説明

ポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法

【課題】厚み精度が高いポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができるポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法は、鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む材料の反応を進行させて、ゲル分率が10〜60重量%である反応物を得る工程と、発泡剤として、25℃で気体である物理型発泡剤又は沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤を用いて、上記反応物を発泡させて、密度が25〜500kg/mであるポリオレフィン樹脂発泡体を得る工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法に関し、より詳細には、厚み精度が高いポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができるポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂を発泡させたポリオレフィン樹脂発泡体が、建築、土木、電気、エレクトニクス及び車両などの様々な分野で用いられている。上記発泡体は、例えば、建築用の断熱材及び車両内装用の断熱材として、空調効果を高めるために用いられている。
【0003】
従来、上記発泡体を得るために、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物に発泡剤を予め添加して、ポリオレフィン樹脂と発泡剤とを含む樹脂組成物を溶融押出により発泡成形したり、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物を、発泡剤を添加しながら溶融押出により発泡成形したりする方法が一般的に用いられている。また、ポリオレフィン樹脂と有機過酸化物と発泡剤とを含む樹脂組成物を用いて、ポリオレフィン樹脂を架橋させ、かつ発泡させて、発泡体を得る方法も知られている。
【0004】
また、上記発泡体の製造方法の一例として、下記の特許文献1には、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂とのポリマーアロイで構成されている鎖状オレフィン樹脂と、環状オレフィン樹脂とを含む樹脂組成物を、溶融押出などにより発泡成形する発泡体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−138029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の発泡体の製造方法では、得られる発泡体の厚み精度が充分に高くならないことがある。また、特許文献1に記載の発泡体の製造方法でも、得られる発泡体の厚み精度が充分に高くならないことがある。さらに、従来の製造方法では、上記発泡剤として、二酸化炭素、窒素又はアルゴンを用いた場合には、良好な発泡構造を形成することは困難である。
【0007】
また、上記発泡剤としては、化学発泡剤であるアゾジカルボンアミドが用いられることが多い。しかしながら、アゾジカルボンアミドを用いた場合には、発泡時にアンモニアが発生し、更にアゾジカルボンアミドに由来する残渣が生じやすいという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、厚み精度が高いポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができるポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む材料の反応を進行させて、ゲル分率が10〜60重量%である反応物を得る工程と、発泡剤として、25℃で気体である物理型発泡剤又は沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤を用いて、上記反応物を発泡させて、密度が25〜500kg/mであるポリオレフィン樹脂発泡体を得る工程とを備える、ポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明に係るポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法のある特定の局面では、上記材料に電子線を照射し、ゲル分率が10〜60重量%となるように上記材料の反応を進行させる。
【0011】
本発明に係るポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法の他の特定の局面では、上記発泡剤として、物理型発泡剤である二酸化炭素、窒素又はアルゴンが用いられる。
【0012】
本発明に係るポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法の別の特定の局面では、上記反応物を得る工程の後に、上記反応物に上記発泡剤を添加する。
【0013】
