説明

ポリエチレンイミンベースの樹状分散剤

本発明は、式(I)(式中、Tは、ポリエチレンイミン(PEI)もしくは変性PEI部分、ポリビニルアミン(PVA)もしくは変性PVA、またはポリアリルアミン(PAA)もしくは変性PAAから選択され、Bは、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する一官能カルボン酸部分、または少なくとも2個のヒドロキシル基を有しそのヒドロキシル基の1個以上がヒドロキシアルキル置換された一官能カルボン酸部分から選択される分岐状モノマーであり、R1およびR2は互いに独立に、炭素原子数3〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪酸部分、一官能カルボン酸部分、またはMWが100〜10,000g/molの範囲にあるC3〜C24アルキル(ヒドロキシル)カルボン酸部分を含有するポリマー部分から選択される疎水基であり、Xは、−OH末端基を有するB、またはR1もしくはR2であり、qは5〜2000の数であり、ただしqは、PEI、PVA、PAAのアミン基全ての合計より少なく、nは1〜6の数である)の液体分散剤に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「樹状(dendritic)」構造を特徴とする極性ポリアミンをベースとする液体分散剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公開公報第94/21368号には、カプロラクトンおよび少なくとも1種の他の特定のラクトンまたはヒドロキシカルボン酸から誘導されたポリエステル鎖を担持するポリエチレンイミン残基を含む分散剤が記載されている。
【0003】
米国特許第6,583,213号または国際公開公報第99/55763号(Avecia)には、ポリエステルのエチレン性不飽和末端基を介してアミンのアミノまたはイミノ基に結合されたポリエステル鎖を有するアミン分散剤が記載されている。それには、1個以上のアミノ基および/またはイミノ基、2種以上の異なる直鎖状ヒドロキシカルボン酸もしくはそのラクトンから得ることができるポリ(オキシ−C1-6−アルキレンカルボニル)鎖(POAC鎖)、およびエチレン性不飽和基の残基を含有し、アミノ基および/またはイミノ基がエチレン性不飽和基を介して結合されたアミン分散剤が記載されている。
【0004】
POAC鎖は、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ε−カプロラクトン、およびδ−バレロラクトンから製造することができ、そしてアミン基および/またはイミノ基はポリエチレンイミンにより与えられる。アミン分散剤のアミノ基またはイミノ基に結合された少なくとも2個のヒドロキシル基を有するモノカルボン酸から製造されたポリエステルの存在は開示されていない。
【0005】
上で参照した公開は、2または3種の異なる直鎖状モノマーの共重合による、液体ポリエチレンイミン(PEI)ベースの顔料分散剤の合成を特許請求している。主鎖はPEIであり、グラフトする鎖は、2または3種の異なる直鎖状モノマー、例えばラクトン、アルキル置換ラクトン、およびヒドロキシカルボン酸の共重合により得られる混合ポリエステルである。その後、中和(塩結合形成)および酸とアミン基の間のアミディフィケーション(amidification、アミド結合形成)反応の両方を介して、これらのポリエステル鎖をPEIにグラフトする。
【0006】
他の特許公報、例えば米国特許第6,395,804B1、米国特許第6,518,370B2および米国特許第6,933,352B2には、いくらかの疎水基でグラフトされた水溶性樹状ポリマーをベースとする樹状分散剤が記載されている。疎水基は、固定基(anchoring group)として用いられている。それに対して、水溶性樹状ポリマーは、水溶性樹脂相と相互作用し、立体環境を形成して顔料分散液を安定化する。この種の分散剤はPEIベースではなく、水性用途に用いる。
【0007】
極性ポリアミンベースの樹状分散剤を与えることにより、改良された分散剤を得ることができることが見出された。
【0008】
本発明の生成物は、良好な貯蔵安定性、改良された相溶性を有し、そして顔料濃厚物のより低い粘度、高い光沢、より少ない黄変、およびフタロシアニン顔料に対して特に完璧な分散効果を示す。結論として、本発明の生成物は概して、アルキド樹脂、CAB、TPAなどのペイントシステムにおいて、従来技術に比べて優れた性能を与える。
【0009】
したがって、本発明は式I:
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
Tは、ポリエチレンイミン(PEI)もしくは変性PEI部分、ポリビニルアミン(PVA)もしくは変性PVA、またはポリアリルアミン(PAA)もしくは変性PAAから選択され、
Bは、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する一官能カルボン酸部分、または少なくとも2個のヒドロキシル基を有しそのヒドロキシル基の1個以上がヒドロキシアルキル置換された一官能カルボン酸部分から選択される分岐状モノマーであり、
1およびR2は互いに独立に、炭素原子数3〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪酸部分、一官能カルボン酸部分、またはMWが100〜10,000g/molの範囲にあるC3〜C24アルキル(ヒドロキシル)カルボン酸部分を含有するポリマー部分から選択される疎水基であり、
Xは、−OH末端基を有するB、またはR1もしくはR2であり、
qは、5〜2000の数であり、ただしqは、PEI、PVA、PAAのアミン基全ての合計より少なく、
nは、1〜6の数である)の分散剤に関するものである。
【0012】
定義
用語、変性PEI、変性PVA、および変性PAAとは、式IIまたはIII:
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、
Yは、ラクトン、アルキル置換ラクトンまたはヒドロキシカルボン酸から選択される伸長モノマーであり、
Aは、1〜10個の炭素原子を含有する一官能カルボン酸から選択される側鎖モノマーであり、
mは1〜40の数であり、
pは1〜1000の数であり、ただしpは、主鎖PEI、PVAまたはPAAの第一級および第二級アミン基の合計より少ない)の基である。
【0015】
用語ラクトンとは、水の脱離を伴うヒドロキシ酸の分子内縮合により生成する環状エステルを指す。好ましくは、ε−カプロラクトンまたはバレロラクトンである。アルキル置換ラクトンは、C1〜C6アルキルラクトン、好ましくはメチル化されたカプロラクトン、例えば4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、および3,3,5−トリメチルカプロラクトン、3−アルキルバレロラクトンなどである。
【0016】
