説明

ポリカーボネートポリオール及びその製造方法

【課題】 取り扱い性に優れたであるポリカーボネートポリオールを提供すること。
【解決手段】 トリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と、脂肪族ジオールに由来するジオール残基とを有するポリカーボネートポリオールであって、前記トリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と前記脂肪族ジオールに由来するジオール残基とのモル比が、80/20〜20/80であるポリカーボネートポリオールとする。
前記脂肪族ジオールとしては、炭素数4〜7の直鎖炭化水素を主鎖とするジオールが好ましい。また、トリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と脂肪族ジオールに由来するジオール残基とのモル比において、一方のジオール残基が他方のジオール残基よりも多い方が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともトリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と脂肪族ジオールに由来するジオール残基とを有するポリカーボネートポリオール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネート樹脂やポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂の原料として有用である。また、反応性コーティング剤の原料としても広く使用されている。
ポリカーボネートポリオールを原料としたポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂は、ポリエステルポリオールを原料としたものに比べて耐加水分解性が高く、また、ポリエーテルポリオールを原料としたものに比べて耐候性が高いという特徴を有しており、樹脂やコーティング剤等の分野において、高い付加価値をもたらしている。
【0003】
ポリカーボネートポリオールの原料となるジオール化合物として、鎖状脂肪族ジオールを用いたポリカーボネートポリオールは、イソシアネート化合物と反応させて得られるポリウレタン樹脂に比較的柔らかい性質を与えることが知られている。一方、ポリカーボネートポリオールの原料となるジオール化合物として、脂環構造を有するジオールを用いたポリカーボネートポリオールは、イソシアネート化合物と反応させて得られるポリウレタン樹脂に耐熱性を与えることが知られている。
【0004】
これらに鑑みて、特許文献1では、トリシクロデカンジメタノールを原料としたポリカーボネートジオールや、トリシクロデカンジメタノールと脂肪族ジオールとを原料としたポリカーボネートジオールが提案されている。
しかし、これらのポリカーボネートジオールの中には、25℃で固体となるために、使用時に加温しなくてはならなかったり、製造時に破砕工程が必要である等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−312729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、使用時の取り扱い性の向上や、製造時の工程数低減のために、25℃で液体であり、かつ、耐熱性や柔軟性を有するポリカーボネートポリオールを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、具体的には以下のような構成を有する。
(1) 少なくとも一般式(1)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と、脂肪族ジオールに由来するジオール残基とを有するポリカーボネートポリオールであって、前記トリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と前記脂肪族ジオールに由来するジオール残基とのモル比が、80/20〜20/80であり、25℃で液状のポリカーボネートポリオールである。
【0008】
【化1】

【0009】
(2) 脂肪族ジオールが、炭素数4〜7の直鎖炭化水素を主鎖とするジオールである前記(1)に記載のポリカーボネートポリオールである。
(3) トリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と脂肪族ジオールに由来するジオール残基とのモル比において、一方のジオール残基が他方のジオール残基よりも多い前記(1)又は(2)に記載のポリカーボネートポリオールである。
(4) 少なくとも一般式(1)で表されるトリシクロデカンジメタノールと脂肪族ジオールと炭酸エステルとをエステル交換反応させる前記(1)〜(3)に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリカーボネートポリオールによれば、25℃で液体であり、使用時の取り扱い性の向上や、製造時の工程数低減を行うことができ、かつ、耐熱性や柔軟性を有するポリカーボネートポリオールを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリカーボネートポリオールは、少なくとも上記一般式(1)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と、脂肪族ジオールに由来するジオール残基とを有するポリカーボネートポリオールであって、前記トリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と前記脂肪族ジオールに由来するジオール残基とのモル比が、80/20〜20/80であり、25℃で液状のポリカーボネートポリオールである。
