説明

ポリオレフィン樹脂組成物

【課題】 本発明の組成物は剛性が高く、透明性が良好である。また、成形加工時にロールや金型への付着、成形品表面へのブリードが少なく、長時間、安定した操業ができる利点がある。
【解決手段】 (A)ポリオレフィン系樹脂100重量部、(B)式(I)で示される燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜0.50重量部、及び(C)炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3重量部を溶融混練して得られるポリオレフィン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリオレフィン系樹脂、特にプロピレンとエチレンまたは/及びブテンとのランダム共重合体組成物に関し、さらに詳しくは成形時に金型やロールへの付着物発生が改良された、透明性に優れたポリプロピレン樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術および問題点】日用雑貨包装用のシートや射出成形容器など内容物が見えることが必要とされている分野では、ポリオレフィン系樹脂、特に透明性の良好なプロピレン−エチレンランダム共重合体やプロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体(以下プロピレンランダム共重合体)に透明造核剤を添加した物が使用されている。透明造核剤としては、タルクや安息香酸アルミでは透明性が不充分なため、近年ソルビトール系や燐系の透明造核剤が主に使用される様になってきた。
【0003】しかし、ソルビトール系の造核剤単独では、押出成形時冷却ロールに造核剤の分解物や昇華物が付着し、そのまま成形を続けると製品に付着物が付き悪影響が出るため成形を中止しロールを掃除しなければならない。また、射出成形の場合には金型を曇らせたりする問題が発生し製品表面に悪影響がでるため、同様に成形を中止し掃除をしなければならない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この改良方法として、脂肪酸アミド、帯電防止剤、各種ワックス・オイルなどを添加し、ロールへの付着物の量を低減させる方法や透明造核剤の分解を防止するために、酸化防止剤の強化やポリプロピレン共重合体の触媒残渣を安定化する方法がとられてきたが、いずれもまだ満足できる結果が得られていない。
【0005】また、燐系の造核剤として燐酸2、2−メチレンビス(4、6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム[式(II)]の使用は、ロール付着物の低減効果は良好で有ったが、融点が400℃以上と非常に高く、実際には樹脂中で溶融することが無いため添加剤の分散不良が起き、充分な透明性改良効果が安定して得られないという問題点があった。
【0006】
【化2】


