説明

ポリプロピレン樹脂組成物及び成形体

【課題】従来の成形体の機械特性を維持し、かつ、成形収縮率が小さく、高結晶化速度のポリプロピレン樹脂組成物及び成形体を提供する。
【解決手段】プロピレン重合体(A)50〜98重量%、密度が0.85〜0.93(g/cm)のエチレン重合体(B)1〜40重量%、及び無機フィラー(C)1〜30重量%を含み、前記(A)、(B)及び(C)の合計量100重量部に対して、下記一般式(I)で示される少なくとも一種の金属塩(D)0.001〜1.0重量部を含むポリプロピレン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂組成物は、機械的特性等に優れる材料であることから、自動車の内外装部品や電気製品の部品等に用いられている。
例えば、特許文献1には、結晶性ポリプロピレンからなるマトリックスに、プロピレン/α−オレフィン共重合体からなるドメインが分散している樹脂組成物に、酸化防止剤や中和剤等の各種添加剤を添加する旨が記載されている。
また、特許文献2には、ビニル化合物単位を含有するポリマー状核剤で核成形されたプロピレンポリマーと、タルクとを含有する樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献3には、ポリオレフィンマトリックスとマトリックス中に分散又は溶解した造核剤を含有する樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO99/57195
【特許文献2】特表2001−522916
【特許文献3】特表2009−508995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの文献に記載されている樹脂組成物からなる成形体は、耐衝撃性や剛性等の機械特性に優れるものの、成形収縮率が大きいという問題があった。大型の成形体を製造する場合では、成形体の寸法変化が特に大きくなってしまうという問題があった。
また、樹脂組成物の結晶化速度を高くして成形サイクルを短くし、生産性をより向上させることが求められている。
以上の課題に鑑み、本発明では従来の成形体の機械特性を維持し、かつ、成形収縮率が小さく、高結晶化速度のポリプロピレン樹脂組成物及び成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、プロピレン重合体(A)50〜98重量%、密度が0.85〜0.93(g/cm)のエチレン重合体(B)1〜40重量%、及び無機フィラー(C)1〜30重量%を含み(前記(A)、(B)及び(C)の合計重量を100重量%とする)、
前記(A)、(B)及び(C)の合計量100重量部に対して、下記一般式(I)で示される少なくとも一種の金属塩(D)0.001〜1.0重量部を含むポリプロピレン樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
【化1】

〔式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜9個のアルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基及び下記一般式(II)、(III)からなる群から選択されるいずれかの基である。ここで、これらの基のうち互いに隣接する少なくとも2つの基がアルキル基である場合、これらのアルキル基同士は結合して炭素原子数6個までの炭素環を形成してよい。この化合物のRとRはシス配置である。〕
−(R11O)n−X・・・(II)
〔式中、R11は、炭素原子数1〜9個のアルキレン基を表し、nは1〜9の整数を表し、Xは水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基、ベンゾイル基、フェニル基、炭素原子数1〜9個のアルキル基及び/又はハロゲン原子によって置換されたベンゾイル基、炭素原子数1〜9個のアルキル基及び/又はハロゲン原子によって置換されたフェニル基を表す。〕
−NR1213・・・(III)
〔式中、R12及びR13は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基からなる群から選択される基である。〕
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の成形体の機械特性を維持し、かつ、成形収縮率が小さく、高結晶化速度のポリプロピレン樹脂組成物及び成形体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔ポリプロピレン樹脂組成物〕
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)は、プロピレン重合体(A)と、エチレン重合体(B)と、無機フィラー(C)と、金属塩(D)とを含有する。以下、各成分について説明する。
[プロピレン重合体(A)]
本発明におけるプロピレン重合体(A)(以下、(A)成分ともいう)とは、プロピレン単独重合体又はプロピレンと他のモノマーとの共重合体をいう。これらは単独で使用してもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。前記共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
ランダム共重合体としては、プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の構成単位とプロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位と、プロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体が挙げられる。
ブロック共重合体としては、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン由来の構成単位からなる重合体成分(以下、重合体成分(I)と称する)と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとの共重合体成分(以下、重合体成分(II)と称する)からなる重合材料が挙げられる。
【0009】
プロピレン重合体(A)は樹脂組成物の引張強度と耐衝撃性のバランスの観点から、13C−NMRで測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm]分率と表記されることもある)が0.97以上であることが好ましく、0.98以上であることがより好ましい。なお、アイソタクチック・ペンタッド分率は、後述する測定方法により求められる値であり、プロピレン重合体(A)のアイソタクチック・ペンタッド分率が1に近いほどそのプロピレン重合体(A)は高い立体規則性を示す分子構造を有する高結晶性の重合体であることを表す指標である。
また、プロピレン重合体(A)が上記ランダム共重合体又は上記ブロック共重合体の場合には、共重合体中のプロピレン単位の連鎖について測定される値を用いる。
【0010】
プロピレン共重合体(A)の230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)は、得られる成形体の引張強度と耐衝撃性のバランス、樹脂組成物の成形加工性の観点から、0.5〜200g/10分であることが好ましく、1〜100g/10分であることがより好ましく、2〜80g/10分であることが更に好ましく、5〜50g/10分であることが最も好ましい。
【0011】
プロピレン重合体(A)は、重合触媒を用いて下記の方法により製造することができる。
重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、又はシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、シリカ、粘土鉱物等の無機粒子にシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物等の触媒成分を担持し変性させた触媒系等が挙げられ、また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα−オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。
