ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、ポリエステル樹脂用結晶化促進剤および成型物
【課題】成型後に結晶性の遅いポリ乳酸などのポリエステル樹脂に対して、相溶性に優れ、結晶核剤に起因する成型物の白濁がなく、成型物は樹脂の結晶化による光散乱のみの半透明性を保ち、成型後のポリエステル樹脂の結晶化速度を促進させるポリエステル樹脂用結晶化促進剤などの提供。
【解決手段】少なくとも1種のラジカル発生剤により架橋された少なくとも1種のポリエステル樹脂Aと、上記ポリエステル樹脂と同一または異なる少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂Bとからなり、樹脂Aおよび樹脂Bの両者が均一に溶融混合および結晶化されていることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【解決手段】少なくとも1種のラジカル発生剤により架橋された少なくとも1種のポリエステル樹脂Aと、上記ポリエステル樹脂と同一または異なる少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂Bとからなり、樹脂Aおよび樹脂Bの両者が均一に溶融混合および結晶化されていることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂(ポリエステル鎖を有する樹脂)、特に脂肪族ポリエステル樹脂、中でも植物由来の原料を主成分とするポリエステル樹脂に、有機フリーラジカル(以下、「ラジカル」と称する場合がある。)発生剤で架橋した結晶ポリエステル樹脂を混合および混練することによって得られる、物性の改良された結晶化ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、ポリエステル樹脂用結晶化促進剤および成型物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石資源の枯渇問題や環境への影響から石油由来の高分子材料に代わって、再生可能な高分子材料として植物由来の原料を使用した高分子材料、いわゆるバイオマスプラスチックが、環境負荷低減可能な材料として注目されてきている。その代表的なものはポリ乳酸であるが、該ポリ乳酸は、それ自身結晶性高分子であるにもかかわらず、その成型物の耐熱性が50℃〜55℃と低く、該成形物が、この温度を超えて加熱されると、当該成型品が変形してしまうという欠陥を有していた。これは、溶融成型後のポリ乳酸の結晶化速度が極めて遅いためであり、成型機中で溶融されたポリ乳酸が脱型された状態では、該ポリ乳酸成型物の結晶化が殆ど進行していないためであった。その改良方法として、タルクなどの無機物質微粉を結晶核剤としてポリ乳酸に添加し、ポリ乳酸の成型・脱型後のポリ乳酸の結晶化を促進させる方法が行われている(特許文献1、2)。しかしながら、これらの結晶核剤は無機物質であるため、ポリ乳酸成型物の透明性を低下させるなどの欠陥を有していた。
【0003】
【特許文献1】特許第3410075号公報
【特許文献2】特開2004−269588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、成型後に結晶性の遅いポリ乳酸などのポリエステル樹脂に対して、相溶性に優れ、結晶核剤に起因する成型物の白濁がなく、成型物は樹脂の結晶化による光散乱のみの半透明性を保ち、成型後のポリエステル樹脂の結晶化速度を促進させるポリエステル樹脂用結晶化促進剤、該促進剤を含むポリエステル樹脂組成物、その製造方法、および成型物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記本発明の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、架橋したポリエステル樹脂を結晶化促進剤として非架橋ポリエステル樹脂と混練することで、非架橋ポリエステル樹脂を含めた樹脂組成物全体の結晶化が顕著に促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、少なくとも1種のラジカル発生剤により架橋された少なくとも1種のポリエステル樹脂A(以下単に「樹脂A」、「架橋樹脂A」または「結晶化促進剤」という場合がある)と、上記ポリエステル樹脂と同一または異なる少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂B(以下単に「樹脂B」または「非架橋樹脂B」という場合がある)とからなり、樹脂Aおよび樹脂Bの両者が均一に溶融混合および結晶化されていることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0007】
また、上記本発明は、少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂A’(以下単に「樹脂A’」または「非架橋樹脂A’」という場合がある)に少なくとも1種のラジカル発生剤を混合し、該混合物を上記ラジカル発生剤の分解温度以上の温度で混練し、上記樹脂A’を架橋させた後、冷却して上記樹脂を結晶化させた少なくとも1種の樹脂Aを、少なくとも1種の非架橋樹脂Bと混合し、加熱混練後、冷却して結晶化させることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0008】
上記本発明においては、前記樹脂Aまたは前記樹脂Bが、少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸(好ましくは炭素数1〜18)の重縮合物、少なくとも1種のラクトン(好ましくは炭素数3〜6)の開環重合物、または少なくとも1種の脂肪族ポリカルボン酸(好ましくは炭素数2〜9)または芳香族ポリカルボン酸(好ましくは炭素数6〜12)と少なくとも1種の脂肪族ポリオール(好ましくは炭素数2〜6)または脂環式ポリオール(好ましくは炭素数4〜10)との重縮合物であることが好ましい。
【0009】
また、上記本発明においては、前記樹脂Aまたは前記樹脂Bが、ポリ乳酸系樹脂および/またはポリコハク酸系樹脂であること;前記ラジカル発生剤が、パーオキシカーボネート系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシケタール系過酸化物およびハイドロパーオキサイド系過酸化物などの少なくとも1種の過酸化物であること;前記樹脂Aと前記非架橋樹脂Bとの混合割合が、A:1質量部当たりB:0.1〜100質量部であること;前記ラジカル発生剤の使用量が、前記樹脂A’100gあたり、0.0005〜0.01モルであることが好ましい。
【0010】
また、上記本発明においては、前記架橋前の樹脂A’に予め、または前記混練時の樹脂A’に、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤を配合してもよい。また、本発明は、前記ラジカル発生剤により架橋され、結晶化されている前記樹脂Aからなることを特徴とする、前記非架橋樹脂B用結晶化促進剤Aを提供する。該促進剤Aには、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤が配合されていてもよい。
【0011】
また、本発明は、前記本発明の結晶化ポリエステル樹脂組成物を成型加工してなることを特徴とするポリエステル樹脂成型物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱・溶融・成型・脱型後に結晶化が遅いポリエステル樹脂、特に植物由来のバイオマスプラスチックであるポリ乳酸などのポリエステル樹脂に対して、相溶性に優れ、成型後の成型物の透明性を損なわずに、上記ポリエステル樹脂の脱型後の成型物の結晶化速度を促進させることのできる結晶化促進剤を提供することができる。該結晶化促進剤を非架橋ポリエステル樹脂に添加して溶融混練し、成型することにより、成型物の結晶化が促進され、耐熱性などの樹脂物性に優れた成型物を提供することができる。
【0013】
本発明の結晶化促進剤(架橋樹脂A)を、非架橋樹脂Bと混練することで、樹脂組成物全体の結晶化が促進される機構は、熱分析やX線回折の結果などから以下のように想定される。
【0014】
先ず、非架橋樹脂A’が押出成型機中において溶融混練されながら架橋された架橋樹脂Aの分子配列は、樹脂分子間に架橋構造が形成されていることによって、樹脂A全体としては溶融時に流動性を有しているにもかかわらず、架橋樹脂Aの分子は、その動きの自由度がある程度拘束される。そのため、例えば、架橋樹脂Aの1例である架橋ポリL−乳酸の場合は、架橋された樹脂分子の立体配列が、脱型後の冷却後にも比較的そのまま維持されるものと考えられる。
【0015】
上記架橋樹脂Aが、押出成型機中で非架橋樹脂Bとともに溶融混練されることによって、上記架橋樹脂Aが上記非架橋樹脂B中に均一に拡散され、成型後、脱型されて冷却(水冷や空冷)されるが、上記成型物の冷却の際に、架橋樹脂Aが結晶化し、その架橋分子配列が、混合されている非架橋樹脂Bの鋳型(テンプレート)となって、非架橋樹脂Bの結晶化が順次に進行するものと考えられる。
【0016】
上記樹脂Aと樹脂Bとの混合物の結晶化のメカニズムは、従来の固体状の微粉である結晶核剤の作用(溶融した樹脂が冷却されて準安定の結晶化状態になり、該樹脂中に存在させた結晶核剤などが種(たね)となって結晶を形成させるという結晶化メカニズム)とは、全く異なる結晶化のメカニズムであると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に使用される架橋前の樹脂A’としては、その構造中に多数のエステル結合を有し、さらに熱可塑性を有する従来公知のポリエステル樹脂、特に過酸化物によるラジカル架橋が起こり易い脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。特に原料資源として植物由来のヒドロキシカルボン酸、ラクトン、脂肪族または芳香族ポリカルボン酸、脂肪族または脂環族ポリオールなどの原料を主成分として縮重合または開環重合反応して得られるポリエステル樹脂が好ましい。
