説明

ポリプロピレン系樹脂用改質剤及びポリプロピレン系樹脂組成物

【課題】 ポリプロピレン系樹脂の高耐衝撃性と樹脂の表面特性の両方を改良できるポリプロピレン系樹脂改質剤、及び高耐衝撃性と樹脂の表面特性の両方に優れたポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 プロピレンユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンと酢酸ビニルユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物、又はプロピレンユニット及び酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィンであって、これらのポリオレフィンに付加した不飽和カルボン酸含有量が0.1〜10重量%である不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを含むポリプロピレン系樹脂用改質剤、並びに当該ポリプロピレン系樹脂用改質剤とポリプロピレン系樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン系樹脂の高耐衝撃性と樹脂の表面特性を高度にバランスさせることができるポリプロピレン系樹脂改質剤、ならびに高耐衝撃性と樹脂の表面特性のバランスに優れたポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、耐熱性、剛性が高く、成型性も良好で、しかも低価格であることから、自動車の内外装部品、例えば、バンパー、モール、フロントグリル、インパネ、電気機器外装部品、文具、日用品、容器、フィルムなどの用途に、近年、その使用が大幅に拡大している。しかしながら、このような特徴的なポリプロピレン系樹脂においても、用途や使用される状況によっては、その耐衝撃性が不十分であり、使用が制限される場合が多々ある。さらに、ポリプロピレン系樹脂は、その用途によってはポリプロピレン系樹脂の表面特性が不十分である場合があり、表面の親水性、接着性、塗装性、メッキ性、印刷性等について問題を有しており、耐衝撃性と樹脂表面の濡れ性を改良できる材料の開発が望まれている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂の耐衝撃性を改良するために、従来は、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン・1−ブテン共重合ゴム(EBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)などのゴム状弾性物質をブレンドすることが行われていた。また、最近では、メタロセン系触媒の出現により、エチレン・α−オレフィン共重合ゴムにおいて、従来得られなかったより高級なα−オレフィン、例えば、1−ヘキセンや1−オクテンをコモノマーとしたエチレン・α−オレフィン共重合ゴムが得られるようになり、従来のゴム状弾性物質をブレンドした場合より剛性と耐衝撃性のバランスに優れるものが得られるようになった(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、これらのゴム状弾性物質をポリプロピレン系樹脂にブレンドしても、樹脂の表面特性を改善することは困難であった。
【0005】
一方、ポリオレフィン系樹脂の表面特性を改良するために、従来は、ポリプロピレン系樹脂表面を直接酸化することにより極性基を生成させる方法、及び極性基を有する化合物やポリマーをポリプロピレン系樹脂表面に導入する方法が実施されている。ポリプロピレン系樹脂表面を直接酸化する方法としては、例えば、火炎処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射、薬品処理等が挙げられ、これらの処理によってポリプロピレン系樹脂表面に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等が生成することが知られている。また、極性基を有する化合物やポリマーをポリプロピレン系樹脂表面に導入する方法としては、極性を有する化学構造とポリプロピレン系樹脂と親和性のある化学構造とを有する化合物やポリマーを、ポリプロピレン系樹脂表面に塗布するプライマー処理や、官能基を有すルラジカル重合可能な単量体を樹脂表面に化学結合する方法等が挙げられる(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂表面を直接酸化する方法では、表面特性が時間と共に低下していくことが知られており、改良された表面特性を長期にわたって維持することは困難である。また、処理方法によっては、特殊な高額設備が必要なことから高コストであり、人体や環境に有害な影響を及ぼす危険性のあることが問題であった。さらに、成型体表面の改質には、樹脂を成型した後にその形状を保持したままで表面改質する必要があり、煩雑な工程を必要とする。また、これらの表面処理方法では、ポリプロピレン系樹脂の耐衝撃性を改善することは困難である。
【0007】
これらの背景から、ポリプロピレン系樹脂の高耐衝撃性と樹脂の表面特性の両方を改良できるポリプロピレン系樹脂改質剤、及び高耐衝撃性と樹脂の表面特性の両方に優れたポリプロピレン系樹脂組成物が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平10−158400号公報
【特許文献2】特開2008−115305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的はポリプロピレン系樹脂の高耐衝撃性と樹脂の表面特性を高度にバランスさせることができるポリプロピレン系樹脂改質剤、ならびに高耐衝撃性と樹脂の表面特性のバランスに優れたポリプロピレン系樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至ったものである。即ち、本発明は、プロピレンユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンと酢酸ビニルユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物、又はプロピレンユニット及び酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィンであって、これらのポリオレフィンに付加した不飽和カルボン酸含有量が0.1〜10重量%である不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを含むことを特徴とするポリプロピレン系樹脂用改質剤、及び当該ポリプロピレン系樹脂用改質剤を含有するポリプロピレン系樹脂組成物である。
