説明

ポリヌクレオチドベースのワクチンに対する免疫応答を増強するためのアジュバント組成物および方法

【課題】本発明は、アジュバント、免疫原性組成物、ならびにポリヌクレオチドベースのワクチン接種および免疫応答のために有用な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、サイトフェクチン:共脂質混合物のアジュバントを提供し、ここでサイトフェクチンはGAP-DMORIEである。また本発明は、脊椎動物を免疫化するための方法を提供し、その方法は、免疫原コードポリヌクレオチドを一つ以上含む免疫原性組成物およびGAP-DMORIEを含むアジュバント組成物を該脊椎動物の組織または腔内に投与する工程を包含し、ここで免疫原が、該免疫原に対する免疫応答を生成するのに充分な量で、該脊椎動物内で発現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、補助剤、免疫原性組成物、およびポリヌクレオチドベースのワクチン接種のために有用な方法に関する。本発明は、組成物および免疫応答(特に、脊椎動物のポリヌクレオチドベースワクチンへの体液性免疫応答)を増強するために有用な方法を提供する。特に、本発明は、サイトフェクチン:共脂質(co-lipid)の補助剤を提供し、ここで、サイトフェクチンは、(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(syn−9−テトラデセネイルデセネイルオキシ)−1−プロパナミニウムブロミド(GAP-DMORIE)である。
【背景技術】
【0002】
1980年代後期、脂質−DNA複合体の直接的な筋肉内(i.m.)注射は、測定可能なタンパク質発現を生じ、そして「裸の」プラスミドDNA(pDNA)が取り込まれ、そして脂質−DNA錯合体よりも大きな程度、筋肉において発現することが発見された(Felgner, Scientific America, 276(6), 102-106(1997))。
【0003】
pDNA注入技術の最初の適用の1つは、免疫応答の誘導であった。1991年に、マウスが,gp120プラスミドDNAを用いるi.m.ワクチン接種のよってHIV gp120に対して免疫化され(Felgnerら,Nature, 349, 351-352 (1991))、そしてマウスが、インフルエンザ核タンパク質(NP)抗原を用いるDNA免疫化の後に、インフルエンザウイルスの致命的なチャレンジから保護され得ることが最初に報告された。高度に保存されたNP抗原を用いて免疫化された後に得られる保護は、2つの異なるウイルス株を交差して拡大した(extend across)(Ulmerら, Current Opinions In Immunology, 8, 531-536 (1996))。ポリヌクレオチドベースのワクチン接種の分野における多くの出版物が、その後に続いた(例えば、Boyerら, J.Med. Primatology, 25(5), 242-250(1996);Boyerら, Nature Medicine,3(5), 526-532 (1997);Davisら, Vaccine, 15(8), 849-852(1997);Wangら, Vaccine, 15(8), 821-825 (1997);Agadjanyanら, Current Topics In Microbiology And Immunology, 226 ,175-192(1998);Heppellら, Fish & Shellfish Immunology, 8(4), 271-286 (1998);Lodmellら, Nature Medicine, 4(8), 949-952 (1998);Vanderzandenら, Virology ,246(1) 134-144 (1998))。
【0004】
ポリヌクレオチドベースのワクチン接種の過程においてしばしば出会う主要な問題は、不十分または最適以下の体液性応答である。しばしば、ポリヌクレオチドによってコードされる抗原または免疫抗原はインビボで発現されるが、それらは、後のチャレンジに対する保護を提供するのに、および/または長期間にわたる治療的に活性な抗原レベルを発生するための可能性を維持するのに十分なレベルに生物における抗原力価を惹起するために、十分に免疫原性ではない。より強い体液性および/または細胞応答を得るために、補助剤(患者のワクチンに対する免疫応答を増強する物質)を含む免疫原性組成物においてこのようなワクチンを投与することが一般的である。補助剤は、生物の特定の免疫原性に対する免疫応答を改善するために一般的に有用であり、そしてワクチン組成物に通常含まれて、産生される抗体の量を増加させ、そして/または免疫抗原の量および投与の頻度を減少させる。
【0005】
ポリヌクレオチドベースのワクチン接種に対する免疫応答増強の異なるレベルにするための種々の補助剤が報告されている。このような補助剤物質の例には、半合成細菌細胞壁誘導モノホスホリル脂質A(Sasaki, S.,ら, Infection and Immunity 65(9), 3250-3258 (1997))、小分子免疫刺激物質(Sasaki,S.,ら, Clin. Exp. Immunol. 111, 30-35( 1998))、およびサポニン(Sasaki, S.,ら, J. Virology 72(6), 4391-4939 (1998))が挙げられる。
【0006】
i.m.pDNAワクチン接種からの免疫応答はまた、カチオン性脂質の使用を介して増強されてきている(Ishii, N,ら, Aids Res. Hum. Retroviruses 13(16), 1421-1428 (1997)、Okada, E.,ら ,J. Immunology 159, 3638-3647 (1997);Yokoyama, M.,ら, FEMS Immunol. Med. Microbiol. 14, 221-230 (1996);Gregoriadis,G.,ら,FEBS Letter 402, 107-110 (1997);Gramzinski,R.A.,ら, Molecular Medicine 4, 109-118 (1998);Klavinskis,L.S.,ら, J.Immunology 162, 254-262 (1999);Etchart, N.,ら, J. Gen. Virology 78, 1577-1580 (1997);Norman,J.,ら, Methods in Molecular Medicine,第9巻;DNA Vaccines: Methods and Protocols, D.B.Lowrie and R.Whalen,編,第16章, pp.185-196 (1999))。
【0007】
カチオン性脂質は、もともと、インビトロでのpDNAの細胞への送達を増強するためのサイトフェクチンとして研究されてきた;しかし、さらなる開発が、インビボでのタンパク質送達の成功した特異的な適用に導いた(Wheeler ,C.J.,ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 11454-11459 (1996);Stephan, D.J.,ら, Human Gene Therapy 7, 1803-1812 (1996);DeBruyne, L.A.,ら, Gene Therapy 5, 1097-1087 (1998))。従って、このようなサイトフェクチンは、免疫応答の体液性アームの惹起を与える原因であるpDNAの細胞への送達を増強することによってワクチン適用の有用であり得、それによって抗体力価レベルを増加させる。
【0008】
通常使用される補助剤は、ワクチン接種に対して低レベルの免疫応答増強を示し(典型的に、3倍未満)、そして、所望ではない毒物学的プロフィールおよび製造プロフィールを有する。さらに、ワクチン接種のために先に使用された低レベルの体液性増強のみを示す。脊椎動物の免疫化に対する(特に、pDNAに対する)免疫応答を増強するためにより有用な補助剤組成物に対する必要性が存在する。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、補助剤および免疫原性組成物に関し、そして疾患から脊椎動物を保護する子を助けるために、疾患を有する脊椎動物を処置するために、またはその両方のための、脊椎動物のポリヌクレオチドベースのワクチン接種ための方法を提供する。特定の好ましい実施形態において、本発明は、免疫原をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を脊椎動物に投与することによって、脊椎動物を免疫化する方法に関し、ここで、ポリヌクレオチドは、GAP-DMORIEを含む補助組成物と複合体化している。好ましくは、その組成物は、1つ以上の共脂質を含み得る。免疫原コードポリヌクレオチドは、脊椎動物の細胞への組込みの際に、免疫学的に有効量の免疫原(例えば、免疫原性タンパク質)を産生する。本発明の補助組成物は、免疫原に対する脊椎動物の免疫応答を増強する。
【0010】
本発明の1つの局面は、1つ以上のサイトフェクチンおよび1つ以上の共脂質の混合物を有する補助組成物であり、その補助組成物は、免疫原に対する脊椎動物の体液性免疫応答を増強するために有用である。好ましくは、補助組成物は、サイトフェクチンGAP-DMORIEおよび1つ以上の共脂質を含む。好ましくはまた、共脂質は、例えば、ホスファチジルエタノールアミンのような中性脂質であり得る。より好ましくは、共脂質は、1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPyPE)、および/または1,2−ジミリストイル−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DMPE)である。最も好ましくは、共脂質は、DPyPEである。
【0011】
本発明の別の局面は、1つ以上の免疫原ならびにサイトフェクチンGAP-DMORIEおよび1つ以上の共脂質を含む(compromising)補助組成物を含む免疫原性組成物である。特定の実施形態において、免疫原の供給ゲンは、pDNAワクチンの場合には、免疫原コードポリペプチドである。好ましくは、これらの実施形態において、pDNAまたはポリヌクレオチドは、GAP-DMORIEおよび1つ以上の共脂質を含む補助組成物と複合体化している。
【0012】
本発明の別の局面は、1つ以上の免疫原コードポリペプチドとGAP-DMORIEとの複合体を含む免疫原性組成物を、コードされた免疫原に対する免疫応答を発生するのに十分な量で脊椎動物に投与することによって、脊椎動物を免疫化するための方法である。好ましくは、免疫原性組成物はさらに、1つ以上の共脂質(例えば、DOPEおよび/またはDPyRE)を含む。最も好ましくは、共脂質は、DPyPEである。
【0013】
先行技術とは対照的に、本発明は、GAP-DMORIEの使用を介する、ポリヌクレオチドベースのワクチンに対する脊椎動物の体液性免疫応答を増強するための方法である。抗体レベルの上昇は、免疫原コードポリヌクレオチドのみからの抗体レベルが最適条件に及ばない適用において特に有利である。関連した利点において、所望のレベルの抗体が所定の用量のpDNAを用いて産生されない場合、所定の抗体力価レベルに達するために必要なpDNAの量は、より低いpDNA用量を使用して達成され得る。pDNAワクチン接種適用について、この利点は重要である。なぜなら、受容可能なワクチン接種容積(pDNAの濃度に対する機能的な制限と関連している)は、所定のワクチン用量に対する上限を規定している。この利点は、特に、複数のプラスミドを含むワクチンに対して有益であり、プラスミドの各々は、その特定の導入遺伝子に対する免疫応答を誘発するのに十分な量で存在しなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下の詳細な説明および本明細書に添付の特許請求の範囲の観点から、種々の置換および改変が、特許請求された発明の範囲から逸脱することなく本発明になされ得ることが、当業者に明らかである。
【0015】
本発明は、疾患状態からの保護または疾患状態にある脊椎動物を処置するための、脊椎動物のポリヌクレオチドベースの免疫化に関する。本発明は、補助剤におけるサイトフェクチン、特にGAP-DMORIEの使用、免疫抗原性組成物、ならびに特にポリヌクレオチドベースの免疫原を用いる脊椎動物を免疫化するための方法を含む。
【0016】
本発明の補助組成物は、1つ以上のサイトフェクチン、および好ましい実施形態において、1つ以上の共脂質を含む。サイトフェクチンは、カチオン性脂質である。1つの実施形態において、サイトフェクチンはGAP-DMORIEであり、これは、第4級窒素上に2つの直鎖状の14個の炭素で1つの不飽和を有するアルキル鎖とプロピルアミン置換基との固有の組合せを有する2,3−ジアルコキシ−プロパナミニウム骨格に対応する構造を有する(図2を参照のこと)。
【0017】
GAP-DMORIEは、1セットの相乗的な構造的特徴を含み、いずれも、骨格中に個々に組み込まれた場合、最適な活性を生じない。従って、図3を参照して、グループDMRIE((±)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(テトラデシルオキシ)−1−プロパナミニウム(propanaminium)ブロミド)、DLRIE((±)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(ドデシルオキシ)−1−プロパナミニウムブロミド)およびDDRIE((±)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(デシルオキシ)−1−プロパナミニウムブロミド)を試験して、そしてグループGAP-DMRIE((±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−(ビス−テトラデシルオキシ)−1−プロパナミニウムブロミド)、GAP-DLRIE((±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−(ビス−ドデシルオキシ)−1−プロパナミニウムブロミド)、およびGAP-DPRIE((±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−(ビス−ヘキサデシルオキシ)−1−プロパナミニウムブロミド)を比較することによって、四級窒素がヒドロキシエチル部分で置換されるか(前者のグループ)、またはプロピルアミノ部分で置換されるか(後者のグループ)に関わらず、14炭素鎖が、他の鎖長に比べてより活性である(すなわち、より大きいレベルの抗体刺激を誘発する)ことが明らかである。DMRIEをGAP-DMRIEに対して比較することによって(図3を参照のこと)、ヒドロキシエチル基の代わりにプロピルアミノ基を組み込むことが、明白な利点を全く提供しないことが明らかである。
【0018】
同様に、DMRIEおよびDMORIEは、その14炭素鎖へのオレフィンの組み込みにも関わらず、等しく活性である。しかし、プロピルアミノ置換基およびオレフィン部分の組み合わせを組み込むことによって、GAP-DMORIEは、pDNA単独についての相乗平均力価(GMT)と比較した相乗平均力価に基づいて、DMORIEまたはGAP-DMRIEのいずれよりも、より活性であるようである(図3)。さらに、DOSPA(2,3−ジオレイルオキシ−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチル−1−プロパナミニウムペンタヒドロクロリド)(これは、その18炭素アルキル鎖中のオレフィン、およびアミノ含有四級アンモニウム置換基の両方を組み込む)は、DORIE((±)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(syn−9−オクタデセネンイルオキシ)−1−プロパナミニウムブロミド)(これは、四級アンモニウム置換を除いて等価である)よりも活性が低いだけでなく、pDNA単独について観察された抗体力価のレベルと比較して、抗体力価のレベルを劇的に減少させる。本発明での使用に好ましいGAP-DMORIEの塩は、臭化物塩であるが;しかし、GAP-DMORIEの全ての適切な塩が、用語「GAP-DMORIE」に含まれる。
【0019】
定義の目的のために、用語「共脂質(co-lipid)」とは、サイトフェクチン(cytofectin)成分(例えば、GAP-DMORIE)と組み合わせられ得る、任意の疎水性物質をいう。本発明の共脂質は、両親媒性脂質および中性脂質であり得る。両親媒性脂質としては、リン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリン)が挙げられる。中性脂質としては、コレステロールが挙げられる。1つの好ましい実施形態において、ホスファチジルエタノールアミンとしては、DOPE、DMPEおよびDPyPEが挙げられる。DOPEおよびDpyPEが、特に好ましく;最も好ましい共脂質は、DpyPEであり、これは、そのジアシルホスファチジルエタノールアミン骨格に組み込まれた2つのフィタノイル置換基を含む。図3に例示されるように、共脂質DPyPEとのサイトフェクチンGAP-DMORIEの組み合わせは相乗効果を生じて、pDNA免疫由来の抗体力価のレベルによって証明されるように、体液性免疫応答をさらに増強する。
