説明

ポリオール部分エステルの製造方法

【課題】ポリオール部分エステルを選択的に製造することができるポリオール部分エステルの製造方法の提供。
【解決手段】本発明は、ヒンダードポリオールと、脂肪酸メチルエステルとを、無溶媒条件下、減圧度1kPa〜90kPaの減圧条件下、及び20℃〜100℃の温度条件下で、リパーゼを用いて反応させることを含むことを特徴とする。脂肪酸メチルエステルが、飽和及び不飽和のいずれかの炭素数6〜18のメチルエステルである態様、ヒンダードポリオールが、トリメチロールプロパン及びネオペンチルグリコールのいずれかである態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール部分エステルの製造方法に関し、特に、ヒンダードポリオールと、脂肪酸メチルエステルとを、温和な条件下で、リパーゼを用いて反応させるポリオール部分エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリオールの広義なエステル化反応の触媒として、アルカリ触媒や酸触媒は良く知られている。例えば、触媒として重曹を用いた場合は、反応温度が高温(150〜220℃)であり、また、部分エステル化物の生成を制御することが困難であるという問題がある。
上記問題に対して、ポリオールのエステル化を温和な条件下で進行させ、精製工程における触媒の処理を容易にするために、触媒としてリパーゼを用いたポリオールのエステル化が検討されている。
触媒としてリパーゼを用いたポリオールのエステル化として、2価カルボン酸エステルと水酸基を3個以上含有するアルコールとを、水不溶有機溶媒の存在下で、リパーゼを用いてエステル交換反応させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法においては、水不溶有機溶媒の存在下で反応を行っているので、混合及び精製などにおいて問題がある。
また、触媒としてリパーゼを用いたポリオールのエステル化として、β−位炭素上に水素原子を有しないポリオールと脂肪酸とを、リパーゼの存在下、水/有機溶媒の2相系において反応させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法においては、水/有機溶媒の2相系において反応を行っているので、混合及び精製などにおいて問題がある。
また、触媒としてリパーゼを用いたポリオールのエステル化として、溶融したエステル交換用有機原料に、実質的に無溶媒かつ無水条件下で、アルカリゲネス属に属する微生物から得られるリパーゼを、81〜130℃で作用させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法においては、エステル化反応を制御して、選択的に部分エステル化物を生成することができないという問題がある。
また、触媒としてリパーゼを用いたポリオールのエステル化として、酵素の存在下で、アルコールと、ヒドロキシ脂肪酸および/またはヒドロキシ脂肪酸アルキルエステルとを、場合により溶剤中で、必要により、大気圧よりも低い圧力および20℃〜110℃の温度において反応で生成する水またはアルコールを除去しながら、反応させる方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この方法においては、エステル化反応を制御して、選択的に部分エステル化物を生成することができないという問題がある。
また、触媒としてリパーゼを用いたポリオールのエステル化として、リパーゼ存在下、モノアルコール、多価アルコール部分エステルからなる群から選ばれる水酸基含有化合物と脂肪酸とをエステル化反応させる方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。しかし、この方法においては、エステル化反応を制御して、選択的に部分エステル化物を生成することができないという問題がある。
また、触媒としてリパーゼを用いたポリオールのエステル化として、グリセリンにおける1位及び3位の水酸基を選択的にエステル化する方法は既に公知であるが、立体障害が大きいヒンダードポリオールにおける等価な水酸基を選択的にエステル化する方法は、未だ確立されていないのが現状である。
【0003】
【特許文献1】特開2008−214417号公報
【特許文献2】特開昭62−296884号公報
【特許文献3】特開平7−79786号公報
【特許文献4】特開2002−191389号公報
【特許文献5】特開2006−325465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ポリオール部分エステルを選択的に製造することができるポリオール部分エステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> ヒンダードポリオールと、脂肪酸メチルエステルとを、無溶媒条件下、減圧度1kPa〜90kPaの減圧条件下、及び20℃〜100℃の温度条件下で、リパーゼを用いて反応させることを含むことを特徴とするポリオール部分エステルの製造方法である。
