説明

ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜およびその製造方法

【課題】
簡素なプロセスで、均質で高透水性能を有するポリフッ化ビニリデン系平膜を提供することを目的とする。
【解決手段】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質膜において、該多孔質膜の表面及び断面方向に平均孔径が0.01〜10μmの細孔を有し、純水透過係数が1×10−9/m・s・Pa以上である、スキン層を含まないポリフッ化ビニリデン系多孔質膜であって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を5〜35重量%含む溶液を、基材の片面に塗布した後、平均粒子径が1〜30μmの水滴が均一に分散している気相と接触させてポリフッ化ビニリデン系樹脂を半凝固させ、次いで、該樹脂溶液を塗布した基材を水中に浸漬して完全凝固させることにより製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の精密濾過用途に好ましく用いられる親水性または疎水性のポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する多孔質平膜、及びその製造方法に関する。
【0002】
近年、高分子化合物を材料とした多孔質膜に関する技術はめざましい進歩を遂げており、特に孔が連通孔の形態を有している多孔質膜は各種フィルター要素としてその利用が拡大している、中でも、ポリフッ化ビニリデン膜は、水の殺菌において広範に使用されるオゾンを含む酸化環境や、浄水処理で殺菌や膜のバイオファウリング防止の目的で用いられる次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤にも耐性を有し、更に、ほとんどの無機酸および有機酸、脂肪族および芳香族炭化水素、アルコールならびにハロゲン化溶媒による作用に対しても耐性を有する。
【0003】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いた平膜の製造方法にはいくつかの技術が開示されているが、これらのほとんどが、良溶媒に溶解したポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を、ガラス板上にキャストして成形した後、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の非溶媒を含む液体に接触させて非溶媒誘起相分離により多孔構造を形成させる湿式溶液法である。
【0004】
係る従来の湿式溶液法では、水を主成分とする凝固液を使用するが、この場合には凝固液と接触した膜表面のみが急速に凝固する結果、表面にスキン層を生じ、膜の断面方向の凝固が遅れて、スキン層とサポート層からなるいわゆる非対称構造となる。スキン層は物質透過の際の抵抗となり、またサポート層には凝固時に生ずるマクロボイドが存在し機械的強度を下げる結果となっていた。
【0005】
これらの問題を解決するものとして、例えば、特許文献1には、ポリフッ化ビニリデン樹脂と有機液状体及び無機微粉体を混合した後、溶融成形し、次いでかかる成形物より有機液状体および無機微粉体を抽出することを特徴とする多孔膜の製造方法において、機械的強度に優れた均質な多孔構造を有する多孔膜が得られることが開示されている。しかし、この方法は、成形された膜から無機微粉体を抽出させるために、長時間アルカリ溶液に浸漬する必要があるため、工程負荷が問題となる虞がある。
【0006】
また、特許文献2には、ポリフッ化ビニリデン樹脂、該樹脂の良溶媒、該樹脂の貧溶媒、および親水性樹脂から成る製膜原液を流延し、大気ないし水蒸気を含む気体中にて凝固相分離を進行させ、次いで洗浄浴にてポリフッ化ビニリデン樹脂以外の成分を除去する製造方法が開示されている。該製造方法により得られた膜は、表面および組織内に空隙率の高い空孔群を有するものであり、高い透水性を有する。しかし、この方法では、相分離を誘起進行させるために、5分程度の大気ないし水蒸気との接触時間要するため、工程負荷になる虞がある。
【0007】
【特許文献1】特開平3−215535号公報
【特許文献2】特開昭60―97001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような問題点に鑑み、簡素なプロセスで、均質で高透水性能を有するポリフッ化ビニリデン系平膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は
(1)ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質膜において、該多孔質膜の表面及び断面方向に平均孔径が0.01〜10μmの細孔を有し、純水透過係数が1×10−9/m・s・Pa以上である、スキン層を有しないポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜である。
また、(2)に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を5〜35重量%含む溶液を、基材の片面に塗布した後、平均粒子径が1〜30μmの水滴が均一に分散している気相と接触させてポリフッ化ビニリデン系樹脂を半凝固させ、次いで、該樹脂溶液を塗布した基材を水中に浸漬して完全凝固させることを特徴とする、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜の製造方法である。