【0012】
(トリシクロデカンジメタノール残基)
本発明におけるトリシクロデカンジメタノール残基は、上記一般式(1)で表されるものであり、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールに代表されるトリシクロデカンジメタノールの各構造異性体又はその混合物の2つのヒドロキシル基の水素原子を除いた部分をいう。
【0013】
(脂肪族ジオール残基)
本発明における脂肪族ジオール残基としては、直鎖状脂肪族ジオール残基、分岐鎖状脂肪族ジオール残基、主鎖に脂環構造を有する脂肪族ジオール残基や側鎖に脂環構造を有する脂肪族ジオール残基、主鎖及び側鎖に脂環構造を有する脂肪族ジオール残基等の脂環構造を有する脂肪族ジオール残基が挙げられる。これらは、脂肪族ジオール残基として、その1種のみがポリカーボネートポリオール中に存在してもよいし、複数種がポリカーボネートポリオール中に併存していてもよい。
また、本発明における脂肪族ジオール残基とは、脂肪族ジオールの2つのヒドロキシル基の水素原子を除いた部分をいう。
【0014】
前記直鎖状脂肪族ジオール残基としては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等に基づくジオール残基が挙げられる。これらは、脂肪族ジオール残基として、その1種のみがポリカーボネートポリオール中に存在してもよいし、複数種がポリカーボネートポリオール中に併存していてもよい。
前記分岐鎖状脂肪族ジオール残基としては、例えば、1,3−ブタンジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2−エチルヘキサン−1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等に基づくジオール残基が挙げられる。これらは、脂肪族ジオール残基として、その1種のみがポリカーボネートポリオール中に存在してもよいし、複数種がポリカーボネートポリオール中に併存していてもよい。
前記主鎖に脂環構造を有する脂肪族ジオール残基としては、例えば、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール等に基づくジオール残基が挙げられる。これらは、脂肪族ジオール残基として、その1種のみがポリカーボネートポリオール中に存在してもよいし、複数種がポリカーボネートポリオール中に併存していてもよい。
【0015】
前記脂肪族ジオール残基としては、得られるポリカーボネートポリオールの粘度が低くなりやすいという点から、直鎖状脂肪族ジオール残基が好ましい。また、得られるポリカーボネートポリオールをウレタン樹脂の原料として用いた場合に、ウレタン樹脂の高い耐熱性や耐候性等を発現できるという点から、前記直鎖状脂肪族ジオール残基の中でも、炭素数4〜7の直鎖状脂肪族ジオール残基がより好ましい。
【0016】
(ポリカーボネートポリオール)
本発明のポリカーボネートポリオールは、トリシクロデカンジメタノール残基と脂肪族ジオール残基との平均のモル比が、80/20〜20/80であるポリカーボネートポリオールである。
トリシクロデカンジメタノール残基と脂肪族ジオール残基との総モル数(総数)に対する、トリシクロデカンジメタノール残基のモル数の平均割合(残基数の平均割合)は20〜80%である。
前記トリシクロデカンジメタノール残基の割合が少なすぎると、得られるポリカーボネートポリオールのガラス転移点(Tg)が低くなりすぎて、当該ポリカーボネートポリオールを用いたウレタン樹脂等の硬度が低くなる。前記トリシクロデカンジメタノール残基の割合が多すぎると、得られるポリカーボネートポリオールのガラス転移点(Tg)が高くなりすぎたり、粘度が高くなりすぎたりして、ポリカーボネートポリオールの取り扱い性が悪くなる。
【0017】
本発明のポリカーボネートポリオールは、前記トリシクロデカンジメタノール残基及び前記脂肪族ジオール残基以外にも、他のポリオール残基を有していてもよい。
前記他のポリオール残基としては、多価ポリオール残基、芳香族ジオール残基等が挙げられる。
【0018】
本発明のポリカーボネートポリオールは、25℃において、液体である。常温(25℃)において固体であるポリカーボネートポリオールは、寒冷地でなくとも取り扱い時に固体となっているため、取り扱い性が悪い。
【0019】
本発明のポリカーボネートポリオールは、数平均分子量が400〜4,000であることが好ましく、900〜3,000であることがより好ましい。前記数平均分子量が小さすぎるとポリウレタン等のポリマー原料の用途に対してはポリカーボネートジオールの性能を発現しにくい傾向があり、大きすぎるとポリカーボネートポリオールの粘度が高くなって取り扱いにくくなる傾向がある。本発明における数平均分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0020】
本発明のポリカーボネートポリオールの水酸基価は、40〜200mgKOH/gであることが好ましく、50〜130mgKOH/gであることがより好ましい。前記水酸基価が小さすぎても大きすぎても、ポリウレタン等のポリマー原料の用途に対してはポリカーボネートジオールの性能を発現しにくい場合がある。
