説明

ポリカーボネート樹脂の製造方法

【課題】環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー単量体の分離、精製等の操作を必要とせず、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマーの混合物を開環重合し、ビスフェノールZ型ポリカーボネートを効率良く得る。
【解決手段】環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物を開環重合してビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、重合触媒として、トリアリールホスフィン及び/又はテトラアルキルホスホニウム塩を用いて開環重合することを特徴とするビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、機械的強度および耐衝撃性等が高いなど、優れた特性を数多く有するために幅広い分野で多量に使用されている。具体的には、各種機械部品、各種電気絶縁性材料、自動車部品、光ディスク等の情報機器材料、ヘルメット等の安全防護材料等があり、極めて多岐にわたり利用されている。
ポリカーボネート樹脂の中でもビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂は、ガラス転移温度や機械的強度が極めて高いなどの特徴を有することから、各種情報機器材料等に利用されている。
【0003】
ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、大きく分けて3つあり、1)ビスフェノールZとジフェニルカーボネートとの重合反応、2)ビスフェノールZとホスゲンとの反応により得られたビスフェノールZ型クロロホーメート化オリゴマーの重合反応、3)環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマーの重合反応、が挙げられる。
特開2001−139675公報には、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマーの重合反応によりビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を製造する方法が記載されており、原料として環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマーの単一成分又は混合物を用いることが記載されている。しかしながら、具体的には、特定の2量体、3量体、4量体の各単品を用いて超高分子のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を取得している。かかる2量体、3量体、4量体の各単品を得るにはビスフェノールZのビスクロロホーメート体を原料とし、生成した2量体〜20量体の環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物を分別沈殿法、再結晶法により精製することが必要であり、原料や精製法からしてコストが非常にかかるため、実用化には不向きである。さらに、特開2001−139675公報に記載の方法では、重合触媒を使用しなくとも重合反応が進行するとされている。
【特許文献1】特開2001−139675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、本願発明者が検討によれば環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー単量体の分離精製を行わず、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物を使用してビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を製造した場合、重合触媒を使用しないと環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマーの重合反応はほとんど進行しないことが判明した。
本発明は、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー単量体の分離、精製等の操作を必要とせず、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物を開環重合し、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を効率良く得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の重合触媒を使用することにより、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物を比較的低温かつ短時間で開環重合することでビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂が得られることを見出した。
即ち、本発明の要旨は、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物を開環重合してビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、重合触媒として、トリアリールホスフィン及び/又はテトラアルキルホスホニウム塩を用いて開環重合することを特徴とするビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の製造方法に存する。
