説明

ポリオレフィン部材および製造方法

本発明は、高性能ポリオレフィン部材を生産するための改善された方法に関する。その方法は、ポリオレフィンと溶媒とを含んでなる溶液を調製する工程と、溶液を空隙に押出または紡糸して流体部材を形成する工程と、流体部材を冷却して溶媒を含有するゲル部材を形成する工程と、部材を延伸する前、その間および/または後に、ゲル部材から少なくとも一部溶媒を除去して固体部材を形成する工程とを含む。さらに、その方法は、アリールスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸を含んでなる消泡剤の存在を含む。本発明は、さらに、アリールスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸を含んでなるゲル押出された(geltruded)ポリオレフィン部材に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、ポリオレフィン部材(例、ポリオレフィン材料を含んでなる繊維、テープおよびシート部材等)の製造に関する。より詳細には、本発明は、このような部材のゲル押出(geltrusion)に関する。さらに、本発明は、このような部材の製造方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
ポリオレフィン部材は、溶媒に溶かしたポリオレフィン溶液を押出した後に伸張することにより、作製されうる。このプロセスは、ゲル押出プロセスと呼ばれ、高強度の繊維材料(例、繊維、テープおよびシート部材等)をもたらす。ゲル押出は、高性能のポリオレフィン繊維を製造する他の主なプロセス(例、溶融紡糸および固体生成等)とは根本的に異なる。繊維を製造するためのゲル押出プロセスは、例えば、欧州特許第1 699 954号明細書に開示され、シート部材を製造するためのゲル押出プロセスは、例えば、欧州特許第0 500 173号明細書および欧州特許第0 504 954号明細書に開示される。
【0003】
[発明の目的]
改善されたポリオレフィン部材を提供することは、本発明の目的である。
【0004】
ポリオレフィン部材を製造する改善された方法を提供することは、本発明のもうひとつの目的である。
【0005】
その改善は、例えば、部材またはその製造プロセスの再現性を向上させおよび/または質を改善させうる。
【0006】
[発明の開示]
本発明の上記の目的および/または他の目的の1つもしくは複数は、ポリオレフィン部材を生産するための方法により実現され、その方法は、ポリオレフィンと溶媒とを含んでなる溶液を調製することと、その溶液を空隙に押出または紡糸して流体部材を形成することとを含む。流体部材は、その後冷却されて、溶媒含有ゲル部材を形成して、固体部材を形成する。部材から少なくとも一部溶媒を除去する前、その間および/または後に、部材は、さらに延伸される。冷却には、冷却浴への流体部材の移送が含まれる。本発明の第一実施形態において、冷却浴は、1つの有機相および1つの水系相、ならびにアリールスルホン酸を含んでなる消泡剤を含んでなり、好ましくは、消泡剤がアルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸(例えば、ジノニルナフチルスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸等)を含んでなる。
【0007】
驚くべきことに、このような消泡剤の添加が、生産される部材の質を改善させることが判明した。例えば、アリールスルホン酸の添加は、高分子シート部材の表面欠陥の数を低減させる。アルキルベンゼンスルホン酸および/またはアルキルナフチルスルホン酸を含んでなる消泡剤の使用は、効果的であると判明され、低分子量の芳香族部分とアルキル部分の組み合わせが親水性の高いスルホ基に適切な平衡を提供する(それらに限定されない)と推測されうる。この群からの特に好適な例は、ジノニルナフチルスルホン酸および/またはドデシルベンゼンスルホン酸を含んでなる消泡剤であり、これらは、例えば、Innospec Inc.の製品Stadis(登録商標)(例、Stadis(登録商標)450等)、およびStatsafe(登録商標)(例、Statsafe(登録商標)6000等)で市販されている。これらのうち、Statsafe(登録商標)6000におけるようにドデシルベンゼンスルホン酸は、殆どの溶媒がヘプタンであり、安定した工業溶液を調製するのに多量のベンゼンもトルエン必要としないので環境上の観点からより受け入れ可能なので、好ましい。
【0008】
消泡剤は、1種もしくは複数種のさらなる成分を含んでなってもよい。例えば、消泡剤は、消泡薬(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸と別のアルキルベンゼンスルホン酸との組み合わせまたは別のタイプの消泡剤)、界面活性剤、溶媒、懸濁助剤、防汚剤等)などのさらなる活性成分を含んでなってもよい。
