説明

ポリエステルヤーンおよび製造方法

マルチフィラメントのポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが提供される。このポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンは、少なくとも0.6の結晶配向関数および65%から110%の間の破断時の伸びを有する。ポリ(トリメチレンテレフタレート)をマルチフィラメントヤーンに溶融紡糸すること;このヤーンを50℃未満のヤーン温度まで冷却すること;およびヤーンの温度を50℃未満のヤーン温度に維持しながら、冷却したヤーンを少なくとも約3500m/分の巻き取り速度で巻き取ることを含む、ヤーンを形成するための方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルヤーンに関する。特に、本発明は、部分配向ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンおよびこのようなヤーンを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオールとジカルボン酸との反応生成物を縮合重合することにより調製されるポリエステルは、テキスタイルおよびカーペットでの使用に好適な連続マルチフィラメントヤーンに溶融押し出しが可能でありおよび紡糸可能である。紡糸後、このヤーンは、部分配向ヤーンパッケージを形成するためにパッケージ上に巻き取られ得またはヤーンを加熱および延伸して完全配向ヤーンを形成することにより直ちに更に加工され得る。
【0003】
完全配向ポリエステルヤーンは、テキスタイルおよびカーペットを形成する方法において直接に使用され得る。しかしながら、部分配向ポリエステルヤーンは、テキスタイルまたはカーペットで使用する前に、例えばヤーンを延伸および熱固定することによるまたはヤーンを延伸−仮撚することによる更なる加工のために、別の場所に貯蔵および/もしくは出荷され得る。部分配向ヤーンは、延伸、仮撚および熱固定操作を一体化された方法で行うことができて、高コストの延伸−撚り操作の必要性を無くすることができるために、延伸もしくは引っ張り仮撚に好ましいヤーンである。
【0004】
普通に使用されるポリエステルヤーンの連続マルチフィラメントポリ(エチレンテレフタレート)(PET)ヤーンは、多段階で製造され得る。マルチフィラメントPETの部分配向ヤーンは、第1の段階でヤーンパッケージ上に紡糸および巻き取りされ、第2の段階で、ヤーンパッケージから巻き出され、および仕上げられた形に引っ張られ、かさ高な延伸−仮撚されたマルチフィラメントヤーンに熱固定もしくは引っ張り−仮撚され得る。これらの2つの段階の間で、マルチフィラメントPET部分配向ヤーンのパッケージは、第2の仮撚段階の加工条件および製品の品質にいかなる影響も及ぼさずに長期間貯蔵可能でありおよび高い温度で輸送可能である。
【0005】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)は、高弾性、柔らかい風合い、汚染抵抗および低弾性率を含む、テキスタイルおよびカーペット用途において望ましいいくつかの特性を有する最近商品化されたポリエステルである。PETヤーンと異なり、従来の方法により製造されたマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンは、多数の実用的な問題を呈してきた。最も深刻な問題の一つは部分配向ヤーンの不安定性である。このヤーンの不安定性は、変形したヤーンパッケージ、時間の関数としてのヤーンの性質の変化、およびヤーンパッケージ上のヤーンの深さの関数としてのヤーンの性質の変化を含む種々の形で観察できる。これらの問題は、マルチフィラメントPTT部分配向ヤーンの有用性を制限してきた。
【0006】
PETマルチフィラメント部分配向ヤーンと対照的に、PTTマルチフィラメント部分配向ヤーンは、紡糸および巻き取り両方の直後ならびにヤーンをヤーンパッケージ上に巻き取った数時間または数日後にかなりの収縮傾向を有する。PTTマルチフィラメント部分配向ヤーンの収縮傾向は、ヤーンを収縮させる。収縮性のヤーンは、ヤーンパッケージがもはやチャックから脱着できないほど、ヤーンが巻き取られたヤーンパッケージを時に圧縮する。更に、長期間の貯蔵の間または輸送の間、ヤーンパッケージは、所望の形状を維持せず、深刻な巻き出し問題およびウスター値の極端な増加を引き起こす、硬い縁付きの出っぱりを形成する。ヤーンパッケージの重量を2kg未満まで制限することのみがPET部分配向ヤーンの加工時には通常起こらないこれらの問題に対して解決策を提供する。しかしながら、2kg未満のヤーンパッケージは、貯蔵および出荷がより困難であり、ならびに以降の使用において極めて頻繁に置き換えを行わなければならないために、普通に使用される10kgから20kgのヤーンパッケージよりも望ましくない。
【0007】
更に、PETマルチフィラメント部分配向ヤーンと比較して、PTTマルチフィラメント部分配向ヤーンは、貯蔵の間に、エージングに関連する欠陥を大きく露呈するということが観察された。PTT部分配向ヤーンの構造的な硬化が経時的に起こり、ヤーンの特性(例えば、ボイルオフ収縮および結晶化度)を経時的に変化させる。工業的使用は、ヤーンの以降の加工を連続的に実施することができるように、マルチフィラメントヤーンがこの特性を経時的に維持するということを要求している。
【0008】
従来のポリエステル紡糸方法により製造される部分配向PTTマルチフィラメントヤーンは、従来のポリエステル巻き取り(紡糸)速度でヤーン中に誘起される比較的高い軸配向度により高い収縮度を有する傾向がある。マルチフィラメントPTTポリエステル部分配向ヤーンの非晶質相中に誘起される軸配向は、ヤーンのエージングと共に非晶質相のエントロピー駆動の無組織化により失われ、ヤーンの収縮が生じる。比較として、3000m/分から3200m/分の通常の商用のポリエステル紡糸速度においては、PETヤーン中では殆ど軸配向が誘起されず、PETヤーンは収縮せず、およびPET部分配向ヤーンパッケージは収縮安定性である。
【0009】
マルチフィラメント部分配向PTTヤーンの収縮の問題を無くすのに使用される一つのアプローチは、米国特許第6,287,688号で示されているように、ヤーンの紡糸に使用される巻き取り(紡糸)速度を2600m/分以下に、例えば1650m/分から2600m/分もしくは1000m/分から2000m/分に低下させることであった。低い巻き取り速度での紡糸は、非晶質相における低い軸配向度と、低い結晶度を有する部分配向PTTヤーンを製造する。得られるヤーンは、ヤーンのエントロピー駆動の再配向の結果として失われる可能性のある非晶質相の軸配向度が比較的低いので、3000m/分から3200m/分の従来の紡糸速度で紡糸されるマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンよりも収縮問題を起こすことは少ない。しかしながら、この方法は、かなりの収縮を更に起こすマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンを製造する。この方法は、必要とされる巻き取り速度でのヤーン製造速度が遅いことにより、商業的に実行可能でない。
【0010】