該<1>に記載のポリオール部分エステルの製造方法では、ヒンダードポリオールと、脂肪酸メチルエステルとが、無溶媒条件下、減圧度1kPa〜90kPaの減圧条件下、及び20℃〜100℃の温度条件下で、リパーゼが用いられて反応させられる。その結果、ポリオール部分エステルが選択的に製造される。
<2> 脂肪酸メチルエステルが、飽和及び不飽和のいずれかの炭素数6〜18のメチルエステルである前記<1>に記載のポリオール部分エステルの製造方法である。
<3> ヒンダードポリオールが、トリメチロールプロパン及びネオペンチルグリコールのいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載のポリオール部分エステルの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ポリオール部分エステルを選択的に製造することができるポリオール部分エステルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(ポリオール部分エステルの製造方法)
本発明のポリオール部分エステルの製造方法は、少なくとも反応工程を含み、さらに必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0008】
<ポリオール部分エステル>
前記ポリオール部分エステルとしては、ヒンダードポリオールのエステル化合物であり、且つ、ヒンダードポリオールの未反応水酸基を1個以上有するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒンダードポリエステルがネオペンチルグリコールの場合は、モノエステル体が挙げられ、トリメチロールプロパンの場合は、モノエステル体又はジエステル体の各単品が挙げられ、ペンタエリスリトールの場合は、モノエステル体、ジエステリ体、又はトリエステル体の各単品が挙げられる。
【0009】
<反応工程>
前記反応工程は、ヒンダードポリオールと、脂肪酸メチルエステルとを、無溶媒条件下、減圧度1kPa〜90kPaの減圧条件下、及び20℃〜100℃の温度条件下で、リパーゼを用いて反応させる工程である。
【0010】
<<ヒンダードポリオール>>
前記ヒンダードポリオールとしては、ヒンダード炭素を含有し、2個以上の水酸基を有するポリオールである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、などが挙げられる。
中でも、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンが、反応温度が低くても(温和な条件下)反応進行するという利点があり、好ましい。
【0011】
<<脂肪酸メチルエステル>>
前記脂肪酸メチルエステルとしては、炭素数6〜18の脂肪酸のメチルエステルである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カプロン酸メチル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミルスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、パームオレイン酸メチル、などが挙げられる。
中でも、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチルが、融点が低く、低温での反応が可能となる点で、好ましい。
【0012】
<<ヒンダードポリオールに対する脂肪酸メチルエステルの定量比>>
前記ヒンダードポリオールに対する脂肪酸メチルエステルの定量比(脂肪酸メチルエステル/ヒンダードポリオール)は、特に制限はなく、原料の種類や合成するポリオール部分エステルに合わせて適宜選択することができるが、ヒンダードポリオールが2個のヒドロキシル基を有する場合、1〜3倍モルが好ましく、ヒンダードポリオールが3個のヒドロキシル基を有する場合、1〜5倍モルが好ましく、ヒンダードポリオールが4個のヒドロキシル基を有する場合、1〜8倍モルが好ましい。
【0013】
<<減圧度>>
前記減圧度としては、1kPa〜90kPaである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.5kPa〜90kPaが好ましい。前記減圧度が1kPa未満であると、低沸点の原料を用いた場合原料が留出するメタノールと共沸してしまうため、好ましくなく、前記減圧度が90kPaを超えると、反応系中で生成したメタノールが留出しにくくなる。
