説明

ポリカーボネート製造方法

本発明は、ポリカーボネートの製造方法であって、(A)テトラアリールホスホニウム化合物及び適宜助触媒を含む触媒の存在下、約220〜約280℃の範囲内の温度及び180〜20mbarの範囲内の圧力で1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物をオリゴマー化して、約1000〜約6000ダルトンの範囲内の数平均分子量(Mn)を有するオリゴマーポリカーボネートを得る段階と、(B)第二の段階において、段階(A)で生成したオリゴマーポリカーボネートを約280〜約310℃の範囲内の温度及び約15〜約0.1mbarの範囲内の圧力で加熱して、約15000〜約50000ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有するポリカーボネートを得る段階とを含んでなり、前記生成物ポリカーボネートは1000ppm未満のフリース生成物を含む、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネート製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物と1種以上のジアリールカーボネートとの溶融反応によってポリカーボネートを製造する方法であって、前記溶融反応はエステル交換反応触媒及び適宜助触媒で媒介され、前記エステル交換反応触媒は1種以上のテトラアリールホスホニウム化合物からなると共に、前記助触媒はアルカリ金属水酸化物からなり、前記生成物ポリカーボネートは1000ppm未満のフリース生成物を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリカーボネートは、水酸化ナトリウムのような酸受容体及びジクロロメタンのような有機溶媒を含む水性相の存在下でビスフェノールのようなジヒドロキシ芳香族化合物をホスゲンと反応させることで製造されている。通例、重合速度を高めるため、第四級アンモニウム化合物又は低分子量第三級アミン(例えば、トリエチルアミン)のような相間移動触媒が水性相に添加される。この合成法は、一般にポリカーボネートを製造するための「界面」法として知られている。
【0003】
ポリカーボネート製造のための界面法は幾つかの固有の短所を有している。第一に、反応体としてホスゲンを必要とするプロセスを実施することは公知の安全性の問題のため不利である。第二に、このプロセスでは大量の有機溶媒を使用する必要があるので、環境に対するあらゆる悪影響を防止するために経費のかかる予防措置を講じなければならない。第三に、界面法は比較的大量の設備及び資本投資を必要とする。第四に、界面法で製造したポリカーボネートは色のばらつき、粒状物レベルが高いこと、及び腐蝕の原因となりかねない塩化物含有量が高い傾向がある。
【0004】
近年、ポリカーボネートは、エステル交換反応触媒の存在下でジヒドロキシ芳香族化合物(例えば、ビスフェノールA)とジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート)とのエステル交換反応に係る無溶媒法によって商業的規模で製造されている。この反応は溶媒の非存在下に溶融状態で実施され、減圧及び高温下で反応体を混合すると同時に、反応で生じるフェノール副生物を留去することで完結状態まで推進される。このポリカーボネート製造方法は「溶融」法といわれる。溶融法は、ホスゲンを使用せず、溶媒を必要とせず、必要な設備が少なくて済むので、幾つかの点で界面法よりも優れている。さらに、溶融法で製造したポリカーボネートは反応体由来の夾雑塩素を含まず、粒状物レベルが低く、さらに一定した色を有する。したがって、商業的生産プロセスでポリカーボネートを製造する場合には溶融法を使用することが極めて望ましい。
【0005】
溶融法を用いてポリカーボネートを製造する際に使用するため、様々なエステル交換反応触媒が評価されてきた。第四級アンモニウム塩及びアルカリ金属水酸化物(特に、水酸化ナトリウム)が、エステル交換反応触媒として特に有効であることが判明している。しかし、アルカリ金属水酸化物は有用な重合触媒であるが、これらはポリカーボネート生長鎖に沿ってフリース反応を促進し、そのため枝分れポリカーボネート生成物を生じることも知られている。ポリカーボネート鎖における枝分れ部位の存在は、ポリカーボネートの溶融流れ挙動の変化を引き起こすことがあり、加工が困難となりかねない。
【0006】
したがって、フリース反応のような望ましくない反応を最小限に抑えつつ、溶融重合反応を実施して高い分子量を有する生成物ポリカーボネートを製造するための方法を開発することが望まれる。
【特許文献1】米国特許第5340905号明細書
【特許文献2】米国特許第5399659号明細書
【特許文献3】米国特許第5767224号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、ポリカーボネートの製造方法であって、(A)テトラアリールホスホニウム化合物及び適宜助触媒を含む触媒の存在下、約220〜約280℃の範囲内の温度及び約180〜約20mbarの範囲内の圧力で1種以上のジアリールカーボネート及び1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物をオリゴマー化して、約1000〜約7500ダルトンの範囲内の数平均分子量を有するオリゴマーポリカーボネートを得る段階と、(B)第二の段階において、段階(A)で生成したオリゴマーポリカーボネートを約280〜約310℃の範囲内の温度及び約15〜約0.1mbarの範囲内の圧力で加熱して、約15000〜約50000ダルトンの数平均分子量を有するポリカーボネートを得る段階とを含んでなり、当該方法は約1000ppm未満のフリース生成物を含む、方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、本発明の方法に従って製造されたポリカーボネートオリゴマー及び高分子量ポリカーボネートの両方に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態及びその実施例に関する以下の詳しい説明を参照することで本発明の理解を深めることができよう。本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、以下の意味をもつものと定義される。
【0010】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0011】
「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0012】