【0011】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤は、プロピレンユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンと、酢酸ビニルユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物を含むものである。
【0013】
ここに、ポリオレフィン組成物とは、2種以上のポリオレフィンを含むものであって、例えば、2種以上の原料であるポリオレフィンをグラフト反応したものや、2種以上の原料であるポリオレフィンをそれぞれグラフト反応した上で、得られたものを混合したもの等が挙げられる。ただし、プロピレンユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンと、酢酸ビニルユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンを用いることが必須である。
【0014】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤は、プロピレンユニット及び酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィンを含むものである。
【0015】
プロピレンユニットの比率は特に限定するものではないが、ポリプロピレン系樹脂との相溶性を維持しつつ、改質剤の耐衝撃性改質効果をも維持するため、ポリオレフィン重量当たり20〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜70重量%である。一方、酢酸ビニルユニットの比率は特に限定するものではないが、改質剤の耐衝撃性改質効果を維持しつつ、ポリプロピレン系樹脂との相溶性をも維持するため、ポリオレフィン重量当たり1〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜50重量%である。
【0016】
プロピレンユニットを含有するポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)等が挙げられる。また、酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、酢酸ビニルホモポリマー等が挙げられる。また、必要に応じて使用することができる他のポリオレフィンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、超低密度ポリエチレン(V−LDPE)、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の鹸化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂(EVOH)等が挙げられる。さらに、これらのポリオレフィンの塩素化物も同様に用いることができる。
【0017】
一方、プロピレンユニット及び酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィンとしては、例えば、プロピレン−酢酸ビニルランダムコポリマー、プロピレン−酢酸ビニルブロックコポリマー、エチレン−プロピレン−酢酸ビニルランダムコポリマー等が挙げられる。
【0018】
これらのプロピレンユニットを含有するポリオレフィン、酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィン、プロピレンユニット及び酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィン、必要に応じて使用することができる他のポリオレフィンを合成するための重合方法は通常知られている方法でよく、高圧ラジカル重合、中低圧重合、溶液重合、スラリー重合等が挙げられ、使用触媒は過酸化物系触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられ、これらの触媒で重合されたポリオレフィンを使用することができる。
【0019】
本発明の原料となるプロピレンユニットを含有するポリオレフィン、酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィン、プロピレンユニット及び酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィン、必要に応じて使用することができる他のポリオレフィンの分子量の目安となるメルトマスフローレート(MFR)は特に制限されないが、溶剤の溶解性を加温時でも良好とし、また、最終的なグラフト反応物の材料強度を維持するため、好ましくは0.01〜50000(g/10分)であり、さらに好ましくは0.01〜100(g/10分)である。
【0020】
ポリオレフィンの塩素化方法は公知であり、例えば、四塩化炭素等のハロゲン系溶剤に溶解させた溶液を、紫外線照射下で塩素含有ガスと接触させてポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開昭47−8643号公報)、ポリオレフィンの粉末を水に懸濁させたスラリー中に塩素ガスを吹き込んでオレフィンを塩素化する方法(例えば、特公昭36−4745号公報)、溶剤を使用せず、ポリオレフィンを、その融点以上に加熱し、溶融させた状態で塩素ガスと接触させることで、ラジカル発生剤、紫外線照射等を用いずにポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開平3−199206号公報)が開示されている。本発明で用いる塩素化したポリオレフィンはこれらの何れの方法でも製造することができ、塩素化ポリオレフィンの製造方法には何等制限はない。