【0006】
また、本発明の他の要旨は、平均繰り返し単位数が2〜20のビスフェノールZ型クロロホーメート化オリゴマー混合物を開環重合することを特徴とする環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー単量体の分離、精製等の操作を必要とせず、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物を開環重合し、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を効率良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明は、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー(以下、CY−Z−OGと略することがある)混合物を開環重合することを前提とし、該混合物を重合触媒として、トリアリールホスフィン及び/又はテトラアルキルホスホニウム塩を用いて開環重合してビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(以下、Z−PCRと略することがある)を製造する。
【0009】
<原料環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー(CY−Z−OG)混合物>
本発明で使用するCY−Z−OG混合物は、同一の繰り返し単位を含み、重合度の異なるCY−Z−OGを含む混合物であり、本発明におけるCY−Z−OGとは、少なくともビスフェノールZと呼ばれる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに由来する単位とカルボニル単位が連結した繰り返し単位を有する環状オリゴマー、即ち環状の低次縮合物であり、ビスフェノールZに由来するベンゼン環は、アルキル基、アリール基、ハロゲン等の任意の置換基を有していても良い。又、本発明におけるCY−Z−OGは、ビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物に由来する単位を含んでいても良く、従って、ビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物に由来する単位とカルボニル単位が連結した繰り返し単位を含んでいても良い。ビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物としては、具体的には、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン等が挙げられ、これらの化合物に由来する単位は複数含まれていても良い。
【0010】
上記の中でも、同一の繰り返し単位からなり、繰り返し単位数mが異なるCY−Z−OGの混合物であるのが好ましい。
CY−Z−OGの縮合度は特に限定されず、従って、CY−Z−OG混合物も低次縮合物の混合物であれば特に限定されないが、通常、CY−Z−OG混合物の数平均分子量は500〜50,000程度、好ましくは1,000以上であり、一方、40,000以下である。数平均分子量が小さすぎると、開環重合物の透明性が低下する傾向があり、大きすぎると、開環重合反応の反応性が低下する傾向がある。
尚、CY−Z−OG混合物の構造確認、平均分子量は、核磁気共鳴装置(NMR)、高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフ装置(SEC)、質量分析装置(MS)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOF MS)等を用いて求めることが可能である。
【0011】
本発明のCY−Z−OG混合物は、上記の通り、ビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物に由来する単位を含んでいても良いが、ビスフェノールZ化合物に由来する単位に対する、ビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物に由来する単位の割合は、80モル%以下、好ましくは50モル%以下である。ビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物に由来する単位の割合が多すぎると、本発明の反応の反応性を損ねたり、ビスフェノールZ型ポリカーボネートに求められる性能が不十分となる傾向となる。
本発明のCY−Z−OG混合物は、好ましくは、下記一般式(1)で示され、かつ、繰り返し単位数mが異なるCY−Z−OGを含む混合物である。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、RおよびRは、各々独立に、アルキル基、アリール基、ハロゲンまたはアルコキシ基を表す。aおよびbは、各々独立に0〜4の整数を表す。mは繰り返し単位数を表す。Xは、シクロヘキシリデンを表す)
【0014】
式(1)におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル等の炭素数1〜4のアルキル基が、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基が、アリール基としてはフェニル、トリル基等の炭素数6〜7のアリール基が、ハロゲンとしては塩素、臭素等が挙げられる。a及びbは、好ましくは夫々独立に0〜2の整数を表す。