【0009】
冷却浴は、1つの本質的に水系の相と1つの有機相とを有する2相冷却浴であるのが好ましい。消泡剤は、有効量で添加されるのが望ましい。典型的に、有効量は、約3ppm超である。即ち、冷却液(水系相および有機系相の総量)1Kg当り少なくとも1種の上記の化合物を含んでなる消泡剤約3mg超。好適な一実施形態において、消泡剤は、質量に基づいて4ppm〜20ppmの冷却浴内の濃度に加えられる。この濃度は、ポリオレフィンに対して殆どの場合において適切である。高性能のポリエチレンおよびポリプロピレン繊維系部材を製造するために、5ppm〜15ppmの冷却浴内の消泡剤の濃度を利用するのは、生産される部材および再循環される有機材料(溶媒および/または冷却液)の汚染を許容基準に制限する一方、必要とされる消泡効果の実現を見込むので、好ましい。
【0010】
冷却浴は、1相冷却浴でもよく、その場合においては、水は熱容量および熱伝導が高い故に、水相が好ましい。この場合において、消泡剤を添加して、冷却浴の表面での溶媒の気泡または液滴の生成を回避してもよい。
【0011】
消泡剤の濃度は、添加後、特にプロセスがプロセスの1つもしくは複数の成分(例、ポリオレフィンもしくは溶媒および/または冷却浴の有機相等)の再循環を利用するプロセス環境で実施されると、確定するのが難しい場合もある。故に、発明者らが有効量を冷却浴の有機相の導電率と定義したのは、十分に認められるだろう。その有効量が、少なくとも800pS/m[ピコジーメンス/メートル]の導電率をもたらすことが判明した。実験の部に記載される通りに、導電率を測定する。好適な一実施形態において、有機相の導電率は、1000pS/m〜3000pS/mである。この導電率は、ポリオレフィンに対して殆どの場合において適切である。高性能ポリエチレンおよびポリプロピレン繊維系部材の製造のために、冷却浴内の有機相の導電率を1500pS/m〜2500pS/mに調節することが好ましく、有機相の導電率が2000pS/m〜2300pS/mであるのは、これが生産された部材および再循環された有機材料(溶媒および/または冷却液)の汚染を許容基準に制限する一方、必要とされる消泡効果の実現を見込むので、最も好ましい。
【0012】
押出後、溶媒は、ポリオレフィン部材から少なくとも一部除去される。これは、ポリオレフィン部材の延伸の前、その間および/または後に実施されてもよい。溶媒は、例えば、蒸発または押出によって少なくとも一部除去されてもよい。
【0013】
部材を延伸して、ポリオレフィンのフィブリルをアラインメントし、それによって、特性(例、強度およびヤング率等)が向上する。伸張は、1段階で実施されても複数段階で実施されてもよく、また連続プロセスで実施されてもバッチプロセスで実施されてもよい。連続プロセスにおいて数回の伸張段階を利用することは、コスト効率がより高いプロセスと考えられるので、好ましい。
【0014】
延伸率は、ポリオレフィン部材の形状および対象とする用途によって変わる。典型的には、ポリオレフィン部材は、縦方向に少なくとも2倍に延伸される。縦方向でのフィブリルのアラインメントをさらに向上させるために、ポリオレフィン部材を縦方向に少なくとも10倍に延伸するのが好ましい。特に薄帯状の部材および繊維に対しては、ポリオレフィン部材を縦方向に少なくとも100倍に延伸するのが好ましく、繊維ポリオレフィン部材にとって、高い延伸率(例えば、1000〜5000倍等)は、きわめて有利で、非常に高い繊維の比強度をもたらすことが判明した。別の一実施形態において、ポリオレフィン部材は、シート部材であり、ポリオレフィン部材は、縦横方向に面積で少なくとも8倍に2軸延伸される。例えば、非常に高強度が必要とされるならば、ポリオレフィン部材が、面積で少なくとも25倍(例えば、縦方向に6.25倍と横方向に4倍とを組み合わせる等)に2軸延伸されるのは、有利であることが判明した。原則として、シートは、他の方向(例、縦方向に対して45°等)に延伸されてもよいが、しかしながらこれは、好適な実施形態ではない。例えば面積で15〜50倍のような高い伸張率は、例えば70〜95%の高い開気孔率を有する高い比強度を見込む点に利点がある。
【0015】
特に好適な一実施形態において、ポリオレフィンと溶媒とから調製される溶液は、アリールスルホン酸からなる群から選択される消泡剤をさらに含んでなる。これは、本発明の第二態様の利点を本発明の第一態様に含むことを考慮に入れる。きわめて好適な一実施形態において、溶液に含まれる消泡剤は、冷却浴に含まれる消泡剤と同じ(組み合わせ)である。このように、少なくとも一部の消泡剤が、ゲル押出された(geltruded)部材を介して冷却浴に提供されてよい。これは、例えば、溶液に使用される溶媒が再循環される場合に、それは生成される廃棄物の量を減らすだけでなく、再循環に先立って溶媒を洗浄する必要性を低減するので、有利になりうる。
【0016】
