説明

ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法

【課題】反応後に触媒を容易に除去でき、着色や臭気が発生しないポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法を提供する。
【解決手段】テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及び下記一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で、活性水素基含有化合物(A)にアルキレンオキサイド(B)を付加重合させて得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを、100℃〜180℃で処理するポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法。


(一般式(1)中、Mはアルミニウム原子又はホウ素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールは、ポリウレタン原料、化粧品原料、界面活性剤として使用されている。このポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールはアルコールやグリコール、多官能アルコールやアミン化合物などの活性水素基含有化合物にアルキレンオキサイドを付加して製造される。この付加反応において、通常、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属化合物が触媒として使用されている。
【0003】
ポリウレタン原料として使用されるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールでは、触媒残渣であるアルカリ金属イオンや塩基性成分がポリウレタン製造の際の反応性あるいは生成するポリウレタンの物性に悪影響を与えることが知られている。また、その他の産業用途においても、これらの触媒残渣が品質を低下させ、人体にも悪影響を及ぼすことが知られている。従って、ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造においては、反応後に触媒を除去する必要があり、従来から吸着剤による吸着処理、酸による中和処理などが行われている。しかしながら、これらの処理は処理後に濾過を行う必要があり、触媒やその中和物がポリオキシアルキレンモノオール又はポリオール中に溶解あるいは微細な粒子として微分散しているためにこれらを完全に除去することが困難である。また、ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールは粘度の高い液体であるため、処理及びその後の濾過に多大な時間とコストを要し、生産性の面で改善が求められている。
【0004】
これらの問題を解決する手段として、加熱処理により分解でき、その分解生成物を留去により除去できるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを触媒として使用する方法が提案されている(例えば特許文献1)。しかしながら、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドは従来のアルカリ金属化合物と比べて重合活性が低く、アルカリ金属化合物を使用して得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールと同等の分子量のものを製造するのが困難であったり、反応時間が著しく長くなるという問題がある。
【0005】
一方、テトラアルキルアンモニウム化合物とトリアルキルアルミニウムを併用すると触媒活性が向上し、速い反応速度でアルキレンオキサイドの重合を行えることが報告されている(特許文献2)。しかしながら、特許文献2の方法は触媒の効率的な除去を目的としておらず、実施例のいずれにおいても使用されている炭素数2以上のアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウム化合物は、ホフマン分解により不飽和含有化合物に分解するが分解物の分子量が大きく沸点が高いため、これらがポリオキシアルキレンモノオール又はポリオール中に微量残存し、経時的に着色や臭気等の品質低下を引き起こす原因となる。したがって、特許文献2の方法では着色や臭気等の品質低下を防ぐことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−38323号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0173576号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、反応後に触媒を容易に除去でき、着色や臭気が発生しないポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に至った。
即ち、本発明のポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及び下記一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で、活性水素基含有化合物(A)にアルキレンオキサイド(B)を付加重合させて得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを、100℃〜180℃で処理することを要旨とする。
【化1】

