説明

ポリカーボネートの製造方法

【課題】高品質のポリカーボネートを安定して効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって生成する溶融ポリカーボネートをリーフディスク型ポリマーフィルターを積層して収納された濾過装置を通してポリカーボネート樹脂を製造する方法において、前記濾過装置出口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C2)と前記濾過装置入口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C1)との差(C2-C1)が10ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂の製造方法に関し、詳しくは、異物が少なく且つフェノールに代表されるモノヒドロキシ化合物等の揮発性不純物が少ない高品質のポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性などの機械的特性や寸法安定性に優れている上、透明性にも優れた樹脂であり、各種の用途で利用されている。
ところで、ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、エステル交換法(溶融法)、ホスゲン法(界面重合法)等が挙げられるが、何れの方法においても、反応装置および反応後の高粘度物質の流路内で異物が発生するため、これを除去する必要があり、溶融状態のポリカーボネート樹脂をポリマーフィルターで処理する方法が採用され、また、それに関する種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、フィルターハウジングと金属エレメントとを水または窒素で置換して使用する方法(特許文献1及び特許文献2)、特定の保留粒子径を有するフィルターを使用し、特定の差圧で処理する方法(特許文献3)、特定構造のフィルターを使用する方法(特許文献4)、外径が15インチ(38.1cm)以下であり、内径/外径の比が1/7以上であり、目開きが40μm以下であるディスクタイプフィルターエレメントを複数枚積層して収納するフィルター装置を1つ以上使用する方法(特許文献5)が提案されている。これらの提案は、フィルターに滞留した空気が溶融樹脂と接触して樹脂の熱分解を生じ、このことがゲル化物発生の原因になるとの知見(特許文献1及び特許文献2)やフィルター内の滞留劣化の知見(特許文献3乃至特許文献5)に基づくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−291237号公報
【特許文献2】特開平11−291304号公報
【特許文献3】特開平2000−219737号公報
【特許文献4】特開平2001−9214号公報
【特許文献5】WO01/83584号公報
【特許文献6】特開平2003−48975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1乃至特許文献6の方法ではフェノール等の揮発性不純物が少ない高品質のポリカーボネート樹脂が得られないという問題がある。
従って、本発明の目的は、異物が少なく且つフェノール等の揮発性不純物の少ない高品質のポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、次のような知見を得た。すなわち、一般にポリカーボネート樹脂の製造においてはフィッシュアイ等の異物を除去する目的で、ポリカーボネート樹脂をペレット化する前に、リーフディスク型ポリマーフィルターが収納された濾過装置が配置され、溶融ポリカーボネートは濾過されるが、フィルター内部に滞留したポリカーボネートが熱劣化し、異物として製品中に混入したり、炭酸ジエステルやポリカーボネートの分解によりモノヒドロキシ化合物が再生する傾向を見出した。
【0007】
本発明は、上記の知見に基づき更に検討を重ねて完成されたものであり、各発明の要旨は次の通りである。
すなわち、本発明の第1の要旨は、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応により得られた溶融ポリカーボネートを、リーフディスク型ポリマーフィルターを積層して収納された濾過装置を通して、ポリカーボネート樹脂を製造する方法において、前記濾過装置出口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C2)と前記濾過装置入口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C1)との差(C2-C1)が10ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法に存する。尚、本発明においてC2がC1よりも小さい場合もその差は10ppm以下である。
【0008】
そして、第2の要旨は、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応により得られた溶融ポリカーボネートを、リーフディスク型ポリマーフィルターを積層して収納された濾過装置を通してポリカーボネート樹脂を製造する方法において、該濾過装置が略垂直竪型に配置され、該溶融ポリカーボネートが該濾過装置の下部より流入し、上部より流出することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法に存する。
