説明

ポリトリメチレンエーテルグリコールエステル

ポリトリメチレンエーテルグリコールエステルを製造するために用いられる触媒からの残渣を実質的に含まないポリトリメチレンエーテルグリコールのモノカルボン酸エステル(モノエステルおよび/またはジエステル)およびかかるモノカルボン酸エステルの調製方法ならびにかかるモノカルボン酸エステルの最終用途が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコールのモノカルボン酸エステル(モノエステルおよび/またはジエステル)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの特定のモノカルボン酸モノエステルおよびジエステルは、潤滑剤を含む様々な分野においてそれらを有用にする特性を有することが予想される。しかし、こうした最終用途のために必要な純度及び安定性を有する製品を製造するかかるエステルの調製方法は知られていない。
【0003】
ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびトリメチレングリコール−エチレングリコールコポリマーのエステル、特に2−エチルヘキサン酸エステルは、それぞれ米国特許第2,520,733号明細書および米国特許第2,481,278号明細書において開示されている。両方の場合において、ポリエーテルグリコールは、1,3−プロパンジオールまたは1,3−プロパンジオールとエチレングリコールの混合物のp−トルエンスルホン酸触媒添加縮合によって調製される。しかし、得られたグリコールのエステル化のための開示された手順は重要な2つの欠点を有する。第1に、その方法は実施例において有機溶媒(ベンゼン)を用い、よって経済性および効率の観点からその方法を魅力的でなくする。第2に、得られた製品は重合触媒から誘導されたスルホン酸エステルを含有する。従って、得られた製品は、これらのエステルが加水分解を受け得るとともに、生じたスルホン酸が製品を劣化させ得る高温用途のために有用ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、本発明は、酸触媒の存在下でモノカルボン酸および/またはモノカルボン酸等価物によるポリトリメチレンエーテルグリコールのエステル化によって得られる、ポリトリメチレンエーテルグリコールのエステル(モノエステル、ジエステルまたはそれらの混合物)を含む組成物であって、前記酸触媒からの酸エステル残渣を実質的に含まない組成物に関する。
【0005】
エステル化において用いるためのポリトリメチレンエーテルグリコールは、好ましくは1,3−プロパンジオール、より好ましくは再生可能な生物源を用いる発酵法から誘導され、約250〜約5000の数平均分子量を有する1,3−プロパンジオールを主として含むジオール反応体から製造される。
【0006】
本発明のもう1つの実施形態は、ポリトリメチレンエーテルグリコールのモノカルボン酸エステルを含む組成物を調製する方法であって、
(a)第1の酸触媒(好ましくは第1の鉱酸触媒)の存在下で少なくとも50モル%の1,3−プロパンジオール反応体を含むヒドロキシル基含有反応体を重縮合して、前記ポリトリメチレンエーテルグリコールを含むポリトリメチレンエーテルグリコール組成物を得る工程と、
(b)第2の酸触媒(好ましくは第2の鉱酸触媒)の存在下で式R−COOH(式中、Rは6〜20個の炭素原子を含有する有機基である)のモノカルボン酸および/またはモノカルボン酸等価物と共に前記ポリトリメチレンエーテルグリコール組成物を加熱することにより前記ポリトリメチレンエーテルグリコール組成物からの前記ポリトリメチレンエーテルグリコールをエステル化して、第2の酸触媒、第1の酸触媒または両方の残留酸エステルを含有する粗ポリトリメチレンエーテルグリコールエステルを得る工程と、
(c)水と共に加熱することにより前記粗エステル中の前記残留酸エステルの相当な部分を加水分解して、水とポリトリメチレンエーテルグリコールエステルの混合物を形成する工程と、
(d)水の相当な部分を除去して、前記残留酸エステルを実質的に含まない実質的に乾いたポリトリメチレンエーテルグリコールエステルを得る工程と
を含む方法に関する。
【0007】
好ましくは、本方法の工程は有機溶媒が実質的に存在しない状態で行われる。
【0008】
また、好ましくは、第1の酸触媒(第1の鉱酸触媒)および第2の酸触媒(第2の鉱酸触媒)は同じである。より好ましくは、第2の酸触媒(第2の鉱酸触媒)は工程(a)の第1の酸触媒(第1の鉱酸触媒)の残りである。換言すると、工程(a)のポリトリメチレンエーテルグリコール組成物を追加の触媒を添加せずに工程(b)において直接用いることが好ましい。
【0009】
本発明は、本方法によって調製された幾つかの特定のエステル、好ましくは、2−エチルヘキサン酸エステル、安息香酸エステル、ステアリン酸エステルおよびオレイン酸エステルにも関連する。
【0010】
本発明は、酸触媒残渣を実質的に含まないとともに好ましくは有機溶媒を実質的に用いない方法によって製造される安定なポリトリメチレンエーテルグリコールエステルを提供する。
【0011】
更に、本発明のポリトリメチレンエーテルグリコールエステルは、再生可能な原材料から部分的にまたは全面的に製造することが可能であり、従って、低減された環境影響を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において記載されたすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、特に指示がない場合、完全に記載されたかのようにすべての目的のために参照により本明細書に明確に援用される。
【0013】
特に定義がない限り、本明細書において用いられるすべての科学技術用語は本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0014】
明示的に注記された場合を除き、商標は大文字で示す。
【0015】
特に指定がない限り、すべての百分率、部、比率などは重量による。
【0016】
量、濃度あるいは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上方値および好ましい下方値の一覧のいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別個に開示されるか否かに関係なく、あらゆる上方範囲限界または好ましい値とあらゆる下方範囲限界または好ましい値のあらゆる対から形成されたすべての範囲を特定的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲を本明細書で挙げる場合、別段に指定がない限り、その範囲は、その終点およびその範囲内のすべての整数および端数を含むことを意図している。範囲を定めるときに挙げられた特定の値に本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0017】
「約」という用語が一定範囲の値または終点を記載する際に用いられるとき、その開示は、関連した特定の値または特定の終点を含むと理解されるべきである。
