説明

ポリオレフィンベースの可剥性シール

本発明は、ポリオレフィンベースのヒートシール可能で可剥性のシールに関する。可剥性シールは、5〜98重量パーセントのプロピレンベースのプラストマーまたはエラストマーを含み、ポリエチレン、ポリブチレン、およびスチレン系ポリマーならびにこれらの混合物からなる群から選択される2〜95重量パーセントの第2のポリマーを含む。本発明は、不正開封防止機能の付いた可剥性シールにも関する。本発明はヒートシール可能な、可剥性シールの製造方法および使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンベースのヒートシール可能で可剥性のシール(ピーラブルシール、peelable seal)に関する。本発明は、不正開封防止機能の付いた可剥性シールにも関する。本発明は、ヒートシール可能な可剥性シールの製造方法および使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール可能でピーラブルなフィルム(本明細書で「可剥性シール」とも呼ぶ)は、例えば食品または医療用具を含む容器を一時的に閉めるために大規模に使用される。使用するとき、消費者がピーラブルフィルムのヒートシールされた層を引き離すことによって包装を開封する。消費者に受け入れられるためには、ヒートシール可能なピーラブルフィルムに付随するいくつかの特性が望まれる。例えば、フィルムは容器または袋の漏れ防止の密閉性を提供すべきである。袋を密封するためには、ヒートシールすることが一般に使用されている。所望の内容物を袋に詰めると同時に袋を成形するために、種々の装置が製作されてきた。これらの装置は一般に、縦型製袋充填機および横型製袋充填機として知られている。あらかじめ製造された袋と同様、他の種類の成形機を使用することもできる。
【0003】
典型的にこれらの機械は、平らな1枚のフィルムをチューブ形状の袋に仕上げる成形用環または棒を有している。フィルムを袋の形状に密封するために、熱い金属のシーリングジョーを、開放位置から閉鎖位置に移動させて、フィルムに接触させる。シーリング加工の間、フィルムの外層は、シーリングジョーの熱い金属表面と直接接触する。したがって熱は、フィルムの外層を通して伝えられて、内側のシーラント層を溶融、融合して、シールを形成する。一般に、外層は内側のシーラント層よりも高い融点を有する。というのは、内側のシーラント層はシールを成形するために溶融させる一方、フィルムの外層は溶融せず、シーリングジョーに貼り付かない。シーリングジョーを再び開いた後、フィルムを室温まで冷却する。
【0004】
内側のシーラント層が室温まで冷却するまでの間、シールの完全性を維持できるべきである。接着層またはシーラント層が、まだ暖かいまたは溶融状態である間、シールのクリープに耐える能力を、一般に「ホットタック」と呼ぶ。良好なシールを形成するために、シール可能なピーラブルフィルムのホットタックは、十分であるべきである。
【0005】
十分なホットタックに加えて、速い包装ライン速度の確保を助ける低温シール開始温度ならびに圧力および温度などの加工条件の変動に適応することができる広いシーリングウィンドウ(window)を有することも望ましい。広いシーリングウィンドウは、熱に弱い製品の高速包装も可能にすると同時に包装または充填速度の変化に対するある程度の許容も提供する。
【0006】
シール可能なピーラブルフィルムの「シール可能」特性に加えて、包装または袋に易開封性のシールを提供するために必要とされる望ましい「可剥」特性も有するべきである。一般に可剥性は、包装を開ける過程で2つのうちのどちらの完全性も傷つけることなく2つの材料または基材を引き離す能力について言及する。シールを引き剥がすために必要な力を、「シール強度」または「ヒートシール強度」と呼び、ASTM F88−94に準拠して測定することができる。望ましいシール強度は、エンドユーザーの具体的な用途によって変動する。シリアル用のライナー(liner)、スナック食品の包装、クラッカーの筒およびケーキミックス用のライナーなどのフレキシブル包装の用途のためには、望ましいシール強度は、一般に1〜9ポンド/インチの範囲である。具体的な目標は個々の製品の要求によって変動するが、例えば、易開封性のシリアルボックスのライナーのためには、一般に2〜3ポンド/インチの範囲のシール強度が指定される。フレキシブル包装の用途に加えて、シール可能なピーラブルフィルムは、利便品(convenience items)(例えばプティングなどのスナック食品)用および医療用具用の蓋などの硬質包装の用途に使用することもできる。典型的な硬質包装は1〜5ポンド/インチのシール強度を有する。シール層は、蓋もしくは容器またはその両方にあってもよい。
【0007】