また、(3)に、気相との接触が、気相中に樹脂塗布面を暴露させることによって行われることを特徴とする、(2)記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜の製造方法である。
また、(4)に、気相との接触が、気相を樹脂塗布面に吹き付けることによって行われることを特徴とする(2)記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により、簡素なプロセスで均質で高透水性能を有するポリフッ化ビニリデン系平膜およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂をポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒に溶解させた溶液を用いる。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデンホモポリマーおよび/またはフッ化ビニリデン共重合体を含有する樹脂のことである。複数種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有していても構わない。フッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレンおよび三フッ化塩化エチレンからなる群から選ばれた1種類以上とフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。このなかで製膜性、化学的耐久性、コストの点からフッ化ビニリデンホモポリマーがより好ましく用いられる。
【0012】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿酸、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらの溶媒群の中から選ばれる少なくとも1種を用いるが、溶解力が大きく、水溶性である、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドが好ましく用いられる。
【0013】
また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の非溶媒を添加することが好ましい。非溶媒は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解しないものであり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の凝固の速度を制御して孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール類及びこれらの混合物を用いることができる。なかでも廃水処理や価格の点から水、メタノールが好ましい。
【0014】
更に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液には、無機微粒子を添加することが好ましい。無機微粒子は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒との親和性が高いものが好ましい。無機微粒子としては、表面が疎水化処理された炭酸カルシウム微粒子または二酸化ケイ素微粒子が好ましい。無機微粒子は、孔径5μm以上のマクロボイドの形成を抑制し、均一な孔径の孔を形成するように作用する。
【0015】
無機微粒子の粒径は、平均粒径が0.01〜2μmであることが好ましく、0.15〜2μmであることがより好ましい。孔の形成には、粒径が小さいほど好ましいが、平均粒径が0.01μm未満のものは価格が高く、コストの高騰を招く虞がある。平均粒径が2μmを超えると、孔径の大きな孔が形成され、十分な濾過性能が得られない虞がある。
【0016】
また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液には、水溶性ポリマーを添加してもよい。水溶性ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン系多孔質膜に親水性を付与するように作用する。本発明に用いる水溶性ポリマーは前述した良溶媒および非溶媒と混和する必要がある。該ポリマーが水溶性であることにより、水洗浄により余分な水溶性ポリマーは膜から除去されやすく、また一方、膜に残った微量の水溶性ポリマーは本発明の膜に親水性を付与する。水溶性ポリマーとしては、ポリエーテル(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリビニルピロリドンが好ましく、これらの水溶性ポリマーの少なくとも1種を用いるが、必要に応じては性状の異なる同種または異種のポリマーを混合して用いてもよい。なかでも、粘度などの点でポリビニルピロリドンが特に好ましく用いられる。
【0017】
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液は、良溶媒に5〜35重量%の濃度範囲でポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解した樹脂溶液であり、他に非溶媒、無機微粒子を含むことが好ましい。ポリフッ化ビニリデンが5重量%未満では膜強度が弱く製膜できない虞があり、35重量%をこえると樹脂溶解性が損なわれるか、粘度が高すぎて製膜が困難である。非溶媒、無機微粒子はそれぞれ2〜10重量%の濃度範囲で添加することが好ましく、2〜5重量%であることがより好ましい。非溶媒、無機微粒子が2重量%未満では添加効果が発現されず、10重量%を超えると該樹脂溶液が相分離したり、ゲル化したりする。