【0018】
本明細書で用いるとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはそれらのあらゆる変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品または装置はそれらの要素のみに必ずしも限定されずに、こうしたプロセス、方法、物品または装置に明示的に記載されていない他の要素も固有でない他の要素も含んでもよい。更に、相反する明示的な記載がない限り、「または」は、非排他的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味しない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満足される。Aが真(または存在する)およびBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)およびBが真(または存在する)およびAとBの両方が真(または存在する)。
【0019】
単数形(「a」または「an」)の使用は、本発明の要素および成分を記載するために用いられる。これは、あくまで便宜上、および本発明の一般的意味を示すために用いられるに過ぎない。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように読むべきであり、単数が別段に意図されていることが明らかでない限り、単数は複数も含む。
【0020】
本明細書の材料、方法および実施例はあくまで例示であり、本明細書に記載された場合を除き、限定である意図はない。本明細書で記載された方法および材料に似ているか、または等価の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることが可能であるが、適する方法および材料を本明細書において記載する。
【0021】
前に示したように、本明細書に記載された本発明は、規定されたモノカルボン酸(または等価物)によるポリトリメチレンエーテルグリコールの酸触媒添加エステル化によって得られる、ポリトリメチレンエーテルグリコールのエステル(モノエステル、ジエステルまたはそれらの混合物)を含む組成物であって、エステル化酸触媒からの酸エステル残渣を実質的に含まない組成物に関する。
【0022】
硫黄系酸触媒(硫酸など)を用いる時、組成物は、好ましくは約20ppm未満、より好ましくは約10ppm未満の硫黄を含有する。
【0023】
本発明の組成物は、式(I)の1種以上の化合物を含むとして表現することが可能である。
【化1】

式中、Qはヒドロキシル基の引抜き後のポリトリメチレンエーテルグリコールの残基を表し、R2はHまたはR3COであり、R1およびR3の各々は、個々に、6〜40個の炭素原子を含有する置換または非置換の芳香族有機基、飽和脂肪族有機基、不飽和脂肪族有機基または脂環式有機基である。
【0024】
ポリトリメチレンエーテルグリコールエステルは、好ましくは、1,3−プロパンジオールを主として含むヒドロキシル基含有モノマー(2個以上のヒドロキシル基を含有するモノマー)を重縮合してポリトリメチレンエーテルグリコールを形成し、その後、モノカルボン酸(または等価物)によりエステル化することによって調製される。
【0025】
エステル組成物は、好ましくは、エステルの全重量を基準にして約50〜100重量%、より好ましくは約75〜100重量%のジエステルと0〜約50重量%、より好ましくは0〜約25重量%のモノエステルとを含む。好ましくは、モノエステルおよびジエステルは2−エチルヘキサン酸のエステルである。
【0026】
ポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)
本発明の目的のためのPO3Gは、反復単位の少なくとも50%がトリメチレンエーテル単位であるオリゴマーまたはポリマーのエーテルグリコールである。反復単位のより好ましくは約75%〜100%、なおより好ましくは約90%〜100%、さらにより好ましくは約99%〜100%はトリメチレンエーテル単位である。
【0027】
PO3Gは、好ましくは、1,3−プロパンジオールを含むモノマーの重縮合によって調製され、よって−(CH2CH2CH2O)−連結(例えば、トリメチレンエーテル反復単位)を含有するポリマーまたはコポリマーをもたらす。上で示したように、反復単位の少なくとも50%はトリメチレンエーテル単位である。
【0028】
トリメチレンエーテル単位に加えて、他のポリアルキレンエーテル反復単位などの他の単位のより少ない量が存在してもよい。この開示の文脈において、「ポリトリメチレンエーテルグリコール」という用語は、本質的に純粋の1,3−プロパンジオール、ならびに約50重量%以下のコモノマーを含有するオリゴマーおよびポリマー(以下で記載されたオリゴマーおよびポリマーを含む)から製造されたPO3Gを包含する。
【0029】
PO3Gを調製するために用いられる1,3−プロパンジオールは、周知の種々の化学経路のいずれか、または生物化学的変換経路によって得てもよい。好ましい経路は、例えば、米国特許第5,015,789号明細書、米国特許第5,276,201号明細書、米国特許第5,284,979号明細書、米国特許第5,334,778号明細書、米国特許第5,364,984号明細書、米国特許第5,364,987号明細書、米国特許第5,633,362号明細書、米国特許第5,686,276号明細書、米国特許第5,821,092号明細書、米国特許第5,962,745号明細書、米国特許第6,140,543号明細書、米国特許第6,232,511号明細書、米国特許第6,235,948号明細書、米国特許第6,277,289号明細書、米国特許第6,297,408号明細書、米国特許第6,331,264号明細書、米国特許第6,342,646号明細書、米国特許第7,038,092号明細書、米国特許出願公開第2004/0225161A1号明細書、米国特許出願公開第2004/0260125A1号明細書、米国特許出願公開第2004/0225162A1号明細書および米国特許出願公開第2005/0069997A1号明細書に記載されており、これらの開示は完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に参照により援用される。
【0030】
好ましくは、1,3−プロパンジオールは、再生可能な源から生物化学的に得られる(「生物誘導」)1,3−プロパンジオール)。
【0031】
