説明

ポリカーボネートを含有するブロック共重合体の製造方法

【課題】各種部品等に成形する際の成形性に優れ、且つリワーク品やリサイクル品を原料として用いても製造が可能であり、更に成形体とした際に、熱時剛性、耐熱性、耐薬品性、表面外観などに優れるブロック共重合体を提供する。
【解決手段】(A)重合体中の構成単位がポリカーボネートと他の異なる重合体成分であって、該他の異なる重合体成分が、ポリアミド、ポリエステル、およびポリアリレートからなる群から選択される重合体成分に、(B)亜リン酸エステル化合物および(C)亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を配合し溶融混練し得られるブロック共重合体であって、下記式(1)で示されるYが0.1〜0.5であり、(A)成分100重量部に対する(B)成分の量が0.05〜10重量部であり、(C)成分の量が0.05〜2.5重量部であるブロック共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロック共重合体に関し、より具体的には、成形性に優れ、且つリワーク品やリサイクル品を用いても簡便で経済的に製造することができるブロック共重合体であって、更に成形体とした際に優れた熱時剛性、耐熱性、耐薬品性、表面外観などを有するブロック共重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレートはエンジニジニアリングプラスチックとして知られており、包装・容器などの汎用的な消費分野、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野などの各種部品用の材料として広く利用されている。
【0003】
近年、これら各種部品に関しては、一体化・軽量化などを目的とした金属材料からエンジニアリングプラスチックへの代替要求が非常に高まっており、その結果、エンジニアリングプラスチックに要求される性能レベルが一層高くなってきている。具体的に言えば、金属材料に代替可能な外観を有し、また過度の熱、光、薬品中などの厳しい環境下で使用可能な樹脂材料が強く要望されている。その一方で、環境への配慮から、これらエンジニアリングプラスチックの成形品や部品をリワーク・リサイクルして再利用するという動きも非常に高まっている。
【0004】
高まる要求特性に応えるため、単一の樹脂材料の欠点を補いつつその性能を向上させる目的で、異種の樹脂成分の混合物ならびに相溶化剤を配合し溶融混練などの方法を用いてブレンドする方法、すなわちポリマーアロイ技術が研究されてきた。そして、このような材料が既に実用化されていることは周知の事実である。
【0005】
しかしながら、かかるポリマーアロイ技術は異種の熱可塑性樹脂の相溶性を高めるために、特殊な相溶化剤を用いる必要があったり、樹脂自体の分子構造を修飾する必要があるなどの経済的な問題を持っている。
【0006】
そこで、上記問題点を解決するための方法として、ポリマーアロイ技術より簡易でかつ経済的に有利な方法、すなわち異種の樹脂成分の混合物と反応触媒とを用いる方法が検討されている。具体的には、特許文献1においては、2種または3種以上のポリアミドの単独重合体を亜リン酸エステル化合物の存在下で溶融ブレンドすることにより幾分かのランダムな共重合体を作る方法が開示されている。特許文献2にはグラフトおよび/またはブロック共重合体を形成するために、2種または3種以上のポリアミド、ポリエステル、およびβ−不飽和カルボン酸のホモポリマーを反応させる方法が開示されている。また、特許文献3では、ポリアミドとポリエステルとをアリールホスホリルアジド化合物の存在下で溶融ブレンドする方法が開示されている。また、特許文献4では、特定の粘度を有するポリブチレンテレフタールとポリエステルとの混合物に特定のリン化合物を含有してなる樹脂配合物が開示されている。更に、特許文献5には、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリレートなどから選ばれる2種以上の熱可塑性樹脂の混合物に、ガラス繊維などの充填材を配合し、減圧下で溶融混練してメルトフローレートを調整する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4417032号明細書
【特許文献2】米国特許第4417031号明細書
【特許文献3】特公平6−62846号公報
【特許文献4】特許第2721479号明細書
【特許文献5】特許第2999546号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これら従来技術は、ポリエステル−ポリカーボネートなどの交換反応を利用して、樹脂混合物の相溶性を制御する技術にほかならないが、本発明者らの検討によれば、交換反応の制御が未だ十分でなく、各種用途での高まる要求特性に充分応えることができないため、各種用途への展開が著しく制限されているのが現状である。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、各種部品等に成形する際の成形性に優れ、且つリワーク品やリサイクル品を原料として用いても製造が可能であり、更に成形体とした際に、熱時剛性、耐熱性、耐薬品性、表面外観などに優れるブロック共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討した結果、特定の重合体成分から構成され、各重合体成分のガラス転移温度と得られるブロック共重合体のガラス転移温度との間に特定の関係を有するブロック共重合体を用いることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[9]の発明に関する。
【0012】
[1](A)重合体中の構成単位がポリカーボネートと他の異なる重合体成分であって、該他の異なる重合体成分が、ポリアミド、ポリエステル、およびポリアリレートからなる群から選択される重合体成分に、(B)亜リン酸エステル化合物および(C)亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を配合し溶融混練し得られるブロック共重合体であって、下記式(1)で示されるYが0.1〜0.9であり、(A)成分100重量部に対する(B)成分の量が0.05〜10重量部であり、(C)成分の量が0.05〜2.5重量部であることを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
【0013】
【数1】

【0014】
(式(1)中、mはブロック共重合体のガラス転移温度の数であり、Tgはブロック共重合体のガラス転移温度(℃)であり、Tg(A)は各重合体成分のガラス転移温度の内、Tgに最も近い重合体成分のガラス転移温度(℃)であり、また、Xは下記式(2)で示される:
【0015】
【数2】