【0018】
また、添加する水溶性ポリマーの濃度範囲は、2〜30重量%の濃度範囲で添加することが好ましい。水溶性ポリマーが2重量%未満では添加効果が発現されず、30重量%を超えると該樹脂溶液が相分離したり、ゲル化したりする。また、化学的耐久性にも影響がある。
【0019】
本発明のポリフッ化ビニリデン多孔質平膜の製造方法においては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を調整した後、該樹脂を基材の片面に塗布し、気相中の水滴と接触させてポリフッ化ビニリデン系樹脂を半凝固させ、次いで、該樹脂溶液を塗布した基材を水中に浸漬して完全凝固させ成形するものである。
【0020】
基材としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、綿、絹など有機繊維からなる織物、編物、不織布等の多孔質基材や、ガラス繊維、金属繊維など無機繊維からなる織物、編物等の多孔質基材を用いることができる。この中でも伸縮性、コストの点から、特に有機繊維からなる多孔質基材が好ましい。
【0021】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を基材に塗布する方法としては、例えば、フローティングナイフコータ、ロールオンナイフコータ、コンマコータ、リバースコータ、リップコータ、ロールコータ、ダイコータなどを用いた方法を挙げることができる。なかでも、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を均一な厚みで安定して塗布可能であるという理由から、ロールオンナイフコータ、コンマコータを用いることが好ましい。
【0022】
ポリフッ化ビニリデン系多孔質膜の厚みは20〜200μmであることが好ましい。該微多孔質膜の厚みが20μm未満であると十分な強度が得られない虞があり、200μmを超えると多孔質膜が硬くなり取り扱い性を損なう虞がある。
【0023】
次いで、基材上に塗布されたポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を、平均粒子径が1〜30μmの水滴が均一に分散している気相と接触させる。
ここで、水滴が均一に分散している気相とは、液状の水(H2O)が平均粒子径が1〜30μmの微小な滴となって空気中に均一に分散している雰囲気をいい、水が気体、すなわち水蒸気となって空気中に分散している雰囲気とは異なるものである。このような気相は、“mist”(ミスト、霧、もや)と表現されることも多い。水滴が均一に分散している気相は飽和蒸気状態であり、さらに気化しきれない水滴が気相中に分散する状態となる。その結果、該気相は、飽和蒸気状態を超える多量の水分を保持することができる。
【0024】
気相中に分散している水滴の平均粒子径は、1〜30μmであることが求められ、さらには1〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が1μm未満である水滴を、後述の好ましい温度範囲で作り出すことは困難である。平均粒子径が30μmを超えると、半凝固層の表面に水滴痕が残って、得られるポリフッ化ビニリデン系多孔質膜の品位が悪くなる虞がある。
【0025】
なお、気相中に分散している水滴の平均粒子径は、レーザー回折原理を応用した粒度分布測定装置を用いて測定することができる。レーザー回折原理を応用した粒度分布の測定法は、粒子に光を当てたときに粒子径に応じて変化する散乱光の強度パターンを応用したものである。
【0026】
前記気相は、水を霧化粒子化させて噴霧する装置を用いて調製することができる。このような装置としては、例えば、超音波式、二流体式噴霧式、遠心式などの水噴霧式加湿器を挙げることができる。なかでも、超音波振動により粒子径が小さな水滴を発生させることが可能な超音波式加湿器が好ましい。
【0027】
気相中に分散している水滴を所望の平均粒子径に調整するには、水噴霧式加湿器の種類と噴霧条件を調整すればよい。例えば、平均粒子径1〜10μmの水滴を発生させる場合は、超音波式噴霧器を用いることにより小粒子径の水滴を安定的に供給することができる。また、平均粒子径10〜30μmの水滴を発生させる場合は、二流体式噴霧式を用い、供給水量および圧搾空気の圧力を変化させて粒子径を調整することができる。遠心式噴霧器の場合は、水を遠心力で飛散させる回転板の回転数を調整することにより、平均粒子径10〜30μmの水滴を発生させることができる。
【0028】
前記気相の温度は、5〜50℃であることが好ましく、5〜30℃であることがより好ましい。温度が5℃未満であると、飽和蒸気圧が低く、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を半凝固させるのに十分な量の水分を保持できない虞がある。また、水の凝結が発生し、大きな水滴がポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に付着することにより、水滴痕が残って、得られるポリフッ化ビニリデン系多孔質膜の品位が悪くなる虞がある。温度が50℃を超えると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液に含まれる良溶媒の気化が大きく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面での凝固が不均一となり、透湿性や防水性などの性能がバラつく虞がある。
【0029】