式II中の「Y」は、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシ酪酸などから選択されるヒドロキシカルボン酸;またはラクトンから誘導されるヒドロキシカルボン酸とすることができる。好ましくは、Yは、ε−カプロラクトン、バレロラクトンまたはアルキル置換ラクトン、より好ましくはε−カプロラクトンまたはバレロラクトンである。伸長部分Yの分子量は、好ましくは500〜4,000g/molの範囲にある。
【0017】
式III中の「A」は、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸などから選択される一官能カルボン酸とすることができる。
【0018】
式I中の「B」は、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、α,α−ビス−(ヒドロキシメチル)吉草酸、α,α−ビス(ヒドロキシ)プロピオン酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸などから選択される、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する一官能カルボン酸とすることができる。
【0019】
より好ましくは、Bは、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、またはα,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸である。
【0020】
式I中の「R1およびR2」は、好ましくは同じ残基(R)であり、酢酸、酪酸、ヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸など;またはヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、および種々の脂肪酸から選択される一官能カルボン酸とすることができる。
【0021】
式I中の「R1およびR2」は、アルキル(ヒドロキシ)カルボン酸部分を含有するポリマー部分であってもよい。酸価が好ましくは10〜200mgKOH/gであるポリヒドロキシステアリン酸(PHSA)、または分子量が200〜5,000g/molの範囲にある酸末端ポリエーテルが好ましい。
【0022】
より好ましくは、「R1およびR2」は、ラウリン酸、ステアリン酸、酸価が20〜200mgKOH/gであるポリヒドロキシステアリン酸から選択される。
【0023】
好ましい例
式Iにおいて、qは、好ましくは5〜500の数であり、nは好ましくは2〜4の数である。式Iにおいて、RとBのモル比がkn(k−1)/(kn−1)より低いなら、Xは親水性であり、および−OH末端を有するBである。それに対して、RおよびBのモル比がkn(k−1)/(kn−1)より上なら、Xが疎水性であり、およびRである。「k」はBに対するヒドロキシル基の数である。
【0024】
Tは、好ましくは、ポリエチレンイミンまたは変性ポリエチレンイミン、より好ましくはMWが200〜100,000g/molの範囲のポリエチレンイミンである。
【0025】
式III中のAは、好ましくは、酢酸、プロピオン酸またはn−酪酸である。
【0026】
側鎖モノマーを有するPEIに対する第一級および第二級アミン基の変性率は、好ましくは25〜75%の範囲にある。
【0027】
合成
出発原料の入手しやすさ
PEI原料は、Nippon Shokubaiなどの商品である。PVA原料は、Mitsubishi Kasei製の商品であり、そしてPAA原料は、Nitto Boseki製の商品である。酢酸エチル、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、脂肪酸およびラクトンは、市販品である。ポリヒドロキシステアリン酸は、当技術分野において公知の方法により、容易に製造することができる。
【0028】
液状のPEIベースの分散剤を得るために、本発明は、従来技術における「共重合」手法とは全く異なる、コンバージェント(convergent)またはディバージェント(disvergent)手法のいずれかによる「樹状」部分の分散剤化学構造への導入に焦点をあてる。
【0029】
「樹状」部分とは、分岐状モノマー(少なくとも1つの分岐点を含有する、すなわちAB2、またはAB3型モノマー、例えば2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸)の繰返反応によって合成された部分を意味する。
【0030】
「コンバージェント」手法とは、分散剤の表面になるところから始まり、中心またはコアの分子方向に、放射状に進行する生長プロセスを意味する。アーム樹状部分は、分岐状モノマーと疎水性部分の間での、および/または分岐状モノマーの間での(トランス)エステル化によって、最初に合成される。結果として得られたものは、同様の反応で、(変性)PEIに向かって放射状に進行する。分岐状モノマーと疎水性部分の比を調節することによって、極性、したがって樹状分散剤の相溶性を容易に最適化することができる。
【0031】
「ディバージェント」手法とは、層状の枝世代の規則正しい配列を得るために、放射状に外側の分子方向へ、幾何学的に進行する段階的な枝への枝の付加の連続シリーズによって起こる分子生長プロセスであって、各高分子が、コア世代、1層以上の内部の層世代、および表面の外側の層世代を含み、それぞれの世代が一つの分岐状接合点を含むプロセスを意味する。(変性)PEIおよび分岐状モノマーの間での、および/または分岐状モノマーの間での(トランス)エステル化を、最初に、分岐状モノマーの(変性)PEIへの段階的付加として操作する。次に、上の結果として得られたものに疎水性部分をエステル化によってグラフトし、樹状分散剤の極性、したがって相溶性を調節する。最適化された条件の下で、貯蔵安定性、白色顔料組成物中でより少ない黄変、青色顔料に対して特に良好な分散効果、低粘度の顔料濃厚物、種々のレットダウン(let down)システムにおけるドローダウン(draw-down)およびポアアウト(pour-out)の性能を有する液状分散剤が得られる。
【0032】
したがって、本発明は、BおよびR、またはBおよびXを(トランス)エステル化して樹状アームを最初に生成し、次にこのアームをコア分子Tに順にグラフトすることを特徴とする「コンバージェント」手法による、式Iで表されるポリアミンベースの樹状分散剤の製造方法に関するものである。
【0033】
さらに、本発明は、最初にBをコア分子Tにグラフトし、その後Bを次々に上で得られたポリマーの末梢のBに1層ずつグラフトし、最後に、Rを上述の樹状ポリマーにグラフトすることを特徴とする「ディバージェント」手法による、式Iで表されるポリアミンベースの樹状分散剤の製造方法に関するものである。
【0034】
反応温度は、N2雰囲気下、100℃〜200℃、好ましくは150℃〜180℃の範囲である。
【0035】
得られる生成物の酸価は、5〜25mgKOH/gである。
【0036】
得られる生成物を、次に図示する。
【0037】
【化3】