上記の触媒系としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平9−316147号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報に記載の触媒系が挙げられる。
【0012】
重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合又は気相重合が挙げられる。ここでバルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合又はスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
これらの重合方法は、バッチ式、複数の重合反応槽を直列に連結させた多段式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法又はバルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法による方法が好ましい。
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン重合体(A)に応じて、適宜決定すればよい。
【0013】
プロピレン重合体(A)の製造において、プロピレン重合体(A)中に含まれる残留溶媒や、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、必要に応じてプロピレン重合体(A)をそのプロピレン重合体(A)が融解する温度以下の温度で乾燥してもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55−75410号公報、特許第2565753号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0014】
<ランダム共重合体>
上述のように、本発明におけるランダム共重合体はプロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の構成単位とプロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位と、プロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体である。
上記ランダム共重合体を構成するプロピレン以外のα−オレフィンとしては、炭素原子数4〜10個のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0015】
プロピレン由来の構成単位とα−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム、プロピレン−1−デセンランダム共重合体等が挙げられる。
プロピレン由来の構成単位とエチレンに由来する構成単位と、α−オレフィンに由来する構成単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体等が挙げられる。
【0016】
ランダム共重合体中のエチレン及び/又はα−オレフィンに由来する構成単位の含有量は、0.1〜40重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましく、2〜15重量%であることが更に好ましい。そして、プロピレンに由来する構成単位の含有量は99.9〜60重量%であることが好ましく、99.9〜70重量%であることがより好ましく、98〜85重量%であることが更に好ましい。
【0017】
<ブロック共重合体>
上述のように、本発明におけるブロック共重合体は、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン由来の構成単位からなる重合体成分((以下、重合体成分(I)と称する)と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンとの共重合体成分(以下、重合体成分(II)と称する)からなる重合材料をいう。
重合体成分(I)は、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン由来の構成単位からなる重合体成分である。プロピレン由来の構成単位からなる重合体成分とは、エチレン及び炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレン由来の単位とからなるプロピレン共重合体成分が挙げられる。
【0018】
重合体成分(I)が、プロピレン由来の構成単位からなる重合体成分である場合、エチレン及び炭素原子数4〜10個のα―オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、0.01〜30重量%である(但し、重合体成分(I)の重量を100重量%とする)。
炭素原子数4〜10個のα−オレフィンとしては、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは1−ブテンである。
【0019】
プロピレン由来の構成単位からなる重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
重合体成分(I)としては、好ましくは、プロピレン単独重合体成分、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分が挙げられる。
【0020】
重合体成分(II)は、エチレン及び炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する構成単位と、プロピレンに由来する構成単位とを有する共重合体成分である。
重合体成分(II)に含有されるエチレン及び炭素原子数4〜10個のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、1〜80重量%であり、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは20〜60重量%である(但し、重合体成分(II)の重量を100重量%とする)。
【0021】
重合体成分(II)を構成する炭素原子数4〜10個のα−オレフィンとしては、例えば、前記重合体成分(I)を構成する炭素原子数4〜10個のα−オレフィンと同様のα−オレフィンが挙げられる。
【0022】
重合体成分(II)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−デセン共重合体成分等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、より好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分である。
【0023】
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなる重合材料の重合体成分(II)の含有量は1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、10〜40重量%であることが更に好ましく、10〜30重量%であることが最も好ましい(但し、プロピレン重合体(A)の重量を100重量%とする)。
【0024】
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体の重合体成分(I)がプロピレン単独重合体成分の場合、該プロピレン共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体等が挙げられる。
【0025】
また、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなる重合材料の重合体成分(I)がプロピレン由来の単位からなるプロピレン共重合体成分の場合、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体としては、例えば、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−オクテン)共重合体、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−デセン)共重合体等が挙げられる。