本明細書中で使用する「ポリカーボネート」という用語は、1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物から導かれる構造単位を組み込んだポリカーボネートをいい、コポリカーボネート及びポリエステルカーボネートを包含する。
【0013】
本明細書中で使用する「溶融法ポリカーボネート」という用語は、ジアリールカーボネートとジヒドロキシ芳香族化合物のエステル交換反応で製造されたポリカーボネートをいう。
【0014】
本明細書中で「BPA」はビスフェノールAと定義されるが、これは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール及びp,p−BPAとしても知られている。
【0015】
本明細書中で使用する「ビスフェノールAポリカーボネート」という用語は、実質的にすべての繰返し単位がビスフェノールA残基からなるポリカーボネートをいう。
【0016】
本明細書中で使用する「ポリカーボネート」という用語は、高分子量ポリカーボネート及びオリゴマーポリカーボネートの両方を包含する。本明細書中では、高分子量ポリカーボネートは8000ダルトンを超える数平均分子量(Mn)を有するものと定義され、オリゴマーポリカーボネートは8000ダルトン未満の数平均分子量(Mn)を有するものと定義される。
【0017】
本明細書中で使用する「末端封鎖パーセント」は、ヒドロキシル基でないポリカーボネート連鎖末端の百分率をいう。ジフェニルカーボネート及びビスフェノールAから製造されるビスフェノールAポリカーボネートの場合、約75%の「末端封鎖パーセント」値は、すべてのポリカーボネート連鎖末端の約75%がフェノキシ基からなる一方、前記連鎖末端の約25%がヒドロキシル基からなることを意味する。「末端封鎖パーセント」及び「パーセント末端封鎖」という用語は互換的に使用される。
【0018】
本明細書中で使用する「芳香族基」という用語は、1以上の芳香環を含む原子価1以上の基をいう。芳香族基の例には、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン及びビフェニルがある。この用語は、芳香族成分及び脂肪族成分の両方を含む基(例えば、ベンジル基、フェネチル基及びナフチルチメル基)も包含する。この用語は、芳香族基及び脂環式基の両方を含む基(例えば、4−シクロプロピルフェニル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)も包含する。
【0019】
本明細書中で使用する「脂肪族基」という用語は、環状でない線状又は枝分れ原子配列からなる原子価1以上の基をいう。かかる配列は、窒素、イオウ及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。脂肪族基の例には、メチル、メチレン、エチル、エチレン、ヘキシル、ヘキサメチレンなどがある。
【0020】
本明細書中で使用する「脂環式基」という用語は、環状であるが芳香族でない原子配列からなり、さらに芳香環を含まない原子価1以上の基をいう。かかる配列は、窒素、イオウ及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。脂環式基の例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−シクロヘキシルエチル−1−イル、テトラヒドロフラニルなどがある。
【0021】
本明細書中で使用する「フリース生成物」という用語は、生成物ポリカーボネートの加水分解時に、当該カルボキシ置換ジヒドロキシ芳香族化合物のヒドロキシ基の一方又は両方に隣接してカルボキシル基を有するカルボキシ置換ジヒドロキシ芳香族化合物を与える生成物ポリカーボネートの構造単位と定義される。例えば、フリース反応が起こる溶融反応法で製造されたビスフェノールAポリカーボネートの場合、フリース生成物は生成物ポリカーボネートの完全加水分解時に2−カルボキシビスフェノールAを与えるポリカーボネートの構造部分を含む。
【0022】
「フリース生成物」及び「フリース基」という用語は、本明細書中で互換的に使用される。
【0023】
「フリース反応」及び「フリース転位」という用語は、本明細書中で互換的に使用される。
【0024】
本明細書中で使用する「フリースレベル」という用語は、生成物ポリカーボネート中に存在するフリース生成物の量をいう。
【0025】
前述の通り、本発明は、ポリカーボネートの製造方法であって、(A)テトラアリールホスホニウム化合物及び適宜助触媒を含む触媒の存在下、約220〜280℃の範囲内の温度及び約180〜20mbarの範囲内の圧力で1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物をオリゴマー化して、約1000〜約7500ダルトンの範囲内の数平均分子量(Mn)を有するオリゴマーポリカーボネートを得る段階と、(B)第二の段階において、段階(A)で生成したオリゴマーポリカーボネートを約280〜約310℃の範囲内の温度及び約15〜約0.1mbarの範囲内の圧力で加熱して、約8000〜約50000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するポリカーボネートを得る段階とを含んでなり、前記生成物ポリカーボネートは1000ppm未満のフリース生成物を含む、方法を提供する。
【0026】
1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物と1種以上のジアリールカーボネートとの溶融重合反応においては、本発明の一実施形態では、テトラアリールホスホニウム化合物は通例ジヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約1×10−8〜約1×10−3モルに相当する量で使用し得る。第二の実施形態では、テトラアリールホスホニウム塩はジヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約1×10−6〜約2.5×10−4モルに相当する量で使用し得る。
【0027】
本発明の方法に従って使用するジヒドロキシ芳香族化合物は、例えばヒドロキノン(HQ)、2−メチルヒドロキノン、レゾルシノール、5−メチルレゾルシノールなどのジヒドロキシベンゼン、例えば1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン、及び例えばビスフェノールAや4,4’−スルホニルジフェノールのようなビスフェノールであり得る。通例、ジヒドロキシ芳香族化合物は、次式の構造Iを有する1種以上のビスフェノールからなる。
【0028】
【化1】