【実施例】
【0038】
中間体1〜4の合成
中間体1〜4は全て、次の方法により製造した:2,2−ビス−(ヒドロキシルメチル)プロピオン酸(BMPA、Aldrich、MW134)、ε−カプロラクトン(CL、MW114)100.0g、およびジブチルスズジラウレート(DBTDL)(5.0×10-4w/w)を、窒素下攪拌し、固形分が98%に達するまで170℃で加熱した。表1に結果を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
中間体5〜12
中間体5〜12は全て、次の方法により製造した:PEI(ポリエチレンイミン)、Epomin SP−200(SP200、Nippon Shokubai、MW10,000)、ε−カプロラクトン(CL)100.0g、およびジブチルスズジラウレート(DBTDL)(5.0×10-4w/w)を、窒素下、攪拌し、170℃の範囲で固形分が98%に達するまで1.0〜30時間加熱した。表2に結果を示す。中間体7および9の場合、PEIをEpomin SP−018(SP018、Nippon Shokubai、MW1,800)でも置き換えた。中間体11および12の場合、PEIを、それぞれポリビニルアミン(PVA200、Mitsubishi Kasei、MW10,000)およびポリアリルアミン(PAA150、Nitto Boseki、MW10,000)に置き換えた。
【0041】
【表2】