(一般式(1)中、Mはアルミニウム原子又はホウ素原子を表す。R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルコキシ基である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、反応後に触媒を容易に除去できる。また、本発明の製造方法により得られたポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールは着色や臭気の発生が極めて少ない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
アルキレンオキサイド(B)の付加重合は、活性水素含有化合物(A)にアルキレンオキサイド(B)を付加する反応である。活性水素含有化合物(A)としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基及び酸アミド基を有する化合物が挙げられる。活性水素含有化合物(A)の具体的な例としては、次の(A1)〜(A7)が挙げられる。これらは1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0011】
(A1) 水
(A2) アルコール
1価アルコールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜40のアルコールが含まれ、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
2価アルコールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数2〜40の2価アルコールが含まれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。
3価アルコールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数3〜80の3価アルコールが含まれ、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物及びトリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
4〜8価アルコールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数5〜80の4〜8価アルコールが含まれ、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース、ショ糖、ペンタエリスリトールのプロピレンオキシド付加物及びショ糖のプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0012】
(A3)フェノール
1価フェノールとしては、炭素数6〜40の1価フェノールが含まれ、フェノール及びクレゾール等が挙げられる。多価フェノールとしては、炭素数1〜40の多価フェノールが含まれピロガロール、カテコール、ヒドロキノン及びビスフェノールA等が挙げられる。
【0013】
(A4) カルボン酸
1価カルボン酸としては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜40の1価カルボン酸が含まれ、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、ラウリン酸、オレイン酸及びリノール酸等が挙げられる。2価カルボン酸としては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数4〜40の2価カルボン酸が含まれ、マレイン酸、コハク産、アジピン酸及びフタル酸等が挙げられる。3〜8価カルボン酸としては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜炭素数1〜40の3〜8価カルボン酸が含まれ、アクリル酸の3〜8量体等が挙げられる。
【0014】
(A5) アミン
1価アミンとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数2〜40の1価アミンが含まれ、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン及びジオレイルアミン等が挙げられる。2価アミンとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜40の2価アミンが含まれ、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びn−ブチルアミン等が挙げられる。3〜5価アミンとしては、アンモニア並びに直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数2〜40の3〜5価アミンが含まれ、アンモニア、N−メチルアミノエチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン及びジプロピレントリアミン等が挙げられる。
なお、アミンの価数は、アミンの有する活性水素の数を意味する。
【0015】
(A6) チオール
チオールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜80の1価及び多価チオールが含まれ、上記(A2)の1〜5価アルコールとチオ尿素との反応により得られる1〜5官能のチオール、及びエピクロルヒドリン又はエピクロルヒドリンの2〜5量体と水硫化ナトリウムとの反応により得られる1〜5官能のチオール等が挙げられる。
(A7) 酸アミド
酸アミドとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜40の1価及び多価酸アミドが含まれ、オレイン酸アミド及び不飽和モノカルボン酸アミドの2〜5量体(モノカルボン酸アミドとしてはアクリルアミド及びメタクリルアミド等)等が挙げられる。
【0016】
活性水素含有化合物(A)のうち、入手しやすさの観点から、(A1)〜(A7)の化合物が好ましく、さらに好ましくは(A1)〜(A3)であり、特に好ましくは(A2)である。得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの粘度が高くなりすぎず取り扱いが容易である観点から、(A)の活性水素の数は1〜8が好ましく、さらに好ましくは1〜4である。
【0017】
アルキレンオキサイド(B)としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロルヒドリン及びグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのうち、反応性の観点から、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びこれらの混合物が好ましい。前記アルキレンオキサイド(B)は1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。付加反応は、ランダム付加でも、ブロック付加でも構わない。
【0018】
本発明の製造方法は、一般式(1)で表される化合物(C)を必須成分として使用する。化合物(C)とテトラメチルアンモニウムとの併用は、重合活性の低いテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの触媒活性を飛躍的に向上させる。
【0019】
【化2】