本発明では、前記気相にポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材を接触させることにより、気相中に均一に分散している水滴が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面(気相に接する一面をいう)全体に均一かつ速やかに付着し、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面でポリフッ化ビニリデン系樹脂の凝固が始まる。そして、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に、短時間のうちに、凝固が不完全であって、凝固が進行しつつある状態の層が形成される。このとき、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の内部(気相に接しない部分をいう)はほとんど凝固していないと考えられる。本発明においては、このようなポリフッ化ビニリデン系樹脂あるいはポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の状態を半凝固と呼び、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に形成される凝固が進行しつつある状態の層を半凝固層と呼ぶ。
【0030】
しかる後に、このポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材を水中に浸漬することにより、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に形成された半凝固層によりポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液内部への水の侵入、および、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液に含まれる良溶媒の水中への流出が抑制される。そのため、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の凝固速度が緩慢となり、孔径が小さな微細孔を多数有する多孔質膜の形成が可能となるのである。
【0031】
前記気相に代えて、水蒸気雰囲気(もしくは水が気体(水蒸気)となって分散しているだけの気相)を用いた場合は、保持できる水分量に限界があり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を半凝固させるのに長時間を要し、生産性が低下するため好ましくない。
【0032】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に付着させる水滴の量は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の組成によって異なるため一概にはいえないが、0.15〜20g/mであることが好ましく、0.25〜10g/mであることがより好ましく、0.25〜5g/mであることがさらに好ましい。
水滴量が0.15g/m未満であると、半凝固層が形成されない虞がある。水滴量が20g/mを超えると、半凝固層の表面に水滴の流水痕が発生したり、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液に含まれる良溶媒が表面に滲み出して点状の跡が発生したりして、得られるポリフッ化ビニリデン系多孔質膜の品位が悪くなる虞がある。また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面状態が完全に凝固してしまい、次工程において水中に浸漬した際に、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液内部への水の侵入が完全に遮断されたり、表面の凝固層が剥がれて樹脂カスを発生する虞がある。
【0033】
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材を平均粒子径が1〜30μmの水滴が均一に分散している気相と接触させる方法としては、気相中に均一に分散している水滴がポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面全体に均一かつ速やかに付着する限り特に限定されないが、具体的には、前記気相中(平均粒子径が1〜30μmの水滴が均一に分散している雰囲気)に該ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材を暴露する方法や、前記気相を、基材上に塗布した該ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液に直接吹き付ける方法が挙げられる。
【0034】
前記気相中への暴露は、例えば、内部を所定の条件を満たす雰囲気に調整した装置(暴露用装置)の中を、上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材を連続的に走行させることによって行うことができる。またその場合、付着する水滴量の調整は、基材が暴露用装置内にとどまる時間を調整することによって行うことができる。具体的には、基材が暴露用装置内を走行する速度(走行速度)を変化させて調整する。さらに、暴露用装置内の水分状態は装置容積と水噴霧式加湿器の噴霧量によっても変化するため、装置容積に応じて、装置内の水滴が安定的に浮遊するように水噴霧式加湿器の噴霧量を調整することが好ましい。
