説明

ポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法およびそのポリマー

【課題】ポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法に関し、短時間の反応で製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を原料とし、非酸化性脱水溶媒中でポリベンズゾオキサゾールポリマーを製造するに際し、150℃以下の温度の前期重合段階と200℃以上の温度で重合させる後期重合段階とを設け、少なくとも後期重合段階を混練型反応装置中で実施して重合反応を完結させることを特徴とするポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法。
【化14】


Ar1はベンゼン環またはナフタレン環を2個以下含む4価の有機基、Ar2はベンゼン環又はナフタレン環を2個以下含む2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1〜6の1価の有機基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法に関する。さらに詳しくは、ポリベンゾオキサゾールポリマーを短時間の反応で生産できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンゾオキサゾールポリマーは非常に優れた耐熱性と強度、弾性率を持つポリマーとして注目されており、その重合方法、フィルム、繊維への成形が開示されている(特許文献1〜4および非特許文献1等参照)。
【特許文献1】米国特許 第4,533,692号明細書
【特許文献2】米国特許 第4,847,350号明細書
【特許文献3】米国特許 第5,089,591号明細書
【特許文献4】米国特許 第5,075,392号明細書
【非特許文献1】Wolf et al, Macromolecules, 14, 909 (1981)
【0003】
繊維に成形する場合には、例えば、ポリベンゾオキサゾールのポリリン酸溶液を紡糸口金から押出し、エアギャップを経てリン酸水溶液凝固浴を通して繊維状とし、水で十分に洗浄してリン酸を抽出した後、乾燥してポリベンゾオキサゾール繊維とすることが出来る。
【0004】
上記公知技術はいずれもが、出発物質としてジアミノレゾルシノールまたはビスアミノフェノール化合物およびそれらの鉱酸塩と、芳香族ジカルボン酸またはその酸クロライドを用いている。所望の成型品物性を得るためには重合度を精度良く制御して、高重合度のポリマーを得る必要があるが、そのためにはアミノフェノールとカルボン酸の量論比を厳密にコントロールしなくてはならない。工業的に生産する際には、この量論比のコントロールは非常に重要で、また難易度の高い技術である。
【0005】
こうした困難を解消する方法として、以下の特許文献5、6および非特許文献2の技術が挙げられる。
すなわち、特許文献5では、ポリベンゾオキサゾールの例が示されており、1段目で低重合度のオリゴマーを合成し、2段階目で目的重合度となるように鎖延長剤としてモノマーの追加している。こうすることで1段目での量論比のコントロールの精度を粗くしても2段目で精度良く、重合度を調整することを可能としている。しかし、この方法では反応工程が長くなり、設備も大きなものになってしまう問題があった。
また、特許文献6ではジアミノレゾルシノールと芳香族ジカルボン酸の塩を合成し、それをポリリン酸中で重合する方法が開示されている。この方法によれば、ジアミノフェノールとジカルボン酸があらかじめ1:1の比で結合しているために、量論比のコントロールが非常に容易になる。しかし、モノマー塩の安定性は必ずしも十分ではなく、また、劣化抑制のために重合に長時間必要とする問題があった。
一方、非特許文献2ではジアミノレゾルシノールとテレフタル酸を1:1で反応させた形の化合物を用いて重合する方法が開示されている。この方法は原料の不安定さも解消された優れた方法であるが、この方法でも、24時間以上の長時間の重合を必要とする問題があった。
このため、工業生産においては、経済性の点より、高重合度のポリベンゾオキサゾールポリマーをより効率的に得る製造技術の確立が強く望まれていた。
【特許文献5】米国特許 第5,194,568号明細書
【特許文献6】米国特許 第5,276,128号明細書
【非特許文献2】Dotrong et al, J. polym. Sci part:A., 35, 3451 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、ポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法に関し、短時間の反応で安定に製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果遂に本発明を完成するに到った。すなわち、第1の発明は、下記一般式(1)で表される化合物を原料とし、非酸化性脱水溶媒中でポリベンゾオキサゾールポリマーを製造するに際し、150℃以下の温度の前期重合段階と200℃以上の温度で重合させる後期重合段階とを設け、少なくとも後期重合段階を混練型反応装置中で実施して重合反応を完結させることを特徴とするポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法である。
【化2】