ヒートシール可能なピーラブルフィルムのためのその他の望ましい特性には、低い摩擦係数および良好な耐酷使性が挙げられる。低い摩擦係数は、シーラント層を製造設備および包装設備で、円滑および効率的に加工することが確実にできるようにし、特に縦型製袋充填機にとって重要である。良好な耐酷使性および靭性は、例えばシリアルボックスのライナーにおいて、不規則な形状の硬いシリアルによる裂け目および穴に耐えるために望ましい。その他の特性には、味および臭いの性能ならびにバリア性または透過性が挙げられる。
【0008】
一部の可剥性シールには、一度包装を開封しても再び密封することができることを意味する再シール可能なものもある。用途によっては、例えば包装が不正開封の対象であったとき、それを示すことができるように、包装が開封されたとき識別できることが重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ヒートシール可能なピーラブルフィルムは、一般に1種または複数のポリマー樹脂から製造する。ヒートシール可能なピーラブルフィルムの得られる特性は、フィルムを形成するために使用する樹脂の種類に大きく依存している。例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)およびエチレンメチルアクリレート(EMA)のコポリマーは、優れたヒートシール特性を提供する。しかしながら、これらのコポリマーで生産されるシールは、フィルムへの損傷なしに通常は引き離すことができないものである。この問題を軽減するために、ポリブチレンをEVAポリマーと混合し、ヒートシール可能なピーラブルフィルムを生産する。フィルムの可剥性は改良されるが、ヒートシール可能なピーラブルフィルムは、EVAの存在に起因するいくらかの不快臭を有する。ポリブチレンの使用に加えて、SURLYN(登録商標)などのある種のイオノマーをEVAと混合して、ヒートシール可能なピーラブルフィルムを生産する。フィルムがピーラブルである一方、フィルムを引き離すことで糸ひきまたは「天使の髪」をひき起こす。さらに、イオノマーは一般に高価であり、その上いくらかの臭気を有することがある。
【0010】
米国特許第6590034号には、2種のポリマーのせん断粘度差の絶対値が100パーセント未満である連続相および不連続相を形成する2種の非混和性ポリマーの混合物から製造される可剥性シールが記載されている。多くの可能性のある材料を包含しているが、この参照は、不連続相としてホモポリマーポリプロピレンの使用に焦点を合わせる。
【0011】
多くの樹脂システムが、ヒートシール可能なピーラブルフィルムを製造するために使用されてきたが、加工処理および輸送のときと同様に最終消費者により包装が開封されるときに望ましいシール強度を有する、改良された費用効果の高いヒートシール可能なピーラブルフィルムの必要性が存在し続けている。ヒートシール可能なピーラブルフィルムを生産するのに使用される樹脂システムは、比較的低いシール開始温度および比較的広いヒートシーリングウィンドウを有することが望ましい。ヒートシール可能なピーラブルフィルムが比較的耐エージング性であり、比較的低い摩擦係数ならびに良好な耐酷使性および靭性を有することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
5〜98重量パーセントのプロピレンベースのエラストマーまたはプラストマーと好ましくはポリエチレンおよびスチレン系ポリマーからなる群からの特定の第2のポリマーとのブレンドが、可剥性シールとして使用するのに特によく適したものを製造することになる範囲のシール強度を有することを発見した。本発明の実施形態によっては、本発明の可剥性シールは、シール強度が経時的に低下し、その結果、包装を成形するときは袋をしっかりと密封することができるが、消費者に届くときは開封が容易であるものもある。
【0013】
本明細書において使用する「ポリマー」という用語は、同じまたは異なる種類いずれかのモノマーを重合させることにより調製される高分子化合物のことを言う。したがって、総称であるポリマーは、通常1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを表すのに使用される「ホモポリマー」という用語と同様に2種以上の異なるモノマーから調製されるポリマーについて言及する「コポリマー」も包含している。
【0014】
「低密度ポリエチレン」という用語は、「LDPE」、「高圧法エチレンポリマー」または「高度分枝ポリエチレン」とも呼ばれ、ポリマーをオートクレーブまたは管型反応器中14,500psi(100MPa)より高い圧力で、過酸化物などの遊離基(フリーラジカル、free-radical)開始剤を用いて(例えば米国特許第4599392号を参照、参照により本明細書に組み込まれる)部分的にまたは全体に単独重合(homopolymerized)または共重合(copolymerized)させることを意味すると定義される。