マルチフィラメントPTT部分配向ヤーンの収縮問題を無くするのに使用されるもう一つのアプローチは、欧州特許出願第1209262Al号で示されているように、ヤーンをヤーンパッケージ上に巻き取る前にヤーンを50℃から170℃の温度まで加熱することであった。熱処理はヤーン中に若干の結晶性を誘起し、巻き取り後のヤーンの収縮を低下させる。しかしながら、得られたヤーンは、収縮が全く取るに足りないほどに収縮を低下させるのに充分な結晶性配向を欠いている。この得られた部分配向ヤーンは、沸騰水収縮試験において40%まで収縮し得る。
【発明の開示】
【0011】
発明の要旨
一つの実施形態においては、本発明は、少なくとも0.6の結晶性配向関数および65%から110%の間の破断時の伸びを有するマルチフィラメントポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを含むヤーンに関する。好ましい実施形態において、このマルチフィラメントポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンは、初期ボイルオフ収縮に対して10%以下の初期ボイルオフ収縮から30日後のボイルオフ収縮を有する。
【0012】
もう一つの実施形態においては、本発明は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)を溶融紡糸すること;溶融紡糸ポリ(トリメチレンテレフタレート)を冷却し50℃未満のヤーン温度を有するマルチフィラメントヤーンとすること;およびヤーンを50℃未満のヤーン温度で維持しながら、少なくとも約3500m/分の巻き取り速度で50℃未満のヤーン温度を有するマルチフィラメントヤーンを巻き取ることを含む、収縮安定性の部分配向ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを形成するための方法に関する。
【0013】
なおもう一つの実施形態においては、本発明は、多くても22%の初期ボイルオフ収縮;初期ボイルオフ収縮に対して10%以下の初期ボイルオフ収縮から30日後のボイルオフ収縮;および65%から110%の間の破断時の伸びを有するポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを含む、ヤーンに関する。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、収縮を殆どもしくは全く起こさない部分配向PTTマルチフィラメントヤーンおよびこのようなヤーンを製造するための方法を提供する。本発明の部分配向PTTマルチフィラメントヤーンは、更なる加工のためにヤーンを紡糸した場所とは別の場所に貯蔵されまたは出荷され得る安定なマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンパッケージの製造において特に有用である。本発明によれば、マルチフィラメントのPTT部分配向ヤーンの軸配向をある点以上に増大させることによって、ヤーン収縮を増加させることに代わって収縮に抗してヤーンを安定化する高度に配向したミクロフィブリルヤーン構造が得られる。マルチフィラメントPTT部分配向ヤーンにおける収縮は、ヤーンの紡糸において迅速に誘起される軸配向およびそれに続く誘起された配向の弛緩によるので、部分配向PTTヤーンにおいて軸配向を増大することが収縮に抗してヤーンを安定化するということは、予期されないことであった。
【0015】
更に、PTTマルチフィラメントヤーンをPTTヤーンの冷結晶化温度以上で加熱し、引き続いて加熱されたPTTマルチフィラメントヤーンを延伸することが、完全配向PTTマルチフィラメントヤーンの製造においてPTTヤーンの結晶性、配向および安定性を著しく増加させることは知られているが、ヤーン中で完全配向を誘起し誘起された配向を熱固定せずにマルチフィラメントPTT部分配向ヤーン中で配向を増大させることが、収縮に抗してヤーンを安定化するということは予期されなかった。配向はヤーンの結晶性を著しく増加させずに非晶質相中にて増加されることが予期されたので、冷結晶化温度以上で熱をヤーンに加えずに部分配向PTTマルチフィラメントヤーンの軸配向を増加させることがヤーンを収縮に抗して安定化させるということは、特に驚くべきことであった。更に多くのヤーンが配向の弛緩に敏感であるので、非晶質相の配向の増加は、低収縮安定性の部分配向PTTマルチフィラメントヤーンを生じると予期された。
【0016】
本発明においては、PTTマルチフィラメント部分配向ヤーンの配向は、ヤーンを紡糸し、ヤーンを熱固定せずに紡糸されたヤーンを少なくとも3500m/分の巻き取り速度で巻き取ることにより増加することができる。少なくとも3500m/分の巻き取り速度は、紡糸時に充分な紡糸線応力をヤーン上に生じて、ヤーンの配向および好ましくは結晶化および最も好ましくは結晶配向関数を増加させる。予期に反して、本発明のPTTマルチフィラメント部分配向ヤーン中に誘起される軸配向は、比較的安定であり、ヤーンは収縮を殆どもしくは全く起こさない。
【0017】
本発明のPTTマルチフィラメント部分配向ヤーンは、ヤーンのテナシティ(tenacity)により測定されるように、3500m/分よりも低い速度で巻き取られるPTTマルチフィラメント部分配向ヤーンよりも強いという更なる利点を有する。本発明のPTTマルチフィラメント部分配向ヤーンのテナシティは、好ましくは2.5グラム/デニールより多く、更に好ましくは少なくとも2.6グラム/デニールおよび最も好ましくは少なくとも3.0グラム/デニールである。
【0018】
定義
本明細書において、用語「複屈折」は、ファイバーまたはヤーンの全配向の尺度である。ここで全配向はファイバーまたはヤーンの結晶性相と非晶質相の組み合わされた配向の尺度である。PTTマルチフィラメント部分配向ヤーンの複屈折は、PTTファイバー中のファイバー異方性により引き起こされる光減速度量Γを回転石英補償板を用いる交差偏光子付き光学顕微鏡下で測定することにより求められる。Γを測定する場合、ファイバー試料は、相のコントラストを増加させるために消光位置の左または右に45°回転される。3組の測定値を得、および平均値を示す。複屈折は、次の式:複屈折=Γ/tを用いて光減速度量とファイバー直径tから計算される。
【0019】
本明細書において、「ボイルオフ収縮」は、ヤーンの収縮度の尺度である。ボイルオフ収縮は、次の手順にしたがって測定され得る。周囲が1mの標準デニールのクリールを用いて、4500デニールのヤーンかせを作製する。ヤーンのデニールを測定し、ヤーンをクリールの周りに巻き付けて4500デニールヤーンかせを得るのに必要な回数を式:必要とされる巻き付け回数=(4500/[ヤーンデニール測定値])により計算し、ならびにヤーンをクリールの周りに巻き付け回数の計算値だけ巻き付けることにより、4500デニールヤーンかせを作製する。かせ上に500gの荷重を掛け、およびかせの長さを測定することにより、初期かせ長さ(L)を測定する。次に、かせを重ね、ガーゼにより被覆して絡み合いを防止する。次に、重ねたかせを沸騰水浴中に30分間入れ、その後浴から取り出し、および15分間冷却させる。次に、かせに布を当てて乾燥し、およびかせ上に500gの荷重を掛け、およびかせの長さを測定することにより収縮後のかせの長さ(L)を測定する。ボイルオフ収縮(%)は以下の式
【0020】
【数1】

により求められる。
【0021】
本明細書において、「結晶性/非晶質ラメラ周期」は、小角X線散乱により測定されるミクロフィブリル構造中に垂直に配列されている結晶性および非晶質ラメラの平均長さとして定義される。
【0022】