Ar1はベンゼン環またはナフタレン環を2個以下含む4価の有機基、Ar2はベンゼン環又はナフタレン環を2個以下含む2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1〜6の1価の有機基を表す。
第2の発明は、全重合反応時間を6時間以内とすることを特徴とする第1の発明に記載のポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法である。
第3の発明は、非酸化性脱水溶媒がポリ燐酸、五酸化リン又はメタンスルホン酸およびそれらの混合物から選ばれた重合溶媒であり、還元剤を含有することを特徴とする第1又は第2の発明に記載のポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法である。
第4の発明は、第1〜3の発明のいずれかに記載の方法で得られたポリマーであって、メタンスルホン酸中、25℃、0.05g/dlで測定した固有粘度が、5dl/g以上であることを特徴とするポリベンゾオキサゾールポリマーである。
第5の発明は、第1〜3の発明のいずれかに記載の方法で得られたポリマーであって、メタンスルホン酸中、25℃、0.05g/dlで測定した固有粘度が、20dl/g以上であることを特徴とするポリベンゾオキサゾールポリマーである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高重合度のポリベンゾオキサゾールポリマーを6時間以内の短時間でも効率よく安定に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず本発明におけるポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法は下記一般式(1)の化合物を原料として用いることを特徴としている。
【化3】

Ar1はベンゼン環またはナフタレン環を2個以下含む4価の有機基、Ar2はベンゼン環またはナフタレン環を2個以下含む2価の有機基、Rは水素原子または炭素数1〜6の1価の有機基を表す。
【0010】
上記一般式(1)の化合物の中で、好ましい化合物としては、具体的に以下の化合物が挙げられる。これらの化合物のカルボン酸は炭素数1〜6のアルコールとのエステルを形成していても良い。これらは単独で用いてもよく、複数を混合して使用しても良い。また、ポリマーの構成単位の10モル%を超えない範囲で、他のビスヒドロキシアミンや芳香族ジカルボン酸および/またはその誘導体を併用しても良い。
【化4】