本発明に係るポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法のさらに別の特定の局面では、鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む組成物を成形し、成形体である上記材料を得る工程がさらに備えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法では、鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む材料の反応を進行させて、ゲル分率が10〜60重量%である反応物を得た後、25℃で気体である物理型発泡剤又は沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤を用いて、密度が25〜500kg/mとなるように上記反応物を発泡させるので、厚み精度が高いポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0016】
本発明に係るポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法は、鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む材料の反応を進行させて、ゲル分率が10〜60重量%である反応物を得る工程と、発泡剤として、25℃で気体である物理型発泡剤又は沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤を用いて、上記反応物を発泡させて、密度が25〜500kg/mであるポリオレフィン樹脂発泡体を得る工程とを備える。
【0017】
上述の各工程を経てポリオレフィン樹脂発泡体を製造することにより、得られるポリオレフィン樹脂発泡体の厚み精度を高めることができる。従って、本発明によれば、所望の形状のポリオレフィン樹脂発泡体を容易に得ることができる。さらに、予め上記反応物を得ることで、発泡剤として、25℃で気体である物理型発泡剤又は沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤を用いることができ、二酸化炭素、窒素又はアルゴンを用いることもできる。
【0018】
また、本発明に係るポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法は、鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む組成物を成形し、成形体である上記材料を得る工程をさらに備えることが好ましい。該成形体である材料を用いて、上記反応物を得る工程が行われることが好ましい。
【0019】
以下、上記ポリオレフィン樹脂発泡体を製造する各工程を具体的に説明する。
【0020】
先ず、上記ポリオレフィン樹脂発泡体を得る際には、好ましくは、上記のように鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む組成物を成形し、成形体である材料を得る。ただし、この成形体を得る工程を経ることなく、成形体を入手して、該成形体を用いて、上記反応物を得る工程を行ってもよい。また、成形体を用いずに、例えばペースト状の上記材料を用いて、上記反応物を得る工程を行ってもよい。上記成形体はシートであることが好ましい。上記成形体はプレス成形により得られた成形体であることが好ましい。
【0021】
次に、上記材料を用いて、好ましくは成形体である上記材料を用いて、上記材料の反応を進行させて、ゲル分率が10〜60重量%である反応物を得る。すなわち、ゲル分率が10〜60重量%となるように、上記材料の反応を進行させて反応物を得る。
【0022】
本発明の主な特徴は、上記反応物を得るために、鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む材料を用いること、並びに発泡前に、予めゲル分率が10〜60重量%となるように上記材料の反応を進行させて、反応物を得ることである。このような反応物を作製し、該反応物を発泡させることで、得られるポリオレフィン樹脂発泡体の厚み精度を高めることができる。
【0023】
上記反応物のゲル分率を10〜60重量%にするために、例えば、上記材料に電子線を照射する。上記材料に電子線を照射し、ゲル分率が10〜60重量%となるように、上記材料の反応を進行させることが好ましい。上記電子線としては、α線、β線及びγ線等が挙げられる。ゲル分率が10〜60重量%となるように、上記電子線の照射量は適宜調整される。上記電子線の照射量は、0.2Mrad〜10Mrad程度である。
【0024】
耐熱性及び厚み精度により一層優れたポリオレフィン樹脂発泡体を得る観点からは、ゲル分率が10〜60重量%であるように上記材料の架橋反応を進行させて架橋反応物を得ることが好ましい。電子線の照射により、上記鎖状ポリオレフィン及び上記環状ポリオレフィンを架橋させることが好ましい。発泡剤として、イソブタン、ペンタン又は二酸化炭素等を用いて、ポリオレフィン樹脂を含む組成物を架橋させずに発泡させた場合には、ポリオレフィン樹脂が架橋していないため、耐熱性が低く、更に発泡体の厚み精度も低くなる傾向がある。これに対して、電子線の照射により架橋構造を導入することで、得られるポリオレフィン樹脂発泡体の耐熱性を高めることができ、かつ厚み精度をより一層高めることができる。