【0014】
<<温度>>
前記温度としては、20℃〜100℃である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、45℃〜80℃が好ましい。前記温度が45℃未満である又は80℃を超えると、酵素の触媒活性が低下して反応が進行しにくくなることがある。
【0015】
<<リパーゼ>>
前記リパーゼは、加水分解酵素の一種であり、樹脂等の担体に担持させた固定化酵素として使用することもできるし、粉末として使用することもできる。
前記リパーゼとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、シュードモナス(Psedomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、キャンディダ(Candida)属、リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギル(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属などの微生物から得られる種々の起源のものが挙げられる。
前記リパーゼの市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Novozym、Lipozym(ノボザイムジャパン社製)、ニューラーゼ(天野エンザイム社製)、ウマミザイム(天野エンザイム社製)、プロレザー(天野エンザイム社製)、などが挙げられる。
中でも、Novozym(登録商標)435として市販されている固定化リパーゼが、触媒として失活しにくい点で、好ましい。
前記リパーゼの添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ヒンダードポリオール及び前記脂肪酸メチルエステルの総質量に対して1質量%〜10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。前記リパーゼの添加量が1質量%未満であると、反応速度が遅いことがあり、10質量%を超えても、さらなる選択率の向上は期待できないこともあり、またコスト面、攪拌・濾過効率を考慮すると好ましくないことがある。
【0016】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、精製工程、などが挙げられる。
【0017】
<<精製工程>>
前記精製工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、触媒としてのリパーゼを濾別する触媒濾別工程、残留する脂肪酸メチルエステルを単蒸留にて除去する脂肪酸メチルエステル除去工程、などが挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
冷却管を取り付けたフラスコに、カプリル酸メチル(パステルM−08、ライオン株式会社製、分子量158.24)59.34g、トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製、分子量134.18)10g、及び触媒としてのNovozym(登録商標)435(キャンディダ属、ノボザイムジャパン社製)2.28gを加え、無溶媒条件下、減圧度3.5kPaの減圧条件下、及び65℃の温度条件下で、生成するメタノールを除去しながら10時間反応させた。触媒(Novozym(登録商標)435)を濾別し、残留するカプリル酸メチルを単蒸留にて除去した。ガスクロマトグラフィー(HP−5890、ヒューレットパッカード製)で反応液を測定した結果、トリメチロールプロパンジカプリレートが選択率82%で得られたことが分かった。
なお、ガスクロマトグラフィーの測定条件は、以下に示す通りである。
カラム:HP ULTRA2
オーブン温度:80〜330℃、10℃/min
気化室温度:330℃
検出器温度:330℃(FID)
キャリアガス:He
【0020】
また、選択率(%)は、下記式(1)により算出される。
選択率(%)=反応液中の部分エステル化物のピーク面積/反応液中の全反応生成物のピーク面積×100・・・(1)
なお、全反応生成物とは、原料以外の化合物で、反応開始後に生成した物である。
【0021】
(実施例2)
実施例1において、反応時間を10時間から3時間に変えた以外は、実施例1と同様にして、反応させ、触媒を濾別し、残留するカプリル酸メチルを単蒸留にて除去し、反応液を測定した。その結果、トリメチロールプロパンモノカプリレートが選択率81%で得られたことが分かった。
【0022】
(実施例3)