【0020】
本発明に従って、サイトフェクチンおよび共脂質は、多くの方法で混合されるか、または組み合わされて、非共有結合した巨視的構造(例えば、リポソーム、多重膜小胞、単重膜小胞、ミセルおよび単膜)の種々のアジュバント組成物を産生し得る。サイトフェクチンおよび共脂質は、種々のモル比で混合され得る。好ましくは、GAP-DMORIEと共脂質とのモル比は、約9:1〜約1:9であり、より好ましくは、このモル比は、約4:1〜約1:4であり、または約2:1〜約1:2である。最も好ましくは、このモル比は、約1:1である。
【0021】
サイトフェクチンおよび共脂質を、溶媒中に溶解して、その混合物の均質性を増加し得る。適切な溶媒としては、クロロホルムが挙げられる。例えば、GAP-DMORIEは、クロロホルム中で1以上の共脂質と混合され得、続いて、この混合物を、真空下でエバポレートして、ガラス容器(例えば、Rotovap丸底フラスコ)の内面上に乾燥された薄い膜の層を形成する。このような乾燥された混合物は、水性溶媒中で懸濁され得、ここで、その両親媒性の脂質成分分子は、均質な脂質小胞に自己アセンブルする。続いて、これらの脂質小胞は、当該分野で使用される任意の方法によって、均一なサイズの選択された平均直径を有するように処理されて、その後、他の実体(例えば、pDNA)と複合体化する。脂質溶液の超音波処理は、Felgnerら、Proc. Natl .Acad. Sci.USA 84, 7413-7417 (1987)および米国特許第5,264,618号(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0022】
本発明のアジュバント組成物は、添加剤(例えば、疎水性および両親媒性の添加剤)を含み得る。例えば、このアジュバント組成物は、ステロール、脂肪酸、ガングリオシド、糖脂質、リポペプチド、リポサッカリド、ネオビー(neobee)、ニオソーム(niosome)、プロスタグランジンまたはスフィンゴ脂質を含み得る。このアジュバント中に含まれる添加剤の量は任意であり得、脂質の総量に対して、約0.1モル%〜約99.9モル%、約1モル%〜約50モル%、そして約2モル%〜約25モル%を含む。これらの添加剤はまた、本発明のアジュバント組成物を含む免疫原性組成物中に含まれ得る。
【0023】
本発明の免疫原性組成物は、上記のようなアジュバント組成物、および免疫原を含む。「免疫原」は、任意の抗原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチド(エピトープまたはエピトープの組み合わせを有するポリアミノ酸物質を含む)、および免疫原コードポリヌクレオチドを包含することが意味される。さらに、「免疫原」はまた、免疫応答を生じる際に有用な任意のポリサッカリド物質を包含することが意味される。本明細書中で使用される場合、抗原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチドは、脊椎動物中に導入された場合に、その脊椎動物の免疫系分子と反応し(すなわち、抗原性である)、そして/またはその脊椎動物中で免疫応答を誘導する(すなわち、免疫原性である)、ポリペプチドである。
【0024】
おそらく、免疫原性ポリペプチドはまた、抗原性であるが、抗原性ポリペプチドは、そのサイズまたはコンフォメーションに起因して、必ずしも免疫原性でなくてもよい。抗原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチドの例としては、以下由来のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない:感染性因子(例えば、細菌、ウイルス、寄生生物または真菌)、アレルゲン(例えば、ペットの鱗屑、植物、ほこりおよび他の環境供給源由来のアレルゲン)、ならびに特定の自己ポリペプチド(例えば、腫瘍関連抗原)。
【0025】
本発明の抗原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチドを使用して、ウイルス性、細菌性、真菌性および寄生生物性の感染性疾患を予防または処置(すなわち、治癒、回復、重篤度の減少、あるいは感染の予防または減少)し得、ならびにアレルギーを処置し得る。
【0026】
さらに、本発明の抗原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチドを使用して、以下の癌を含むが、これらに限定されない癌を予防または処置(すなわち、治癒、回復、または重篤度の減少)し得る:口腔および咽頭口部(すなわち、舌、口、咽頭)、消化器系(すなわち、食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肛門管、肛門直腸、肝臓、胆嚢、膵臓)、呼吸器系(すなわち、喉頭、肺)、骨、関節、軟部組織(心臓を含む)、皮膚、黒色腫、乳房、生殖器官(すなわち、頸部、子宮内膜(endometirum)、卵巣、外陰、膣、前立腺、精巣、陰茎)、泌尿器系(すなわち、膀胱、腎臓、尿管および他の泌尿器)、眼、脳、内分泌系(すなわち、甲状腺および他の内分泌系)、リンパ腫(すなわち、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、白血病(すなわち、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病)。
【0027】
ウイルス性の抗原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチドの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、カリチウイルスポリペプチド(例えば、カリチウイルスキャプシド抗原)、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド(例えば、B型肝炎のコア抗原または表面抗原)、ヘルペスウイルスポリペプチド(例えば、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質または水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質)、免疫不全ウイルスポリペプチド(例えば、ヒト免疫不全ウイルスエンベロープまたはプロテアーゼ)、感染性腹膜炎ウイルスポリペプチド、インフルエンザウイルスポリペプチド(例えば、インフルエンザA型の赤血球凝集素、ノイラミニダーゼまたは核タンパク質)、白血病ウイルスポリペプチド、マルブルクウイルスポリペプチド、オルソミクソウイルスポリペプチド、パピローマウイルスポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド(例えば、その赤血球凝集素/ノイラミニダーゼ)、パラミクソウイルスポリペプチド、パラボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチド、ピコルナウイルスポリペプチド(例えば、ポリオウイルスキャプシドポリペプチド)、ポックスウイルスポリペプチド(例えば、ワクシニアウイルスポリペプチド)、狂犬病ウイルスポリペプチド(例えば、狂犬病ウイルス糖タンパク質G)、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド、およびロタウイルスポリペプチド。
【0028】
細菌性の抗原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチドの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Actinomyces ポリペプチド、Bacillus ポリペプチド、Bacteroides ポリペプチド、Bordetella ポリペプチド、Bartonella ポリペプチド、Borrelia ポリペプチド(例えば、B. burgdorferi OspA)、Brucella ポリペプチド、Campylobacter ポリペプチド、Capnocytophaga ポリペプチド、Chlamydia ポリペプチド、Clostridium ポリペプチド、Corynebacterium ポリペプチド、Coxiella ポリペプチド、Dermatophilus ポリペプチド、Enterococcus ポリペプチド、Ehrlichia ポリペプチド、Escherichia ポリペプチド、Francisella ポリペプチド、Fusobacterium ポリペプチド、Haemobartonella ポリペプチド、Haemophilus ポリペプチド(例えば、H. influenzae B型外膜タンパク質)、Helicobacter ポリペプチド、Klebsiella ポリペプチド、L−型の細菌ポリペプチド、Leptospira ポリペプチド、Listeria ポリペプチド、Mycobacteria ポリペプチド、Mycoplasma ポリペプチド、Neisseria ポリペプチド、Neorickettsia ポリペプチド、Nocardia ポリペプチド、Pasteurella ポリペプチド、Peptococcus ポリペプチド、Peptostreptococcus ポリペプチド、Pneumococcus ポリペプチド、Proteus ポリペプチド、Pseudomonas ポリペプチド、Rickettsia ポリペプチド、Rochalimaea ポリペプチド、Salmonella ポリペプチド、Shigella ポリペプチド、Staphylococcus ポリペプチド、Streptococcus ポリペプチド(例えば、S. pyogenes Mタンパク質)、Treponema ポリペプチド、およびYersinia ポリペプチド(例えば、Y. pestis F1抗原およびV抗原)。
【0029】
真菌性の免疫原性ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Absidia ポリペプチド、Acremonium ポリペプチド、Alternaria ポリペプチド、Aspergillus ポリペプチド、Basidiobolus ポリペプチド、Bipolaris ポリペプチド、Blastomyces ポリペプチド、Candida ポリペプチド、Coccidioides ポリペプチド、Conidiobolus ポリペプチド、Cryptococcus ポリペプチド、Curvalaria ポリペプチド、Epidermophyton ポリペプチド、Exophiala ポリペプチド、Geotrichum ポリペプチド、Histoplasma ポリペプチド、Madurella ポリペプチド、Malassezia ポリペプチド、Microsporum ポリペプチド、Moniliella ポリペプチド、Mortierella ポリペプチド、Mucor ポリペプチド、Paecilomyces ポリペプチド、Penicillium ポリペプチド、Phialemonium ポリペプチド、Phialophora ポリペプチド、Prototheca ポリペプチド、Pseudallescheria ポリペプチド、Pseudomicrodochium ポリペプチド、Pythium ポリペプチド、Rhinosporidium ポリペプチド、Rhizopus ポリペプチド、Scolecobasidium ポリペプチド、Sporothrix ポリペプチド、Stemphylium ポリペプチド、Trichophyton ポリペプチド、Trichosporon ポリペプチド、およびXylohypha ポリペプチド。
【0030】
原生動物寄生生物の免疫原性ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Babesia ポリペプチド、Balantidium ポリペプチド、Besnoitia ポリペプチド、Crysptosporidium ポリペプチド、Eimeria ポリペプチド、Encephalitozoon ポリペプチド、Entamoeba ポリペプチド、Giardia ポリペプチド、Hammondia ポリペプチド、Hepatozoon ポリペプチド、Isospora ポリペプチド、Leishmania ポリペプチド、Microsporidia ポリペプチド、Neospora ポリペプチド、Nosema ポリペプチド、Pentatrichomonas ポリペプチド、Plasmodium ポリペプチド(例えば、P. falciparumのサーカムスポロゾイト(circumsporozoite)(PfCSP)、スポロゾイト表面タンパク質2(PfSSP2)、肝臓状態抗原1のカルボキシル末端(PfLSA1 c-末端)、および被輸出タンパク質1(exported protein 1)(PfExp-1))、Pneumocystis ポリペプチド、Sarcocystis ポリペプチド、Schistosoma ポリペプチド、Theileria ポリペプチド、Toxoplasma ポリペプチド、およびTrypanosoma ポリペプチド。
【0031】
蠕虫寄生生物の免疫原性ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Acanthocheilonema ポリペプチド、Aelurostrongylus ポリペプチド、Ancylostoma ポリペプチド、Angiostrongylus ポリペプチド、Ascaris ポリペプチド、Brugia ポリペプチド、Bunostomum ポリペプチド、Capillaria ポリペプチド、Chabertia ポリペプチド、Cooperia ポリペプチド、Crenosoma ポリペプチド、Dictyocaulus ポリペプチド、Dioctophyme ポリペプチド、Dipetalonema ポリペプチド、Diphyllobothrium ポリペプチド、Diplydium ポリペプチド、Dirofilaria ポリペプチド、Dracunculus ポリペプチド、Enterobius ポリペプチド、Filaroides ポリペプチド、Haemonchus ポリペプチド、Lagochilascaris ポリペプチド、Loa ポリペプチドMansonella ポリペプチド、Muellerius ポリペプチド、Nanophyetus ポリペプチド、Necator ポリペプチド、Nematodirus ポリペプチド、Oesophagostomum ポリペプチド、Onchocerca ポリペプチド、Opisthorchis ポリペプチド、Ostertagia ポリペプチド、Parafilaria ポリペプチド、Paragonimus ポリペプチド、Parascaris ポリペプチド、Physaloptera ポリペプチド、Protostrongylus ポリペプチド、Setaria ポリペプチド、Spirocerca ポリペプチド、Spirometra ポリペプチド、Stephanofilaria ポリペプチド、Strongyloides ポリペプチド、Strongylus ポリペプチド、Thelazia ポリペプチド、Toxascaris ポリペプチド、Toxocara ポリペプチド、Trichinella ポリペプチド、Trichostrongylus ポリペプチド、Trichuris ポリペプチド、Uncinaria ポリペプチド、およびWuchereria ポリペプチド。
【0032】
外寄生生物の免疫原性ポリペプチドおよび抗原性ポリペプチドの例としては、以下由来のポリペプチド(防御抗原およびアレルゲンを含む)が挙げられるが、これらに限定されない:ノミ;ダニ(ダニ(hard tick)およびヒメダニ(soft tick)を含む);ハエ(例えば、ミジ、カ、スナバエ、ブユ、ウマバエ、サシバエ、アブ(deer fly)、ツェツェバエ、サシバエ(Stable fly)、ハエウジ病発症性ハエ、およびヌカカ(bitinggnat);アリ;クモ、シラミ;ダニ;ならびに半翅目(例えば、トコジラミおよびサシガメ)。
【0033】
腫瘍関連性の抗原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチドの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:腫瘍特異的免疫グロブリン可変領域、GM2、Tn、sTn、Thompson-Friedenreich抗原(TF)、Globo H、Le(y)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、癌胎児抗原、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβ鎖(hCGβ)、HER2/neu、PSMA、EGFRvIII、KSA、PSA、PSCA、GP100、MAGE1、MAGE2、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、MART-1、PAP、CEA、BAGE、MAGE、RAGE、および関連タンパク質。
【0034】