【0015】
分子量分布または「MWD」という用語は、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)として定義される。MwおよびMnは、従来のGPCを用い当技術分野で既知の方法により測定する。
【0016】
Mw(絶対値)/Mw(GPC)の比を、Mw(絶対値)が、低角度(15度など)での光散乱範囲から導きポリマーの質量を算入した重量平均分子量であり、Mw(GPC)が、GPC較正から得られた重量平均分子量であると定義する。NBS 1475などの標準の線状ポリエチレンホモポリマーに対してGPC装置と同等の重量平均分子量になるように、光散乱検出器を較正する。
【0017】
関連技術分野で「溶融張力」とも呼ばれる「溶融強度」は、本明細書において、ASTM D1238−Eに記載されているものなどの標準の可塑度計のダイを通すとき、溶融強度がその融点を超えて破損率より前に水平状態になるホールオフ(haul−off)速度で、溶融押出成形品を引くのに必要とされる応力または力(ストレインセルを備えた巻き取りドラムにより施されるような)を意味すると定義しかつ数値化する。本明細書においてセンチニュートン(cN)で報告する溶融強度の値は、Gottfert Rheotensを用いて190℃で測定する。
【0018】
本発明は、少なくとも2種の成分のブレンドで、可剥性シールとして使用するのに特によく適しているブレンドに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のブレンドの第1の成分は、プロピレンベースのプラストマーもしくはエラストマーまたは「PBPE」である。これらの材料は、プロピレンから誘導された少なくとも約50重量パーセントの単位およびプロピレン以外のコモノマーから誘導された少なくとも約5重量パーセントの単位を有する少なくとも1種のコポリマーを含む。適当なプロピレンベースのエラストマーおよび/またはプラストマーは、国際公開第03/040442号および米国特許出願60/709688(2005年8月19日出願)に教示されており、これにより、各特許の内容全体を参照によって本願明細書に組み込むものとする。
【0020】
本発明で使用するのに特に興味深いのは、3.5未満のMWDを有する反応器グレードのPBPEである。「反応器グレード」という用語は、米国特許第6010588号で定義されているように、一般に分子量分布(MWD)または多分散性が、重合後に実質的に変更されなかったポリオレフィン樹脂を表すことを意図する。好ましいPBPEは、約90ジュール/g未満、好ましくは約70ジュール/g未満、より好ましくは約50ジュール/g未満の融解熱(米国特許出願60/709688に記載されたDSC法を用いて測定)を有するであろう。コモノマーとしてエチレンを使用するとき、PBPEはプロピレンベースのエラストマーまたはプラストマーに対し3〜15重量パーセントのエチレン、または5〜14重量パーセントのエチレン、または7〜12重量パーセントのエチレンを有する。
【0021】
プロピレンコポリマーの残りの単位は、エチレン、C420α−オレフィン、C420ジエン、スチレン系化合物等などの少なくとも1種のコモノマーから誘導するが、好ましくは、コモノマーは少なくとも1種のエチレンおよび1−ヘキセンまたは1−オクテンなどのC412α−オレフィンである。好ましくは、コポリマーの残りの単位は、エチレンからのみ誘導する。
【0022】
プロピレンベースのエラストマーまたはプラストマー中のエチレン以外のコモノマーの量は、少なくともある程度、コモノマーおよび望ましいコポリマーの融解熱の関数である。コモノマーがエチレンならば、通常コモノマーから誘導された単位は、コポリマーの約15重量パーセントを超えない。エチレンから誘導された単位の最少量は、コポリマーの重量に対し通常は少なくとも約3重量パーセントであり、好ましくは少なくとも約5重量パーセントであり、より好ましくは少なくとも約9重量パーセントである。ポリマーがエチレン以外に少なくとも1種の他のコモノマーを含む場合、好ましい組成物は、およそ3〜20重量パーセントのエチレンを有するプロピレン−エチレンコポリマーの範囲で融解熱を有することになる。理論により制限する意図はないが、ほぼ類似の結晶化度および結晶形態を達成することは、可剥性シールとして類似の機能性を達成するのに有益であると考えられる。
【0023】