【0018】
上記好ましいポリエステル樹脂としては、例えば、ヒドロキシカルボン酸の自己縮重合物、ラクトンの開環重合物、アルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸(または芳香族ジカルボン酸を含む脂肪族ジカルボン酸)との縮重合物、アルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸ポリエステル−カーボネートとの縮重合物などが挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸の自己縮重合物としては、炭素数1〜18のヒドロキシカルボン酸の自己縮重合物、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合物など;上記ラクトンの開環重合物としては炭素数3〜6の脂肪族ラクトンの開環重合物、例えば、ポリブチロラクトン、ポリカプロラクトンなど;上記縮重合物としては、炭素数2〜6の脂肪族ジオールと炭素数2〜9の脂肪族ジカルボン酸との縮重合物、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−アジペート)などが挙げられる。
【0019】
また、上記の脂肪族ポリエステルを、架橋構造を誘起するポリマーセグメントとして有する脂肪族環あるいは芳香族環を含有するポリエステル類としては、上記の脂肪族ポリエステル中に、炭素数4〜10の脂環式ジカルボン酸単位や、炭素数6〜10の芳香族ジカルボン酸単位を組み込んだ共重合物が挙げられ、また、上記脂肪族ポリエステル中に炭素数4〜10の脂環式ジオール単位や炭素数6〜12の芳香族ジオール単位を組み込んだ共重合物が挙げられる。例えば、ポリ(ブチレンサクシネート−テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート−テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート−テレフタレート)、ポリ(ブチレン−1,4−シクロヘキシレンジメチル−アジペート)など;炭素数2〜4のアルキレングリコールと炭素数2〜9のポリエステル−カーボネートとの縮重合物、例えば、ポリブチレンサクシネート−カーボネートなどが挙げられ、以上のポリエステル樹脂は、単独でも混合物としても用いられる。
【0020】
上記のポリエステル樹脂中では、特に好ましくは乳酸、乳酸オリゴマー、ラクチドを主成分として重合したポリ乳酸や乳酸共重合物などのポリ乳酸系樹脂、あるいはポリコハク酸系樹脂などが使用される。
【0021】
また、本発明において非架橋樹脂A’に架橋構造を形成させるために使用されるラジカル発生剤としては、熱分解してフリーラジカルを形成させ、非架橋樹脂A’をラジカル架橋させる公知のラジカル発生剤が使用される。非架橋樹脂A’における架橋構造の形成は、非架橋樹脂A’の溶液あるいは樹脂分散液の状態でも行われるが、最も好ましい方法は非架橋樹脂A’を溶融状態で架橋を形成させる方法である。この方法で、非架橋樹脂A’を押出し機で混練し、架橋させる場合には、混練温度において分解するラジカル発生剤を使用することが好ましい。ラジカル発生剤の選定は、押出し機内での非架橋樹脂A’の混練温度の設定にもより、一概に規定はできないが、例えば、非架橋樹脂A’の混練温度がほぼ190℃ないし210℃である場合には、目安として1分間の半減期を得る分解温度が130℃〜210℃位にあるラジカル発生剤が好ましい。
【0022】
使用するラジカル発生剤としては、樹脂A’の樹脂分子から水素引抜反応あるいはラジカル付加反応などを起こし易い有機過酸化物系のラジカル発生剤が好ましい。具体的には、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシカーボネート系、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル系、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド系、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール系、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド系の過酸化物などから選ばれた1種または2種以上の有機過酸化物が使用される。
【0023】
樹脂A’に対する有機過酸化物の使用量は、結晶化促進剤として使用される架橋樹脂Aの分子の配列を架橋により拘束し、その架橋状態を維持させるに足る架橋点を樹脂A’中に形成し、かつ架橋樹脂Aが、溶融混練して非架橋樹脂B中に均一に拡散されることができる量である。本発明において、結晶化促進剤として使用する架橋樹脂Aには、樹脂分子の分子量分布があるので、架橋樹脂Aは、その分子量によって溶融し始める温度がわずかに異なるはずであり、また、架橋樹脂Aが溶融時流動性を保つためには、樹脂A中には、架橋したポリエステル樹脂分子と未架橋のポリエステル樹脂分子が共存している状態が望ましい。従って上記有機過酸化物の添加量は、架橋されるべき樹脂A’の分子量や分子量分布によっても変わり、一概に決められるものではないが、有機過酸化物の使用量は、樹脂A’100gあたり凡そ0.0005モル以上、好ましくは凡そ0.001モル以上である。有機過酸化物の添加量の上限は、樹脂A’の過剰の架橋形成による樹脂Aの樹脂B中における拡散を阻害しない範囲であり、樹脂A’100gあたり凡そ0.01モル以下が好ましい。
【0024】
この場合、過酸化物の分解によるフリーラジカルにより樹脂A’の架橋を効果的に行なうために、従来公知のラジカル付加重合性の単量体やオリゴマーなどの架橋成分を樹脂A’の原料中に添加してもよい。上記架橋成分としては、例えば、炭素数2〜6のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体や炭素数1〜7のジアルキルイタコネートなどの単官能性単量体などが挙げられる。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記ラジカル発生剤により架橋された少なくとも1種の樹脂A(結晶化促進剤)と上記樹脂Aと同一または異なる少なくとも1種の非架橋樹脂Bとからなり、これら両者が均一に溶融混合および結晶化されてなることを特徴としている。上記の非架橋樹脂Bは、樹脂A’として前記した少なくとも1種のポリエステル樹脂であり、単独でも混合物としても使用でき、また、非架橋樹脂Bは、架橋前の前記樹脂A’と同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0026】
上記本発明の結晶化ポリエステル樹脂組成物は、上記樹脂Aを非架橋樹脂Bと混合し、混練装置中で加熱混練後、冷却して樹脂Aと樹脂Bとの混合物を結晶化させることによって得られる。架橋樹脂Aの非架橋樹脂Bに対する結晶形成効果は、前記したように非架橋樹脂B中における架橋樹脂Aの鋳型による効果によると想定されるが、本発明の架橋樹脂Aによる非架橋樹脂ポリエステルBの結晶化効果は非常に優れている。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂組成物における配合比率は、架橋樹脂Aの1質量に対して非架橋樹脂Bは0.1質量〜100質量であり、好ましくは10質量〜50質量である。非架橋樹脂Bの使用量が0.1質量部未満であると、得られるポリエステル樹脂組成物の加熱溶融性および成型性が低下し好ましくない。また、非架橋樹脂Bの使用量が100質量部を超えると、得られるポリエステル樹脂組成物の加熱溶融性および成型性は良好であるものの、成型・脱型後のポリエステル樹脂成型品の結晶化が遅くなり、耐熱性が改良された成型物が得られ難い。
【0028】
なお、上記本発明のポリエステル樹脂組成物の製造においては、架橋樹脂Aを非架橋樹脂Bと直接混練する場合と、先ず、架橋樹脂Aと非架橋樹脂Bとを、低倍率、例えば、質量比1:0.1〜10で混練して架橋樹脂Aを非架橋樹脂B中に予め高濃度で拡散してから、該高濃度配合物(架橋樹脂マスターバッチ)を大量の非架橋樹脂Bで希釈した後、所望の形状に成型することも好ましい。
【0029】
例えば、後述の実施例1で述べる架橋樹脂Aの製造では、過酸化物の使用量は非架橋樹脂A’100gあたり0.0022モルであり、実施例2では架橋樹脂Aと非架橋樹脂Bとの配合割合が、A:B=が10:90で、およそ10倍希釈であることから、実施例2で得られるポリエステル樹脂組成物全体に対する過酸化物の使用量は、ポリエステル樹脂組成物100gあたり凡そ0.0002モルとなる。また、実施例3ではポリエステル樹脂組成物の配合比であるA:B=3:100で、凡そ34倍希釈であり、また、実施例4ではポリエステル樹脂組成物の配合比であるA:B=1:99で100倍希釈であることから、過酸化物の使用量としては、ポリエステル樹脂組成物全体100gあたり、それぞれ凡そ0.00006モルおよび0.000022モルとなる。
【0030】
上記の実施例において、架橋樹脂Aを使用せずに、本発明のポリエステル樹脂組成物に相当する量の非架橋樹脂Bに、上記の割合の有機酸化物を作用させても、樹脂Bの結晶化を促進させるための過酸化物の使用量の下限を大きく下回ってしまい、樹脂Bの結晶化を促進させる効果を示さない。従って、本発明においては、上記したような樹脂A’に対する過酸化物の使用量で、ポリエステル樹脂組成物の全体に対して結晶化が著しく改善されることは驚くべきことであり、本発明の架橋樹脂Aを結晶化促進剤として使用することの優れた効果である。
【0031】
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物においては、架橋樹脂Aが実際に実施例2では組成物全体の約10質量%、実施例3では組成物全体の約3質量%、実施例4では組成物全体の1質量%しか占めていないため、本発明のポリエステル樹脂組成物の溶融時の流動特性は、非架橋樹脂Bの溶融時の流動特性と大きく変わらず、ポリエステル樹脂組成物の成型加工、さらには上記ポリエステル樹脂組成物の使用後の回収、再使用および再生加工などの2次的加工が容易にできるという優れた特長を有する。