【0021】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤に含まれる不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、上記したポリオレフィン組成物又はポリオレフィンに付加した不飽和カルボン酸含有量が0.1〜10重量%であり、好ましくは0.3〜8重量%である。0.1重量%未満であるとポリオレフィン系樹脂の表面特性の改善効果に乏しく実用性に欠ける。また、10重量%を超える場合、ポリプロピレン系樹脂との相溶性に劣り、十分な耐衝撃性を発現することが困難であり実用性に欠ける。
【0022】
ここに、不飽和カルボン酸としては、例えば、不飽和モノカルボン酸類及びその誘導体、不飽和ジカルボン酸類及びその誘導体、不飽和ジカルボン酸の酸無水物類及びその誘導体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられ、不飽和モノカルボン酸類の誘導体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸類としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸類の誘導体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の酸無水物類及びその誘導体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上併用しても良い。特に接着性の観点から無水マレイン酸単独又は無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステル類の組み合わせが好ましい。
【0023】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤に含まれる不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、プロピレンユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンと酢酸ビニルユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィン、又はポリオレフィンがプロピレンユニット及び酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィンを、沸点が80〜150℃の有機溶剤に溶解し、反応圧力が1MPa以下でポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフト反応することにより製造することができる。
【0024】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤に含まれる不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、プロピレンユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンを沸点が80〜150℃の有機溶剤に溶解し、反応圧力が1MPa以下でポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフト反応してグラフトポリオレフィンを得て、一方、酢酸ビニルユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンを沸点が80〜150℃の有機溶剤に溶解し、反応圧力が1MPa以下でポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフト反応してグラフトポリオレフィンを得た上で、これらのグラフトポリオレフィンを混合することによっても製造することができる。
【0025】
不飽和カルボン酸のグラフト化反応は、ラジカル発生剤を触媒として、沸点が80〜130℃の有機溶剤中に原料であるポリオレフィンと不飽和カルボン酸とを反応させることにより行われ、好ましくは1,1,2−トリクロロエタン、より好ましくは1,1,2−トリクロロエタンに不純物として含まれるアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を除去した1,1,2−トリクロロエタン中で原料であるポリオレフィンと不飽和カルボン酸とを反応させることにより行われる。
【0026】
反応温度は特に限定するものではないが、十分な量の不飽和カルボン酸をグラフトさせるためとポリオレフィンを均一に溶解するため、70〜150℃が好ましく、80〜130℃がさらに好ましい。
【0027】
反応圧力は、高圧反応においては特殊な反応装置が必要となる上、反応操作も煩雑となって製造コストの上昇につながるため、1MPa以下である。好ましくは0〜0.7MPaである。本反応においては反応温度、及び、反応させるポリオレフィンの種類によっては均一な溶液状態からけん濁状態でグラフト反応が進行するが、できる限り均一な溶液状態でグラフト反応を進めるため、ポリオレフィンの種類によって反応温度を適宜選択することが好ましい。
【0028】
ラジカル発生剤としては、アゾ系化合物又は有機過酸化物等が用いられる。アゾ系化合物としては、α,α―アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化t−ブチル、過安息香酸t−ブチル等が挙げられる。
【0029】
アゾ系化合物又は有機過酸化物の添加量は特に制限されないが、不飽和カルボン酸のグラフト量を維持し、また、樹脂の溶融粘度の増加を防止することで成形性の低下を防止して製品品質を維持するため、ポリオレフィン100重量部に対して好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0030】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤の製造で用いられる不飽和カルボン酸、プロピレンユニットを含有するポリオレフィン、酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィン、プロピレンユニット及び酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィン、必要に応じて使用することができる他のポリオレフィンは、先に述べた通りである。
【0031】
グラフト反応の終了後、必要に応じて安定剤を添加する。安定剤にはグラフト反応時に発生するラジカルを消滅させ、グラフト反応を停止させるために添加し、通常ポリオレフィンに添加する酸化防止剤を用いるのが好ましく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0032】