【0021】
本発明のポリカーボネートポリオールの酸価は、0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。前記ポリカーボネートポリオールの酸価が高すぎると、ポリカーボネートポリオールの保存安定性が悪くなる場合がある。
【0022】
本発明のポリカーボネートポリオールに含有される水分は、100ppm以下であることが好ましい。前記水分が多すぎると、ポリカーボネートポリオールの保存安定性が悪くなる場合がある。
【0023】
本発明のポリカーボネートポリオールのガラス転移点(Tg)は、−60〜40℃であることが好ましく、−40〜20℃であることがより好ましい。前記ガラス転移点が低すぎるとトリシクロデカンジメタノール残基を導入したことによる耐熱性の効果が少なくなり、高すぎるとポリカーボネートポリオールの粘度が高くなって取り扱いにくくなる場合がある。
【0024】
本発明のポリカーボネートポリオールの75℃における粘度は、500〜10,000cpであることが好ましく、500〜7,500cpであることがより好ましい。前記粘度が高すぎると、ポリカーボネートポリオールの粘度が高くなって取り扱いにくくなる傾向がある。
【0025】
本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法は特に制限されないが、例えば、トリシクロデカンジメタノールと脂肪族ジオールと炭酸エステルと任意のポリオールとをエステル交換反応させることにより製造する方法、高分子量の脂肪族ポリカーボネートポリオールとトリシクロデカンジメタノールとのエステル交換反応により製造する方法等が挙げられる。前記エステル交換反応において、必要により、エステル交換触媒を用いてもよい。
上記の製造方法の中でも、ポリカーボネートポリオール分子中にトリシクロデカンジメタノール残基をできるだけ均一に分散させることができる点から、トリシクロデカンジメタノールと脂肪族ジオールと炭酸エステルと任意のポリオールとを用いてエステル交換反応させる製造方法が好ましい。
【0026】
(炭酸エステル)
前記炭酸エステルとしては特に制限されないが、炭酸エステルに由来する副生アルコール類を効率よく抜き出すことができるものを適宜選択することが望ましい。例えば、炭酸ジアルキル、炭酸ジアリール、炭酸アルキレン等が挙げられる。
炭酸ジアルキルとしては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有する炭酸ジアルキルが好ましく、具体的には、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等が挙げられる。
炭酸ジアリールとしては、炭酸ジフェニル等が挙げられる。
炭酸アルキレンとしては、炭素数2〜4のアルカンジイル基を有する炭酸アルキレンが好ましく、具体的には、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等が挙げられる。これらの中では、副生アルコール類の抜き出しやすさの観点から、炭素数1〜4のアルキル基を有する炭酸ジアルキルが好ましく、炭酸ジメチルが特に好ましい。
【0027】
(エステル交換触媒)
前記エステル交換触媒としては、特に制限されず、通常のエステル交換反応で使用される触媒が使用できる。前記エステル交換触媒としては、具体的には、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、有機スズ化合物が挙げられる。
前記アルカリ金属化合物としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のカルボン酸塩(酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等)、アルカリ金属アルコキシド(リチウムメトキシド、ネトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド等)等が挙げられる。
前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム等)、アルカリ土類金属アルコキシド(マグネシウムメトキシド等)等が挙げられる。
【0028】
前記アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアルコキシド(アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムsec−ブトキシド等)、アルミニウムアセチルアセトナート等のアルミニウム化合物等が挙げられる。
前記亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛のカルボン酸塩(酢酸亜鉛等)、亜鉛アセチルアセトナート等が挙げられ、マンガン化合物としては、マンガンのカルボン酸塩(酢酸マンガン等)、マンガンアセチルアセトナート等が挙げられ、ニッケル化合物としては、ニッケルのカルボン酸塩(酢酸ニッケル等)、ニッケルアセチルアセトナート等が挙げられる。