【0026】
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体として、好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体であり、より好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体である。
【0027】
重合体成分(I)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η])は、0.1〜5dl/gであり、好ましくは0.3〜4dl/gであり、より好ましくは0.5〜3dl/gである。
【0028】
重合体成分(II)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II)は1〜20dl/gであり、好ましくは1〜10dl/gであり、より好ましくは2〜7dl/gである。
【0029】
また、重合体成分(I)の極限粘度([η])に対する重合体成分(II)の極限粘度([η]II)の比は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは2〜9である。
【0030】
なお、本発明における極限粘度(単位:dl/g)は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される値である。
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1dl/g、0.2dl/g及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定する。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる。
プロピレン重合体(A)が重合体成分(I)と重合体成分(II)とを多段重合させて得られる重合材料である場合、前段の重合槽から一部抜き出した重合体パウダーから重合体成分(I)又は重合体成分(II)の極限粘度を求め、この極限粘度の値と各成分の含有量を用いて残りの成分の極限粘度を算出する。
【0031】
また、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体が、重合体成分(I)が前段の重合工程で得られ、重合体成分(II)が後段の工程で得られる方法によって製造される共重合体である場合、重合体成分(I)及び重合体成分(II)の含有量、極限粘度([η]Total、[η]、[η]II)の測定及び算出の手順は、以下のとおりである。なお、極限粘度([η]Total)は、プロピレン重合体(A)の全体の極限粘度を示す。
【0032】
前段の重合工程で得た重合体成分(I)の極限粘度([η])、後段の重合工程後の最終重合体(成分(I)と成分(II))の前記の方法で測定した極限粘度([η]Total)、最終重合体に含有される重合体成分(II)の含有量から、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIを、下記式から計算する。
[η]II=([η]Total−[η]×XI)/XII
[η]Total:後段重合工程後の最終重合体の極限粘度(dl/g)
[η]:前段重合工程後に重合槽より抜き出した重合体パウダーの極限粘度(dl/g)
XI:プロピレン重合体(A)全体に対する重合体成分(I)の重量比
XII:プロピレン重合体(A)全体に対する重合体成分(II)の重量比
尚、XI、XIIは重合時の物質収支から求める。
【0033】
ブロック共重合体は、重合体成分(I)を第1工程で製造し、重合体成分(II)を第2工程で製造することにより得られる。重合は上述の重合触媒を用いて行われる。
【0034】
〔エチレン重合体(B)〕
本発明におけるエチレン重合体(B)(以下、(B)成分ともいう)とは、密度が0.85〜0.93(g/cm)のエチレン重合体をいい、エチレン単独重合体でもエチレンとα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
具体的には、ラジカル開始剤を用いて高圧ラジカル重合により繰り返し単位のエチレンがランダムに分岐構造をもって結合した、密度が0.91〜0.93(g/cm)の高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)が挙げられる。
【0035】
エチレンとα−オレフィンの共重合体としては、例えば、密度が0.90〜0.93(g/cm)の範囲にある結晶性を有する直鎖状低密度ポリエチレン、又は密度が0.85〜0.90(g/cm)の範囲にある結晶性が低くゴム状の弾性特性を有するエチレンと、α‐オレフィンとの共重合体が挙げられる。
【0036】
エチレン重合体(B)の製造に用いられるα−オレフィンは、上述の炭素原子数4〜10個のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、環状構造を有するα−オレフィン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0037】
エチレン重合体(B)としては、好ましくはエチレンとα−オレフィンの共重合体である。具体的には、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体、エチレン−(3−メチル−1−ブテン)共重合体、エチレンと環状構造を有するα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0038】
エチレン重合体(B)に含有するα−オレフィンの含有量は、好ましくは1〜49重量%であり、より好ましくは5〜49重量%であり、さらに好ましくは10〜49重量%である(エチレン重合体(B)の重量を100重量%とする)。
【0039】
エチレン重合体(B)の190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.5〜50g/10分である。MFRは、より好ましくは1〜30g/10分であり、さらに好ましくは1〜20g/10分である。
【0040】
エチレン重合体(B)は、重合触媒を用いて製造することができる。
重合触媒としては、例えば、メタロセン触媒に代表される均一系触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系等が挙げられる。
均一系触媒系としては、例えば、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、又はシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、シリカ、粘土鉱物等の無機粒子にシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物等の触媒成分を担持し変性させた触媒系等が挙げられ、また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα‐オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒系が挙げられる。
チーグラー・ナッタ型触媒系としては、例えば、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。
なお、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)を用いる場合には、ラジカル開始剤を重合触媒として用いることができる。
【0041】
エチレン重合体(B)は、公知の市販品を用いてもよい。例えば、ダウ・ケミカル日本株式会社製エンゲージ(登録商標)、三井化学株式会社製タフマー(登録商標)、株式会社プライムポリマー製ネオゼックス(登録商標)、ウルトゼックス(登録商標)、住友化学株式会社製エクセレンFX(登録商標)、スミカセン(登録商標)、エスプレンSPO(登録商標)等が挙げられる。