グラフト反応に使用する反応容器は通常回分式(バッチ式)反応に使用する容器を用いることができ、上記反応温度、反応圧力に耐えられるものであれば差し支えなく、材質は通常ステンレス製が用いられ、必要に応じて内面がガラスライニング、フッ素コーティング処理を施したものも使用できる。
【0033】
グラフト反応で生成した不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを溶剤と分離する方法には、水蒸気蒸留、ベント付き押出機等、通常用いられる方法により両者が分離される。
【0034】
本発明で反応溶剤として用いる溶剤は、沸点が80〜150℃の有機溶剤であり、例えば、シクロヘキサン、n−ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、また、ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン系炭化水素が挙げられる。特に好ましくは、1,1,2−トリクロロエタンである。1,1,2−トリクロロエタンは、1,1,2−トリクロロエタンよりアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を除去して反応を行うことが重要である。市販されている1,1,2−トリクロロエタンは、しばしば0.5〜2.0重量%のアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を不純物として含有している。ここでいうアルコール化合物とは水酸基を有する化合物であり、例えば、エチルアルコールやブチルアルコール等が挙げられる。また、ここでいうエポキシ化合物とはエポキシ基を有する化合物であり、例えば、1,2−エポキシプロパンや1,2−エポキシブタン等が挙げられる。
【0035】
アルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を不純物として含有する1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として用いて合成された不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは淡黄色に着色しており、その用途が限られるため、アルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を除去した1,1,2−トリクロロエタンを用いて反応を行うことが好ましい。
【0036】
アルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を除去した1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として合成されたポリプロピレン系樹脂用改質剤は無色透明であり、熱安定性が良好で、ポリプロピレン系樹脂の色調を損なうことなく、良好な相溶性を有するポリプロピレン系樹脂用改質剤となる。
【0037】
別々に製造したグラフトポリオレフィンを混合する方法としては、例えば、別々にグラフト反応して得られたグラフトポリオレフィンの各反応溶液を混合した後に、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンと溶剤を分離する方法、別々にグラフト反応して得られたグラフトポリオレフィンの各反応溶液を溶剤と分離した後に、混練機等で混合する方法等が挙げられる。
【0038】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤に含まれる不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、先に述べたような原料ポリオレフィンの種類に従い、例えば、不飽和カルボン酸グラフトプロピレン/エチレン・酢酸ビニル共重合体混合物などが挙げられる。
【0039】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンには、必要に応じて、他樹脂、エラストマー又はゴム成分、各種添加剤等を配合することができる。
【0040】
他樹脂としては、例えば、グラフト反応が施されていない上記ポリオレフィン樹脂のみならず、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸−メチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテル−エーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、セルロース、石油樹脂などが挙げられる。必要に応じて、反応性の官能基、又は末端基を有する他の樹脂と本発明の不飽和カルボン酸基とを化学反応させることが可能であり、これら官能基間の物理的相互作用を利用したブレンドが可能である。さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を第三成分として添加し他樹脂との相溶性を向上させる、又は接着性を向上させることも可能である。
【0041】
エラストマー又はゴム成分としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマー(TPE)としてはSBS、SIS等のスチレン系TPE(SBC)、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリマミド系エラストマー(TPA)、シリコーン系TPE、フッ素系TPEが例示される。
【0042】
各種添加剤としては、例えば、次のものが挙げられる。酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤等が挙げられ、その他安定剤としては有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、充填剤としては、例えば、球状フィラー、板状フィラー、繊維状フィラー等が挙げられる。さらに滑剤としては高級脂肪酸金属塩として例えばステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、さらにはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩等が挙げられる。その他の添加剤としては、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、天然油、合成油、ワックス、可塑剤、造核剤、重金属不活性化剤等が挙げられる。