特に好ましい1,3−プロパンジオール源は、再生可能な生物源を用いる発酵プロセスを経由する。再生可能な源からの出発材料の例示的な例として、トウモロコシ原料などの生物的且つ再生可能な資源から製造された原料を用いる1,3−プロパンジオール(POD)への生物化学経路は記載されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに転化できる菌株は、種:クラブシエラ(Klebsiella)、シトロバクター(Citrobacter)、クロストリジウム(Clostridium)およびラクトバシラス(Lactobacillus)の中で見出されている。前に引用した米国特許第5,633,362号明細書、米国特許第5,686,276号明細書および米国特許第5,821,092号明細書を含む幾つかの公報の中でこの技術は開示されている(これらの開示は完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に参照により援用される)。米国特許第5,821,092号明細書には、特に、組換え生物を用いるグリセロールからの1,3−プロパンジオールの生物生産のための方法が開示されている。この方法は、1,2−プロパンジオールのための特異性を有する異種pduジオールデヒドラターゼ遺伝子により変換された大腸菌(E.coli)を導入している。変換された大腸菌(E.coli)は炭素源としてのグリセロールの存在下で成長し、1,3−プロパンジオールは成長した媒体から単離される。菌と酵母の両方がグルコース(例えば、トウモロコシ糖)または他の糖質をグリセロールに転化できるので、これらの公報で開示された方法は、迅速で安価且つ環境に責任をもつ1,3−プロパンジオールモノマー源を提供する。
【0032】
上で記載され参照された方法によって製造されたような生物誘導1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールの生産のための原料を構成する植物によって導入された大気二酸化炭素からの炭素を含有する。かくして、本発明と関連して用いるために好ましい生物誘導1,3−プロパンジオールは、再生可能炭素のみを含有し、化石燃料系炭素も石油系炭素も含有しない。従って、生物誘導1,3−プロパンジオールを用いるPO3G、およびそれに基づくエラストマーは、組成物中で用いられる1,3−プロパンジオールが減り続ける化石燃料を枯渇させず、分解すると、もう一度植物による使用のために炭素を放出して大気に戻すので環境により小さい影響しか及ぼさない。従って、本発明の組成物は、石油系グリコールを含む類似の組成物より天然で且つ小さい環境影響しか及ぼさないとして特徴付けることが可能である。
【0033】
生物誘導1,3−プロパンジオール、PO3GおよびPO3Gエステルは、石油源または化石燃料炭素から製造された類似化合物から二重炭素同位体特性評価法によって区別してもよい。この方法は、通常、化学的に同一の材料を区別し、生物圏(植物)成分の成長の源(および恐らく年)によってコポリマー中の炭素を割り当てる。同位体14Cおよび13Cは、この問題に補足情報をもたらす。放射性炭素年代測定同位体(14C)は、5730年のその核半減期により、化石(「死」)原料と生物圏(「生」)原料との間に検体炭素を割り当てることを明確に可能にする(Currie,L.A.「Source Apportionment of Atmospheric Particles」,Characterization of Environmental Particles,J.Buffle and H.P.van Leeuwen,Eds.,1 of Vol.1 of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc.)(1992年)3−74)。放射性炭素年代測定の基本的な仮定は、大気中の14C濃度の定常性が生物中の14Cの定常性につながることである。単離されたサンプルを取り扱うとき、サンプルの年代を関係:
t=(−5730/0.693)ln(A/A0
によって概略的に導き出すことが可能である。
式中、t=年代、5730年は放射性炭素の半減期である。AおよびA0は、それぞれサンプルと近代標準の14C比放射能である(Hsien,Y.,Soil Sci.Soc.Am J.,56,460,(1992年))。しかし、1950年以来の大気圏核実験および1850年以来の化石燃料の燃焼のゆえに、14Cは第2の地球化学的時間特性を獲得した。大気CO2ひいては生きた生物圏中の14C濃度は、1960年代半ばにおける核実験のピーク時におよそ倍増した。14C濃度は、それ以来、7〜10年の近似緩和「半減期」により約1.2×10-12の定常状態宇宙線(大気)ベースライン同位体比率(14C/12C)に徐々に戻ってきた(この後者の半減期は文字通り受け取ってはならない。それどころか、核時代の開始以来の大気14Cおよび生物圏14Cの変動を追跡するために詳しい大気核投入/減衰関数を用いなければならない)。最近の生物圏炭素の年次年代測定を裏付けるのは、この後者の生物圏14C時間特性である。加速器質量分析法(AMS)によって14Cを測定することが可能であり、結果は、「現代炭素含有率」(fM)の単位で与えられる。fMは、それぞれシュウ酸標準HOxlおよびHOxllとして知られているNational Institute of Standards and Technology(NIST)標準参照物質(SRMs)4990Bおよび4990Cによって定義される。基本的定義は、14C/12C同位体比のHOxl(AD1950に関連した)の0.95倍に関する。これは、減衰に相関した産業革命前の木材にほぼ等しい。現在の生きた生物圏(植物材料)に関しては、fM≒1.1である。
【0034】
安定炭素同位体比(13C/12C)は源の識別と指定への補足経路を提供する。所定の生物源材料の13C/12C比は、二酸化炭素が固定される時点での大気二酸化炭素の13C/12C比の結果であり、精密な代謝経路も反映する。地域的な変動も起きる。石油、C3植物(広葉樹)、C4植物(草類)および海洋カーボネートのすべては、13C/12C値および対応するδ13C値において著しい相違を示す。更に、C3植物およびC4植物の脂質物質は、代謝経路の結果として同じ植物の炭水化物成分から誘導された材料とは異なって分解する。測定の精度内で、13Cは同位体分別効果のゆえに大きな変動を示す。本発明に関してその最も著しいのは光合成メカニズムである。植物中の炭素同位体比の相違の主原因は、植物中の光合成炭素代謝、特に主たるカルボキシル化中に起きる反応、すなわち、大気CO2の初期固定の経路の相違に密接に関連する。植物化の2つの大きな種類は、「C3」(またはCalvin−Benson)光合成サイクルを導入する種類および「C4」(またはHatch−Slack)光合成サイクルを導入する種類である。硬木および針葉樹などのC3植物は穏和な気候の地域で主流である。C3植物において、主たるCO2固定およびカルボキシル化反応は酵素リブローゼ−1,5−ジホスフェートカルボキシラーゼを含み、最初の安定な製品は3−炭素化合物である。他方、C4植物は、熱帯の草類、トウモロコシおよびサトウキビのような植物を含む。C4植物において、もう1つの酵素、ホスフェノールピルビン酸カルボキシラーゼを含む追加のカルボキシル化反応は主たるカルボキシル化反応である。最初の安定な炭素化合物は4−炭素酸であり、それは後で脱カルボキシル化される。こうして放出されるCO2はC3サイクルによって再び固定される。
【0035】
4植物とC3植物の両方は、13C/12C同位体比の一定範囲を示すが、典型的な値は、約−10〜−14/mil(C4)および−21〜−26/mil(C3)である(Weberら,J.Agric.Food Chem.,45,2942(1997年))。石炭および石油は、一般に、この後者の範囲に入る。13C測定目盛は、ピーディー矢石(PDB)石灰岩によって設定された零によって元来定義されている。ここで、値は、この材料からの千の偏差当たりの部で与えられる。「δ13C」値は、%0で略された千当たりの(mil当たりの)部であり、次の通り計算される。
【数1】

PDB標準材料(RM)が枯渇してきたので、一連の代替RMは、IAEA、USGS、NISTおよび選択された他の国際同位体試験所と協力して開発されてきた。PDBからのパーミル偏差のための表記法はδ13Cである。測定は、質量44、45および46の分子イオンに関する高精度安定比質量分析法(IRMS)によってCO2に関して行われる。
【0036】
従って、生物誘導1,3−プロパンジオール、および生物誘導1,3−プロパンジオールを含む組成物は、組成物の新しさを示す、14C(fM)および二重炭素同位体特性評価法に基づいて石油誘導等価物から完全に区別することができる。これらの製品を区別する能力は商業目的のためにこれらの材料を追跡する際に有益である。例えば、「新」炭素同位体分布と「旧」炭素同位体分布の両方を含む製品を、「旧」材料のみから製造された製品から区別することができる。従って、本材料は、本材料の独特の分布に基づいて、および競争を決定する目的で、保存寿命を決定するために、ならびに特に環境影響を評価するために商業目的のために追跡される場合がある。
【0037】
反応体としてまたは反応体の成分として用いられる1,3−プロパンジオールは、ガスクロマトグラフ分析によって決定したとき、好ましくは約99重量%を上回る、より好ましくは約99.9重量%を上回る純度を有する。前に引用した米国特許第7,038,092号明細書、米国特許出願公開第2004/0260125A1号明細書、米国特許出願公開第2004/0225161A1号明細書および米国特許出願公開第2005/0069997A1号明細書において開示された精製1,3−プロパンジオールおよび米国特許出願公開第2005/0020805A1号明細書において開示された精製1,3−プロパンジオールから製造されたPO3Gは特に好ましい(これらの開示は完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に参照により援用される)。
【0038】
精製1,3−プロパンジオールは、好ましくは以下の特性を有する。
(1)約0.200未満の220nmでの紫外線吸収、約0.075未満の250nmでの紫外線吸収および約0.075未満の275nmでの紫外線吸収、および/または
(2)約0.15未満のL***“b*”明度(ASTM D6290)および約0.075未満の270nmでの吸光度を有する組成、および/または
(3)約10ppm未満の過酸化物組成、および/または
(4)ガスクロマトグラフィによって測定されたとき、約400ppm未満、より好ましくは約300ppm未満、なおより好ましくは約150ppm未満の全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度。
【0039】
PO3Gを製造するための出発材料は、所望のPO3G、出発材料の入手性、触媒、装置などに応じて異なり、そして「1,3−プロパンジオール反応体」を含む。「1,3−プロパンジオール反応体」は、1,3−プロパンジオール、ならびに好ましくは2〜9の重合度を有する1,3−プロパンジオールのオリゴマーおよびプレポリマーならびにそれらの混合物を意味する。場合によって、10%以下またはそれ以上の低分子量オリゴマーをそれらが入手できる場合に用いることが望ましい場合がある。従って、出発材料は、1,3−プロパンジオールならびにその二量体および三量体を含むことが好ましい。出発材料は、1,3−プロパンジオール反応体の重量を基準にして特に好ましくは約90重量%以上の1,3−プロパンジオール、より好ましくは約99重量%以上の1,3−プロパンジオールからなる。
【0040】
PO3Gは、米国特許第6,977,291号明細書および米国特許第6,720,459号明細書で開示されたように当該技術分野で公知の多くのプロセスを経由して製造することが可能である。好ましいプロセスは、前に引用した米国特許出願公開第2005/0020805A1号明細書に記載された通りである。
【0041】
上で示したように、PO3Gは、トリメチレンエーテル単位に加えて、より少量の他のポリアルキレンエーテル反復単位を含有してもよい。従って、ポリトリメチレンエーテルグリコールを調製する際に用いるためのモノマーは、1,3−プロパンジオール反応体に加えて、約50重量%以下(好ましくは約20重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、なおより好ましくは約2重量%以下)のコモノマーポリオールを含有することが可能である。本プロセスで用いるために適するコモノマーポリオールには、脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオールおよび3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロ−1,12−ドデカンジオール;脂環式ジオール、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびイソソルビド;ならびにポリヒドロキシ化合物、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールが挙げられる。コモノマージオールの好ましい群は、エチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、C6〜C10ジオール(1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオールなど)およびイソソルビド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。1,3−プロパンジオール以外で特に好ましいジオールはエチレングリコールであり、C6〜C10ジオールも特に有用であり得る。
【0042】
コモノマーを含有する好ましい1種のPO3Gは、米国特許出願公開第2004/0030095A1号明細書に記載されたようなポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールである(この開示は完全に記載されたかのようにすべての目的のために本明細書に参照により援用される)。好ましいポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールは、50〜約99モル%(好ましくは約60〜約98モル%、より好ましくは約70〜約98モル%)の1,3−プロパンジオールと50モル%以下〜約1モル%(好ましくは約40〜約2モノマー、より好ましくは約30〜約2モル%)のエチレングリコールの酸触媒重縮合によって調製される。
【0043】