【0035】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材を前記気相中に暴露する時間は、1〜60秒間であることが好ましく、1〜30秒間であることがより好ましい。暴露時間をこの範囲とすることにより、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に付着させる水滴量を上述の範囲に調整することができる。
【0036】
なお、前記気相中へ暴露する方法において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に付着した水滴量は、実際に処理する基材面に濾紙を載せた状態で暴露用装置内を走行させ、水滴付着後の濾紙の重量変化により計算することができる。
【0037】
また上述したように、本発明においては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材を前記気相中に暴露する方法にかわって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材に、詳しくは基材に塗布したポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に、前記気相、すなわち、平均粒子径が1〜30μmの水滴が均一に分散している気相を吹き付けることにより、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を半凝固させることも可能である。
この場合、暴露用装置内の雰囲気の調整に用いたのと同様の水噴霧式加湿器を用い、該水噴霧式加湿器から噴霧される前記気相を、直接、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に吹き付ければよい。
かかる方法によれば、前記気相中に暴露する方法に比べ、より短時間で、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を半凝固させるのに必要な水滴量(好ましくは0.15〜20g/m、より好ましくは0.15〜10g/m、さらに好ましくは0.25〜5g/m)をポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に付着させることができ、もって、より短時間でポリフッ化ビニリデン系樹脂を半凝固させることができるため、生産性に優れている。
前記気相をポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に直接吹き付ける方法においては、水噴霧式加湿器の噴霧量、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面からの距離、および吹き付ける時間などを調整することによって、水滴量を調整することができる。例えば、1時間あたり0.1〜5.0kgの水滴を噴霧する加湿器を用いて、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面から2〜50cm程度の距離から、1〜15秒間、前記気相を吹き付けることによって、所望の水滴量をポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の表面に付着させることができる。
【0038】
次いで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材(その表面には半凝固層が形成されている)を、水中に浸漬する。この過程で、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液の内部に水が浸入するとともに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液に含まれる良溶媒がほぼ完全に水と置き換わることによって、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の凝固が完結する。この過程における半凝固層の作用効果は上述の通りであるが、水中に浸漬することにより半凝固層もまた完全に凝固した層となる。なお、凝固液は水のみでよく、他の成分の存在を要しないが、実際の製造においては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂溶液を塗布した基材が連続して水(凝固液)中を通過することにより、水(凝固液)には良溶媒が次第に蓄積していく。本発明では、このような水(凝固液)中における良溶媒の存在を排除するものではない。
【0039】
凝固液の温度は、0〜70℃であることが好ましい。温度が70℃を超えると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の凝固が不均一となる虞がある。
【0040】
浸漬時間は、30秒間〜10分間であることが好ましく、1〜5分間であることがより好ましい。浸漬時間が30秒間未満であると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の凝固が不完全となる虞がある。浸漬時間が10分間を超えると、生産性が低下する虞がある。
【0041】
次いで、30〜80℃の温水中で3〜15分間洗浄して、残留する良溶媒、非溶媒、添加した親水性ポリマーを除去した後、50〜100℃で1〜10分間熱処理して乾燥する。かくして、基材上には、本発明のポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得ることができる。
【0042】