本明細書において、用語「結晶性配向」は、ヤーンまたはフィラメント中にヤーンまたはフィラメントの結晶性相により誘起される軸配向度として定義される。結晶性配向は、ヤーンまたはフィラメントの結晶性部分のヤーンまたはフィラメント中の配向度を含む。結晶性配向は、例えば絡み合い、結合または締め付けによってヤーンまたはフィラメント内で非晶質相を配向状態に保持することによりヤーンまたはフィラメントの結晶性相がヤーンまたはフィラメントの非晶質相中に誘起し得る配向度も含む。結晶性配向は、著しい弛緩に敏感でないヤーンまたはフィラメント内の配向度の尺度である。比較として、複屈折は、著しい弛緩に敏感であり、結晶性相によりヤーン内で配向保持されない非晶質相中の配向を含む、ヤーンまたはフィラメントの結晶性および非晶質相の全配向の尺度である。
【0023】
本明細書において、用語「結晶配向関数」は、ヤーンまたはフィラメントの結晶性配向の尺度として定義される。結晶配向関数fは、広角X線回折計を用いてヤーンまたはフィラメントについて(010)反射強度I(α)の15.66°の2θ角度における方位角走査から測定される。走査される方位角αは0から90°である。次に、結晶配向関数fは次式を用いて計算され得る。
【0024】
ヤーン/フィラメント(010)反射の正弦二乗平均角度<sinα>は延伸方向と共に行われる。
【0025】
【数2】

【0026】
(010)反射の配向f010
【0027】
【数3】

により与えられる。
【0028】
(010)は赤道反射であるので、
【0029】
【数4】

によりヤーン/フィラメントファイバー軸の配向の結晶配向関数に関連付けられる。
【0030】
本明細書において、用語「結晶性」は、ヤーンの結晶化度(または画分%)の尺度である。結晶性は、示差走査熱量計(DSC)、例えばPerkin−ElmerDSC−7を用いて求められ得る。ヤーンの試料をアルミニウムパンに入れ、30℃から270℃まで1分当り10℃の速度で加熱する。PTTポリマーが添加ポリマー無しのホモポリマーである場合には約228℃で、ならびにPTTポリマーがコモノマーまたは他のポリマーを含有する場合には約215℃から約228℃で融解吸熱の溶融熱(ΔH)をDSCにより測定する。約70℃から約150℃における吸収により示されるようにDSC走査が何らかの低温の低結晶化もしくは前融解発熱を示す場合には、溶融熱から測定される発熱を差し引いて、補正される溶融熱(ΔHcorrected)を得ることにより、測定される溶融熱は補正され得、低温の発熱がDSC走査により示されない場合には、ΔHcorrectedは、下記の式の目的には約215℃から228℃における、測定されるΔHに等しい。試料の結晶性(%)は、以下の式
【0031】
【数5】

により計算され得る。式中、ΔHは100%結晶性PTTの溶融熱であり、35cal/gと定義される。
【0032】
あるいは、溶融熱ΔHは、ヤーンが完全に溶融するまで、融点以上の温度に、好ましくは245℃から255℃の温度にヤーンを加熱し、溶融ヤーンを約160℃から180℃の温度まで冷却し、次に冷却された溶融ヤーンを270℃の温度まで1分当り10℃の速度で再加熱することによりすることにより測定され得る。融点からの再加熱時、溶融熱(ΔH)は、PTTポリマーが更なるポリマー無しのホモポリマーである場合には約228℃で、もしくはPTTポリマーがコモノマーまたは他のポリマーを含有する場合には、約215℃から約228℃でDSCにより測定される。溶融熱の発熱の測定の前にヤーンを融点以上に初めに加熱することは、低温の発熱を引き起こす結晶性を無くすので、低温の冷結晶化発熱に対して補正は必要とされない。パーセント結晶性は、ΔHcorrectedがΔHに等しい、上記の式により求め得る。
【0033】
ヤーンの結晶度は、またヤーンの密度に関連付けられる。特に、式:%結晶性=D/D×[(D−D)/(D−D)]×100%から、結晶性であるヤーンのパーセントを測定された密度から求めることができる。式中、Dは測定された密度であり、Dは100%結晶性ヤーンの密度であり、ならびにDは100%非晶質ヤーン(0%結晶性)の密度である。PTTヤーンに対してはD=1.442およびD=1.295である。測定される密度Dは、密度/勾配管中で23±0.1℃の温度で測定され得る。2つの濃度の臭化ナトリウムを使用して、試験対象の材料の予想される密度の範囲を決め得る。
【0034】
本明細書において、用語「破断時の伸び」は、完全伸張における破断点での弛緩ヤーンの長さを超えるヤーンの長さのパーセント増加として測定される、引っ張り力により引き起こされる弛緩状態からヤーン破断までのヤーン中の長さの増加として定義される。破断時の伸びは、Statimat引っ張り試験機でASTM(米国材料試験協会)法D2101により測定され得る。10回の試験の平均を示す。
【0035】
本明細書において、用語PTTヤーンの「溶融熱」は、単位重量のPTTヤーンをPTTの融点において固体状態から液体状態に温度を増加させずに転換するのに必要とされる熱量として定義される。PTTヤーンの溶融熱は、示差走査熱量計(DSC)を上述のように使用して測定され得る。
【0036】
本明細書において、用語「初期」は、ヤーンまたはフィラメントの特性または測定値の記述に使用される場合、紡糸されているヤーンの24時間以内に測定されるヤーンまたはフィラメントの特性または測定値として定義される。例えば、ヤーンの初期ボイルオフ収縮は、紡糸されているヤーンの24時間以内に測定されるヤーンのボイルオフ収縮である。
【0037】
本明細書において、用語ポリマーの「溶融紡糸」は、ポリマーを融点以上に加熱し、溶融ポリマーを1つ以上の紡糸口金から押し出すことによりポリマーを溶融するプロセスとして定義される。
【0038】
本明細書において、用語「部分配向ヤーン」は、完全配向ヤーンよりも低い結晶性、通常45から50%未満の結晶性であることを示す、中間から高い伸張性を有する、好ましくは65%以上の破断時の伸びを有するポリマーフィラメントのヤーンとして定義される。部分配向ヤーンは、通常、ガラス転移温度もしくは冷結晶化温度以上に加熱されたことがなく、加熱しながら延伸したヤーンである。
【0039】
「部分配向PTTヤーン」または「PTT部分配向ヤーン」は、本明細書において、ASTM法D2101により測定して65%以上の破断時の伸びを有するPTTポリマーから形成されるヤーンとして定義される。
【0040】
「PET」は、本明細書において、ポリ(エチレンテレフタレート)を意味する。
【0041】
「PTT」は、本明細書において、ポリ(トリメチレンテレフタレート)を意味する。
【0042】
「PTTポリマー」は、本明細書において、少なくとも85重量%のPTTと15重量%までのコモノマーを含有するポリエステルポリマーとして定義され;他のポリマーは、PET、ポリブチレンテレフタレート、およびナイロンを含み;添加物、例えば触媒、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤、着色剤吸収変成剤、光安定剤、有機ホスファイト、増白剤およびマット化剤;またはこれらの混合物を含む。
【0043】
「PTTヤーン」は、本明細書において、少なくとも85重量%のPTTと15重量%までのコモノマーまたは他のポリマーを含有するポリエステルヤーンとして定義される。
【0044】
本明細書において、ヤーンまたはフィラメントを参照しての用語「収縮安定性」および「収縮を殆どもしくは全く起こさない」は、ヤーンまたはフィラメントが多くても22%の初期ボイルオフ収縮を有し、ならびに初期ボイルオフ収縮に対して10%以下の初期ボイルオフ収縮から30日後のボイルオフ収縮を有するということを意味すると定義される。
【0045】