【0015】
<原料環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物の製造方法>
本発明のCY−Z−OG混合物を製造する方法としては、従来の公知の方法を採用することができ、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを原料に用いる方法(特表昭61−502132号公報、J.Am.Chem.Soc.,vol.112,p2399−2402,(1990)、Macromolecules vol.24,p3035−3044,(1991))が参照される。通常、反応時間、反応温度、反応濃度、アミン触媒量、水酸化アルカリ金属量、水量、反応槽の撹拌速度、原料の添加濃度や添加速度、反応後の溶液からCY−Z−OG混合物を取り出す溶媒の種類や濃度等を調節することにより、CY−Z−OG混合物の収率およびCY−Z−OG混合物の平均分子量範囲を種々変えることができる。
【0016】
本発明のCY−Z−OG混合物としては、下記に述べるビスフェノールZ型クロロホーメートオリゴマー(以下、Z−CF−OGと略することがある)の混合物を環化することによって製造することが好ましい。
【0017】
<ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマーのクロロホーメート体(Z−CF−OG)混合物及びその製造>
本発明のCY−Z−OGの混合物の前駆体として用いることができるZ−CF−OG混合物は、例えば、下記一般式(2)で示される構造を有するZ−CF−OGを含む混合物が挙げられる。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、Rは水素原子又は−COClを表し、RおよびRは、各々独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン基またはアルコキシ基を表し、Xはシクロヘキシリデンを表す。aおよびbは、各々独立に0〜4の整数を表す。nは繰り返し単位数を表す。)
【0020】
上記式(2)において、R、R、aおよびbとしては、上記式(1)におけるものと同様のものが挙げられる。一般式(2)中におけるnは、通常1〜20であり、好ましくは1〜15であり、更に好ましくは、1〜10である。又、上記一般式(2)で示されるオリゴマー混合物における平均繰り返し単位数(オリゴマー混合物全体での上記繰り返し単位の平均数に相当)は、2〜20である。好ましくは2〜15、更に好ましくは3〜10である。nの範囲は2価フェノール成分とホスゲンとの反応条件により制御が可能である。
【0021】
繰り返し単位数nについては、上記と同様の方法により求めることができる。
尚、本発明のCY−Z−OG混合物が、ビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物に由来する単位を含む場合、Z−CF−OG混合物もビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物に由来する単位を含む必要があり、その場合、Z−CF−OGがビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物に由来する単位を含むこととなる。ビスフェノールZ以外のビスフェノール化合物に由来する単位としては、前述のものが挙げられ、その割合は、CY−Z−OG混合物における割合に準じて調整される。
【0022】
上記Z−CF−OG混合物は、2価フェノール成分とホスゲンとを反応させて製造される。通常、2価フェノール成分を混合した水酸化アルカリ金属水溶液、もしくは該水酸化アルカリ金属水溶液と水不混合性有機溶媒との混合液に、撹拌条件下でホスゲンを導入する方法が用いられる。
上記水酸化アルカリ金属としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。水酸化アルカリ金属の使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1倍当量以上が好ましく、また4倍当量以下であることが好ましい。
【0023】
また、水不混合性有機溶媒とは、水と混合した場合完全には水に溶解せず、少なくとも一部が水と分離して2層を形成し得る有機溶媒をいう。具体例としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレン等の塩素化脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びクロロトルエン等の塩素化芳香族炭化水素;その他ニトロベンゼン及びアセトフェノン等の置換芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【0024】
これらの中でも、ジクロロメタンまたはクロロベンゼンが特に好ましい。また、2価フェノール成分を含有した水酸化アルカリ金属水溶液と水不混合性有機溶媒との比は体積比で、(2価フェノール成分を含有した水酸化アルカリ金属水溶液):(水不混合性有機溶媒)=1:0.2以上が好ましく、また1:1以下であることが好ましい。
またホスゲンは通常、気体状、液体状、あるいは水不混合性有機溶媒に混合させた溶液として導入することができる。ホスゲンの好ましい導入量は、反応条件、特に反応温度及び水相中の2価フェノール成分を含有した水酸化アルカリ金属水溶液の濃度によって適宜選択されるが、2価フェノール成分1モルに対するホスゲンのモル数は、通常1以上であり、また通常3以下、好ましくは2以下である。