前記アンチモン化合物としては、例えば、アンチモンのカルボン酸塩(酢酸アンチモン等)、アンチモンアルコキシド等が挙げられ、ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムアルコキシド(ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド等)、ジルコニウムアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0029】
前記チタン化合物としては、例えば、チタンアルコキシド(チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシド、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート等)、チタンアシレート(トリブトキシチタンステアレート、イソプロポキシステアレート等)、チタンキレート(ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート、ジヒドロキシ・ビスラクタトチタン等)等が挙げられる。
前記有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルチンオキシド、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート等が挙げられる。
なお、各カルボン酸塩は、炭素数2〜30のものが好ましく、炭素数2〜18のものがより好ましく、各アルコキシドは、アルコキシ基の炭素数1〜30のものが好ましく、炭素数2〜18のものがより好ましい。
上記の触媒の中では、チタン化合物、有機スズ化合物が好ましく、チタン化合物がより好ましく、チタンアルコキシドが更に好ましい。チタンアルコキシドの中では、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドがより好ましく、チタンテトラブトキシドが特に好ましい。
なお、上記のエステル交換触媒は、単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
【実施例】
【0030】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なおポリカーボネートジオール及びポリカーボネートジオール共重合体のAPHA、水酸基価、酸価はJIS−K1557に準拠した方法で測定を行ない、水分はカールフィッシャー水分計を使用した電量滴定法で、融点、ガラス転移温度は示差走査熱量分析法で(測定温度範囲:−100〜150℃)、粘度はE型粘度計で測定を行なった。
【0031】
[実施例1]
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた500mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート202.0g(2.24mol)、トリシクロデカンジメタノール91.9g(0.47mol)、1,6−ヘキサンジオール166.0g(1.40mol)、チタンテトラブトキサイド0.03gを仕込み、常圧、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を10時間行なった。この間、反応温度は99℃から191℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成ないしはその近傍となるように調節した。
【0032】
この後徐々に50mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、190℃から195℃でエステル交換反応をさらに10時間行なった。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、ポリカーボネートジオール共重合体312gを得た。得られたポリカーボネートジオール共重合体にトリシクロデカンジメタノール3.5g(0.018mol)、1,6−ヘキサンジオール6.4g(0.054mol)をさらに添加して、50mmHg、190℃でエステル交換反応を行ない、ポリカーボネートジオール共重合体322gを得た。なおエステル交換反応は窒素気流中で行なった。得られたポリカーボネートジオール共重合体は、数平均分子量が989、APHAが80、水酸基価が113.5mgkOH/g、酸価が0.02mgKOH/g、水分が52ppm、ガラス転移点が−39℃、粘度が1536cp/75℃、であった。
【0033】
[実施例2]
ジメチルカーボネート191.0g(2.12mol)、トリシクロデカンジメタノール162.4g(0.83mol)、1,6−ヘキサンジオール97.8g(0.83mol)、チタンテトラブトキサイド0.03gを仕込んだ以外は実施例1と同じ方法で操作し、ポリカーボネートジオール共重合体318gを得た。得られたポリカーボネートジオール共重合体にトリシクロデカンジメタノール2.6g(0.013mol)、1,6−ヘキサンジオール1.6g(0.014mol)をさらに添加して、50mmHg、190℃でエステル交換反応を行ない、ポリカーボネートジオール共重合体322gを得た。得られたポリカーボネートジオール共重合体は、数平均分子量が1992、APHAが80、水酸基価が56.3mgkOH/g、酸価が0.02mgKOH/g、水分が82ppm、ガラス転移点が−3℃、粘度が54714cp/75℃であった。
【0034】
[実施例3]
