説明

ポリエステル樹脂組成物からなる固相重合ペレットの製造方法

【課題】透明性に優れた高重合度のポリエステル樹脂組成物からなる固相重合ペレットを短い固相重合時間で生産性良く得ること。
【解決手段】ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練してから切断して中間ペレットを得た後に、該中間ペレットを固相重合する、ポリエステル樹脂組成物からなる固相重合ペレットの製造方法であって;ポリエステル(A)が、ポリエチレンテレフタレートからなり、ポリエステル(B)が、シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレートからなり、前記中間ペレットを270℃で射出成形したときの1mm厚のプレートのヘイズが3%以下であることを特徴とする固相重合ペレットの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物からなる固相重合ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂は、透明性、力学的特性、ガスバリヤー性、フレーバーバリヤー性などの諸特性に優れている。さらに、ポリエステル樹脂は、成形品にした際にも残留モノマーや有害添加剤の心配が少なく、衛生性および安全性にも優れている。そのため、ポリエステル樹脂は、それらの特性を活かして、容器等の製造に従来広く用いられてきた塩化ビニル樹脂に代わるものとして、ジュース、清涼飲料、調味料、油、化粧品、洗剤、その他の製品を充填するための中空容器として近年広く使用されるようになっている。
【0003】
ポリエステル樹脂からなる中空成形品を製造するための成形法として、溶融可塑化した樹脂をダイオリフィスを通して円筒状のパリソンとして押出し、そのパリソンが軟化状態にある間に金型で挟んで内部に空気などの流体を吹き込んで成形を行う押出ブロー成形法が知られている。この方法は、射出ブロー成形法に比べて、工程が簡単で、しかも金型の作製および成形に高度な技術を必要としないために、設備費や金型の製作費などが安くてすみ、多品種・少量生産に適している。しかも、細物、深物、大物、取っ手などを有する複雑な形状の成形品の製造も可能であるという利点がある。
【0004】
しかしながら、汎用のポリエステル樹脂は一般に溶融粘度が低く、そのために押出ブロー成形を行おうとすると、押出後のパリソンが著しくドローダウンして賦形することが難しい。しかも、通常、結晶化している状態のポリエステル樹脂が使用されるため、未溶融ブツによる斑点(フィッシュアイ)が生じ易く、成形品の外観が損なわれ易い。さらに、押出後のブロー時に結晶化が起こり易く、透明性が損なわれたり、賦形不良が生ずる。また、溶融状態で賦形がなされるため、分子の配向・結晶化が難しく、成形品の機械的強度が低いという問題もある。そのため、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用のポリエステル樹脂を用いて、押出ブロー成形によって形状および寸法が均一で、しかも透明性、外観、機械的強度などに優れる成形品を得ることは、事実上極めて困難である。
【0005】
そのため、押出ブロー成形や熱成形などに適するポリエステル樹脂に関する提案が従来から色々なされている。そのような従来技術のひとつとして、主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、主たるジオール成分がエチレングリコールであり、共重合成分としてシクロヘキサンジメタノールを10モル%以下の割合で共重合した共重合ポリエステルをさらに固相重合したもの(特許文献1および特許文献2参照)が知られている。
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載された発明では、エチレンテレフタレート単位から主としてなるポリエステル中に、融点が下がり過ぎず、かつ固相重合が可能な範囲でシクロヘキサンジメタノールを少量共重合させ、それによって得られた共重合ポリエステルを固相重合して重合度を高めることで、押出ブロー成形時の溶融粘度を上げて賦形性を高めている。しかしながら、特許文献1に記載されている方法によって共重合ポリエステルを製造する場合には、膠着防止の観点から固相重合温度を高くすることが困難である。そのため、固相重合速度が遅くなってしまい、押出ブロー成形に適する高分子量のペレットを生産性良く製造することが容易ではない。また、ここで得られる共重合ポリエステルは、樹脂自体の耐衝撃性が低く、一般に分子の配向・結晶化の程度の小さい押出ブロー成形品では、成形品の機械的強度が不十分になるという問題も有していた。
【0007】
これに対し、特許文献3には、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなるポリエステル(A)と、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位並びにエチレングリコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位を主体とするジオール単位から主としてなるポリエステル(B)を溶融混合した後、固相重合することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法が記載されている。
【0008】
特許文献3記載の方法によれば、高分子量のポリエステル樹脂組成物を、短縮された固相重合時間で、生産性良く経済的に製造することができる。こうして得られたポリエステル樹脂組成物は、高い溶融粘度を有することにより、押出成形性に優れるとともに、成形時の結晶化が抑制されるとされている。そして、特許文献3記載のポリエステル樹脂組成物を用いることで、耐衝撃性や透明性に優れた成形品、特に、押出ブロー成形品を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−207003号公報
【特許文献2】特開平8−188643号公報
【特許文献3】特開平11−100438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、近年では、極めて高度な意匠性が要求される用途があり、そのような用途においては、特許文献3記載の方法によって製造されたポリエステル樹脂組成物であっても、得られる成形品の透明性が未だ不十分とされる場合があった。本発明はこのような課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、透明性に極めて優れている成形品を得ることができる固相重合ペレットの製造方法を提供することを目的とするものである。また、短い固相重合時間で高重合度のポリエステル樹脂組成物を得ることができる、生産性の良好な固相重合ペレットの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練してから切断して中間ペレットを得た後に、該中間ペレットを固相重合する、ポリエステル樹脂組成物からなる固相重合ペレットの製造方法であって;
ポリエステル(A)が、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位、及びエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなり、
ポリエステル(B)が、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位、並びにエチレングリコール単位及び/またはシクロヘキサンジメタノール単位を主体とし、それらのモル比(エチレングリコール/シクロヘキサンジメタノール)が0/100〜80/20であるジオール単位から主としてなり、
ポリエステル(A)とポリエステル(B)の合計100質量部に対するポリエステル(B)の配合量が2〜50質量部であり、かつ
前記中間ペレットを270℃で射出成形したときの1mm厚のプレートのヘイズが3%以下であることを特徴とする固相重合ペレットの製造方法である。