本発明のポリペプチドと同様に、前述のポリペプチドのフラグメントまたは改変体、および前述のポリペプチドの任意の組み合わせもまた、包含される。さらなるポリペプチドは、例えば、「Foundations in Microbiology」、Talaroら編、McGraw-Hill Companies(1998年10月)、Fieldsら、「Virology」、第3版、Lippincott-Raven(1996)、「Biochemistry and Molecular Biology of Parasites」、Marrら編、Academic Press (1995)、およびDeacon,J.,「Modern Mycology」、Blackwell Science Inc(1997)(これらは、本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
【0035】
免疫原コードポリヌクレオチドは、単数形の「ポリヌクレオチド」および複数形の「ポリヌクレオチド」を包含することが意図され、そして単離された分子または構築物をいう。免疫原コードポリヌクレオチドとしては、ヌクレオチド配列、核酸、核酸オリゴマー、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA(例えば、pDNA、pDNAの誘導体、直線状DNA)、あるいは任意のそれらのフラグメントが挙げられる。免疫原コードポリヌクレオチドは、直鎖状形態、環状形態(例えば、プラスミド)または分枝状形態、ならびに二本鎖形態または一本鎖形態で、提供され得る。免疫原コードポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合または非従来性の結合(例えば、アミド結合(ペプチド核酸(PNA)に見出されるような)を含み得る。
【0036】
本発明に従って、免疫原コードポリヌクレオチドは、非感染性および非組み込み性のポリヌクレオチドを含む、環状または直鎖状のプラスミドの一部分であり得る。非感染性ポリヌクレオチドは、脊椎動物細胞を感染しないポリヌクレオチドであり、一方、非組み込みポリヌクレオチドは、脊椎動物細胞のゲノムに組み込まれない。直鎖状プラスミドは、その前に環状であったが、例えば、制限エンドヌクレアーゼでの消化によって直鎖化されたプラスミドである。免疫原コードポリヌクレオチドは、ポリペプチドの分泌を指向する配列を含み得る。
【0037】
免疫原コードポリヌクレオチドの形態は、所望される発現の速度および継続時間に一部依存する。ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の長期送達が所望される場合、好ましい形態は、DNAである。あるいは、短期の導入遺伝子タンパク質送達が所望される場合、好ましい形態は、mRNAである。なぜなら、mRNAは、ポリペプチドに迅速に翻訳され得るが、RNAは、DNAよりも、より速く分解され得るからである。
【0038】
1つの実施形態において、免疫原コードポリヌクレオチドは、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))である。RNA配列を哺乳動物細胞に導入するための方法は、米国特許第5,580,859号(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載される。ウイルス性αベクター(RNAの投与に有用な非感染性ベクター)が、RNAを哺乳動物細胞に導入するために使用され得る。αウイルスベクターの哺乳動物組織へのインビボ導入のための方法は、Altman-Hamamdzic, S.ら、Gene Therapy 4,815-822 (1997)(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0039】
好ましくは、免疫原コードポリヌクレオチドは、DNAである。DNAの場合、プロモーターは、好ましくは、この免疫原をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。プロモーターは、予め決定された細胞においてのみDNAの実質的な転写を指向する、細胞特異的プロモーターであり得る。プロモーターに加えて、他の転写制御エレメントが、DNAの細胞特異的転写を指向するためのポリヌクレオチドと共に含まれ得る。作動可能な連結は、免疫原性分子をコードするポリヌクレオチドが、その免疫原の発現を1以上の調節配列の影響下または制御下に置くような様式で、その調節配列に連結されている、連結である。
【0040】
2つのDNA配列(例えば、コード配列、およびそのコード配列の5’末端に連結されるプロモーター領域配列)は、プロモーター機能の誘導が、その所望の免疫原をコードするmRNAの転写を生じる場合、かつその2つのDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト変異の導入を生じないか、(2)その発現調節配列がその免疫原の発現を指向する能力に干渉しないか、または(3)そのDNAテンプレートが転写される能力に干渉しない場合に、作動可能に連結されている。従って、プロモーター領域は、このプロモーターがDNA配列の転写をもたらし得た場合に、そのDNA配列に作動可能に連結されている。
【0041】
免疫原コードポリヌクレオチド(例えば、pDNA、mRNA、ポリヌクレオチドまたは核酸オリゴマー)は、任意の種々の緩衝液中で可溶化され得、その後、アジュバント成分(例えば、サイトフェクチンおよび共脂質)と共に混合または複合体化される。適切な緩衝液としては、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、通常の生理食塩水、Tris緩衝液、およびリン酸ナトリウムが挙げられる。不溶性ポリヌクレオチドは、弱酸または弱塩基中で可溶化され得、次いで、緩衝液で所望の容量に希釈される。この緩衝液のpHは、適切に調節され得る。さらに、薬学的に受容可能な添加剤を使用して、適切な浸透圧モル濃度を提供し得る。このような添加剤は、当業者の範囲内である。
【0042】
本発明に従って、免疫原コードポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の方法によって(例えば、pDNA溶液とサイトフェクチン/共脂質リポソームの溶液を混合することによって)、本発明のアジュバント組成物と複合体化され得る。1つの実施形態において、各々の成分溶液の濃度を、混合前に調整し、その結果、所望の最終的なpDNA/サイトフェクチン:共脂質の比、および所望のpDNAの最終濃度が、その2つの溶液を混合した際に得られる。例えば、その所望の最終濃度が、生理食塩水(0.9%重量/容量)である場合、pDNAおよびサイトフェクチン:共脂質リポソームの両方を、0.9%生理食塩水中で調製し、次いで、単に混合して所望の複合体を生成する。
【0043】
サイトフェクチン:共脂質リポソームは、当該分野で公知の任意の方法によって調製され得る。例えば、GAP-DMORIEと共脂質の混合物の薄膜を、適切な容量の水性溶媒中で、周囲温度で約1分間ボルテックス混合することによって水和し得る。サイトフェクチンと共脂質の混合物の薄膜の調製は、当業者に公知であり、そして任意の適切な技術によって調製され得る。例えば、その個々の成分のクロロホルム溶液を混合し、等モル量の溶質比を生成し得、その後、所望の容量の溶液を適切な容器に等分し得る。この容器において、溶媒を、エバポレーション(例えば、最初に、乾燥不活性ガス流(例えば、アルゴン)を用い、次いで、高真空処理によって)除去し得る。
【0044】
本発明に従って、本発明の免疫原性組成物は、脊椎動物を免疫するために使用され得る。用語「脊椎動物」とは、単数の「脊椎動物」および複数の「脊椎動物」を含むことが意図され、そして哺乳動物および鳥類、ならびに魚類を包含する。脊椎動物を免疫するための方法は、その脊椎動物に、その免疫原に対する免疫応答を生じるのに十分な量の本発明の免疫原性組成物を投与する工程を包含する。
【0045】
本発明の免疫原性組成物は、当該分野で公知の任意の種々の方法に従って、投与され得る。例えば、米国特許第5,676,954号は、カチオン性脂質キャリアで複合体化した遺伝物質の、マウスへの注射を報告する。また、米国特許第5,589,466号、同第5,693,622号、同第5,580,859号、同第5,703,055号、およびPCT国際特許出願PCT/US94/06069(WO94/29469)(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)は、DNA−カチオン性脂質複合体を哺乳動物に送達するための方法を提供する。
【0046】
詳細には、本発明の免疫原性組成物は、以下を含むがこれらに限定されない、脊椎動物の任意の組織に投与され得る:筋肉、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、粘膜組織、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、膣組織、直腸、神経系、眼、腺、舌および結合組織。
【0047】
好ましくは、この組成物は、骨格筋に投与される。本発明の免疫原性組成物はまた、以下を含むがこれらに限定されない、体腔に投与され得る:肺、口、鼻腔、胃、腹腔、腸、心室(心房)、静脈、動脈、毛細管、リンパ、子宮、膣、直腸および眼の腔。
【0048】
好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、筋内(i.m.)経路または皮下(s.c.)経路によって投与される。他の適切な投与経路としては、経皮投与、鼻内投与、吸入、気管内投与、経粘膜(すなわち、粘膜を横切る)投与、腔内(例えば、経口、膣または直腸)投与、眼内投与、膣投与、直腸投与、腹腔内投与、腸内投与および静脈内(i.v.)投与が挙げられる。
【0049】
投与が所望の免疫応答を生じる限り、任意の投与形態が使用され得る。本発明の投与手段としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:針注射、カテーテル注入、微粒子銃注射器、粒子加速器(すなわち、「遺伝子銃」または空気式「無針」注射器−−例えば、Med-E-Jet(Vahlsing, H.ら、J. Immunol.Methods 171,11-22 (1994))、Pigjet(Schrijver, R.ら、Vaccine 15、1908-1916 (1997))、Biojector (Davis,H.ら、Vaccine 12、 1503-1509 (1994);Gramzinski, R.ら、Mol. Med. 4,109-118 (1998))、AdvantaJet、Medijector、ゲル形態スポンジデポー、他の市販のデポー材料(例えば、ヒドロゲル)、浸透圧ポンプ(例えば、Alzaミニポンプ)、経口または坐剤用固体(錠剤または丸剤)薬学的処方物、局所的皮膚クリーム、およびデカンティング(decanting)、手術中のポリヌクレオチドコート縫合糸(Qinら、Life Sciences 65, 2193-2203 (1999))の使用または局所的適用。好ましい投与様式は、筋内への針による注射および水溶液としての鼻内適用である。
【0050】
免疫原性組成物の有効量の決定は、例えば、その物質の化学的構造および生物学的活性、被検体の年齢および体重、ならびに投与経路を含む、多くの因子に依存する。正確な量、投薬回数および投薬のタイミングは、当業者に容易に決定され得る。
【0051】
特定の実施形態において、この免疫学的組成物は、薬学的組成物として投与される。このような薬学的組成物は、公知の方法に従って処方され得、これによって、送達されるべき物質が、薬学的に受容可能なキャリアビヒクルと組み合わせられる。適切なビヒクルおよびそれらの調製は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、A. Osol編、Mack Publishing Co., Easton, PA(1980)、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、A.R. Gennaro編、Mack Publishing Co., Easton, PA(1985)に記載される。
【0052】
薬学的組成物は、エマルジョン、ゲル、溶液、懸濁液、凍結乾燥形態、または当該分野で公知の任意の他の形態として処方され得る。さらに、薬学的組成物はまた、例えば、希釈剤、結合剤、安定化剤および保存剤を含む、薬学的に受容可能な添加剤を含み得る。本明細書中に記載のポリヌクレオチド構築物の薬学的に受容可能な塩の投与が、好ましい。このような塩は、有機塩基および無機塩基を含む、薬学的に受容可能な非毒性の塩基から調製され得る。無機塩基由来の塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。薬学的に受容可能な有機非毒性塩基由来の塩としては、一級アミン、二級アミンおよび三級アミン、塩基性アミノ酸などの塩が挙げられる。
【0053】
インビボで使用される水性薬学的組成物のために、滅菌の発熱物質非含有の水の使用が好ましい、このような処方物は、脊椎動物への投与に適切な薬学的に受容可能な組成物を調製するために、有効量の免疫原性組成物を適切な量のビヒクルと共に含む。
【0054】
本発明はまた、脊椎動物へのポリペプチドの送達における使用のためのキットを提供する。各キットは、1ng〜30 mgの免疫原コードポリヌクレオチドを有する容器を備え、このポリヌクレオチドは、インビボでの脊椎動物細胞内で免疫原を作動可能にコードする。さらに、各キットは、同じ容器または異なる容器中に、GAP-DMORIEおよび共脂質を含むアジュバント組成物を備える。この薬学的キットの任意の成分は、単一の容器または複数の容器中に提供され得る。好ましくは、このキットは、約1ng〜約30 mgの免疫原コードポリヌクレオチドを備え、より好ましくは、このキットは、約100 ng〜約10 mgの免疫原コードポリヌクレオチドを備える。
【0055】
任意の適切な容器が、薬学的キットと共に使用され得る。容器の例としては、ガラス容器、プラスチック容器、またはプラスチック片または紙片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
各々の薬学的キットはさらに、投与手段を備える。投与手段としては、注射筒および針、カテーテル、微粒子銃(biolistic injector)、粒子加速器(すなわち、「遺伝子銃」)、空気式「無針」注射器、ゲル形態スポンジデポー、他の市販のデポー材料(例えば、ヒドロゲル)、浸透圧ポンプ、ならびに手術中のデカンティングまたは局所的適用が挙げられるが、これらに限定されない。この各々の薬学的キットはさらに、例えば、免疫原性組成物でコートされた縫合糸(Qinら、Life Sciences 65、2193-2203 (1999))を含み得る。
【0057】
このキットはさらに、脊椎動物への組成物の投与のための説明書を備える。この薬学的組成物のポリヌクレオチド成分は、好ましくは、液体溶液として提供されるか、またはそれらは、凍結乾燥形態で乾燥粉末またはケーキとして提供され得る。ポリヌクレオチドが凍結乾燥形態で提供される場合、この乾燥粉末またはケーキはまた、乾燥形態のこの薬学的組成物の、任意の塩、侵入増強剤、トランスフェクション促進剤、および添加剤を含み得る。このようなキットはさらに、この薬学的組成物の凍結乾燥成分の正確な再構成のために、正確な量の滅菌状態の発熱物質非含有の水を含む容器を備える。
【0058】
使用の前に薬学的組成物がパッケージングされる容器は、凍結乾燥された処方物またはその薬学的有効用量のために適切な処方物を含有する溶液のある程度の量、あるいは複数の有効容量を同封する、密封してシールされた容器を含み得る。この薬学的組成物は、滅菌容器にパッケージングされ、そして密封してシールされた容器は、薬学的処方物の無菌性を、使用するまで保つために設計される。必要に応じて、この容器は、投与手段および/または使用のための指示に関連し得る。
【0059】
以下の実施例は、例示のみの目的として含まれ、そして添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するようには意図されない。
【実施例】
【0060】
以下の実施例は、抗原をコードするpDNAと複合体化した種々のGAP-DMORIE:共脂質が、マウスまたはウサギの組織に投与される場合、現在公知の核酸免疫法と比較して、後の免疫応答を増大し得るという驚くべき知見を実証する。
【0061】
材料および方法
以下の材料および方法を、本明細書中に開示される全ての実施例において、一般的に適用する。特定の物質および方法は、必要に応じて各実施例において開示する。
【0062】
試薬
滅菌したUSPの水および生理食塩水溶液を、Baxter (Deerfield, IL)から購入した。他の全ての化学物質および溶媒を、Sigma Chem.Corp.(St. Louis, MO)またはGallade Chemical(Escondido, CA)のいずれかから購入した。1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)および1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPyPE)の両方を、クロロホルム溶液としてAvanti Polar Lipids, Inc. (Alabaster, Alabama)から購入した。