【0042】
[無機フィラー(C)]
本発明における無機フィラー(C)(以下、(C)成分ともいう)とは、非繊維状無機充填材又は繊維状無機充填材をいう。
非繊維状無機充填材としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、けい砂、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化マグネシウム、ゼオライト、モリブデン、けいそう土、セリサイト、シラス、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸ソーダ、ベントナイト、黒鉛等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このうちタルクを用いることが好ましい。
非繊維状無機充填材は、無処理のまま使用してもよいが、プロピレン重合体(A)との界面接着性を向上させ、かつ、プロピレン重合体(A)に対する分散性を向上させるために、シランカップリング剤、又はチタンカップリング剤、若しくは界面活性剤で表面を処理して使用しても良い。界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等が挙げられる。
【0043】
非繊維状無機充填材の平均粒子径は、10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。ここで本発明における「平均粒子径」とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
非繊維状無機充填材は、粉状、フレーク状、顆粒状などが挙げられ、いずれの形態のものを用いてもよい。
【0044】
繊維状無機充填材としては、例えば、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、チタン酸カリウム繊維、水酸化マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、ケイ酸カルシウム繊維を用いることが好ましく、繊維状マグネシウムオキシサルフェートを用いることがより好ましい。
繊維状無機充填材は、無処理のまま使用してもよいが、プロピレン重合体(A)との界面接着性を向上させ、かつ、プロピレン重合体(A)に対する分散性を向上させるために、シランカップリング剤、又は高級脂肪酸金属塩で表面を処理して使用しても良い。高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0045】
電子顕微鏡観察によって測定した繊維状無機充填材の平均繊維長は、3μm以上であり、好ましくは3μm〜20μmであり、更に好ましくは8μm〜15μmである。また、アスペクト比は、10以上であり、好ましくは10〜30であり、更に好ましくは12〜25である。そして、電子顕微鏡観察によって測定した平均繊維径は、好ましくは、0.2μm〜1.5μmであり、更に好ましくは0.3μm〜1.0μmである。
【0046】
[金属塩類(D)]
本発明における金属塩類(D)(以下、(D)成分ともいう)とは、下記一般式(I)で示される少なくとも一種の金属塩類をいう。
【0047】
【化2】

〔式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜9個のアルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基及び下記一般式(II)、(III)からなる群から選択されるいずれかの基である。ここで、これらの基のうち互いに隣接する少なくとも2つの基がアルキル基である場合、これらのアルキル基同士は結合して炭素原子数6個までの炭素環を形成してよい。この化合物のRとRはシス配置である。〕
−(R11O)n−X・・・(II)
〔式中、R11は、炭素原子数1〜9個のアルキレン基を表し、nは1〜9の整数を表し、Xは水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基、ベンゾイル基、フェニル基、炭素原子数1〜9個のアルキル基及び/又はハロゲン原子によって置換されたベンゾイル基、炭素原子数1〜9個のアルキル基及び/又はハロゲン原子によって置換されたフェニル基を表す。〕
−NR1213・・・(III)
〔式中、R12及びR13は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基からなる群から選択される基である。〕
【0048】
上記の化合物は、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10が、それぞれ独立して水素又は炭素原子数1〜3個のアルキル基である化合物であることが好ましく、下記構造式で示されるシス−1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩であることがより好ましい。
【0049】
【化3】

【0050】
金属塩類(D)は、前記プロピレン重合体(A)とエチレン重合体(B)と無機フィラー(C)を含む樹脂組成物に対する分散性を向上させるために、分散剤と混合して用いてもよい。分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸のアルキルエステル、脂肪酸の金属塩、炭素原子数10〜30個の炭化水素置換アルコール類、多価アルコール及びそのエステル類が挙げられる。
脂肪酸は炭素原子数が10〜24個の脂肪酸であり、脂肪酸の金属塩はアルキル金属又はアルカリ土類金属の金属塩である。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム、リチウムであり、アルカリ金属としてはカルシウム、マグネシウム、亜鉛等である。また、多価アルコール及びそのエステル類は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール及びそのエステル等である。中でも脂肪酸の金属塩が好ましく用いられる。
【0051】
金属塩類(D)の形態は、粒子状であることが好ましい。金属塩類(D)の粒子径としては、レーザー回折式粒度分布測定法で求められる平均粒子径が0.01〜10μmであり、好ましくは0.01〜5μmであり、さらに好ましくは0.01〜3μmである。尚、レーザー回折式粒度分布測定法とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(Sympatec社製HELOS(商品名))を用いて粒度分布を測定する方法である。
【0052】
金属塩類(D)の製造方法としては、例えば、特表2004−525227号公報、特表2009−504842号公報に記載の方法が挙げられる。また、1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩については、Milliken Chemical、ミリケン・ジャパン株式会社からHyperform HPN−20E(登録商標、1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩含有量:66重量%)を入手することができる。
【0053】
[光安定剤(E)]
本発明に係る樹脂組成物は、光安定剤(E)(以下、(E)成分ともいう)を含有していてもよい。
光安定剤(E)としては、低分子量体、オリゴマー型高分子量体のいずれの光安定剤を使用してもよい。これらは単独又は2種以上併用して用いることが可能である。
【0054】
例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートを含有する混合物と、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート;
デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物と、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート;