【0012】
このとき、ポリエステル(A)、ポリエステル(B)及び酸化防止剤を溶融混練してから切断して中間ペレットを得ることが好ましい。ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する温度が290〜350℃であることも好ましい。ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に混練装置内を減圧することも好ましい。また、前記中間ペレット中のジオール単位の1〜35モル%がシクロヘキサンジメタノール単位であることも好ましい。
【0013】
本発明の製造方法において、前記中間ペレットを得た後に、それを空気循環式加熱装置内において100〜160℃で加熱して結晶化させてから固相重合することが好ましい。また、減圧下、170〜250℃で、前記中間ペレットを固相重合することも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、短い固相重合時間で高重合度のポリエステル樹脂組成物からなる固相重合ペレットを生産性良く得ることができる。こうして得られた固相重合ペレットを用いて成形される成形品は外観が美麗であり、透明性に極めて優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練してから切断して中間ペレットを得た後に、該中間ペレットを固相重合する、ポリエステル樹脂組成物からなる固相重合ペレットの製造方法に関する。
【0016】
本発明で用いられるポリエステル(A)は、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位、及びエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなるポリエステルである。ポリエステル(A)としては、一般に、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位の合計含有量が、ポリエステル(A)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、80モル%以上であるものを用いることが好ましく、90モル%以上であるものを用いることがより好ましく、95モル%以上であるものを用いることがさらに好ましい。ポリエステル(A)におけるテレフタル酸単位とエチレングリコール単位の合計含有量が80モル%未満であると、結晶性が低下して、ポリエステル(B)との溶融混練物を固相重合する際に樹脂の軟化による膠着が生じ易くなり、高重合度化が困難になり易い。そして、ポリエステル(A)におけるテレフタル酸単位とエチレングリコール単位の合計含有量が大きいほど、ポリエステル(A)の融点が高くなり、固相重合する際の温度を高く設定することができて反応速度を大きくできるので、生産性が向上する。
【0017】
ポリエステル(A)は、必要に応じて、テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位以外の2官能性化合物単位を有していてもよい。他の2官能性化合物単位の割合は、ポリエステル(A)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。ポリエステル(A)中に含有させることのできる他の2官能性化合物単位としては、テレフタル酸単位以外のジカルボン酸単位、エチレングリコール単位以外のジオール単位、ヒドロキシカルボン酸単位であれば、脂肪族の2官能性化合物単位、脂環式の2官能性化合物単位、芳香族の2官能性化合物単位のいずれであってもよい。
【0018】
上記した脂肪族の2官能化合物単位の例としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;10−ヒドロキシオクタデカン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコールなどの脂肪族ジオール;などから誘導される2価の構造単位を挙げることができる。特にジエチレングリコールから誘導される2価の構造単位は、エチレングリコールをジオール成分として重合した際に副生物として含まれることが多い。
【0019】
上記した脂環式の2官能化合物単位の例としては、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシメチルノルボルネンカルボン酸、ヒドロキシメチルトリシクロデカンカルボン酸などの脂環式ヒドロキシカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオール;などから誘導される2価の構造単位を挙げることができる。
【0020】
上記におけるシクロヘキサンジメタノール単位とは、1,2−シクロヘキサンジメタノール単位、1,3−シクロヘキサンジメタノール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位から選ばれる少なくとも1種の2価の単位をいう。また、上記におけるシクロヘキサンジカルボン酸単位とは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸単位および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2価の単位をいう。前記した脂環式の2官能化合物単位のうちでも、入手の容易性、ポリエステル樹脂組成物から得られる成形品の落下強度が一層優れたものになるという点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位および/または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位がより好ましい。
【0021】
但し、本発明は、ポリエステル(A)と、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位並びにエチレングリコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位を主体とするジオール単位から主としてなるポリエステル(B)を併用し、その溶融混練物を固相重合する点に特徴を有するものであるから、ポリエステル(A)としてシクロヘキサンジメタノール単位を含有するものを用いる場合は、ポリエステル(A)におけるシクロヘキサンジメタノール単位の含有量が、ポリエステル(B)におけるシクロヘキサンジメタノール単位の含有量よりも少ないものを用いることが必要である。本発明において、ポリエステル(A)としてシクロヘキサンジメタノール単位を有するポリエステルを用いる場合は、一般に、ポリエステル(A)の全構造単位に対して、シクロヘキサンジメタノール単位の含有量が10モル%以下であるものを用いることが好ましく、5モル%以下であるものを用いることがより好ましい。
【0022】
また、ポリエステル(A)が他の2官能性化合物単位として芳香族の2官能化合物単位を有する場合は、芳香族の2官能性化合物単位は、芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ヒドロキシカルボン酸単位および/または芳香族ジオール単位のいずれであってもよい。芳香族の2官能化合物単位の例としては、イソフタル酸、フタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などのテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸、ヒドロキシナフトエ酸、3−(ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体;ビスフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物などの芳香族ジオール;などから誘導される2価の単位を挙げることができる。
【0023】