本明細書において、用語「巻き取り速度」は、ヤーンを紡糸口金から巻き取る巻き取り機構の速度として定義される。巻き取り機構は、好ましくはロールまたはロールの組であり、最も好ましくはゴデットロールである。しかしながら、これはヤーン紡糸の分野で従来のいかなる紡糸巻き取り機構でもよい。
【0046】
本明細書において、用語「テナシティ」は、ヤーンの強度の尺度である。テナシティは、ASTM法D2101によりStatimatヤーン引っ張り試験機を用いて測定され得る。10回の試験の平均を示す。
【0047】
収縮安定性の部分配向PTTヤーンの製造方法
本発明による収縮を殆どもしくは全く起こさないPTTマルチフィラメント部分配向ヤーンは、ポリ(トリメチレンテレフタレート)を溶融紡糸すること、溶融紡糸PTTを冷却し、50℃未満のヤーン温度を有するマルチフィラメントヤーンとすること、およびヤーンを50℃未満のヤーン温度に維持しながら、少なくとも約3500m/分の巻き取り速度でマルチフィラメントヤーンを巻き取ることにより製造され得る。紡糸ヤーンを少なくとも3500m/分の速度で巻き取ることによって、紡糸時にヤーン上に充分な紡糸線応力が生じて、ヤーン中に充分な配向および結晶性を誘起し、収縮に抗してヤーンを安定化する。
【0048】
本発明のPTTマルチフィラメント部分配向ヤーンを製造するためには、PTTポリマーが溶融押し出しに提供される。PTTポリマーは、PTTポリマーの製造方法と共に当分野で既知である。テレフタル酸と等モル量の1,3−プロパンジオールとを重縮合反応させることにより、PTTポリマーを得ることができる。このPTTポリマーはホモポリマーであり得るか、もしくは少量の非PTTコモノマーを含有するPTTコポリマーであり得る。PTTコポリマーの好適な例は、PTT反復モノマー単位に加えて、多くても15モル%、好ましくは多くても10モル%、および更に好ましくは多くても5モル%のコモノマーを含有するものを含む。このようなコモノマーは、限定ではないが、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、シュウ酸、コハク酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、イソフタル酸および/またはアジピン酸を含み得る。しかしながら、本発明においては、PTTホモポリマーの使用が好ましい。
【0049】
PTTポリマーは、他のポリマーがPTTポリマーブレンドの15重量%、好ましくは10重量%、更に好ましくは5重量%を超えないように、少量の他のポリマーともブレンドされ得る。PTTポリマーは、PTTポリマーと他のポリマーを一緒に溶融し、もしくはPTTポリマーと他のポリマーを別々に溶融し、溶融ポリマーを合体することにより他のポリマーとブレンドされ得る。本発明の方法においてPTTポリマーとブレンドするのに有用な他のポリマーは、PET、ポリ(ブチレンテレフタレート)およびナイロンを含む。
【0050】
PTTポリマーは、少量の更なる添加物を混和物として含有し得る。このような添加物は、触媒、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤、着色剤吸収変成剤、光安定剤、有機ホスファイト、増白剤およびマット化剤を含む。好ましくは、PTTポリマーは、PTTポリマーの全重量に対して0から5重量%のこのような添加物を含有する。
【0051】
0.7dl/gから1.3dl/gの固有粘度を有するPTTポリマーは、本発明の方法において特に有用である。最も好ましくは、0.85dl/gから1.1dl/gの固有粘度を有するPTTポリマーが本発明の方法において使用される。
【0052】
図1を参照すると、PTTポリマーチップもしくはペレットが溶融され、紡糸口金1から押し出されて、フィラメント2(すなわち、PTTポリマーを溶融紡糸して、フィラメント2を形成する)を形成し得る。好ましくは、PTTポリマーチップもしくはペレットは、押し出しに先立って、多くても30ppmの水含量まで、更に好ましくは多くても15ppmの水含量まで乾燥されて、PTTポリマーの劣化を最少とする。PTTポリマーは、押し出し機の出口に取り付けられた紡糸口金1を有する従来の単軸もしくは二軸熱可塑性押し出し機中で溶融され、押し出され得る。
【0053】
PTTポリマーは、押し出し機中でもしくは押し出し機に入る前に、PTTポリマーが溶融する温度もしくはそれ以上であるが、PTTポリマーが著しい劣化を起こす温度以下で加熱され得る。ホモポリマーPTTの溶融温度は約225℃から約240℃であり、コモノマーまたはコポリマーを含有するPTTポリマーの溶融温度は200℃から250℃の範囲にあり得る。好ましくは、PTTポリマーは、ポリマーを溶融するために少なくとも245℃の温度まで加熱され得る。また、好ましくは、PTTポリマーは、PTTポリマーが著しい劣化を起こす温度以下の温度まで加熱され得る。好ましくは、PTTポリマーは、多くても280℃の温度まで加熱され得る。最も好ましくは、PTTポリマーは250℃から260℃の温度まで加熱され得る。押し出し機は、PTTポリマーが押し出し機の段階内で異なる温度で加熱される、多段階押し出し機であり得る。例えば、押し出し機は、PTTポリマーが第1の段階で245℃から250℃まで、第2の段階で250℃から255℃まで、ならびに第3および第4の段階で255℃から260℃まで加熱される、4段階の押し出し機であり得る。
【0054】
溶融PTTポリマーは、紡糸口金1から押し出されて、複数の溶融紡糸された連続フィラメント2を形成し、紡糸口金のダイ前面4中の多数のダイ穴から紡糸口金1を出る。好ましくは、紡糸口金のダイ前面4中のダイ穴は丸断面を有するが、ダイ穴は、他の形状、例えば三つ葉形、三角形、および部分配向ヤーン業界で通常使用される他の非丸断面を有し得る。ダイ穴は、ヤーンの所望の特性をもたらすように選択されたサイズを有し得る。好ましくは、ダイ穴は、0.1から0.5mmの、更に好ましくは0.2から0.4mmの直径を有する。好ましくは、紡糸口金1は、充分な数のフィラメント2を提供して、所望の特性のヤーンに形成されるのに充分なダイ穴を有する。好ましくは、例えば、紡糸口金1は、溶融PTTがフィラメント2に押し出され得る10から100個のダイ穴を有し得る。溶融PTTポリマーから多数のヤーンを同時に紡糸することを可能とするように、多数の紡糸口金(図示せず)を押し出し機に取り付け得る。
【0055】
溶融紡糸されたPTTポリマーは冷却されて、50℃未満のヤーン温度を有するマルチフィラメントヤーンを形成する。好ましくは、溶融紡糸されたフィラメント2は、合体されて、マルチフィラメントヤーン7を形成する一方で、急冷空気により冷却される。
【0056】
好ましい実施形態において、フィラメント2は、最初に紡糸口金1を出て、紡糸口金のダイ前面4と急冷空気5の間に配置されている遅延急冷区域3の中に入る。遅延急冷区域3は、冷却用の急冷空気を受ける前に、溶融フィラメントが平衡化し、不規則性、例えば不均一な厚さまたは不均一な伸びの発現を阻止する区域を提供する。遅延急冷区域3は、0.1から30センチメートルの、好ましくは0.5から20センチメートルの長さを有し得る。好ましくは、遅延急冷区域3は265℃まで加熱される。代替の実施形態において、遅延急冷区域3は存在しない。
【0057】