【0063】
アジュバントおよび免疫原性組成物の調製
(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(syn−9−テトラデセンイルオキシ)−1−プロパンアミニウムブロミド(GAP-DMORIE、またVC1052ともいわれる)を、アナログサイトフェクチン(cytofectin)GAP-DLRIEを調製するための公開手順を用いて合成した(Wheelerら、 Proc. Natl. Acad. Sci. 93, 11454-11459 (1996))。具体的には、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオールの最初のビス−アルキル化において、ドデセニルメタンスルホネートの代わりにsyn−9−テトラデセニルメタンスルホネートを用いることで、所望のジアルキルアミンを得た。3−ブロモプロピルフタルイミドでの四級化(quatranization)、続いてヒドラジンでの保護された一級アミンの脱保護、および抽出精製、ならびにミクロン以下の濾過によって、純粋なGAP-DMORIEを、分析薄層クロマトグラフィーによる判断として得た。生成物の同一性を、高分解能プロトンNMRおよび赤外(IR)スペクトルを用いて確認した。
【0064】
サイトフェクチン:共脂質混合物を、再水和薄膜法(rehydrated thin-film method)を用いて調製した。手短に言えば、窒素流下でクロロホルムをエバポレートし、そして微量の溶媒を除去するためにバイアルを真空下に一晩配置することによって、2mlの滅菌ガラスバイアル中に乾燥フィルムを調製した。各バイアルは、サイトフェクチンおよび共脂質の各々1.5μモルを含んだ。バイアル当たり1mlのSWFI(注射用滅菌水、VWR、Philadelphia、PA)を添加し、続いてGenie Vortex Mixer (Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)の最も高い設定で、連続して5分間ボルテックスすることによって、リポソームを調製した。
【0065】
得られたリポソーム溶液は、1.5 mMのサイトフェクチンを含んだ。最後に、処方物を、8:1、4:1および2:1の最終pDNA(ホスフェート):カチオン性脂質モル比で調製した。pDNA濃度(mg/mlでの)を330(平均ヌクレオチド分子量)で除算することで、pDNAホスフェートのモル濃度を計算する。リポソーム(SWFI中の)およびpDNA(2xビヒクル中の)を、処方物における最終濃度の2倍の濃度で調製した。等しい容量のリポソームを、シリンジおよび26ゲージまたは28ゲージの針を使用して、pDNAに添加した。定常流でリポソームを添加し、続いて、短時間穏やかにボルテックスして混合した(Genie vortex mixerの設定#4で数秒間)。
【0066】
この研究で使用される全てのサイトフェクチン/共脂質処方物は、室温で調製後数時間の間、いずれの明白な凝集もなく、均一に不透明のままであった。処方物を、複合体形成の20分〜1.5時間後に注射した。代表的な注射において、5μgのpDNAが、4:1のpDNA:サイトフェクチンのモル比のサイトフェクチンと共に処方される場合、各筋肉は50μlのビヒクル中の2.4μgのサイトフェクチンおよび3.0μgの中性共脂質を受け取る。マウスモデルにおいて試験された最も高いpDNA+サイトフェクチン:共脂質用量(マウス当たり、100μgのVR4700プラスミド+48μgのGAP-DMORIE+60μgのDPyPEに対応する)でさえも、マウスの筋肉に注射した場合、不快感の生成も示さず、いずれの有害な反応も生じなかった。
【0067】
pDNAの調製
VR4700プラスミドを、当該分野で公知の標準的な技術を用いて調製した。手短に言うと、VR1255(ホタルのルシフェラーゼをコードする最適化されたプラスミド(Hartikka, J.ら、Human Gene Therapy 7, 1205-1217 (1996)))は、インフルエンザ核タンパク質(NP)のためのコード配列を有し、これをルシフェラーゼコード配列の代わりに挿入した。このインフルエンザ核タンパク質配列を、nCMVinttpaPRNPと呼ばれるプラスミドから誘導した(Vahlsing, L.ら、J. Immunol. Methods 174, 11-22 (1994))。より具体的には、このVR4700プラスミドを、以下の手順を介して生成した。
【0068】
VR1255プラスミドをAcinetobacter Calcoacetius制限酵素(Acc I)+Bacillus amyloliquefaciens制限酵素(Bam HI)で消化し、次いで、この末端をKlenowで平滑末端化し、このようにして所望のベクターフラグメントを得た。この核タンパク質のコード配列を、Acc I+Escherichia coli制限酵素(Eco RI)でのnCMVintTPAPRNPの消化、およびKlenowでの末端の平滑末端化によって得た。ベクターフラグメントおよびインサートフラグメントの両方を精製し、次いでT4 DNAリガーゼで結合した。この結合産物を、E. coli中でカナマイシン耐性に形質転換し、この後、適切なプラスミドを保有するクローンを、制限消化プロフィールに基づいて同定した。標準的な細胞培養技術を使用して、適切なクローンを増殖し、このプラスミドを、周知の市販の技術(Qiagen, Valencia, CA)を使用してこのクローンから最初に単離および精製した。
【0069】
VR1412LacZプラスミドを、細胞質内の標的化βガラクトシダーゼ遺伝子をVR1012ベクターにサブクローニングすることによって構築した(Doh ,S.G.ら、Gene Therapy 4(7), 268-263 (1997))。VR1012バックボーンベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期1プロモーター/エンハンサー、CMVイントロンA、ウシ成長ホルモンターミネーターおよびカナマイシン耐性遺伝子を含む(Hartikka, J.ら、Human Gene Therapy 7 (10)、1025-17 (1996))。
【0070】
VR5900は、鶏卵リゾチームをコードするpDNAである。このpDNAの構築のために、ニワトリ(gallus)リゾチームcDNAを、Deep Vent DNAポリメラーゼ(NEB, Boston, MA)を使用して、重複するオリゴヌクレオチドで合成した。このヌクレオチド配列を、GENBankの登録V00428から得た。この配列を、OLIGO 5.0プログラムおよびRetrogen (San Diego, CA)から購入した対応するオリゴヌクレオチドでヒト化した。PCR産物を、pCRII Blunt Topo (Invitrogen, Carlsbad, CA)にクローニングし、その全体において配列決定し、そしてVR1055中にサブクローニングした。VR1055は、Vical CMVプロモーター/エンハンサーベースの発現ベクターであり、これは、VR1055における最小ウサギβグロビンターミネーターの使用を除いて、VR1012と同一である(Hartikka. J.ら、Human Gene Therapy 7, 1205-17 (1996))。HEL発現を、ウサギ抗卵白リゾチーム(Biodesign, Kennebunk, ME)を用いるウエスタンブロットによって確認した。
【0071】
VR1904は、ヒト第IX因子をコードするpDNAである。構築のために、プラスミドGT50 (Baxter Healthcare Corp., Round Lake, ILのSteven Josephsから親切に提供された)からの第IX因子cDNAインサートを、VR1012ベクターにサブクローニングした。
【0072】
VR1623は、ヒト定常領域に融合したマウス可変領域を有するキメラ免疫グロブリンを発現する。ヒトκおよびγ(IgG1)定常領域を、ヒト末梢血リンパ球からPCR増幅し、そしてVR1031(CITE配列の挿入によるVR1012由来のビシストロンベクター)にクローニングした。この新しい構築物を、VR1605と名付けた。38c13(マウスB細胞リンパ腫(BergmanおよびHaimovich, 1977))からの可変領域配列を、プラスミドpId(TaoおよびLevy, 1993, Dr.Ronald Levy、Stanford University Medical Center, CAから親切に提供された)からのPCRによって増幅し、そしてVR1623を作製するためにVR1605にクローニングした。
【0073】
バルクpDNA調製および精製
プラスミドDNAを、Escherichia coli DH10BまたはEscherichia coli DH5αのコンピテント細胞に形質転換し、そして1Lの振盪フラスコにおいて、50mg/mlのカナマイシンを補充したTerrific Broth (Sambrook, J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor NY, p.A.2 (1989))内で増殖させた。細胞を、指数関数的増殖期の終わり(約16時間)に遠心分離することで集め、代表的には1リットル当たり10グラムの生物量正味重量を得た。共有結合的に閉じられた環状pDNAを、改変溶解手順(Horn, N.A.ら、Human Gene Therapy 6、565-573 (1995))、続いて標準的な二重CsCl−エチジウムブロミド勾配超遠心分離によって単離し、1リットル当たり約5mgの平均収量であった。プラスミドを、エタノール沈殿し、そして4℃で生理食塩水中に再溶解化し、そして生理食塩水に対して透析した。エンドトキシン含有量を、Limulus Amebocyte Lysateアッセイ(Associates of Cape Cod,Inc., Falmouth, MA)によって決定した。全てのプラスミド調製物は、検出可能なRNAを有さなかった。エンドトキシンレベルは、プラスミドDNAの7.0エンドトキシンユニット/mg未満であった。分光光度的なA260/A280の比は、1.75と2.0との間であった。プラスミドをエタノール沈殿し、そして完全に溶解するまで、4℃で注射ビヒクル中に再懸濁させた。DNAを、使用するまで−20℃で保存した。
【0074】
動物免疫
拘束した覚醒しているマウス(Harlan Sprague Dawley, Indianapolis, INからの雌性8〜12週齢BALB/cマウス)大腿四頭筋に、使い捨てのインスリン注射器およびマイクロピペットチップから切断されたプラスチックカラーに取り付けられた28ゲージ1/2インチの針(Becton-Dickison, Franklin Lakes, NJ, Cat. No.329430)を使用して、50μlのビヒクル中のpDNAを注射した。そのカラーの長さを、大腿直筋の中心部内に約2mmの距離まで針チップ挿入を制限するように調節した。注射流体および注射器を室温まで平衡化し、そして1回50μ容量の注射を、1〜2秒において実施した。
【0075】
塩酸ケタミン/キシラジンで麻酔をかけられた雌New Zealand白ウサギ(5〜6月齢、およそ3kg)の大腿四頭筋に、300μl PBS中150μgのpDNAを22ゲージ1インチ針を使用して、注射した。注射の前に、注射部位の毛をそり、アルコールできれいにした。針不要注射デバイス(Biojector(登録商標)2000 (Bioject Inc., Portland, OR)をウサギにおいて試験した。このBiojector(登録商標)2000は、CO2により動力提供されるジェット注射システムである。予備実験において、このBiojector(登録商標)2000は墨汁溶液を皮膚を通して筋肉組織内に送達し得ることを確認した。
【0076】
この研究中の動物の世話は、「Guide for the Use and Care of Laboratory Animals」、Institute of Laboratory Animal Resources Commission on Life Sciences, National Research Council, National Academy Press, Washington, D.C., 1996ならびにVical' Institutional Animal Care and Use committeeに従った。
【0077】
抗NP ELISA
96ウェルプレート(Cornig Incorporated, Cat. No.3690, Corning, NY)を、100μ lBBS(89mMホウ酸および90mM NaClおよび234mM NaOH、pH 8.3)中の組換えバキュロウイルス抽出物から精製された71〜125 ng/ウェルのインフルエンザA/PR/8/34核タンパク質(NP)で被覆した。そのプレートを一晩+4℃にて保存し、そしてそのウェルをBBST(0.05% Tween20を補充されたBBS,vol/vol)で2回洗浄した。次いで、そのウェルをBB(5%脱脂乳を補充されたBBS、wt/vol)と共に90分間インキュベートし、そしてBBSTを用いて再び2回洗浄した。BB中のマウス血清またはウサギ血清の2倍連続希釈(1:20にて開始)を連続ウェルにおいて作製し、そしてその溶液を2時間室温にてインキュベートした。次いで、ウェルを、BBSTを用いて4回リンスした。VR4700プラスミドDNAを用いて超免疫化したマウス由来の血清を、陽性コントロールとして使用し、そしてマウスおよびウサギ由来のプレ免疫血清を陰性コントロールとして使用した。
【0078】
NP特異的抗体を検出するために、BBS中1:5000に希釈されたアルカリホスファターゼ結合体化ヤギ抗マウスIgG-Fc(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Cat. No.115-055-008, West Grove, PA)またはヤギ抗ウサギIgG-Fc(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Cat. No.111-055-008, West Grove, PA)を50μl/ウェルにて添加し、そしてそのプレートを室温にて2時間インキュベートした。BBSTにおいて4回洗浄した後、50μlの基質(50mM 重炭酸ナトリウム緩衝液、pH 9.8および1mM MgCl2中1mg/ml p−ニトロフェニルホスフェート、Calbiochem Cat. No.4876)を、室温において90分間インキュベートし、そして405 nmにおいて吸光度の読み取りを実施した。この血清の力価を相互の最後の希釈物(バックグランドよりも2倍高いシグナルがなおも生じていた)を使用して決定した。バックグランドを、1:20に希釈されたプレ免疫血清を使用して確立した。
【0079】
脾臓細胞51Cr放出アッセイ
脾臓細胞の単一細胞懸濁物をペレット化し、そしてL−グルタミンおよび25mMのHEPESを含み、そしてぺニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、55μM β−メルカプトエタノールおよび10%FBSを補充したRPMI1640培地において再懸濁した。他に注釈されない限り、全ての組織培養培地および試薬を、Gibco BRL Life Technologies (Rockville, MD)から入手した。次いで、2.5×107個の脾臓細胞を、1μg/mlにてNP147-155ペプチド(H-2Kd TYQRTRALV)またはβ−gal876-884ペプチド(H-2Ld TPHPARIGL)、および0.5U/mlにて組換えマウスIL-2(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を有する合計10ml培地の25cm2組織培養フラスコにおいて5日間培養した。
【0080】
CTLアッセイのために、P815細胞を、30μl生理食塩液中0.15mCi Na251CrO4(HEN Life Science Products, Boston, MA)を用いて37℃にて35分間標識した。標識された細胞を、1ml RPMI 1640培地中20μgNPペプチドまたはβ−galペプチド(H-2Ld TPHPARIGL)を用いて37℃にて40分間パルスするか、またはパルスせずに使用した。2重滴定の脾臓細胞を、96ウェル丸底プレート(ICN Biomedicals, Aurora, OH)にて細胞を1:3に連続的に希釈することによって調製した。標的細胞を、設定されたエフェクター:標的比(E:T)にて200μl/ウェルの最終容量において1×104細胞/ウェルに添加した。そのプレートを遠心分離し、そして5%CO2と共に37℃にて4時間インキュベートした。1分毎のカウントを、各ウェルに由来する100μlの上清について決定した。特定溶解物を、%特定溶解物=[(a−b)/(c−b)]100として計算した(ここで、aは、エフェクターの存在下において放出された平均cpmであり、bは、培地のみでインキュベートされた標的細胞から放出された平均cpmであり、そしてcは、1%Triton-X100の存在下における標的細胞から放出されたcpmである。
【0081】
実施例1.