本発明の別の一実施形態において、本発明の上記のおよび/または他の目的の1つもしくは複数は、ポリオレフィン部材を生産するための方法により実現され、その方法において、溶液は、アリールスルホン酸を含んでなる消泡剤をさらに含んでなり、消泡剤は、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフチルスルホン酸(例えば、ジノニルナフチルスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸等)を含んでなる。上記の消泡剤の1種もしくは複数種の添加は、溶液の生成中に気泡の生成を回避するまたは低減するだけでなく、安定した溶液の生成を促す。これは、例えば、未溶解のポリオレフィン粒子の存在によって起こる(表面)欠陥の集中を減らすことにより、改善された加工性を導き、また改善された製品を導く場合もある。
【0017】
消泡剤が少なくとも800pS/mに溶液の導電率を調節する量で添加されるのは、好ましい。消泡剤が1000pS/m〜3000pS/mに溶液の導電率を調節する量で添加されるのは、さらに好ましい。この導電率は、ポリオレフィンに対して殆どの場合に適切である。高性能のポリエチレン繊維系部材を製造するためには、消泡剤が1500pS/m〜2500pS/mに溶液の導電率を調節する量で添加されるのが好ましく、消泡剤が2000pS/m〜2300pS/mに溶液の導電率を調節する量で添加されるのが最も好ましい。
【0018】
冷却浴は、2つの相を有し好ましくは本発明の第一態様に記載されたような消泡剤を含んでなる本発明の第一態様に記載されたようなタイプであるのがきわめて好ましい。本発明の第二態様に従って生産される部材もまた、延伸されるのが望ましく、同じ好適な実施形態が、本発明の第一態様に従って本発明の第二態様に適用する。
【0019】
本発明のさらなる一態様は、ポリオレフィン部材の製造における消泡剤の使用に関し、消泡剤は、アリールスルホン酸を含んでなり、好ましくは、消泡剤がアルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸(例えば、ジノニルナフチルスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸等)を含んでなる。その使用は、例えば、本発明の第一および第二態様に記載されている通りでありうる。UHMwPEは高粘性溶液を形成する傾向がある故に処理するのが特に困難であるので、発明者らは、このタイプの消泡剤は、ポリエチレン、特にUHMwPEに基づいたポリエチレン部材の製造に特に有利であると見出した。
【0020】
本発明は、また0.01ppm〜100ppmのアリールスルホン酸を含んでなるゲル押出ポリオレフィン部材にも関する。その部材は、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸(例えば、ジノニルナフチルスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸等)を含んでなるのが好ましい。好適な一実施形態において、ゲル押出されたポリオレフィン部材は、5dl/g超のIVを有する伸張されたUHMwPE繊維を含んでなり、これは、非常に良好な機械特性(例、高い引張り強さ、モジュラス、および破壊時のエネルギー吸収等)を有する部材を提供する。10dl/g超のIVを有するポリエチレンが選択されるのがさらに好ましい。これは、このようなUHMwPE糸をゲル紡糸して作製される糸は、高強度、低い相対密度、良好な耐加水分解性、および優れた摩耗性を提供するからである。適切なUHMwPEは、典型的に少なくとも5dl/g、好ましくは約8〜40dl/g、さらに好ましくは10〜30、または12〜28、もしくは15〜25dl/gの固有粘度を有する。
【0021】
UHMwPEのゲル紡糸は、欧州特許出願公開第0205960A号明細書、欧州特許出願公開第0213208A1号明細書、米国特許第4413110号明細書、国際公開第01/73173 Al号パンフレット、およびAdvanced Fiber Spinning Technology,ED.T.Nakajim,Woodhead Publ.Ltd(1994)、ISBN 1−855−73182−7、ならびにそれらの中に引用された参考文献をはじめとする様々な公報に記載されてきた。これらの公報は、参照されて本明細書に組み込まれている。故に、本発明の一態様に従って、流体組成は、溶媒に溶かされたUHMwPEの溶液であり、その方法は、少なくとも一部溶媒を除去する工程を含む。
【0022】