【0043】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤は、得られた不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンをペレット又はシート状等に成型加工することによって得ることができる。成型加工としては、例えば、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを押出機で紐状に成型してこれをペレタイザーでペレット化する方法、押出機でシート状に成型する方法、カレンダー成型機を用いてシート状に成型する方法等が挙げられるが、これらの方法に制限されることはなく、任意の方法によって成型加工することが可能である。
【0044】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤には、必要に応じて、上記した他樹脂、エラストマー又はゴム成分、各種添加剤等を配合することができる。
【0045】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂用改質剤によってその性質が改質されるポリプロピレン系樹脂は、例えば、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。その製造方法についても特に限定されるものではなく、一般には、いわゆるチタン含有固体状遷移金属と有機金属とを組み合わせたチーグラー・ナッタ触媒、特に、遷移金属成分がチタンであり、マグネシウム及びハロゲンを必須成分とし、有機金属成分が有機アルミニウム化合物である触媒を用いて、スラリー重合、気相重合、バルク重合、溶液重合など、またはこれらを組み合わせた重合法で製造される。ポリプロピレンホモポリマーの場合は、上記の重合法の1段または多段で、プロピレンを単独重合することによって得られ、ポリプロピレンブロックコポリマー及びポリプロピレンランダムコポリマーの場合は、プロピレンと炭素数2または4〜12のα−オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどを1種類以上、好ましくは炭素数2のエチレンとを1段または多段で共重合させることによって得られる。この中で、ポリプロピレン系樹脂がポリプロピレンブロックコポリマーの場合は、α−オレフィンの割合は一般に40重量%以下、好ましくは1〜25重量%、特に好ましくは2〜20重量%が好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂がポリプロピレンランダムコポリマーの場合は、α−オレフィンの割合は10重量%以下が好ましく、特に0.5〜7重量%が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂は、2種類以上を併用してもよく、さらに、必要に応じてポリプロピレン系樹脂にあらかじめ前記の着色剤、充填剤、各種添加剤をブレンドしておいても構わない。
【0046】
本発明のポリプロピレン系樹脂用改質剤によってその性質が改質されるポリプロピレン系樹脂は、そのメルトフローレートに関しては特に限定されるものではない。ただし、得られるポリプロピレン系樹脂組成物が成型加工、耐衝撃性に優れるためには、230℃、2160gの荷重下で測定した値が1〜200g/10分であることが好ましい。
【0047】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂用改質剤とポリプロピレン系樹脂を公知の種々の方法、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー型インターナルミキサー、バンバリーミキサー、ロール、ニーダー、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサーなどの適当な混練機を用いて、ポリプロピレン系樹脂の結晶融点以上の温度で加熱混練する方法などを用いて調製される。
【0048】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物におけるポリプロピレン系樹脂用改質剤とポリプロピレン系樹脂の割合は特に限定するものではないが、耐衝撃性及び表面特性の改善効果をより発揮し、かつ樹脂材料としての剛性を維持するため、ポリプロピレン系樹脂用改質剤/ポリプロピレン系樹脂が重量比で1/99〜50/50であることが好ましい。
【0049】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、上記した他樹脂、エラストマー又はゴム成分、各種添加剤を配合することができる。
【0050】
このようにして得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、周知の射出成型、押出成型、圧縮成型、ブロー成型、インジェクションブロー成型、インフレーション成型、キャストフィルム成型等の成型法に適用される樹脂成型用素材として使用される。
【発明の効果】
【0051】
本発明により得られる不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを含むポリプロピレン系樹脂用改質剤は、ポリプロピレン系樹脂の高耐衝撃性と樹脂の表面特性を高度にバランスさせることができる特性を有していることから、産業上、極めて広い範囲に応用できる。さらに、当該ポリプロピレン系樹脂用改質剤をブレンドすることによって高耐衝撃性と樹脂の表面特性のバランスに優れたポリプロピレン系樹脂組成物を提供できるものである。
【実施例】
【0052】
次に実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。
【0053】
なお、これらの実施例で用いた値は以下の測定法に準拠して得られたものである。
【0054】
<原料>
本発明の実施例には以下の原料を使用した。
【0055】
(1)PP1
ランダムポリプロピレン:株式会社プライムポリマー製 F−724NP(MFR=6.9g/10分、密度=900kg/m
(2)PP2
ホモポリプロピレン:株式会社プライムポリマー製 J―900GP(MFR=13g/10分、密度=900kg/m