【0025】
上記鎖状ポリオレフィン及び上記環状ポリオレフィンを架橋させる方法として、上記電子線の照射による方法以外の方法を用いてもよい。上記鎖状ポリオレフィン及び上記環状ポリオレフィンを架橋させる方法として、上記材料に有機過酸化物などの架橋剤を添加しておき、該架橋剤を加熱分解して架橋させる方法、上記材料に多官能モノマーなどを添加しておき、電離性放射線照射により架橋させる方法、並びにシラン架橋を用いる方法等が挙げられる。
【0026】
得られた反応物のゲル分率は、以下のようにして測定される。
【0027】
上記反応物50mg(初期重量)を120℃のキシレン中に24時間浸漬する。その後、反応物を取り出して、200メッシュの金網で、キシレン溶出分をろ過により除去する。次に、残渣(キシレン不溶分)を80℃で8時間乾燥させる。乾燥後の残渣の重量を測定し、下記式(1)によりゲル分率を求める。
【0028】
ゲル分率(重量%)=(乾燥後の残渣の重量/反応物の初期重量)×100 ・・・式(1)
【0029】
厚み精度により一層優れたポリオレフィン樹脂発泡体を得る観点からは、上記ゲル分率は、好ましくは15重量%以上、好ましくは50重量%以下である。
【0030】
上記発泡剤は、予め上記材料に添加されていてもよく、上記反応物を得る工程の後に、上記反応物に上記発泡剤を添加してもよい。すなわち、反応物を得た後に、反応物に発泡剤を添加して、反応物を発泡させてもよい。なかでも、発泡効率及び発泡の均一性をより一層高める観点からは、上記反応物を得る工程の後に、上記反応物に上記発泡剤を添加することが好ましい。発泡効率及び発泡の均一性をさらに一層高める観点からは、上記反応物を得る工程の後に、上記反応物に、上発泡剤を含浸させることがより好ましい。
【0031】
上記反応物を発泡させる際に、加熱することが好ましい。発泡効率及び発泡の均一性をより一層高める観点からは、上記加熱の温度は、120〜240℃であることが好ましい。上記発泡剤が、沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤を用いる場合には、上記加熱の温度は、上記物理型発泡剤の沸点よりも10℃以上高いことが好ましく、120℃を超えることが好ましい。
【0032】
次に、発泡剤を用いて、得られた反応物を発泡させる。本発明では、上記発泡剤として、25℃で気体である物理型発泡剤又は沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤を用いる。本発明では、上記反応物を発泡させて、密度が25〜500kg/mであるポリオレフィン樹脂発泡体を得る。すなわち、密度が25〜500kg/mとなるように、上記反応物を発泡させて、ポリオレフィン樹脂発泡体を得る。特定の上記物理型発泡剤を用いて密度が上記範囲内であるように発泡させることで、厚み精度に優れたポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができる。また、従来、上記物理型発泡剤を用いた場合には、厚み精度に優れたポリオレフィン樹脂発泡体を得ることは困難であった。これに対して、本発明では、25℃で気体である物理型発泡剤又は沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤を用いても、厚み精度に優れたポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができる。
【0033】
以下、上記材料に含まれている鎖状ポリオレフィン及び環状ポリオレフィン、上記発泡剤、並びに上記ポリオレフィン樹脂発泡体を得る際に用いられる他の成分の詳細を説明する。
【0034】
(鎖状ポリオレフィン)
上記鎖状ポリオレフィンとしては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体又はブロック共重合体、ブテンの単独重合体、並びにブタジエン及びイソプレン等の共役ジエンの単独重合体又は共重合体等が挙げられる。また、上記鎖状ポリオレフィンとして、ポリメチルペンテンを用いてもよい。これらの鎖状ポリオレフィンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルとメタクリルとを意味する。
【0035】
上記鎖状ポリオレフィンは、プロピレンを用いたポリプロピレン樹脂又はエチレンを用いたポリエチレン樹脂であることが好ましい。また、上記鎖状ポリオレフィンは、エチレンの単独重合体、プロピレンの単独重合体、エチレンと該エチレンと共重合可能なα−オレフィンとの共重合体、又はプロピレンと該プロピレンと共重合可能なα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0036】
上記ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン又はプロピレンと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。上記ポリプロピレン樹脂がプロピレンと他のモノマーとの共重合体である場合には、上記ポリプロピレン樹脂において、プロピレンが主成分として用いられ、例えばプロピレン/α−オレフィン共重合体を得るためのモノマーの合計100重量%中にプロピレンが50重量%以上用いられる。