【0025】
また、オリゴマーを製造する際の反応系の温度は、通常0℃以上であり、また通常40℃以下、好ましくは20℃以下である。反応温度が高すぎると、有機溶媒の蒸発や副反応が進行する可能性がある。
また必要であれば、触媒、還元剤等を用いることも可能である。ここで触媒としては、カーボネート結合を生成する縮合反応で使用されている公知の触媒から任意に選択して使用することができる。具体例としては、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、ピリジン、N−エチルピロリドン、N−エチルピペリジン、N−エチルモルホリン、N−イソプロピルピペリジン、N−イソプロピルモルホリン等が挙げられる。特に、トリエチルアミン、N−エチルピペリジンが好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。還元剤としては、例えばハイドロサルファイトナトリウム等が用いられ、還元剤を混合することで着色を抑制することができる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【0026】
尚、水不混合性有機溶媒を用いる場合、Z−CF−OG混合物は、通常、水不混合性有機溶媒中に溶解した状態(溶液)で得られ、その溶液のまま、次のCY−Z−OG混合物の製造工程に直接使用することができる。この点から、水不混合性有機溶媒中のZ−CF−OG濃度は、生成するZ−CF−OGが溶解する範囲であるのが好ましく、通常10重量%以上が好ましく、また40重量%以下が好ましい。
【0027】
<CY−Z−OG混合物の開環重合の触媒>
本発明のZ−PCRの製造方法においては、上記CY−Z−OG混合物の開環重合の触媒として、トリアリールホスフィン及び/又はテトラアルキルホスホニウム塩を用いる。
トリアリールホスフィンとは、リン原子を中心に3つのアリール基が結合した構造を有しているリン化合物である。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アリール基は、アルキル基、アルコキシ基等の置換基を1ヶ又は複数個有していても良く、アリール基は同一でも異なっていても良いが、触媒入手・合成の観点からは同一であるのが好ましい。
トリアリールホスフィンとしては、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基を表す。)
【0030】
で表されるアルキル基は、鎖状構造、分岐構造又は環構造のいずれの構造を取っていても良く、アルキル基の炭素数としては、通常30以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。又、Rで表されるアルコキシ基の炭素数としては、通常30以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。
一般式(3)で表される構造を有する置換基を有するトリアリールホスフィンの具体例としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−プロポキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−ブトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−フェニルフェニル)ホスフィン、等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィンが好ましい。
本実施の形態において、CY−Z−OG混合物の重合触媒として使用するトリアリールホスフィンの使用量は、CY−Z−OG混合物のカーボネート結合量に対し、通常0.3モル%〜5モル%であり、好ましくは、0.4モル%〜4モル%であり、さらに好ましくは、0.5モル%〜3モル%である。トリアリールホスフィンの使用量が少な過ぎると、重合反応が充分に進行せず、高分子量のZ−PCRが得られないこととなる。また、多すぎる場合、反応性は良好であるものの得られたZ−PCRの透明性が低下する傾向がある。
【0032】
一方、テトラアルキルホスホニウム塩は、リン原子に4つのアルキル基が結合した構造を含み、リン原子が正の電荷を帯びた陽イオンであり、対イオンとして負の電荷を帯びた陰イオンを有している。テトラアルキルホスホニウム塩のアルキル基としては、鎖状構造、分岐構造または環構造のいずれの構造を取っていても良い。また、これらの4つのアルキル基は、全て同じ構造であっても良いし、互いに異なる構造であっても良い。アルキル基の炭素数としては、通常30以下、好ましくは20以下、特に特に好ましくは16以下である。
テトラアルキルホスホニウム塩として、下記一般式(4)に示す化合物が好ましい。
【0033】
【化4】

【0034】
(上記式中、R〜Rは各々独立してアルキル基を表し、Xはハロゲン原子またはハロ
ゲン原子を含む陰イオンを表す。)
【0035】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1〜16の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。中でも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0036】