(3)EVA1
エチレン・酢酸ビニル共重合体:東ソー株式会社製 ウルトラセン(登録商標)751(酢酸ビニル含有量=28重量%、MFR=5.7g/10分、密度=952kg/m
(4)EVA2
エチレン・酢酸ビニル共重合体:ランクセス社製 レバプレン(登録商標)600HV(酢酸ビニル含有量=60重量%、密度=1070kg/m
(5)L−LDPE
エチレン・ヘキセン−1共重合体:東ソー株式会社製 ニポロン−Z(登録商標)ZF230(MFR=2.0g/10分、密度=920kg/m
(6)EP
エチレン・プロピレン共重合体:JSR株式会社製 EP11[プロピレン含有量:50重量%、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃):40]
(7)ベンゾイルパーオキサイド(BPO)
日本油脂株式会社製 ナイパーB
(8)2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)
株式会社エーピーアイコーポレーション ヨシノックスBHT
(9)無水マレイン酸、1,1,2−トリクロロエタン、トルエン、メタノール、ジメチルホルムアミド、BHT、26%硫酸水溶液、チモールブルー指示薬、N/20のKOH溶液は関東化学株式会社製の1級試薬を用いた。
【0056】
<酸価>
ポリマーサンプル1gを秤量し、トルエン100mlに加熱溶解させた後、メタノール10ml、ジメチルホルムアミド10ml、水0.5mlを加える。引き続き、チモールブルー指示薬1mlを加え、N/20のKOH溶液(n−プロパノール/ベンゼン溶液)で滴定し、青紫色が1分以上持続する点を終点として算出した。
【0057】
<イエローインデックス(YI)の測定>
JIS K7105(1981年版)に準拠して、(株)神藤金属工業所製 復動式圧縮成形機WFA−50を用いて加熱温度150℃、圧力10MPa、10分間、冷却温度30℃、圧力10MPa、5分間の条件でプレスした厚さ100μmのフィルムのYIをスガ試験機(株)製 SMカラーコンピューターを用いて測定した。
【0058】
<シャルピー衝撃強さ>
JIS K7111(2006年)に準拠し、東洋精機(株)製シャルピー衝撃強さ試験機DG−UAを用いて行った。測定試料は、加熱温度180℃、圧力10MPa、10分間、冷却温度30℃、圧力10MPa、5分間の条件でプレスした厚さ4mmの板から形状試験片を切り出して用いた。その他の試験条件は以下に従って行った。
【0059】
試験片:80mm×10mm×4mm(タイプ1)、V−ノッチ、r=0.25mm
試験方法:方法1eA(エッジワイズ衝撃)
<接触角測定>
協和界面科学社製の全自動接触角計DM500を用いて行った。測定試料は、加熱温度180℃、圧力10MPa、10分間、冷却温度30℃、圧力10MPa、5分間の条件でプレス成型したものを用いた。その他の試験条件は以下に従って行った。
【0060】
測定法:液滴法
解析法:θ/2法
視野:スタンダード
液種類:純水
液量:約1μl
針先:22G
測定温度:23℃±2℃
実施例1〜3
関東化学株式会社製の1,1,2−トリクロロエタン5000重量部と26%硫酸水溶液2500重量部とを下口付き10リッターフラスコに入れ激しく撹拌し、静置後下層の有機層を抜き出した。次に抜き出した有機層と蒸留水5000重量部とを下口付き10リッターフラスコに入れ激しく撹拌し、静置後下層の有機層を抜き出す操作を3回繰り返すことによって不純物の1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除いた。さらに抜き出した有機層にモレキュラーシーブス4Aを150重量部添加しスターラーで撹拌することによって脱水した。
【0061】
30リッターのオートクレーブに上記の操作により1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除去した1,1,2−トリクロロエタン28800重量部、表1に示した組成のポリオレフィンを計2304重量部、並びに無水マレイン酸225重量部を仕込んだ。反応器を110℃に昇温し、その後110℃で3時間保持することによってポリオレフィンを均一に溶解した。またこの間、反応器に5リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。次に反応器を110℃から100℃に降温し、グラフト反応の触媒(ラジカル発生剤)として3.7重量部のBPOを1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除去した1,1,2−トリクロロエタン1150重量部に溶解した触媒溶液を連続的に反応器へと3時間をかけて添加しつつグラフト反応を行った。続いて同温度で2時間反応を継続した。反応器の圧力は反応を通して1MPa以下に保った。反応の終了後、常圧に戻し、安定剤として2.3重量部のBHTを添加した後、この溶液をメタノールにより再沈させて、生成物としての不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0062】
得られた生成物の不飽和カルボン酸含有量、YI値は表1に示す。
【0063】
得られた不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、単軸押出機(東洋精機(株)製)を用いて、200℃、50rpmで溶融押出し、ロッド状の溶融混練物を水冷した後にストランドカットし、60℃設定の乾燥機で水分を除去することによってペレット状のポリプロピレン系樹脂用改質剤を得た。
【0064】
このようにして得たポリプロピレン系樹脂用改質剤と、ペレット状のPP2を表1に記載の比率で十分に混合したものを、単軸押出機(東洋精機(株)製)を用いて、200℃、50rpmで溶融押出し、ロッド状の溶融混練物を水冷した後にストランドカットし、60℃設定の乾燥機で水分を除去することによってペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0065】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

実施例4
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィン比率を表1に記載した内容に変更し、ラジカル開始剤を増量することにより、付加した無水マレイン酸含有量が1.41重量%となったポリプロピレン系樹脂用改質剤を用いた以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0067】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表1に合わせて示す。