【0016】
式(2)中、nは重合体成分の数であり、Tg(B)は各重合体成分のガラス転移温度(℃)であり、wは各重合体成分の量比である。)
[2]溶融混練時の平均滞留時間が1〜15分であることを特徴とする[1]記載のブロック共重合体の製造方法。
[3] (A)重合体成分が、ポリエステルおよびポリカーボネートからなる、[1]載のブロック共重合体の製造方法。
[4] (A)成分100重量部に対する、(B)成分の量が0.05〜2.5重量部であり、(C)成分の量が0.05〜2.5重量部である、[1]記載のブロック共重合体の製造方法。
[5](A)重合体成分中の構成単位が、ポリカーボネート重合体成分が30〜50重量%およびポリエステル重合体成分が70〜50重量%である、[1]記載のブロック共重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のブロック共重合体は、重合体中の構成単位が異なる少なくとも2種の重合体成分から構成されたものである。また、この重合体成分は、ポリカーボネートと他の異なる重合体成分であって、他の異なる重合体成分はポリアミド、ポリエステル、およびポリアリレートからなる群から選択される必要がある。
【0018】
ここで、「重合体中の構成単位が異なる少なくとも2種の重合体成分」とは、ポリアミドとポリカーボネートのような異なる重合体種の組み合わせのみを意味しているのではなく、例えば、ポリカーボネート同士のような同じ重合体種であっても、各重合体を構成する構成単位がそれぞれで異なっていれば、本発明の「重合体中の構成単位が異なる少なくとも2種の重合体成分」という要件を満たす。すなわち、例えば、重合体成分が、構成単位がヘキサメチレンジアミンとアジピン酸であるポリアミド66と、構成単位がヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸であるポリアミド6Iとからなる場合、ポリアミド66とポリアミド6Iとでは、構成単位であるジカルボン酸成分が両者で異なるため(アジピン酸とイソフタル酸)、本発明の「重合体中の構成単位が異なる少なくとも2種の重合体成分」に含まれる。同様に、重合体成分が、構成単位がヘキサメチレンジアミンとアジピン酸であるポリアミド66、構成単位がヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸であるポリアミド6I、および構成単位がカプロラクタムであるポリアミド6からなる場合でも、「重合体中の構成単位が異なる少なくとも2種の重合体成分」に含まれる。
【0019】
続いて、本発明のブロック共重合体を構成する重合体成分である、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリアリレートについて説明する。
【0020】
まず、本発明で用いられるポリアミドは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体であれば特に制限はない。具体的には、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカラクタム(ポリアミド12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド(ポリアミド6C)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))、またはこれらポリアミドのうち少なくとも2種の異なったポリアミドを含むポリアミド共重合体を挙げることができる。これらの中でも、本発明の目的を達成するためにより好ましいポリアミドとしては、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド(ポリアミド6C)、またはこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミドを含むポリアミド共重合体が挙げられる。
【0021】
本発明のポリアミドの分子量は、得られるブロック共重合体の成形性および機械物性の点から、重量平均分子量(Mw)にして、好ましくは1万〜100万であり、より好ましくは1万5千〜50万であり、最も好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、分子量標準試料としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0022】
つぎに、本発明で用いられるポリエステルについても、主鎖中にエステル結合(−COO−)を有する重合体であれば特に制限はない。具体的には、(i)芳香族ポリエステル、(ii)ポリエステル熱可塑性エラストマー、(iii)液晶ポリエステルなどを挙げることができる。
【0023】
(i)芳香族ポリエステルとは、芳香環を重合体の構成単位に有する熱可塑性のポリエステルであり、例えば、芳香族ジカルボン酸(あるいはそのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主成分とする縮合反応により得られる重合体あるいは共重合体を挙げることができる。
【0024】
ここで、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、4,4”−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸などを挙げることができる。中でも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0025】
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールおよびこれらの混合物を挙げることができる。なお、少量であれば、分子量400〜6000程度の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、あるいはこれらの混合物を共重合させたものであってもかまわない。
【0026】
芳香族ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどの芳香族ポリエステルや、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートなどの芳香族ポリエステル共重合体を挙げることができる。中でも、得られるブロック共重合体の成形性、機械特性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0027】
(ii)ポリエステル熱可塑性エラストマーは、芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび/または脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするものであり、例えばポリエーテルエステルブロック共重合体、ポリエステル・エステルブロック共重合体、ポリエーテルエステル・エステル共重合体などを挙げることができる。
【0028】
ポリエステル熱可塑性エラストマー中の芳香族ポリエステルハードセグメント/ソフトセグメントの割合は、重量比で95/5〜10/90、特に90/10〜30/70であることが好ましい。
【0029】
ハードセグメントを構成する芳香族ポリエステルとは、通常60モル%程度以上がテレフタル酸成分であるジカルボン酸成分とジオール成分とを縮重合して得られる重合体であることが好ましい。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分およびジオール成分としては、前記(i)芳香族ポリエステルにおいて挙げたものを使用することが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)などあるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0030】
一方、ソフトセグメントを構成するポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび脂肪族ポリエステルとしては、具体的に、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体、ポリエチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケートなどあるいはこれらの混合物などを挙げることができる。
【0031】
ポリエステル熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレ−ト・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)グリコ−ルブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(エチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレート・ポリ(エチレンオキシド)グリコ
ールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレンアジペートブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリブチレンアジペートブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリブチレンセバケートブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリ−ε−カプロラクトンブロック共重合体などを挙げることができる。
【0032】
上記芳香族ポリエステル、ポリエステル熱可塑性エラストマーの分子量は、得られるブロック共重合体の成形性および機械物性の点から、重量平均分子量(Mw)にして、好ましくは1万〜100万であり、より好ましくは1万5千〜50万であり、最も好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用い、分子量標準試料としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0033】
(iii)液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。具体的には、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸との組み合わせからなるもの、異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸の組み合わせからなるもの、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせからなるもの、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるものなどが挙げられる。なお、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、それらのエステル形成誘導体が使用されることもある。
【0034】
ここで、芳香族ジカルボン酸としては、下記式で表されるものを用いることができる。
【0035】
【化1】


【0036】
また、芳香族ジオールとしては、下記式で表されるものを用いることができる。
【0037】
【化2】


【0038】
【化3】


【0039】
そしてまた、芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、下記式で表されるものを用いることができる。
【0040】
【化4】