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物と、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、及び、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;
ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N´−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物と、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}};
N,N´,N´´,N´´´−テトラキス−(4,6ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、及び、ミックスト{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β´,β´−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオクスアスピロ(5,5)ウンデカン]ジメチル}−1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレート;
等が挙げられる。
【0055】
好ましくは、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、テトラキス(2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}である。
【0056】
[樹脂組成物]
本発明に係る樹脂組成物は、上記(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分とを含有する。各成分の含有量は、(A)成分が50〜98重量%であり、好ましくは55〜82重量%である。(B)成分の含有量は1〜40重量%であり、好ましくは10〜40重量%である、(C)成分の含有量は1〜30重量%であり、好ましくは8〜22重量%である(但し、前記(A)、(B)及び(C)の合計量を100重量%とする)。
そして(D)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して0.001〜1.0重量部であり、好ましくは0.01〜0.7重量部であり、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。
また、(E)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して0.01〜1重量部であり、好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0057】
本発明に係る樹脂組成物の230℃で測定されるメルトフローレートは、成形加工性という観点から、好ましくは0.1〜400g/10分であり、より好ましくは、0.5〜300g/10分であり、さらに好ましくは、1〜200g/10分である。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、各原料成分を180℃以上、好ましくは180〜300℃、より好ましくは180〜250℃で溶融混練することにより得られる。溶融混練には、例えば、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸同方向回転押出機等が挙げられる。
【0059】
樹脂組成物の形状は、ストランド状、シート状、平板状、ストランドを適当な長さに裁断したペレット状等が挙げられる。本発明の樹脂組成物を成形加工するためには、得られる成形体の生産安定性の観点から、形状として好ましくは、長さが1〜50mmのペレット状である。
【0060】
各原料成分の混練順序は特に限定されるものではないが、金属塩(D)は以下のような方法で配合し、混練することが好ましい。
方法1:(A)成分、(B)成分、及び(C)成分と共に、配合する方法
方法2:(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の少なくともいずれか一種と、(D)成分をマスターバッチとし、このマスターバッチを残りの成分と混合する方法
【0061】
また、本発明の樹脂組成物は、この樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐衝撃性や外観の観点から、成形体(フィルム、シート又は射出成形体等)の表面に発生するフィッシュアイ(点状の突起物又はへこみ物)の発生は少ないことが好ましい。
そこで、フィッシュアイの発生を抑制する目的で樹脂組成物を製造する際、各成分を溶融混練後、フィルターを通過させることが好ましい。フィルターは1段式又は多段式であってもよい。
【0062】
本発明に係る樹脂組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、有機系過酸化物、着色剤(無機顔料、有機顔料、顔料分散剤等)、発泡剤、発泡核剤、造核剤(金属塩類(D)は除く)、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤、抗菌剤、光拡散剤、無機フィラー、耐傷付防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0063】
中和剤としては、例えば、高級脂肪酸の金属塩(金属石鹸)、ハイドロタルサイト、アルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物等が挙げられる。これらの中和剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
高級脂肪酸の金属塩(金属石鹸)を構成する高級脂肪酸としては、例えば、炭素数が10〜30のものが好ましく、さらに好ましくは、炭素原子数が12〜18個のものである。金属塩としては、例えば、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が好ましく、さらに好ましくはカルシウム塩である。好ましくは、ステアリン酸のカルシウム塩である。
【0065】
ハイドロタルサイトは、天然鉱物であっても、合成品であってもよく、またその結晶構造、結晶粒子径、含水率等は、適宜、決定すればよい。また、必要に応じて、ハイドロタルサイト類には表面処理を行ってもよい。
【0066】
ハイドロタルサイト類の中で、好ましくは下記式で表されるハイドロタルサイトである。
MgAl(OH)2Y+4CO・mH
(式中、Yは、Y≧4であり、mは正の数である。)
また、ハイドロタルサイト類として、より好ましくは下記のハイドロタルサイトである。
Mg4.5Al(OH)13CO・3H
Mg4.5Al(OH)13(CO0.8・O0.2
MgAl(OH)12CO・3H
MgAl(OH)14CO・4H
MgAl(OH)16CO・4H
ZnAl(OH)12CO・mHO(mは0〜4)
MgZnAl(OH)12CO・mHO(mは0〜4)
【0067】
アルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物とは、周期表第2族の金属原子の酸化物又は水酸化物であり、例えば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。好ましくは水酸化カルシウムである。
【0068】
中和剤の配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して0.001〜0.5重量部であり、好ましくは0.005〜0.5重量部であり、より好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0069】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、金属不活性化剤等が挙げられる。
好ましくは、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤である。