【0009】
更に、第3の要旨は、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応により得られたポリカーボネート樹脂を、リーフディスク型ポリマーフィルターを積層して収納された濾過装置を通してポリカーボネート樹脂を製造する方法において、該リーフディスク型ポリマーフィルターが金属繊維焼結体と金属粉末焼結体の2以上の濾材からなり、該溶融ポリカーボネート流れ方向最下流の濾材の濾過精度の該溶融ポリカーボネート流れ方向最上流の濾材の濾過精度に対する比が0.10〜1.0であるポリカーボネート樹脂の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異物が少なく、且つ、フェノールに代表されるモノヒドロキシ化合物等の揮発性不純物量が少ない高品質のポリカーボネート樹脂を製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る濾過装置の断面図の一例を示す。
【図2】本発明に係るリーフディスク型ポリマーフィルターの一例を示す。
【図3】図2のリーフディスク型ポリマーフィルターの断面図の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
<エステル交換反応>
本発明においてはジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により溶融ポリカーボネートを得る。
ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;イソソルビト、イソマンニド、イソイデット等の複素環基を有するジヒドロキシ化合物類;2−(5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オール、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデロン等のスピロ炭化水素誘導体;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。これらの中では、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性の点からビスフェノールA(以下、BPAと略称することがある。)が好ましい。さらに、難燃性を高める目的で、上記のジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物も使用することが出来る。これらのジヒドロキシ化合物は、二種以上を混合することができる。
【0014】
又、上記のジヒドロキシ化合物はその一部をポリヒドロキシ化合物および/またはイサチン類等で置換してもよく、その割合は通常10モル%以下、好ましくは2モル%以下である。ポリヒドロキシ化合物としては、例えばフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンがあげられる。イサチン類としては例えば3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(別名:イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンがあげられる。前記ポリヒドロキシ化合物および/又はイサチン類等の添加時期は任意であり、反応温度や触媒量を適宜調整することにより、分岐したポリカーボネート樹脂を得ることも出来る。
【0015】
炭酸ジエステルとしては、以下の一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
ここで、一般式(1)中、A'は、置換されていてもよい、炭素数1〜炭素数10の直
鎖状、分岐状または環状の1価の炭化水素基である。2つのA'は、同一でも相互に異な
っていてもよい。なお、A'上の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜炭素数10
のアルキル基、炭素数1〜炭素数10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などが例示される。
【0018】
炭酸ジエステルの具体例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの中では置換ジフェニルカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、が更に好ましい。これらの炭酸ジエステルは、2種以上を混合して使用することが出来る。
【0019】
また、上記の炭酸ジエステルは、その一部をジカルボン酸またはジカルボン酸エステルで置換してもよく、その割合は、通常50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。代表的なジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。