【0041】
液晶ポリエステルの分子量は、得られるブロック共重合体の成形性および機械物性の点
から、重量平均分子量(Mw)にして、好ましくは1万〜100万であり、より好ましく
は1万5千〜50万であり、最も好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量は、溶
媒としてヘキサフルオロイソプロパノールとペンタフルオロフェノールとの(重量比1/
1)混合溶媒を用い、分子量標準試料としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用い
て、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0042】
更に、本発明で用いられるポリカーボネートは、芳香族ホモポリカーボネートまたは芳
香族コポリカーボネートから選ばれる。具体的には、二官能フェノール系化合物に苛性ア
ルカリおよび溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは、例えば、前記二
官能フェノール系化合物と炭酸ジエステルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステ
ル交換法により得られるものである。
【0043】
なお、二官能フェノール系化合物は下記式で示される。
【0044】
【化5】


【0045】
ここで、RおよびRは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基またはハロゲン
である。また、mおよびnは置換基数を表し0〜4の整数である。
【0046】
上記式において、(Ar)は、
【0047】
【化6】


【0048】
である。ここで、R、R、R、およびRは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基であり、RとRが結合し環を形成していても良い。またR、R、R、R、RおよびRは同じでも異なっていても良い。
【0049】
二官能フェノール系化合物の具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t-ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’ジメチルジフェニルスルホン、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。中でも、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールA、あるいは1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが好ましい。
【0050】
炭酸ジエステルの具体例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどがある。中でも、ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0051】
本発明の芳香族ポリカーボネートの分子量は、得られるブロック共重合体の成形性および機械物性の点から、重量平均分子量(Mw)にして、好ましくは1万〜100万であり、より好ましくは1万5千〜50万であり、最も好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量は、溶媒としてクロロホルムを用い、分子量標準試料としてポリスチレン(PS)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0052】
最後に、本発明で用いられるポリアリレートとは、二官能フェノール化合物と芳香族ジカルボン酸を高温溶融状態で反応させる溶融重合法、脱酸剤としてのアミン存在下、二官能フェノール化合物と芳香族ジカルボン酸ジクロライドを有機溶媒中で反応させる溶液重合法、二官能フェノール化合物と芳香族ジカルボン酸ジクロライドとを互いに相溶しない2種の溶媒に溶解したのち、アルカリ存在下で2液を混合撹拌して、その界面で重縮合反応を行わせる界面重合法などにより製造されたものである。
【0053】
二官能フェノール系化合物は、下記式で示される。
【0054】
【化7】


【0055】
ここで、RおよびRは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基またはハロゲンである。また、mおよびnは置換基数を表し0〜4の整数である。
【0056】
上記式において、(A)は、
【0057】
【化8】


【0058】
である。ここで、R、R、R、およびRは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基であり、RとRが結合し環を形成していても良い。またR、R、R、R、RおよびRは同じでも異なっていても良い。
【0059】
二官能フェノール系化合物としては、具体的に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t-ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’ジメチルジフェニルスルホン、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールA、あるいは1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが好ましい。
【0060】
芳香族ジカルボン酸としては、特に限定はないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など、あるいはこれらの混合物、ならびにこれら芳香族ジカルボン酸のアルキル置換同族体、ハロゲン化物、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0061】
ポリアリレートの分子量は、得られるブロック共重合体の成形性および機械物性の点から、重量平均分子量(Mw)にして、好ましくは1万〜100万であり、より好ましくは1万5千〜50万であり、最も好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量は、溶媒としてクロロホルムを用い、分子量標準試料としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0062】
本発明における好ましいブロック共重合体としては、ポリエステルとポリカーボネートとから構成されているブロック共重合体が挙げられる。
【0063】
本発明のブロック共重合体は、各重合体成分のガラス転移温度と得られるブロック共重合体のガラス転移温度との間に特定の関係を有していることが必要である。すなわち、本発明のブロック共重合体は、各重合体成分のガラス転移温度と得られるブロック共重合体のガラス転移温度との関係を示す下記式(1)において、Yが0.1〜0.9の範囲、好ましくは0.15〜0.85の範囲、最も好ましくは0.2〜0.7の範囲にあることが必要である。
【0064】
【数3】

【0065】
(式(1)中、mはブロック共重合体のガラス転移温度の数であり、Tgはブロック共重合体のガラス転移温度(℃)であり、Tg(A)は各重合体成分のガラス転移温度の内、Tgに最も近い重合体成分のガラス転移温度(℃)であり、また、Xは下記式(2)で示される。
【0066】
【数4】