さらに、他の2官能化合物単位として、芳香族ジオールの2つの水酸基にエチレンオキシドがそれぞれ1分子以上付加したジオールを用いることもできる。例えば、ビスフェノールAの2つのフェノール性水酸基に、それぞれエチレンオキシドが1〜8分子付加しているジオールなどを例示することができる。
【0024】
本発明で用いるポリエステル(A)は、必要に応じて、テレフタル酸単位、エチレングリコール単位および上記した他の2官能性化合物単位以外に、多官能性化合物単位を有していてもよい。好ましい多官能化合物単位は、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能性化合物単位である。多官能性化合物単位の割合(2種以上の多官能性化合物単位を有する場合はその合計割合)は、ポリエステル(A)の全構造単位の合計モル数に基づいて、1モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以下であることがより好ましい。多官能化合物単位としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールから誘導される多官能化合物単位などが例示される。
【0025】
また、本発明で用いるポリエステル(A)は、必要に応じて、モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体の少なくとも1種の単官能化合物から誘導される単官能化合物単位を有していてもよい。単官能化合物単位は、封止化合物単位として機能し、ポリエステル(A)における分子鎖末端基および/または分岐鎖末端基の封止を行い、ポリエステル(A)における過度の架橋およびゲルの発生を防止する。ポリエステル(A)が単官能化合物単位を有する場合は、単官能化合物単位の割合(2種以上の単官能化合物単位を有する場合はその合計割合)が、ポリエステル(A)の全構造単位の合計モル数に基づいて、1モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以下であることがより好ましい。ポリエステル(A)における単官能化合物単位の割合が1モル%を超えると、ポリエステル(A)を製造する際の重合速度が遅くなって、生産性が低下し易い。単官能化合物単位としては、安息香酸、2,4,6−トリメトキシ安息香酸、2−ナフトエ酸、ステアリン酸およびステアリルアルコールから選ばれる単官能化合物から誘導される単位などが例示される。
【0026】
本発明で用いるポリエステル(A)の製造法は特に制限されず、一般に、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体、エチレングリコール、および必要に応じて上記した他の2官能性化合物、多官能性化合物、単官能化合物の1種または2種以上を反応原料として用いて、エステル化反応またはエステル交換反応を行った後、それを溶融重縮合させることによって製造することができる。ポリエステル(A)の製造に当たっては、(全ジオール成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が1.1:1〜2.5:1の範囲であるようにすることが好ましい。ポリエステル(A)を製造する際の上記したエステル化反応またはエステル交換反応は、絶対圧で約5kg/cm以下の加圧下または常圧下に、180〜300℃の温度で、生成する水またはアルコールを留去させながら行うことが好ましい。
【0027】
上記のエステル化反応の場合は無触媒で反応を行うことができる。また、上記のエステル交換反応を行う場合は、エステル交換触媒として、カルシウム、マンガン、マグネシウム、亜鉛、チタン、ナトリウム、リチウムなどの金属化合物の1種以上を用いるのがよい。特に、透明性の点から、マンガン、マグネシウムおよび/またはチタン化合物を用いることが好ましい。
【0028】
エステル化反応またはエステル交換反応に続く溶融重縮合反応は、必要に応じて重縮合触媒、着色防止剤などの添加剤を添加して、5mmHg以下の減圧下に、200〜300℃の温度で、所望の粘度のポリエステルが得られるまで行うのが好ましい。溶融重縮合反応は、例えば、槽型のバッチ式重縮合装置、2軸回転式の横型反応器からなる連続式重縮合装置などを用いて行うことができる。
【0029】
上記した溶融重縮合反応において重縮合触媒を使用する場合は、ポリエステルの製造に通常用いられているものを使用することができ、例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラnブトキシドなどのゲルマニウム化合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのチタン化合物;ジn−ブチル錫ジラウレート、ジn−ブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテートなどの錫化合物;などを挙げることができる。これらの触媒化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらの重縮合触媒のうち、得られるポリエステルの色調が良好となることから、上記したゲルマニウム化合物が好ましく用いられ、二酸化ゲルマニウムが特に好ましく用いられる。重縮合触媒を用いる場合は、ジカルボン酸成分の質量に基づいて0.002〜0.8質量%の範囲内の量であるのが好ましい。
【0030】
また、溶融重縮合反応において着色防止剤を使用する場合は、例えば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフェートなどのリン化合物を用いることができる。これらのリン化合物は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。前記したリン化合物からなる着色防止剤を使用する場合は、ジカルボン酸成分の質量に基づいて0.001〜0.5質量%の範囲内であるのが好ましい。また、ポリエステルの熱分解による着色を抑制するために、ジカルボン酸成分の質量に基づいて0.001〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.3質量%のコバルト化合物、例えば酢酸コバルトなどを添加するのがよい。
【0031】
溶融重縮合により得られるポリエステル(A)の極限粘度は、取り扱い性などの点から0.4〜0.9dl/gの範囲内であることが好ましい。溶融重縮合により得られるポリエステル(A)の極限粘度が0.4dl/g未満であると、ポリエステルを反応器から取り出す際に、溶融粘度が低すぎて、ストランド状またはシート状などの形状で押し出し難くなり、しかもペレット状に均一に裁断することが困難になる。さらに、ポリエステル(A)をポリエステル(B)と溶融混練した後固相重合して本発明のポリエステル樹脂組成物を製造する際に、高分子量化に長い時間を要するようになり生産性が低下する。ポリエステル(A)の極限粘度は、より好ましくは0.5dl/g以上であり、さらに好ましくは0.6dl/g以上である。一方、一方、ポリエステル(A)の極限粘度が0.9dl/gよりも高いと、溶融粘度が高すぎるために、反応器からポリエステルを取り出すことが困難になり、しかも熱劣化による着色が生じ易くなる。ポリエステル(A)の極限粘度は、より好ましくは0.85dl/g以下であり、さらに好ましくは0.8dl/g以下である。
【0032】
上記のようにして得られたポリエステル(A)をストランド状、シート状などの形状に押出し、冷却後、ストランドカッターやシートカッターなどにより裁断して、円柱状、楕円柱状、円盤状、ダイス状などの形状のペレットを製造する。前記した押出し後の冷却は、例えば、水槽を用いる水冷法、冷却ドラムを用いる方法、空冷法などにより行うことができる。
【0033】