【0032】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成型物には、その目的に応じて添加剤の1種あるいは2種以上を配合することも好ましい。添加剤としては、例えば、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤などが挙げられる。
【0033】
上記添加剤は、架橋樹脂Aに添加する方法と、本発明のポリエステル樹脂組成物に添加する方法とがある。前者の方法としては、(a)非架橋樹脂A’にラジカル発生剤を混練する前に、上記添加剤などを予め混合、混練しておき、次いでラジカル発生剤を添加し、混練する方法、あるいは(b)上記添加剤などをラジカル発生剤とともに非架橋樹脂A’配合し、混合、混練する方法がある。このようにして得られる添加剤を含有する樹脂Aを非架橋樹脂Bと混合し、加熱混練し、冷却して結晶化させる。また、後者の方法では、架橋樹脂A、非架橋樹脂Bおよび上記添加剤などを混合し、成型機で混練、加工し、添加剤を含有する成型物を得ることができる。
【0034】
使用される着色剤としては、染料、有機顔料、カーボンブラック顔料、無機顔料、白色の有機顔料および無機顔料から選ばれた色素である。顔料としては、従来公知の有彩色、黒色または白色の顔料が使用され、例えば、アゾ系、ポリ縮合アゾ系、アゾメチン基を含むアゾ系、アゾメチン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系などの顔料および酸化鉄系顔料、カーボンブラック系顔料、酸化チタン系顔料などである。
【0035】
本発明においては、非架橋樹脂A’、有機過酸化物などのラジカル発生剤および添加剤などは、配合し混練機により溶融、混練し、樹脂A’の架橋と同時に添加剤が架橋樹脂A中に均一に分散される。本発明において使用される混練機としては、三本ロール、二本ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、オープン型二軸連続混練機、或いはスクリュー式の単軸押出成型機、同方向或いは異方向回転二軸押出成型機、多軸押出成型機、射出成型機或いはローター式の練機、或いは単軸、多軸の連続式混練機、或いはこれらの混練機の組み合わせが挙げられる。これらの混練機は、混練の目的、材料の種類、配合に応じてスクリュー、ニーディングディスク、ローターなどの各種セグメントを自由に組み替えることができる。また、押出機などのシリンダーの長さや形状を自由に組み替えてもよい。これらの混練機は、材料の供給量、スクリュー或いはローターの回転数、混練機械の温度により、非架橋樹脂A’と過酸化物或いはさらに添加剤との混練、および非架橋樹脂A’中への過酸化物、或いは添加剤の分散を制御することができる。
【0036】
本発明の結晶化ポリエステル樹脂組成物は、従来のポリエステル樹脂成型物が使用されていた用途と同様の用途に使用することができる。例えば、シート類、フィルム類、ネット類;容器類、トレイ類;発泡材料類;食品包装容器類;水産物・農産物用箱類、包装用箱類、輸送用箱類;電気製品・精密機器などの緩衝材;建築用・道路用の防音・断熱材など広範な用途で使用される。なお、本発明の結晶化ポリエステル樹脂組成物や結晶化促進剤の形態は、前記の条件を満たす限り、粉末でも、ペレット形状でも、成形物などのいずれの形状でもよい。
【実施例】
【0037】
次に具体的な実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、文中、「部」および「%」とあるのは特に断らない限り質量基準である。
実施例1(架橋樹脂A(結晶化促進剤)の調製)
ポリL−乳酸(樹脂A’)の粉末100gにラジカル架橋形成剤として、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(純度95%)0.4g(0.0022モル)を添加し、十分に混合した後、二軸押出し機(混練温度200℃)にて混練し、ストランド状に水中に吐出して冷却し、ペレタイザーでカッティングして架橋樹脂Aペレットを調製した。
【0038】
上記で得られたAペレットの熱分析を行なった。図1に、Aペレットの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にAペレットの融解を示す169.2℃にピークのあるシャープな吸熱を示し、降温時にAペレットの結晶化を示すピークが124.7℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様に168.1℃にAペレットの溶融を示すシャープな吸熱を示し、降温時には同様に123.8℃がピークのAペレットの結晶化を示す発熱を示した。図2は、得られたAペレットから成型したプレートのX線回折図を示す。図2に示すように、回折角2θが17.20゜に回折強度の大きい、鋭いピークを有し、プレート全体が結晶化していることを示している。
【0039】
実施例2(本発明の樹脂組成物とその成型加工)
ポリL−乳酸(非架橋樹脂B)の樹脂ペレット90部に実施例1で得られたAペレット(樹脂A)10部を混合し、射出成型機にて成型し、プレートを得た。実施例1と同様にして、上記プレートの熱分析を行なった。図3に、プレートの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にプレートの融解を示す170.3℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時にプレートの結晶化を示すピークが117.6℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様にプレートの溶融を示す166.9℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時に同様にプレートの結晶化を示す116.8℃がピークのシャープな発熱を示した。図4は、上記得プレートのX線回折図を示す。図4によれば、2θが17.16゜に回折強度の大きい、鋭いピークを有し、プレート全体が結晶していることを示している。
【0040】
実施例3(本発明の樹脂組成物とその成型加工)
ポリL−乳酸(樹脂B)のペレット100部に、実施例1で得られた架橋ポリL−乳酸(結晶化促進剤)樹脂ペレット3部を混合し、射出成型機にてプレートを得た。実施例1と同様にして、上記プレートの熱分析を行なった。図5に、上記プレートの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にプレートの融解を示す172.0℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時にプレートの結晶化を示すピークが118.1℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様にプレートの溶融を示す168.1℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時に同様にプレートの結晶化を示す117.2℃がピークのシャープな発熱を示した。図6は、上記プレートのX線回折図を示す。図6によれば、2θが17.20゜に回折強度の大きい、鋭いピークを有し、プレート全体が結晶していることを示している。
【0041】
実施例4(本発明の樹脂組成物とその成型加工)
ポリL−乳酸(樹脂B)の樹脂ペレット99部に実施例1で得られた樹脂A(結晶化促進剤)のペレット1部を混合し、射出成型機にて成型し、プレートを得た。実施例1と同様にして、上記プレートの熱分析を行なった。図7に、上記プレートの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にプレートの融解を示す172.2℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時にプレートの結晶化を示すピークが120.6℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様にプレートの溶融を示す168.1℃ピークのシャープな吸熱を示し、降温時に同様にプレートの結晶化を示す120.2℃がピークのシャープな発熱を示した。図8は、上記プレートのX線回折図を示す。図8によれば、2θが17.20゜に回折強度の大きい、鋭いピークを有し、プレート全体が結晶していることを示している。
【0042】
比較例1(樹脂Bのみの成型物)
ポリL−乳酸(樹脂B)の樹脂粉のみを二軸押出し機(混練温度200℃)にて混練し、樹脂ペレットを形成させ、該ペレットの熱分析を行なった。図9に、上記ペレットの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にペレットの融解を示す172.1℃がピークのシャープな吸熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様に108.9℃がピークのペレットの結晶化を示すシャープな吸熱を示したが、直ぐ引続いてペレットの融解を示す170.1℃がピークのシャープな吸熱を示すのみで、実施例1、2、3で示した降温時の結晶化に起因する発熱現象を示さずに冷却された。図10に、上記ペレットのX線回折図を示す。回折図にはピークはなく、ペレットがアモルファス(無定形)状態であることを示している。
【0043】
比較例2(無機結晶核剤による樹脂の結晶化)
ポリL−乳酸(樹脂B)の樹脂粉100部に、無機結晶核剤としてタルク11部および炭酸カルシウム1部を添加し、十分に混合した後、二軸押出し機(混練温度200℃)にて混練し、ストランド状に水中に吐出、冷却してペレタイザーでカッティングして結晶化核剤を含む樹脂ペレットを調製した。当該ペレットを射出成型機にて成型し、白色のプレートを得た。該プレートの白色は添加した無機結晶核剤によるものである。
【0044】