【0042】
中間体13
PEI、SP200(20g)および酢酸エチル30gを攪拌し、固形分が55%に達するまで90℃の範囲で還流した。残留物を真空下除去した後、生成物を、アミン価(amine number)が650mgKOH/gの粘稠な液体として得た。
【0043】
中間体14
これは中間体13と同様に製造したが、固形分が60%に達するまで還流した。生成物をアミン価が430mgKOH/gの粘稠な液体として得た。
【0044】
中間体15
これは中間体13と同様に製造したが、SP200をSP018に置き換えた。生成物をアミン価660mgKOH/gの粘稠な液体として得た。
【0045】
中間体16
これは中間体13と同様に製造したが、SP200をPAA150に置き換えた。生成物をアミン価が360mgKOH/gのワックス状固体として得た。
【0046】
中間体17
これは中間体14と同様に製造したが、SP200をPVA200に置き換えた。生成物をアミン価が440mgKOH/gのワックス状固体として得た。
【0047】
中間体18〜20
中間体18〜20は全て、次の方法により製造した:12−ヒドロキシステアリン酸100.0gおよびDBTDL0.10gを、窒素下、攪拌し、200℃の範囲で5〜12時間加熱した。副生物の水を、ベンゼンと共に還流することにより除去した。種々の反応時間により、種々の酸価の生成物を得た(表3)。
【0048】
【表3】

【0049】
「コンバージェント」手法による実施例
【0050】
〔実施例1〕
2,2−ビス−(ヒドロキシルメチル)プロピオン酸(BMPA)13.4gおよびラウリン酸40.0gを、窒素下、攪拌し、酸価が115mgKOH/gに低減するまで180℃で加熱した(第1工程)。次に、Epomin SP−200(12.9g)を、上で得られたものに加え、窒素下、攪拌し、酸価が25.3mgKOH/gに低減するまで180℃で加熱した(第2工程)。生成物をアミン価180mgKOH/gのワックス状固体として得た。
【0051】
〔実施例2〜50〕
実施例2〜50は全て、前駆物質の量を次の表4に詳述のように変えたほかは実施例1と同様の方法で製造した。表5に結果を示す。
【0052】
【表4】



【0053】
【表5】



【0054】
「ディバージェント」手法による実施例
【0055】
〔実施例51〕
Epomin SP200(12.9g)を窒素下、攪拌し、180℃で加熱し、次に2,2−ビス(ヒドロキシルメチル)プロピオン酸(BMPA)13.4gを段階的に加えた。上で得られたものを、酸価が6.5mgKOH/gに低減するまで180℃で加熱した(第1工程)。次に、ラウリン酸40.0gを、上で得られたものに加え、窒素下、攪拌し、酸価が5.0mgKOH/gに低減するまで180℃で加熱した(第2工程)。生成物をアミン価が85mgKOH/gのワックス状固体として得た。
【0056】
〔実施例52〜102〕
実施例52〜102は全て、次の表6に詳述のように前駆物質の量を変えたほかは、実施例51と同様の方法で製造した。表7に結果を示す。
【0057】
【表6】





【0058】
【表7】



【0059】
性能のスクリーニング
得られたサンプルの分散効果を試験するために、樹脂を含まない顔料濃厚物を配合1にしたがって調製した。このミルベースをScandex Shaker中、ガラスビーズを使って、1.5時間分散させた。その後ミルベースをろ過し、室温で一晩保管した。試験用レットダウン(配合2)は、焼付けエナメル、およびCABベースコートをベースとする。配合3は、焼付けエナメルおよびCABペイント用ペイント配合を示す。ペイント配合物を、2000rpmで高速攪拌の下5分間混合し、ポリエステルフィルム上にフィルム厚さ35〜75μmで付着した。ドローダウンを調製した後、ペイントの残りをポアアウト試験用に酢酸ブチルで1:1に希釈した。
【0060】
最初に、競合するグレードを、特許、例えば国際公開公報第9421368号、米国特許第5,700,395号、米国特許第6,583,213号、および米国特許第6,599,947号などにしたがって合成した。これらのグレードの性能を、配合1、2、および3により試験した。その結果、競合品Aは他よりも良好に機能することが分かり、そこでこれを本テキストにおいて代表的な分散剤とみなした。
【0061】
【表8】

【0062】
【表9】

【0063】
【表10】

【0064】
表5および7の実施例1〜102の性能を、配合1、2および3により試験した。顔料濃厚物は良く流れ、それらの粘度は、競合品Aと同等またはそれより低いことを認めた。顔料濃厚物のレオロジー的挙動を、Thermo-Haake RheoStress 600装置を用いてCRモードで測定した。顔料濃厚物の初期粘度(η0)および動力学的粘度(dynamic viscosity)(ηt)を表8に示す。粘度曲線によれば、ピグメントホワイト濃厚物(PW21)はニュートン流れを有し、一方、ピグメントブラック濃厚物(スペシャルブラック−100)は疑似塑性流れを示した。ピグメントブルー濃厚物(PB15:2)は、塑性流れおよびチキソトロープ性を有するが、低剪断応力(表8中、T)下で容易に流れることができた。概して、いくつかの実施例、例えば16〜19、46、50、58、69、79、88、97などを、代表的な分散剤とみなした。
【0065】
【表11】