【0067】
式(2)中、nは重合体成分の数であり、Tg(B)は各重合体成分のガラス転移温度(℃)であり、wは各重合体成分の量比である。)
各重合体成分およびブロック共重合体のガラス転移温度は、乾燥などにより重合体成分中の水あるいは親水性溶媒などの含有量を0.1重量%未満にした試料を用いて、JIS K7121に準じて、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。また、JIS K7198に準じて、動的粘弾性の温度依存性を測定する方法によっても求めることができる。あるいはM−DSC(Modulated−DSC)を測定することにより求めることができる。
【0068】
ここで、本発明のブロック重合体は、単一のガラス転移温度を有する場合と、複数のガラス転移温度を有する場合とがある。したがって、ブロック重合体のガラス転移温度の値およびその数との関係から、上記したTg(A)、すなわち、各重合体成分のガラス転移温度の内、Tg(ブロック共重合体のガラス転移温度)に最も近い重合体成分のガラス転移温度(℃)は、以下のように求められる。
【0069】
例えば、ブロック共重合体が、重合体成分P(ガラス転移温度Tg(B)=40℃)と重合体成分Q(ガラス転移温度Tg(B)=100℃)とから構成され、ブロック共重合体としてのガラス転移温度が1つで、その値Tg=80℃であったとした場合、重合体成分PおよびQのガラス転移温度の内、ブロック共重合体のガラス転移温度Tg(80℃)に最も近いのは、重合体成分Pのガラス転移温度Tg(B)(100℃)であるため、Tg(A)=100℃となる。
【0070】
また、ブロック共重合体が、重合体成分P(ガラス転移温度Tg(B)=40℃)と重合体成分Q(ガラス転移温度Tg(B)=100℃)とから構成され、ブロック共重合体としてのガラス転移温度が2つで、その値がそれぞれTg=50℃、Tg=80℃であったとした場合、重合体成分PおよびQのガラス転移温度の内、ブロック共重合体のガラス転移温度Tg(50℃)に最も近いのは、重合体成分Pのガラス転移温度Tg(B)(40℃)であるため、Tg(A)=40℃となり、ブロック共重合体のガラス転移温度Tg(80℃)に最も近いのは、重合体成分Qのガラス転移温度Tg(B)(100℃)であるため、Tg(A)=100℃となる。
【0071】
式(1)においてYが0.1未満の場合には、本発明のブロック共重合体から得られる成形体の熱時剛性が低下する傾向にあり、また0.9を越える場合には成形体の外観が低下する傾向にあるため好ましくない。
【0072】
また、本発明における少なくとも2種の重合体成分は、重合体成分間におけるガラス転移温度の差が50℃以上であることが好ましい。本発明のブロック共重合体が、ガラス転移温度の差が50℃未満の重合体成分から構成された場合には、得られる成形体の熱時剛性や耐熱性が充分改善されない場合がある。
【0073】
本発明のブロック共重合体の分子量は、成形性および機械物性の点から、重量平均分子量(Mw)にして、好ましくは2万〜20万であり、より好ましくは2万5千〜15万であり、最も好ましくは3万〜15万である。重量平均分子量は、溶媒としてクロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール、ペンタフルオロフェノールから選ばれる1種の溶媒、またはこれらを2種以上を混合した混合溶媒を用い、分子量標準試料としてポリスチレン(PS)あるいはポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0074】
本発明のブロック共重合体においては、核磁気共鳴法(13C−NMR)から求まる平均連鎖長(Average sequence lengths)が、10〜50であることが好ましい。より好ましくは15〜50、更に好ましくは20〜50、最も好ましくは30〜50である。該平均連鎖長の計算は、J.Polym.Sci.Phys.ED.第20巻、第1875ページ(1982年)に準じて測定できる。平均連鎖長が10未満の場合には熱時剛性が低下する傾向にあり、また50を越えた場合には外観不良が発生し易くなるため注意を要する。
【0075】
本発明のブロック共重合体の分散形態は、電子顕微鏡により観察できる。より具体的には、必要に応じて四酸化オスミウムおよび/または四酸化ルテニウムによる染色固体法で調整された超薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することができる。また、分散相のみが可溶である適当な溶媒により前処理した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することもできる。
【0076】
分散相の平均粒子径は0.01〜30μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜10μmである。平均粒子径が前記範囲を外れた場合には、ブロック共重合体から得られる成形体の熱時剛性の低下や外観不良が発生し易くなる。なお、平均粒子径は次のようにして算出することができる。まず、ブロック共重合体やその成形体から切り出した切片を電子顕微鏡で撮影し、次いで、分散相の粒子径di、粒子数niを求め、次式により平均粒子径を算出する。
【0077】
平均粒子径=Σdi・ni/Σni
この場合、粒子径が球状とみなせない場合には、その短径と長径を測定し、両者の和の1/2を粒子径とする。また、平均粒子径の算出には最低100個の粒子径を測定する。
【0078】
続いて、本発明のブロック共重合体の製造方法について説明する。製造方法については特に限定はなく、上記式(1)におけるYが0.1〜0.9の範囲内となるようなブロック重合体が得られるのであれば何れの方法でも良い。
【0079】
しかしながら、好ましい製造方法としては、(A)重合体中の構成単位がポリカーボネートと他の異なる重合体成分であって、該他の異なる重合体成分が、ポリアミド、ポリエステル、およびポリアリレートからなる群から選択される重合体成分に、(B)亜リン酸エステル化合物、および(C)亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩、あるいはリン酸金属塩を配合し溶融混練する方法が挙げられる。
【0080】
より好ましい方法は、(A)重合体中の構成単位が異なる少なくとも2種の重合体成分であって、該重合体成分が、ポリカーボネートとポリエステルに、(B)亜リン酸エステル化合物、および(C)亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を配合し溶融混練する方法である。
【0081】
なお、(C)成分としてリン酸金属塩のみを用いた場合には、色調が悪化したり熱時剛性が低下したりする傾向にあるので注意を要する。
【0082】
本発明の(B)亜リン酸エステル化合物とは、下記一般式で示される。
【0083】
(OR)P(OH)3−n
ここで、Rはアルキル基、フェニル基、あるいはそれらの基の一部が炭化水素基などで置換された置換基アルキル基を表し、nは1、2あるいは3を表す。また、(RO)基は、同じでも異なっていてもよい。
【0084】
Rとして、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ステアリル基、オレイル基などの脂肪族基、フェニル基、ビフェニル基などの芳香族基、あるいはヒドロキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、ノニル基、メトキシ基、エトキシ基などの置換基を有する芳香族基などを挙げることができる。
【0085】
好ましい亜リン酸エステル化合物としては、例えば亜リン酸エチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリブトキシエチル、亜リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルクレジル、亜リン酸トリクレジル、亜リン酸ビフェニル、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(1,5−ジ−t−ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(ジメチルフェニル)、亜リン酸トリス(イソプロピルフェニル)、亜リン酸オクチルジフェニル、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0086】
亜リン酸エステル化合物の含有量は、(A)重合体成分の合計100重量部に対して、0.05〜10重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部であり、最も好ましくは0.5〜2.5重量部である。含有量が0.05重量部未満の場合には、本発明の目的を達成し得る程の改善効果が得られない場合があり、また10重量部を越えた場合には、押出性や成形加工性が低下する傾向にある。
【0087】
本発明の(C)亜リン酸金属塩とは、亜リン酸と元素周期律表の1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13族元素およびスズ、鉛などとの金属塩である。なお、これら亜リン酸金属塩は、単独で用いても良いし2種以上組み合わせて用いても良い。また、本発明の(C)次亜リン酸金属塩とは、次亜リン酸と元素周期律表の1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13族元素およびスズ、鉛などとの金属塩である。なお、これら次亜リン酸金属塩は、単独で用いても良いし2種以上組み合わせて用いても良い。
【0088】
本発明の目的をより顕著に達成できるという観点から、これらの中でも好ましいのが次亜リン酸金属塩であり、最も好ましいのが次亜リン酸ナトリウム(NaHPO・HO)、次亜リン酸カルシウム(Ca(HPO)あるいはこれらの混合物である。
【0089】
前記亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩の含有量は、(A)重合体成分の合計100重量部に対して、0.05〜10重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部であり、最も好ましくは0.5〜2.5重量部である。含有量が0.05重量部未満の場合には、本発明の目的を達成し得る程の改善効果が得られない場合があり、また10重量部を越えた場合には、押出性や成形加工性が低下する傾向にある。
【0090】