【0068】
実施例5
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィン比率を表1に記載した内容に変更し、無水マレイン酸を減量することにより、付加した無水マレイン酸含有量が0.25重量%となったポリプロピレン系樹脂用改質剤を用いた以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0069】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表1に合わせて示す。
【0070】
実施例6〜7
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィンであるPP1をEPに変更し、原料ポリオレフィン比率を表2に記載した内容に変更することにより得られたポリプロピレン系樹脂用改質剤を用いた以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0071】
【表2】

得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表2に示す。
【0072】
実施例8〜9
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィン比率を表2に記載した内容に変更し、ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂用改質剤の比率を表2に記載した内容に変更した以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0073】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表2に合わせて示す。
【0074】
実施例10
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィン比率を表2に記載した内容に変更し、ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂用改質剤の比率を表2に記載した内容に変更した以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0075】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表2に合わせて示す。
【0076】
実施例11
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィン比率を表3に記載した内容に変更した以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0077】
【表3】

得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表3に示す。
【0078】
実施例12
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィンであるEVA1をEVA2に変更し、原料ポリオレフィン比率を表3に記載した内容に変更することにより得られたポリプロピレン系樹脂用改質剤を用いた以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0079】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表3に合わせて示す。
【0080】
実施例13
30リッターのオートクレーブに実施例1と同一の操作により得られた1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除去した1,1,2−トリクロロエタン28800重量部、原料ポリオレフィンとしてPP1を2304重量部、並びに無水マレイン酸225重量部を仕込んだ。反応器を110℃に昇温し、その後110℃で3時間保持することによってポリオレフィンを均一に溶解した。またこの間、反応器に5リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。次に反応器を110℃から100℃に降温し、グラフト反応の触媒(ラジカル発生剤)として3.7重量部のBPOを1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除去した1,1,2−トリクロロエタン1150重量部に溶解した触媒溶液を連続的に反応器へと3時間をかけて添加しつつグラフト反応を行った。続いて同温度で2時間反応を継続した。反応器の圧力は反応を通して1MPa以下に保った。反応の終了後、常圧に戻し、安定剤として2.3重量部のBHTを添加することによって無水マレイン酸グラフトPP溶液を得た後、この溶液をメタノールにより再沈させて、生成物としての無水マレイン酸グラフトPPを得た。
【0081】
また、原料ポリオレフィンをEVA1に変えた以外は上記と同一の方法にて無水マレイン酸グラフトEVA溶液を得た。
【0082】
得られた無水マレイン酸グラフトPP及び無水マレイン酸グラフトEVAを8インチ混練ロール(関西ロール社製)を用いて混合することにより目的の不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを得た。
【0083】
得られた不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの不飽和カルボン酸含有量、YI値は表3に合わせて示す。
【0084】
得られた不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、単軸押出機(東洋精機(株)製)を用いて、200℃、50rpmで溶融押出し、ロッド状の溶融混練物を水冷した後にストランドカットし、60℃設定の乾燥機で水分を除去することによってペレット状のポリプロピレン系樹脂用改質剤を得た。
【0085】