また、エステル交換法で製造するポリカーボネートでは、炭酸ジエステル(上記の置換したジカルボン酸またはジカルボン酸エステルを含んでもよい。以下同じ。)は、ジヒドロキシ化合物に対して過剰に使用される。即ち、ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルの割合(モル比)は、通常1.00〜1.30、好ましくは1.01〜1.20、更に好ましくは1.05〜1.20である。モル比が過度に小さい場合は、得られるポリカーボネートの末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が過度に大きい場合は、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネートの生産が困難となる傾向となる他、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となることがある。従って、末端OH基量は100ppm以上であることが好ましい。このような末端OH基量とすることにより、分子量の低下を抑制でき、色調もより良好となる。
【0020】
一般的に、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調節したり、反応時の減圧度を調整したりすることにより、所望の分子量および末端OH基量を有するポリカーボネートが得られる。より積極的な方法として、反応時に、別途、末端停止剤を添加する周知の調節方法もある。この際の末端停止剤としては、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類が挙げられる。末端OH基量は、製品ポリカーボネートの熱安定性、加水分解安定性、色調などに大きな影響を及ぼす。末端OH基量は、用途にもよるが、実用的な物性を持たせるためには、通常1,000ppm以下、好ましくは700ppm以下である。
【0021】
通常、エステル交換反応によりポリカーボネートを製造する際には、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に制限されないが、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物が好ましい。また、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性窒素化合物などの塩基性化合物を併用することも可能である。これらのエステル交換触媒の中では、実用的観点からアルカリ金属化合物が好ましい。これらのエステル交換触媒は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換触媒の使用量は、ジヒドロキシ化合物1モルに対し、通常1×10−9モル〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7モル〜1×10−3モル、更に好ましくは1×10−7モル〜1×10−6モルの範囲である。
【0022】
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素化合物などの無機アルカリ金属化合物;アルカリ金属のアルコール類(又はフェノール類)、有機カルボン酸類との塩などの有機アルカリ金属化合物が挙げられる。ここで、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。これらのアルカリ金属化合物の中では、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム又は水酸化セシウムが好ましい。
【0023】
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応は次のように行うことが出来る。
先ず、原料調製段階として、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を使用し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合溶融液を調製する。溶融混合の温度は、例えば、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを使用し、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用する場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲である。
【0024】
次いで、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応を行う。エステル交換反応は、通常2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段方式で連続的に行われる。各段階の具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧ないし減圧、平均滞留時間:5分〜150分である。