次に、フィラメント2は、冷却され、固化されて、マルチフィラメントヤーンとなり得る。遅延急冷区域3(遅延急冷区域が存在する場合には)を通過した後、フィラメント2は、0.1から2メートルの長さを有し得る急冷空気区域中でフィラメント2を急冷空気5に暴露することにより冷却され得る。好ましくは、急冷空気5は、フィラメントの温度に対して冷たい温度を有し、遅延急冷区域3または紡糸口金1を出る。最も好ましくは、急冷空気温度は10℃から30℃である。遅延急冷区域3を使用しない場合には、好ましくは、急冷空気温度は上記の温度範囲の下限、好ましくは10℃から20℃にある。好ましくは、急冷空気5は、フィラメント2を横断して吹き込まれる、または場合によってはフィラメント2の長さに沿って吹き込まれ得る。好ましくは、急冷空気5は、0.1から0.8m/秒の、更に好ましくは0.3から0.7m/秒の速度で吹き込まれる。最も好ましくは、急冷空気5は、50%から98%の、更に好ましくは65から85%の湿度を有する。
【0058】
一つの実施形態においては、なかんずく、フィラメント2は、急冷空気ボックスまたはフィラメント2を急冷空気5に暴露させる空気急冷区域を規定するフィラメント2を取り囲むシリンダー(図示せず)を通る。急冷空気5は、フィラメント2を冷却するために急冷空気ボックスもしくはシリンダーの内表面から内向きに向けられる。
【0059】
フィラメント2は、急冷空気5により冷却される一方で、マルチフィラメントヤーン7に収束され得る。得られるマルチフィラメントヤーン7は、急冷空気5によってまた冷却され得る。もう一つの実施形態において、溶融紡糸されたフィラメントは、急冷空気により冷却される前に合体されて、マルチフィラメントヤーンとなり、ここで得られるマルチフィラメントヤーンが急冷空気により冷却され得る。更にもう一つの実施形態において、フィラメントは、フィラメントを急冷空気により加工した後で合体されて、マルチフィラメントヤーンを形成し得る。しかしながら、各実施形態において、得られたマルチフィラメントPTTヤーンは、巻き取り機構により巻き取る前に50℃未満のヤーン温度を有する。
【0060】
マルチフィラメントPTTヤーン7は、オイリングロールとして紡糸仕上げ剤塗布機6中を通されて、ヤーン7上に仕上げ剤を塗布し得る。好ましくは、仕上げ剤は、脂肪酸エステルおよび/または鉱油またはポリエーテルを含有する油剤である。
【0061】
次に、マルチフィラメントPTTヤーン7は、紡糸時に巻き取り機構により1分当り少なくとも3500メートル(m/分)のまたは少なくとも3600m/分のまたは少なくとも3700m/分のまたは少なくとも3800m/分のまたは少なくとも3900m/分のまたは更に好ましくは少なくとも4000m/分の巻き取り速度で引き取られて、ヤーン7中に紡糸線応力を付与し、ヤーン7中に著しい軸配向度を誘起する。好ましくは、ヤーン7は、多くても5400m/分のまたは多くても5300m/分のまたは多くても5200m/分のまたは多くても5100m/分のまたは多くても5000m/分の巻き取り速度で引き取られる。好ましくは、ヤーン7は、3500m/分から5400m/分の、更に好ましくは3800m/分から5000m/分の、最も好ましくは4000m/分から4500m/分の巻き取り速度で引き取られる。
【0062】
マルチフィラメントPTTヤーンは、所望の巻き取り速度で運転される巻き取り機構により引き取られる。巻き取り機構は、マルチフィラメントヤーンを巻き取るためのいかなる従来の機構でもよい。好ましくは、マルチフィラメントPTTヤーン7は、所望の巻き取り速度で回転するゴデットロール8により引き取られる。
【0063】
マルチフィラメントPTTヤーン7は、所望の巻き取り速度で引き取られるが、巻き取り速度は、ヤーンを50℃未満のヤーン温度で維持しながら、少なくとも3500m/分でなければならない。ゴデットロール8を使用して、ヤーンを巻き取る場合には、好ましくは、ゴデットロール8は加熱されないまたは外周温度以下に冷却されるが、加熱しない場合には、ヤーン7の冷結晶化温度未満の温度までヤーンを加熱する温度を有する。最も好ましくは、ゴデットロール8は、加熱されないが、加熱される場合には、50℃未満のヤーン温度までヤーンを加熱する温度を有する。
【0064】
所望ならば、引き取りおよび巻き取り工程を平滑化するために、他のゴデットロール組を巻き取り機構と巻取機の間に配置し得る。ヤーンに実質的な延伸を付与するのに有効な速度で他のゴデットロール組を運転してはならない。好ましくは、他のゴデットロール組は、自由回転のロールであり、または巻き取り速度に等しいもしくは巻き取り速度よりも若干遅い、好ましくは巻き取り速度よりも0%から5%遅い、更に好ましくは巻き取り速度よりも0%から1%遅い速度で駆動されなければならない。
【0065】
次に、得られる部分配向PTTマルチフィラメントヤーン7は、好ましくは巻き取り機構(例えば、ゴデットロール8)の巻き取り速度よりも0%から5%遅い、更に好ましくは巻き取り速度よりも0%から1%遅い巻き取り速度でヤーンパッケージ9に巻き取られ得る。ヤーン7を巻き取り速度よりも若干下の速度で巻き取ることによって、ヤーンパッケージ9上に巻き取るときのヤーン7上の応力が低下し得る。
【0066】
ヤーンパッケージは、例えば図2に示すように、チーズ形状のヤーンパッケージ11などのいかなる従来のヤーンパッケージでもあり得る。重要なこととして、PTTマルチフィラメント部分配向ヤーンは、ヤーン7とヤーンパッケージ11の重量が少なくとも5kg、10kgまたは15kgとなるようなサイズのヤーンパッケージ上に巻き取られ得る。好ましくは、得られたヤーンパッケージ11は、ヤーンが収縮を殆どもしくは全く起こさないので、ヤーン収縮により誘起される変形に対して安定である。比較の目的で、図3は、ヤーン13がヤーンパッケージ15中で誘起された変形を有する、ヤーン13(本発明のものでない)をこの上に有するヤーンパッケージ15を示す。
【0067】
ヤーンパッケージ11は、延伸もしくは引っ張り仮撚操作などの更なる加工において引き続いて使用され得る。ヤーンパッケージ11上に巻き取られるPTTマルチフィラメント部分配向ヤーン7は、ヤーンパッケージ11から巻き出され得、巻き出し時、延伸および仮撚操作にかけられ得る。ヤーンパッケージ11は、延伸および仮撚などの更なる加工における使用の前に例えば少なくとも1日間、少なくとも1週間または少なくとも30日間期間貯蔵され得る。好ましくは、貯蔵されたヤーンパッケージ11は、貯蔵および以降の使用時のヤーン収縮で誘起された変形に抗して安定である。あるいは、ヤーンパッケージ11は、異なる場所での更なる加工に使用するためにヤーン7をヤーンパッケージ11上に巻き取る場所から輸送され得る。好ましくは、輸送されたヤーンパッケージ11は、輸送および以降の使用時のヤーン収縮で誘起された変形に抗して安定である。
【0068】
本発明のPTT部分配向ヤーンを紡糸する少なくとも3500m/分の高い巻き取り速度によって、紡糸時にヤーン中に充分な紡糸線応力がまた生じて、少なくとも0.6の、更に好ましくは少なくとも0.7の、更に好ましくは少なくとも0.8の、最も好ましくは少なくとも0.9の結晶配向関数をヤーン中に誘起する。図4に示すように、巻き取り速度の関数としてPTT部分配向ヤーン中に結晶配向関数の3つの区別できる領域が存在する。2900から2500m/分以下の低巻き取り速度においては、PTT部分配向ヤーンは、殆ど安定配向が紡糸線応力によりヤーン中に誘起されなかったということを反映する低い結晶配向関数を有する。3000m/分から3200m/分の、ならびに3500m/分までの従来のポリエステル巻き取り速度においては、PTT部分配向ヤーンは、紡糸線応力によりヤーン中に誘起される安定配向の増加を反映する迅速に増加する結晶配向関数を有するが、ヤーンが収縮安定性となるには不充分な安定配向を有する。本発明においてもたらされる少なくとも3500m/分の高い巻き取り速度においては、PTT部分配向ヤーンは高い結晶配向関数を有する。理論により束縛されるのを望むのでないが、少なくとも3500m/分の巻き取り速度で紡糸される部分配向ヤーンは、ヤーンが弛緩に抗して比較的安定となるのに充分な結晶性配向が紡糸線応力によりヤーン中に誘起されたために、熱固定せずに少なくとも一部は収縮安定性であると考えられる。