上記で得られたポリエステル(A)のペレットは、そのまま本発明のポリエステル樹脂組成物の製造に用いても、または120〜180℃の温度範囲で加熱乾燥し、結晶化させてから用いてもよい。さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物では、必要に応じて、固相重合を行って重合度を高めたポリエステル(A)を用いてもよいが、生産効率を考えれば必ずしも好ましくない。ポリエステル(A)の固相重合を行う場合の雰囲気、温度、圧力などの条件は、後述する、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練物を固相重合する場合と同様の条件が採用される。
【0034】
次に、本発明で用いられるポリエステル(B)について説明する。ポリエステル(B)は、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位、並びにエチレングリコール単位及び/またはシクロヘキサンジメタノール単位を主体とし、それらのモル比(エチレングリコール/シクロヘキサンジメタノール)が0/100〜80/20であるジオール単位から主としてなるポリエステルである。
【0035】
本発明で用いるポリエステル(B)では、テレフタル酸単位、エチレングリコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位の合計含有割合が、ポリエステル(B)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。ポリエステル(B)におけるテレフタル酸単位、エチレングリコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位の合計モル数が80モル%未満であると、それを用いてなるポリエステル樹脂組成物の耐衝撃性、透明性、耐熱性、耐湿性、ガスバリヤー性などの特性が損なわれ易くなる。
【0036】
ポリエステル(B)では、ジオール単位におけるエチレングリコール単位:シクロヘキサンジメタノール単位の割合が、モル比(エチレングリコール/シクロヘキサンジメタノール)で0/100〜80/20の範囲内であることが必要である。ポリエステル(B)として、エチレングリコール単位とシクロヘキサンジメタノール単位の合計モル数に基づいて、シクロヘキサンジメタノール単位の割合が20モル〜100モル%であるものを用いることによって、本発明のポリエステル樹脂組成物およびそれより得られる成形品の耐衝撃性やその他の機械的強度を一層良好なものにすることができる。ポリエステル(A)とポリエステル(B)との溶融混練処理によって透明性が確保でき、成形時に未溶融ブツの発生がより少なく、かつ耐衝撃性により優れるポリエステル樹脂組成物および成形品が得られる点からも、ポリエステル(B)では、モル比(エチレングリコール/シクロヘキサンジメタノール)が、上記範囲であることが必要である。前記モル比が、10/90以上であることが好ましく、20/80以上であることがより好ましく、30/70以上であることがさらに好ましい。一方、前記モル比が、70/30以下であることが好ましく、60/40以下であることがより好ましく、50/50以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明において、シクロヘキサンジメタノール単位の含有割合が高いポリエステル(B)を用いる場合、例えば、エチレングリコール単位とシクロヘキサンジメタノール単位の合計モル数に対してシクロヘキサンジメタノール単位の割合が80モル%を超えるポリエステル(B)を用いる場合、さらには90モル%を超えるポリエステル(B)を用いる場合には、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との相溶性が低くなり易いので、透明なポリエステル樹脂組成物を得るために、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練時間を長くして両者間でエステル交換反応を行わせることが好ましい。その際に、エステル交換反応を過度に行わせると、ランダム結合が生じて融点低下を生じ、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練物の固相重合を円滑に行うことができなくなり、さらにポリエステル樹脂組成物およびそれから得られる成形品の耐衝撃性が低下したものになり易いので注意を要する。
【0038】
ポリエステル(B)におけるシクロヘキサンジメタノール単位は、1,2−シクロヘキサンジメタノール単位、1,3−シクロヘキサンジメタノール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位から選ばれる少なくとも1種の2価の単位であればよい。そのうちでも、入手の容易性、ポリエステル(B)を結晶性のものにしやすい点、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練物の固相重合時にペレット間の膠着が生じにくい点、ポリエステル樹脂組成物およびそれから得られる成形品の落下強度が一層優れる点などの点から、ポリエステル(B)におけるシクロヘキサンジメタノール単位が1,4−シクロヘキサンジメタノール単位であることが好ましい。
【0039】
シクロヘキサンジメタノール単位にはシス体およびトランス体が存在するが、ポリエステル(B)中のシクロヘキサンジメタノール単位におけるシス体とトランス体の割合は特に制限されない。そのうちでも、ポリエステル(B)におけるシクロヘキサンジメタノール単位では、シス体:トランス体の割合が、0:100〜50:50の範囲であることが、ポリエステル(B)を結晶性のものにし易い点、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練物の固相重合時にペレット間の膠着が生じにくい点、ポリエステル樹脂組成物およびそれから得られる成形品の落下強度が一層優れる点から好ましい。
【0040】
ポリエステル(B)は、テレフタル酸単位、エチレングリコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位以外に、必要に応じて、他の2官能性化合物単位を有していてもよい。他の2官能性化合物単位の割合は、ポリエステル(B)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。ポリエステル(B)中に含有させることのできる他の2官能性化合物単位としては、ポリエステル(A)について例示したものと同様の単位を用いることができる。
【0041】
ポリエステル(B)は、必要に応じて、多官能性化合物単位を有していてもよい。多官能性化合物単位の割合は、ポリエステル(B)を構成する全構造単位の合計モル数に基づいて、1モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以下であることがより好ましい。ポリエステル(B)中に含有させることのできる多官能性化合物単位としては、ポリエステル(A)について例示したものと同様の単位を用いることができる。
【0042】
ポリエステル(B)は、必要に応じて、単官能性化合物単位を有していてもよい。単官能性化合物単位の割合は、ポリエステル(B)を構成する全構造単位の合計モル数に基づいて、1モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以下であることがより好ましい。ポリエステル(B)中に含有させることのできる単官能性化合物単位としては、ポリエステル(A)について例示したものと同様の単位を用いることができる。
【0043】
ポリエステル(B)の製法は特に制限されず、ポリエステルの製造に当たって従来から用いられているのと同様の方法により製造することができ、上記したポリエステル(A)の製法と同様の方法により好ましく製造される。
【0044】
ポリエステル(B)の極限粘度は、ペレット化する際の取り扱い性、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練物を固相重合する際の固相重合時間、熱劣化の防止などの点から、前述したポリエステル(A)の場合と同様の範囲内であることが好ましい。
【0045】