本発明のプロピレンベースのプラストマーまたはエラストマーは、どのような方法によっても製造してもよく、チーグラーナッタ、CGC(幾何拘束型触媒)、メタロセン、および非メタロセン、金属中心型、ヘテロアリール配位子触媒により製造されるコポリマーを含む。これらのコポリマーは、ランダム、ブロックおよびグラフトコポリマーを含むが、好ましくはランダム配置のコポリマーである。典型的なプロピレンコポリマーには、Exxon−Mobil製VISTAMAXXポリマー、ならびにThe Dow Chemical Company製VERSIFYプロピレン/エチレンエラストマーおよびプラストマーが挙げられる。
【0024】
本発明のプロピレンベースのエラストマーまたはプラストマーの密度は、ASTM D−792により測定して、通常少なくとも約0.850であり、少なくとも約0.860であってよく、少なくとも約0.865グラム/立方センチメートル(g/cm3)であってもよい。好ましくは、密度は約0.89g/cc未満である。
【0025】
本発明のプロピレンベースのエラストマーまたはプラストマーの重量平均分子量(Mw)は、幅広く変動してもよいが、典型的には10,000〜1,000,000である(最小または最大Mwの限界のみ実際の検討により規定したという了解のもとで)。可剥性シールの製造に使用されるホモポリマーおよびコポリマーについて、最小Mwは、好ましくは約20,000であり、より好ましくは約25,000である。
【0026】
本発明のプロピレンベースのエラストマーまたはプラストマーの多分散性は、典型的には2〜5である。「狭い多分散性」、「狭い分子量分布」、「狭いMWD」および類似の用語は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が約3.5未満であり、約3.0未満であってよく、約2.8未満であってもよく、約2.5未満であってもよいことを意味する。
【0027】
理想的には、本発明において使用するためのPBPEは、0.5〜2000g/10分、好ましくは1〜1000g/10分、より好ましくは2〜500g/10分、さらにより好ましくは2〜40g/10分のMFRを有する。選択される特定のMFRは、インフレーションフィルム(ブローンフィルム、blown film)、押出コーティング、シート押出成形、射出成型またはキャスト膜加工法などの対象とする製作方法にある程度依存することになる。プロピレンおよびエチレンおよび/または1種もしくは複数のC4〜C20α−オレフィンのコポリマーについてのMFRは、ASTM D−1238に準拠して、条件L(2.16kg、230℃)で測定する。約250より大きいMFRは、次の相関に従って推定した。
MFR=9×1018Mw-3.3584
【0028】
Mw(グラム毎モル)は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した。
【0029】
本発明において使用するための全ブレンドは、第2のポリマーを含む。第2のポリマーとして適当な材料には、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、極低(または超低)密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンを含む)、ポリブチレン、汎用ポリスチレン(「GPPS」)および高衝撃ポリスチレン(「HIPS」)、グラフト変性エチレンポリマー、エチレン−スチレンインターポリマー(ESI)、エチレン酢酸ビニルインターポリマー、エチレンアクリル酸インターポリマー、エチレンエチルアクリレートインターポリマー、エチレンメタクリル酸インターポリマー、エチレンメタクリル酸イオノマーおよび同類のもの)、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリ乳酸インターポリマー、熱可塑性ブロックポリマー(例えばスチレンブタジエンコポリマー、スチレンブタジエンスチレントリブロックコポリマー、スチレンエチレン−ブチレンスチレントリブロックコポリマーおよび同類のもの)、ポリエーテルブロックコポリマー(例えば、PEBAX)、コポリエステルポリマー、ポリエステル/ポリエーテルブロックポリマー(例えば、HYTREL)、エチレン一酸化炭素インターポリマー(例えば、エチレン/一酸化炭素(ECO)、コポリマー、エチレン/アクリル酸/一酸化炭素(EAACO)ターポリマー、エチレン/メタクリル酸/一酸化炭素(EMAACO)ターポリマー、エチレン/酢酸ビニル/一酸化炭素(EVACO)ターポリマーおよびスチレン/一酸化炭素(SCO))、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩素化ポリエチレン、および同類のものならびにこれらの混合物を挙げることができる。第2のポリマーとして好ましい材料には、ポリエチレンおよびスチレン系ポリマーが挙げられる。好ましいポリエチレン材料は、LDPE、およびHDPEであり、LDPEが多くの用途で最も好ましい。好ましいスチレン系材料は、GPPSおよびHIPSである。
【0030】