ジメチルカーボネート171.8g(1.91mol)、トリシクロデカンジメタノール164.9g(0.84mol)、1,6−ヘキサンジオール99.3g(0.84mol)、チタンテトラブトキサイド0.03gを仕込んだ以外は実施例1と同じ方法で操作し、ポリカーボネートジオール共重合体310gを得た。得られたポリカーボネートジオール共重合体は、数平均分子量が963、APHAが80、水酸基価が116.5mgkOH/g、酸価が0.02mgKOH/g、水分が73ppm、ガラス転移点が−14℃、粘度が7042cp/75℃であった。
【0035】
[実施例4]
ジメチルカーボネート157.1g(1.74mol)、トリシクロデカンジメタノール222.6g(1.13mol)、1,6−ヘキサンジオール44.7g(0.38mol)、チタンテトラブトキサイド0.03gを仕込んだ以外は実施例1と同じ方法で操作し、ポリカーボネートジオール共重合体318gを得た。得られたポリカーボネートジオール共重合体にトリシクロデカンジメタノール9.7g(0.049mol)、1,6−ヘキサンジオール2.0g(0.017mol)をさらに添加して、50mmHg、190℃でエステル交換反応を行ない、ポリカーボネートジオール共重合体330gを得た。得られたポリカーボネートジオール共重合体は、数平均分子量が1017、APHAが80、水酸基価が110.4mgkOH/g、酸価が0.02mgKOH/g、水分が83ppm、ガラス転移点が12℃、粘度が74045cp/75℃であった。
【0036】
[実施例5]
ジメチルカーボネート211.6g(2.35mol)、トリシクロデカンジメタノール86.9g(0.44mol)、1,4−ブタンジオール123.3g(1.37mol)、チタンテトラブトキサイド0.03gを仕込んだ以外は実施例1と同じ方法で操作し、ポリカーボネートジオール共重合体263gを得た。得られたポリカーボネートジオール共重合体は、数平均分子量が2060、APHAが50、水酸基価が54.5mgKOH/g、酸価が0.03mgKOH/g、水分が90ppm、ガラス転移点が−16℃、粘度が32104cp/75℃であった。
【0037】
[比較例1]
撹拌機、温度計、及び分留管を備えた反応器に、トリシクロデカンジメタノール785.2g(4.00モル)、炭酸ジメチル360.32g(4.00モル)及びテトラ−n−エトキシチタン520mgを仕込み、90〜140℃で副生するメタノールを留出させながら反応させた。メタノールの留出が殆どなくなった後、10mmHg以下に減圧して更に8時間反応させた。なお、反応は窒素雰囲気下で行った。
反応終了後、反応液を冷却して室温で淡黄色の固体を得た。これについてGPC分析及びNMR解析を行い、ポリカーボネートジオール重合体であることを確認した。数平均分子量は824であった。
【0038】
[比較例2]
1,6−ヘキサンジオール及び炭酸エステルを原料として製造したポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、商品名:ETERNACOLL(登録商標) UH−100)について、実施例と同様にしてその物性を測定したところ、数平均分子量が1018、APHAが15、水酸基価110.9mgKOH/g、酸価が0.03mgKOH/g、水分が72ppm、融点が45℃、ガラス転移点が−61.1℃、粘度が399cp(75℃)であった。
【0039】
[比較例3]
1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール及び炭酸エステル(1,4−シクロヘキサンジメタノール:1,6−ヘキサンジオール(モル比)=1:1)を原料として製造したポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、商品名:ETERNACOLL(登録商標) UM−90(1/1))について、実施例と同様にしてその物性を測定したところ、数平均分子量が914、APHAが50、水酸基価122.7mgKOH/g、酸価が0.03mgKOH/g、水分が96ppm、ガラス転移点が−45.4℃、粘度が1464cp(80℃)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一般式(1)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来するトリシクロデカンジメタノール残基と脂肪族ジオール残基とを平均のモル比で、80/20〜20/80有し、25℃で液状のポリカーボネートポリオール。
【化1】

【請求項2】
脂肪族ジオールが、炭素数4〜7の直鎖炭化水素を主鎖とするジオールである請求項1に記載のポリカーボネートポリオール。
【請求項3】
トリシクロデカンジメタノールに由来するジオール残基と脂肪族ジオールに由来するジオール残基とのモル比において、一方のジオール残基が他方のジオール残基よりも多い請求項1又は2に記載のポリカーボネートポリオール。
【請求項4】
少なくとも一般式(1)で表されるトリシクロデカンジメタノールと脂肪族ジオールと炭酸エステルとをエステル交換反応させる請求項1〜3に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。

【公開番号】特開2010−270165(P2010−270165A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120560(P2009−120560)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】