【0069】
本発明のPTT部分配向ヤーンを紡糸する少なくとも3500m/分の高い巻き取り速度によって、紡糸時にヤーン中に充分な紡糸線応力が生じて、少なくとも35%(少なくとも1.344g/cmの密度)の、更に好ましくは少なくとも36%(少なくとも1.345g/cmの密度)の、更に好ましくは少なくとも37%(少なくとも1.347g/cmの密度)の、更に好ましくは少なくとも38%(少なくとも1.348g/cmの密度)の、更に好ましくは少なくとも39%(少なくとも1.350g/cmの密度)の、最も好ましくは少なくとも40%(少なくとも1.351g/cmの密度)の結晶性を誘起する。図5に示すように、PTT部分配向ヤーンの結晶性は高い巻き取り速度において増加し、本発明において提供される少なくとも3500m/分の高い巻き取り速度においては、PTT部分配向ヤーンは、低い巻き取り速度、例えば3000m/分から3200m/分の従来のポリエステル紡糸で使用される速度、特に2600m/分以下の低い巻き取り速度で使用される速度で紡糸される他のPTT部分配向ヤーンと比較して、比較的高い結晶度を有する。理論により束縛されるのを望むのでないが、少なくとも3500m/分の巻き取り速度で紡糸されるこれらのヤーンは、ヤーンが弛緩に抗して比較的安定となるのに充分な結晶性配向が紡糸線応力によりヤーン中に誘起されたために、熱固定せずに少なくとも一部は収縮安定性であると考えられる。
【0070】
本発明のPTT部分配向ヤーンを紡糸する少なくとも3500m/分の高い巻き取り速度によって、紡糸時にヤーン中に充分な紡糸線応力が生じて、多くても22%の、更に好ましくは多くても20%の、更に好ましくは多くても19%の、更に好ましくは多くても18%の、最も好ましくは多くても17%の初期ボイルオフ収縮も誘起する。理論により束縛されるのを望むのでないが、初期ボイルオフ収縮の減少は、図4で結晶配向関数の増加により示されるように、結晶性配向の増加に相関すると考えられる。
【0071】
本発明のPTT部分配向ヤーンを紡糸する少なくとも3500m/分の高巻き取り速度によって、紡糸時にヤーン中に充分な紡糸線応力が生じて、初期ボイルオフ収縮に対して10%以下の、更に好ましくは初期ボイルオフ収縮に対して8%以下の、更に好ましくは初期ボイルオフ収縮に対して6%以下の、最も好ましくは初期ボイルオフ収縮に対して5%以下の初期ボイルオフ収縮から30日後のボイルオフ収縮も誘起する。例えば、本発明の方法により製造されるPTT部分配向ヤーンの初期のボイルオフ収縮が17%であるとすると、30日後のボイルオフ収縮は、好ましくは7%から17%、更に好ましくは9%から17%、更に好ましくは11%から17%、最も好ましくは12%から17%である。図6に示すように、ヤーンを紡糸する巻き取り速度が3500m/分に接近するにつれて、PTT部分配向ヤーンの30日のボイルオフ収縮は、著しく減少し、3500m/分以上の巻き取り速度で低いレベルに維持される。
【0072】
本発明のPTT部分配向ヤーンを紡糸する少なくとも3500m/分の高い巻き取り速度によって、紡糸時にヤーン上に充分な紡糸線応力が生じて、ヤーン中に少なくとも0.05の初期複屈折を誘起する。更に好ましくは、PTTヤーンを紡糸する少なくとも3500m/分の高い巻き取り速度は、0.06から0.085の初期複屈折を誘起する。図7に示すように、ヤーンを紡糸する巻き取り速度が増加するにしたがって、PTT部分配向ヤーンの複屈折は増加する。
【0073】
好ましくは、PTTヤーンを紡糸する少なくとも3500m/分の高巻き取り速度によって、紡糸時にヤーン中に充分な紡糸線応力が生じて、PETファイバーの四点対角小角X線散乱と対照的に約50から約100オングストロームの結晶性/非晶質相ラメラ周期性を有する二点子午線小角X線散乱を示すミクロフィブリル構造(PETファイバーにおけるように対角に積み重ねられる代わりに本発明のラメラ周期性のPTTヤーンはファイバー方向に沿った層で配列される);少なくとも2.5グラム/デニールの、更に好ましくは少なくとも2.6グラム/デニールの、更に好ましくは少なくとも2.7グラム/デニールの、最も好ましくは少なくとも3.0グラム/デニールのテナシティ;70%から110%の間の、更に好ましくは75%から105%の破断時の伸び;および少なくとも12カロリー/グラム(50.2J/g)の、更に好ましくは少なくとも13cal/g(54.4J/g)の、更に好ましくは少なくとも14cal/g(58.6J/g)の、最も好ましくは少なくとも15cal/g(62.8J/g)の溶融熱もヤーン中に誘起する。
【0074】
PTT部分配向ヤーン組成物
本発明は、収縮を殆どもしくは全く起こさないマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンにも関する。本発明のマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンは、少なくとも0.6の、更に好ましくは少なくとも0.7の、更に好ましくは少なくとも0.8の、最も好ましくは少なくとも0.9の結晶配向関数を有し得る。本発明のマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンは、少なくとも35%(少なくとも1.344g/cmの密度)の、更に好ましくは少なくとも36%(少なくとも1.345g/cmの密度)の、更に好ましくは少なくとも37%(少なくとも1.347g/cmの密度)の、更に好ましくは少なくとも38%(少なくとも1.348g/cmの密度)の、更に好ましくは少なくとも39%(少なくとも1.350g/cmの密度)の、最も好ましくは少なくとも40%(少なくとも1.351g/cmの密度)の結晶性に相当する、少なくとも12cal/g(50.2J/g)の、更に好ましくは少なくとも13cal/g(54.4J/g)の、更に好ましくは少なくとも14cal/g(58.6J/g)の、最も好ましくは少なくとも15cal/g(62.8J/g)の溶融熱を有し得る。本発明のマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンは、多くても22%の、更に好ましくは多くても20%の、更に好ましくは多くても19%の、更に好ましくは多くても18%の、最も好ましくは多くても17%の初期ボイルオフ収縮を有し得る。本発明のマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンは、初期ボイルオフ収縮に対して10%以下の、更に好ましくは初期ボイルオフ収縮に対して8%以下の、更に好ましくは初期ボイルオフ収縮に対して6%以下の、および最も好ましくは初期ボイルオフ収縮に対して5%以下の初期ボイルオフ収縮から30日後のボイルオフ収縮を有し得る。本発明のマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンは、少なくとも0.05の初期複屈折、最も好ましくは0.06から0.085の初期複屈折を有し得る。本発明のマルチフィラメントPTT部分配向ヤーンは、約50から約100オングストロームの結晶性/非晶質相ラメラ周期性を持つ二点子午線小角X線散乱、少なくとも2.5グラム/デニール、更に好ましくは少なくとも2.6グラム/デニール、更に好ましくは少なくとも2.7グラム/デニール、最も好ましくは少なくとも3.0グラム/デニールのテナシティ;および65%以上の、70%以上の、少なくとも75%の、110%未満の、多くても105%の、多くても100%の、65%から110%の間の、70%から105%の、もしくは75%から100%の破断時の伸びを示す、ミクロフィブリル構造も有し得る。