生成したプレートの熱分析を行なった。図11に、上記プレートの示差走査熱量測定チャートを示した。図11によれば、昇温時にプレートの融解を示す169.6℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時にプレートの結晶化を示すピークが110.1℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様にプレートの溶融を示す165.1℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時に同様にプレートの結晶化を示す110.4℃がピークのシャープな発熱を示した。図12は、上記で得られたプレートのX線回折図を示す。図12によれば、2θが10.08゜、17.10゜および29.22゜に鋭いピーク(相対強度の対比;75:100:73)を示した。タルクおよび炭酸カルシウムのX線回折は10.08゜と29.22゜であり、17.10゜がポリL−乳酸の結晶化による回折を示している。
【0045】
上記のポリ乳酸を使用した実施例の結晶化に由来する発熱温度を整理して表1に示す。熱分析の1回目と2回目の温度差は1℃以内で非常に良い再現性を示した。これはポリL−乳酸の結晶を生成させる要因が安定していることを示している。
【0046】
【0047】
実施例5〜7(架橋樹脂A(結晶化促進剤)の調製)
実施例1に準じて、下記の表2のポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート・アジペート(PBSA)およびポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)を非架橋樹脂Bとして使用し、ラジカル発生剤としての過酸化物としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(BIC)を使用して3種の架橋樹脂A(結晶化促進剤)を調製した。
【0048】
【0049】
実施例8〜10(樹脂A(結晶化促進剤)による非架橋樹脂Bの結晶形成と成型加工)
実施例2と同様にして、表3に記載の要領でそれぞれ非架橋樹脂Bと結晶化促進剤(樹脂A)とを混練し、本発明の樹脂組成物とし、それぞれ3種の成型品を成型した。表3に、上記成型物の示差走査熱量測定による樹脂の結晶化温度を示した。
【0050】
【産業上の利用可能性】
【0051】
近年、ポリ乳酸などのバイオマスプラスチック成型物は、耐熱性が低いという欠点を有していたが、本発明では、これら結晶性の遅いポリ乳酸などのポリエステル樹脂に、相溶性に優れ、透明性を損なわずに結晶化速度を促進させる結晶化促進剤を添加・混練し、成型加工することにより、耐熱性などの物性が向上し、樹脂物性面においても優れた成型物を提供できる。その結果、従来耐熱性が低いことから使用できなかった用途を含め、例えば、シート類、フィルム類、ネット類;容器類、トレイ類;発泡材料類;食品包装容器類;水産物・農産物用箱類、包装用箱類、輸送用箱類;電気製品・精密機器などの緩衝材;建築用・道路用の防音・断熱材など広範な用途でポリ乳酸などのポリエステル樹脂が使用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1で得られた架橋樹脂Aのペレットの示差走査熱量測定チャート
【図2】実施例1で得られた架橋樹脂AのペレットのX線回折チャート
【図3】実施例2で得られたプレートの示差走査熱量測定チャート
【図4】実施例2で得られたプレートのX線回折チャート
【図5】実施例3で得られたプレートの示差走査熱量測定チャート
【図6】実施例3で得られたプレートのX線回折チャート
【図7】実施例4で得られたプレートの示差走査熱量測定チャート
【図8】実施例4で得られたプレートのX線回折チャート
【図9】比較例1で得られたペレットの示差走査熱量測定チャート
【図10】比較例1で得られたペレットのX線回折チャート
【図11】比較例2で得られたプレートの示差走査熱量測定チャート
【図12】比較例2で得られたプレートのX線回折チャート
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂(ポリエステル鎖を有する樹脂)、特に脂肪族ポリエステル樹脂、中でも植物由来の原料を主成分とするポリエステル樹脂に、有機フリーラジカル(以下、「ラジカル」と称する場合がある。)発生剤で架橋した結晶ポリエステル樹脂を混合および混練することによって得られる、物性の改良された結晶化ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、ポリエステル樹脂用結晶化促進剤および成型物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石資源の枯渇問題や環境への影響から石油由来の高分子材料に代わって、再生可能な高分子材料として植物由来の原料を使用した高分子材料、いわゆるバイオマスプラスチックが、環境負荷低減可能な材料として注目されてきている。その代表的なものはポリ乳酸であるが、該ポリ乳酸は、それ自身結晶性高分子であるにもかかわらず、その成型物の耐熱性が50℃〜55℃と低く、該成形物が、この温度を超えて加熱されると、当該成型品が変形してしまうという欠陥を有していた。これは、溶融成型後のポリ乳酸の結晶化速度が極めて遅いためであり、成型機中で溶融されたポリ乳酸が脱型された状態では、該ポリ乳酸成型物の結晶化が殆ど進行していないためであった。その改良方法として、タルクなどの無機物質微粉を結晶核剤としてポリ乳酸に添加し、ポリ乳酸の成型・脱型後のポリ乳酸の結晶化を促進させる方法が行われている(特許文献1、2)。しかしながら、これらの結晶核剤は無機物質であるため、ポリ乳酸成型物の透明性を低下させるなどの欠陥を有していた。
【0003】
【特許文献1】特許第3410075号公報
【特許文献2】特開2004−269588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、成型後に結晶性の遅いポリ乳酸などのポリエステル樹脂に対して、相溶性に優れ、結晶核剤に起因する成型物の白濁がなく、成型物は樹脂の結晶化による光散乱のみの半透明性を保ち、成型後のポリエステル樹脂の結晶化速度を促進させるポリエステル樹脂用結晶化促進剤、該促進剤を含むポリエステル樹脂組成物、その製造方法、および成型物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記本発明の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、架橋したポリエステル樹脂を結晶化促進剤として非架橋ポリエステル樹脂と混練することで、非架橋ポリエステル樹脂を含めた樹脂組成物全体の結晶化が顕著に促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、少なくとも1種のラジカル発生剤により架橋された少なくとも1種のポリエステル樹脂A(以下単に「樹脂A」、「架橋樹脂A」または「結晶化促進剤」という場合がある)と、上記ポリエステル樹脂と同一または異なる少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂B(以下単に「樹脂B」または「非架橋樹脂B」という場合がある)とからなり、樹脂Aおよび樹脂Bの両者が均一に溶融混合および結晶化されていることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0007】
また、上記本発明は、少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂A’(以下単に「樹脂A’」または「非架橋樹脂A’」という場合がある)に少なくとも1種のラジカル発生剤を混合し、該混合物を上記ラジカル発生剤の分解温度以上の温度で混練し、上記樹脂A’を架橋させた後、冷却して上記樹脂を結晶化させた少なくとも1種の樹脂Aを、少なくとも1種の非架橋樹脂Bと混合し、加熱混練後、冷却して結晶化させることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0008】
上記本発明においては、前記樹脂Aまたは前記樹脂Bが、少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸(好ましくは炭素数1〜18)の重縮合物、少なくとも1種のラクトン(好ましくは炭素数3〜6)の開環重合物、または少なくとも1種の脂肪族ポリカルボン酸(好ましくは炭素数2〜9)または芳香族ポリカルボン酸(好ましくは炭素数6〜12)と少なくとも1種の脂肪族ポリオール(好ましくは炭素数2〜6)または脂環式ポリオール(好ましくは炭素数4〜10)との重縮合物であることが好ましい。
【0009】
また、上記本発明においては、前記樹脂Aまたは前記樹脂Bが、ポリ乳酸系樹脂および/またはポリコハク酸系樹脂であること;前記ラジカル発生剤が、パーオキシカーボネート系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシケタール系過酸化物およびハイドロパーオキサイド系過酸化物などの少なくとも1種の過酸化物であること;前記樹脂Aと前記非架橋樹脂Bとの混合割合が、A:1質量部当たりB:0.1〜100質量部であること;前記ラジカル発生剤の使用量が、前記樹脂A’100gあたり、0.0005〜0.01モルであることが好ましい。
【0010】
また、上記本発明においては、前記架橋前の樹脂A’に予め、または前記混練時の樹脂A’に、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤を配合してもよい。また、本発明は、前記ラジカル発生剤により架橋され、結晶化されている前記樹脂Aからなることを特徴とする、前記非架橋樹脂B用結晶化促進剤Aを提供する。該促進剤Aには、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤が配合されていてもよい。
【0011】