その方法において、UHMwPEのゲル紡糸用の任意の公知の溶媒を使用することができる。紡糸溶媒の適切な例として、脂肪族および脂環式炭化水素(例、オクタン、ノナン、デカンおよびパラフィン(それらの異性体を含む));石油留分;鉱油;灯油;芳香族炭化水素(例、トルエン、キシレン、およびナフタレン(それらの水素化誘導体(例、デカリンおよびテトラリン)を含む));ハロゲン化炭化水素(例、モノクロロベンゼン);およびシクロアルカンまたはシクロアルケン(例、カレン(careen)、フッ素、カンフェン、メンタン、ジペンテン、ナフタレン、アセナフタレン(acenaphtalene)、メチルシクロペンタジエン、トリシクロデカン、1,2,4,5−テトラメチル−1,4−シクロヘキサジエン、フルオレノン、ナフトインダン(naphtindane)、テトラメチル−p−ベンゾジキノン、エチルフルオレン、フルオランテン、およびナフテノン)が挙げられる。上に列挙した紡糸溶媒の組合せも、UHMwPEのゲル紡糸に使用してよく、簡素化のため、この溶媒の組合せも同様に紡糸溶媒と称する。一実施形態において、選択の紡糸溶媒は、室温で低い蒸気圧を有する(例、パラフィン油)。本発明の方法は、例えば、デカリン、テトラリンおよび灯油グレード(grades)のように室温で比較的揮発性の紡糸溶媒に、特に有利であることが見出された。紡糸溶媒がデカリンであるのが最も好ましい。
【0023】
ゲル紡糸され縦延伸されたUHMwPEテープは、非常に高い靭性を有する。UHMwPEテープが、少なくとも20cN/dtex、好ましくは少なくとも25cN/dtex、なおさらに好ましくは少なくとも30cN/dtex、最も好ましくは少なくとも35cN/dtexの靭性を有するのが好ましい。テープが、延伸されたUHMwPEテープであることから、このような高い靭性が、得られることができる。
【0024】
さらに、ゲル紡糸され縦延伸されたUHMwPEテープは、非常に高いモジュラスを有する。テープは、好ましくは少なくとも600cN/dtex、さらに好ましくは少なくとも900cN/dtex、なおさらに好ましくは少なくとも1300cN/dtexのモジュラスを有する。
【0025】
ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、または本方法に従ってゲル押出できる任意の他の適切なポリマーであってよい。好適な一実施形態において、ポリオレフィンは、高分子量ポリエチレン(HMwPE)または超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)である。HMwPEまたはUHMwPEとは、最終の乾燥された部材の総重量の75重量%でHMwPEまたはUHMwPEを含んでなるテープを意味する。その比率は、好ましくは少なくとも90重量%、そして最も好ましくは100重量%である。部材が、HMwPEとUHMwPEの組み合わせから作製される場合、結果として生じる部材は、HMwPEとUHMwPEの比率に応じて、HMwPEテープでもUHMwPEテープでもよい。
【0026】
高分子量ポリエチレン(HMwPE)とは、本明細書において、50,000〜400,000の分子量を有するポリエチレンを意味する。超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)は、本明細書において少なくとも400,000の分子量を有するポリエチレンと定義される。UHMwPEは、数百万までの分子量を有してもよい。特に明記されない限り、本明細書で称する分子量は、重量平均分子量(Mw)である。
【0027】
分子量を測定するのに固有粘度を用いてもよい。固有粘度は、実際のモル質量パラメーター(例、MnおよびMw等)よりも容易に測定できるモル質量(分子量とも呼ばれる)の尺度である。PTC−179法(Hercules Inc.Rev.1982年4月29日)に従い、デカリン中135℃で、溶解時間を16時間とし、DBPCを酸化防止剤として溶液中2g/lの量で用いてIVを測定し、種々の濃度における粘度を濃度ゼロに外挿する。IVとMwの間にいくつかの実験式があるが、このような式は、モル質量分布に大きく左右される。式Mw=5.3710[IV]1.37(欧州特許出願公開第0504954A1号明細書参照)に基づいて、4.5dl/gのIVは、約4.2x10g/molのMwに等しいだろう。
【0028】
5dl/gを超えるIVを有する伸張されたUHMwPE繊維は、それらの長い分子鎖のために、非常に良好な機械特性(例、高い引張り強さ、モジュラス、および破壊時のエネルギー吸収等)を有する。10dl/gを超えるIVを有するポリエチレンを選択するのが、さらに好ましい。これは、UHMwPE糸のようなゲル紡糸によって作製された糸は、高強度、低い相対密度、良好な耐加水分解性、および優れた摩耗性の組み合わせを提供するからである。適切なUHMwPEは、典型的に少なくとも5dl/g、好ましくは約8〜40dl/g、さらに好ましくは10〜30、または12〜28、もしくは15〜25dl/gの固有粘度を有する。
【0029】