【0020】
一般式(1)において、Mはアルミニウム原子又はホウ素原子を表す。Mがこれら以外の原子であると、重合活性が向上せず好ましくない。また、アルミニウム及びホウ素は両性元素であるため、これらが中心元素(M)であると、(C)を加水分解した場合に加水分解物が中性化合物となるため、ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオール中に残存しても品質への悪影響はない。
一般式(1)において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルコキシ基である。炭素数が9以上であると、立体障害のため重合活性が向上せず好ましくない。
【0021】
化合物(C)の具体的な例としては、次の(C1)〜(C4)が挙げられる。これらは1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0022】
(C1)アルキルアルミニウム
例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、エチルジイソブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリへキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム及びトリオクチルアルミニウム等が挙げられる。
(C2)アルミニウムアルコキシド
アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド及びアルミニウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
(C3)アルキルボラン
例えば、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリイソブチルボラン、トリn−ブチルボラン、トリヘキシルボラン、トリシクロヘキシルボラン、トリオクチルボラン及びトリフェニルボラン等が挙げられる。
(C4)ホウ酸エステル
ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリn−ブチル、ホウ酸トリイソブチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリフェニル及び2−メトキシ−4,4,5,5−1,3,2−ジオキサボロラン等が挙げられる。
【0023】
化合物(C)のうち、重合活性の観点から(C1)又は(C3)の化合物が好ましく、さらに好ましくは(C1)の化合物である。
【0024】
本発明の製造方法において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの使用量は、活性水素含有化合物(A)とアルキレンオキサイド(B)の合計重量に対して、重合活性及び得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの粘度上昇やゲル化を防止する観点から、0.0001〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜5重量%である。
【0025】
本発明の製造方法において、化合物(C)の使用量は、活性水素含有化合物(A)とアルキレンオキサイド(B)の合計重量に対して、重合活性及び得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの粘度上昇やゲル化を防止する観点から、0.0001〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜5重量%である。
【0026】
本発明の製造方法において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドと化合物(C)との使用割合(テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのモル数:化合物(C)のモル数)は、重合活性及び得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの粘度上昇やゲル化を防止する観点から、10:1〜1:10が好ましく、さらに好ましくは2:1〜1:5である。
【0027】
本発明のポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法では、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及び一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で、活性水素基含有化合物(A)にアルキレンオキサイド(B)を付加重合させて得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを、100℃〜180℃で処理して前記テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを分解する。
本発明の製造方法としては、活性水素基含有化合物(A)とテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを混合した後、生成水を留去しアルコラートを調製する工程(工程1)、次いで化合物(C)及びアルキレンオキサイド(B)を加え付加重合させる工程(工程2)、次いでポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを含有する混合物を処理し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを熱分解及び減圧下で除去する工程(工程3)を経てポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを製造する方法が好ましく例示できる。
【0028】
工程1において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドと活性水素基含有化合物(A)の混合方法は特に限定されず、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの溶剤溶液を(A)に添加し、溶剤及び生成水を減圧下で留去することによりアルコラートが調製される。溶剤及び生成水の留去する際の温度は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの熱安定性の観点から、120℃以下が好ましく、さらに好ましくは20〜100℃である。
【0029】
工程2において、化合物(C)の添加方法は特に限定されず、例えば化合物(C)単独を添加してもよいし、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフランなどの不活性溶剤の溶液として加えてもよく、(C)をアルキレンオキサイド(B)と混合したのち加えてもよい。また、(C)は、一度に全量を加えてもよいし、複数回に分割して添加してもよい。アルキレンオキサイド(B)の添加方法は特に限定されず、一度に全量を加えてもよいし、複数回に分割して添加してもよい。異種のアルキレンオキサイド(B)を逐次的に添加し、添加するごとに重合反応を完結させることで、ブロック共重合体を得ることもできる。化合物(C)とアルキレンオキサイド(B)の添加順序は、特に制限は無く、いずれか一方を先に加えてもよいし、同時に加えてもよい。
【0030】
重合を行う条件は、特に限定されず、用いる活性水素基含有化合物(A)やアルキレンオキサイド(B)、化合物(C)の種類やテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの使用量、目的とする分子量などに応じて決定すればよい。重合時の圧力は、従来のアルキレンオキサイドの付加反応の条件で行うことができる。重合時の温度は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの熱安定性の観点から−40〜140℃が好ましく、さらに好ましくは−20〜120℃である。重合時間は、反応温度や圧力にもよるが、5分から24時間であることが好ましい。
【0031】
所定のアルキレンオキサイド(B)を付加重合させた後、工程3においてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを処理して熱分解させる。処理の温度は、100℃〜180℃であり、好ましくは120℃〜170℃である。処理温度が100℃より低いと、熱分解反応が十分な反応速度で進行しない。また、180℃を超えると、得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールが着色等の変質を起こす。
この処理において、少量の水を添加することで分解反応を加速することができる。水の添加量は、分解反応及び脱水の効率の観点から、反応に用いた活性水素基含有化合物(A)とアルキレンオキサイド(B)の合計重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。水の添加方法は特に限定されず、一度に全量を加えてもよいし、複数回に分割して添加してもよい。
【0032】
本発明の製造方法によれば、付加重合の触媒として使用するテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが、上記の処理によって、不飽和基を含まない低沸点化合物に分解することができ、反応後に触媒を容易に除去できる。
【0033】
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの熱分解物は減圧下にて除去されることが好ましい。除去する際の温度及び圧力は、上記の処理温度と同温度で、−0.1〜−0.01MPaの減圧下で行うことが好ましい。減圧除去時間は、0.1〜5時間が好ましく、さらに好ましくは0.5〜2時間である。また、減圧除去は、前記処理を−0.1〜−0.01MPaの減圧下で行うことで熱分解と同時に行うこともできる。さらに、減圧除去を効率化するため、水を添加することもできる。水の添加量は、反応に用いた活性水素基含有化合物(A)とアルキレンオキサイド(B)の合計重量に対して、熱分解物及び水の留去効率の観点から、0.1〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10%である。水の添加方法は特に限定されず、一度に全量を加えてもよいし、複数回に分割して添加してもよい。