【0066】
焼付けエナメルペイント、CABペイントにおいて、分散剤の性能は、例えば光沢が高く(20°で、平均で80より上)、シーディング(seeding)がなく、ラブ・アウト(rub-out)がなく、色の濃さが良好で、白色顔料の黄変がより少ない(表9)満足な結果で、概して極めて良好である。特に、本分散剤は、表10に示すTPAペイントシステム(配合4)においさえも、競合品と比べて、青色顔料に対してより良好な分散効果を与えた。
【0067】
【表12】

【0068】
【表13】

【0069】
【表14】

【0070】
溶解性試験において、サンプルをまず種々の溶剤に濃度50%(w/w)で溶解し、次に、それぞれ25℃および−5℃で1ヶ月間保持した。明らかに、本発明の分散剤は競合品と比べて改良された溶解性を与えた(表11)。本発明のサンプルは、競合品Aよりも、結晶化が少なく、種々の溶剤システムにおける相溶性が良好であることが分かった。
【0071】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化4】


(式中、
Tは、ポリエチレンイミン(PEI)もしくは変性PEI部分、ポリビニルアミン(PVA)もしくは変性PVA、またはポリアリルアミン(PAA)もしくは変性PAAから選択され、
Bは、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する一官能カルボン酸部分、または少なくとも2個のヒドロキシル基を有しそのヒドロキシル基の1個以上がヒドロキシアルキル置換された一官能カルボン酸部分から選択される分岐状モノマーであり、
1およびR2は互いに独立に、炭素原子数3〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪酸部分、一官能カルボン酸部分、またはMWが100〜10,000g/molの範囲にあるC3〜C24アルキル(ヒドロキシル)カルボン酸部分を含有するポリマー部分から選択される疎水基であり、
Xは、−OH末端基を有するB、またはR1もしくはR2であり、
qは、5〜2000の数であり、ただしqは、PEI、PVA、PAAのアミン基全ての合計より少なく、
nは、1〜6の数である)
の分散剤。
【請求項2】
変性PEI、変性PVA、および変性PAAが式IIまたはIII:
【化5】


(式中、
Yは、ラクトン、アルキル置換ラクトンまたはヒドロキシカルボン酸から選択される、伸長モノマーであり、
Aは、1〜10個の炭素原子を含有する一官能カルボン酸から選択される側鎖モノマーであり、
mは1〜40の数であり、
pは1〜1000の数であり、ただしpは、主鎖PEI、PVAまたはPAAの第一級および第二級アミン基の合計より少ない)
の基である、請求項1記載の分散剤。
【請求項3】
Tがポリエチレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンである、請求項1記載の分散剤。
【請求項4】
Bが2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、またはα,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸である、請求項1記載の分散剤。
【請求項5】
1およびR2が、同一であり、ラウリン酸、ステアリン酸または酸価が20〜200mgKOH/gのポリヒドロキシステアリン酸から選択される、請求項1記載の分散剤。
【請求項6】
Yがε−カプロラクトンまたはバレロラクトンである、請求項1記載の分散剤。
【請求項7】
BおよびR1およびR2、またはBおよびXを(トランス)エステル化して樹状アームを最初に生成し、次にこのアームをコア分子Tに順次グラフトすることを特徴とする「コンバージェント」手法による、式Iで表されるポリアミンベースの樹状分散剤の製造方法。
【請求項8】
最初にBをコア分子Tにグラフトし、その後Bを次々に前記で得られたポリマーの末梢のBに1層ずつグラフトし、最後に、Rを前記樹状ポリマーにグラフトすることを特徴とする「ディバージェント」手法による、式Iで表されるポリアミンベースの樹状分散剤の製造方法。
【請求項9】
2雰囲気下、反応温度が100℃〜200℃、好ましくは150℃〜180℃の範囲にある、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
得られる生成物の酸価が5〜25mgKOH/gである、請求項9記載の方法。

【公表番号】特表2010−505012(P2010−505012A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529656(P2009−529656)
【出願日】平成19年9月17日(2007.9.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059766
【国際公開番号】WO2008/037612
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】