酸化防止剤の配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して0.01〜2重量部であり、好ましくは0.01〜1重量部であり、より好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0070】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス[メチレン−3(3´,5´ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トコフェロール類等が挙げられる。
【0071】
リン系酸化防止剤としては、例えば、樹脂組成物の加工安定性の観点から、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0072】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、樹脂組成物の耐熱老化性の観点から、ジミリスチル−3,3´−チオジプロピオネート、ネオペンタンテトライルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキル(C12〜C14)チオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィドである。なお、C12は炭素原子数12個、C14は炭素原子数14個を表す。
【0073】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェニル3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシベンゾエート、ラウリル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、パルミチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ステアリル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ベヘニル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0074】
着色剤としては、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛や、弁柄、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、群青、コバルトブルー、チタンイエロー、鉛白、鉛丹、鉛黄、紺青等が挙げられ、有機顔料としては、例えば、キナクリドン、ポリアゾイエロー、アンスラキノンイエロー、ポリアゾレッド、アゾレーキイエロー、ペリレン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、イソインドリノンイエロー等が挙げられる。これらの着色剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、顔料を樹脂組成物中に分散させる目的で、顔料と顔料分散剤を併用してもよい。
【0075】
また、本発明に係る樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分以外の樹脂やゴムを含有してもよい。
例えば、ポリスチレン樹脂、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物は、バイオ原料から抽出された植物由来のモノマーを重合して製造される重合体を含有してもよい。例えば、PLA樹脂(ポリ乳酸)、PBT樹脂などが挙げられる。
【0076】
本発明に係る樹脂組成物を成形して得られる成形体は、好ましくは、射出成形法により製造した射出成形体である。射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
この成形体は、例えば、自動車材料、家電材料、モニター用材料、OA機器材料、医療用材料、排水パン、トイレタリー材料、ボトル、コンテナー、シート、フィルム、建材等が挙げられる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例によって本発明を説明する。実施例及び比較例で使用した
プロピレン重合体、エチレン重合体、無機フィラー及び添加剤を下記に示す。
【0078】
(1)プロピレン重合体(A)((A)成分)
(A−1)プロピレン単独重合体
MFR(230℃、2.16kg荷重):20g/10分
極限粘度([η]):1.34dl/g
【0079】
(A−2)プロピレン単独重合体
MFR(230℃、2.16kg荷重):120g/10分
極限粘度([η]):0.92dl/g
【0080】
(2)重合体成分(I)と重合体成分(II)とからなる重合材料(ブロック共重合体)
特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、下記物性のプロピレン重合体が得られるような条件で液相−気相重合法によって製造した。
【0081】
(A−3)(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体
重合材料のMFR(230℃、2.16kg荷重):27g/10分
重合材料のエチレン含量:7.5重量%
重合材料の極限粘度([η]total):1.41dl/g
[η]II/[η]=2.64
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)の極限粘度([η]):1.06dl/g
重合体成分(II):プロピレン−エチレン共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:20.5重量%
重合体成分(II)のエチレン含有量:37.0重量%
重合体成分(II)の極限粘度([η]II):2.8dl/g
【0082】
(A−4)(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体
重合材料のMFR(230℃、2.16kg荷重):32g/10分
重合材料のエチレン含量:6.5重量%
重合材料の極限粘度([η]total):1.64dl/g
[η]II/[η]=5.00
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)の極限粘度([η]):1.00dl/g
重合体成分(II):プロピレン−エチレン共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:16.0重量%
重合体成分(II)のエチレン含有量:34.5重量%
重合体成分(II)の極限粘度([η]II):5.0dl/g
【0083】
(A−5)(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体
重合材料のMFR(230℃、2.16kg荷重):67g/10分
重合材料のエチレン含量:4.0重量%
重合材料の極限粘度([η]total):1.45dl/g
[η]II/[η]=5.93
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)の極限粘度([η]):0.86dl/g
重合体成分(II):プロピレン−エチレン共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:14.0重量%
重合体成分(II)のエチレン含有量:30.0重量%
重合体成分(II)の極限粘度([η]II):5.1dl/g
【0084】
(2)エチレン重合体(B)((B)成分)
(B−1)エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー
(登録商標)タフマー A1050S(三井化学(株)製)
密度:0.862(g/cm
MFR(190℃、2.16kg荷重):1.3g/10分
α−オレフィン:1−ブテン
【0085】
(B−2)エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー
(登録商標)タフマー A4050S(三井化学(株)製)