本発明で得られるポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜は、純水透過係数が1×10−9m/m・s・Pa以上であることが好ましい。この純水透過係数が1×10−9/m・s・Paに満たない時は膜の透水性が悪いことから高い圧力で運転する必要があり、運転コストが大きくなる場合がある。
【0043】
ここで、純水透過係数は、イオン交換水を温度25℃、ヘッド圧1mの条件下で直径47mmのポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜で濾過し、下記の数式1によって求めた。評価に際し、該多孔質平膜はエタノールに15分浸漬後水中に2時間以上浸漬置換し評価に用いた。なお、純水透過係数は、ポンプ等で加圧や吸引して得た値を換算して求めても良い。
〔数式1〕
純水透過係数(m/m・s・Pa)=透過水量(m)/(膜面積(m)×透過時間(s)×評価圧力(Pa))
【0044】
さらに、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜は、平均粒子径0.15μmの微粒子の捕集率が90%以上であることが好ましい。捕集率が90%未満であると、多孔質膜内で目詰まりが起こったり、濾過差圧の上昇が起こったりし、該多孔質平膜の寿命が短くなる場合がある。
【0045】
ここで、微粒子捕集率は、イオン交換水に平均粒径0.15μmのポリスチレンラテックス粒子を25ppmの濃度になるよう分散させてなる評価原液を濾過し、評価原液と透過液の波長220nmの紫外線吸光度から、下記の数式2によって求めた。吸光度測定は分光光度計を用いた。
〔数式2〕
微粒子捕集率(%)=((評価原液吸光度(abs)−透過液吸光度(abs))/評価原液吸光度(abs))×100
【0046】
ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜の膜厚および該多孔質平膜の表面、断面に形成される孔の孔径は、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製「S−3000N」)を用いて、100〜5000倍の断面および表面写真を撮影し、測定した。
【0047】
ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜は膜単独でも良いが、繊維布帛などの多孔質基材と複合させて用いることもできる。
【0048】
ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜の表面に形成される孔の孔径は、平均孔径が0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜5μmであることがより好ましい。平均孔径が0.01μm未満であると十分な透水性が得られず、また10μmを超えると、捕集率の低下あるいは目詰まりによる濾過差厚の上昇が起こる場合がある。
【0049】
また、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜の膜断面方向には、平均孔径0.01〜10μmの三次元網目構造を有することが好ましく、平均孔径が0.01〜5μmであることがより好ましい。平均孔径が0.01μm未満であると十分な透水性が得られず、また10μmを超えると機械的強度が低下する場合がある。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について実施例をあげて説明知るが、本発明は必ずしもその実施例により限定されるものではない。なお、実施例、比較例における各数値は以下の方法により測定した。
〔スキン層の有無〕
走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製「S−3000N」)を用いて、1000倍で断面および表面写真を撮影し、スキン層の有無を確認した。
〔厚み〕
走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製「S−3000N」)を用いて、100倍で断面写真を撮影し、測定した。
〔膜表面の平均孔径及び孔径10μm以上の孔の有無〕
走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製「S−3000N」)を用いて、5000倍で断面および表面写真を撮影し、測定した。
〔純水透過係数〕
イオン交換水を温度25℃、ヘッド圧1mの条件下で、直径47mmの、エタノールに15分浸漬後水中に2時間浸漬置換したポリフッ化ビニリデン系多孔質膜で濾過し、前記の数式1によって求めた。
〔微粒子捕集率〕
イオン交換水に平均粒径0.15μmのポリスチレンラテックス粒子を25ppmの濃度になるよう分散させてなる評価原液を濾過し、評価原液と透過液の波長220nmの紫外線吸光度から、前記の数式2によって求めた。吸光度測定は分光光度計を用いた。
【0051】
〔実施例1〕
ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(PVDF、重量平均分子量68万)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン交換水、疎水性シリカ(平均粒子径1.2μm)をそれぞれ用い、これらを下記処方1で50℃の温度で十分に撹拌、溶解して製膜原液を得た。
〔処方1〕
PVDF 11.5重量%
DMF 82.5重量%
イオン交換水 3.0重量%
疎水性シリカ 3.0重量%