一般式(4)で表されるテトラアルキルホスホニウム塩の具体例としては、例えば、テトラエチルホスホニウムクロリド、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムヨージド;テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド;テトラオクチルホスホニウムクロリド、テトラオクチルホスホニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムヨージド;トリブチルメチルホスホニウムクロリド、トリブチルメチルホスホニウムブロミド、トリブチルメチルホスホニウムヨージド;トリブチルオクチルホスホニウムクロリド、トリブチルオクチルホスホニウムブロミド、トリブチルオクチルホスホニウムヨージド;トリブチルドデシルホスホニウムクロリド、トリブチルドデシルホスホニウムブロミド、トリブチルドデシルホスホニウムヨージド;トリブチルヘキサデシルホスホニウムクロリド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムヨージド;テトラエチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート、テトラオクチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート、テトラエチルホスホニウムヘキサクロロホスファート、テトラブチルホスホニウムヘキサクロロホスファート、テトラオクチルホスホニウムヘキサクロロホスファート等が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムブロミド、トリブチルメチルホスホニウムヨージド、トリブチルオクチルホスホニウムブロミド、トリブチルドデシルホスホニウムブロミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート、テトラオクチルホスホニウムヘキサフルオロホスファートが好ましい。
【0038】
本実施の形態において、CY−Z−OG混合物の重合触媒として使用するテトラアルキルホスホニウム塩の使用量は、CY−Z−OGのカーボネート結合量に対し、通常、0.001モル%以上、好ましくは0.005モル%以上であり、一方、0.5モル%以下、好ましくは、0.4モル%以下である。テトラアルキルホスホニウム塩の使用量が少な過ぎると、重合反応が充分に進行せず、高分子量のZ−PCRが得られないこととなる。また、多すぎる場合、反応性は良好であるものの生成したZ−PCRが着色する傾向にある。
【0039】
<ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(Z−PCR)の製造>
上述のCY−Z−OG混合物を、上記トリアリールホスフィン及び/又はテトラアルキルホスホニウム塩を重合触媒として開環重合してZ−PCRが製造される。
CY−Z−OG混合物の重合方法としては、例えば、固相重合法、溶液重合法、溶融重合法等が挙げられる。これらの中でも、溶融重合法が好ましい。溶融重合法の場合、CY−Z−OG混合物を溶融させた後、金型等に流し込み、重合、固化させ、Z−PCRの成形体を得る等の応用が可能である。
ここで、CY−Z−OG混合物と重合触媒とを混合させる方法としては、例えば、無溶媒で混合させる方法、溶媒を用いて混合させる方法、CY−Z−OG混合物を加熱、溶融させた後に混合させる方法等の種々の方法が可能である。溶媒を用いて混合させる方法においては、CY−Z−OG混合物と重合触媒の両方が溶解する溶媒を用いるのが好ましい。このような溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0040】
重合温度は、通常150℃以上350℃以下、好ましくは180℃以上320℃以下、さらに好ましくは200℃以上300℃以下である。このような温度範囲でCY−Z−OG混合物の重合を行うことにより、迅速な重合反応が進行し、所望のZ−PCRを得ることができる。重合温度が過度に低いと、重合反応が進行しにくく、所望のZ−PCRを得ることが困難になる傾向がある。一方、重合温度が過度に高いと、Z−PCRや触媒の分解反応が頻繁に起こるようになり、所望のZ−PCRを得ることが困難になる傾向がある。
【0041】
重合は、撹拌条件下行っても、撹拌せずに行っても良い。重合時間は、通常、1秒以上、48時間以下であるが、生産性の点から24時間以内が好ましい。
本発明の製造方法によって得られるZ−PCRの粘度平均分子量は、通常、10,000以上、好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上である。ここで、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が過度に低いと、機械的強度が劣り、所望のZ−PCRを得ることが困難になる傾向がある。
【0042】
尚、CY−Z−OGの重合に際しては、上記で示したものとは構造の異なる他の環状ポリカーボネートオリゴマー、環状カーボネート、環状エステル、環状アミド、環状エーテル、環状アセタール、環状アミン、環状スルフィド、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン、リン含有環状化合物、エポキシド、ラクタム、ラクトン等の開環重合性化合物を含有させ重合させてもよい。また、ビニル基を含有する重合性化合物を含有させ重合させてもよいし、架橋構造を導入するため多官能性化合物を含有させ重合させてもよい。