密度:0.862(g/cm
MFR(190℃、2.16kg荷重):3.5g/10分
α−オレフィン:1−ブテン
【0086】
(B−3)エチレン−1−オクテン共重合体エラストマー
(登録商標)ENGAGE EG8100(ダウ・ケミカル日本(株)製)
密度:0.87(g/cm
MFR(190℃、2.16kg荷重):1g/10分
α−オレフィン:1−オクテン
【0087】
(3)無機フィラー(C)((C)成分)
(C−1)タルク
(登録商標)MWHST:林化成製
平均粒子径:4.9μm
【0088】
(C−2)繊維状マグネシウムオキシサルフェート
(登録商標)モスハイジA:宇部マテリアルズ製
平均繊維径:0.5μm
平均繊維径:10μm
アスペクト比:20
【0089】
(C−3)繊維状マグネシウムオキシサルフェート マスターバッチ
プロピレン単独重合体(A−2)50重量%と宇部マテリアルズ(株)製モスハイジA(C−2)50重量%とを混合し、溶融混練して、モスハイジA含有量50重量%のマスターバッチ(C−3)を得た。
【0090】
(4)金属塩(D)((D)成分)
(D−1)(登録商標)Hyperform HPN−20E:ミリケン・ジャパン(株)製
主成分の化学名:1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩
CAS Reg.NO.:491589−22−1
主成分の構造式:
【0091】
【化4】

主成分の含有量:66重量%
副成分の化学名:ステアリン酸亜鉛
CAS Reg.NO.:557−05−1
副成分の含有量:34重量%
HPN−20Eの平均粒子径: 主成分の平均粒子径:2.6μm
(平均粒子径はレーザー回折式の粒度分布測定器(Sympatec社製HELOS(商品名))を用いて測定した。)
【0092】
(D−2)(登録商標)Hyperform HPN−68L:ミリケン・ジャパン(株)製
主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有)
主成分の化学構造式:以下の通り

【0093】
(D−3)(登録商標)AL−PTBBA:共同薬品(株)製
化学名:ヒドロキシ−ジ(p−tert−ブチル安息香酸)アルミニウム
【0094】
(5)光安定剤(E)((E)成分)
(E−1)(登録商標)アデカスタブLA52:(株)ADEKA製
化学名:テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート
(E−2)(登録商標)TINUVIN770DF:チバ・ジャパン(株)製
化学名:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
【0095】
(6)添加剤(F)((F)成分)
(F−1)中和剤
ステアリン酸カルシウム:共同薬品(株)製
(F−2)酸化防止剤
(登録商標)スミライザーGA80:住友化学(株)製
化学名:3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン
【0096】
(F−3)酸化防止剤
(登録商標)SONGNOX6260:松原産業(株)製
化学名:ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
(F−4)紫外線吸収剤
(登録商標)スミソーブ400:住友化学(株)製
化学名:2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート
(F−5)滑剤
(登録商標)ニュートロン−S:日本精化(株)製
化学名:エルカ酸アミド
(F−6)滑剤
(登録商標)デノンSL−12:丸菱油化工業(株)製
化学名:オレイン酸アミド
(F−7)滑剤
(登録商標)アーモワックスEBS−P:ライオン(株)製
化学名:エチレンビスステアリン酸アマイド
【0097】
原料成分及び樹脂組成物の物性は下記に示した方法に従って測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−7210に規定された方法に従って測定した。
・プロピレン重合体(A):測定温度は230℃で、荷重は2.16kg
・エチレン重合体(B):測定温度は190℃で、荷重は2.16kg
・樹脂組成物:測定温度は230℃で、荷重は2.16kg
【0098】
(2)密度(単位:g/cm
JIS−K−7112に規定された方法に従って測定した。
【0099】
(3)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は前述のように還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。
【0100】
重合体成分(I)及び(II)の割合、極限粘度([η]Total、[η]、[η]II)の測定及び算出
前段の重合工程で得た重合体成分(I)の極限粘度([η])、後段の重合工程後の最終重合体(成分(I)と成分(II)の合計)の前記(2)の方法で測定した極限粘度([η]Total)、最終重合体に含有される重合体成分(II)の含有量(重量比)から、後段の工程で重合された重合体成分(II)の極限粘度[η]IIを、下記式から計算して求めた。
[η]II=([η]Total−[η]×X)/XII
[η]Total:後段重合工程後の最終重合体の極限粘度(dl/g)
[η]:前段重合工程後に重合槽より抜き出した重合体パウダーの極限粘度(dl/g)
:前段の工程で重合された成分の重量比
II:後段の工程で重合された成分の重量比
尚、X、XIIは重合時の物質収支から求めた。
【0101】
(4)結晶化速度(半結晶化時間T0.5、単位:秒)
株式会社パーキンエルマージャパン製「Diamond DSC」(示差走査熱量測定装置)を用いて測定した。具体的には、樹脂組成物のペレットを圧縮成形加工機によりフィルム(100μm)化して測定用試料を作製した。DSCに作製した試料を約10mgセットして、一旦、220℃へ昇温して220℃の状態で5分間放置することにより試料を完全に溶解させた。その後、300℃/分の降温速度で140℃まで急冷して等温結晶化を行った。得られた吸熱カーブから半結晶化時間を測定した。結晶化時間が短いほど、結晶化速度が速いことを示す。
【0102】
(5)曲げ弾性率(FM、単位:MPa)
住友重機械工業製SE130DU型射出成形機を用い、成形温度220℃、金型温度50℃で射出成形を行い、物性評価用試験片(6.4mm厚)を得た。ASTM D790に準拠し、同試験片を使用して、23℃における曲げ弾性率を測定した。
【0103】
(6)寸法安定性(成形収縮率、単位:/1000)
住友重機械工業製SE180D型射出成形機を用い、成形温度220℃、金型冷却温度50℃の条件により射出成形を行い、縦400mm、横100mm、厚み3mmの直方体の試験片を作製した。この試験片を、室温23℃、湿度50%の標準状態下にて48時間放置後、この試験片の縦方向(MD)と横方向(TD)の長さを測定した。縦方向の成形収縮率と横方向の成形収縮率は、下記算出式から算出した。
MD成形収縮率=(400−MD寸法/400)×1000
TD成形収縮率=(100−TD寸法/100)×1000)
【0104】
〔実施例1〜6、比較例1〜4〕
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の配合割合は、下記の通りである(但し、(A−1)、(A−2)、(A−5)、(B−1)及び(C−1)の合計量を100重量%とする)。
プロピレン単独重合体(A―1):9重量%
プロピレン単独重合体(A―2):15重量%
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体(A−5):36重量%
エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー(B−1):30重量%
タルク(C−1):10重量%
【0105】
(D)成分、(E)成分、(F)成分の配合割合は下記の表1に記載の通りである。
また、(F)成分のうち、(F−1)、(F−2)、(F−3)及び(F−7)の配合割合は、下記の通りである(但し、(A−1)、(A−2)、(A−5)、(B−1)及び(C−1)の合計量を100重量部とする)。