また、本発明は、前記本発明の結晶化ポリエステル樹脂組成物を成型加工してなることを特徴とするポリエステル樹脂成型物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱・溶融・成型・脱型後に結晶化が遅いポリエステル樹脂、特に植物由来のバイオマスプラスチックであるポリ乳酸などのポリエステル樹脂に対して、相溶性に優れ、成型後の成型物の透明性を損なわずに、上記ポリエステル樹脂の脱型後の成型物の結晶化速度を促進させることのできる結晶化促進剤を提供することができる。該結晶化促進剤を非架橋ポリエステル樹脂に添加して溶融混練し、成型することにより、成型物の結晶化が促進され、耐熱性などの樹脂物性に優れた成型物を提供することができる。
【0013】
本発明の結晶化促進剤(架橋樹脂A)を、非架橋樹脂Bと混練することで、樹脂組成物全体の結晶化が促進される機構は、熱分析やX線回折の結果などから以下のように想定される。
【0014】
先ず、非架橋樹脂A’が押出成型機中において溶融混練されながら架橋された架橋樹脂Aの分子配列は、樹脂分子間に架橋構造が形成されていることによって、樹脂A全体としては溶融時に流動性を有しているにもかかわらず、架橋樹脂Aの分子は、その動きの自由度がある程度拘束される。そのため、例えば、架橋樹脂Aの1例である架橋ポリL−乳酸の場合は、架橋された樹脂分子の立体配列が、脱型後の冷却後にも比較的そのまま維持されるものと考えられる。
【0015】
上記架橋樹脂Aが、押出成型機中で非架橋樹脂Bとともに溶融混練されることによって、上記架橋樹脂Aが上記非架橋樹脂B中に均一に拡散され、成型後、脱型されて冷却(水冷や空冷)されるが、上記成型物の冷却の際に、架橋樹脂Aが結晶化し、その架橋分子配列が、混合されている非架橋樹脂Bの鋳型(テンプレート)となって、非架橋樹脂Bの結晶化が順次に進行するものと考えられる。
【0016】
上記樹脂Aと樹脂Bとの混合物の結晶化のメカニズムは、従来の固体状の微粉である結晶核剤の作用(溶融した樹脂が冷却されて準安定の結晶化状態になり、該樹脂中に存在させた結晶核剤などが種(たね)となって結晶を形成させるという結晶化メカニズム)とは、全く異なる結晶化のメカニズムであると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に使用される架橋前の樹脂A’としては、その構造中に多数のエステル結合を有し、さらに熱可塑性を有する従来公知のポリエステル樹脂、特に過酸化物によるラジカル架橋が起こり易い脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。特に原料資源として植物由来のヒドロキシカルボン酸、ラクトン、脂肪族または芳香族ポリカルボン酸、脂肪族または脂環族ポリオールなどの原料を主成分として縮重合または開環重合反応して得られるポリエステル樹脂が好ましい。
【0018】
上記好ましいポリエステル樹脂としては、例えば、ヒドロキシカルボン酸の自己縮重合物、ラクトンの開環重合物、アルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸(または芳香族ジカルボン酸を含む脂肪族ジカルボン酸)との縮重合物、アルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸ポリエステル−カーボネートとの縮重合物などが挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸の自己縮重合物としては、炭素数1〜18のヒドロキシカルボン酸の自己縮重合物、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合物など;上記ラクトンの開環重合物としては炭素数3〜6の脂肪族ラクトンの開環重合物、例えば、ポリブチロラクトン、ポリカプロラクトンなど;上記縮重合物としては、炭素数2〜6の脂肪族ジオールと炭素数2〜9の脂肪族ジカルボン酸との縮重合物、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−アジペート)などが挙げられる。
【0019】
また、上記の脂肪族ポリエステルを、架橋構造を誘起するポリマーセグメントとして有する脂肪族環あるいは芳香族環を含有するポリエステル類としては、上記の脂肪族ポリエステル中に、炭素数4〜10の脂環式ジカルボン酸単位や、炭素数6〜10の芳香族ジカルボン酸単位を組み込んだ共重合物が挙げられ、また、上記脂肪族ポリエステル中に炭素数4〜10の脂環式ジオール単位や炭素数6〜12の芳香族ジオール単位を組み込んだ共重合物が挙げられる。例えば、ポリ(ブチレンサクシネート−テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート−テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート−テレフタレート)、ポリ(ブチレン−1,4−シクロヘキシレンジメチル−アジペート)など;炭素数2〜4のアルキレングリコールと炭素数2〜9のポリエステル−カーボネートとの縮重合物、例えば、ポリブチレンサクシネート−カーボネートなどが挙げられ、以上のポリエステル樹脂は、単独でも混合物としても用いられる。
【0020】
上記のポリエステル樹脂中では、特に好ましくは乳酸、乳酸オリゴマー、ラクチドを主成分として重合したポリ乳酸や乳酸共重合物などのポリ乳酸系樹脂、あるいはポリコハク酸系樹脂などが使用される。
【0021】
また、本発明において非架橋樹脂A’に架橋構造を形成させるために使用されるラジカル発生剤としては、熱分解してフリーラジカルを形成させ、非架橋樹脂A’をラジカル架橋させる公知のラジカル発生剤が使用される。非架橋樹脂A’における架橋構造の形成は、非架橋樹脂A’の溶液あるいは樹脂分散液の状態でも行われるが、最も好ましい方法は非架橋樹脂A’を溶融状態で架橋を形成させる方法である。この方法で、非架橋樹脂A’を押出し機で混練し、架橋させる場合には、混練温度において分解するラジカル発生剤を使用することが好ましい。ラジカル発生剤の選定は、押出し機内での非架橋樹脂A’の混練温度の設定にもより、一概に規定はできないが、例えば、非架橋樹脂A’の混練温度がほぼ190℃ないし210℃である場合には、目安として1分間の半減期を得る分解温度が130℃〜210℃位にあるラジカル発生剤が好ましい。
【0022】
使用するラジカル発生剤としては、樹脂A’の樹脂分子から水素引抜反応あるいはラジカル付加反応などを起こし易い有機過酸化物系のラジカル発生剤が好ましい。具体的には、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシカーボネート系、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステル系、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド系、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール系、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド系の過酸化物などから選ばれた1種または2種以上の有機過酸化物が使用される。
【0023】
樹脂A’に対する有機過酸化物の使用量は、結晶化促進剤として使用される架橋樹脂Aの分子の配列を架橋により拘束し、その架橋状態を維持させるに足る架橋点を樹脂A’中に形成し、かつ架橋樹脂Aが、溶融混練して非架橋樹脂B中に均一に拡散されることができる量である。本発明において、結晶化促進剤として使用する架橋樹脂Aには、樹脂分子の分子量分布があるので、架橋樹脂Aは、その分子量によって溶融し始める温度がわずかに異なるはずであり、また、架橋樹脂Aが溶融時流動性を保つためには、樹脂A中には、架橋したポリエステル樹脂分子と未架橋のポリエステル樹脂分子が共存している状態が望ましい。従って上記有機過酸化物の添加量は、架橋されるべき樹脂A’の分子量や分子量分布によっても変わり、一概に決められるものではないが、有機過酸化物の使用量は、樹脂A’100gあたり凡そ0.0005モル以上、好ましくは凡そ0.001モル以上である。有機過酸化物の添加量の上限は、樹脂A’の過剰の架橋形成による樹脂Aの樹脂B中における拡散を阻害しない範囲であり、樹脂A’100gあたり凡そ0.01モル以下が好ましい。
【0024】
この場合、過酸化物の分解によるフリーラジカルにより樹脂A’の架橋を効果的に行なうために、従来公知のラジカル付加重合性の単量体やオリゴマーなどの架橋成分を樹脂A’の原料中に添加してもよい。上記架橋成分としては、例えば、炭素数2〜6のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体や炭素数1〜7のジアルキルイタコネートなどの単官能性単量体などが挙げられる。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記ラジカル発生剤により架橋された少なくとも1種の樹脂A(結晶化促進剤)と上記樹脂Aと同一または異なる少なくとも1種の非架橋樹脂Bとからなり、これら両者が均一に溶融混合および結晶化されてなることを特徴としている。上記の非架橋樹脂Bは、樹脂A’として前記した少なくとも1種のポリエステル樹脂であり、単独でも混合物としても使用でき、また、非架橋樹脂Bは、架橋前の前記樹脂A’と同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0026】
上記本発明の結晶化ポリエステル樹脂組成物は、上記樹脂Aを非架橋樹脂Bと混合し、混練装置中で加熱混練後、冷却して樹脂Aと樹脂Bとの混合物を結晶化させることによって得られる。架橋樹脂Aの非架橋樹脂Bに対する結晶形成効果は、前記したように非架橋樹脂B中における架橋樹脂Aの鋳型による効果によると想定されるが、本発明の架橋樹脂Aによる非架橋樹脂ポリエステルBの結晶化効果は非常に優れている。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂組成物における配合比率は、架橋樹脂Aの1質量に対して非架橋樹脂Bは0.1質量〜100質量であり、好ましくは10質量〜50質量である。非架橋樹脂Bの使用量が0.1質量部未満であると、得られるポリエステル樹脂組成物の加熱溶融性および成型性が低下し好ましくない。また、非架橋樹脂Bの使用量が100質量部を超えると、得られるポリエステル樹脂組成物の加熱溶融性および成型性は良好であるものの、成型・脱型後のポリエステル樹脂成型品の結晶化が遅くなり、耐熱性が改良された成型物が得られ難い。