さらに、重合により得られるZ−PCRの性能を向上させるため、CY−Z−OGやその重合体であるZ−PCRに、無機物、有機物、天然由来化合物等を含有させても良い。
【実施例】
【0043】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって何ら限定されるものではない。また、以下の製造例、実施例および比較例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「重量部」を示す。
尚、Z−PCRの製造に使用した重合触媒を下記に示す。
【0044】
触媒A:トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン
【0045】
【化5】

【0046】
触媒B:トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド
【0047】
【化6】

【0048】
触媒C:トリブチルドデシルホスホニウムブロミド
【0049】
【化7】

【0050】
触媒D:トリブチル−n−オクチルホスホニウムブロミド
【0051】
【化8】

【0052】
触媒E:テトラ−n−オクチルホスホニウムブロミド
【0053】
【化9】

【0054】
触媒F:テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロホスファート
【0055】
【化10】

【0056】
<合成例1:Z−CF−OG混合物の製造>
窒素雰囲気下、撹拌しながら溶解槽に、脱塩水(32.66kg)、25重量%水酸化ナトリウム水溶液(8.07kg)、ハイドロサルファイトナトリウム(2.9g)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(2.6kg)を加え、均一に溶解させた(以後、Zのアルカリ水溶液と称する)。
段差をつけた3つの反応槽(1.8L、1.8L、4.5Lの内容積を持つ各反応槽)を備えた連続流れ撹拌槽反応器(CSTR反応器、continuous-flow stirred tank reactor)において、第1反応槽、第2反応槽、第3反応槽の内部温度が夫々、35℃、30℃、30℃となるように、第1反応槽に、Zのアルカリ水溶液、塩化メチレン、ガス状ホスゲンを夫々、8853mL/時、2276mL/時、6.4g/分の添加速度で連続添加し、所定時間反応を行った。反応後の液体を静置し、有機層と水層とに分離させ、有機層(Z−CF−OG混合物溶液)を得た。
【0057】
得られたZ−CF−OG溶液のZ−CF−OGの濃度は、18.8重量%、Z−CF−OGの末端クロロホーメート基濃度は0.47規定、Z−CF−OGの末端フェノール性水酸基濃度は0.009規定であった。尚、夫々の測定は以下の通りに行った。
【0058】
Z−CF−OGの濃度の測定:
Z−CF−OG溶液を蒸発乾固することにより求めた。
Z−CF−OGの末端クロロホーメート基濃度の測定:
Z−CF−OG溶液を塩化メチレンで希釈した後、アニリンと純水を添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液で滴定することにより求めた。
【0059】
Z−CF−OGの末端フェノール性水酸基濃度の測定:
Z−CF−OG溶液を塩化メチレンで希釈した後、四塩化チタン、酢酸溶液を加え発色させ、分光光度計を用い、546nmの波長で吸光度を測定することにより求めた。
上記で求めたZ−CF−OGの濃度、末端クロロホーメート基濃度、末端フェノール性水酸基濃度から換算したZ−CF−OGの平均繰り返し単位数は、3.2であった。
【0060】
<実施例A:CY−Z−OG混合物の製造>
ビーカーに水酸化ナトリウム8.5g(0.213mol)と水42.5mLを加え、撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。反応槽を20℃にし、反応槽にジクロロメタン290mLと上記の水酸化ナトリウム水溶液を加えた。
【0061】
上記Z−CF−OG混合物溶液100gに、さらにジクロロメタン200mLを添加した溶液を調整し、これを滴下ロートに入れた。トリエチルアミン1.9g(18.8mmol)にジクロロメタン40mLを添加した溶液を調整し、これを上記とは別の滴下ロートに入れた。
ジクロロメタンと水酸化ナトリウム水溶液を加えた反応槽に、撹拌条件下、上記トリエチルアミンのジクロロメタン溶液を10分毎に4回に分けて添加し、さらに、Z−CF−OG混合物のジクロロメタン溶液を40分掛けて滴下した。Z−CF−OG混合物のジクロロメタン溶液の滴下終了後、そのまま2分間撹拌した後、撹拌を停止し、有機層のみを取り出した。
【0062】
この有機層を0.1規定の塩酸400mLで2回洗浄し、水400mLで2回洗浄した後、有機層を取り出した。得られた有機層に対し1.2倍体積量のヘキサンに、有機層を流し込み、不要な高分子量体や非環状物等を析出させた。不要な析出物を濾別し、目的物であるCY−Z−OGが溶解している濾液を取り出した後、溶媒を留去し、目的物であるCY−Z−OG混合物13.1g(収率77%、白色固体)を単離した。
得られたCY−Z−OG混合物の構造確認、平均分子量及び分子量分布の測定は、サイズ排除クロマトグラフ装置(SEC)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOF MS)で行った結果、分子量500〜100,000に分子量分布を持つ下記一般式(5)で示される構造の混合物であった。又、CY−Z−OG混合物の数平均分子量は、3,000であった。尚、数平均分子量は、SEC測定において、下記較正法に基づいて求めた。この、CY−Z−OG混合物を以下の、Z−PCRの製造に使用した。