このようにして得たポリプロピレン系樹脂用改質剤と、ペレット状のPP2を表3に記載の比率で十分に混合したものを、単軸押出機(東洋精機(株)製)を用いて、200℃、50rpmで溶融押出し、ロッド状の溶融混練物を水冷した後にストランドカットし、60℃設定の乾燥機で水分を除去することによってペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0086】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表3に合わせて示す。
【0087】
比較例1
ポリプロピレン系樹脂用改質剤を添加しないポリオレフィン系樹脂単独のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表4に示す。シャルピー衝撃強さは低く、接触角も大きいものであった。
【0088】
【表4】

比較例2
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィンを表4に記載した内容に変えた以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0089】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表4に合わせて示す。シャルピー衝撃強さは低いものであった。
【0090】
比較例3
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィンを表4に記載した内容に変えた以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物の作製を試みたが、ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂用改質剤が均一に混合できなかった。
【0091】
比較例4
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィン比率を表4に記載した内容に変更し、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の無水マレイン酸を減量することにより、付加した無水マレイン酸含有量が0.05重量%となったポリプロピレン系樹脂用改質剤を用いた以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0092】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表4に合わせて示す。接触角は大きいものであった。
【0093】
比較例5
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィンであるEVAをL−LDPEに変更し、ポリオレフィン比率を表4に記載した内容に変更することにより得られたポリプロピレン系樹脂用改質剤を用いた以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0094】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表4に合わせて示す。シャルピー衝撃強さは低いものであった。
【0095】
比較例6
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィンであるPP1をEPに変えてポリオレフィン比率を表5に記載した内容に変更し、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の無水マレイン酸を減量することにより、付加した無水マレイン酸含有量が0.03重量%となったポリプロピレン系樹脂用改質剤を用いた以外は実施例1と同一の方法でポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0096】
【表5】

得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表5に示す。接触角は大きいものであった。
【0097】
比較例7
無水マレイン酸グラフトPP溶液及び無水マレイン酸グラフトEVA溶液を合成する反応において、無水マレイン酸の添加量を減量することにより、得られた不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンに付加した無水マレイン酸含有量が0.02重量%となったポリプロピレン系樹脂用改質剤を用いた以外は実施例13と同一の方法で合成した目的のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0098】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さ、及び接触角測定結果を表5に合わせて示す。接触角は大きいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンと酢酸ビニルユニットを含有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物、又はプロピレンユニット及び酢酸ビニルユニットを含有するポリオレフィンであって、これらのポリオレフィンに付加した不飽和カルボン酸含有量が0.1〜10重量%である不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを含むことを特徴とするポリプロピレン系樹脂用改質剤。
【請求項2】
ポリオレフィン中のプロピレンユニット含有量が20〜80重量%であり、酢酸ビニルユニット含有量が1〜60重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂用改質剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂用改質剤とポリプロピレン系樹脂を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
ポリプロピレン系樹脂用改質剤とポリプロピレン系樹脂の割合が重量比で1/99〜50/50であることを特徴とする請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−111831(P2010−111831A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287954(P2008−287954)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】