ここで、本発明のブロック共重合体の製造において、(B)亜リン酸エステル化合物と(C)亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩とを配合し溶融混練した場合、(B)亜リン酸エステル化合物および(C)亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩はブロック重合体に含まれることになるが、溶融混練後のブロック共重合体中における(B)亜リン酸エステル化合物および(C)亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩の存在状態は特に限定されない。例えば、亜リン酸エステルまたは亜リン酸金属塩もしくは次亜リン酸金属塩のままで存在しても良く、またリン酸エステルあるいはリン酸金属塩として存在しても良いし、これらが混在した状態であっても良い。また、亜リン酸エステル化合物または亜リン酸金属塩もしくは次亜リン酸金属塩が加水分解した状態、例えば亜リン酸、次亜リン酸、リン酸などの状態で存在してもかまわない。
【0091】
溶融混練を行う装置としては、公知の装置を用いることができる。例えば、単軸あるいは2軸押出機、バンバリーミキサーおよびミキシングロールなどの溶融混練機が好ましく用いられる。この中でも脱気機構(ベント)装置、ならびにサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が最も好ましく用いられる。
【0092】
溶融混練の条件としては、減圧度を0〜0.07Mpa程度とすることが好ましい。混練の温度は、重合体成分のJISK7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点あるいは軟化点より1〜100℃程度高い温度が好ましい。混練機での剪断速度は100(SEC−1)以上程度であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は1〜15分程度が好ましい。上記範囲を外れた場合には、生産性が低下したり、成形加工性が低下したり、得られた成形品の外観が十分でなかったり、また物性の改良効果が十分でなかったりする場合があるので注意を要する。
【0093】
本発明のブロック共重合体には、酸化物あるいは過酸化物を配合しても差し支えない。
前記酸化物としては、元素周期律表1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、14、15の酸化物あるいは過酸化物あるいはこれらの混合物を挙げることができる。好ましいものとしてはCaOなどの2族の酸化物、TiO、ZrOなどの4族の酸化物、CrO、MoO、WOなどの6族の酸化物、ZnOなどの12族の酸化物、B、Alなどの13族の酸化物、SiO、GeOなどの14族の酸化物、Sbなどの15族の酸化物、Fe、Fe、CoO、NiO、CuOなどの8族の酸化物を挙げることができる。
【0094】
本発明のブロック共重合体には、成形性改良剤を添加しても差し支えない。前記成形性改良剤は、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド化合物、ポリアルキレングリコールあるいはその末端変性物、低分子量ポリエチレンあるいは酸化低分子量ポリエチレン、置換ベンジリデンソルビトール、ポリシロキサン、カプロラクトン類、無機結晶核剤類からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0095】
本発明のブロック共重合体には、更なる熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、耐候性の向上を目的に、劣化抑制剤を添加しても差し支えない。前記劣化抑制剤は、ヒンダードフェノール化合物などのフェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、イオウ系安定剤から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0096】
本発明のブロック共重合体には、着色剤を添加しても差し支えない。前記着色剤は、ニグロシンなどの染料、酸化チタンあるいはカーボンブラックなどの顔料、あるいはアルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、チタンなどの金属粒子、マイカ製パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、カラーガラスフレークなどのメタリック顔料などから選ばれる少なくとも1種の着色剤である。
【0097】
本発明のブロック共重合体には、導電性カーボンブラックを添加しても差し支えない。前記導電性カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどから選ばれる少なくとも1種のカーボンブラックであり、中でも良好な鎖状構造を有し凝集密度が大きいものが好ましい。
【0098】
本発明のブロック共重合体には、難燃剤を配合しても差し支えない。難燃剤は、非ハロゲン系難燃剤、あるいは臭素系難燃剤が好ましい。
【0099】
前記非ハロゲン系難燃剤は、赤リン、リン酸アンモニウム、あるいはポリリン酸アンモニウムなどのリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ、すず酸亜鉛、ヒドロキシすず酸亜鉛などの金属水酸化物あるいは無機金属化合物の水和物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなどのホウ酸化合物などの無機化合物系難燃剤、メラミン、メラム、メレム、メロン(300℃以上でメレム3分子から3分子の脱アンモニアによる生成物)、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、サクシノグアナミン、アジポグアナミン、メチルグルタログアナミン、メラミン樹脂などのトリアジン系難燃剤、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、シリカなどのシリコーン系難燃剤から選ばれる少なくとも1種の難燃剤である。
【0100】
前記臭素系難燃剤は、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体および臭素系架橋芳香族重合体からなる化合物類から選ばれる少なくとも1種の難燃剤である。
【0101】
本発明のブロック共重合体には、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート以外の他の重合体成分を配合しても差し支えない。好ましい他の重合体成分としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ゴムのいずれかから選ばれる少なくとも1種の重合体成分が挙げられる。
【0102】
本発明のブロック共重合体には、無機充填材を配合しても差し支えない。前記無機充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンなどから選ばれる少なくとも1種の無機充填剤である。
【0103】
本発明のブロック共重合体は、成形加工性に優れるため、公知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、発泡成形、溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いても、良好に成形加工ができる。
【0104】
また、本発明のブロック共重合体は、原料としてリワーク品やリサイクル品を用いても製造することが可能であるため、各種成形体あるいは部品類の再生への応用、例えば回収ポリエチレンテレフタレート(PET)の再生への応用が期待される。
【0105】
更に、本発明のブロック共重合体から得られる成形体は、従来の樹脂組成物に比べ、熱時剛性、耐熱性、耐薬品性、表面外観、耐候性、耐熱エージング性などに優れるため、自動車部品、電子電気部品、工業機械部品、各種ギア、押出用途などの各種部品への応用が期待される。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した物性評価は、以下のように行った。
1.重合体成分およびブロック共重合体の特性
(1−1)融点(℃)
JIS K7121に準じて行った。測定装置は、PERKIN−ELMER社製DSC−7型を用いた。測定条件は、窒素雰囲気下、約8mgのサンプルを300℃で2分間保った後、降温速度20℃/minで40℃まで降温して、さらに40℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)のピーク温度から融点を求めた。
(1−2)ガラス転移温度(℃)
JIS K7121に準じて行った。測定装置は、PERKIN−ELMER社製DSC−7型を用いた。まず試料をホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させ、溶融状態のサンプルを液体窒素中に急冷し固化させ測定サンプルとした。サンプル10mgを用いて、昇温スピード20℃/minの条件下、30〜300℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度を測定した。
(1−3)重量平均分子量(Mw)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。装置は東ソー(株)製HLC−8020、検出器は示差屈折計(RI)、溶媒としてクロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール、ペンタフルオロフェノールから選ばれる1種の溶媒、あるいはこれら2種以上を混合した混合溶媒を用い、カラムは東ソー(株)製TSKgel−GMHHR−Hを2本とG1000HHRを1本用いた。溶媒流量は0.6ml/min、サンプル濃度は、1〜3(mgサンプル)/1(ml溶媒)であり、フィルターでろ過し不溶分を除去したものを測定用サンプルとした。得られた溶出曲線をもとに、ポリスチレン(PS)あるいはポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算により、重量平均分子量(Mw)を算出した。
(1−4)平均連鎖長(Average sequence lengths)
13C−NMRにより求めた。溶媒としてd−硫酸、d−ヘキサフルオロイソプロパノールまたはd−クロロホルムを用いた。装置はブルカー社製FT−NMR DPX−400を用いた。温度25℃、サンプル濃度をサンプル2mgに対して溶媒10mlとし、化学シフト基準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。積算回数は約2万回、待ち時間は3.0秒の条件で測定した。平均連鎖長(Average sequence lengths)の算出は、J.Polym.Sci.Phys.ED.第20巻、第1875ページ(1982年)に準じて行った。