ポリスチレンなどの材料は、混和性がより低く(またはより高い程度の非相溶性を有し)、したがって可剥性シールにするためには、第2のポリマーはそれほど必要とされないことになる。その一方で、LDPEを第2のポリマーとして使用するとき、普通は比較的多くの第2のポリマーが必要である。
【0031】
LDPEを本発明で使用するのが望ましい場合、いかなるLDPEも選択することができる。本発明で使用するために好ましいLDPEは、0.2〜100g/10分のメルトインデックス(I2)(ASTM D1238により、条件190℃/2.16kgで測定)を有する。より好ましくは、メルトインデックスが約0.2g/10分より大きく、最も好ましくは0.5g/10分を超える。メルトインデックスは好ましくは約50g/10分未満であり、より好ましくは約20g/10分未満であり、最も好ましくは約10g/10分未満である。好ましいLDPEは、0.915〜0.930g/cc、好ましくは0.915〜0.925g/ccの範囲の密度(ASTM D792に準拠し測定)も有することになる。
【0032】
このような好ましいLDPEは、オートクレーブまたは管型反応器で製造することができる。
【0033】
本発明の第2の成分には、LDPE/LDPEブレンド、例えば、LDPE樹脂の一方が比較的高いメルトインデックスを有し、他方がより低いメルトインデックスを有しかつより高分枝しているブレンドも挙げることができる。より高いメルトインデックスを有す成分は、管型反応器から得ることができ、より低いMI、より高分枝のブレンド成分は、分離押出成形ステップで、または並列管型/オートクレーブ反応器を使用し、各反応器のメルトインデックスを制御するための特別な方法(再循環流中のテロマーの回収もしくはオートクレーブ(AC)反応器に新たなエチレンを加えること、または当技術分野で既知のその他のすべての方法など)と組み合わせて加えることができる。
【0034】
本発明の押出成形用組成物を調製に使用するための適当な高圧法エチレンポリマー組成物には、低密度ポリエチレン(ホモポリマー)、少なくとも1種のα−オレフィン例えばブテンと共重合したエチレン、ならびに少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和コモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチルおよび酢酸ビニルと共重合したエチレンが挙げられる。有用な高圧法エチレンコポリマー組成物の調製に適している技術は、McKinney他による米国特許第4599392号に記載されていて、この開示は参照により本明細書に組み込んだものとする。
【0035】
高圧法エチレンホモポリマーもコポリマーも、本発明において有用であると思われるが、ホモポリマーポリエチレンが一般に好ましい。
【0036】
用途によっては、ポリスチレンベースの材料を第2のポリマーとして使用するのが好ましいことがある。GPPSおよびHIPSは、PBPE中で非常に非混和性(高い程度の非相溶性を有する)であることが分かっている。したがって、比較的少量、例えば2〜20重量パーセント)のこれらのポリマーをPBPEと使用してもよく、なお可剥性シールを生産することもできる。透明性が重要であるときは、より少量のポリスチレン材料、例えば2〜5重量パーセントを使用するのが好ましい。
【0037】
ポリスチレンベースの材料のような、PBPEと高い程度の非相溶性を有する材料を使用するとき、シールを剥離すると応力白化(stress whitening)が発現することも認められている。したがって、このような材料は、不正開封防止機能の付いた可剥性シールの提供に使用することができる。
【0038】
本発明の組成物は、少なくともプロピレンベースのエラストマーまたはプラストマー成分およびポリスチレンまたはポリエチレンなどの第2のポリマーを含む。第2のポリマー材料は、全材料の2〜95重量パーセントを構成する。ポリエチレンを第2のポリマー材料として使用するとき、ポリエチレンは全組成物の少なくとも約20重量パーセント、より好ましくは(容易にコンバーター加工できるように)50重量パーセント、さらにより好ましくは60重量パーセント、さらにより好ましくは75重量パーセントを構成する。ポリエチレン成分は、全組成物の好ましくは95重量パーセント未満、より好ましくは85重量パーセント未満、および最も好ましくは80重量パーセント未満を構成する。
【0039】
低いヒートシール開始温度、および/または高いホットタック強度が望ましい場合、ポリエチレンが全組成物の約60パーセント未満、好ましくは40パーセント未満およびさらにより好ましくは30パーセント未満を構成するのが好ましいであろう。
【0040】