【0037】
上記プロピレンと他のモノマーとの共重合体としては、例えば、プロピレン/α−オレフィン共重合体等が挙げられる。プロピレンと他のモノマーとの共重合体の共重合の形態は特に限定されない。プロピレンと他のモノマーとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体又はランダムブロック共重合体等のいずれであってもよい。
【0038】
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン及び1−オクテン等が挙げられる。
【0039】
上記ポリエチレン樹脂としては、ホモポリエチレン又はエチレンと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。上記ポリエチレン樹脂がエチレンと他のモノマーとの共重合体の場合には、上記ポリエチレン樹脂において、エチレンが主成分として用いられ、例えばエチレン/α−オレフィン共重合体を得るためのモノマーの合計100重量%中にエチレンが50重量%以上用いられる。
【0040】
上記エチレンと他のモノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン/α−オレフィン共重合体等が挙げられる。エチレンと他のモノマーとの共重合体の共重合の形態は特に限定されない。エチレンと他のモノマーとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体又はランダムブロック共重合体等のいずれであってもよい。
【0041】
(環状ポリオレフィン)
上記環状ポリオレフィンとしては、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの共重合体、及びノルボルネン系モノマーの単独重合体又は共重合体、並びにこれらの誘導体等が挙げられる。上記環状ポリオレフィンは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。炭素−炭素不飽和二重結合の量を少なくし、耐候性を高めるために、上記環状ポリオレフィンは、水素添加により飽和されていてもよい。
【0042】
上記環状ポリオレフィンはノルボルネン系モノマーとノルボルネン系モノマー以外のオレフィン系モノマーとの共重合体等であることが好ましい。上記ノルボルネン系モノマー以外のオレフィン系モノマーとしては、非環状オレフィン系モノマーと環状オレフィン系モノマーとが挙げられる。なかでも、非環状オレフィン系モノマーが好適に用いられる。
【0043】
上記ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を有するモノマーであれば特に限定されない。上記ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン及びノルボルナジエン等の2環体、ジシクロペンタジエン及びジヒドロキシペンタジエン等の3環体、テトラシクロドデセン等の4環体、シクロペンタジエン3量体等の5環体、テトラシクロペンタジエン等の7環体、これらのメチル、エチル、プロピル及びブチル等のアルキル置換体、これらのビニル等のアルケニル置換体、これらのエチリデン等のアルキリデン置換体、これらのフェニル、トリル及びナフチル等のアリール置換体、並びにこれらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、及び(メタ)アクリロイル等の炭素及び水素以外の元素を含有する極性基を有する置換体等が挙げられる。上記ノルボルネン系モノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記ノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−エチリデン−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−ジメタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン、及び5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0045】
上記オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン及び1−ヘキサデセン等が挙げられる。共重合性が高いので、炭素数2〜10のα−オレフィン系モノマーが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0046】
上記非環状オレフィン系モノマーとしては特に限定されず、例えば、エチレン又はα−オレフィンなどの直鎖状オレフィン系モノマーが挙げられる。上記環状オレフィン系モノマーとして、シクロペンテン及びシクロオクテン等が挙げられる。
【0047】
上記環状ポリオレフィンは、上記ノルボルネン系モノマーとノルボルネン系モノマー以外のオレフィン系モノマーとを共重合させることにより得られた共重合体であることが好ましい。
【0048】