GAP-DMORIE/共脂質は、マウスにおけるpDNAコードインフルエンザ核タンパク質(NP)に対する体液性免疫応答を増強させる。
【0082】
本実施例は、抗NP抗体応答を提供する際のpDNAを有する種々のGAP-DMORIE:共脂質複合体対pDNA単独の投与の効果の量的比較を実証する。
【0083】
pDNAコード免疫原を用いる筋肉のトランスフェクションは、体液性免疫応答および細胞性免疫応答の両方を誘導する。体液性免疫応答を評価するアッセイにおけるトランスフェクション増大の程度を決定するために、免疫原コードpDNA単独および種々のアジュバント組成物と複合体化した同じpDNAを用いる免疫後の抗NP抗体レベルにおける変化を定量化した。免疫アッセイの一般的な特徴は、本質的にはUlmerら(Science, 259, 1745~1749 (1993))によって記載されるのもと同様であり、そして抗体力価を定量するために標準的なELISA技術を使用する。
【0084】
マウスを、pDNAコードインフルエンザ核タンパク質(NP)(共脂質との1:1(mol;mol)混合物として処方されるサイトフェクチン(cytofectin)と複合体化される)を使用して免疫化した。そのサイトフェクチンを、4:1のpDNA/サイトフェクチンモル比にて分析した。試験群における各動物(1群当たり5匹の動物)に、大腿直筋において1足当たり50μl生理的食塩水(水中0.9%NaCl重量/容量)中5μgのpDNA単独(1匹動物当たり全部で10μgのpDNA)またはサイトフェクチン:共脂質複合体として注射した。注射を、「0」日目および3週目に実施した。
【0085】
サイトフェクチン:共脂質免疫応答増強を、pDNA投与単独に由来するGMTによって分割されるサイトフェクチン増強トランスフェクチン群に由来する相乗平均力価(GMT)の比率に基づいて分析した(図3および4を参照のこと)。図3および図4に示されるように、好ましいGAP-DMORIEは、共脂質(特に、DOPEまたはDPyPE)と結合された場合、pDNA単独および他のサイトフェクチン:共脂質の組合せと複合体化したpDNAに両方に渡ってコードされた免疫原に対する抗体応答を顕著に増強させる。最も驚くべきことに、GAP-DMORIE:DPyPEと複合体したVR4700(図4)の筋肉内注射後6週目のマウス抗NP抗体力価は、抗NP力価の相乗平均において10倍増加を生じた。
【0086】
実施例2.
GAP-DMORIE/DPyPEは、マウスにおいてpDNAをコードするインフルエンザ核タンパク質(NP)に対する体液性の免疫応答を増強する。
【0087】
本実施例の目的は、pDNAをコードするインフルエンザ核NP抗原に対する体液性の免疫応答増強するための好ましいサイトフェクチン:共脂質すなわちGAP-DMORIE/DPyPEの能力を実証することである。最もより好まれるサイトフェクチン:共脂質の混合物は、GAP-DMORIEとDPyPEとを1:1のモル比で混ぜたものである。より扱いにくい公式の化学的命名法を用いたり、この混合物の特定のモル比を明記したりする代わりに、この新しい処方物に「Vaxfectin」と名付ける。
【0088】
β−ガラクトシダーゼアッセイ
以前に報告されているように(Manthorpe, Mら、Quantification. Boston, Birkhauser 343-368 (1998))、筋組織を集め、破砕し、抽出した。筋抽出物におけるβ−ガラクトシダーゼの発現レベルは、製造業者の説明書に従って、化学発光を使用して定量した(Boehringer Mannheim, Cat.No.1758241. Indianapolis. IN)。何も注入されていない筋肉からのプールされた抽出液において調製された標準曲線は、キットに含まれていたβ−ガラクトシダーゼ酵素標準品を用いた各プレートに対して含まれた。
【0089】
ELISPOTアッセイによる抗NP特異的抗体分泌細胞の定量
抗NP特異的抗体分泌細胞を、以前に報告されたプロトコールを使用して、ELISPOT法により定量した(Slfika, M.K.ら、 J.Virol. 69(3), 1895-1902 (1995))。骨髄(大腿骨、頸骨)から得た細胞を、赤血球を溶かすために0.83%のNH4Clで処理した。次いで、5%ウシ胎児血清(Hyclone, Logan, Utah)、L−グルタミン、HEPES、ペニシリンおよびストレプトマイシン(LTI, Bethesda, Maryland)を含むRPMI1640培地に再懸濁した。底がニトロセルロースである96ウェルマルチスクリーンフィルトレーションプレート(Millipore Corporation, San Francisco, CA)を1ウェル当たり100μlのPBS中5μg/mlのNP抗原(インフルエンザ核タンパク質株A/PRJ8/34)液でコートし、4℃で一晩インキュベートした。
【0090】
プレートを室温で2時間、5%FBSを含むRPMI1640でブロッキングした。ブロッキング培地をインフルエンザNP(Vaxfectinを伴うか、もしくは伴わない)をコードするpDNAで免疫したマウスから得た骨髄細胞懸濁液を含む100μl/ウェルのブロッキング培地に取り替えた。106個の細胞から始め、次いで、3倍希釈になるまで順次希釈してプレートにまいていった。コントロールのウェルには、上記のように希釈されたネイティブのマウスから得られた細胞を含んだ(これより前のコントロールは、不適切な抗原を含んでいた)。プレートを37℃、7%CO2湿気のあるインキュベータで5時間インキュベートした。
【0091】
プレートを6回洗い、PBS-T含有1%FBS中1ウェル当たり100μlのビオチニル化されたウマ抗マウスIgG(H+L、1/1000希釈、Vector Laboratories, Burlingame, CA)を加え、4℃で一晩インキュベートした。さらにプレートに100μl/ウェルの5μg/mlセイヨウワサビペルオキシダーゼを結合したアビジンDと共に、室温で1時間インキュベートした(Vector Laboratories, Burlingame, CA)。抗体分泌細胞を、1ウェルあたり100μlの基質(3−アミノ−9−エチルカルバゾールおよびH2O2)を3〜5分プレートに加えることにより検出した。この反応を多量の水道水で洗浄することにより終結させた。スポットを解剖顕微鏡(dissecting microscope)下で計数した。抗NP特異的抗体を分泌する細胞は、106個の骨髄細胞あたりのスポット数として表した。
【0092】
統計的な評価
全ての統計的な比較を、パラメータのないMann-Whitney rank sum試験を使用して行った(SigmaStat version 2.03 Jandel Scientific Software, San Rafael. CA)。P値が0.05未満の場合、その違いは統計的に有意とみなした。
【0093】
DNA/Vaxfectin用量応答
pDNA用量増加の効果およびブースト注射の効果を比較するために、三週間間隔でマウスに、1マウスあたり1μg、5μg、25μgの裸のVR4700プラスミドを左右の筋肉内注射を与えた(1動物あたり、それぞれ2、10、50μgのpDNA用量を与えた)。結果を図5に示す。1筋肉あたり、より多くの裸のpDNAを注射した場合、抗NPの力価はもっと高くなる。そして、力価は第1ブースト注射および第2ブースト注射の後に高くなる。しかし、9週間後に3回目のブースト注射をした場合、いずれのpDNA用量を用いても、抗NP力価のさらなる増加は見られなかった(データは示さず)。このことは、裸のpDNAによって抗体の力価レベルはプラトーに達したということを示している。
【0094】
マウスの第2セットは、Vaxfectinで処方した同量のpDNAを受けた。その結果を図5に示す。ここでは3つのpDNA用量全てにおいて7〜20倍の抗体力価の増加が見られた。この実験において、1群あたりの抗NP力価の最も高い平均は、Vaxfectinで処方されたpDNA用量を25μgを用いて9週目に測定された(204,800±56,087、n=5マウス)。裸のpDNA注入時に見られたように9週目に3回目のブースト注射を行った場合、いずれのVaxfectin群においても抗NP力価の増加は見られなかった(データは示さず)。従って、Vaxfectinは、pDNA注入量の増加あるいは注射の回数を増やしたりすることのいずれかによって、抗体力価を裸のpDNAのみでは得られなかったレベルまで増強する。最も著しい発見は、Vaxfectinで処方した筋肉当たり1μgのpDNAを用いるだけで、25μgの裸のVR4700のみを用いた時に得られる値の5倍以上の抗NP力価が得られるということであった。
【0095】
体液性の免疫応答においてVaxfectin媒介性増強に、多数の左右対称の注射が必要であるかどうかを調べるための別個の実験を行った。結果を表1に示す。5μgのVR4700 pDNAをVaxfectinと共に処方することで、マウスに1回の片側筋肉内注射後20日目に、抗NP力価が6倍もの著しい増加が見せた。このことは、Vaxfectinは単回用量後の抗体応答を増強し得ることを示している。
【0096】
【表1】

【0097】
処方の最適化
Vaxfectin処方を最適化するために、異なるpDNA:カチオン性脂質比をマウス免疫モデル系において試験した。その結果(図6に示される)は、pDNA-Vaxfectin複合体をもっと大量(従って、プラスミド量およびVaxfectin量の両方を同時に増加する)に注入することにより、用量依存的な様式において抗体の力価が増加することを示す。このような傾向は、pDNA:カチオン性脂質モル比の2:1、4:1の両方についても同様に見られた。増加した量のVaxfectinと共に、同じ5μgのpDNAを注射した場合(従って、pDNA:カチオン性脂質のモル比が減少する)、Vaxfectin用量依存的な様式において抗体力価が再び増加した(図6B)。さらに大量のpDNAを用いた実験も行ったが、1肢当たりpDNA:カチオン性脂質モル比4:1にてVaxfectinで処方された50μgのpDNAを注入しても、同じ4:1比にてVaxfectinで処方された25μgのpDNAと比べて抗NP力価のさらなる増加は産生されなかった(データは示さず)。
【0098】
増強された体液性応答の持続時間
Vaxfectinにより促進される体液性応答の持続時間を調べるために、マウスのワクチン接種モデルにはじめに注入した後9ヶ月間、NP特異的抗体の力価を調べた。結果を図7Aに示す。21日目のブースト注射後3週間後、Vaxfectin群におけるNP力価は裸のpDNAを注入したコントロールのものに比べて9倍高かった。その後の数週間、Vaxfectin群における抗体の力価は徐々に減少していったが、一連の実験を通してコントロールのものよりは有意に高い値を示していた。実験を始めてから40週経っても、Vaxfectin群における抗NP力価は裸のpDNA群に比べてまだ4倍高かった。
【0099】
並行実験において、別のセットのマウスは、3週目に一回目のブースト注射、3ヶ月目に二回目の同一のブースト注射を受けた。この結果を図7Bに示す。どちらの群においても、2回目のブースト注射によって2〜3倍の抗体力価の増加が見られた。しかし、Vaxfectin群における抗NP力価は、数ヶ月の間、このような高い値のままであったが、その一方で裸のpDNAを用いた群においては、実験終了時に1回のブースト注射後の力価と同じような力価を生じた。その結果として、実験を始めてから、9ヶ月後、Vaxfectin群における抗NP力価は、pDNAコントロール群における力価に比べて17倍高い値を示した。
【0100】
Vaxfectinは強いCTL応答を維持する
体液性の免疫応答を増強させるようなpDNAワクチンと組合せて使用されるアジュバントが、同時に、細胞媒介性免疫を減少させないということが非常に所望される。このことを評価するために、Vaxfectinを伴うか、もしくは伴わずに種々の用量のpDNAをマウスに注射した後にCTLアッセイを行った。その結果は図8に示される。1回のブースト注射(図8C)あるいは複数回(図8Aおよび8B)のブースト注射後、異なるpDNAおよびカチオン性脂質比(図8A)にて処方した場合、あるいは、PBS(図8A)もしくは150mMのNaPビヒクル(図8C)において送達した場合、VaxfectinはCTL応答に対して有意な効果を有しなかった。
【0101】
筋肉当たり25μgの裸のpDNAを注射することは、1μgのpDNAを注射する場合に比べてより強いCTL応答を生じたように観察された。さらに、VaxfectinはいずれのpDNA用量に関するCTL応答に対しても顕著な影響を与えなかった(図8B)。ひとまとめにして考えると、これらの結果は、Vaxfectinを使用してpDNAワクチンを用いる体液性免疫応答を増強し得るが、pDNA免疫に特徴的な強いCTL応答を維持することを示す。
【0102】
Vaxfectinは筋肉のトランスフェクションを増加させない
Vaxfectinが抗体応答を増強させるメカニズムを解明するために、筋肉での発現におけるVaxfectinの効果をインビボで調べた。これらの実験において、β−ガラクトシダーゼをコードするpDNA(VR1412)を単独で注射したか、あるいはVaxfectinで処方し、そして個々の筋肉について、定期的にレポーター遺伝子の発現についてアッセイした。その結果が図9に示されている。注射から1日目、2つの群におけるβ−ガラクトシダーゼの発現は同じであった。このことは、VaxfectinはpDNAによる筋肉のはじめのトランスフェクションには影響していないということを示していた。1日目から7日目までの間に、裸のpDNA群においては、筋肉中での発現が7倍になった。
【0103】
これとは対称的に、Vaxfectin群における発現は、同じ期間で25%減少した。7日目から21日目の間、裸のpDNA群におけるレポーター遺伝子の発現レベルは同じままであったが、Vaxfectin群においては、筋肉中でのβ−ガラクトシダーゼの発現が減り続け、そして21日目のpDNAコントロール群の場合に比べて20倍よりも低い値をとった。従って、注射後時間が経つにつれて、Vaxfectin群において筋肉中での導入遺伝子の発現は顕著に減少したが、抗体の力価はより高かった。このような、筋肉中での発現と抗体の力価との間に相関関係が見られないことは、Vaxfectinによる抗体応答の増強(亢進)は、促進された筋原繊維のトランスフェクションおよび/または筋組織において増加した抗原の合成によって説明され得ない、ということを示している。
【0104】
Vaxfectinが抗原特異的な抗体応答を増強(亢進)するメカニズムはまだ良く分かっていない。Vaxfectinが筋組織中にある、抗原提示細胞を含む複数の細胞型にpDNAを送達することもあり得るが、Vaxfectin非存在下でのpDNAの針注射は、原理的に筋繊維をトランスフェクトし得る。あるいは、pDNA−脂質複合体は筋肉を出て、そして遠位の組織(局所的排出リンパ節における細胞を含む)を形質導入することをより可能にし得る。Vaxfectinはプラスミドをヌクレアーゼに対して保護し得、これによって、pDNA−脂質複合体は注射した部位から遠く離れた組織にまで届くことが可能となる。Vaxfectinはまた、炎症をもたらし得、これは多くの形質導入された筋繊維が損傷を受け、それによって注射後すぐに、より可溶性の抗原を放出する。その後の数日間の抗原産生の減少は、抗原を限定することによって高い親和性をもつ抗原特異的B細胞を選択し得、その結果、抗体の力価は増加することになる。
【0105】
Vaxfectinは骨髄における抗原特異的形質細胞の数を増加させる