(1−5)水分含有率(重量%)
測定サンプル0.7gを水分気化装置(三菱化学社製VA−06型)を用いて、185℃の温度条件下、カールフィッシャー法により測定した。
2.成形品の作製および物性
射出成形機を用いて成形品を作製した。射出成形装置として日精樹脂(株)製PS40Eを用い、金型温度80℃に設定し、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で、ブロック共重合体ペレットから成形品を得た。なお、シリンダー温度は、前記(1−1)に準じて求めたブロック共重合体の融点より約15〜40℃高い温度条件に設定した。
(2−1)曲げ弾性率および曲げ強度(Mpa)
ASTMD790に準じて行った。
(2−2)引張強度(Mpa)および引張伸度(%)
ASTMD638に準じて行った。
(2−3)ノッチ付きIzod衝撃強度(J/m)
ASTMD256に準じて行った。
(2−4)表面外観
堀場製ハンディー光沢計IG320を用いて、JIS−K7150に準じてGs60℃を測定した。
(2−5)色調(b値)
装置は、日本電色社製色差計ND−300Aを用いて、b値を求めた。b値が小さいものほど色調が良好である。
(2−6)環境応力クラックの発生状態
80℃の熱水中で4時間浸漬した射出成形試験片を75Mpaの一定応力で曲げた状態に保ち、30重量%塩化カルシウム水溶液をその表面に塗布し、100℃の温度で2時間放置した後の試験片のクラック発生状態を観察した。
(2−7)吸水率(重量%)
成形試験片を23℃×24時間の水中に浸せきし、重量増分から吸水率を求めた。
参考実施例1
ポリアミド66(旭化成(株)製レオナ1300(水分率0.08重量%)、表中「PA66」と略記する)70重量部、およびポリアミド6I(バイエル社製T40(水分率0.01重量%)、表中「PA6I」と略記する)30重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリデシル1.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部、アジピン酸0.5重量部をブレンドした。2軸押出機(東芝機械(株)製:TEM35、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=47.6(D=37mmφ))を用いて溶融混練を行った。なお、サイドフィーダーから重合体成分100重量部に対して、ガラス短繊維(旭ファイバーガラス(株)製JA416、表中「GF」と略記する)100重量部を添加した。スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度280℃(先端ノズル付近のポリマー温度は、290℃であった。)、レート60Kg/hr(滞留時間2分)で、減圧せずに押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを80℃の窒素雰囲気下で24時間乾燥した。
【0107】
ポリアミド66のガラス転移温度Tg(B)は47.0℃、ポリアミド6Iのガラス転移温度Tg(B)は130℃であり、パラメータX=(47.0×0.7)+(130×0.3)=71.9℃と算出される。また、得られたブロック共重合体ペレットのガラス転移温度は1つ(m=1)であり、その値(Tg)は62.0℃であった。したがって、ポリアミド66およびポリアミド6Iのガラス転移温度の内、ブロック共重合体のガラス転移温度に近いのはポリアミド66のガラス転移温度であるため、Tg(A)=47.0℃であり、パラメータY=|Tg−X|/|Tg(A)−X|=|62.0−71.9|/|47.0−71.9|=0.40と算出される。得られた成形体の評価結果を表1に示す。
参考実施例2
ポリアミド66(旭化成(株)製レオナ1300(水分含有率0.08重量%))60重量部、およびポリアミド6I(バイエル社製T40(水分含有率0.01重量%))40重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリデシル1.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部、アジピン酸0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例1と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表1に示す。
参考実施例3
吸水処理したポリアミド66(旭化成(株)製レオナ1300(水分含有率1.0重量%))70重量部、およびポリアミド6I(バイエル社製T40(水分含有率0.01重量%))30重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリデシル1.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部をブレンドした。2軸押出機(東芝機械(株)製:TEM35、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=47.6(D=37mmφ))を用いて溶融混練を行った。なお、サイドフィーダーから重合体成分100重量部に対して、ガラス短繊維(旭ファイバーガラス(株)製、JA416)100重量部を添加した。
スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度280℃(先端ノズル付近のポリマー温度は、290℃であった。)、レート60Kg/hr(滞留時間2分)、減圧度0.04Mpaの条件下で押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットとした。該ペレットを80℃の窒素雰囲気下で24時間乾燥した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表1に示す。
参考比較例1
ポリアミド66(旭化成(株)製レオナ130(水分率0.08重量%))60重量部、およびポリアミド6I(バイエル社製T40(水分率0.01重量%))40重量部からなる重合体成分100重量部に、次亜リン酸カルシウム0.5重量部、アジピン酸0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例1と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表1に示す。
参考実施例4
亜リン酸トリデシルの代わりに亜リン酸トリフェニルを用いた以外は、参考実施例1と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表2に示す。
参考実施例5
亜リン酸トリデシルの代わりに亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)を用いた以外は、参考実施例1と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表2に示す。
参考実施例6
次亜リン酸カルシウムの代わりに、亜リン酸亜鉛を用いた以外は、参考実施例1と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表2に示す。
参考比較例2
次亜リン酸カルシウムの代わりに、リン酸亜鉛を用いた以外は、参考実施例1と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表2に示す。
参考実施例7
ポリアミド6(宇部興産(株)製SF1013A(水分含有率0.08重量%)、表中「PA6」と略記する)70重量部、およびポリアミド6I(バイエル社製T40(水分率0.01重量%))30重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部、アジピン酸0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例1と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表3に示す。
参考実施例8
ポリアミド原料としてヘキサメチレンジアミン・アジピン酸等モル混合物10.5Kgとヘキサメチレンジアミン・イソフタル酸等モル混合物4.5Kgを用いた。このポリアミド原料水溶液を撹拌装置を有する70リットルのオートクレーブ中に仕込み、50℃の温度下、十分窒素で置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約150まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力が約0.2Mpa以上にならないように水を系外に除去しながら加熱を続け、約7Kgの水を除去した。その後、オートクレーブ内の圧力が約1.77Mpa以上にならないように水を系外に除去しながら加熱を連続して約1時間続け、約270℃まで昇温した。その後、約1時間をかけ圧力を大気圧まで降圧し、撹拌を停止し、下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷、カッティングを行い、ポリアミド66/6Iランダム共重合ポリアミドを得た。水分含有率は0.4重量%であった。
【0108】
得られたポリアミド66/6Iランダム共重合体(表中「PA66/6I」と略記する)90重量部、およびポリアミド6I(バイエル社製T40(水分率0.01重量%))10重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部、アジピン酸0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例1と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表3に示す。
参考実施例9
吸水処理したポリアミド66(旭化成(株)製レオナ1300(水分含有率1.0重量%))64重量部、ポリアミド6I(バイエル社製T40(水分含有率0.01重量%))27重量部、およびポリアミド6(宇部興産(株)製SF1013A(水分含有率0.08重量%))9重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例3と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表3に示す。
参考実施例10