【0029】
式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、n及びmは独立に0〜4の整数であり、Wは結合、酸素原子、イオウ原子、SO基、C〜C20脂肪族基、C〜C20芳香族基、C〜C20脂環式基又は次式の基である。
【0030】
【化2】

【0031】
構造(I)を有するビスフェノールは、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどで例示される。
【0032】
本発明の方法に従って使用するジアリールカーボネートには、次式の構造IIを有するジアリールカーボネートが包含される。
【0033】
【化3】

【0034】
式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、t及びvは独立に0〜5の整数である。
【0035】
ジアリールカーボネートIIは、ジフェニルカーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネートなどで例示される。
【0036】
本発明の一実施形態では、触媒は次式の構造IIIを有するテトラアリールホスホニウム化合物である。
【0037】
【化4】

【0038】
式中、R〜Rは独立にC〜C20アリール基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。通例、陰イオンXは水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、フェノキシドイオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン及びテトラフェニルホウ酸イオンからなる群から選択される。構造IVを有する第四級ホスホニウム塩は、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムアセテート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボロネートなどで例示される。
【0039】
構造III中で、陰イオンXは通例、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、フェノキシドイオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン及び重炭酸イオン及びなる群から選択される陰イオンである。構造IIIを有する触媒に関しては、Xが炭酸イオン又は硫酸イオンのような多価陰イオンである場合、構造III中の正電荷及び負電荷が適正なバランスを保つことは言うまでもない。例えば、構造IV中のR〜Rが各々ブチル基であり、Xが炭酸アニオンであるテトラブチルホスホニウムカーボネートの場合、Xが1/2(CO−2)を表すことはもちろんである。
【0040】
本発明の方法に従えば、触媒は各種の形態で添加できる。触媒は固体(例えば、粉末)として添加してもよく、或いは溶媒(例えば、水又はアルコール)中に溶解してもよい。一実施形態では、触媒は水溶液の形態で反応系に添加される。水溶液のpHは、好ましくは調製したばかりの溶液のpH又はその付近であればよく、これは使用する触媒の種類に応じて変化する。
【0041】
若干の実施形態では、反応混合物はさらに助触媒を含むことができ、この助触媒は金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物)であり得る。主触媒の活性を高めるために遊離の金属水酸化物を添加してもよいし、或いは主触媒自体の中にそれが夾雑物として存在していてもよい。存在する場合、本発明の一実施形態では、遊離の金属水酸化物は使用するジヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約1×10−9〜約2.5×10−3モルの範囲内で存在することができる。第二の実施形態では、アルカリ金属水酸化物はジヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約1×10−8〜約2.0×10−4モルの範囲内で存在することができ、本発明の第三の実施形態では、金属水酸化物はジヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約5×10−7〜約1×10−5モルの範囲内で存在することができる。
【0042】
本発明の方法に従えば、溶融重合は2以上の異なる段階で実施される。第一の段階ではオリゴマーポリカーボネートが製造され、次いでそれが1以上の追加段階で高分子量ポリカーボネートに転化される。高分子量生成物は、オリゴマー化段階で使用した温度及び圧力スケジュールに比べて温度を上昇させると共に圧力を低下させることで製造される。通例、オリゴマーポリカーボネートを製造するために第一の段階で使用する反応温度は、約180〜約280℃の範囲内、好ましくは約200〜約280℃の範囲内にある。本発明の方法の第二の段階(段階(B))では、第一の段階(段階(A))で生成したオリゴマーポリカーボネートをオリゴマー化段階で使用したものよりさらに高い温度及び低い圧力に暴露することで、オリゴマーポリカーボネートから高分子量ポリカーボネートへの転化が達成される。この第二の段階(段階(B))は、「重合段階」ともいわれる。一実施形態では、重合段階で使用する圧力は約0.01〜約50mbarの範囲内にある。