次に、上記製膜原液を室温に冷却し、ポリエステル繊維織物にロールオンナイフコーターで塗布した。その後、水噴霧式加湿器(商品名「FT−161DH」、ユーキャン(株)製)を設置した暴露用装置(容積:約5.0m3、セーレン電子(株)製)中に、該合成重合体溶液を塗布した繊維布帛を設置し、平均粒子径が7μmの水滴が均一に分散している20℃の気相中に10秒間暴露して合成重合体を半凝固させた。このとき、合成重合体溶液の表面に付着した水滴量は約0.7g/m2であった。
前記合成重合体溶液を塗布した繊維布帛を25℃の水中に2分間浸漬して完全凝固させた。次いで、50℃の温水中で5分間洗浄した後、80℃で2分間熱処理して乾燥しポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0052】
〔実施例2〕
ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(PVDF、重量平均分子量68万)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン交換水、疎水性シリカ(平均粒子径1.2μm)、ポリビニルピロリドン(PVP)をそれぞれ用い、これらを下記処方2で50℃の温度で十分で撹拌、溶解して製膜原液を得た。
〔処方2〕
PVDF 11.5重量%
DMF 82.5重量%
イオン交換水 3.0重量%
疎水性シリカ 3.0重量%
PVP 3.5重量%

次に、上記製膜原液を室温に冷却し、ポリエステル繊維織物にロールオンナイフコーターで塗布した。その後、水噴霧式加湿器(商品名「FT−161DH」、ユーキャン(株)製)を設置した暴露用装置(容積:約5.0m3、セーレン電子(株)製)中に、該合成重合体溶液を塗布した繊維布帛を設置し、平均粒子径が7μmの水滴が均一に分散している20℃の気相中に30秒間暴露して合成重合体を半凝固させた。このとき、合成重合体溶液の表面に付着した水滴量は約2g/m2であった。
前記合成重合体溶液を塗布した繊維布帛を25℃の水中に2分間浸漬して完全凝固させた。次いで、50℃の温水中で5分間洗浄した後、80℃で2分間熱処理して乾燥し親水性を付与したポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0053】
〔実施例3〕
ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(PVDF、重量平均分子量68万)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン交換水、疎水性シリカ(平均粒子径0.15μm)をそれぞれ用い、これらを下記処方3で50℃の温度で十分に撹拌、溶解して製膜原液を得た。これを実施例1と同様に製膜し、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得た。評価結果を表1に示す。
〔処方3〕
PVDF 11.5重量%
DMF 82.5重量%
イオン交換水 3.0重量%
疎水性シリカ 3.0重量%
【0054】
〔実施例4〕
ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(PVDF、重量平均分子量68万)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン交換水、疎水性シリカ(平均粒子径0.15μm)をそれぞれ用い、これらを下記処方4で50℃の温度で十分に撹拌、溶解して製膜原液を得た。これを実施例1と同様に製膜し、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得た。評価結果を表1に示す。
〔処方4〕
PVDF 8.0重量%
DMF 88.0重量%
イオン交換水 2.0重量%
疎水性シリカ 2.0重量%
【0055】
〔実施例5〕
ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(PVDF、重量平均分子量68万)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン交換水、疎水性シリカ(平均粒子径1.2μm)、ポリビニルピロリドン(PVP)をそれぞれ用い、これらを下記処方5で50℃の温度で十分に撹拌、溶解して製膜原液を得た。これを実施例2と同様に製膜し、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得た。評価結果を表1に示す。
〔処方5〕
PVDF 11.5重量%
DMF 71.5重量%
イオン交換水 3.5重量%
疎水性シリカ 2.0重量%
PVP 11.5重量%
【0056】
〔実施例6〕
ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(PVDF、重量平均分子量68万)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン交換水、疎水性シリカ(平均粒子径1.2μm)をそれぞれ用い、これらを下記処方6で50℃の温度で十分に撹拌、溶解して製膜原液を得た。
〔処方6〕
PVDF 11.5重量%
DMF 82.5重量%
イオン交換水 3.0重量%
疎水性シリカ 3.0重量%

次に、上記製膜原液を室温に冷却し、ポリエステル繊維織物にロールオンナイフコーター塗布した。その後、該合成重合体溶液を塗布した繊維布帛の表面に、水噴霧式加湿器(商品名「FT−161DH」、ユーキャン(株)製)を用いて平均粒子径が7μmの水滴が均一に分散している気相を約5cm離れた距離から5秒間吹き付けた。該合成重合体溶液を塗布した繊維布帛の表面に付着した水滴量は約1.2g/mであった。