本発明では、上記したポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練してから切断して中間ペレットを得る。その際の混合割合は、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の合計100質量部に対するポリエステル(B)の配合量が2〜50質量部である。ポリエステル(B)の配合量が2質量部未満である場合、固相重合後に得られる成形品の透明性や耐衝撃性が不十分となりやすい。ポリエステル(B)の配合量は、好適には5質量部以上であり、より好適には8質量部以上である。一方、ポリエステル(B)の配合量が50質量部を超える場合、固相重合時に膠着しやすく、しかも固相重合温度を高くすることができないので生産性も低下する。また、得られる成形品が着色しやすくなる。ポリエステル(B)の配合量は、好適には40質量部以下である。
【0046】
さらに、中間ペレット中のジオール単位の1〜35モル%がシクロヘキサンジメタノール単位であることが好ましい。シクロヘキサンジメタノール単位の含有量が1モル%未満の場合、固相重合後に得られる成形品の透明性や耐衝撃性が不十分となりやすい。シクロヘキサンジメタノール単位の含有量は、より好適には2モル%以上であり、さらに好適には4モル%以上である。一方、シクロヘキサンジメタノール単位の含有量が35モル%を超える場合、固相重合時に膠着しやすく、しかも固相重合温度を高くすることができないので生産性も低下する。また、得られる成形品が着色しやすくなる。シクロヘキサンジメタノール単位の含有量は、より好適には30モル%以下であり、さらに好適には25モル%以下である。
【0047】
ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練方法は特に制限されず、両者が均一に溶融して混合され得る方法であればいずれでもよく、例えば単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサーなどの溶融混練機を用いる溶融混練方法が採用できる。溶融混練の簡便さなどの点から、単軸押出機、2軸押出機などの押出機を用いる溶融混練方法が好ましく採用される。溶融混練条件は、使用するポリエステル(A)およびポリエステル(B)の種類や量、用いる装置の種類などに応じて選択することができる。
【0048】
本発明の製造方法において、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する温度は重要である。高めの温度で溶融混練することによって、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とが適度に反応して微分散して、透明性の良好な中間ペレットを得ることができる。ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する温度は、好適には290〜350℃である。溶融混練温度が290℃未満である場合、中間ペレットの透明性が低下し、固相重合後の成形品の透明性も不十分となる。溶融混練温度は、より好適には300℃以上である。一方、溶融混練温度が350℃を超える場合、固相重合後の成形品が着色しやすくなる。溶融混練温度は、より好適には340℃以下である。ここで、溶融混練温度とは、溶融している樹脂の温度のことをいい、例えば、ダイから吐出された溶融樹脂組成物の温度を直接測定する方法などによって測定することができる。溶融混練の時間は、通常2〜120分程度である。
【0049】
また、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に混練装置内を減圧することが好ましい。混練装置内を減圧することによって、中間ペレットの透明性が良好になり、固相重合後の成形品の透明性も良好になる。これは、混練装置内を減圧することによってポリエステル(A)とポリエステル(B)の相互の間でのエステル交換反応が進行しやすくなるためと考えられる。バキューム圧は400mmHg以上であることが好ましく、600mmHg以上であることがより好ましい。ここで、バキューム圧とは、大気圧との差圧のことをいう。具体的には、ベントなどから減圧することができる。
【0050】
溶融混練する際に、ポリエステル(A)とポリエステル(B)以外の成分を添加してもよい。他の熱可塑性樹脂や、ポリエステル樹脂に対して従来から使用されている各種の添加剤、例えば染料や顔料などの着色剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、潤滑剤、可塑剤、無機充填剤などを、ポリエステル樹脂組成物の調製時や、ポリエステル樹脂組成物を用いて成形を行う際などの任意の工程で配合してもよい。
【0051】
なかでも、本発明の製造方法においては、酸化防止剤を添加して溶融混練することが好ましい。上述のように、本発明の製造方法においては、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する温度を高くすることが好ましいが、そのような場合であっても着色を抑制することができる。また、後述するように、中間ペレットを空気循環式加熱装置内において加熱して結晶化させてから固相重合する場合にも、固相重合中の着色を抑制することができる。酸化防止剤としては、特に限定されず、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを用いることができる。その配合量は、好適には10〜10000ppmである。中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用することが好ましく、この場合の好適な配合量は、それぞれ10〜5000ppmである。
【0052】
ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練により得られるポリエステル樹脂組成物の極限粘度は、取り扱い性、次工程の固相重合性などの点から、0.4〜0.9dl/gの範囲内であることが好ましい。ポリエステル樹脂組成物の極限粘度が0.4dl/g未満であると、溶融粘度が低くなって、ストランド状またはシート状などの形状で押し出し難くなり、ペレット状に均一に裁断することが困難になり、しかも固相重合に長時間を要するようになって生産性の低下を招き易い。ポリエステル樹脂組成物の極限粘度は、0.5dl/g以上であることがより好ましく、0.6dl/g以上であることがさらに好ましい。一方、ポリエステル樹脂組成物の極限粘度が0.9dl/gを超えるものは、液相重合で得ることが困難なので、生産性の面からは有利ではない。
【0053】
ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練した後に、ポリエステル(A)やポリエステル(B)と同様の方法でペレット形状に裁断し、中間ペレットを得ることができる。中間ペレットの形態は特に制限されないが、取り扱い性、次工程の固相重合性などの点から、円柱状、楕円柱状、球状、円盤状、ダイス状などの形状が例示される。その際のペレット化の方法は特に制限されず、例えば、ストランド状、シート状などの形状に溶融状態で押し出し、冷却後、ストランドカッターやシートカッターなどにより裁断する方法などを挙げることができる。ポリエステル樹脂組成物の前記した押し出し後の冷却は、例えば、水槽を用いる水冷法、冷却ドラムを用いる方法、空冷法などにより行うことができる。そのようにして得られたペレット状(粒状)のポリエステル樹脂組成物は、固相重合時の反応性、取り扱い性、成形時のペレットの噛み込み性、モーターへの負荷、未溶融ブツの発生防止などの点から、その平均粒度が一般に1〜5mm程度であることが好ましく、1.5〜3mmであることがより好ましい。
【0054】