第二の実施形態では、重合段階で使用する圧力は約0.05〜約30mbarの範囲内にある。第三の実施形態では、重合段階で使用する圧力は約0.1〜約20mbarの範囲内にある。第一の段階で生成されるオリゴマーポリカーボネートの数平均分子量は、通例約500〜約10000ダルトンの範囲内にある。第二の実施形態では、第一の段階で生成されるオリゴマーポリカーボネートの数平均分子量は約700〜約8000ダルトンの範囲内にある。第三の実施形態では、第一の段階で生成されるオリゴマーポリカーボネートの数平均分子量は約1000〜約7500ダルトンの範囲内にある。第二の段階で反応体の温度を上昇させると共に圧力を低下させた場合、オリゴマーポリカーボネートは連鎖成長反応により増大して高分子量の生成物ポリカーボネートに変化する。本発明の一実施形態では、生成物ポリカーボネートの重量平均分子量は約15000〜約50000ダルトンの範囲内にある。本発明の第二の実施形態では、生成物ポリカーボネートの重量平均分子量は約16500〜約40000ダルトンの範囲内にある。本発明の第三の実施形態では、生成物ポリカーボネートの重量平均分子量は約17000〜約35000ダルトンの範囲内にある。さらに、本発明の方法に従って製造した生成物ポリカーボネートは、通例、通常の触媒系を使用しながら同等な反応時間、反応温度、触媒添加量などの条件下で製造した生成物ポリカーボネートより低いレベルのフリース生成物を有する。一般に、生成物ポリカーボネート中に存在するフリース生成物の量はできるだけ制限することが望ましい。その理由は、高いフリースレベルは変色を生じることがあると共に、生成物ポリカーボネートの溶融流れ特性に影響を及ぼすことのある無制御のポリマー枝分れの部位として働くためである。一般に、本発明の方法に従って製造した高分子量ポリカーボネート中に存在するフリース転位生成物のレベルは約1000ppm未満であり、若干の実施形態では500ppm未満である。
【0043】
オリゴマー化段階の開始時に使用する圧力は、大気圧又は大気圧より高い圧力であり得る。通例、オリゴマー化段階中の圧力は約180〜約20mbarの範囲内にあり、重合段階中にはさらに低い圧力である。
【0044】
全反応時間は、通例、約0.1〜約10時間の範囲内にある。本発明の一実施形態では、全反応時間は約1〜約6時間の範囲内にあり得る。別の実施形態では、全反応時間は約2〜約5時間の範囲内にある。
【0045】
本発明の方法に従って使用する触媒及び助触媒は、同一の段階又は相異なる段階で添加できる。任意成分の触媒はいかなる段階でも添加できるが、若干の実施形態では、プロセス中の初期に添加すればよい。
【0046】
本発明の方法は、バッチ法、半バッチ法又は連続法として実施できる。いずれの場合にも、使用する溶融重合条件は2以上の相異なる反応段階を含んでおり、第一の反応段階では出発ジアリールカーボネート及びジヒドロキシ芳香族化合物をオリゴマーポリカーボネートに転化させ、第二の反応段階では第一の反応段階で生成したオリゴマーポリカーボネートを高分子量ポリカーボネートに転化させる。かかる「段階的」重合反応条件は、第一の反応容器内で出発モノマーをオリゴマー化し、そこで生成したオリゴマーポリカーボネートを1以上の下流反応器に連続的に移送し、そこでオリゴマーポリカーボネートを高分子量ポリカーボネートに転化させる連続重合系で使用するのに特に適している。
【0047】
さらに、本発明の方法は末端封鎖剤の存在下で実施できる。即ち、本発明の一実施形態では、1種以上の末端封鎖剤、1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物、1種以上のジアリールカーボネート、(1種以上のテトラアリールホスホニウム化合物からなる)1種以上の触媒、及び(1種以上のアルカリ金属水酸化物からなる)1種以上の助触媒を第一のオリゴマー化段階において溶融重合条件下で反応させてオリゴマーポリカーボネートを得、次いでこれを第二の重合段階において末端封鎖剤から導かれる末端基を含む高分子量ポリカーボネートに転化させる。通例、末端封鎖剤はカルダノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール及びp−クミルフェノールのような一官能性フェノールであり、使用するジヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり末端封鎖剤約0.01〜約0.07モルに相当する量で使用される。例えば、p−tert−ブチルフェノールを末端封鎖剤として使用する場合、本発明の方法に従って製造される生成物ポリカーボネートは末端p−tert−ブチルフェノキシ基を含む。
【0048】
幾つかの態様では、ポリカーボネートポリマーの分子量及び使用するテトラアリールホスホニウム触媒とアルカリ金属水酸化物助触媒との組合せの作用下で重合反応が起こる速度に基づけば、本発明の方法は初期の溶融重合方法より優れている。即ち、短い時間で高い分子量の生成物ポリカーボネートが得られる。さらに、本発明の方法に従って製造した生成物ポリカーボネートは、通常の触媒系を使用しながら同等な反応時間、反応温度、触媒添加量などの条件下で製造した生成物ポリカーボネートより低いレベルのフリース生成物を有するのが通例である。一般に、生成物ポリカーボネート中に存在するフリース生成物の量はできるだけ制限することが望ましい。その理由は、高いフリースレベルは変色を生じることがあると共に、生成物ポリカーボネートの溶融流れ特性に影響を及ぼすことのある無制御のポリマー枝分れの部位として働くためである。一般に、本発明の方法に従って製造した高分子量ポリカーボネート中に存在するフリース転位生成物のレベルは約1000ppm未満であり、若干の実施形態では500ppm未満である。