【0007】また、透明造核剤として、特開平5−15607が開示されている。これには本発明の式(I)で示される燐酸アリールエステル化合物を主成分とし、この透明増核剤の樹脂中での分散性を改良するために、有機カルボン酸アルカリ金属塩、β−ジケトナートアルカリ金属塩及びβ−ケト酢酸エステルアルカリ金属塩の中から選ばれた少なくとも1種を添加するものである。しかし、これらはロール付着物が多い欠点がある。
【0008】
【発明を解決する為の手段】本発明は、剛性、透明性に優れ、成形時にロールや金型への付着物を低減した組成物を得ることを目的とし、鋭意努力してきた結果、(A)ポリオレフィン系樹脂合体100重量部、(B)式(I)で示される燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜0.50重量部、及び(C)炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3重量部を溶融混練して得られるポリオレフィン樹脂組成物を使用することにより、押出成形時にロール付着物の発生が起こり難く、射出成形時に金型付着物を非常に低減でき透明な成形品が得られることを見いだすことにより本発明に到達した。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の構成について、以下に詳しく説明する。本発明の(A)ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレンなつのαオレフィンの単独重合体及びエチレン、プロピレンなどと他のαオレフィンとの共重合体である。具体的には、高、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム及びブロック共重合体などである。これらの内特にプロピレンランダム共重合体が好ましい。プロピレンランダム共重合体としては、プロピレン含有量が90重量%以上、好ましくは92重量%以上のエチレン及び/またはブテンとのランダム共重合体で、特に特定するわけで無いがメルトフローレートは(230℃、2.16kg)1〜50g/10分の物が好適である。ここでプロピレン含有量を90重量%以上としたのは、90重量%未満では剛性が不足しかつ成形品の表面に粘着性を帯びてくる。
【0010】本発明の(B)式(I)で示される化合物は特開平5−15607に開示されている。式(I)の化合物は成形中に発生または飛散する物質と、金属との接着力がソルビトール系化合物と比較して小さく、ロールや金型表面に移行するより成形品の表面に留まる傾向があり、ロールや金型に付着しても取れ易い利点がある。
【0011】成分(B)の添加量は0.01〜0.50重量部であり、0.01重量部未満だと充分な透明性改良効果が得られず、0.50重量部を超えるとほとんど透明性改良効果は変わらず、むしろシートや成形品の表面への移行が起こり透明性が悪化する。ここで言う(B)成分の添加量は、式(I)で示される化合物とを主成分とするもので、式(I)で示す化合物に分散剤などを含めたものの量である。ここで分散剤などとはアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート、アルカリ金属β−ケト酢酸エステルなどである。
【0012】成分(C)脂肪酸アミドは上記透明造核剤だけではまだロールや金型に付着改良効果が充分でなく、脂肪酸アミドの添加が非常に効果が有った。本発明の成分(C)炭素数12〜22の脂肪酸アミドは好ましくは、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドなどである。添加量は0.003〜0.3重量部である。0.003重量部未満の添加ではロールや金型への付着改良効果が小さく、0.3重量部を超えると表面に脂肪酸アミドが必要以上に移行してしまい、逆に透明性を悪化させるためである。この際、脂肪酸アミド以外の帯電防止剤、酸化防止剤などは効果がない。また、炭素数12未満では表面へ非常に移行しやすくなるが、表面に出すぎるために白化したり粘着性が出てくるため好ましくなく、22を超えると成形品の表面への移行速度が非常に遅くなるため、充分な改良効果が得られない。
【0013】また、本発明には以上の化合物以外に、必要に応じて触媒中和剤として金属石鹸や合成ハイドロタルサイト系化合物、酸化防止剤として一般に市販されているフェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、帯電防止剤として多価アルコール脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、直鎖アルキルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン系化合物などから選ばれた1種以上からなる化合物、ヒンダードアミン系光安定剤、耐候剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、他の透明核剤及び透明性が悪化しない範囲で無機充填剤を添加することができる。以下実施例及び比較例を示す。
【0014】
【実施例】
[実施例1]プロピレン含有量97重量%でメルトフローレート3.0g/10分のプロピレン−エチレンランダム共重合体100重量部に対して、式(I)を主成分とする透明造核剤として式(I)に示す化合物58重量%とステアリン酸リチウム42重量%からなる混合物を0.10重量部とオレイン酸アミド0.025重量部を加え、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、酸化防止剤としてテトラキス〔メチレン(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)〕メタン0.05重量部とトリス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.05重量%、帯電防止剤として多価アルコール脂肪酸エステルを0.05重量%を添加し、65mmφ単軸押出機にて設定温度240℃にて造粒した。
【0015】付着物の発生状況の評価は、設定温度260℃のT−ダイ成形機にてフィルム成形した時の、1時間後のロールへの付着物の状態を目視にて3段階にて評価し、その結果を表1に示した。×:ロール全面に激しく付着物が発生、△:ロールに薄く付着物が発生する、○:殆どロール付着物が発生しない。
【0016】ヘイズについては、射出成形機にてシリンダ−温度250℃設定で、金型温度60℃にて成形した厚み1.6mmのシートを作成し、40℃のオーブン中で5日間エージングしたものを日本電色工業株式会社製NDH型ヘイズメーターにて測定し、その結果を表1に示した。
【0017】機械物性については、以下の測定方法にて測定し、その結果を表1に示した。
引張降伏点強度 ASTM D638引張破断点伸び ASTM D638曲げ弾性率 ASTM D790アイゾット衝撃強度 ASTM D256表面硬度 ASTM D785熱変形温度 ASTM D648
【0018】[実施例2]実施例1の透明造核剤の添加量を0.20重量部とした以外は、実施例1と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0019】[実施例3]実施例1の透明造核剤の添加量を0.40重量部とした以外は、実施例1と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0020】[実施例4]実施例1のスリップ剤をエルシン酸アミド0.050重量部とした以外は、実施例1と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0021】[実施例5]実施例1のプロピレン−エチレンランダム共重合体のプロピレン含有率96重量%でメルトフローレート2.5g/10分とした以外は、実施例1と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0022】[比較例1]実施例1の透明造核剤の添加量を0.20重量部とし、オレイン酸アミドの添加を0重量部とした以外は、実施例1と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0023】[比較例2]実施例1の透明造核剤を市販ソルビトール系透明造核剤としてイーシー化学(株)製EC−4(0.20重量部)とした以外は、実施例1と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0024】[比較例3]比較例1の透明造核剤をEC−4とした以外は、比較例1と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0025】[比較例4]比較例2の透明造核剤を市販ソルビトール系透明造核剤として新日本理化(株)製のゲルオールMDとした以外は、比較例2と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0026】[比較例5]実施例1のオレイン酸アミドの添加を0.5重量部とした以外は、実施例1と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0027】[比較例6]実施例1の透明造核剤の添加を0重量部とした以外は、実施例1と同様に成形し評価し、その結果を表1に示した。
【0028】
【表1】


【0029】
【発明の効果】本発明の組成物は剛性が高く、透明性が良好である。また、成形加工時にロールや金型への付着、成形品表面へのブリードが少なく、長時間、安定した操業ができる利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ポリオレフィン系樹脂100重量部、(B)式(I)で示される燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜0.50重量部、及び(C)炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3重量部を溶融混練して得られるポリオレフィン樹脂組成物。
【化1】


【請求項2】 ポリオレフィン系樹脂がプロピレン含有量90重量%以上のプロピレンとエチレンまたは/及びブテンとのランダム共重合体である請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。