冷却管を取り付けたフラスコに、カプリル酸メチル(パステルM−08、ライオン株式会社製、分子量158.24)23.7g、トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製、分子量134.18)10g、及び触媒としてのNovozym(登録商標)435(キャンディダ属、ノボザイムジャパン社製)2.28gを加え、無溶媒条件下、減圧度3.5kPaの減圧条件下、及び65℃の温度条件下で、生成するメタノールを除去しながら5時間反応させた。触媒(Novozym(登録商標)435)を濾別し、残留するカプリル酸メチルを単蒸留にて除去した。ガスクロマトグラフィー(HP−5890、ヒューレットパッカード製)で反応液を測定した結果、トリメチロールプロパンジカプリレートが選択率68%で得られたことが分かった。
【0023】
(実施例4)
実施例1において、反応温度を65℃から95℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、反応させ、触媒を濾別し、残留するカプリル酸メチルを単蒸留にて除去し、反応液を測定した。その結果、トリメチロールプロパンジカプリレートが選択率71%で得られたことが分かった。
【0024】
(実施例5)
冷却管を取り付けたフラスコに、ラウリン酸メチル(パステルM−12、ライオン株式会社製、分子量214.34)80.4g、トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製、分子量134.18)10g、及びNovozym(登録商標)435(キャンディダ属、ノボザイムジャパン社製)2.9gを加え、無溶媒条件下、減圧度3.5kPaの減圧条件下、及び65℃の温度条件下で、生成するメタノールを除去しながら1時間反応させた。触媒(Novozym(登録商標)435)を濾別し、残留するラウリン酸メチルを単蒸留にて除去した。ガスクロマトグラフィー(HP−5890、ヒューレットパッカード製)で反応液を測定した結果、トリメチロールプロパンモノラウレートが選択率89%で得られたことが分かった。
【0025】
(実施例6)
冷却管を取り付けたフラスコに、カプリル酸メチル(パステルM−08、ライオン株式会社製、分子量158.24)11.86g、ネオペンチルグリコール(三菱ガス化学株式会社製、分子量104.15)7.8g及びNovozym(登録商標)435(キャンディダ属、ノボザイムジャパン社製)0.98gを加え、無溶媒条件下、減圧度3.5kPaの減圧条件下、及び65℃の温度条件下で、生成するメタノールを除去しながら1時間反応させた。触媒(Novozym(登録商標)435)を濾別し、残留するカプリル酸メチルを単蒸留にて除去した。ガスクロマトグラフィー(HP−5890、ヒューレットパッカード製)で反応液を測定した結果、ネオペンチルグリコールモノカプリレートが選択率71%で得られたことが分かった。
【0026】
(実施例7)
実施例1において、減圧度を3.5kPaから80kPaに変えた以外は、実施例1と同様にして、反応させ、触媒を濾別し、残留するカプリル酸メチルを単蒸留にて除去し、反応液を測定した。その結果、トリメチロールプロパンジカプリレートが選択率79%で得られたことが分かった。
【0027】
(比較例1)
冷却管を取り付けたフラスコに、カプリル酸メチル(パステルM−08、ライオン株式会社製、分子量158.24)59.34g、トリメチロールプロパン(三菱ガス化学株式会社製、分子量134.18)10g、及び重曹(炭酸水素ナトリウム(Cat.No.37116−00)、関東化学株式会社製)2.28gを加え、無溶媒条件下、減圧度3.5kPaの減圧条件下、及び170℃の温度条件下で、生成するメタノールを除去しながら10時間反応させた。触媒(重曹)を濾別し、残留するカプリル酸メチルを単蒸留にて除去した。ガスクロマトグラフィー(HP−5890、ヒューレットパッカード製)で反応液を測定した結果、トリメチロールプロパンモノカプリレートが選択率1%で得られ、トリメチロールプロパンジカプリレートが選択率19%で得られたことが分かった。
【0028】
(比較例2)
実施例1において、カプリル酸メチル(パステルM−08、ライオン株式会社製、分子量158.24)59.34gの代わりに、カプリル酸(n−オクタン酸、東京化成工業株式会社製、分子量144.21)53.7gを用い、反応時間を10時間から5時間に変えた以外は、実施例1と同様にして、反応させ、触媒を濾別し、反応液を測定した。その結果、トリメチロールプロパンモノカプリレートが選択率56%で得られ、トリメチロールプロパンジカプリレートが選択率9%で得られたことが分かった。
【0029】
(比較例3)