【0028】
なお、上記本発明のポリエステル樹脂組成物の製造においては、架橋樹脂Aを非架橋樹脂Bと直接混練する場合と、先ず、架橋樹脂Aと非架橋樹脂Bとを、低倍率、例えば、質量比1:0.1〜10で混練して架橋樹脂Aを非架橋樹脂B中に予め高濃度で拡散してから、該高濃度配合物(架橋樹脂マスターバッチ)を大量の非架橋樹脂Bで希釈した後、所望の形状に成型することも好ましい。
【0029】
例えば、後述の実施例1で述べる架橋樹脂Aの製造では、過酸化物の使用量は非架橋樹脂A’100gあたり0.0022モルであり、実施例2では架橋樹脂Aと非架橋樹脂Bとの配合割合が、A:B=が10:90で、およそ10倍希釈であることから、実施例2で得られるポリエステル樹脂組成物全体に対する過酸化物の使用量は、ポリエステル樹脂組成物100gあたり凡そ0.0002モルとなる。また、実施例3ではポリエステル樹脂組成物の配合比であるA:B=3:100で、凡そ34倍希釈であり、また、実施例4ではポリエステル樹脂組成物の配合比であるA:B=1:99で100倍希釈であることから、過酸化物の使用量としては、ポリエステル樹脂組成物全体100gあたり、それぞれ凡そ0.00006モルおよび0.000022モルとなる。
【0030】
上記の実施例において、架橋樹脂Aを使用せずに、本発明のポリエステル樹脂組成物に相当する量の非架橋樹脂Bに、上記の割合の有機酸化物を作用させても、樹脂Bの結晶化を促進させるための過酸化物の使用量の下限を大きく下回ってしまい、樹脂Bの結晶化を促進させる効果を示さない。従って、本発明においては、上記したような樹脂A’に対する過酸化物の使用量で、ポリエステル樹脂組成物の全体に対して結晶化が著しく改善されることは驚くべきことであり、本発明の架橋樹脂Aを結晶化促進剤として使用することの優れた効果である。
【0031】
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物においては、架橋樹脂Aが実際に実施例2では組成物全体の約10質量%、実施例3では組成物全体の約3質量%、実施例4では組成物全体の1質量%しか占めていないため、本発明のポリエステル樹脂組成物の溶融時の流動特性は、非架橋樹脂Bの溶融時の流動特性と大きく変わらず、ポリエステル樹脂組成物の成型加工、さらには上記ポリエステル樹脂組成物の使用後の回収、再使用および再生加工などの2次的加工が容易にできるという優れた特長を有する。
【0032】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成型物には、その目的に応じて添加剤の1種あるいは2種以上を配合することも好ましい。添加剤としては、例えば、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤などが挙げられる。
【0033】
上記添加剤は、架橋樹脂Aに添加する方法と、本発明のポリエステル樹脂組成物に添加する方法とがある。前者の方法としては、(a)非架橋樹脂A’にラジカル発生剤を混練する前に、上記添加剤などを予め混合、混練しておき、次いでラジカル発生剤を添加し、混練する方法、あるいは(b)上記添加剤などをラジカル発生剤とともに非架橋樹脂A’配合し、混合、混練する方法がある。このようにして得られる添加剤を含有する樹脂Aを非架橋樹脂Bと混合し、加熱混練し、冷却して結晶化させる。また、後者の方法では、架橋樹脂A、非架橋樹脂Bおよび上記添加剤などを混合し、成型機で混練、加工し、添加剤を含有する成型物を得ることができる。
【0034】
使用される着色剤としては、染料、有機顔料、カーボンブラック顔料、無機顔料、白色の有機顔料および無機顔料から選ばれた色素である。顔料としては、従来公知の有彩色、黒色または白色の顔料が使用され、例えば、アゾ系、ポリ縮合アゾ系、アゾメチン基を含むアゾ系、アゾメチン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系などの顔料および酸化鉄系顔料、カーボンブラック系顔料、酸化チタン系顔料などである。
【0035】
本発明においては、非架橋樹脂A’、有機過酸化物などのラジカル発生剤および添加剤などは、配合し混練機により溶融、混練し、樹脂A’の架橋と同時に添加剤が架橋樹脂A中に均一に分散される。本発明において使用される混練機としては、三本ロール、二本ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、オープン型二軸連続混練機、或いはスクリュー式の単軸押出成型機、同方向或いは異方向回転二軸押出成型機、多軸押出成型機、射出成型機或いはローター式の練機、或いは単軸、多軸の連続式混練機、或いはこれらの混練機の組み合わせが挙げられる。これらの混練機は、混練の目的、材料の種類、配合に応じてスクリュー、ニーディングディスク、ローターなどの各種セグメントを自由に組み替えることができる。また、押出機などのシリンダーの長さや形状を自由に組み替えてもよい。これらの混練機は、材料の供給量、スクリュー或いはローターの回転数、混練機械の温度により、非架橋樹脂A’と過酸化物或いはさらに添加剤との混練、および非架橋樹脂A’中への過酸化物、或いは添加剤の分散を制御することができる。
【0036】
本発明の結晶化ポリエステル樹脂組成物は、従来のポリエステル樹脂成型物が使用されていた用途と同様の用途に使用することができる。例えば、シート類、フィルム類、ネット類;容器類、トレイ類;発泡材料類;食品包装容器類;水産物・農産物用箱類、包装用箱類、輸送用箱類;電気製品・精密機器などの緩衝材;建築用・道路用の防音・断熱材など広範な用途で使用される。なお、本発明の結晶化ポリエステル樹脂組成物や結晶化促進剤の形態は、前記の条件を満たす限り、粉末でも、ペレット形状でも、成形物などのいずれの形状でもよい。
【実施例】
【0037】
次に具体的な実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、文中、「部」および「%」とあるのは特に断らない限り質量基準である。
実施例1(架橋樹脂A(結晶化促進剤)の調製)
ポリL−乳酸(樹脂A’)の粉末100gにラジカル架橋形成剤として、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(純度95%)0.4g(0.0022モル)を添加し、十分に混合した後、二軸押出し機(混練温度200℃)にて混練し、ストランド状に水中に吐出して冷却し、ペレタイザーでカッティングして架橋樹脂Aペレットを調製した。
【0038】
上記で得られたAペレットの熱分析を行なった。図1に、Aペレットの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にAペレットの融解を示す169.2℃にピークのあるシャープな吸熱を示し、降温時にAペレットの結晶化を示すピークが124.7℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様に168.1℃にAペレットの溶融を示すシャープな吸熱を示し、降温時には同様に123.8℃がピークのAペレットの結晶化を示す発熱を示した。図2は、得られたAペレットから成型したプレートのX線回折図を示す。図2に示すように、回折角2θが17.20゜に回折強度の大きい、鋭いピークを有し、プレート全体が結晶化していることを示している。
【0039】
実施例2(本発明の樹脂組成物とその成型加工)
ポリL−乳酸(非架橋樹脂B)の樹脂ペレット90部に実施例1で得られたAペレット(樹脂A)10部を混合し、射出成型機にて成型し、プレートを得た。実施例1と同様にして、上記プレートの熱分析を行なった。図3に、プレートの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にプレートの融解を示す170.3℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時にプレートの結晶化を示すピークが117.6℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様にプレートの溶融を示す166.9℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時に同様にプレートの結晶化を示す116.8℃がピークのシャープな発熱を示した。図4は、上記得プレートのX線回折図を示す。図4によれば、2θが17.16゜に回折強度の大きい、鋭いピークを有し、プレート全体が結晶していることを示している。
【0040】
実施例3(本発明の樹脂組成物とその成型加工)
ポリL−乳酸(樹脂B)のペレット100部に、実施例1で得られた架橋ポリL−乳酸(結晶化促進剤)樹脂ペレット3部を混合し、射出成型機にてプレートを得た。実施例1と同様にして、上記プレートの熱分析を行なった。図5に、上記プレートの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にプレートの融解を示す172.0℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時にプレートの結晶化を示すピークが118.1℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様にプレートの溶融を示す168.1℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時に同様にプレートの結晶化を示す117.2℃がピークのシャープな発熱を示した。図6は、上記プレートのX線回折図を示す。図6によれば、2θが17.20゜に回折強度の大きい、鋭いピークを有し、プレート全体が結晶していることを示している。
【0041】