本発明において用いるために好ましいPO3Gは、少なくとも約250、より好ましくは少なくとも約1000、なおより好ましくは少なくとも約2000のMn(数平均分子量)を有する。Mnは、好ましくは約5000未満、より好ましくは約4000未満、なおより好ましくは約3500未満である。PO3Gのブレンドも用いることが可能である。例えば、PO3Gは、より高い分子量のPO3Gとより低い分子量のPO3Gのブレンドを含むことが可能である。ここで、好ましくは、より高い分子量のPO3Gは、約1000〜約5,000の数平均分子量を有し、より低い分子量のPO3Gは、約200〜約950の数平均分子量を有する。ブレンドされたPO3GのMnは、好ましくは、なお上述した範囲内である。
【0044】
本明細書において用いるために好ましいPO3Gは、好ましくは約1.0〜約2.2、より好ましくは約1.2〜約2.2、なおより好ましくは約1.5〜約2.1の多分散性(すなわち、Mw/Mn)を有する典型的に多分散性である。多分散性は、PO3Gのブレンドを用いることにより調節することが可能である。
【0045】
本発明において用いるためのPO3Gは、好ましくは約100APHA未満、より好ましくは約50APHA未満の明度を有する。
【0046】
モノカルボン酸および等価物
PO3Gのエステル化は、モノカルボン酸および/または等価物との反応によって行われる。
【0047】
「モノカルボン酸等価物」は、当業者によって一般に認められるように、高分子グリコールおよび高分子ジオールとの反応において実質的にモノカルボン酸のように機能する化合物を意味する。本発明の目的のためのモノカルボン酸等価物には、例えば、モノカルボン酸のエステルならびに酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)および酸無水物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0048】
好ましくは、式R−COOHを有するモノカルボン酸が用いられる。式中、Rは6〜40個の炭素原子を含有する置換または非置換の芳香族有機部分、脂肪族有機部分または脂環式有機部分である。
【0049】
異なるモノカルボン酸および/または等価物の混合物も適する。
【0050】
上で示したように、モノカルボン酸(または等価物)は、芳香族、脂肪族または脂環式であることが可能である。この点で「芳香族」モノカルボン酸は、以下で記載されたモノカルボン酸などの、カルボキシル基がベンゼン環系の中の炭素原子に結合されているモノカルボン酸である。「脂肪族」モノカルボン酸は、カルボキシル基が完全飽和炭素原子に、またはオレフィン二重結合の一部である炭素原子に結合されているモノカルボン酸である。炭素原子が環中にある場合、等価物は「脂環式」である。
【0051】
モノカルボン酸(または等価物)は、置換基がエステル化反応を妨げない限り、または得られたエステル製品の特性に悪影響を及ぼさない限り、あらゆる置換基またはそれらの組み合わせ(アミド、アミン、カルボニル、ハロゲン化物、ヒドロキシルなどのような官能基など)を含有することが可能である。
【0052】
モノカルボン酸および等価物は、あらゆる供給源からであることが可能であるが、好ましくは、天然源から誘導されるか、または生物誘導される。
【0053】
以下の酸および酸誘導体は特に好ましい。ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、安息香酸、カプリル酸、パルミチン酸、エルカ酸、パルミトレイン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸および2−エチルヘキサン酸ならびにそれらの混合物。特に好ましい酸または酸誘導体は、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、ステアリン酸およびオレイン酸である。
【0054】
エステル化方法
エステルの調製のために、約100℃〜約275℃、好ましくは約125℃〜約250℃の温度範囲で好ましくは不活性ガスの存在下でモノカルボン酸にPO3Gを接触させることが可能である。本方法を大気圧でまたは真空下で行うことが可能である。接触中、水を生成し、水を不活性ガスストリーム中にまたは真空下で除去して、反応を完了に追い込むことが可能である。
【0055】
PO3Gとカルボン酸の反応を促進するために、エステル化触媒、好ましくは鉱酸触媒が一般に用いられる。鉱酸触媒の例には、硫酸、塩酸、燐酸、沃化水素酸、およびゼオライトなどの不均一触媒、ヘテロポリ酸、アンバーリストおよびイオン交換樹脂が挙げられるが、それらに限定されない。好ましいエステル化酸触媒は、硫酸、燐酸、塩酸および沃化水素酸からなる群から選択される。特に好ましい鉱酸触媒は硫酸である。
【0056】
用いられる触媒の量は、反応混合物の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは反応混合物の約0.2重量%〜約2重量%であることが可能である。
【0057】
カルボン酸またはその誘導体対グリコールヒドロキシル基のあらゆる比を用いることが可能である。酸対ヒドロキシル基の好ましい比は約3:1〜約1:2であり、ここで、製品中のモノエステル対ジエステルの比を変えるために、この比を調節することが可能である。一般にジエステルの生産のほうを選ぶために、1:1を僅かに上回る比が用いられる。モノエステルの生産のほうを選ぶために、酸対ヒドロキシルの0.5:1以下の比が用いられる。
【0058】
エステル化のために好ましい方法は、鉱酸触媒を用いて1,3−プロパンジオール反応体をポリトリメチレンエーテルグリコールに重縮合し、その後、カルボン酸を添加し、PO3Gを分離および精製せずにエステル化を行うことを含む。この方法において、ポリトリメチレンエーテルグリコールを形成するための1,3−プロパンジオール反応体のエーテル化または重縮合は、米国特許第6,977,291号明細書および米国特許第6,720,459号明細書で開示されたように酸触媒を用いて行われる。エーテル化反応も特開2004−182974A号公報に記載されたように酸と塩基の両方を含有する重縮合触媒を用いて行ってもよい。重縮合反応またはエーテル化反応は、所望の分子量に到達するまで続けられ、その後、計算量のモノカルボン酸が反応混合物に添加される。水副生物を除去しつつ反応は続けられる。この段階で、エステル化反応とエーテル化反応の両方が同時に起きる。従って、この好ましいエステル化方法において、ジオールの重縮合のために用いられる酸触媒はエステル化のためにも用いられる。必要ならば、追加のエステル化触媒をエステル化段階で添加することが可能である。
【0059】
代替手順において、エステル化反応は、エステル化触媒およびカルボン酸の添加、引き続き加熱および水の除去によって、精製されたPO3Gで行うことが可能である。
【0060】