【0034】
本発明の製造方法で得られたポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールは、着色や臭気が極めて少なく、長期保存中もこれらが維持される。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に規定しない限り、部は重量部を意味する。
【0036】
なお、得られたポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの分析は水酸基価と総不飽和度の測定により行った。それぞれの測定方法は以下の通りである。
水酸基価(mgKOH/g):JISK1557−1(無水フタル酸/ピリジン法)
総不飽和度(meq/g) :JISK1557−3(酢酸第二水銀法)
【0037】
<実施例1>
オートクレーブに活性水素基含有化合物としてグリセリンのPO8.8モル付加物200部、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部を仕込み、混合後、60℃減圧下で脱水した。次いで、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部を投入し、70℃でプロピレンオキサイド800部を2時間かけて連続的に導入した後、同温度で2時間熟成させた。水を30部投入した後、150℃で2時間、20torrの減圧下で揮発成分を留去した。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は57.2mgKOH/g、総不飽和度は0.006meq/gであった。
【0038】
<実施例2>
実施例1と同じ操作を行い、プロピレンオキサイドを導入した後、2時間熟成させた。その後、70℃でエチレンオキサイド170部を1時間かけて導入し、同温度で2時間熟成させた。水を30部投入した後、150℃で2時間、20torrの減圧下で揮発成分を留去した。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は48.2mgKOH/g、総不飽和度は0.006meq/gであった。
【0039】
<実施例3>
実施例1において、グリセリンのPO8.8モル付加物200部に代えてジエチレングリコール50部を、プロピレンオキサイド800部に代えて同950部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は56.4mgKOH/g、総不飽和度は0.007meq/gであった。
【0040】
<実施例4>
実施例1において、グリセリンのPO8.8モル付加物200部に代えてトリプロピレングリコールモノメチルエーテル200部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンモノオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は55.8mgKOH/g、総不飽和度は0.006meq/gであった。
【0041】
<実施例5>
実施例1において、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部に代えてアルミニウムイソプロポキシド6部を用い、熟成時間を2時間から8時間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は58.5mgKOH/g、総不飽和度は0.011meq/gであった。
【0042】
<実施例6>
実施例1において、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部に代えてトリn−ブチルボランの18重量%テトラヒドロフラン溶液32部を用い、熟成時間を2時間から6時間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は57.8mgKOH/g、総不飽和度は0.008meq/gであった。
【0043】
<実施例7>
実施例1において、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部に代えてホウ酸トリブチル7部を用い、熟成時間を2時間から10時間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は59.5mgKOH/g、総不飽和度は0.011meq/gであった。
【0044】
<比較例1>
実施例1において、トリイソブチルアルミニウムを加えないこと以外は実施例1と同様の操作を行った。付加重合はほとんど進行せず、未反応のPOが回収された。得られたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は264.5mgKOH/gであり、原料(水酸基価278.4mgKOH/g)とほとんど変わらない値であった。
【0045】
<比較例2>
実施例1において、水を30部投入し150℃で2時間、20torrの減圧下で揮発成分を留去する操作を行わなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは刺激臭のある淡黄色透明液状で、水酸基価は57.5mgKOH/g、総不飽和度は0.006meq/gであった。
【0046】
<比較例3>
実施例1において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部に代えてテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの35重量%水溶液7部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の淡黄色透明液状で、水酸基価は55.6mgKOH/g、総不飽和度は0.007meq/gであった。
【0047】
<比較例4>
実施例1において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部に代えてテトラブチルアンモニウムヒドロキシドの40重量%水溶液11部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の淡黄色透明液状で、水酸基価は57.7mgKOH/g、総不飽和度は0.008meq/gであった。
【0048】
実施例1〜7及び比較例2〜4で得たポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールについて、製造直後及び熱安定性試験後のハーゼン単位色数を、JISK−0071−1の方法で測定した。結果を表1に示す。なお、熱安定性試験の条件と表1における化合物の略号は以下の通りである。
【0049】
[熱安定性試験の条件]
220mLのガラス製容器に酸化防止剤を含まないポリオキシアルキレンモノオール又はポリオール200mLを入れ、ガラス製容器内の空間部分を窒素置換後密封し、50℃の恒温器内で90日間保管した。
【0050】
[化合物の略号]
(1)アルキレンオキサイド
PO:プロピレンオキサイド
EO:エチレンオキサイド
(2)塩基触媒
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
TEAH:テトラエチルアンモニウムヒドロキシド
TBAH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
(3)化合物(C)
Al(i−C493:トリイソブチルアルミニウム
Al(O−i−C493:アルミニウムイソプロポキシド
B(n−C493:トリn−ブチルボラン
B(O−n−C493:ホウ酸トリn−ブチル
【0051】
【表1】

【0052】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜7で得られたポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールは、比較例2〜4との比較において、製造直後の色相が良好で、熱安定性試験後も着色がほとんどないことが分かる。触媒の熱分解除去を行わない比較例2及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドよりも炭素数の多いアンモニウムを用いた比較例3及び4では、製造直後にやや着色が見られ、熱安定試験中に色相が悪化していくことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールは、長期にわたって着色等の品質低下がないことから、ウレタン用原料及び化粧品原料、界面活性剤などに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及び下記一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で、活性水素基含有化合物(A)にアルキレンオキサイド(B)を付加重合させて得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを、100℃〜180℃で処理するポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、Mはアルミニウム原子又はホウ素原子を表す。R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルコキシ基である。)
【請求項2】
前記(B)がプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド又はこれらの混合物である請求項1に記載のポリオキシアルキレンモノール又はポリオールの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により製造されるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオール。

【公開番号】特開2012−116904(P2012−116904A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265923(P2010−265923)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】