【0075】
図2に示すように、好ましくは、本発明のマルチフィラメントPTT部分配向ヤーン7は、ヤーンパッケージ、例えばチーズ形状のヤーンパッケージ11に巻き取られる。ヤーンパッケージ11は、いかなる在来のヤーンパッケージでもあり得、好ましくはヤーンとヤーンパッケージの重量が少なくとも5kg、10kg、または15kgとなるようなサイズおよび寸法のヤーンパッケージである。
【0076】
本発明のPTT部分配向ヤーン7を巻き取ったヤーンパッケージ11は、ヤーン収縮により誘起される変形に対して在来のPTT部分配向ヤーンよりも安定である。好ましくは、ヤーンパッケージ11の収縮および変形は起こらない。しかしながら、収縮が起こる場合には、これはヤーンパッケージ11が変形し、硬い縁付きのバルジを形成するような程度には起こらず、ヤーンパッケージは図3(不安定なヤーン13の収縮により変形したヤーンパッケージ15上に巻き取られた本発明のものでない収縮不安定なPTT部分配向ヤーン13を図示する)に概略を図示するようにチャックの脱着が不能である。
【実施例1】
【0077】
3500m/分、4000m/分および4500m/分の巻き取り速度で部分配向PTTマルチフィラメントヤーンを本発明の方法により作製し、結晶性、複屈折、結晶配向関数および溶融熱について測定した。0.92dl/gの固有粘度を有するPTTポリマーを熱空気乾燥機により130℃で6時間30ppm未満の水分含量まで乾燥した。熱空気は−60℃未満の露点を有していた。30:1のL/Dの1インチの一軸押し出し機を用いて、乾燥したポリマーを260℃で融解し、50穴の紡糸口金で押し出した。押し出されたファイバーを16℃の温度を有する急冷空気により50℃未満のヤーン温度まで急冷し、Sラップの形の一対の加熱していないゴデットロールに通し、ならびにBarmag SW 46SSD巻き取り機により巻き取って、150デニールヤーンを製造した。ヤーンを3500m/分の巻き取り速度で巻き取るゴデットロールにより一方のヤーンを紡糸し、他方のヤーンを4000m/分の巻き取り速度で紡糸し、ならびに第3のヤーンを4500m/分の巻き取り速度で紡糸した。各ヤーンの結晶性、複屈折、結晶関数、および溶融熱を測定した。得られた測定値を下記の表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示すヤーンに対して測定された結晶性、複屈折、結晶関数および溶融熱は、3500m/分以上の巻き取り速度と、50℃未満のヤーン温度で紡糸された部分配向PTTヤーンが著しい配向度を有するということを示す。
【実施例2】
【0080】
実施例1で作製されたヤーンの30日後のボイルオフ収縮を測定して、エージング後のヤーンの収縮能力を求めた。各ヤーンの形成後30日間ヤーンを巻き取り、外周条件下で貯蔵した。30日間貯蔵後各ヤーンのボイルオフ収縮を測定した。用語「ボイルオフ収縮」を定義する上述の方法によりボイルオフ収縮を測定した。各ヤーンに対する30日後のボイルオフ収縮を下記の表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
30日後のボイルオフ収縮の結果は、本発明の方法により作製されるPTT部分配向ヤーンがエージング後殆ど収縮を起こさないということを示す。
【実施例3】
【0083】
ヤーンを4000m/分の巻き取り速度で巻き取るゴデットロールにより紡糸される部分配向PTTヤーンを本発明の方法により作製し、ヤーンの初期形成からヤーンの初期形成から30日までヤーンのボイルオフ収縮を測定して、ヤーンの収縮安定性を求めた。0.92dl/gの固有粘度を有するPTTポリマーを30ppm未満の水分含量まで乾燥し、25/1のL/D比の50mm直径のバリアスクリュー押し出し機を用いて、乾燥したポリマーを255℃で融解し、0.3mm直径のダイ穴を有する紡糸口金で36フィラメントファイバーに押し出した。このファイバーを21℃の温度で50℃未満のヤーン温度まで急冷し、Sラップの形の一対の加熱していないゴデットロールに通し、ならびに帝人精機巻き取り機により巻き取って、85デニールヤーンを製造した。ヤーンを4000m/分の巻き取り速度で巻き取るゴデットロールによりこのヤーンを紡糸した。ヤーンの製造の24時間以内に作製したヤーンの初期ボイルオフ収縮を測定した。実施例2で上述したのと同一の方法でヤーンのボイルオフ収縮を測定した。ヤーンを外周条件下で30日間エージングし、次にヤーンのボイルオフ収縮を再度測定した。結果を下記の表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
測定されるヤーンの初期ボイルオフ収縮とヤーンの30日後のボイルオフ収縮の間の差は6.2%とかなり小さく、本発明の方法により作製されるPTT部分配向ヤーンがエージン時に殆ど収縮を起こさないということを示す。
【実施例4】
【0086】
部分配向PTTヤーンを3500m/分の、4000m/分の、ならびに4500m/分の巻き取り速度で本発明の方法により作製し、テナシティおよび破断時の伸びについて測定した。ヤーンを3500m/分の、4000m/分の、ならびに4500m/分の巻き取り速度で巻き取ったことを除いて、ヤーンを実施例3で述べた方法により作製した。各ヤーンをテナシティおよび破断時の伸びについて測定した。結果を下記の表4に示す。
【0087】
【表4】

【0088】
測定されるヤーンのテナシティと破断時の伸びは、本発明の方法により作製されるPTT部分配向ヤーンが比較的強いということを示す。
【実施例5】
【0089】
ヤーンパッケージを本発明の方法により作製し、ヤーンパッケージを30日にわたって観察して、ヤーン収縮によりパッケージ中に誘起されるいかなる形状変化も検出した。0.25mm直径のダイ穴を有する32穴の紡糸口金から0.92dl/gの固有粘度を有するPTTを32フィラメント89デニール部分配向ヤーンに紡糸した。15℃の温度と0.35−0.45m/秒の速度を有する急冷空気により50℃未満のヤーン温度までフィラメントを急冷した。このヤーンを4000m/分の巻き取り速度で運転される一対の加熱していないゴデットロールに通し、ヤーンパッケージ上に巻き取った。ヤーンを巻き付けたヤーンパッケージ重量は8.1kgであった。ヤーンパッケージの形成時およびヤーンパッケージの形成30日後に再度ヤーンパッケージをバルジおよびサドルバックを検査した。パッケージ形状は、ヤーンパッケージの形成時からヤーンパッケージの形成30日後まで実質的に不変のままであり、ヤーンおよびヤーンパッケージの収縮を実証した。
【実施例6】
【0090】
比較の目的で、本発明によらない方法により2500m/分の巻き取り速度で部分配向PTTヤーンを作製し、結晶性、複屈折、結晶配向関数および溶融熱について測定した。ヤーンを2500m/分の巻き取り速度で引き取ったことを除いて、ヤーンを実施例1で述べた方法により作製した。ヤーンの結晶性、複屈折、結晶配向関数および溶融熱を測定した。得られた測定値を下記の表5に示す。
【0091】
【表5】

【0092】
