、機械的強度に大きな影響を与えない程度であれば主たる構成成分以外の第三成分を含有してもかまわない。
【0025】
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等公知の触媒を使用して良いが、好ましくはアンチモン化合物の量を零またはアンチモンとして100ppm以下にする事によりフィルムのくすみを低減したものが好ましい。
【0026】
本発明のフィルムの総厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲で有れば特に限定されるものではないが、通常4〜500μm、好ましくは25〜350μmの範囲である。
【0027】
次に本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0028】
まず、本発明で使用するポリエステルの製造方法の好ましい例について説明する。ここではポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いた例を示すが、使用するポリエステルにより製造条件は異なる。常法に従って、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応を行い、その生成物を重合槽に移送し、減圧しながら温度を上昇させ、最終的に真空下で280℃に加熱して重合反応を進め、ポリエステルを得る。
【0029】
本発明で使用するポリエステルの極限粘度は、通常0.40〜0.90、好ましくは0.45から0.80、さらに好ましくは0.50〜0.75の範囲である。極限粘度が0.40未満では、フィルムの機械的強度が弱くなる傾向があり、極限粘度が0.90を超える場合は、溶融粘度が高くなり、押出機に負荷がかかったり、製造コストがかかったりする等の問題が生じる場合がある。
【0030】
次に例えば上記のようにして得、公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。さらに、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になるように同時二軸延伸を行うことも可能である。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを施すこともできる。それは以下に限定するものではないが、例えば、1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に、帯電防止性、滑り性、接着性等の改良、2次加工性改良、耐候性および表面硬度の向上等の目的で、水溶液、水系エマルジョン、水系スラリー等によるコーティング処理を施すことができる。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としてはオフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0033】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0034】
(2)平均粒径(d50)および粒径分布値(d25/d75)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。また、大粒子側から積算して重量分率25%の点の直径と重量分率75%の点の直径の比d25/d75値を粒度分布値とした。
【0035】
(3)フィルムヘーズの測定
JIS−K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dにより、フィルムのヘーズを測定した。
【0036】
(4)突起転写(斑点状欠陥)発生評価
ポリエステルフィルムを10枚重ねにし、常温、荷重10kg/cm下で24時間プレスしたものを、蛍光灯反射下にて目視検査し、斑点状欠陥を下記分類にて評価した。
◎:斑点状欠陥が目視で観察されない
○:斑点状欠陥が見る角度によって薄く観察される
△:斑点状欠陥が目視で観察される
×:斑点状欠陥が全面にはっきりと観察される
上記判定基準中、○以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0037】
実施例1〜6および比較例1〜2:
<ポリエステル(A0)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップ(A0)を得た。
【0038】
<ポリエステル(A1)の製造>
ポリエステル(A0)をあらかじめ160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.75のポリエステル(A1)を得た。
【0039】
<ポリエステル(B0)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブチルチタネート0.011重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させポリエステルのチップ(B0)を得た。
【0040】
<ポリエステル(B1)の製造>
ポリエステル(B0)をあらかじめ160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.72のポリエステル(B1)を得た。
【0041】
<ポリエステル(C)の製造>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径0.7μm、粒径分布値1.6の合成炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が1重量%となるように添加した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は極限粘度0.63であった。
【0042】
<ポリエステル(D)の製造>
ポリエステル(C)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径0.5μm、粒径分布値1.7の合成炭酸カルシウム粒子に、ポリエステルに対する含有量を、1重量%にした以外は、ポリエステル(C)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(D)を得た。得られたポリエステル(D)は極限粘度0.63であった。
【0043】
<ポリエステル(E)の製造>
ポリエステル(C)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径1.4μm、粒径分布値1.9の合成炭酸カルシウム粒子に、ポリエステルに対する含有量を、1重量%にした以外は、ポリエステル(C)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(E)を得た。得られたポリエステル(E)は極限粘度0.63あった。
【0044】
<ポリエステル(F)の製造>
ポリエステル(C)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径1.0μm、粒径分布値1.7のシリカ粒子に、ポリエステルに対する含有量を、1重量%にした以外は、ポリエステル(C)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(F)を得た。得られたポリエステル(F)は極限粘度0.63であった。
【0045】
<ポリエステル(G)の製造>
ポリエステル(C)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径2.5μm、粒径分布値1.3のシリカ粒子に、ポリエステルに対する含有量を、0.3重量%にした以外は、ポリエステル(C)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(G)を得た。得られたポリエステル(G)は極限粘度0.63であった。
【0046】
<ポリエステル(H)の製造>
ポリエステル(C)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径0.8μm、粒径分布値2.5の天然炭酸カルシウム粒子に、ポリエステルに対する含有量を、1重量%にした以外は、ポリエステル(C)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(H)を得た。得られたポリエステル(H)は極限粘度0.63であった。
【0047】
<ポリエステル(I)の製造>
ポリエステル(C)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径0.12μm、粒径分布値2.0のシリカ粒子に、ポリエステルに対する含有量を、0.3重量%にした以外は、ポリエステル(C)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(I)を得た。得られたポリエステル(I)は極限粘度0.63であった。
【0048】
<フィルムの製造>
上記ポリエステル(A0)、(A1)、(B0)、(B1)チップと、ポリエステル(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)チップとを、表1および2に示す通りの割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(A0)、(B0)チップ100%の原料をB層の原料として、2台の押出機に各々供給し、290℃で溶融押出した後、A層を最外層(表層)、B層を中間層として、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度81℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、140℃での冷却ゾーンを経て、横方向に2%弛緩し、厚さ50μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/40/5μmであった。
【0049】
なお、比較例3、5においてポリエステル(A1)および(I)チップをフィルム表層に用いたフィルムは、表面形状が極端に平坦になり、滑り性が悪化したため、延伸、熱処理後のフィルムをロール状に巻き取る際に、うまく巻き取ることができず、また、フィルム全面にキズが発生し、製品として成り立たない物であった。また、比較例4については、フィルムの外観が白く、光学用フィルムとして使用できない物であった。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

比較例3、5のフィルムは、そのフィルム全面にキズが発生し、製品として成り立たない物であった
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のフィルムは、液晶ディスプレイ用途として用いられる光学用ポリエステルフィルムに好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.2〜1.5μmであり、かつ粒径分布値(d25/d75)が1.0〜2.0である粒子を含有するポリエステルフィルムであり、フィルムのヘーズが4〜15%であることを特徴とする光学用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2011−140608(P2011−140608A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3436(P2010−3436)
【出願日】平成22年1月9日(2010.1.9)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】