どのエステル化手順に従うかに無関係に、エステル化工程後、あらゆる副生物を除去し、その後、重縮合および/またはエステル化から残る触媒残渣を除去して、特に高温で安定であるエステル製品を得る。これは、カルボン酸エステルに大幅に影響を及ぼさずに触媒から誘導されたあらゆる残留酸エステルを加水分解するのに十分な時間にわたり約80℃〜約100℃で水で処理することにより粗エステル製品の加水分解によって実行される。要する時間は約1から約8時間まで異なることが可能である。加水分解を圧力下で行う場合、より高い温度および対応するより短い時間が可能である。この時点で、製品は、反応条件に応じて、ジエステル、モノエステル、またはジエステルとモノエステルの混合物および少量の酸触媒、未反応カルボン酸および未反応ジオールを含有してもよい。水洗浄、塩基中和、濾過および/または蒸留などの既知の従来技術によって、加水分解されたポリマーを更に精製して、水、酸触媒および未反応カルボン酸を除去する。未反応ジオールおよび酸触媒を例えば脱イオン水による洗浄によって除去することが可能である。例えば、脱イオン水または水性塩基溶液で洗浄することにより、または真空ストリッピングにより未反応カルボン酸も除去することが可能である。
【0061】
一般に、加水分解の後に1つ以上の水洗浄工程が続いて酸触媒を除去し、好ましくは真空下で乾燥させてエステル製品を得る。水洗浄は未反応ジオールを除去するためにも貢献する。存在する一切の未反応モノカルボン酸も水洗浄において除去してよいが、水性塩基による洗浄によって、または真空ストリッピングによって除去してもよい。
【0062】
必要ならば、製品を更に分別して、減圧下での分留によって低分子量エステルを分離することが可能である。
【0063】
陽子NMRおよび波長X線染蛍光分光法を用いて、ポリマー中に存在する(硫黄などの)一切の残留触媒を同定するとともに定量化することが可能である。陽子NMRは、例えば、ポリマー鎖中に存在する硫酸エステル基を同定することが可能であり、波長X線蛍光法は、ポリマー中に存在する全硫黄(無機硫黄および有機硫黄)を決定することが可能である。上述した方法から製造された本発明のエステルは実質的に硫黄を含まず、従って、高温用途のために有用である。
【0064】
好ましくは、精製後のPO3Gエステルは酸触媒末端基を本質的にもたないが、約0.003〜約0.03ミリ当量/gの範囲内の非常に低レベルの不飽和末端基、主としてアリル末端基を含有してもよい。こうしたPO3Gエステルは、以下の式(II)および(III)を有する化合物を含む(化合物から本質的になる)と考えることが可能である。
1−C(O)−O−((CH23O)m−R2 (II)
1−C(O)−O−((CH23−O)mCH2CH=CH2 (III)
式中、Qはヒドロキシル基の引抜き後のポリトリメチレンエーテルグリコールの残基を表し、R2はHまたはR3C(O)であり、R1およびR3の各々は、個々に、6〜40個の炭素原子を含有する置換または非置換の芳香族有機基、飽和脂肪族有機基、不飽和脂肪族有機基または脂環式有機基であり、mはMnが約200〜約5000の範囲内であるような範囲内にある。式(III)の化合物は、アリル末端基(好ましくは、すべての不飽和末端または不飽和末端基)が約0.003〜約0.03ミリ当量/gの範囲内で存在するような量で存在する。
【0065】
本発明のエステル、特にビス−2−エチルヘキサン酸エステルは、例えば、潤滑剤、トランス油、熱媒油、可塑剤およびパーソナルケアビヒクルを含む機能性流体としての用途を有する。
【実施例】
【0066】
本発明を以下の実施例において更に規定する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示している一方で、例示のみとして提示されている。上での議論およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することが可能であり、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、種々の使用法および条件に本発明を適応させるために本発明の種々の変更および修正を行うことが可能である。
【0067】
すべての部、百分率などは、特に指示がない限り重量による。
【0068】
実施例において用いた1,3−プロパンジオールを米国特許出願公開第2005−0069997A1号明細書に記載された生物的方法によって調製し、99.8%を上回る純度を有していた。
【0069】
数平均分子量(Mn)はNMR分光法を用いる末端基分析によって決定した。この方法は、ポリマー中の硫酸エステルおよび未反応カルボン酸を同定するとともに定量化するためにも用いた。
【0070】
ポリマー中の全硫黄の量は、波長分散X線蛍光(WDXRF)分光法(PANalytical Model PW2400 WDXRF分光計)を用いてサンプルを分析することにより決定した。
【0071】
実施例1
この実施例は、ポリトリメチレンエーテルグリコールの2−エチルヘキサン酸エステルの合成を記載している。
【0072】
スターラー、コンデンサおよび窒素用の入口を備えた5Lのフラスコに1,3−プロパンジオール(2.4kg、31.5モル)を投入した。フラスコ中の液体を室温で30分にわたり乾燥窒素でフラッシュし、その後、120rpmで攪拌しつつ170℃に加熱した。温度が170℃に達した時、12.6g(0.5重量%)の濃硫酸を添加した。反応を放置して170℃で3時間にわたり進行させ、その後、温度を180℃に上げ、180℃で135分にわたり保持した。合計で435mLの留出物を集めた。反応混合物を冷却し、その後、2.24kg(14.6モル)の2−エチルヘキサン酸(99%)を添加した。その後、180rpmで連続攪拌しつつ反応温度を窒素流れ下で160℃に上げ、6時間にわたりその温度で維持した。この時間中に、追加の305mLの留出水を集めた。加熱および攪拌を止め、反応混合物を放置して沈殿させた。製品を約5gの不混和性副生物下相からデカントした。副生物相のNMR分析は、カルボン酸エステルが存在しないことを確認した。
【0073】
2.0kgのポリトリメチレンエーテルグリコールエステル製品を0.5kgの水と混合し、その後、得られた混合物を95℃で6時間にわたり加熱した。水相をポリマー相から分離し、その後、ポリマー相を2.0kgの水で2回洗浄した。得られた製品を120℃および200mTorrで加熱して揮発分(255g)を除去した。
【0074】
得られたエステル製品を陽子NMRを用いて分析した。硫酸エステルおよび未反応2−エチルヘキサン酸に関連したピークを検出しなかった。計算数平均分子量は525であることが判明した。WDXRF分光法を用いて分析した時、ポリマー中に硫黄を検出しなかった。
【0075】
比較例1
この比較例は、粗エステル中の残留酸エステルを加水分解せずに調製されたポリトリメチレンエーテルグリコールの2−エチルヘキサン酸エステルの調製を記載している。これは、米国特許第2520733号明細書に記載の手順に対応する。
【0076】
300g(3.95モル)の1,3−プロパンジオールと6.1gのp−トルエンスルホン酸一水和物(2重量%)の混合物を実施例1で記載された2Lの反応フラスコに投入し、乾燥窒素ガスで30分にわたりフラッシュして、空気および水分を除去した。その後、フラスコの内容物を180℃に加熱し、8時間にわたりその温度で保持した。その時間中に、56.9gの副生物が反応混合物から留出した。製品を冷却した後、124g(0.85モル)の2−エチルヘキサン酸および308gのトルエンを添加し、得られた混合物を110℃で12時間にわたり加熱した。得られた反応混合物を冷却し、その後、分液漏斗に移送した。蒸留水(1000mL)を添加し、得られた混合物を攪拌し、放置して分離し、その後、水層を除去した。水洗浄を4回繰り返した。有機層を集め、その後、減圧下でトルエンを除去した。