こうして得られる中間ペレットは、それを270℃で射出成形したときの1mm厚のプレートのヘイズが3%以下であることが重要である。ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とが十分に反応して微分散することによって、十分にヘイズを低下させることができる。具体的には、溶融混練温度を高く設定することや、溶融混練時に混練装置内を減圧することや、溶融混練時の滞留時間を調整することによって、このようにヘイズの小さい中間ペレットを得ることができる。前記プレートのヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。ここで、270℃程度の温度で射出成形に要する時間だけ溶融したのであれば、ポリエステル樹脂組成物中の各成分の分散状況には大きな変動はなく、前記プレート中の各成分の分散状況は、中間ペレット中の各成分の分散状況を概ね示しているといえる。
【0055】
すなわち、本発明の製造方法においては、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを十分に反応させて微分散させることによって、中間ペレットの時点で十分にヘイズを低下させておくことが極めて重要であり、こうすることによって、固相重合後の成形品の透明性が極めて良好になる。固相重合ではなく、それより前の溶融混練操作が、最終的に得られる成形品の透明性に大きな影響を与えることを初めて見出したのである。
【0056】
こうして得られた中間ペレットを固相重合するが、固相重合する前に加熱して予め結晶化させることが好ましい。こうすることによって、固相重合時の膠着を防止することができる。結晶化の温度は、好適には100〜180℃である。結晶化の方法としては、真空タンブラー中で結晶化させてもよいし、空気循環式加熱装置内で加熱して結晶化させてもよい。空気循環式加熱装置内で加熱する場合には、内部の温度が100〜160℃であることが好ましい。空気循環式加熱装置を用いて加熱する場合には、真空タンブラーを用いて結晶化する場合に比べて、熱伝導が良好なので結晶化に要する時間を短縮できるし、装置も安価である。しかしながら、空気中の酸素の影響で成形品の着色が生じやすくなるので、前述のような酸化防止剤を配合することが特に好ましい。結晶化に要する時間は特に限定されないが、通常30分〜24時間程度である。結晶化に先立って、100℃未満の温度でペレットを乾燥することも好ましい。
【0057】
ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練物からなる中間ペレットを固相重合することによって本発明の固相重合ペレットが得られる。本発明の固相重合ペレットに含まれるポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練物を、さらに固相重合したものであるため、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とがエステル交換反応して得られた、いわゆるブロックポリマー的な構造をその一部に有していると考えられる。そしてそれにより、固相重合の温度を高くしながらも結晶化速度が適度に抑制されているので、押出成形性が良好な固相重合ペレットを得ることができる。また、当該固相重合ペレットを成形して得られる成形品は透明性及び耐衝撃性に優れている。
【0058】
中間ペレットの固相重合は、減圧下または窒素ガスなどの不活性ガス中で行うことが好ましい。また、ポリエステル樹脂組成物のペレット間の膠着が生じないように、転動法、気体流動床法などの適当な方法でペレットを動かしながら固相重合を行うことが好ましい。なかでも、減圧下で固相重合を行うことが好ましい。減圧下で固相重合を行う場合の圧力は好適には10Torr以下であり、より好適には1Torr以下であり、さらに好適には0.1Torr以下である。
【0059】
固相重合温度は、好適には170〜250℃である。固相重合温度が170℃未満の場合には、固相重合時間が長くなり生産性が低下するおそれがある。固相重合温度は、より好適には180℃以上であり、さらに好適には190℃以上である。一方、固相重合温度が250℃を超える場合には、ペレットが膠着するおそれがある。固相重合温度は、より好適には240℃以下であり、さらに好適には230℃以下である。固相重合時間は、通常5〜50時間程度である。
【0060】
固相重合後のポリエステル樹脂組成物の極限粘度は、0.9〜1.5dl/gの範囲内であることが好ましい。極限粘度が0.9dl/g未満の場合には、押出成形性が悪化するおそれがあるとともに、得られる成形品の強度、耐衝撃性及び透明性が低下するおそれがある。極限粘度は、より好適には1.0dl/g以上であり、さらに好適には1.05dl/g以上である。一方、極限粘度が1.5dl/gを超える場合には、溶融粘度が高くなりすぎて溶融成形性が低下するおそれがあるとともに、生産性も低下するおそれがある。極限粘度は、より好適には1.4dl/g以下であり、さらに好適には1.3dl/g以下である。固相重合後のポリエステル樹脂組成物の極限粘度が、溶融混練する前のポリエステル(A)とポリエステル(B)の質量平均の極限粘度の1.2倍以上になることが好ましく、1.3倍以上になることがより好ましく、1.4倍以上になることがさらに好ましい。
【0061】
本発明の製造方法によって得られる固相重合ペレットを溶融成形することによって様々な成形品を得ることができる。成形方法は特に限定されず、押出成形、射出成形など、各種の溶融成形方法を採用することができる。また、溶融成形品をさらに二次加工して成形品を得ることもできる。中でも、本発明の製造方法によって得られる固相重合ペレットは溶融成形時の粘度が高いので、押出成形に適している。押出成形時の樹脂組成物の温度は、(ポリエステル樹脂組成物の融点+10℃)〜(ポリエステル樹脂組成物の融点+70℃)の範囲内の温度にするのが好ましく、(ポリエステル樹脂組成物の融点+10℃)〜(ポリエステル樹脂組成物の融点+40℃)の範囲内の温度にするのがより好ましい。比較的融点に近い温度で押出すことによって、ドローダウンを抑制できる。ここで、ポリエステル樹脂組成物の融点とは、ポリエステル(A)に由来する融点のことである。
【0062】
本発明の固相重合ペレットを用いて、例えば、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形によってシートやフィルムを製造する場合には、ドローダウン、ネックイン、膜揺れ、未溶融ブツの発生がなく、高品質のシートまたはフィルムを生産性よく製造することができる。そして、そのようにして得られたシートまたはフィルムを用いて熱成形などの二次加工を行った場合には、深絞りの成形品や大型の成形品を成形する際に、ドローダウンが小さく、結晶化の程度が良好であり、真空吸引または圧縮空気などの外力を加える工程での厚み斑や白化を生じにくく、良好な賦形性で目的とする成形品を得ることができる。
【0063】
そして、押出成形の中でも、特に本発明の製造方法によって得られる固相重合ペレットを用いることが適しているのは押出ブロー成形である。押出ブロー成形の方法は特に制限されず、従来既知の押出ブロー成形法と同様に行うことができる。例えば、本発明のポリエステル樹脂組成物を溶融押出して円筒状のパリソンを形成し、このパリソンが軟化状態にある間にブロー用金型で挟んで、空気などの気体を吹き込んでパリソンを金型キャビィティの形状に沿った所定の中空形状に膨張させる方法によって行うことができる。本発明の固相重合ペレットを用いることにより、押出されたパリソンのドローダウン性が良好であり、中空成形品を円滑に生産性よく製造することができる。
【0064】
こうして得られる成形品は、透明性に優れ、外観が良好で、機械的強度が高い。しかも、ガスバリヤー性、フレーバーバリヤー性、耐湿性、耐薬品性などの諸特性にも優れているので、様々な用途に用いることができる。また、他の熱可塑性樹脂などとの積層構造を有する成形品とすることもできる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中、各種測定方法及び評価方法は以下の方法にしたがっておこなった。
【0066】
(1)各構造単位の含有率
ポリエステル又はポリエステル樹脂組成物における各構造単位の含有率は、重水素化トリフルオロ酢酸を溶媒としたポリエステルまたはポリエステル樹脂組成物の1H−NMRスペクトル(日本電子社製「JNM−GX−500型」)により確認した。