表5に示すようなヤーンに対して測定される結晶性、複屈折、結晶関数および溶融熱は、2500m/分の巻き取り速度で紡糸され、巻き取られるヤーンが3500m/分以上の巻き取り速度で紡糸され、巻き取られるPTT部分配向ヤーンよりも著しく低い配向を有するということを示す(表1に示すように)。
【実施例7】
【0093】
比較の目的で、2500m/分(本発明によらない)の巻き取り速度で作製されるPTTヤーンの30日後のボイルオフ収縮を測定して、エージング後のヤーンの収縮能力を求めた。上記の実施例6で開示したようにヤーンを作製した。ヤーンの形成から30日後のボイルオフ収縮を上記の実施例2で述べたように測定した。30日後のヤーンのボイルオフ収縮を下記の表6に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
2500m/分の巻き取り速度で巻き取られたヤーンの30日のボイルオフ収縮の結果は、本発明の方法により作製されるPTT部分配向ヤーンと比較して(表2に示すように)、ヤーンの形成30日後でヤーンが収縮する実質的な能力を有するということを示す。
【実施例8】
【0096】
比較の目的で、部分配向PTTヤーンを2500m/分の巻き取り速度で本発明によらない方法により作製し、テナシティおよび破断時の伸びについて測定した。ヤーンを2500m/分の巻き取り速度で巻き取ったことを除いて、ヤーンを実施例3で述べた方法により作製した。ヤーンをテナシティと破断時の伸びについて測定した。結果を下記の表7に示す。
【0097】
【表7】

【0098】
ヤーンの測定されたテナシティは、本発明の方法により紡糸されるヤーンと比較して(表4に示すように)、2500m/分の巻き取り速度で引き取られたヤーンが比較的弱いということを示す。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】マルチフィラメント部分配向ヤーンを紡糸および巻き取りをするための装置を示す概略図である。
【図2】非変形のチーズ形状のヤーンパッケージ断面を示す概略図である。
【図3】バルジ形成および収縮が起こった、本発明のものでないヤーンパッケージの断面を示す概略図である。
【図4】部分配向PTTヤーンの、結晶配向関数のヤーンを紡糸する紡糸速度に対する関係を示すグラフである。
【図5】部分配向PTTヤーンの、ヤーンを紡糸する紡糸速度に対する結晶性の関係を示すグラフである。
【図6】部分配向PTTヤーンの、ヤーンを紡糸する紡糸速度に対する30日ボイルオフ収縮の関係を示すグラフである。
【図7】部分配向PTTヤーンの、ヤーンを紡糸する紡糸速度に対する複屈折の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約0.6の結晶配向関数および65%から110%の間の破断時の伸びを有するポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを含むヤーン。
【請求項2】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが少なくとも約12カロリー/グラム、13カロリー/グラム、14カロリー/グラムまたは15カロリー/グラムの溶融熱を有する、請求項1に記載のヤーン。
【請求項3】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが少なくとも約0.05の初期複屈折を有する、請求項1または請求項2に記載のヤーン。
【請求項4】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが多くても約22%、約20%、約19%、約18%または約17%の初期ボイルオフ収縮を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のヤーン。
【請求項5】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが初期ボイルオフ収縮に対して10%、約8%、約6%または約5%少ない初期ボイルオフ収縮から30日後のボイルオフ収縮を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のヤーン。
【請求項6】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが約50から約100オングストロームの結晶性/非晶質相ラメラ周期性に対応する子午線の二点小角X線散乱パターンを有する、請求項1から5のいずれかに記載のヤーン。
【請求項7】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが少なくとも2.5g/デニール、少なくとも2.6g/デニール、少なくとも2.7g/デニールまたは少なくとも3.0g/デニールのテナシティを有する、請求項1から6のいずれかに記載のヤーン。
【請求項8】
請求項1に記載のヤーンを含む、ヤーンパッケージ。
【請求項9】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)を溶融紡糸すること;
溶融紡糸ポリ(トリメチレンテレフタレート)を冷却し、50℃未満のヤーン温度を有するマルチフィラメントヤーンとすること;および
ヤーンを50℃未満のヤーン温度に維持しながら、少なくとも約3500m/分の、少なくとも約3600m/分の、少なくとも約3700m/分の、少なくとも約3800m/分の、少なくとも約3900m/分のまたは少なくとも約4000m/分の巻き取り速度で50℃未満のヤーン温度を有するマルチフィラメントヤーンを巻き取ること
を含む、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを形成するための方法。
【請求項10】
ヤーンをヤーンパッケージの上に巻き取ることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ヤーンをヤーンパッケージから巻き出すこと;および
巻き出したヤーンを延伸しおよび仮撚すること
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
多くても22の初期ボイルオフ収縮、初期ボイルオフ収縮に対して10%少ない初期ボイルオフ収縮から30日後のボイルオフ収縮、および65%から110%の間の破断時の伸びを有するポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを含むヤーン。
【請求項13】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが少なくとも12カロリー/gの溶融熱を有する、請求項12に記載のヤーン。
【請求項14】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが少なくとも2.5g/デニールのテナシティを有する、請求項12または請求項13に記載のヤーン。
【請求項15】
請求項12に記載のヤーンを含む、ヤーンパッケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−521625(P2009−521625A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548816(P2008−548816)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/062480
【国際公開番号】WO2007/076433
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】