Vaxfectin処置された動物における抗NP力価の上昇は、ブースト注射後、数ヶ月間維持された(図7)。骨髄において長く生きているプラズマ細胞が、ウイルスのインフェクション後の持続する抗体産生を維持するための主要な機構であることが示されているので(Slifka, M.Kら、J. Virol. 69(3), 1895-1902(1995), Slifka, M.K.ら、 Curr. Opin. Immunol 10(3), 252-258(1998))、骨髄由来の抗NP抗体分泌細胞の数をELISPOTアッセイを使用して定量した。その結果、Vaxfectinは、骨髄中のNP特異的プラズマ細胞の数を統計的有意に3〜5倍の増加を生成したということを示していた。さらに、個々のマウスにおける抗体力価は、裸のpDNAおよびVaxfectin群のどちらにおいても、骨髄中の抗NP抗体分泌細胞の数とおおよその相関関係があった(表2)。
【0106】
【表2】

【0107】
ELISPOTアッセイによるデータはVaxfectinの使用により、骨髄における抗原特異的プラズマ細胞の数を増加させるということを示している。このようなプラズマ細胞の増加は、pDNA−脂質複合体のアジュバント特性に起因し得る。カチオン性脂質と複合体化したブランクpDNAを、マウス卵巣腫瘍保有C3H/HeNマウスの腹膜に注射することにより、インターロイキン−6(IL-6)、インターフェロン−γ(IFN-γ)および腫瘍壊死因子α(TNP-α)の産生が誘導される(Horton, H.M.ら, J.Immunol, 163(12) 6378-6385 (1999))。これらのサイトカインはpDNAまたは脂質のみを処置されたマウスにおいては誘導されなかった。このことは、pDNA−脂質複合体は、インビボで免疫刺激性を持つということを示す。
【0108】
pDNA−脂質複合体の免疫刺激特性はまた、マウスにカチオン性脂質と複合体化したpDNAを静脈注射により注射する実験により報告された(Dow, S.W.ら、J Immunol. 163(3) 1552-1561 (1999))。pDNA−脂質複合体の腹膜注射による注射および静脈注射による注射に関する限りでは、pDNA-Vaxfectinの筋肉内注射はまた、IL-6(活性化されたB細胞のプラズマ細胞への分化を促進するサイトカイン)を含んだサイトカインの誘導を引き起こし得る。従って、pDNA-Vaxfectin複合体は、抗体産生B細胞の数を増やすことにより間接的に抗体の力価を増強し得る。
【0109】
また、Vaxfectinの成分が、B細胞のポリクローナル増殖を直接刺激し得る、天然に存在するマイトジェンを擬態することも可能である。これは、応答性のB細胞数の増加により筋細胞によって発現される導入遺伝子に対する特異的な免疫応答を増強し得る。従って、このように、リンパ節における細胞のトランスフェクションを伴う、APCのトランスフェクションまたは排出リンパ節へのpDNAの送達が増加すると、筋肉損傷が可溶性抗原の有用性の増加を生じ、そしてpDNA-Vaxfectin複合体の免疫刺激特性が、各々Vaxfectinのアジュバント効果の一因となり得る。
【0110】
実施例3.
Vaxfectinは、ウサギにおいて抗体力価を増大させる
本実施例の目的は、ポリヌクレオチドをベースとするワクチン中に処方された場合の、ウサギにおいてGAP-DMORIE:共脂質(例えば、Vaxfectin)のアジュバント効果を示すことである。
【0111】
雌性ニュージーランド白色ウサギ(5〜6ヶ月齢)を麻酔した。次いで、150μgのVR4700プラスミドDNAを含むPBS溶液、または4モル:1モルのpDNA:GAP-DMORIE比で調製された150μgのVR4700プラスミドとGAP-DMORIE:DPyPE(1:1)との複合体を含むPBS溶液のいずれか300μlを、後脚に注射した。各ウサギに、滅菌したディスポーザブルのプラスチックのインシュリンシリンジおよび22ゲージの1インチ針を使用して0日目に一回注射した。そしてこのウサギに、6週目に反対側の後脚に同じ「ブースト」注射を行った。免疫前、および3週間目、6週間目、7週間目、9週間目、および13週間目に、この動物から耳の静脈より採血した。6週の採血を、同じ日だが、ブースト注射を行う前に実施した。
【0112】
針およびシリンジを用いて実行した単回の片側筋肉内(i.m.)注射を使用して、Vaxfectinは、裸のpDNAの注射と比較して、3週目に抗体力価の旺盛な20倍の増加を生じた。この結果を図10に示す。6週目に行ったブースト注射の後、両方の群での抗NP力価はほぼ一桁増大し、Vaxfectin群中における抗体力価は、実験の経過を通じて裸のpDNA群よりも20倍〜50倍高いままであった。ウサギをBiojector(登録商標)2000デバイスで免疫した場合、Vaxfectinは、単回の片側注射の後に抗体応答を増強しないようであった。ブースト注射を6週目に行った後、Biojector Vaxfectin群での抗NP力価は、対応する裸のpDNA群でのものよりも8倍まで高かった。
【0113】
実施例4.
Vaxfectinは、種々のプラスミドDNAにコードされた抗原に対する抗体産生を増強し、そしてTH1型免疫応答を促進する
本実施例の目的は、種々のモデル抗原と処方された場合のGAP-DMORIE:共脂質(例えば、Vaxfectin)のアジュバント効果を示すこと、そしてGAP-DMORIE:共脂質を含むpDNA処方物に対する免疫応答をさらに特徴付けることである。
【0114】
免疫および血清収集
拘束した覚醒しているマウスに、A/PR/8/34 NP(VR4700)コードするpDNA、鶏卵リゾチーム(HEL、VR5900)コードするpDNA、E.coli LacZ(β−gal、VR1412)コードするpDNA、マウスId/ヒトFc(38C13(ヒトIgG1定常領域に融合されたマウスリンパ腫細胞株)由来の免疫グロブリン可変領域、VR1623)コードするpDNA、またはヒト第IX因子(VR1904)をコードするpDNA 5μgを、Vaxfectin(50μl)を含むかまたはVaxfectinを含まないPBS中に調製して与えた。8〜10週齢の雌性マウスの大腿直筋に注射した。マウスに、同じ用量および処方物を用いて3週目にブーストした。1回目の注射の前、ブーストの1日前、そして1回目の注射後6週目に、静脈叢からマウスから採血した。
【0115】
IgG抗体ELISA
抗体力価を以下によって決定した:1ウェルあたり50μlのBBS(89mMのホウ酸、90mM NaCl(pH8.3))中の、0.035μgインフルエンザ核タンパク質(組換えバキュロウイルス抽出物から精製)、0.25μg鶏卵リゾチーム(HEL, Sigma, St. Louis, MO)、0.25μg E.Coli β−ガラクトシダーゼ(β-gal, Sigma, St. Louis, MO)、2.2μgマウスId(Southern Biotech, Birmingham, AL)または0.3μgヒト第IX因子(Calbiochem, La Jolla, CA)で、96ウェルの1/2領域フラットウェルマイクロタイタープレート(Corning/Costar, Inc., Corning, NY)をコートすること。プレートを4℃で一晩インキュベートし、次いでBBST(0.1% Tween 20を含むBBS)で4回洗浄した。
【0116】
NPでコートしたウェルをNPアッセイ緩衝液(BBS中5%脱脂乳)100μlでブロックし、そして他のすべてのプレートのウェルを、BSAアッセイ緩衝液(BBS中1%ウシ血清アルブミン)100μlで室温で1時間ブロックした。アッセイ緩衝液中の血清の2倍系列希釈物(1:25で始まる)を調製し、そして50μlアリコートを各ウェルに添加した。室温で2時間のインキュベーションおよび4回の洗浄の後、アッセイ緩衝液中に1:5000で希釈したアルカリホスファターゼ結合体化ヤギ抗マウスIgG-Fc(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)を、50μl/ウェルで添加した。このプレートを室温で2時間インキュベートし、4回洗浄し、そして1ウェルあたり50μlのp-NPP基質(50mM炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.8)および1mM MgCl2中の、1mg/mlのp−ニトロフェニルホスフェート、Calbiochem, La Jolla, CA)を添加した。室温で1.5時間後に、405nmでの吸光度を読み取った。力価は、最終希釈の逆数であり、シグナルは、採血前のサンプルのシグナルの2倍である。
【0117】
抗原特異的IgG1およびIgG2aのELISA
アルカリホスファターゼに結合体化したマウスサブアイソタイプ特異的モノクローナル抗体をスタンダードを用いて事前に力価決定して、等量のスタンダードについて等しい吸光度値を得る希釈を決定した。力価決定のために、BBS中の親和性精製したヤギ抗マウスκ抗血清0.1μg/50μl/ウェルで、4℃でプレートを一晩コートした。上記のNP ELISAについてと同様に、プレートを洗浄し、そしてブロックした。精製したマウスIgG1,κまたはIgG2a,κを系列希釈し、そして50μl/ウェルでプレートに添加した。室温で2時間インキュベートした後、アルカリホスファターゼ結合体化ラット抗マウスIgG1およびアルカリホスファターゼ結合体化ラット抗マウスIgG2a(Pharmingen, La Jolla, CA)を系列希釈し、そして洗浄したプレートに添加した。このアッセイを、NP抗体ELISAについてと同様に完了した。抗原特異的サブアイソタイプ血清力価の測定のためのアッセイは、全IgGレベルについて記載したのと同様であり、以下の改変を伴った:アルカリホスファターゼ結合体化抗マウスIgG1およびアルカリホスファターゼ結合体化抗マウスIgG2aを、それぞれ1:1500および1:200で希釈した。
【0118】
CTLの刺激
1回目の注射の後11〜12週目に安楽死させたマウスから脾臓を取り出し、そして2.5×107個の脾細胞を、総計5mlのRPMI 1640培地中で6ウェルプレートにて5日間培養した。この培地(他のように記述しない限り、すべての組織培養試薬は、Gibco BRL Life Technologies, Rockville, MDから入手した)には、L−グルタミンおよび25mM HEPESを含み、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、5.5×10-5Mのβ−メルカプトエタノールおよび10% FBS(10%培地)を補充し、1μgのNP147-155ペプチド(H-2Kd TYQRTRALV)またはβ−gal876-884ペプチド(H-2Ld TPHARIGL)を補充し、そして0.5U/mlの組換えマウスIL-2(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を補充した。
【0119】
51Cr放出アッセイ
抗原特異的溶解物を検出するために、P815細胞を0.15mCi Na251CrO4(NEN Life Science Products, Boston, MA)で標識し、そして1mlのRPMI 1640培地中の20μgのNP147-155ペプチドまたは50μgのβ-gal876-884ペプチドのいずれかでパルスするか、パルスしないで使用した。刺激した脾細胞の2連のアリコートを96ウェル丸底プレート(ICN Biomedicals, Aurora, OH)中で系列希釈し、そして標的細胞を最終容量200μl/ウェルにて、指定のエフェクター:標的比で添加した。プレートを遠心分離し、そして5% CO2とともに37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、各ウェル由来の100μlの上清を分析した。特異的溶解を、特異的溶解%=[(a−b)/(c−b)100として計算した。ここで、aは、エフェクターの存在下で放出された平均cpmであり、bは培地のみにおいてインキュベートした標的細胞から放出された平均cpmであり、そしてcは1% Triton-X 100の存在下で標的細胞から放出されたcpmである。
【0120】
サイトカインプロフィール
インビトロで抗原で再刺激した脾臓細胞のサイトカイン分泌プロフィールを決定するために、精製NP(組換えバキュロウイルス抽出物から精製)またはβ-galタンパク質(Sigma, St. Louis, MO)5μg/mlとともに、96ウェル平底培養プレート中に4×105細胞/100μl/ウェルで脾細胞を2連でプレートした。5% CO2とともに37℃で72時間の後、培養上清を収集した。培養上清中のサイトカインを、マウスIFN-γ ELISAキット(Pharmingen, La Jolla, CA)およびマウスIL-4 ELISAミニキット(Endogen, Woburn, MA)を製造業者の指示に従って用いて定量した。
【0121】
統計学的分析
統計学的分析を、両側スチューデントt検定を用いて実施した。
【0122】
抗原特異的IgG力価に対するVaxfectinの効果
3週目のブーストの1日前に収集した血清についての抗原特異的抗体力価および1回目の注射後6週目に収集した血清についての抗原特異的抗体力価を、図11に示す。pDNA/Vaxfectinでの免疫は、抗NP抗体および抗第IX因子抗体の3週の力価に対して中程度の効果を有し、そして抗マウスイディオタイプ抗体力価および抗HEL抗体の力価に対しては、もっと大きな効果さえ有した。
【0123】
Vaxfectinは、3週目の抗β-gal抗体の血清力価に対して、何の効果も有さなかった。ブースト免疫の3週後、pDNA/Vaxfectinを与えたマウスの力価は、5つの抗原すべてについて裸のpDNAを与えたマウスの力価に対して増加された。表3は、5つすべての抗原についての6週目の抗原特異的IgG応答を要約している。Vaxfextinは、pDNAに誘導された抗NP抗体の力価および抗HEL抗体の力価を、裸のpDNAに対してそれぞれ8倍および10倍増加させ、そして抗β−gal、抗第IX因子および抗マウスIdの力価を、裸のpDNAに対して3倍増加させた。
【0124】
【表3】

【0125】
CTL応答に対するVaxfectinの効果
筋肉内経路によるプラスミドDNAワクチン接種は、代表的には、コードされた抗原に対する強力なCTL応答を生じる(Ulmerら, 1993; Raz, 1996; Donnelly, 1997)。抗体応答をブーストするためにアジュバントとともにpDNAを処方する1つの起こりそうな結果は、より弱い細胞媒介性免疫応答を生じ得るTh2型応答の誘導である。pDNA誘導性CTL応答に対するVaxfectinの効果を決定するために、NP pDNAまたはβ-gal pDNAで免疫したマウス由来の脾臓を、ブースト注射の8〜9週後に収集した。
【0126】
NPペプチドまたはβ-galペプチドとともに5〜6日間培養した脾細胞を、NPペプチドまたはβ-galペプチドでパルスしたP815標的細胞のCTL溶解についてアッセイした。パルスしていないP815細胞を使用して、非特異的溶解を検出した。ペプチドでパルスした標的細胞の溶解%についての抗原特異的CTLエフェクター力価測定曲線を、図12に示す。NP pDNAおよびβ-gal pDNAの両方についての結果は、Vaxfectinを用いてのpDNAの処方は、試験したいかなるのエフェクター:標的比でも、CTL応答に対して何ら有意な効果を有さない(すべてのE:T比にて、p>0.05)。
【0127】