そして、多段方式の各反応器においては、エステル交換反応の進行と共に副生するフェノールのようなモノヒドロキシ化合物をより効果的に系外に除去するため、上記の反応条件内において、段階的により高温、より高真空に設定し、最終的には2Torr(266.6Pa)以下の減圧とする。これにより、モノヒドロキシ化合物などの副生成物を除去しながらエステル交換反応を行うことが出来る。なお、得られるポリカーボネートの色相などの品質低下を防止するため、上記の範囲内で出来るだけ低温かつ短滞留時間の設定が好ましい。
【0025】
エステル交換反応は、バッチ式または連続式のどちらでも行うことが出来るが、本発明の樹脂組成物の安定性などを考慮すると、連続式が好ましい。ポリカーボネート中の触媒の失活剤としては、当該触媒を中和する化合物、例えば、イオウ含有酸性化合物またはそれより形成される誘導体を使用することが出来る。触媒を中和する化合物の使用量は、当該触媒が含有するアルカリ金属に対し、通常0.5当量〜10当量、好ましくは1当量〜5当量の範囲である。更に加えて、触媒を中和する化合物のポリカーボネートに対する使用割合は、通常1ppm〜100ppm、好ましくは1ppm〜20ppmの範囲である。
【0026】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、特に制限されないが、通常は13,000以上、好ましくは15,000以上である。なお、上記の粘度平均分子量は、ウベローデ粘度計を使用し、ポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン中20℃のηspを測定し、以下の式(1)及び(2)より求めた値である。
[数1]
ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp) (1)
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83 (2)
(式(1)中、ηspはポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン中20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としては、ポリカーボネート樹脂試料の濃度が0.6g/dlの溶液を使用する。Mvが粘度平均分子量である。)
エステル交換反応により、製造された溶融ポリカーボネートは、通常、押出機に導入し、所望により各種添加剤を投入後、濾過装置を通してペレット化する。又、ギヤポンプ等で反応工程から抜き出された溶融ポリカーボネートは、直接該濾過装置に移送される場合もある。
【0027】
<濾過工程>
本発明における濾過装置とはポリマーフィルターが収納されており、エステル交換反応で得られた溶融ポリカーボネートを濾過する装置である。ポリマーフィルターの形態は、リーフディスク型ポリマーフィルター(以下、PFと略称することがある。)が好ましい。
【0028】
本発明で使用する濾過装置は、一般的には、ハウジング、センターポスト及びPFからなる。センターポストに装着されるフィルターエレメントである、PFの枚数は、ポリマーの流量や粘度にもよるが、通常数十枚から数百枚からなる。PFのセンターポストへの装着は、例えば、中央に円形の孔を設けたPFを所定枚数、表面に多数の小貫通孔を設けた円筒形のセンターポストに通し、PF間を十分に締め付けることによって行われる。また、濾過装置の組立は、上記のようにしてPFを装着したセンターポストを、ハウジング内の所定位置に固定することによって行われる。この種の濾過装置では、供給された溶融ポリカーボネートは、PFを通って濾別された後、センターポストの貫通孔を経てセンターポスト円筒内の空間を通り、センターポストの一端開口部から排出される構造を有する。なお、センターポスト及びハウジングの材質は、通常SUS製であり、内面はメッキ等が施されている。
【0029】
本発明で用いられるPFは、通常円板形で、直径100mm〜600mm程度、厚み5mm程度であり、種々の線径及び開口率を有する織金網を1層以上重ねたものが用いられる。織りの種類も、平織、綾織、平畳織、綾畳織等があり、不織布でもよい。材質は、通常、SUS−316やSUS−316L等のステンレス系が用いられるが、燒結金属や樹脂を用いることも可能である。PFは、また、絶対濾過精度が好ましくは0.5μm〜50μmであり、さらに好ましくは0.5μm〜20μmである。このような絶対濾過精度を有するPFを用いると、濾過に要する時間が長くなりポリカーボネート組成物が熱劣化してしまうようなことがなく、またPFも長い寿命で使用できるため好ましい。
【0030】
本発明においてPFは一般的に濾過装置内に収納されており、該濾過装置は溶融ポリカーボネートをフィルターエレメントに導くための流入路と、溶融ポリカーボネートを濾過するためのフィルターエレメントと、濾過された溶融ポリカーボネートをフィルター外に導くための流出路と、これらを収納するための容器とより構成される。ここで、フィルターエレメントとは、濾過装置内に収納される溶融ポリカーボネート濾過手段である。
【0031】
本発明における濾過装置とリーフディスク型ポリマーフィルターを図1、図2、図3を用いて説明すると次のようになる。ただし、該図は本発明を例示するものであり、これらによって制限されるものではない。