ポリアミド66(旭化成(株)製レオナ1300(水分含有率0.08重量%))70重量部、およびポリアミド6(宇部興産(株)製SF1013A(水分含有率0.08重量%))30重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部、アジピン酸0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例1と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表3に示す。
参考実施例11
ポリアミド66(旭化成(株)製レオナ1300(水分含有率0.08重量%))70重量部、およびポリエチレンテレフタレート(ユニチカ(株)製NEH−2050(水分含有率0.01重量%未満)、表中「PET」と略記する)30重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部をブレンドした。2軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=47.6(D=37mmφ))を用いて溶融混練を行った。なお、サイドフィーダーから重合体成分100重量部に対してガラス短繊維(旭ファイバーガラス(株)製JA416)50重量部を添加した。スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度280℃(先端ノズル付近のポリマー温度は、290℃であった。)、レート60Kg/hr(滞留時間2分)で、減圧せずに押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットとした。該ペレットを80℃の窒素雰囲気下24時間乾燥した。
【0109】
ポリアミド66のガラス転移温度Tg(B)=47.0℃、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度Tg(B)=81.0℃であり、パラメータX=(47.0×0.7)+(81.0×0.3)=57.2℃と算出される。得られたブロック共重合体ペレットのガラス転移温度は2つ(m=2)であり、その値はそれぞれTg=50.1℃、Tg=73.1℃であった。したがって、ポリアミド66およびポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度の内、ブロック共重合体のガラス転移温度Tgに近いのはポリアミド66のガラス転移温度であり、ブロック共重合体のガラス転移温度Tgに近いのはポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度であるため、Tg(A)=47.0℃、Tg(A)=81.0℃であり、パラメータY=(1/m)×{(|Tg−X|/|Tg(A)−X|)+(|Tg−X|/|Tg(A)−X|)}=(1/2)×{(|50.1−57.2|/|47.0−57.2|)+(|73.1−57.2|/|81.0−57.2|)}=0.68と算出される。
【0110】
また溶媒としてd−ヘキサフルオロイソプロパノールを用いて13C−NMRから求めた平均連鎖長は22.5であった。得られた成形体の評価結果を表4に示す。
参考実施例12
ポリアミド66(旭化成(株)製レオナ1300(水分含有率0.08重量%))60重量部、およびポリエチレンテレフタレート(ユニチカ(株)製NEH−2050(水分含有率0.01重量%未満))40重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例11と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表4に示す。
参考実施例13
ポリアミド66(旭化成(株)製レオナ1300(水分含有率0.08重量%))70重量部、および再生ポリエチレンテレフタレート(回収された飲料ボトルの粉砕品(水分含有率0.01重量%未満))30重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例11と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表4に示す。
参考実施例14
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ(株)製NEH−2050)の代わりに、ポリトリメチレンテレフタレート(シェル社製CP−BR(水分含有率0.01重量%未満)、表中「PTT」と略記する)を用いた以外は、参考実施例12と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表4に示す。
参考実施例15
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ(株)製NEH−2050)の代わりに、ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製1401−X06(水分含有率0.01重量%未満)、表中「PBT」と略記する)を用いた以外は、参考実施例11と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表5に示す。
参考実施例16
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ(株)製NEH−2050(水分含有率0.01重量%未満))50重量部、およびポリトリメチレンテレフタレート(シェル社製CP−BR(水分含有率0.01重量%未満))50重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)2.0重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例11と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表5に示す。
参考比較例3
ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ(株)製NEH−2050(水分含有率0.01重量%未満))50重量部、およびポリトリメチレンテレフタレート(シェル社製CP−BR(水分含有率0.01重量%未満))50重量部からなる重合体成分100重量部のみを用いて参考実施例11と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表5に示す。
実施例17
ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ユーピロンS−2000、表中「PC」と略記する)30重量部、およびポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製、1401−X06)70重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)0.5重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部をブレンドした。2軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=46.7(D=37mmφ))を用いて、スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度280℃(先端ノズル付近のポリマー温度は、290℃であった。)
、レート60Kg/hr(滞留時間2分)、減圧度0.01Mpaの条件下で押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、ペレットとした。該ペレットを80℃の窒素雰囲気下で乾燥した。溶媒としてd−クロロホルムを用いて13C−NMRから求めた平均連鎖長は35.0であった。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表6に示す。
実施例18
ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ユーピロンS−2000)50重量部、およびポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製、1401−X06)50重量部からなる重合体成分100重量に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)0.5重量部、次亜リン酸カルシウム0.5重量部をブレンドした。以後の操作は実施例17と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表6に示す。
実施例19
ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製、1401−X06)の代わりに、ポリトリメチレンテレフタレート(シェル社製CP−BR)を用いた以外は、実施例17と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表6に示す。
実施例20
ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、ユーピロンS−2000)30重量部、およびポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製、1401−X06)70重量部からなる重合体成分100重量部に、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)0.5重量部、亜リン酸亜鉛0.5重量部をブレンドした。以後の操作は参考実施例12と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。溶媒としてd−クロロホルムを用いて13C−NMRから求めた平均連鎖長は12.5であった。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表7に示す。
比較例4
ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、ユーピロンS−2000)30重量部、およびポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製、1401−X06)70重量部からなる重合体成分100重量部のみを用い、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、次亜リン酸カルシウムを添加しなかった以外は、参考実施例12と同様にしてブロック共重合体ペレットを作製した。溶媒としてd−クロロホルムを用いて13C−NMRから求めた平均連鎖長は4.5であった。重合体成分及びブロック共重合体の特性、並びに得られた成形体の評価結果を表7に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】