上記材料では、上記鎖状ポリオレフィン100重量部に対して、上記環状ポリオレフィンの含有量は1〜40重量部である。上記鎖状ポリオレフィン100重量部に対して、上記環状ポリオレフィンの含有量は、好ましくは5重量部以上、好ましくは35重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。上記環状ポリオレフィンの含有量の上記下限以上及び上記上限以下であると、厚み精度により一層優れたポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができる。
【0049】
(架橋剤、架橋助剤及び他の成分)
ポリオレフィン系樹脂成形体に架橋構造を効率的に導入するために、上記材料は架橋剤を含むことが好ましく、上記材料として架橋剤を含む材料を用いることが好ましい。架橋剤の使用により、ポリオレフィン樹脂を架橋させて、ポリオレフィン樹脂が架橋した架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができる。架橋構造の導入により、ポリオレフィン樹脂発泡体の耐熱性及び厚み精度がより一層高くなる。
【0050】
上記架橋剤は特に限定されない。上記架橋剤として、従来公知の架橋剤を用いることができる。上記架橋剤は、有機過酸化物であることが好ましい。上記有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルオキシ)ヘキサン等が挙げられる。ただし、これら以外の架橋剤を用いてもよい。上記架橋剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記鎖状ポリオレフィンと上記環状ポリオレフィンとの合計100重量部に対して、上記架橋剤の含有量は、0.01〜5重量部であることが好ましい。上記鎖状ポリオレフィンと上記環状ポリオレフィンとの合計100重量部に対して、上記架橋剤の含有量は、より好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは2重量部以下である。
【0052】
上記材料は、架橋助剤を含んでいてもよい。例えば、上記環状ポリオレフィンとして、ポリプロピレン又はポリメチルペンテン等を使用する際には、架橋助剤として、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT)等のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する架橋助剤が、上記材料に混合され、用いられてもよい。
【0053】
上記材料には、酸化防止剤、金属害防止剤、難燃剤、充填剤、帯電防止剤、安定剤及び顔料等の添加剤が添加されていてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
(発泡剤)
本発明では、発泡剤として、25℃で気体である物理型発泡剤、又は沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤が用いられる。上記発泡剤として、25℃で気体である物理型発泡剤が好適に用いられる。上記物理型発泡剤は、揮発型発泡剤と呼ばれることがある。
【0055】
上記25℃で気体である物理発泡体は、不活性ガスであることが好ましい。上記25℃で気体である物理型発泡剤としては特に限定されないが、二酸化炭素、窒素及びアルゴン等が挙げられる。環境負荷が小さく、得られるポリオレフィン樹脂成形体に残存し難いので、上記発泡剤として、物理型発泡剤であるイソブタン、二酸化炭素、窒素又はアルゴンを用いることが好ましく、物理型発泡剤である二酸化炭素、窒素又はアルゴンを用いることがより好ましく、物理型発泡剤である二酸化炭素又は窒素を用いることが更に好ましい。本発明では、発泡剤として、化学型発泡剤ではなく、物理型発泡剤である二酸化炭素、窒素又はアルゴンを用いても、厚み精度に優れているポリオレフィン樹脂発泡体を得ることができる。
【0056】
上記沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤は、25℃で液体である。上記沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤としては特に限定されないが、水、ヘキサン、ペンタン及びイソペンタン等が挙げられる。
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0058】
ポリオレフィン樹脂発泡体を得るために、下記の市販品を用意した。
【0059】
LE520H(鎖状ポリオレフィン、日本ポリエチレン社製、MI3.6、密度0.923g/cm
Topas6013(環状ポリオレフィン、ポリプラスチックス社製、MVR(260℃、2.26kg)14、密度1.02g/cm、ノルボルネン系モノマー含有量80重量%)
Arton5013(環状ポリオレフィン、JSR社製)
【0060】
(実施例1)
LE520H(鎖状ポリオレフィン)90重量部と、Topas6013(環状ポリオレフィン)10重量部とを240℃で5分間プラストグラフにて混合し、240℃で5分間プレス成形し、厚み1mmのシートを得た。
【0061】
得られたシートに800kvにて2.54Mradの照射量で電子線を照射し、上記シートの反応を進行させ、反応物を得た。得られた反応物を3cm×3cmの大きさに切り出した。
【0062】