図1に本発明に係るリーフディスク型ポリマーフィルターを収納した濾過装置の一例を示す。濾過装置1において、溶融ポリカーボネートは濾過装置1の下部入口5から流入し、積層された各リーフディスク型ポリマーフィルター2に分流し濾過されて、各フィルターの二次側の流路3を通ってセンターポストのポリマー流路4を移動する過程で各フィルターを通った溶融ポリカーボネートと合流し濾過装置の上部出口6から排出される。
【0032】
本発明において、濾過装置は当該濾過装置の下部が入口で上部が出口となるように略垂直竪型に配置させ濾過する必要がある。略垂直竪型に配置するとは水平から45度以上、好ましくは60度以上、より好ましくは90度即ち垂直に配置することを意味する。従来、濾過装置は水平横置きに配置させ溶融ポリカーボネート入口と出口が左右対称となるように使用するのが一般的であるが、この場合、ハウジング内では積層されたフィルター各々への流量が不均一になりやすく、その結果、偏流や滞留時間分布が生じ溶融ポリカーボネートの熱劣化、分解に伴う異物やモノヒドロキシ化合物等の揮発性不純物が発生する問題がある。
【0033】
リーフディスク型ポリマーフィルターの断面図の一例は図3に示すように、金属繊維焼結層10と金属粉末焼結層11からなる濾材、濾材の変形を防止するための保護層9、ドレン用メッシュ12、フィルター内部空間を保持するためのリテーナー13、濾材を通過した溶融ポリカーボネートの流路である穴の空いたハブ7とを有し、孔8のつながりとセンターポスト4で構成される。
【0034】
本発明におけるPFの濾材は、金属繊維焼結体と金属粉末焼結体の2以上の濾材から構成される。
濾材のうち金属繊維焼結体は、直径数μmから数10μm程度の繊維を重ね合わせて焼結したものであるが、金属繊維の径は1種類でも、2種類以上でもよく、数種の異なる径の繊維を混合して焼結したものでも、また、直径の異なる繊維を個々に重ね合わせて焼結したものでも良い。金属繊維焼結体の濾過精度の上限は15μm、好ましくは10μm、又、濾過精度の下限は0.5μm、好ましくは1μmである。金属繊維焼結体の空隙率の上限は80%であり、空隙率の下限は40%、好ましくは50%である。
【0035】
濾材のうち金属粉末焼結体は、数10μmから数100μmの金属粉末を焼結したもので、粉末の径は1種類でも2種類以上でもよい。金属粉末焼結体の濾過精度は限定はされないが5μm以上30μm以下である。金属粉末焼結体の空隙率の上限は50%、好ましくは45%であり、空隙率の下限は20%、好ましくは25%である。
本発明におけるリーフディスク型ポリマーフィルターの溶融ポリカーボネート流れ方向最下流の濾材の濾過精度の上限は20μm、好ましくは16μmである。濾過精度の下限は2μm、好ましくは3μm、更に好ましくは5μmである。該濾過精度の下限が上記範囲未満の場合、リーフディスク型ポリマーフィルターの抵抗が大きく、フィルターの圧力損失が高くなるため好ましくない。該濾過精度の上限が上記範囲を超えた場合は本発明の効果の一つであるポリカーボネート樹脂変性物の除去が十分に行えないため好ましくない。又、空隙率としては20%以上50%以下、好ましくは25%以上45%以下が一般的である。
【0036】
本発明におけるリーフディスク型ポリマーフィルターの溶融ポリカーボネート流れ方向最上流の濾材の濾過精度は0.5μm以上15μm以下が好ましい。又、空隙率60%以上80%以下が好ましい。この層では不必要な大きさの不活性粒子や異物を除去することである。
濾材の構成としては、濾過精度および/または空隙率の異なる2種類以上とする。溶融ポリカーボネート流れ方向上流側の濾材は、濾過精度が小さく、空隙率の高い濾材を用い、溶融ポリカーボネート流れ方向下流側の濾材は濾過精度が若干大きくても空隙率の低い濾材とすることが異物、樹脂変性物の分散、除去をする上で好ましい。
【0037】
PFの濾材が金属繊維焼結体のみで構成されている場合、濾過精度は小さいものの発生する樹脂の変性物を除去・分散する能力が無いため長期間使用ではフィルター入口と出口の差圧が上昇してしまい結果的にはフィルター交換頻度が多くなる欠点がある。
又、PFの濾材が金属粉末焼結体のみで構成されている場合、樹脂変性物の除去・分散能力はすぐれるものの、金属粉末の粒径が大きく、濾過精度の小さいフィルターを作ることが難しい。
【0038】
本発明におけるPFの溶融ポリカーボネート流れ方向最下流の濾材の濾過精度に対する溶融ポリカーボネート樹脂流れ方向最上流の濾材の濾過精度との比は0.10〜1.0、好ましくは0.3〜0.7である。
溶融ポリカーボネート流れ方向最下流の濾材の濾過精度に対する溶融ポリカーボネート流れ方向最上流の濾材の濾過精度との比が上記範囲未満では、フィルター内に流速分布が生じたり、また微小異物の捕捉効果は小さくなる方向にあり好ましくない。一方、該比が上記範囲を超えると微小異物の捕捉効果は大きくなるものの、フィルター目詰まりが頻繁に発生しフィルター交換頻度が多くなるため経済的ではない。
【0039】