ポリスチレンを第2のポリマーとして使用するとき、ポリスチレンは、好ましくは全組成物の2〜20重量パーセント、より好ましくは2〜10重量パーセントおよびさらにより好ましくは2〜5重量パーセントを構成する。PBPEは全組成物の少なくとも5重量パーセント、好ましくは約15重量パーセントを超えて、より好ましくは少なくとも約25重量パーセントを構成する。PBPEは全組成物の98重量パーセント未満を構成する。
【0041】
本発明のシールは、インフレーションフィルム、押出コーティング、シート押出成形、射出成形またはキャスト膜加工法などのすべての加工法によって製造することができる。可剥性シール層は、すべての望ましい厚さ、例えば1ミクロン〜3mmに製造することができる。シーラント層は、単層として使用することができるが、より典型的には多層構造の1層、例えば30ミクロンの支持層を有する10ミクロンのシーラント層であろう。
【0042】
シーラント層(特に大部分がPBPEであるシーラント層)をPPベースの基材上に共押出しすると、構造全体がリサイクル可能になる。
【0043】
本発明のブレンドから製造される可剥性シールは、ドウェル時間(dwell time)0.5秒および棒の圧力40psiでTopwave HT試験機を使用し、シールを溶着して少なくとも24時間後に10インチ/分で引っ張るInstronを使用し測定すると、0.5〜7ポンド/インチ、0.5〜5ポンド/インチ、好ましくは0.5〜2ポンド/インチのエージングしたシール強度を有する。このシール強度は通常フレキシブル包装においては幾分低く、硬質な包装においては幾分高いことを、当業者であれば理解されるはずである。
【0044】
本発明の可剥性シールは、120℃未満、好ましくは110℃未満、より好ましくは100℃未満のヒートシール開始温度を有することになる。ヒートシール開始温度は、ドウェル時間0.5秒で、棒の圧力40psiで、Topwave HT試験機を使用し、シールを溶着して24時間後に10インチ/分でInstronにより引っ張り、0.5ポンド/インチのシール強度が得られる最小限の温度として定義する。
【0045】
当技術分野で一般的に既知であるように、本発明の組成物も種々の添加剤を含むことも理解されるはずである。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、スリップ剤、粘着防止剤、顔料または着色料、加工助剤(フッ素ポリマーなど)、架橋触媒、難燃剤、充填剤、発泡剤などが挙げられる。
【0046】
次の実施例でさらに本発明を例示する。
【実施例】
【0047】
実施例で使用するすべての樹脂の種類を表1に提示する。
【0048】
【表1】

【0049】
これらの材料を使用する一連の構造を調製し、シール強度を測定することができる。
【0050】
[実施例1]
第1組の構造は、A層が0.7ミルのナイロンバッキング層を含み、B層がAMPLIFY GR205機能性ポリマー(密度0.962、I22.0を有する無水マレイン酸グラフトポリエチレン)とブレンドした85パーセントATTANE 4202超低密度ポリエチレン(I23.2、密度0.913g/cc)からなる0.7ミルの結合層(tie layer)であり、図1で示すように、C層が2.1ミルのシーラント層であるA/B/C構造である。この構造は棒の圧力40psiおよびドウェル時間0.5秒を使用し、示した温度で密封する。シール強度は、シール溶着の24時間後に、使用するInstron引張試験機でシールから90°の角度で10インチ/分のクロスヘッド速度で引っ張り測定する。
【0051】
[実施例2]
第2組の構造は、A層が密度0.961およびI20.85を有する気相HDPEを含む1.7ミルの層であり、B層が図2で示すような0.3ミルのシーラント層であるA/B構造に調製する。これらの構造のシール強度は、図2に示すシーリング温度の範囲で、前述同様に測定する。
【0052】
[実施例3]
第3組の構造を調製し、シール強度を測定する。A/B構造は、A層がRCPの50μmのバッキング層であり、B層が95重量パーセントの樹脂Fと5重量パーセントの樹脂Jとのブレンドから製造した10マイクロメーターの厚い層である構造に調製する。第2のA/B構造は、B層が95パーセントの樹脂Eと5パーセントの樹脂Jとのブレンドであることを除いて、同様の方法で調製する。この構造は、0.5N/mm2の圧力および2秒のドウェル時間を使用し、図3に示すような種々の温度で750μmのホモポリマーポリプロピレンシート上に密封する。シール強度は、シール溶着の少なくとも24時間後に、Instron引張試験機を使用してシールから90°の角度で100mm/分のクロスヘッド速度で引っ張り測定する。結果を図3に表示する。得られた典型的なシール強度の値は、120〜160℃の温度範囲にわたり2〜10N/15/mmの範囲であり、本発明の有用性を実証している。さらに、シールを剥離させたとき、シール表面上の応力白化効果が明白である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、実施例1についてシーリング温度の範囲中のヒートシール強度を示すグラフの図である。