前記合成重合体溶液を塗布した繊維布帛を25℃の水中に2分間浸漬して完全凝固させた。次いで、50℃の温水中で5分間洗浄した後、80℃で2分間熱処理して乾燥し、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
〔実施例7〕
ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(PVDF、重量平均分子量68万)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン交換水、疎水性シリカ(平均粒子径1.2μm)をそれぞれ用い、これらを下記処方7で50℃の温度で十分に撹拌、溶解して製膜原液を得た。
〔処方7〕
PVDF 11.5重量%
DMF 82.5重量%
イオン交換水 3.0重量%
疎水性シリカ 3.0重量%

次に、上記製膜原液を室温に冷却し、ポリエステル繊維織物にロールオンナイフコーターで塗布した。その後、水噴霧式加湿器(商品名「FT−161DH」、ユーキャン株式会社製)を設置した暴露用装置(容積:約5.0m3、セーレン電子株式会社製)中に、該合成重合体溶液を塗布した繊維布帛を設置し、平均粒子径が7μmの水滴が均一に分散している50℃の気相中に10秒間暴露して合成重合体を半凝固させた。このとき、合成重合体溶液の表面に付着した水滴量は約0.9g/m2であった。
前記合成重合体溶液を塗布した繊維布帛を25℃の水中に2分間浸漬して完全凝固させた。次いで、50℃の温水中で5分間洗浄した後、80℃で2分間熱処理して乾燥し、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0058】
〔比較例1〕
ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(PVDF、重量平均分子量68万)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン交換水、疎水性シリカ(平均粒子径1.2μm)をそれぞれ用い、これらを下記処方8で50℃の温度で十分に撹拌、溶解して製膜原液を得た。
〔処方8〕
PVDF 11.5重量%
DMF 82.5重量%
イオン交換水 3.0重量%
疎水性シリカ 3.0重量%

次に、上記製膜原液を室温に冷却し、ポリエステル繊維織物にロールオンナイフコーターで塗布した。その後、該製膜原液を塗布した繊維布帛を25℃の水中に2分間浸漬して完全凝固させた。次いで、50℃の温水中で5分間洗浄した後、80℃で2分間熱処理して乾燥し、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得た。該膜表面にはスキン層、サポート層が形成されていた。評価結果を表1に示す。
【0059】
〔比較例2〕
ポリフッ化ビニリデンホモポリマー(PVDF、重量平均分子量68万)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イオン交換水、疎水性シリカ(平均粒子径1.2μm)をそれぞれ用い、これらを下記処方9で50℃の温度で十分に撹拌、溶解して製膜原液を得た。
〔処方9〕
PVDF 11.5重量%
DMF 82.5重量%
イオン交換水 3.0重量%
疎水性シリカ 3.0重量%

次に、上記製膜原液を室温に冷却し、ポリエステル繊維織物にロールオンナイフコーターで塗布した。その後、該合成重合体溶液を塗布した繊維布帛に霧吹きを用いて10秒間加湿を行った。霧吹きから分散される水滴の粒子径は50μm〜200μmであった。
前記合成重合体溶液を塗布した繊維布帛を25℃の水中に2分間浸漬して完全凝固させた。次いで、50℃の温水中で5分間洗浄した後、80℃で2分間熱処理して乾燥し、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜を得た。該膜表面にはスキン層、サポート層が形成されていた。評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔質膜において、該多孔質膜の表面及び断面方向に平均孔径が0.01〜10μmの細孔を有し、純水透過係数が1×10−9/m・s・Pa以上である、スキン層を有しないポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜。
【請求項2】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を5〜35重量%含む溶液を、基材の片面に塗布した後、平均粒子径が1〜30μmの水滴が均一に分散している気相と接触させてポリフッ化ビニリデン系樹脂を半凝固させ、次いで、該樹脂溶液を塗布した基材を水中に浸漬して完全凝固させることを特徴とする、ポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜の製造方法。
【請求項3】
気相との接触が、気相中に樹脂塗布面を暴露させることによって行われることを特徴とする、請求項2記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質平膜の製造方法。
【請求項4】
気相との接触が、気相を樹脂塗布面に吹き付けることによって行われることを特徴とする請求項2記載のポリフッ化ビニリデン系多孔質膜の製造方法である。

【公開番号】特開2012−139619(P2012−139619A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292621(P2010−292621)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】