【0049】
特に本発明で示されるタイプの溶融反応については、使用するモノマーの純度が生成物ポリカーボネートの性質に強い影響を及ぼし得ることは言うまでもない。したがって、使用するモノマーは金属イオン、ハロゲン化物イオン、酸性夾雑物及びその他の有機化学種のような夾雑物を含まないか、又は非常に限られた量しか含まないことが大抵は望ましい。これは、ポリカーボネート中に存在する夾雑物がディスク性能に影響を及ぼすことのある光ディスク(例えば、コンパクトディスク)のような用途で特に言えることである。通例、モノマー中に存在する金属イオン(例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ナトリウム及びカリウム)の濃度は約10ppm未満、好ましくは約1ppm未満、さらに好ましくは約100ppb未満にすべきである。ポリカーボネート中に存在するハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物、塩化物及び臭化物イオン)の量は、生成物ポリカーボネートによる水の吸収を抑制すると共に、ポリカーボネートの製造に使用する設備に対するハロゲン化物イオンの腐食効果を回避するため、最小限に抑えるべきである。
【0050】
ある種の用途(例えば、光ディスク)では、ハロゲン化物夾雑物のレベルは非常に低いことが要求されることがある。好ましくは、使用する各モノマー中に存在するハロゲン化物イオンのレベルは約1ppmにすべきである。BPAのようなビスフェノール中に存在することのある酸性不純物(例えば、有機スルホン酸)の存在は、オリゴマー化段階及びそれに続く重合段階では微量の塩基性触媒しか使用されないので、最小限に抑えるべきである。少量の酸性不純物でも、使用する塩基性助触媒の実質的な部分を中和することがあるので、オリゴマー化及び重合の速度に大きな影響を及ぼすことがある。最後に、高温下で(例えば、成形中に)ポリカーボネートが劣化して分子量の低下及び変色を生じる傾向は、ポリカーボネート中における汚染化学種の存在と強く相関している。一般に、本発明のような溶融反応方法を用いて製造した生成物ポリカーボネートの純度レベルは、出発モノマーの純度レベルを厳密に反映している。
【0051】
本発明の方法で製造したポリカーボネートは、成形物品の形成及び使用を容易にするため、特に限定されないが、染料、UV安定剤、酸化防止剤、熱安定剤及び離型剤を始めとする任意成分としての常用添加剤と適宜ブレンドすることができる。特に、本発明の方法で製造したポリカーボネートと、成形工程中に加工助剤として役立つと共に、成形物品に追加の安定性を付与する添加剤とのブレンドを形成することが好ましい。ブレンドは、約0.0001〜約10重量%の所望添加剤を、若干の実施形態では約0.0001〜約1.0重量%の所望添加剤を適宜含んでいてもよい。
【0052】
本発明のポリカーボネートに添加できる物質又は添加剤には、特に限定されないが、耐熱性安定剤、UV吸収剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ剤、粘着防止剤、潤滑剤、曇り防止剤、着色剤、天然油、合成油、ワックス、有機充填材、無機充填材及びこれらの混合物がある。
【0053】
上述の耐熱性安定剤の例には、特に限定されないが、フェノール系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、有機亜リン酸エステル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、エポキシ系安定剤及びこれらの混合物がある。耐熱性安定剤は固体又は液体の形態で添加できる。
【0054】
UV安定剤の例には、特に限定されないが、サリチル酸系UV吸収剤、ベンゾフェノン系UV吸収剤、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤、シアノアクリレート系UV吸収剤及びこれらの混合物がある。
【0055】
離型剤の例には、特に限定されないが、天然及び合成パラフィン、ポリエーテルイミドワックス、フルオロカーボン並びに他の炭化水素系離型剤、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、及び他の高級脂肪酸やヒドロキシ脂肪酸、並びに他の脂肪酸系離型剤、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアルアミド、及び他の脂肪酸アミドやアルキレンビス脂肪酸アミド、並びに他の脂肪酸アミド系離型剤、ステアリルアルコール、セチルアルコール及び他の脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、並びに他のアルコール系離型剤、ブチルステアレート、ペンタエリトリトールテトラステアレート、及び他の脂肪酸低級アルコールエステルや脂肪酸多価アルコールエステルや脂肪酸ポリグリコールエステル、並びに他の脂肪酸エステル系離型剤、シリコーン油及び他のシリコーン系離型剤、並びに上述の離型剤のいずれかの混合物がある。
【0056】