【0077】
DMSO−d6中の1H NMRによる製品2−エチルヘキサン酸エステルの分析は、p−トルエンスルホン酸エステル基のピーク(7.5ppmおよび7.8ppm)および未反応p−トルエンスルホン酸基のピーク(7.1ppmおよび7.5ppm)を指示した。X線蛍光法によるポリマーの更なる分析は、1000ppmの硫黄の存在を示した。従って、米国特許第2,520,733号明細書で記載された条件を用いて得られたエステルは、著しい量の酸触媒残渣を含有している。
【0078】
比較例2
この比較例は、比較例1から得られたポリマー中に存在するp−トルエンスルホン酸エステル基を加水分解しようとする試みを記載している。
【0079】
製品の一部(50g)を50mLの蒸留水と混合し、得られた混合物を6時間にわたり還流させた。水相を除去し、有機相を水で4回洗浄し、その後、減圧下で乾燥させた。
【0080】
得られたポリマーの陽子NMRによる分析は、7.5ppmおよび7.8ppmでp−トルエンスルホン酸エステル基に関連したピークをまだ示したが、p−トルエンスルホン酸に対応するピークを示さなかった。X線蛍光法によるポリマーの分析は1000ppmから420ppmに減少した全硫黄量を示し、上の反応条件下でのスルホン酸エステルの不完全な加水分解を示唆していた。
【0081】
これらの結果は、ポリトリメチレンエーテルグリコールを製造するために用いられた酸触媒からの残渣を含まないポリトリメチレンエーテルグリコールの有機エステルを米国特許第2,520,733号明細書で記載された条件が提供しないことを指示している。
【0082】
実施例2
この実施例において、実施例1において得られたエステルを異なる分子量の幾つかの留分に分別した。
【0083】
実施例1において得られた製品を160℃、130mTorrおよび7mL/分の流速の条件下で短経路蒸留装置に通した。2つの留分を集めた。揮発性留分は370の数平均分子量を有していた。不揮発性留分を180℃、110mTorrおよび4.5mLの流速で短経路蒸留装置にもう一度通した。この実験からの揮発性留分は460の数平均分子量を有し、三量体エステルおよび四量体エステルに十分に対応していた。
【0084】
実施例3
この実施例は、実施例1において調製されたエステルより高い分子量のポリトリメチレンエーテルグリコールの2−エチルヘキサン酸エステルの調製を記載している。
【0085】
硫酸の量を14.9g(0.6重量%)に増やし、重合時間を315分から525分に伸ばしたことを除き、原材料および手順は実施例1に記載された原材料および手順と同じであった。合計で545.3mLの留出物を重合中に集めた。実施例1に記載されたように943.8g(6.5モル)の2−エチルヘキサン酸を添加することによりエステル化を行った。エステル化中に集めた留出物は113mLであった。
【0086】
加水分解後、製品中に残る遊離硫酸を中和することにより製品を精製した。中和を次の通り行った。製品(1516g)を反応フラスコに移送し、15mLの脱イオン水中の0.15gのCa(OH)2を添加した。窒素ストリーム下で攪拌しつつ混合物を70℃に加熱した。中和を3時間にわたり続け、その後、製品を減圧下で110℃で2時間にわたり乾燥させ、濾過して固体を除去した。濾過後、製品を分析し、870の数平均分子量を有することが判明した。
【0087】
実施例4
この実施例はコポリエーテルグリコールエステルを記載している。
【0088】
スターラー、コンデンサおよび窒素用の入口を備えた5Lのフラスコに1,3−プロパンジオール(0.762kg、10モル)およびエチレングリコール(0.268kg、4.32モル)を投入した。フラスコ中の液体を室温で30分にわたり乾燥窒素でフラッシュし、その後、120rpmで攪拌しつつ170℃に加熱した。温度が170℃に達した時、5.2g(0.5重量%)の濃硫酸を添加した。反応を放置して170℃で3時間にわたり進行させ、その後、温度を180℃に上げ、180℃で135分にわたり保持した。合計で258mLの留出物を集めた。反応混合物を冷却し、その後、0.5kg(3.4モル)の2−エチルヘキサン酸(99%)を添加した。その後、180rpmで連続攪拌しつつ反応温度を窒素流れ下で160℃に上げ、6時間にわたりその温度で維持した。この時間中に、追加の63mLの留出水を集めた。製品を実施例1に記載されたように加水分解し、精製した。
【0089】
得られたエステル製品を陽子NMRを用いて分析した。硫酸エステルおよび未反応2−エチルヘキサン酸に関連したピークを検出しなかった。計算数平均分子量は620であることが判明した。WDXRF分光法を用いて分析した時、ポリマー中に硫黄を検出しなかった。
【0090】
実施例5
この実施例はポリトリメチレンエーテルグリコールステアリン酸エステルの合成を記載している。
【0091】
スターラー、コンデンサおよび窒素用の入口を備えた5Lのフラスコに1,3−プロパンジオール(1.504kg、19.8モル)を投入した。フラスコ中の液体を室温で30分にわたり乾燥窒素でフラッシュし、その後、120rpmで攪拌しつつ170℃に加熱した。温度が170℃に達した時、7.8g(0.5重量%)の濃硫酸を添加した。反応を放置して170℃で3時間にわたり進行させ、その後、温度を180℃に上げ、180℃で140分にわたり保持した。合計で276mLの留出物を集めた。反応混合物を冷却した後、スターラー、コンデンサおよび窒素用の入口を備えた1Lのフラスコに0.1kgの製品を移送した。その後、0.188kg(0.66モル)のステアリン酸を添加した。その後、180rpmで連続攪拌しつつ反応温度を窒素流れ下で140℃に上げ、3時間にわたりその温度で維持した。この時間中に、追加の10mLの留出水を集めた。製品を実施例1に記載されたように加水分解した。水相を分離後に、製品を温水に分散させ、濾過した。
【0092】
得られたエステル製品を陽子NMRを用いて分析した。硫酸エステルおよび未反応ステアリン酸に関連したピークを検出しなかった。計算数平均分子量は780であることが判明した。WDXRF分光法を用いて分析した時、ポリマー中に硫黄を検出しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸触媒の存在下でモノカルボン酸および/またはモノカルボン酸等価物によるポリトリメチレンエーテルグリコールのエステル化によって得られる、ポリトリメチレンエーテルグリコールのモノカルボン酸エステルを含む組成物であって、前記酸触媒からの酸エステル残渣を実質的に含まない組成物。