実施例1において、反応温度を65℃から110℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、反応させ、触媒を濾別し、残留するカプリル酸メチルを単蒸留にて除去し、反応液を測定した。その結果、トリメチロールプロパンモノカプリレートが選択率56%で得られ、トリメチロールプロパンジカプリレートが選択率は44%で得られたことが分かった。
【0030】
(比較例4)
実施例1において、減圧度を3.5kPaの減圧条件から常圧(101.3kPa)に変えて反応させた以外は、実施例1と同様にして、反応させ、触媒を濾別し、残留するカプリル酸メチルを単蒸留にて除去し、反応液を測定した。トリメチロールプロパンモノカプリレートが選択率9%で得られ、トリメチロールプロパンジカプリレートが選択率2%で得られたことが分かった。
【0031】
(比較例5)
実施例1において、カプリル酸メチル(パステルM−08、ライオン株式会社製、分子量158.24)59.34gの代わりに、オレイン酸(オレイン酸、関東化学株式会社製、分子量282.46)105.92gを用いた以外は、実施例1と同様にして、反応させ、触媒を濾別し、反応液を測定した。トリメチロールプロパンモノオレートが選択率1%で得られ、トリメチロールプロパンジオレートが選択率1%で得られた。
【0032】
(比較例6)
実施例1において、カプリル酸メチル(パステルM−08、ライオン株式会社製、分子量158.24)59.34gの代わりに、12−ヒドロキシステアリン酸(12−ヒドロキシステアリン酸、東京化成工業株式会社製、分子量300.48)112.68gを用いた以外は、実施例1と同様にして、反応させた。その結果、12−ヒドロキシステアリン酸の融点が78℃であるため反応中溶解しなかった。
【0033】
(比較例7)
実施例4において、カプリル酸メチル(パステルM−08、ライオン株式会社製、分子量158.24)59.34gの代わりに、12−ヒドロキシステアリン酸(12−ヒドロキシステアリン酸、東京化成工業株式会社製、分子量300.48)112.68gを用いた以外は、実施例4と同様にして、反応させた。その結果、トリメチロールプロパンモノ−12−ヒドロキシステアレートが選択率47%で得られ、トリメチロールプロパンジ−12−ヒドロキシステアレートが選択率27%で得られた。
【0034】
表1に、実施例1〜7及び比較例1〜7についての結果を示す。
なお、表1の「ヒンダード型ポリオール」の欄において、「TMP」は、トリメチロールプロパンを表し、「NP」は、ネオペンチルグリコールを表す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1より、トリメチロールプロパンと、脂肪酸メチルエステルとを、無溶媒条件下、減圧度1kPa〜90kPaの減圧条件下、及び20℃〜100℃の温度条件下で、リパーゼを用いて反応させた実施例1〜5及び7では、モノエステル及びジエステルのいずれかの選択率が65%以上となっており、ポリオール部分エステルが選択的に製造されている。
また、ネオペンチルグリコールと、脂肪酸メチルエステルとを、無溶媒条件下、減圧度1kPa〜90kPaの減圧条件下、及び20℃〜100℃の温度条件下で、リパーゼを用いて反応させた実施例6では、モノエステルの選択率が65%以上となっており、ポリオール部分エステルが選択的に製造されている。
一方、比較例1〜7では、モノエステル及びジエステルのいずれの選択率も65%未満となっており、ポリオール部分エステルが選択的に製造されていない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のポリオール部分エステルの製造方法により製造されたポリオール部分エステルは、様々な工業用途に用いられ、例えば、潤滑油、樹脂添加剤用途に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンダードポリオールと、脂肪酸メチルエステルとを、無溶媒条件下、減圧度1kPa〜90kPaの減圧条件下、及び20℃〜100℃の温度条件下で、リパーゼを用いて反応させることを含むことを特徴とするポリオール部分エステルの製造方法。
【請求項2】
脂肪酸メチルエステルが、飽和及び不飽和のいずれかの炭素数6〜18のメチルエステルである請求項1に記載のポリオール部分エステルの製造方法。
【請求項3】
ヒンダードポリオールが、トリメチロールプロパン及びネオペンチルグリコールのいずれかである請求項1から2のいずれかに記載のポリオール部分エステルの製造方法。

【公開番号】特開2010−148456(P2010−148456A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331208(P2008−331208)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】