また、前記PFを積層して収納された濾過装置において、該濾過装置の下部が入口で上部が出口となるように略垂直竪型に配置させ濾過することで、より一層の相乗効果が発現されるようになる。即ち、下部入口より流入したポリマーが濾過精度比が適正化された複合濾材を用いることによって、各フィルターには均一に滞留部の少ない状態で濾過されるようになり、その結果、熱劣化、ポリマー分解が極端に低下し異物やフェノール等の揮発性不純物が少ない高品質のポリカーボネート樹脂が得られるようになる。すなわち、前記濾過装置出口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C2)が通常50ppm以下、好ましくは40ppm以下のポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0040】
本発明方法において、PFの温度は、これに通液する溶融ポリカーボネートの温度以上、通常、240℃〜320℃に昇温した状態を保つことが重要である。すなわち、溶融温度より低いと、溶融ポリカーボネートがフィルター内部で固化して閉塞したり、溶融粘度が高くなりすぎて剪断発熱による樹脂の劣化の原因となる。また、温度が高すぎるとポリカーボネートの熱劣化が起こり樹脂が劣化する。PFは、通常、電気ヒーターや熱媒を加熱源に使用する。
【0041】
また、PFは、その使用に際し、溶融ポリカーボネートの通液前に上記の温度に昇温しておくことが必要である。しかも、特にセンターポストに装着したPFの昇温時の雰囲気に使用されるガスは、不活性ガスが好ましく、特にアルゴンや窒素が好ましい。このように、昇温時に不活性ガス雰囲気を使用することで、使用するPFの絶対濾過精度以上の大きさを有する透明異物の量を低減することができる。この透明異物数が増加すると、成形時にシルバーストリークの発生率が高くなり、その結果、記録エラーや外観不良といった問題が起こる。又、前記不活性ガス処理により透明異物数を低減させるためには、ポリカーボネートの粘度平均分子量が50,000以下、好ましくは30,000以下であることが最も好ましい。この範囲を超える粘度平均分子量域では、溶融重合に特有の架橋化反応が関与し始め、透明異物数は桁違いに増加することになる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお、得られたポリカーボネートの分析は下記の測定方法により行った。
【0043】
(1)フィルター濾材の濾過精度
均一粒子径を有するラテックスビーズを分散させた液を数種類用いて定圧濾過試験を行い、フィルター濾材通過前後の粒子数をカウントし次式により濾過効率を算出した。
濾過効率(%)=(NA−NB/NA)×100
NA:フィルター濾材通過前粒子数
NB:フィルター濾材通過後粒子数
粒子径に対する濾過効率をグラフ上にプロットし、濾過効率曲線を作成し、濾過効率95%の粒子径を濾過精度とした。
【0044】
(2)粘度平均分子量(Mv)
ウベローデ粘度計を使用し、ポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン溶液(0.6g/dl)を調製し、20℃におけるηspを測定し、以下の式(1)及び(2)より粘度平均分子量(Mv)を求めた。
[数2]
ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp) (1)
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83 (2)
(式(1)中、ηspはポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン中20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としては、ポリカーボネート樹脂試料の濃度が0.6g/dlの溶液を使用する。)
【0045】
(3)ポリカーボネートの末端OH基濃度の定量
ポリカーボネート0.1gを塩化メチレン10mlに溶解し、これに酢酸(和光純薬工業(株)製、試薬特級)の5%塩化メチレン溶液5mlと四塩化チタン(和光純薬工業(株)製、試薬特級)の2.5%塩化メチレン溶液10mlを加え発色させ、分光光度計(日立(株)製、UV160型)を用い546nmの波長での吸光度を測定した。別に、製造時に使用した二価フェノールの塩化メチレン溶液を用い吸光係数を求め、該ポリカーボネート中の末端OH基濃度を定量した。
【0046】
(4)色相:
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを、120℃、5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所製「J100SS−2」)を使用し、バレル温度300℃、金型温度90℃の条件下にて厚み3mm、一辺100mm角のシートを連続成形し、当該シート20枚をカラーテスター(スガ試験機株式会社製SC-1-CH)で色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式に黄色度の指標であるYI値を計算した。
[数3]
YI=(100/Y)×(1.28X−1.06Z)
YI値が大きいほど着色していることを示す。
【0047】
(5)ポリカーボネート中の残存揮発成分濃度の定量