【0063】
尚、測定条件は、以下の通りであった。
サイズ排除クロマトグラフ装置(SEC):
装置:東ソー社製HLC−8220GPC
カラム:東ソー社製TSK GEL SUPER HZM−M
カラム温度:40℃
検出器:東ソー社製UV−8220(254nm)
移動層:クロロホルム(試薬特級)
較正法:標準ポリスチレン換算
【0064】
マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOF MS):
装置:Voyager-DE STR質量分析計(Applied Biosystems製)
イオン化法:マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI法)
加速電圧:20kV
イオン化収束モード:リフレクターモード
検出イオン:正イオン検出
マトリックス:ジスラノール
イオン化助剤:トリフルオロ酢酸ナトリウム
【0065】
【化11】

【0066】
(実施例1〜実施例4/CY−Z−OGの混合物の重合によるZ−PCRの製造)
三角フラスコに触媒A0.2397g(0.680mmol)とジクロロメタン100mLを添加し、触媒Aを均一に溶解させた液(以後、触媒A−100液)を調製した。
別途、試験管に上記で調製したCY−Z−OG混合物0.2g(カーボネート結合量:0.680mmol)を添加した後、触媒A−100液1mLを試験管に添加し(触媒A−100液1mL中に触媒Aは6.80μmol、CY−Z−OG混合物のカーボネート結合量に対する触媒A量=1mol%)、CY−Z−OG混合物を均一に溶解させた。
【0067】
試験管中のジクロロメタンを留去し、触媒Aを含んだCY−Z−OG混合物の白色固体を試験管中に得た。
この試験管を240℃、260℃、280℃、300℃のオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間放置し、得られたZ−PCRの粘度平均分子量(以後、Mv)を測定した。結果を表−1に示した。
尚、Mvは、ウベローデ型毛細管粘度計(ジクロロメタンの流下時間t:135.40秒)を用いて、20.0℃において、樹脂のジクロロメタン溶液(濃度:6.00g/L)の流下時間(t)を求め、以下の式に基づき、算出した。
【0068】
ηsp=(t/t)−1
X=(0.2092×ηsp)+1.0734
Y=100×ηsp/C
C=6.00 [g/L]
η=Y/X
Mv=3207×(η1.205
【0069】
(実施例5〜実施例8/CY−Z−OGの混合物の重合によるZ−PCRの製造)
三角フラスコに触媒B0.3453g(0.680mmol)とジクロロメタン100mLを添加し、触媒Bを均一に溶解させた液(以後、触媒B−100液)を調製した。
【0070】
別の三角フラスコに、上記の触媒B−100液10mLとジクロロメタン90mLを添加し、均一に混合させた液(以後、触媒B−1000液)を調製した。
別途、試験管にCY−Z−OG混合物0.2g(カーボネート結合量:0.680mmol)を添加した後、触媒B−1000液1mLを試験管に添加し(触媒B−1000液1mL中に触媒Bは0.680μmol、CY−Z−OG混合物のカーボネート結合量に対する触媒B量=0.1mol%)、CY−Z−OG混合物を均一に溶解させた。
【0071】
試験管中のジクロロメタンを留去し、触媒Bを含んだCY−Z−OG混合物の白色固体を試験管中に得た。
この試験管を240℃、260℃、280℃、300℃のオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間放置し、得られたZ−PCRのMvを測定した。結果を表−1に示した。
【0072】
(実施例9〜実施例12/CY−Z−OGの混合物の重合によるZ−PCRの製造)
三角フラスコに触媒C0.3072g(0.680mmol)とジクロロメタン100mLを添加し、触媒Cを均一に溶解させた液(以後、触媒C−100液)を調製した。
別の三角フラスコに、上記の触媒C−100液10mLとジクロロメタン90mLを添加し、均一に混合させた液(以後、触媒C−1000液)を調製した。
【0073】
触媒B−1000液に代えて触媒C−1000液を用いた(触媒C−1000液1mL中に触媒Cは0.680μmol、CY−Z−OG混合物のカーボネート結合量に対する
触媒C量=0.1mol%)以外実施例5と同様にして、触媒Cを含んだCY−Z−OG混合物の白色固体を試験管中に得た。
この試験管を240℃、260℃、280℃、300℃のオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間放置し、得られたZ−PCRのMvを測定した。結果を表−1に示した。
【0074】
(実施例13〜実施例16/CY−Z−OGの混合物の重合によるZ−PCRの製造)
三角フラスコに触媒D0.2690g(0.680mmol)とジクロロメタン100mLを添加し、触媒Dを均一に溶解させた液(以後、触媒D−100液)を調製した。
別の三角フラスコに、上記の触媒D−100液10mLとジクロロメタン90mLを添加し、均一に混合させた液(以後、触媒D−1000液)を調製した。
【0075】