着色剤は顔料又は染料であり得る。本発明では、無機着色剤及び有機着色剤を単独又は組み合わせて使用できる。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載した方法をいかに実施して評価するかの詳しい説明を当業者に提供するために記載するものであり、本発明者らが発明として把握している範囲を限定するものではない。特記しない限り、部は重量部であり、温度は摂氏温度(℃)である。
【0058】
分子量は数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)として報告され、既知分子量のポリカーボネート標準に対してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。
【0059】
フリース含有量は樹脂のKOHメタノリシスで測定し、ppm単位で報告される。フリース含有量は次のようにして測定した。まず、0.50グラムの生成物ポリカーボネートを(内標準としてp−テルフェニルを含む)4.0mlのTHFに溶解した。次に、この溶液に18%KOHメタノール溶液3.0mLを添加した。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。次に、1.0mLの酢酸を添加し、この混合物を5分間撹拌した。酢酸カリウム副生物を1時間かけて晶出させた。固体を濾別し、得られた濾液を内標準としてp−テルフェニルを用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。
【0060】
ポリカーボネートの製造
観察を容易にすると共に、純度を確保するため、むくニッケル製らせん型撹拌機を備えた1リットルのガラスバッチ反応器内で溶融エステル交換反応を行った。反応器の底部は、最終融液を取り出すための破断可能なガラスニップルを有していた。ガラスからナトリウムを除去するため、反応器を3N HCl中に12時間以上浸し、次いで18MΩの水中に12時間以上浸した。次に、反応器をオーブン内で1晩乾燥し、使用時までカバーをして保管した。反応器の温度は、PID調節器を備えた流動砂浴を用いて維持し、反応器と砂浴の界面付近で測定した。反応器の圧力は、留出物捕集フラスコの下流にある真空ポンプ中への窒素放出によって調節し、高い圧力(760〜40mmHg)では水銀気圧計で測定し、低い圧力(40〜1mmHg)ではEdwardsピラニ真空計で測定した。
【0061】
組立てに先立ち、反応器に固体ビスフェノールA(General Electric Plastics Japan Ltd.製、0.6570モル)及び固体ジフェニルカーボネート(General Electric Plastics Japan Ltd.製、0.7096モル)を仕込んだ。次に、反応器を組み立て、密封し、雰囲気を窒素で3回置換した。最後の窒素置換により、反応器をほぼ大気圧に合わせ、180℃の流動砂浴中に沈めた。5分後、250rpmで撹拌を開始した。さらに10分後、反応体は完全に溶融し、均質な混合物となった。テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボロネート(TPPTPB)(1.32×10−4モル)及びNaOH(J.T.Baker製、5.00×10−7モル)を、18MΩの水で適切な濃度(0.220M TPPTPB及び5.00×10−3M NaOH)に希釈した後、順次に添加した。最終の触媒を添加した後、時間計測を開始し、温度を5分で230℃に上昇させた。その温度に達した後、圧力を180mmHgに低下させたところ、フェノール留出物が観察された。25分後、圧力を100mmHgに再び低下させて45分間保った。次いで、温度を5分で260℃に上昇させ、圧力を15mmHgに低下させた。これらの条件を45分間維持した。温度を5分で270℃に上昇させ、圧力を2mmHgに低下させた。これらの条件を10分間維持した。次いで、温度を5分で最終仕上温度に上昇させ、圧力を1.1mmHgに低下させた。仕上温度は310℃であった。30分後、反応器を砂浴から取り出した。
【0062】
実施例1及び2は、上述の一般実験プロトコルに従ってバッチ反応として行った。表1中のデータは、本発明の方法に従って使用した場合における、テトラアリールホスホニウム触媒としてのテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボロネート(TPPTPB、実施例1)及び水酸化ナトリウム助触媒と併用したTPPTPB(実施例2)の驚くべき効果を示している。比較例1及び2は、実施例1及び2で使用したものと同一の反応条件下で、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH、比較例1)及び助触媒としての水酸化ナトリウムと併用したTMAH(比較例2)からなる触媒系の効果が相対的に低いことを示している。同じく、比較例3及び4は、テトラブチルホスホニウムアセテート(TBPA、比較例3)及び助触媒としての水酸化ナトリウムと併用したTBPA(比較例4)からなる触媒系の効果が相対的に低いことを示している。かかるデータは、テトラアリールホスホニウム触媒及び任意成分のアルカリ金属水酸化物助触媒と本発明の二段階重合プロトコルとの特異な組合せが、意外にも低い末端OH基レベル及び低いフリース転位生成物レベルを有する高分子量ポリカーボネートを与えることを示している。実施例及び比較例では、使用したTMAH、TBPA及びTPPTPBの濃度はBPA1モル当たり5×10−5モルであった。使用した場合、水酸化ナトリウム助触媒の濃度はBPA1モル当たり1×10−6モルであった。
【0063】
【表1】