得られた反応物をオートクレーブにセットし、17MPaの二酸化炭素を導入し、23℃で24時間放置し、上記反応物に二酸化炭素を含浸させた。
【0063】
その後、脱圧し、二酸化炭素を含浸した反応物を23℃で1時間放置した。次に、二酸化炭素を含浸した反応物を200℃のオイルバスに浸漬し、発泡させて、ポリオレフィン樹脂発泡体を得た。
【0064】
(実施例2〜7及び比較例1)
ポリオレフィン樹脂の種類及び配合量、並びに電子線の照射量を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂発泡体を得た。
【0065】
(比較例2)
LE520H(鎖状ポリオレフィン)80重量部と、Topas6013(環状ポリオレフィン)20重量部とを、240℃で5分間プラストグラフにて混合し、240℃で5分間プレス成形し、厚み1mmのシートを得た。得られたシートを3cm×3cmの大きさに切り出した。
【0066】
得られたシートに電子線を照射せずに、該シートをオートクレーブにセットし、17MPaの二酸化炭素を導入し、23℃で24時間放置し、上記反応物に二酸化炭素を含浸させた。
【0067】
その後、脱圧し、二酸化炭素を含浸したシートを23℃で1時間放置した。次に、二酸化炭素を含浸したシートを200℃のオイルバスに浸漬し、発泡させて、ポリオレフィン樹脂発泡体を得た。
【0068】
(評価)
(1)ゲル分率
実施例1〜7及び比較例1において用いた反応物及び比較例2において用いたシートを測定試料として、ゲル分率を求めた。
【0069】
50mgの重さとなるように上記測定試料を切断して、切断された測定試料の初期重量を測定した。次に、切断された測定試料を120℃のキシレン中に24時間浸漬した。その後、測定試料を取り出して、200メッシュの金網で、キシレン溶出分をろ過により除去した。次に、残渣(キシレン不溶分)を80℃で8時間乾燥させた。乾燥後の残渣の重量を測定し、下記式(1A)によりゲル分率を求めた。
【0070】
ゲル分率(重量%)=(乾燥後の残渣の重量/測定試料の初期重量)×100 ・・・式(1A)
【0071】
(2)密度
比重計を用いて、得られたポリオレフィン樹脂発泡体とイオン交換水との比重を算出した。得られた比重を密度に換算して、ポリオレフィン樹脂発泡体の密度を求めた。
【0072】
(3)外観(表面状態)
得られたポリオレフィン樹脂発泡体の外観(表面状態)を目視にて観察した。外観(表面状態)を下記の判定基準で判定した。
【0073】
[外観(表面状態)の判定基準]
○:外観(表面状態)にばらつきがなく均一に発泡している
△:外観(表面状態)にばらつきがわずかにあり、部分的に不均一に発泡しているものの、ポリオレフィン樹脂発泡体の使用上問題がない
×:外観(表面状態)にばらつきがあり、不均一に発泡している部分が多く、ポリオレフィン樹脂発泡体の使用上問題がある
【0074】
(4)厚み精度
3cm×3cmの大きさのポリオレフィン樹脂発泡体の中央部分の厚みと、4つの角近傍部分の厚みとの合計5か所の厚みをマイクロメーターにより測定し、最大厚みと最小厚みと5か所の厚みの平均値とから、下記式(1)により算出された値を厚み精度とした。厚み精度が0.2以下であると、厚み精度が良好であると判断できる。厚み精度を下記の判定基準で判定した。
【0075】
(最大厚み−最小厚み)/厚みの平均値 ・・・式(1)
【0076】
[厚み精度の判定基準]
○:厚み精度が0.2以下
×:厚み精度が0.2を超える
結果を下記の表1に示す。
【0077】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む材料の反応を進行させて、ゲル分率が10〜60重量%である反応物を得る工程と、
発泡剤として、25℃で気体である物理型発泡剤又は沸点が120℃以下の液体である物理型発泡剤を用いて、前記反応物を発泡させて、密度が25〜500kg/mであるポリオレフィン樹脂発泡体を得る工程とを備える、ポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記反応物を得る工程において、前記材料に電子線を照射し、ゲル分率が10〜60重量%となるように前記材料の反応を進行させる、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記発泡剤として、物理型発泡剤である二酸化炭素、窒素又はアルゴンを用いる、請求項1又は2に記載のポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記反応物を得る工程の後に、前記反応物に前記発泡剤を添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
鎖状ポリオレフィン100重量部と環状ポリオレフィン1〜40重量部とを含む組成物を成形し、成形体である前記材料を得る工程をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2012−25798(P2012−25798A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162949(P2010−162949)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】