【0067】
(2)極限粘度
ポリエステル又はポリエステル樹脂組成物の極限粘度は、フェノールとテトラクロルエタンの等質量混合溶媒中、30℃で、ウベローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用いて測定した。
【0068】
(3)溶融混練物の透明性
以下の実施例または比較例で得られた固相重合ペレットを用いて、日精樹脂工業株式会社製の80トン射出成形機「FS80S型」を使用して、シリンダー温度270℃および金型温度30℃の条件下で、ヘイズ測定用の試験片(寸法:長さ×幅×厚さ=90mm×50mm×1mm)を作製した。上記方法で作製した試験片を用いて、JIS K7136に準拠して、日本電色工業株式会社製ヘイズメーター「NDH2000」で、D65光源を用いてヘイズ値を測定し、透明性を評価した。
【0069】
(4)b値
以下の実施例または比較例で得られた固相重合ペレットのb値を、ASTM−D2244(color scale system2)に準拠して、日本電色工業株式会社製測色色差計「ZE−2000」を用いて測定した。
【0070】
(5)ボトル透明性
以下の実施例または比較例で得られた固相重合ペレットを用いて、株式会社プラコー製の押出ブロー成形装置(中空成形機「BM−304・J2型機」)を使用して、押出温度250℃で環状オリフィスより押出速度10kg/時で押出して円筒形パリソンを形成し、円筒形パリソンが軟化状態にあるうちに金型温度を15℃に制御したブロー金型で挟むことによって切断と底部形成を行い、これをブロー成形して、設定容量約220mlの円筒形ボトルを製造した。
【0071】
ボトル胴部を上部、中部および下部にわたって3分割し、さらに円周上に4分割した合計12箇所について、ASTM D1003に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(日本精密光学株式会社製「SEP−HS・30D−R型」)を用いて各箇所におけるヘイズを測定し、その平均値を採ってボトルのヘイズ(曇価)とし、透明性を評価した。
【0072】
実施例1
[ポリエステル(A)の製造]
テレフタル酸100.0質量部およびエチレングリコール44.8質量部からなるスラリーをつくり、これに二酸化ゲルマニウム0.010質量部、亜リン酸0.010質量部および酢酸コバルト0.010質量部を加えた。このスラリーを加圧下(絶対圧2.5kg/cm)で250℃の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、得られた低重合体を5mの容量の重縮合槽に移し、0.1Torrの減圧下に、270℃の温度で前記の低重合体を溶融重縮合させて、極限粘度0.70dl/gのポリエステルを合成した。得られたポリエステルをノズルからストランド状に押出し、水冷した後、円柱状(直径約2.5mm、長さ約2.5mm)に切断して、ポリエステル(A)のペレットを得た。
【0073】
こうして得られたポリエステル(A)の各構造単位の含有率を上記の方法で測定したところ、テレフタル酸単位、エチレングリコール単位およびジエチレングリコール単位の含有率は、それぞれ50モル%、48モル%および2モル%であった。
【0074】
[ポリエステル(B)の製造]
テレフタル酸100.0質量部、エチレングリコール17.8質量部および1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス体:トランス体の混合比30:70)62.5質量部からなるスラリーをつくり、これに二酸化ゲルマニウム0.015質量部、亜リン酸0.010質量部および酢酸コバルト0.010質量部を加えた。このスラリーを加圧下(絶対圧2.5kg/cm)で250℃の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、得られた低重合体を5mの容量の重縮合槽に移し、0.1Torrの減圧下に、270℃の温度で前記の低重合体を溶融重縮合させて、極限粘度0.70dl/gのポリエステルを生成させた。得られポリエステルをノズルからストランド状に押出し、水冷した後、円柱状(直径約2.5mm、長さ約2.5mm)に切断して、ポリエステル(B)のペレットを得た。
【0075】
こうして得られたポリエステル(B)の各構造単位の含有率を上記の方法で測定したところ、テレフタル酸単位、エチレングリコール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびジエチレングリコール単位の含有率は、それぞれ50モル%、18.8モル%、30モル%および1.2モル%であった。
【0076】
[ポリエステル(A)とポリエステル(B)の溶融混練]
上記のポリエステル(A)およびポリエステル(B)のペレットを質量比(A/B)が70/30となるよう配合し、さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製「イルガノックス1010」)250ppm及びリン系酸化防止剤(株式会社アデカ製「アデカスタブPEP−36)500ppmを添加して予備混合した後、二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−48SS」)に供給した。押出機のシリンダー温度を330℃、ダイ温度を320℃に設定し、ベントバキューム圧700mmHg(絶対圧60mmHg)、押出量150kg/hrにて溶融混練してストランドを押し出した。押出機ダイ出口で溶融樹脂を温度計で直接測定したところ、樹脂温度は332℃であった。押し出されたストランドを直ちに水冷し、次いで円柱状(直径約2.5mm、長さ約2.5mm)に切断して、ポリエステル樹脂組成物の中間ペレットを得た。
【0077】
こうして得られたポリエステル樹脂組成物における各構造単位の含有率を前述の方法で測定したところ、ポリエステル樹脂組成物におけるテレフタル酸単位、エチレングリコール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位および副生したジエチレングリコール単位の含有率は、表1に示すとおりであった。また、当該ポリエステル樹脂組成物を用いて前述の方法で射出成形プレートを成形して、ヘイズを測定したところ、0.67%であった。
【0078】
[中間ペレットの結晶化]
以上のようにして得られたポリエステル樹脂組成物の中間ペレットを転動式真空固相重合装置に投入し、0.01Torrの減圧下に、90℃で24時間乾燥させ、次いで160℃で10時間結晶化を行った。
【0079】
[固相重合]
上記結晶化に引き続き、0.01Torrの減圧下に、200℃で38時間固相重合させて、ポリエステル樹脂組成物の固相重合ペレットを得た。得られた固相重合ペレット中のポリエステル樹脂組成物の極限粘度を前述の方法で測定したところ1.15dl/gであった。また、得られた固相重合ペレットのb値を前述の方法で測定したところ−0.16であった。
【0080】
[ブローボトルの成形]
以上のようにして得られたポリエステル樹脂組成物の固相重合ペレットを用いて、押出ブロー成形装置(株式会社プラコー製「BM−304・J2型」)を使用して、前述の方法で押出ブロー成形を行って、設定容量約220mlの円筒形ボトルを製造し、その際のボトルの透明性を前述の方法で測定したところ、ヘイズは0.50%であった。以上の結果をまとめて表1に示す。
【0081】
実施例2
実施例1において、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤のいずれも添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、固相重合ペレットを得て、ブローボトルを成形し、評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0082】
実施例3