【0064】
以上、本発明を特にその好ましい実施形態について詳しく説明してきたが、本発明の技術的思想及び技術的範囲内で様々な変形及び修正が可能であることは当業者ならば理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートの製造方法であって、(A)テトラアリールホスホニウム化合物及び適宜助触媒を含む触媒の存在下、約220〜約280℃の範囲内の温度及び約180〜約20mbarの範囲内の圧力で1種以上のジアリールカーボネート及び1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物をオリゴマー化して、約1000〜約7500ダルトンの範囲内の数平均分子量を有するオリゴマーポリカーボネートを得る段階と、(B)第二の段階において、段階(A)で生成したオリゴマーポリカーボネートを約280〜約310℃の範囲内の温度及び約15〜約0.1mbarの範囲内の圧力で加熱して、約15000〜約50000ダルトンの重量平均分子量を有するポリカーボネートを得る段階とを含んでなり、当該方法は約1000ppm未満のフリース生成物を含む、方法。
【請求項2】
前記ジヒドロキシ芳香族化合物が次式の構造Iを有するビスフェノールである、請求項1記載の方法。
【化1】

式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、n及びmは独立に0〜4の整数であり、Wは結合、酸素原子、イオウ原子、SO基、C〜C20脂肪族基、C〜C20芳香族基、C〜C20脂環式基又は次式の基である。
【化2】