中和剤(F−1):0.05重量部
酸化防止剤(F−2):0.05重量部
酸化防止剤(F−3):0.05重量部
滑剤(F−7):0.03重量部
これらをタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44αII−49BW−3V型)を用いて、押出量50kg/hr、シリンダ設定温度200℃、スクリュー回転数を200rpm、ベント吸引下で混練押出して、樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表1に示す。
【0106】
〔実施例7〜9、比較例5〕
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の配合割合は、下記の通りである(但し、(A−4)、(B−1)、(C−1)及び(C−3)の合計量を100重量%とする)。
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体(A−4):65重量%
エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー(B−1):19重量%、
タルク(C−1):4重量%
繊維状マグネシウムオキシサルフェート マスターバッチ(C−3):12重量%
【0107】
(D)成分の配合割合は下記の表2に記載の通りである。
また、(E)成分、(F)成分の配合割合は、下記の通りである(但し、(A−4)、(B−1)、(C−1)及び(C−3)の合計量を100重量部とする)。
中和剤(F−1):0.05重量部
酸化防止剤(F−2):0.05重量部
酸化防止剤(F−3):0.05重量部
滑剤(F−7):0.03重量部
光安定剤(E−1):0.1重量部
紫外線吸収剤(F−4):0.2重量部
滑剤(F−5):0.15重量部
これらをタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44αII−49BW−3V型)を用いて、押出量50kg/hr、シリンダ設定温度200℃、スクリュー回転数を200rpm、ベント吸引下で混練押出して、樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表2に示す。
【0108】
〔実施例10、比較例6〕
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の配合割合は、下記の通りである(但し、(A−3)、(B−2)及び(C−1)の合計量を100重量%とする)。
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体(A−3):70.5重量%
エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー(B−2):8重量%
タルク(C−1):21.5重量%
【0109】
(D)成分の配合割合は下記の表3に記載の通りである。
また、(F)成分の配合割合は、下記の通りである(但し、(A−3)、(B−2)及び(C−1)の合計量を100重量部とする)。
中和剤(F−1):0.05重量部
酸化防止剤(F−2):0.05重量部
酸化防止剤(F−3):0.05重量部
滑剤(F−7):0.07重量部
これらをタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44αII−49BW−3V型)を用いて、押出量50kg/hr、シリンダ設定温度200℃、スクリュー回転数を200rpm、ベント吸引下で混練押出して、樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表3に示す。
【0110】
〔実施例11、比較例7〜9〕
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の配合割合は、下記の通りである(但し、(A−1)、(A−2)、(A−5)、(B−3)及び(C−1)の合計量を100重量%とする)。
プロピレン単独重合体(A―1):9重量%
プロピレン単独重合体(A―2):15重量%
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体(A−5):36重量%
エチレン−1−オクテン共重合体エラストマー(B−3):30重量%
タルク(C−1):10重量%
【0111】
(D)成分の配合割合は下記の表4に記載の通りである。
また、(E)成分、(F)成分の配合割合は、下記の通りである(但し、(A−1)、(A−2)、(A−5)、(B−3)及び(C−1)の合計量を100重量部とする)。
光安定剤(E−1):0.1重量部
中和剤(F−1):0.05重量部
酸化防止剤(F−2):0.05重量部
酸化防止剤(F−3):0.05重量部
滑剤(F−6):0.2重量部
滑剤(F−7):0.03重量部
これらをタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44αII−49BW−3V型)を用いて、押出量50kg/hr、シリンダ設定温度200℃、スクリュー回転数を200rpm、ベント吸引下で混練押出して、樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表4に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン重合体(A)50〜98重量%、密度が0.85〜0.93(g/cm)のエチレン重合体(B)1〜40重量%、及び無機フィラー(C)1〜30重量%を含み(前記(A)、(B)及び(C)の合計重量を100重量%とする)
前記(A)、(B)及び(C)の合計量100重量部に対して、下記一般式(I)で示される少なくとも一種の金属塩(D)0.001〜1.0重量部を含むポリプロピレン樹脂組成物。
【化1】

〔式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜9個のアルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基及び下記一般式(II)、(III)からなる群から選択されるいずれかの基である。ここで、これらの基のうち互いに隣接する少なくとも2つの基がアルキル基である場合、これらのアルキル基同士は結合して炭素原子数6個までの炭素環を形成してよい。この化合物のRとRはシス配置である。〕
−(R11O)n−X・・・(II)
〔式中、R11は、炭素原子数1〜9個のアルキレン基を表し、nは1〜9の整数を表し、Xは水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基、ベンゾイル基、フェニル基、炭素原子数1〜9個のアルキル基及び/又はハロゲン原子によって置換されたベンゾイル基、炭素原子数1〜9個のアルキル基及び/又はハロゲン原子によって置換されたフェニル基を表す。〕
−NR1213・・・(III)
〔式中、R12及びR13は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜9個のアルキル基からなる群から選択される基である。〕
【請求項2】
前記(A)、(B)及び(C)の合計量100重量部に対して、光安定剤(E)0.01〜1.0重量部更に含有する請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
前記金属塩(D)は、下記構造式で示されるシス−1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩である請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物。

【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2011−225663(P2011−225663A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94856(P2010−94856)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】