ポリカーボネート1.2gを塩化メチレン7mlに溶解し、攪拌しながらこれにアセトン23mlを加え再沈殿させその上澄み液を液体クロマトグラフィー(島津製 LC-10AT、カラム;MCI GEL ODS 5μm 4.6mmID×150mmL、検出器;UV219nm、溶離液;アセトニトリル
/水=4/6)で測定し、該ポリカーボネート中のフェノール(PhOH)濃度、ビスフェノールA(BPA)濃度、ジフェニルカーボネート(DPC)濃度を定量した。
【0048】
(6)異物量
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを130℃で5時間乾燥した後、320℃で押出成形し、幅140mm、厚さ70μmのフィルムを得た。押出成形には、直径30mmの単軸押出機((株)いすず化工製)を使用した。次いで、光学式異物検査装置((株)ダイアインスツルメンツ製「GX40K」)を使用し、フィルムの中心から選択された幅(フィルムの中心から選択された幅)80mm×長さ1.7m×厚さ70μmのフィルム(体積952cm3)のフィッシュアイ(サイズ50〜500μm)数を測定した。すなわち、800mVの光量を使用し、吸収された100〜300mVの光量の範囲におけるフィッシュアイ数を(A)、300mV以上の光量の範囲の数を(B)として、次の式(1)より算出した。測定は2回行い、その平均値を示した。
[数4]
異物量=(A)−(B)
【0049】
[実施例1]
窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを一定のモル比(DPC/BPAモル比=1.103)に混合調製した140℃の溶融混合物を、原料導入管を介して、常圧、窒素雰囲気下、210℃に制御した第1竪型攪拌重合槽内に連続供給し、平均滞留時間が60分となるように槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ液面レベルを一定に保った。また、上記原料の供給を開始すると同時に、触媒として炭酸セシウム水溶液を、ビスフェノールA1モルに対し、0.5×10-6 モルの流量で連続供給した。生成したフェノール等の留出物は、重合槽の留出ラインに設けた凝縮器で連続的に液化回収した。
【0050】
第1重合槽から排出された反応液は、引き続き、第2、第3、第4の竪型重合槽並びに第5の横型重合槽に逐次連続導入した。各槽の運転は下記の通り設定された。即ち、第2重合槽は、210℃、13300Pa、110rpm、第3重合槽は、240℃、1995Pa、75rpm第4重合槽は、260℃、67Pa、75rpm、第5重合槽は、265℃、67Pa、5rpmと反応の進行とともにより高温、高真空に設定した。反応の間、各槽の平均滞留時間が60分になるように液面レベルを制御し、また同時に副生するフェノールの留去も行った。ポリカーボネートの製造速度は50kg/時間である。次いで、第5横型重合槽から抜き出される溶融ポリカーボネートを、3段ベント口および3段供給口を具備した2軸押出機(スクリュー径46mm、部分噛み合いスクリュー型、同方向回転)に導入し、p−トルエンスルホン酸ブチル及びトリス(2,4−ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェイトをポリカーボネートに対してそれぞれ10ppm、1000ppmとなるように供給し、各ベントにて脱揮後、表−1のリーフディスク型ポリマーフィルター135枚をセンターポストに積層して装着された濾過装置により濾過後、水冷し、ペレット化した。尚、濾過装置は横置きに配置した。濾過装置は溶融ポリカーボネート通液前に、流速5ml/分、36時間、200℃の窒素雰囲気下で電気ヒーターにより280℃までに昇温して、使用した。濾過装置入口及び濾過装置出口それぞれの溶融ポリカーボネートの物性、並びに得られたペレットの物性を表−1に示した。
【0051】
[実施例2]
実施例1において、濾過装置を垂直竪置きに配置した以外は実施例1と同様に実施した。
【0052】
[実施例3]
実施例1において、DPC/BPAモル比=1.065にして、エステル交換反応により得られた粘度平均分子量14,800の溶融ポリカーボネートを、表−1に示す濾過精度及び濾材のリーフディスク型ポリマーフィルターを使用する以外は実施例1と同様に実施した。
【0053】
[実施例4]
実施例3において、濾過装置を垂直竪置きに配置した以外は実施例3と同様に実施した。
【0054】
[実施例5]
実施例2において、DPC/BPAモル比=1.130にして第4重合槽は、265℃、60Pa、75rpm、第5重合槽は、270℃、67Pa、3rpmにしてエステル交換反応により粘度平均分子量25,500の溶融ポリカーボネートを得た以外は実施例2と同様に実施した。
【0055】
[実施例6]
実施例5において、表−1に示す濾過精度及び濾材のリーフディスク型ポリマーフィルターを使用する以外は実施例5と同様に実施した。
【0056】
[実施例7]
実施例5において、表−1に示す濾過精度及び濾材のリーフディスク型ポリマーフィルターを使用する以外は実施例5と同様に実施した。
【0057】
[比較例1]
実施例1において、表−2に示す濾過精度及び濾材のリーフディスク型ポリマーフィルターを使用する以外は実施例1と同様に実施した。
【0058】
[比較例2]