本発明のHMwPEおよびUHMwPEは、直鎖ポリエチレン、つまり100個の炭素原子当り1つ未満の側鎖または分岐鎖、好ましくは300個の炭素原子当り1つ未満の側鎖を有するポリエチレンであるのが好ましく、1つの分岐鎖は、一般的に少なくとも10個の炭素原子を含有する。ポリエチレンのみが存在するのが好ましいが、別の方法として、ポリエチレンは、それと共重合してもしなくてもよい5モル%までのアルケン(例、プロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテンまたはオクテン等)をさらに含有してもよい。ポリエチレンは、このような繊維に慣例である添加剤(例、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤等)を15重量%、好ましくは1〜10重量%までさらに含有してもよい。
【0030】
[実施例]
・導電率:20℃でEMCEE Electronics Model 1152 Digital Conductivity Meterにより冷却浴の有機相の導電率を測定する。
・IV:PTC−179法(Hercules Inc.Rev.1982年4月29日)に従い、デカリン中135℃で、溶解時間を16時間とし、DBPCを酸化防止剤として溶液中2g/lの量で用い、種々の濃度における粘度を濃度ゼロに外挿することにより、固有粘度を測定する。
・側鎖:厚さ2mmの圧縮成形フィルム上でFTIRにより、NMR測定値に基づく検量線を用いて、1375cm‐1での吸収量を定量化することにより、UHMwPE試料中の側鎖の数を決定する(例えば、欧州特許第0269151号明細書のように)。
【0031】
[実施例1:UHMwPE繊維材料の調製]
溶媒(デカリン)中でUHMwPE粉末と消泡剤を混合して、約10%の最終濃度のUHMwPEを得て、溶液を形成した。その後、ツインブレード押出機を用いて溶液を押出し、流体部材を得て、流体部材を冷却し、伸張して、固体部材を形成した。その方法は、国際公開第2005/066401号パンフレットにさらに記載されている。
【0032】
溶液の挙動および冷却浴内の発砲形成を観察した。
【0033】
【表1】

【0034】
本明細書に記載される本発明の実施形態からの単一もしくは組み合わせの特徴だけでなく、それらの明白な変形形態も、当業者が結果としての実施形態が物理的に実現可能でないと直ちに悟らない限り、本明細書に記載される他の実施形態の特徴と組み合わせ可能、または取り替え可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン部材の製造における消泡剤の使用であって、前記消泡剤が、アリールスルホン酸を含んでなり、好ましくは前記消泡剤が、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸(例えば、ジノニルナフチルスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸等)を含んでなる消泡剤の使用。
【請求項2】
ポリオレフィン部材を生産する方法であって、
ポリオレフィンと溶媒とを含んでなる溶液を調製する工程と、
前記溶液を空隙に押出または紡糸して流体部材を形成する工程と、
前記流体部材を冷却して溶媒を含有するゲル部材を形成する工程と、
前記部材を延伸する前、その間、および/または後に、前記ゲル部材から前記溶媒を少なくとも一部除去して、固体部材を形成する工程とを含み、
前記溶液が、さらにアリールスルホン酸を含んでなる消泡剤を含んでなり、好ましくは前記消泡剤がアルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸(例えば、ジノニルナフチルスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸等)を含んでなる方法。
【請求項3】
前記消泡剤を添加して、前記溶液の導電率を1000pS/m〜3000pS/mに調節する工程をさらに含み、さらに好ましくは前記消泡剤が添加されて、前記溶液の前記導電率を1500pS/m〜2500pS/mに調節する、最も好ましくは前記消泡剤が添加されて、前記溶液の前記導電率を2000pS/m〜2300pS/mに調節する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却は、前記流体部材を冷却浴に移送することを含み、前記冷却浴が、1つの有機相と1つの水系相を有する2相冷却浴であり、好ましくは前記有機相の導電率が、1000pS/m〜3000pS/mであり、さらに好ましくは前記有機相の導電率が、1500pS/m〜2500pS/mであり、最も好ましくは前記有機相の導電率が、2000pS/m〜2300pS/mである請求項2もしくは3に記載の方法。
【請求項5】