【0113】
【表3】


【0114】
【表4】


【0115】
【表5】


【0116】
【表6】


【0117】
【表7】


【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のブロック共重合体は、良好な成形性を有し、また、原料としてリワーク品やリサイクル品を用いても簡便でかつ経済的に製造することが可能である。更に、本発明のブロック共重合体から得られる成形体は、熱時剛性、耐熱性、耐薬品性、表面外観などに優れている。
【0119】
したがって、本発明のブロック共重合体は、包装・容器などの汎用消費分野、自動車外装・外板部品、自動車内装部品、自動車アンダーフード部品、二輪車用部品、家具用部品、OA機器分野用品、電子電器用部品、工業用部品などといった各種用途で求められている部品のリワークまたはリサイクル化、および樹脂材料としての高性能化・高機能化といういずれの要求にも応じ得るものとして期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合体中の構成単位がポリカーボネートと他の異なる重合体成分であって、該他の異なる重合体成分が、ポリアミド、ポリエステル、およびポリアリレートからなる群から選択される重合体成分に、(B)亜リン酸エステル化合物および(C)亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を配合し溶融混練し得られるブロック共重合体であって、下記式(1)で示されるYが0.1〜0.9であり、(A)成分100重量部に対する(B)成分の量が0.05〜10重量部であり、(C)成分の量が0.05〜2.5重量部であることを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
【数1】


(式(1)中、mはブロック共重合体のガラス転移温度の数であり、Tgはブロック共重合体のガラス転移温度(℃)であり、Tg(A)は各重合体成分のガラス転移温度の内、Tgに最も近い重合体成分のガラス転移温度(℃)であり、また、Xは下記式(2)で示される:
【数2】


式(2)中、nは重合体成分の数であり、Tg(B)は各重合体成分のガラス転移温度(℃)であり、wは各重合体成分の量比である。)
【請求項2】
溶融混練時の平均滞留時間が1〜15分であることを特徴とする請求項1記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項3】
(A)重合体成分が、ポリカーネートおよびポリエステルからなる、請求項1記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
(A)成分100重量部に対する、(B)成分の量が0.05〜2.5重量部であり、(C)成分の量が0.05〜2.5重量部である、[1]記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
(A)重合体成分中の構成単位が、ポリカーボネート重合体成分が30〜50重量%およびポリエステル重合体成分が70〜50重量%である、請求項1記載のブロック共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−215560(P2009−215560A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100570(P2009−100570)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【分割の表示】特願2001−571799(P2001−571799)の分割
【原出願日】平成13年3月28日(2001.3.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】