【図2】図2は、実施例2についてシーリング温度の範囲中のヒートシール強度を示すグラフの図である。
【図3】図3は、実施例3についてシーリング温度の範囲中のヒートシール強度を示すグラフの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.5〜98重量パーセントのプロピレンベースのプラストマーまたはエラストマー、
b.2〜95重量パーセントの、ポリエチレン、ポリブチレン、およびスチレン系ポリマーならびにこれらの混合物からなる群から選択される第2のポリマー
を含む、可剥性シール層。
【請求項2】
第2のポリマーが、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超または極低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択されるポリエチレンである、請求項1に記載の可剥性シール。
【請求項3】
第2のポリマーが、汎用ポリスチレン(「GPPS」)および高衝撃ポリスチレン(「HIPS」)、エチレン−スチレンインターポリマー(ESI)、スチレン系ブロックポリマー、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるスチレン系ポリマーである、請求項1に記載の可剥性シール。
【請求項4】
プロピレンベースのエラストマーまたはプラストマーが、エチレンから誘導される単位のプロピレンベースのエラストマーまたはプラストマーを5〜15重量パーセント含む、請求項1に記載の可剥性シール。
【請求項5】
プロピレンベースのエラストマーまたはプラストマーが、90J/g未満の融解熱を有する、請求項1に記載の可剥性シール。
【請求項6】
プロピレンベースのエラストマーまたはプラストマーが、70J/g未満の融解熱を有する、請求項1に記載の可剥性シール。
【請求項7】
第2のポリマーが低密度ポリエチレンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
第2のポリマーがエチレン酢酸ビニルコポリマーである、請求項1に記載の可剥性シール。
【請求項9】
酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、スリップ剤、粘着防止剤、顔料または着色剤、加工助剤(フッ素ポリマーなど)、架橋触媒、難燃剤、充填剤および発泡剤を含む群から1種または複数の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
剥離(un sealing)時にシールが応力白化を示すことを特徴とする請求項9に記載の可剥性シール。
【請求項11】
シールが0.5〜5ポンド/インチの範囲のシール強度を有する、請求項1に記載の可剥性シール。
【請求項12】
シールが1.5〜3ポンド/インチの範囲のシール強度を有する、請求項1に記載の可剥性シール。
【請求項13】
LDPEが全組成物の20〜40重量パーセントを構成する、請求項7に記載の可剥性シール。
【請求項14】
スチレン系ポリマーが全組成物の2〜20重量パーセントを構成する、請求項3に記載の可剥性シール。
【請求項15】
シールの剥離時にいくらかの応力白化を示すことを特徴とする、請求項14に記載の可剥性シール。
【請求項16】
スチレン系ポリマーが組成物の2〜5重量パーセントを構成し、可剥性シールをASTM 1003により測定すると60ミクロンのフィルムについて濁りが15パーセント未満であることを特徴とする、請求項14に記載の可剥性シール。
【請求項17】
ポリブチレンをさらに含む、請求項2に記載の可剥性シール。
【請求項18】
シールが0.5〜9ポンド/インチの範囲のシール強度を有する、請求項1に記載の可剥性シール。
【請求項19】
LDPEが全組成物の10〜40重量パーセントを構成する、請求項7に記載の可剥性シール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−511367(P2009−511367A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534542(P2008−534542)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/034957
【国際公開番号】WO2007/044159
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】