式中、R及びRは独立に水素原子、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、或いはRとRとが一緒にC〜C20脂環式環を形成するものであるが、該C〜C20脂環式環は適宜1以上のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C21アラルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はこれらの組合せで置換されていてもよい。
【請求項3】
前記ビスフェノールが、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ジアリールカーボネートが次式の構造IIを有する、請求項1記載の方法。
【化3】

式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、t及びvは独立に0〜5の整数である。
【請求項5】
前記ジアリールカーボネートが、ジフェニルカーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート及びビス(メチルサリチル)カーボネートからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記テトラアリールホスホニウム化合物が次式の構造IIIを有する、請求項1記載の方法。
【化4】

式中、R〜Rは独立にC〜C20アリール基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。
【請求項7】
前記陰イオンが、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、フェノキシドイオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン及び重炭酸イオンからなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第四級ホスホニウム化合物がテトラフェニルホスホニウム−テトフェニルボロネートである、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記助触媒がアルカリ金属水酸化物である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記助触媒が水酸化ナトリウムである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記オリゴマー化が1種以上の末端封鎖剤の存在下で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記末端封鎖剤がヒドロキシ芳香族化合物である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ヒドロキシ芳香族化合物が、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール及びカルダノールからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
連続法である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
バッチ法である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
ポリカーボネートの製造方法であって、1種以上のテトラアリールホスホニウム化合物を含む触媒及び適宜1種以上のアルカリ金属水酸化物を含む助触媒の存在下、溶融重合条件下で1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物を1種以上のジアリールカーボネートと接触させて生成物ポリカーボネートを製造することを含んでなり、前記接触は2以上の段階で実施され、前記生成物ポリカーボネートは約1000ppm未満のフリースを含む、方法。
【請求項17】
前記二つの段階が、約1000〜約7500ダルトンの範囲内の数平均分子量を有するオリゴマーポリカーボネートを与えるオリゴマー化段階と、前記オリゴマーポリカーボネートを約15000〜約50000ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有する高分子量ポリカーボネートに転化させる1以上の後続重合段階とからなる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
オリゴマー化段階が約220〜約280℃の範囲内の温度及び約180〜約20mbarの範囲内の圧力で実施され、重合段階が約280〜約310℃の範囲内の温度及び約15〜0.1mbarの圧力で実施される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記ジアリールカーボネートが、ジヒドロキシ芳香族化合物1モル当たりジアリールカーボネート約0.95〜約1.15モルに相当する量で使用される、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記ジヒドロキシ芳香族化合物が次式の構造Iを有するビスフェノールである、請求項16記載の方法。
【化5】

式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、n及びmは独立に0〜4の整数であり、Wは結合、酸素原子、イオウ原子、SO基、C〜C20脂肪族基、C〜C20芳香族基、C〜C20脂環式基又は次式の基である。
【化6】

式中、R及びRは独立に水素原子、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、或いはRとRとが一緒にC〜C20脂環式環を形成するものであるが、該C〜C20脂環式環は適宜1以上のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C21アラルキル基、C〜C20シクロアルキル基又はこれらの組合せで置換されていてもよい。
【請求項21】
前記ビスフェノールが、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記ジアリールカーボネートが次式の構造IIを有する、請求項16記載の方法。
【化7】

式中、Rは各々独立にハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシカルボニル基、C〜C20シクロアルキル基又はC〜C20アリール基であり、t及びvは独立に0〜5の整数である。
【請求項23】
前記ジアリールカーボネートが、ジフェニルカーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート及びビス(メチルサリチル)カーボネートからなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項24】
前記ジアリールカーボネートがジフェニルカーボネートであり、前記ジヒドロキシ芳香族化合物がビスフェノールAである、請求項16記載の方法。
【請求項25】
前記テトラアリールホスホニウム化合物が次式の構造IIIを有する、請求項16記載の方法。
【化8】

式中、R〜Rは独立にC〜C20アリール基であり、Xは有機又は無機陰イオンである。
【請求項26】
前記陰イオンが、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、フェノキシドイオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン及び重炭酸イオンからなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項27】
前記第四級ホスホニウム化合物がテトラフェニルホスホニウム−テトフェニルボロネートである、請求項16記載の方法。
【請求項28】
ビスフェノールAポリカーボネートの製造方法であって、(A)テトラアリールホスホニウム化合物及び水酸化ナトリウムを含む触媒の存在下、約220〜約280℃の範囲内の温度及び約180〜約20mbarの範囲内の圧力で1種以上のジフェニルカーボネート及びビスフェノールAをオリゴマー化して、約1000〜約7500ダルトンの範囲内の数平均分子量を有するオリゴマーポリカーボネートを得る段階と、(B)第二の段階において、段階(A)で生成したオリゴマーポリカーボネートを約280〜約310℃の範囲内の温度及び約15〜約0.1mbarの範囲内の圧力で加熱して、約15000〜約50000ダルトンの重量平均分子量を有するポリカーボネートを得る段階とを含んでなり、当該方法は約1000ppm未満のフリース生成物を含む、方法。

【公表番号】特表2006−502276(P2006−502276A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543214(P2004−543214)
【出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/022659
【国際公開番号】WO2004/033530
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】