【請求項2】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが、再生可能な源から生物化学的に得られる1,3−プロパンジオールを主として含むヒドロキシル基含有モノマーの重縮合から調製される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが約250〜約5000の数平均分子量および約1.0〜約2.2の多分散性を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記モノカルボン酸またはモノカルボン酸等価物が天然源から誘導されるか、または生物誘導される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが式R−COOH(式中、Rは6〜40個の炭素原子を含有する有機基である)のモノカルボン酸によりエステル化される請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記モノカルボン酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、安息香酸、カプリル酸、パルミチン酸、エルカ酸、パルミトレイン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸および2−エチルヘキサン酸ならびにそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記モノカルボン酸が、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、ステアリン酸および/またはオレイン酸を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の重量を基準にして約50〜100重量%のジエステルと0〜約50重量%のモノエステルとを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の重量を基準にして約75〜100重量%のジエステルと0〜約25重量%のモノエステルとを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
式(I)
【化1】

(式中、Qはヒドロキシル基の引抜き後のポリトリメチレンエーテルグリコールの残基を表し、R2はHまたはR3COであり、R1およびR3の各々は、個々に、6〜40個の炭素原子を含有する置換または非置換の芳香族有機基、飽和脂肪族有機基、不飽和脂肪族有機基または脂環式有機基である)
の1種以上の化合物を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
式(I)
【化2】

(式中、Qはヒドロキシル基の引抜き後のポリトリメチレンエーテルグリコールの残基を表し、R2はHまたはR3C(O)であり、R1およびR3の各々は、個々に、6〜40個の炭素原子を含有する置換または非置換の芳香族有機基、飽和脂肪族有機基、不飽和脂肪族有機基または脂環式有機基である)
の1種以上の化合物から本質的になる請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記酸触媒が硫酸を含み、前記組成物が約20ppm未満の硫黄を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物を含む機能性流体。
【請求項14】
ポリトリメチレンエーテルグリコールのモノカルボン酸エステルを含む組成物を調製する方法であって、
(a)第1の酸触媒の存在下で少なくとも50モル%の1,3−プロパンジオール反応体を含むヒドロキシル基含有反応体を重縮合して、前記ポリトリメチレンエーテルグリコールを含むポリトリメチレンエーテルグリコール組成物を得る工程と、
(b)第2の酸触媒の存在下で式R−COOH(式中、Rは6〜40個の炭素原子を含有する有機基である)のモノカルボン酸および/またはそのモノカルボン酸等価物と共に前記ポリトリメチレンエーテルグリコール組成物を加熱することにより前記ポリトリメチレンエーテルグリコール組成物からのポリトリメチレンエーテルグリコールをエステル化して、前記第2の酸触媒、前記第1の酸触媒またはその両方の残留酸エステルを含有する粗ポリトリメチレンエーテルグリコールエステルを得る工程と、
(c)水と共に加熱することにより前記粗エステル中の前記残留酸エステルの相当な部分を加水分解して、水とポリトリメチレンエーテルグリコールエステルの混合物を形成する工程と、
(d)水の相当な部分を除去して、前記残留酸エステルを実質的に含まない実質的に乾いたポリトリメチレンエーテルグリコールエステルを得る工程と
を含む方法。
【請求項15】
前記第1の酸触媒が第1の鉱酸触媒であり、前記第2の酸触媒が第2の鉱酸触媒である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の鉱酸触媒および前記第2の鉱酸触媒が同じである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の鉱酸触媒が前記第1の鉱酸触媒を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
有機溶媒が実質的に存在しない状態で行われる請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の酸触媒および前記第2の酸触媒が、個々に、硫酸、燐酸、塩酸、沃化水素酸、ゼオライト、ヘテロポリ酸、アンバーリスト、イオン交換樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の酸触媒および前記第2の酸触媒が硫酸を含む請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記モノカルボン酸が、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、ステアリン酸および/またはオレイン酸を含む請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールエステルが、前記ポリトリメチレンエーテルグリコールエステルの重量を基準にして約50〜100重量%のジエステルと0〜約50重量%のモノエステルとを含む請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記1,3−プロパンジオールが、再生可能な生物源を用いる発酵法によって製造される請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が約250〜約5000である請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2010−509408(P2010−509408A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535342(P2009−535342)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/023218
【国際公開番号】WO2008/057462
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】