IgG1抗体力価およびIgG2a抗体力価に対するVaxfectinの効果
筋肉内pDNA免疫により誘導されるTヘルパー1(Th1)型免疫応答は、IgG2aサブアイソタイプに対して応答性のB細胞において、抗体重鎖の変換を促進する(Razら、1996)。従って、抗原特異的IgG2aの産生は、抗原特異的IgG1よりも多い。pDNAワクチンにおけるアジュバントの使用は、免疫応答を質的に変化させ得、IgG1またはIgG2aのいずれかのより多い産生をもたらす。種々の抗原プラスミドDNAを用いて処方した場合の抗原特異的血清IgG2aに対する抗原特異的血清IgG1の相対的比率に対するVaxfectinの効果を決定するために、6週目の血清を、抗原特異的サブアイソタイプ力価について分析した。
【0128】
図13aに示されるように、異なる抗原をコードする裸のpDNAでの免疫は、各抗原に対して独特にサブアイソタイププロフィールを生じる。IgG1およびIgG2aの相対的比率は異なる抗原について変化したが、IgG2aが産生された優勢なサブアイソタイプであり、これはTh1型免疫応答と一致した。5つすべてのモデル抗原pDNAを用いて処方したVaxfectinは、抗原特異的抗体サブタイプの両方の増加をもたらす(表4)。抗原特異的IgG1およびIgG2aにおける増加は、モデル抗原のうちの4つについてVaxfectin処方したpDNAについてほぼ同じ大きさであった。裸のpDNAを用いて得た力価と比較した場合、Vaxfectinを用いてpDNAを処方することは、抗HEL IgG1力価を9倍、そしてIgG2a力価を11倍増加させた。
【0129】
Vaxfectinは、抗β−gal、抗マウスId/ヒトFCおよび抗第IX因子のIgG1力価を裸のDNAに対して2〜5倍増加させ、そして抗β-gal、抗マウスId/ヒトFCおよび抗第IX因子のIgG2a力価を裸のpDNAに対して2〜4倍増加させた。NP pDNAを用いて処方したVaxfectinは、平均抗NP IgG1抗体力価を裸のpDNAに対して15倍増加させた。しかし、平均抗NP IgG2a抗体力価は、3倍しか増加させなかった。従って、pDNA/Vaxfectinの免疫により惹起されるIgG1およびIgG2aの相対的比率は、裸のpDNAを使用してマウスを免疫する場合に生じる比率と同様のままであり、ただし、NP pDNA/Vaxfectinの場合を除く(図13b)。この場合において、抗NP IgG2aの抗体力価の増加よりもかなり大きい抗NP IgG1の抗体力価の増加が存在する。Vaxfectinを用いて処方したpDNAのすべてについて、抗原特異的IgG2aの力価は抗原特異的IgG1よりも高く、これは、Th1型応答を示唆した。
【0130】
【表4】

【0131】
サイトカインプロフィールに対するVaxfectinの効果
抗原特異的抗体サブアイソタイプ分析は、Vaxfectin処方したpDNAを用いて誘導される応答は、裸のpDANに関して、Th1型応答であることを示唆する。Vaxfectinが抗原特異的インビトロ想起(recall)応答におけるTヘルパー(Th)サイトカインプロフィールに対して何の効果も有さないことを確認するために、Vaxfectinを用いてかまたはVaxfectinを用いずに処方した、NP pDNAまたはβ-gal pDNAで免疫したマウスの群由来の脾臓を、ブースト注射の8〜9週間後に収集した。脾細胞を培養し、そしてNPタンパク質またはβ−galタンパク質で刺激した。培養した細胞から収集した上清を、INF−γおよびインターロイキン−4(IL−4)の産生についてアッセイした。Vaxfectinを用いてかまたは用いずに処方した、NPプラスミドDNAまたはβ−galプラスミドDNAでの免疫によって、すべての群の免疫したマウス由来の脾細胞培養物においてIFN−γ産生がもたらされた(図14)。低レベルのIL-4が、すべての群のマウスにて産生されたが、しかしIFN−γが産生された優勢なサイトカインであり、このことは、Th1に偏った応答を示唆した。
【0132】
要約すると、上記の実施例は、核酸ワクチンのための独特のカチオン性脂質をベースとする処方物の旺盛なアジュバント効果を示す。体液性応答の刺激は、核酸をベースとするワクチンを代表する強力な細胞溶解性応答を減少させることなく達成され得る。このアジュバント活性は、マウスおよびウサギの両方において観察され、これによって、他の動物における薬学的適用が暗示され、ならびに、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の核酸をベースとする調製における潜在的利益が提供される。抗体応答のGAP-DMORIE/共脂質(例えば、Vaxfectin)媒介性増強が、単回の片側筋肉内注射の後に容易に観察された。これは、単回注射ワクチンが非常に望ましい農場動物の免疫に重要である。なぜなら、放牧中の動物の駆集めは高価であり、そしてストレスに起因して産生の損失を生じ得るからである(Beard, C.W.ら、Nat. Biotechnol 16(13), 1325~1328 (1998))。
【0133】
実施例5.
ヒト投与
免疫原性組成物(赤血球凝集素(HA)をコードするpDNAを、DPyPEとの1:1(モル:モル)混合物として処方されたGAP-DMORIEを含むアジュバントと混合して含む)を、上記の方法に従って調製する。pDNA/アジュバントモル比は、4:1である。生理学的食塩水中0.1mg、0.5mg、1.0mgまたは2.5mgのpDNA(アジュバントとの複合体として)の3回の注射を、4週間間隔で交互の三角筋にヒトに注射する。血清をそのヒトから取り出し、そしてHA抗体のレベルを、上記のように標準的ELISAアッセイを使用して、系列希釈によって決定する。このHA抗体に対するヒト被検体の免疫応答を、GMT抗体力価の値により示されるように、誘導する。
【0134】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明と共に記載されてきたが、上記の説明は、本発明の範囲(添付の特許請求の範囲により規定される)を例示するために意図されており、本発明の範囲を限定するためには意図されないことが、理解されるべきである。他の局面、利点、および改変は、上記の特許請求の範囲の範囲内にある。
本発明の先の局面および利点は、以下の図面および上記の詳細な説明を参照して、当業者に容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】図1は、プラスミドDNAのダイアグラムを例示する。各ベクターは、複製のpUC19起点およびE. coli細菌におけるプラスミド増殖のためのカナマイシン耐性遺伝子を有する。CMV=ヒトサイトメガロウイルスプロモーターおよびエンハンサー;CMV-A=ヒトサイトメガロウイルスイントロンA;mRGB=改変ウサギβ−グロビンポリアデニル化シグナル;BGH=ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル。
【0136】
【図2】図2は、サイトフェクチンGAP-DMORIEならびに共脂質DOPEおよびDPyPEについての化学構造を、構造的に関連したサイトフェクチンとともに例示する。
【0137】
【図3】図3は、サイトフェクチンの構造要素が、投与の際に抗体刺激のレベルを決定することを示す棒グラフである。マウスをインフルエンザ核タンパク質(NP)をコードするpDNAを使用して免疫化し、この核タンパク質は、DOPE共脂質との1:1(mol:mol)として処方される、種々のサイトフェクチン(横軸に示される)と複合体化される。試験群(1つの群当たり5匹の動物)を、「0」日目および3週間目(追加免疫注射)に、大腿直筋において脚当たり50μl 生理学的食塩水中の5μgのpDNAを、単独またはサイトフェクチン:共脂質補助剤の複合体として、注射した。6週間後(追加免疫後3週間)、血清を動物から取り出し、NP抗体力価を、ELISAを使用する一連の希釈によって決定した。サイトフェクチン:共脂質増強を、(i)サイトフェクチン−増強トランスフェクション群からの幾何平均力価(GMT)の、(ii)pDNAトランスフェクションのみからのGMT(動物の等価なコントロール群を使用する)に対する比を使用して評価した。
【0138】
【図4】図4は、補助組成物においてDOPEの代わりに共脂質としてDPyPEを使用することによるサイトフェクチンに対する抗NP抗体応答の示差的増強を示す棒グラフである。マウスを、図2に関連して、上記に記載されるように免疫化および分析した。
【0139】
【図5】図5は、pDNA-Vaxfectinワクチン接種用量応答および時間経過を示す棒グラフである。MALB/cマウス(8−10週齢)は、筋肉当たり50μlPBS中の1μg、5μg、または25μgの裸のVR4700プラスミド(インフルエンザ核タンパク質(NP)をコードする)の両側での筋肉内注射を受けた(時点当たり、2μg、10μg、50μgの総pDNA)。第2のセットのマウスは、4:1のモル比の一定のpDNA:カチオン性脂質を使用するVaxfectinとともに処方された同じpDNA用量を受けた。追加免疫注射を21日目および42日目(矢印)に与えられた。線は、平均抗NP抗体力価+S.E.M.を表す(群当たりn=5匹のマウス)。
【0140】
【図6】図6Aおよび6Bは、Vaxfectin処方の最適化を示す。コントロールマウスは、筋肉当たり50μlPBS中の5μgの裸のVR4700プラスミド(インフルエンザ核タンパク質(NP)をコードする)の両側での筋肉内注射を受けた(白色の棒)。試験群は、示されたpDNA:カチオン性脂質モル比でVaxfectinとともに処方された当量のpDNA用量を受けた。追加免疫注射は初期の注射と同一であり、21日目に与えた。総NP−特異性IgG抗体力価を、42日目(追加免疫後3週間)の血清サンプルから決定した。棒は、2つの別個の実験からの平均抗NP力価を表す(群当たりn=5〜15マウス)。
【0141】
【図7】図7は、Vaxfectinによって誘導される上昇した抗体力価の持続期間を示す。マウスは、筋肉当たり50μlPBS中の5μgの裸のVR4700プラスミド(インフルエンザ核タンパク質(NP)をコードする)、または4:1のpDNA:カチオン性脂質のモル比でVaxfectinとともに処方された同じ量のpDNAのいずれかの両側での筋肉内注射を受けた。同一の追加免疫を21日目(A)、または21日目および3ヶ月後(B)のいずれかで与えた(矢印)。総NP−特異性IgG抗体力価を種々の時点での血清サンプルから決定した。線は、平均抗NP力価およびS.E.M.を表す(群当たりn=4〜10匹のマウス)。
【0142】
【図8】図8A、8Bおよび8Cは、Vaxfectinとともに処方されたpDNAが、裸のpDNAを用いて誘起された応答と同程度に強力な細胞障害性Tリンパ球(CTL)応答を誘起することを示す。(A)マウスは、0日目、21日目、42日目および63日目に、筋肉当たり50μl PBS中の5μgのVR4700プラスミド(インフルエンザ核タンパク質(NP)をコードする)の両側での筋肉内注射を受けた。第2のセットのマウスは、示されたpDNA:カチオン性脂質のモル比においてVaxfectinとともに処方された同じpDNA用量を受けた。(B)マウスは、0日目、21日目、42日目および63日目に、筋肉当たり50μlPBS中の1μgまたは25μgのVR4700プラスミドの両側での筋肉内注射を受けた。第2のセットのマウスは、4:1のpDNA:カチオン性脂質のモル比においてVaxfectinとともに処方された同じpDNA用量を受けた。(C)マウスは、0日目、および21日目に、筋肉当たり50μlの150mM Nap中の5μgの裸のVR4700プラスミドの両側での筋肉内注射を受けた。第2のセットのマウスは、示されたpDNA:カチオン性脂質のモル比においてVaxfectinとともに処方された同じpDNA用量を受けた。第2のセットのマウスは、4:1のpDNA:カチオン性脂質のモル比においてVaxfectinとともに処方された同じpDNA用量を受けた。全てのCTLアッセイを、最初の注射後4〜4.5ヵ月で実施した。線は、平均特異的溶解を示す(群当たりn=4〜5匹のマウス)。
【0143】
【図9】図9は、筋肉内でのβ−ガラクトシダーゼ(β-Gal)発現に対するVaxfectinの効果を示す。マウスは、β−ガラクトシダーゼをコードする5μgの裸のVR1412プラスミドの筋肉内注射を受けた。第2の群のマウスは、4:1のpDNA:カチオン性脂質のモル比でVaxfectinとともに処方された5μgのVR1412を注射された。示された時点において、四頭筋を収集し、そしてβ-Gal活性についてアッセイした。線は、筋肉当たりの平均レポーター遺伝子発現±S.E.M.を示す(群当たりn=10〜20の筋肉)。
【0144】
【図10】図10は、Vaxfectinが、ウサギにおいて体液性免疫応答を増強することを示す。インフルエンザ核タンパク質(NP)をコードするVR4700プラスミドDNAのi.m.注射後のウサギ血清における総IgG抗体力価を示す。ニュージーランド白ウサギ(5〜6月齢)は、150μgのVR4700プラスミド単独か、または300μl PBS中のVaxfectin(pDNA:カチオン性脂質=4:1モル比)とともに処方されたVR4700プラスミドの単一の片側の注射を受けた。動物の1つの群(三角)において、pDNAおよびpDNA-Vaxfectinの両方を、針およびシリンジを使用して注射した。ウサギの他の群(丸)において、pDNAおよびpDNA-Vaxfectinを、BioJector針無し注射デバイスを使用して、注射した。42日目に(矢印)、ウサギを、対側性四頭筋に同一の追加免疫注射を与えた。抗NP力価を免疫化の前に、回収された血清サンプルから、3週目、6週目、7週目、9週目および13週目に決定した。線は、平均抗NP力価+S.E.M.を示す(群当たりn=4匹のウサギ)。
【0145】
【図11】図11A、11B、11C、11Dおよび11Eは、Vaxfectinが、5つの異なるpDNAコードモデル抗原に対して抗原特異性血清抗体応答を増強することを示す。BALA/cマウスを、5μgのpDNA±Vaxfectinの各大腿直筋への、0週間および3週間での注射により免疫化した。示されるデータは、3週目および6週目での追加免疫の前の1日に回収された血清に対する平均抗原特異的IgG力価である(全ての群に対してn=20、裸のNP pDNAに対してn=19;NP pDNA/Vaxfectinに対してn=30であるNP、および裸のpDNAに対するn=19であるマウスIdを除く)。A)抗インフルエンザNP IgG力価;B)抗インフルエンザHEL IgG力価;C)抗β-gal IgG力価;D)抗マウスId IgG力価;E)抗第IX因子IgG力価。*裸のpDNAを用いて得られた力価からの統計的に有意な差、p≦0.05。
【0146】
【図12】図12A、12B、12C、および12Dは、サイトフェクチンとともに処方されたpDNAを用いる免疫化が、抗原誘導ペプチドでコーティングされた標的細胞の抗原特異的CTL溶解を誘導することを示す。BALA/cマウスを、5μgのpDNA±Vaxfectinの各大腿直筋への、0週目および3週目での注射により免疫化した。初期の免疫化に続いて、11〜12週目に脾臓を回収し、そして1μM NP147-155またはβ-gal876-884ペプチドおよび0.5U/molの組換えネズミIL-2を用いて刺激した。示されたデータは、各群における5つの脾臓についての平均5%溶解である。同様な結果が、NPおよびβ-gal特異性CTLの両方についての第2のアッセイにおいて得られた。A)NP147-155でパルス化されたP815標的細胞;B)パルス化されていないP815標的細胞;C)β-gal876-884でパルス化されたP815標的細胞;D)パルス化されていないP815標的細胞。