前記冷却浴が、アリールスルホン酸を含んでなる消泡剤を含んでなり、好ましくは前記消泡剤が、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸(例えば、ジノニルナフチルスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸等)を含んでなる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオレフィン部材が、その縦方向に少なくとも3倍延伸され、好ましくは前記ポリオレフィン部材が、その縦方向に少なくとも10倍延伸され、さらに好ましくは前記ポリオレフィン部材が、その縦方向に少なくとも100倍伸張される請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィン部材が、シート部材であり、前記ポリオレフィン部材が、面積で少なくとも10倍に2軸延伸され、好ましくは前記ポリオレフィン部材が、面積で少なくとも25倍に2軸延伸される請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリオレフィン部材を生産する方法であって、
ポリオレフィンと溶媒とを含んでなる溶液を調製する工程と、
前記溶液を空隙に押出または紡糸して流体部材を形成する工程と、
前記流体部材を冷却して溶媒を含有するゲル部材を形成する工程と、
前記部材を延伸する前、その間、および/または後に、前記ゲル部材から前記溶媒を少なくとも一部除去して、固体部材を形成する工程とを含み
前記冷却が、前記流体部材を1つの有機相と1つの水系相を含んでなる冷却浴に移送することを含み、
前記冷却浴が、アリールスルホン酸を含んでなる消泡剤を含んでなり、好ましくは前記消泡剤が、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸(例えば、ジノニルナフチルスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸等)を含んでなる方法。
【請求項9】
前記冷却浴内の消泡剤の濃度が、4ppm〜20ppmであり、前記冷却浴内の前記消泡剤の濃度が、5ppm〜15ppmである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記冷却浴が、1つの有機相と1つの水系相を有する2相冷却浴であり、好ましくは前記有機相の導電率が、1000pS/m〜3000pS/mであり、さらに好ましくは前記有機相の導電率が、1500pS/m〜2500pS/mであり、最も好ましくは前記有機相の導電率が、2000pS/m〜2300pS/mである請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリオレフィン部材が、その縦方向に少なくとも2倍延伸され、好ましくは前記ポリオレフィン部材が、その縦方向に少なくとも10倍延伸され、さらに好ましくは前記ポリオレフィン部材が、その縦方向に少なくとも100倍延伸される請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリオレフィン部材が、シート部材であり、前記ポリオレフィン部材が、面積で少なくとも8倍に2軸延伸され、好ましくは前記ポリオレフィン部材が、面積で少なくとも25倍に2軸延伸される請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液が、アリールスルホン酸を含んでなる消泡剤をさらに含んでなり、好ましくは前記消泡剤が、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸を含んでなり、さらに好ましくは前記消泡剤が、前記冷却浴内に含まれる前記消泡剤と同一である請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
0.01ppm〜100ppmのアリールスルホン酸を含んでなるゲル押出された(geltruded)ポリオレフィン部材であって、好ましくは前記部材が、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフチルスルホン酸(例えば、ジノニルナフチルスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸等)を含んでなるポリオレフィン部材。
【請求項15】
前記部材が、ゲル紡糸されたポリオレフィン繊維、ポリオレフィンテープまたはゲル押出されたシート部材である請求項14に記載のポリオレフィン部材。

【公表番号】特表2013−500367(P2013−500367A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522132(P2012−522132)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060805
【国際公開番号】WO2011/012578
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】