触媒B−1000液に代えて触媒D−1000液を用いた(触媒D−1000液1mL中に触媒Dは0.680μmol、CY−Z−OG混合物のカーボネート結合量に対する触媒D量=0.1mol%)以外実施例5と同様にして、触媒Dを含んだCY−Z−OG混合物の白色固体を試験管中に得た。
この試験管を240℃、260℃、280℃、300℃のオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間放置し、得られたZ−PCRのMvを測定した。結果を表−1に示した。
【0076】
(実施例17〜実施例20/CY−Z−OGの混合物の重合によるZ−PCRの製造)
三角フラスコに触媒E0.3835g(0.680mmol)とジクロロメタン100mLを添加し、触媒Eを均一に溶解させた液(以後、触媒E−100液)を調製した。
別の三角フラスコに、上記の触媒E−100液10mLとジクロロメタン90mLを添加し、均一に混合させた液(以後、触媒E−1000液)を調製した。
【0077】
触媒B−1000液に代えて触媒E−1000液を用いた(触媒E−1000液1mL中に触媒Eは0.680μmol、CY−Z−OG混合物のカーボネート結合量に対する触媒E量=0.1mol%)以外実施例5と同様にして、触媒Eを含んだCY−Z−OG混合物の白色固体を試験管中に得た。
この試験管を240℃、260℃、280℃、300℃のオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間放置し、得られたZ−PCRのMvを測定した。結果を表−1に示した。
【0078】
(実施例21〜実施例22/CY−Z−OGの混合物の重合によるZ−PCRの製造)
三角フラスコに触媒F0.2751g(0.680mmol)とジクロロメタン100mLを添加し、触媒Fを均一に溶解させた液(以後、触媒F−100液)を調製した。
別の三角フラスコに、上記の触媒F−100液10mLとジクロロメタン90mLを添加し、均一に混合させた液(以後、触媒F−1000液)を調製した。
【0079】
触媒B−1000液に代えて触媒F−1000液を用いた(触媒F−1000液1mL中に触媒Fは0.680μmol、CY−Z−OG混合物のカーボネート結合量に対する触媒F量=0.1mol%)以外実施例5と同様にして、触媒Fを含んだCY−Z−OG混合物の白色固体を試験管中に得た。
この試験管を280℃、300℃のオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間放置し、得られたZ−PCRのMvを測定した。結果を表−1に示した。
【0080】
(比較例1〜比較例8/CY−Z−OGの混合物の重合によるZ−PCRの製造)
試験管にCY−Z−OG混合物0.2g(カーボネート結合量:0.680mmol)を添加した後、触媒を添加せずにこの試験管を240℃、260℃、280℃、300℃のオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間、又は60分間放置し、得られたZ−PCRのMvを測定した。結果を表−1に示した。
【0081】
【表1】

【0082】
表−1に示す結果から、触媒を全く用いない(比較例1〜比較例8)と重合反応が進行しない。一方、本発明の重合触媒を使用することにより(実施例1〜実施例22)、重合反応が充分に進行し、高分子量の、従って、機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物を開環重合してビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、重合触媒として、トリアリールホスフィン及び/又はテトラアルキルホスホニウム塩を用いて開環重合することを特徴とするビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項2】
環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物の数平均分子量が500〜50,000であることを特徴とする請求項1に記載のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項3】
平均繰り返し単位数が2〜20のビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマーのクロロホーメート体の混合物を環化して、環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物を得ることを特徴とする請求項1は又2に記載のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項4】
開環重合温度が150℃〜350℃であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項5】
ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項6】
平均繰り返し単位数が2〜20のビスフェノールZ型クロロホーメート化オリゴマー混合物を開環重合することを特徴とする環状ビスフェノールZ型ポリカーボネートオリゴマー混合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−126647(P2010−126647A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303100(P2008−303100)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】