【0147】
【図13】図13Aおよび13Bは、5つの異なるpDNAコードモデル抗原を用いて誘導された抗原特異的抗原Th1型アイソタイププロフィールを示す。抗原特異的サブアイソタイプ血清力価は、IgG1およびIgG2a力価の合計のパーセンテージとして示されている(全ての群に対してn=20、裸のNP pDNAに対してn=29;NP pDNA/Vaxfectinに対してn=30であるNP、および裸のpDNAに対するn=19であるマウスIdを除く)。A)裸のpDNA免疫化に続く6週目でのIgG1よおびIgG2aの%;B)裸のpDNA/Vaxfectin免疫化に続く6週目でのIgG1よおびIgG2aの%。
【0148】
【図14】図14Aおよび14Bは、pDNA/Vaxfectin免疫化マウス由来の脾細胞のYh1型サイトカイン分泌プロフィールを示す。脾臓を、最初の免疫化に続いて11〜12週目に収集し、5μg/mlの精製NPまたはβ-galタンパク質で72時間刺激した。培養上清中のIFN-γおよびIL-4をELISAによって決定した。示されたデータは、刺激されていない脾臓細胞(±SEM)の培養からのサイトカイン濃度を差し引いた、刺激された脾臓細胞の培養からのサイトカインの平均濃度である。A)裸のpDNAおよびpDNA/サイトカイン免疫化マウス由来の抗原特異的IFN-γ応答(各群に対してn=10)。B)裸のpDNAおよびpDNA/Vaxfectin免疫化マウス由来の抗原特異的IL-4応答(各群に対してn=10)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GAP−DMORIEおよび一つ以上の共脂質を含むアジュバント組成物。
【請求項2】
前記共脂質が中性脂質である、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項3】
前記共脂質がホスファチジルエタノールアミンである、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項4】
前記ホスファチジルエタノールアミンが、DOPE、DPyPE、およびDMPEからなる群から選択される、請求項3に記載のアジュバント組成物。
【請求項5】
前記ホスファチジルエタノールアミンが、DOPEである、請求項4に記載のアジュバント組成物。
【請求項6】
前記ホスファチジルエタノールアミンが、DPyPEである、請求項4に記載のアジュバント。
【請求項7】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が約9:1〜約1:9のモル比において存在する、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項8】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が約4:1〜約1:4のモル比において存在する、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項9】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が約2:1〜約1:2のモル比において存在する、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項10】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が約1:1のモル比において存在する、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項11】
前記GAP-DMORIEおよびDPyPEが約2:1〜約1:2のモル比において存在する、請求項6に記載のアジュバント。
【請求項12】
前記GAP-DMORIEおよびDPyPEが約1:1のモル比において存在する、請求項6に記載のアジュバント。
【請求項13】
免疫原ならびにGAP-DMORIEおよび一つ以上の共脂質を含む、免疫原性組成物。
【請求項14】
前記免疫原が、免疫原コードポリヌクレオチドを含む、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記免疫原コードポリヌクレオチドが、DNA、RNA、または核酸オリゴマーである、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記免疫原コードポリヌクレオチドが、線状ポリヌクレオチドまたは環状ポリヌクレオチドである、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記免疫原コードポリヌクレオチドが、プラスミドDNAの全てまたは一部である、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記共脂質が、DOPE、DPyPE、およびDMPEからなる群から選択される、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記共脂質が、DOPEである、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記共脂質が、DPyPEである、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が、約9:1〜約1:9のモル比において存在する、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が、約4:1〜約1:4のモル比において存在する、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が、約2:1〜約1:2のモル比において存在する、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が、約1:1のモル比において存在する、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記GAP-DMORIEおよびDPyPEが、約2:1〜約1:2のモル比において存在する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記GAP-DMORIEおよびDPyPEが、約1:1のモル比において存在する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
脊椎動物を免疫化するための方法であって、該方法は、免疫原コードポリヌクレオチドを一つ以上含む免疫原性組成物およびGAP-DMORIEを含むアジュバント組成物を該脊椎動物の組織または腔内に投与する工程を包含し、ここで免疫原が、該免疫原に対する免疫応答を生成するのに充分な量で該脊椎動物内で発現される、方法。
【請求項28】
前記免疫原性組成物が、さらに1つ以上の共脂質を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫原コードポリヌクレオチドが、DNA、RNA、または核酸オリゴマーである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫原コードポリヌクレオチドが、プラスミドDNAの全てまたは一部である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記共脂質が、DOPE、DPyPE、およびDMPEからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記共脂質が、DOPEである、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記共脂質が、DPyPEである、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が、約9:1〜約1:9のモル比において存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が、約4:1〜約1:4のモル比において存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が、約2:1〜約1:2のモル比において存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記GAP-DMORIEおよび前記共脂質が、約1:1のモル比において存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記GAP-DMORIEおよびDPyPEが、約2:1〜約1:2のモル比において存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記GAP-DMORIEおよびDPyPEが、約1:1のモル比において存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記脊椎動物が、哺乳動物である、請求項27に記載の方法。
【請求項41】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記免疫原性組成物が、薬学的組成物である、請求項28に記載の方法。
【請求項43】
請求項28に記載の方法であって、ここで前記免疫原が、細菌ポリペプチド、真菌ポリペプチド、寄生虫ポリペプチド、アレルゲンポリペプチド、腫瘍特異的ポリペプチド、免疫原性フラグメント、誘導体、またはそのアナログからなる群から選択される、方法。
【請求項44】
請求項28に記載の方法であって、ここで前記組織が、筋肉、皮膚、脳組織、肺組織、肝臓組織、脾臓組織、骨髄組織、胸腺組織、心臓組織、リンパ組織、血液組織、骨組織、結合組織、粘膜組織、膵臓組織、腎臓組織、胆嚢組織、胃組織、腸組織、精巣組織、卵巣組織、子宮組織、膣組織、直腸組織、神経系組織、眼組織、腺組織および舌からなる群から選択される、方法。
【請求項45】
請求項28に記載の方法であって、ここで前記腔が、肺、口、鼻腔、胃、腹膜、腸、心房、静脈、動脈、毛細管、リンパ管、子宮、膣、直腸、および眼腔からなる群から選択される、方法。
【請求項46】
前記腔が、粘膜表面を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項47】
前記組織が、筋肉である、請求項28に記載の方法。
【請求項48】
前記組織が、骨格筋である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記投与が、静脈内投与である、請求項28に記載の方法。
【請求項50】
請求項28に記載の方法であって、ここで前記投与が、筋肉内投与、気管内投与、鼻腔内投与、経皮性投与、皮膚間投与、皮下投与、眼内投与、膣投与、直腸投与、腹膜内投与、腸管内および吸入投与からなる群から選択される経路によるものである、方法。
【請求項51】
請求項28に記載のいずれか1つの方法であって、ここで前記投与が、粒子加速器、ポンプ、皮内アプリケータ、微粒子銃注射器、圧気注射器、スポンジデポー、丸剤および錠剤からなる群から選択されるデバイスによって媒介される、方法。
【請求項52】
前記投与が、Biojector(登録商標)2000によって媒介される、請求項28に記載の方法。
【請求項53】
細菌感染と関連する予防処置または治療処置を哺乳動物に提供するための方法であって、該方法は、該細菌感染と関連する、免疫原コードポリヌクレオチドを1つ以上含む免疫原性組成物ならびにGAP-DMORIEおよび共脂質を含むアジュバント組成物を該哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで免疫原が、該免疫原に対する免疫応答を生成するのに充分な量で該哺乳動物内で発現される、方法。
【請求項54】
前記共脂質が、DPyPEである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ウイルス感染に関連する予防処置または治療処置を哺乳動物に提供するための方法であって、該方法は、該ウイルス感染と関連する、免疫原コードポリヌクレオチドを1つ以上含む免疫原性組成物ならびにGAP-DMORIEおよび共脂質を含むアジュバント組成物を該哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで免疫原が、該免疫原に対する免疫応答を生成するのに充分な量で該哺乳動物内で発現される、方法。
【請求項56】
前記共脂質が、DPyPEである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
細胞集団の異常増殖に関連する予防処置または治療処置を哺乳動物に提供するための方法であって、該方法は、該細胞集団の異常増殖と関連する、免疫原コードポリヌクレオチドを1つ以上含む免疫原性組成物ならびにGAP-DMORIEおよび共脂質を含むアジュバント組成物を該哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで免疫原が、該免疫原に対する免疫応答を生成するのに充分な量で該哺乳動物内で発現される、方法。
【請求項58】
前記細胞集団の異常増殖が癌と関連する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記共脂質がDPyPEである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
薬学的キットであって、該キットは以下:
(a)インビボにおいて脊椎動物細胞内で免疫原を作動可能にコードする、1ng〜30 mgの免疫原コードポリヌクレオチドを保有する、容器;ならびに
(b)GAP-DMORIEおよび共脂質を含む、アジュバント組成物、を備え、それにより該免疫原が脊椎動物を予防的または治療的に処置するために有効な量で提供される、薬学的キット。
【請求項61】
請求項60に記載の薬学的キットであって、ここで(b)が(a)の前記容器内にある、キット。
【請求項62】
請求項60に記載の薬学的キットであって、ここで(b)が(a)とは別個の容器内にある、キット。
【請求項63】
投与手段をさらに含む、請求項60に記載の薬学的キット。
【請求項64】
前記共脂質がDPyPEである、請求項60に記載の薬学的キット。
【請求項65】
前記GAP-DMORIEおよびDPyPEが、約2:1〜約1:2のモル比で存在する、請求項64に記載の薬学的キット。
【請求項66】
前記GAP-DMORIEおよびDPyPEが、約1:1のモル比で存在する、請求項64に記載の薬学的キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−176954(P2007−176954A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75889(P2007−75889)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【分割の表示】特願2000−607666(P2000−607666)の分割
【原出願日】平成12年3月24日(2000.3.24)
【出願人】(500225147)バイカル インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】