実施例1において、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤のいずれも添加せず、シリンダー温度310℃、ダイ温度290℃、押出量200kg/hrとし、固相重合時間を40時間にした以外は実施例1と同様にして、固相重合ペレットを得て、ブローボトルを成形し、評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0083】
実施例4
実施例1において、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、シリンダー温度310℃、ダイ温度290℃、押出量200kg/hrとし、中間ペレットを結晶化させる際に、株式会社三好鉄工所製エアー循環式結晶化装置を使用して、135℃で3.5時間結晶化させ、固相重合時間を35時間にしたこと以外は実施例1と同様にして固相重合ペレットを得て、ブローボトルを成形し、評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0084】
実施例5
実施例1において、ポリエステル(B)の配合量を10質量%とし、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、シリンダー温度310℃、ダイ温度290℃、押出量225kg/hrとし、中間ペレットを結晶化させる際に、株式会社三好鉄工所製エアー循環式結晶化装置を使用して、135℃で3.5時間結晶化させ、210℃で30時間固相重合した以外は実施例1と同様にして固相重合ペレットを得て、ブローボトルを成形し、評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0085】
実施例6
実施例1において、ポリエステル(B)の配合量を7質量%とし、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、シリンダー温度310℃、ダイ温度290℃、押出量250kg/hrとし、中間ペレットを結晶化させる際に、株式会社三好鉄工所製エアー循環式結晶化装置を使用して、135℃で3.5時間結晶化させ、215℃で28時間固相重合した以外は実施例1と同様にして固相重合ペレットを得て、ブローボトルを成形し、評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0086】
実施例7
実施例1において、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤のいずれも添加せず、中間ペレットを結晶化させる際に、株式会社三好鉄工所製エアー循環式結晶化装置を使用して、135℃で3.5時間結晶化させ、固相重合時間を35時間にしたこと以外は実施例1と同様にして固相重合ペレットを得て、ブローボトルを成形し、評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0087】
比較例1
実施例1において、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、シリンダー温度280℃、ダイ温度280℃、押出量200kg/hrとし、中間ペレットを結晶化させる際に、(株式会社三好鉄工所製エアー循環式結晶化装置を使用して、135℃で3.5時間結晶化させ、固相重合時間を36時間にしたこと以外は実施例1と同様にして固相重合ペレットを得て、ブローボトルを成形し、評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0088】
比較例2
実施例1において、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、ベントバキューム圧を0mmHg(減圧せず)とし、中間ペレットを結晶化させる際に、株式会社三好鉄工所製エアー循環式結晶化装置を使用して、135℃で3.5時間結晶化させたこと以外は実施例1と同様にして固相重合ペレットを得て、ブローボトルを成形し、評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0089】
比較例3
実施例1において、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に、押出量を300kg/hrとし、中間ペレットを結晶化させる際に、株式会社三好鉄工所製エアー循環式結晶化装置を使用して、135℃で3.5時間結晶化させ、固相重合時間を35時間にしたこと以外は実施例1と同様にして固相重合ペレットを得て、ブローボトルを成形し、評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
ポリエステル(A)とポリエステル(B)を溶融混練する際に、混練温度の低い比較例1、混練装置を減圧しなかった比較例2、及び単位時間当たりの押出量が大きくて樹脂組成物の溶融混練時間が短かった比較例3は、いずれも中間ペレットを射出成形したプレートのヘイズが3%を超えていた。その結果これらの比較例では、得られたボトルのヘイズも5%を超えていて、透明性が不十分であった。これに対し、中間ペレットを射出成形したプレートのヘイズが3%未満であった実施例1〜7では、得られたボトルのヘイズが1%未満であり、極めて優れた透明性を示した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練してから切断して中間ペレットを得た後に、該中間ペレットを固相重合する、ポリエステル樹脂組成物からなる固相重合ペレットの製造方法であって;
ポリエステル(A)が、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位、及びエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなり、
ポリエステル(B)が、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位、並びにエチレングリコール単位及び/またはシクロヘキサンジメタノール単位を主体とし、それらのモル比(エチレングリコール/シクロヘキサンジメタノール)が0/100〜80/20であるジオール単位から主としてなり、
ポリエステル(A)とポリエステル(B)の合計100質量部に対するポリエステル(B)の配合量が2〜50質量部であり、かつ
前記中間ペレットを270℃で射出成形したときの1mm厚のプレートのヘイズが3%以下であることを特徴とする固相重合ペレットの製造方法。
【請求項2】
ポリエステル(A)、ポリエステル(B)及び酸化防止剤を溶融混練してから切断して中間ペレットを得る請求項1記載の固相重合ペレットの製造方法。
【請求項3】
ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する温度が290〜350℃である請求項1又は2記載の固相重合ペレットの製造方法。
【請求項4】
ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練する際に混練装置内を減圧する請求項1〜3のいずれか記載の固相重合ペレットの製造方法。
【請求項5】
前記中間ペレット中のジオール単位の1〜35モル%がシクロヘキサンジメタノール単位である請求項1〜4のいずれか記載の固相重合ペレットの製造方法。
【請求項6】
前記中間ペレットを得た後に、それを空気循環式加熱装置内において100〜160℃で加熱して結晶化させてから固相重合する請求項1〜5のいずれか記載の固相重合ペレットの製造方法。
【請求項7】
減圧下、170〜250℃で、前記中間ペレットを固相重合する請求項1〜6のいずれか記載の固相重合ペレットの製造方法。


【公開番号】特開2011−252087(P2011−252087A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126858(P2010−126858)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】