実施例3において、表−2に示す濾過精度及び濾材のリーフディスク型ポリマーフィルターを使用する以外は実施例3と同様に実施した。
【0059】
[比較例3]
実施例5において、濾過装置を横置き、即ちポリマー流入口、排出口が左右対称となるように配置させ、表−2に示す濾過精度及び濾材のリーフディスク型ポリマーフィルターを使用する以外は実施例3と同様に実施した。
【0060】
[比較例4]
比較例3において、表−2に示す濾過精度及び濾材のリーフディスク型ポリマーフィルターを使用する以外は比較例3と同様に実施した。
【0061】
[比較例5]
比較例4において、表−2に示す濾過精度及び濾材のリーフディスク型ポリマーフィルターを使用する以外は比較例4と同様に実施した。
【0062】
[比較例6]
比較例5において、表−2に示す濾過精度及び濾材のリーフディスク型ポリマーフィルターを使用する以外は比較例4と同様に実施した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の目的は従来技術の問題点を改善し、異物が少なく、且つモノヒドロキシ化合物等の揮発性不純物の少ない高品質のポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 濾過装置
2 リーフディスク型ポリマーフィルター
3 フィルターの二次側の流路
4 ポリマー流路
5 下部入口
6 上部出口
7 ハブ
8 孔
9 保護層
10 金属繊維焼結体
11 金属粉末焼結体
12 ドレン用メッシュ
13 リテーナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって生成する溶融ポリカーボネートをリーフディスク型ポリマーフィルターを積層して収納された濾過装置を通してポリカーボネート樹脂を製造する方法において、前記濾過装置出口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C2)と前記濾過装置入口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C1)との差(C2-C1)が10ppm以下であることを特徴とするポリカー
ボネート樹脂の製造方法。
【請求項2】
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって生成する溶融ポリカーボネートをリーフディスク型ポリマーフィルターを積層して収納された濾過装置を通してポリカーボネート樹脂を製造する方法において、該濾過装置が略垂直竪型に配置され、該溶融ポリカーボネートが該濾過装置の下部より流入し、上部より流出することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項3】
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応によって生成する溶融ポリカーボネートをリーフディスク型ポリマーフィルターを積層して収納された濾過装置を通してポリカーボネート樹脂を製造する方法において、該リーフディスク型ポリマーフィルターが金属繊維焼結体と金属粉末焼結体の2以上の濾材からなり、該溶融ポリカーボネート流れ方向最下流の濾材の濾過精度の該溶融ポリカーボネート流れ方向最上流の濾材の濾過精度に対する比が0.10〜1.0であるポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法において、濾過装置出口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C2)と前記濾過装置入口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C1)との差(C2-C1)が10ppm以下であることを特徴とするポ
リカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法において、濾過装置出口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C2)と前記濾過装置入口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C1)との差(C2-C1)が10ppm以下であることを特徴とするポ
リカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項3記載の濾過装置が略垂直竪型に配置され、該溶融ポリカーボネートが該濾過装置の下部より流入し、上部より流出することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記濾過装置出口のポリカーボネート中のモノヒドロキシ化合物濃度(C2)が50ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−189581(P2010−189581A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37038(P2009−37038)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】