実施例4(本発明の樹脂組成物とその成型加工)
ポリL−乳酸(樹脂B)の樹脂ペレット99部に実施例1で得られた樹脂A(結晶化促進剤)のペレット1部を混合し、射出成型機にて成型し、プレートを得た。実施例1と同様にして、上記プレートの熱分析を行なった。図7に、上記プレートの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にプレートの融解を示す172.2℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時にプレートの結晶化を示すピークが120.6℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様にプレートの溶融を示す168.1℃ピークのシャープな吸熱を示し、降温時に同様にプレートの結晶化を示す120.2℃がピークのシャープな発熱を示した。図8は、上記プレートのX線回折図を示す。図8によれば、2θが17.20゜に回折強度の大きい、鋭いピークを有し、プレート全体が結晶していることを示している。
【0042】
比較例1(樹脂Bのみの成型物)
ポリL−乳酸(樹脂B)の樹脂粉のみを二軸押出し機(混練温度200℃)にて混練し、樹脂ペレットを形成させ、該ペレットの熱分析を行なった。図9に、上記ペレットの示差走査熱量測定チャートを示した。昇温時にペレットの融解を示す172.1℃がピークのシャープな吸熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様に108.9℃がピークのペレットの結晶化を示すシャープな吸熱を示したが、直ぐ引続いてペレットの融解を示す170.1℃がピークのシャープな吸熱を示すのみで、実施例1、2、3で示した降温時の結晶化に起因する発熱現象を示さずに冷却された。図10に、上記ペレットのX線回折図を示す。回折図にはピークはなく、ペレットがアモルファス(無定形)状態であることを示している。
【0043】
比較例2(無機結晶核剤による樹脂の結晶化)
ポリL−乳酸(樹脂B)の樹脂粉100部に、無機結晶核剤としてタルク11部および炭酸カルシウム1部を添加し、十分に混合した後、二軸押出し機(混練温度200℃)にて混練し、ストランド状に水中に吐出、冷却してペレタイザーでカッティングして結晶化核剤を含む樹脂ペレットを調製した。当該ペレットを射出成型機にて成型し、白色のプレートを得た。該プレートの白色は添加した無機結晶核剤によるものである。
【0044】
生成したプレートの熱分析を行なった。図11に、上記プレートの示差走査熱量測定チャートを示した。図11によれば、昇温時にプレートの融解を示す169.6℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時にプレートの結晶化を示すピークが110.1℃のシャープな発熱を示した。引続いて再度昇降温を行なったが、昇温時には同様にプレートの溶融を示す165.1℃がピークのシャープな吸熱を示し、降温時に同様にプレートの結晶化を示す110.4℃がピークのシャープな発熱を示した。図12は、上記で得られたプレートのX線回折図を示す。図12によれば、2θが10.08゜、17.10゜および29.22゜に鋭いピーク(相対強度の対比;75:100:73)を示した。タルクおよび炭酸カルシウムのX線回折は10.08゜と29.22゜であり、17.10゜がポリL−乳酸の結晶化による回折を示している。
【0045】
上記のポリ乳酸を使用した実施例の結晶化に由来する発熱温度を整理して表1に示す。熱分析の1回目と2回目の温度差は1℃以内で非常に良い再現性を示した。これはポリL−乳酸の結晶を生成させる要因が安定していることを示している。
【0046】
【0047】
実施例5〜7(架橋樹脂A(結晶化促進剤)の調製)
実施例1に準じて、下記の表2のポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート・アジペート(PBSA)およびポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)を非架橋樹脂Bとして使用し、ラジカル発生剤としての過酸化物としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(BIC)を使用して3種の架橋樹脂A(結晶化促進剤)を調製した。
【0048】
【0049】
実施例8〜10(樹脂A(結晶化促進剤)による非架橋樹脂Bの結晶形成と成型加工)
実施例2と同様にして、表3に記載の要領でそれぞれ非架橋樹脂Bと結晶化促進剤(樹脂A)とを混練し、本発明の樹脂組成物とし、それぞれ3種の成型品を成型した。表3に、上記成型物の示差走査熱量測定による樹脂の結晶化温度を示した。
【0050】
【産業上の利用可能性】
【0051】
近年、ポリ乳酸などのバイオマスプラスチック成型物は、耐熱性が低いという欠点を有していたが、本発明では、これら結晶性の遅いポリ乳酸などのポリエステル樹脂に、相溶性に優れ、透明性を損なわずに結晶化速度を促進させる結晶化促進剤を添加・混練し、成型加工することにより、耐熱性などの物性が向上し、樹脂物性面においても優れた成型物を提供できる。その結果、従来耐熱性が低いことから使用できなかった用途を含め、例えば、シート類、フィルム類、ネット類;容器類、トレイ類;発泡材料類;食品包装容器類;水産物・農産物用箱類、包装用箱類、輸送用箱類;電気製品・精密機器などの緩衝材;建築用・道路用の防音・断熱材など広範な用途でポリ乳酸などのポリエステル樹脂が使用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1で得られた架橋樹脂Aのペレットの示差走査熱量測定チャート
【図2】実施例1で得られた架橋樹脂AのペレットのX線回折チャート
【図3】実施例2で得られたプレートの示差走査熱量測定チャート
【図4】実施例2で得られたプレートのX線回折チャート
【図5】実施例3で得られたプレートの示差走査熱量測定チャート
【図6】実施例3で得られたプレートのX線回折チャート
【図7】実施例4で得られたプレートの示差走査熱量測定チャート
【図8】実施例4で得られたプレートのX線回折チャート
【図9】比較例1で得られたペレットの示差走査熱量測定チャート
【図10】比較例1で得られたペレットのX線回折チャート
【図11】比較例2で得られたプレートの示差走査熱量測定チャート
【図12】比較例2で得られたプレートのX線回折チャート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のラジカル発生剤により架橋された少なくとも1種のポリエステル樹脂Aと、上記ポリエステル樹脂と同一または異なる少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂Bとからなり、上記樹脂Aおよび上記樹脂Bの両者が均一に溶融混合および結晶化されていることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂Bが、少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸の重縮合物、少なくとも1種のラクトンの開環重合物、または少なくとも1種の脂肪族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸と、少なくとも1種の脂肪族ポリオールまたは脂環式ポリオールとの重縮合物である請求項1に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシ脂肪族カルボン酸の炭素数1〜18であり、前記脂肪族ラクトンの炭素数3〜6であり、前記脂肪族ポリカルボン酸の炭素数が2〜9であり、前記芳香族ポリカルボン酸の炭素数が6〜12であり、前記脂肪族ポリオールの炭素数が2〜6であり、前記脂環式ポリオールの炭素数が4〜10である請求項2に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂Bが、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂および/またはポリコハク酸系ポリエステル樹脂である請求項1に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記ラジカル発生剤が、少なくとも1種の過酸化物である請求項1に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記過酸化物が、パーオキシカーボネート系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシケタール系過酸化物およびハイドロパーオキサイド系過酸化物の少なくとも1種である請求項5に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記架橋ポリエステル樹脂Aと前記非架橋ポリエステル樹脂Bとの混合割合が、A:1質量部当たりB:0.1〜100質量部である請求項1に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂A’に少なくとも1種のラジカル発生剤を混合し、該混合物を上記ラジカル発生剤の分解温度以上の温度で混練し、上記ポリエステル樹脂A’を架橋させた後、冷却して、上記ポリエステル樹脂を結晶化させた少なくとも1種の架橋ポリエステル樹脂Aを、少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂Bと混合し、加熱混練後、冷却して結晶化させることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂Bが、少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸の重縮合物、少なくとも1種のラクトンの開環重合物、または少なくとも1種の脂肪族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸と少なくとも1種の脂肪族ポリオールまたは脂環式ポリオールとの重縮合物である請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ヒドロキシ脂肪族カルボン酸の炭素数1〜18であり、前記脂肪族ラクトンの炭素数3〜6であり、前記脂肪族ポリカルボン酸の炭素数が2〜9であり、前記芳香族ジカルボン酸の炭素数が6〜12であり、前記脂肪族ポリオールの炭素数が2〜6であり、前記脂環式ポリオールの炭素数が4〜10である請求項9に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂Bが、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂および/またはポリコハク酸系ポリエステル樹脂である請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記ラジカル発生剤が、少なくとも1種の過酸化物である請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記過酸化物が、パーオキシカーボネート系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシケタール系過酸化物およびハイドロパーオキサイド系過酸化物の少なくとも1種である請求項12に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記架橋ポリエステル樹脂Aと前記非架橋ポリエステル樹脂Bとの混合割合が、A:1質量部当たりB:0.1〜100質量部である請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
前記ラジカル発生剤の使用量が、前記ポリエステル樹脂A’100gあたり、0.0005〜0.01モルである請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
前記ポリエステル樹脂A’に、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤が予め配合されている請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
前記ポリエステル樹脂A’の混練時に、前記ラジカル発生剤とともに、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤を配合する請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
前記ラジカル発生剤により架橋され、結晶化されている前記ポリエステル樹脂Aからなることを特徴とする、前記非架橋ポリエステル樹脂B用結晶化促進剤A。
【請求項19】
着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤が配合されている請求項18に記載の非架橋ポリエステル樹脂B用結晶化促進剤A。
【請求項20】
請求項1に記載の前記結晶化ポリエステル樹脂組成物を成型加工してなることを特徴とするポリエステル樹脂成型物。
【請求項1】
少なくとも1種のラジカル発生剤により架橋された少なくとも1種のポリエステル樹脂Aと、上記ポリエステル樹脂と同一または異なる少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂Bとからなり、上記樹脂Aおよび上記樹脂Bの両者が均一に溶融混合および結晶化されていることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂Bが、少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸の重縮合物、少なくとも1種のラクトンの開環重合物、または少なくとも1種の脂肪族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸と、少なくとも1種の脂肪族ポリオールまたは脂環式ポリオールとの重縮合物である請求項1に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシ脂肪族カルボン酸の炭素数1〜18であり、前記脂肪族ラクトンの炭素数3〜6であり、前記脂肪族ポリカルボン酸の炭素数が2〜9であり、前記芳香族ポリカルボン酸の炭素数が6〜12であり、前記脂肪族ポリオールの炭素数が2〜6であり、前記脂環式ポリオールの炭素数が4〜10である請求項2に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂Bが、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂および/またはポリコハク酸系ポリエステル樹脂である請求項1に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記ラジカル発生剤が、少なくとも1種の過酸化物である請求項1に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記過酸化物が、パーオキシカーボネート系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシケタール系過酸化物およびハイドロパーオキサイド系過酸化物の少なくとも1種である請求項5に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記架橋ポリエステル樹脂Aと前記非架橋ポリエステル樹脂Bとの混合割合が、A:1質量部当たりB:0.1〜100質量部である請求項1に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂A’に少なくとも1種のラジカル発生剤を混合し、該混合物を上記ラジカル発生剤の分解温度以上の温度で混練し、上記ポリエステル樹脂A’を架橋させた後、冷却して、上記ポリエステル樹脂を結晶化させた少なくとも1種の架橋ポリエステル樹脂Aを、少なくとも1種の非架橋ポリエステル樹脂Bと混合し、加熱混練後、冷却して結晶化させることを特徴とする結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂Bが、少なくとも1種のヒドロキシカルボン酸の重縮合物、少なくとも1種のラクトンの開環重合物、または少なくとも1種の脂肪族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸と少なくとも1種の脂肪族ポリオールまたは脂環式ポリオールとの重縮合物である請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ヒドロキシ脂肪族カルボン酸の炭素数1〜18であり、前記脂肪族ラクトンの炭素数3〜6であり、前記脂肪族ポリカルボン酸の炭素数が2〜9であり、前記芳香族ジカルボン酸の炭素数が6〜12であり、前記脂肪族ポリオールの炭素数が2〜6であり、前記脂環式ポリオールの炭素数が4〜10である請求項9に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂Bが、ポリ乳酸系ポリエステル樹脂および/またはポリコハク酸系ポリエステル樹脂である請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記ラジカル発生剤が、少なくとも1種の過酸化物である請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記過酸化物が、パーオキシカーボネート系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシケタール系過酸化物およびハイドロパーオキサイド系過酸化物の少なくとも1種である請求項12に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記架橋ポリエステル樹脂Aと前記非架橋ポリエステル樹脂Bとの混合割合が、A:1質量部当たりB:0.1〜100質量部である請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
前記ラジカル発生剤の使用量が、前記ポリエステル樹脂A’100gあたり、0.0005〜0.01モルである請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
前記ポリエステル樹脂A’に、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤が予め配合されている請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
前記ポリエステル樹脂A’の混練時に、前記ラジカル発生剤とともに、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤を配合する請求項8に記載の結晶化ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
前記ラジカル発生剤により架橋され、結晶化されている前記ポリエステル樹脂Aからなることを特徴とする、前記非架橋ポリエステル樹脂B用結晶化促進剤A。
【請求項19】
着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤および充填剤の少なくとも1種の添加剤が配合されている請求項18に記載の非架橋ポリエステル樹脂B用結晶化促進剤A。
【請求項20】
請求項1に記載の前記結晶化ポリエステル樹脂組成物を成型加工してなることを特徴とするポリエステル樹脂成型物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−138192(P2008−138192A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290505(P2007−290505)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]