【0011】
【化5】

【0012】
【化6】

【0013】
【化7】

【0014】
【化8】

【0015】
【化9】

【0016】
【化10】

【0017】
【化11】

【0018】
【化12】

【0019】
【化13】

【0020】
併用できるビスヒドロキシアミン類としては、好ましくは、4,6−ジアミノレゾルシノール、2−メチル−4,6−ジアミノレゾルシノール、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、4,4'−ジヒドロキシベンジジンなどが挙げられる。
【0021】
また、併用できる芳香族ジカルボン酸としては、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4'−ビス安息香酸、3,4'−ビス安息香酸、4,4'−オキシビス安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸およびそれらの酸クロライド化合物、低級アルコールエステルなどが挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物は、溶解性の面から微粒子状であることが好ましいが、その形状、大きさは特に限定されない。好ましくは光散乱式粒度分布計で測定したメジアン径が5ミクロン以上1mm以下、さらに好ましくは10ミクロン以上500ミクロン以下である。
【0023】
本発明に用いられる溶媒としては、脱水作用を持つ非酸化性溶媒であることが必要である。従来公知のポリ燐酸、メタンスルホン酸を用いることが出来、適宜、五酸化リンを加えて脱水能力やポリマーの溶解性を調整することが出来る。
好ましい溶媒は、ポリリン酸と五酸化リンの混合溶媒およびメタンスルホン酸と五酸化リンの混合溶媒である。特にポリリン酸と五酸化リンの混合溶媒が好ましい。この場合、ポリリン酸の濃度は110%以上が好ましく、さらに好ましくは115%以上である。
【0024】
ポリマーの濃度は、ポリマーが析出しない濃度であれば特に限定されないが、液晶性が発現する濃度であることが好ましい。また生産性の面からも高濃度であることが好ましく、10%以上が好ましい。しかし、あまり高濃度にすると溶液の粘度が高くなりすぎるので、20%以下が適当である。
【0025】
また、本発明においては、この溶媒中には還元剤を含むことが好ましい。好ましい還元剤としては塩化第一錫、塩化亜鉛などがあげられ、特に塩化第一錫が着色も無く好ましい。還元剤の量は特に制限は無いが、ポリマーに対し500〜10000ppmが好ましい。
【0026】
本発明において、一般式(1)で表される化合物は反応溶媒中に一度に投入されても分割して投入されてもかまわない。
【0027】
重合度の調整は、先に挙げた、芳香族ジカルボン酸類あるいは、ジアミノフェノール類を加えることによって可能であるが、末端停止剤を使用しても良い。末端停止剤としては安息香酸、o-アミノフェノールなどを用いることが出来る。こうした重合度の調整用化合物は、重合初期から投入しても良いし、反応がある程度進行し、オリゴマーが形成されてから投入してもよい。
【0028】
本発明において、反応温度を適切に設定することが重要である。一般に温度の反応に対する影響は非常に大きく、高温で反応させるほど反応は早くなる。高温では、重合反応も速くなるが、同時に副反応、特にアミノ基の分解反応も加速され、相対的に分解反応が多くなってしまう。この分解反応は分子量が大きくなるにつれ、つまり重合度が上がるにつれ抑制される傾向にあるので、温度プロファイルを適切に設定することが重要である。
【0029】
本発明における前期重合段階とは、重合反応液が粘凋なスラリー状になるまでの低重合度段階を意味し、この重合温度は150℃以下で重合反応が進行する温度であり、重合条件は70〜150℃の温度で5分〜3時間程度の重合時間が好ましい。
後期重合段階とは、前期重合段階で得られた低重合度物を、目的とする高重合度物にするための段階を言い、重合温度は200℃以上とする。重合条件は、200〜250℃程度の温度で15分〜4時間程度が、重合反応が速いのみならず分解反応を抑制できるため好ましい。
本発明においては、前期重合段階と後期重合段階と含めた全重合反応時間が6時間以内とすることが好ましい。
【0030】
反応装置としては、前期重合段階では、重合度が低く粘度は高くないため、アンカー翼型攪拌機、ダブルヘリカルリボン翼型攪拌機などの一般的な攪拌装置を備えた反応器でよいが、後期重合段階では、重合度が高く高粘度になるため、高粘度でも攪拌が可能な混練型の攪拌が必要であり、このために少なくとも後期重合段階は混練型反応装置で重合反応を進行させることが必要である。
かかる混練型反応装置としては、双腕型攪拌機を備えた遊星攪拌装置、高粘度でも攪拌可能なリボン型の攪拌翼を備えた反応装置、セルフクリーニング性をもった二軸押出機、排出機構のついた横型送形反応機などが挙げられる。また、こうした反応装置を反応の各段階の粘度に応じて適宜組み合わせて使用することが出来る。特に後期重合段階では、高粘度でも攪拌が容易で重合反応時間を短縮できる点で二軸押出機を用いることが好ましい。また、二軸押出機は、重合反応を速め分解反応を抑制する効果にも優れている。
【0031】
本発明において得られるポリマーは、ポリマー濃度が0.05g/dlの濃度になるように、蒸留したメタンスルホン酸で溶解・希釈し、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した固有粘度が5dl/g以上を示す重合度であることが必要である。また用途によっては20dl/g以上を示す重合度であることが必要であり、好ましくは24dl/g以上である。また、あまり高重合度であると、成形時の粘度が高くなりすぎて成形性が損なわれることがあるので、上限は40dl/g程度以下であることが好ましい。
【0032】
本発明において、ポリマーの耐久性を向上させたり、接着性を改善するなど、機能を付与するために添加剤をポリマードープ中に添加しても良い。添加時期は特に限定されず、重合初期でも後期でも良い。用いられる添加剤の例としては、ヨウ化銅のような無機化合物、フタロシアニンのような有機化合物などが挙げられる。
【0033】
こうして得られたポリベンゾオキサゾールポリマーは、従来公知の方法を用いて、繊維やフィルムに加工することが出来る。例えば、繊維に加工する場合には、米国特許第4,533,683号などの方法を適用すればよい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によってさらに詳しくこの発明を説明するが、これら実施例によってこの発明は限定されるものではない。
1.固有粘度の測定
ポリベンゾオキサゾールポリマーまたはそのポリリン溶液を、ポリマー濃度が0.10.05g/dlの濃度になるように、蒸留したメタンスルホン酸で溶解・希釈し、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した。
【0035】
2.芳香族ジアミンのHPLC分析法による純度評価
下記条件で測定した。純度はピーク面積比で算出した。
装置: 日立製作所製の以下のパーツを組み合わせたシステム
送液ポンプ:L6200、検出器:L4200、カラム高温槽:L5020
脱気装置:L−5020、インテグレーター:D−2500
カラム: Zorbax−BP C8 φ4.6×250mm
移動相: アセトニトリル/水=5/5(vol/vol)、
リン酸0.0085モル/l
流速: 1ml/min
検出: UV(230nm)
展開温度:50℃
試料濃度:1mg/ml
試料注入量:20μl
【0036】
実施例1
(芳香族ジアミン)
J. polym. Sci part:A., 35, 3451 (1997)に記載の方法で合成した4−[5−アミノ−6−ヒドロキシベンゾオキサゾール−2−イル]ベンゾイックアシッド(ABA)を、メタノール/DMF溶媒を用いて再結晶で精製し、HPLCで測定した純度が99%以上のものを用いた。
(ポリベンゾオキサゾールの調製)
ダブルヘリカルリボン翼型攪拌機、固形分投入口および液体投入口を備えた50lのステンレス鋼製の反応器に、116%PPA26.49kg、五酸化二リン3.50kg、上記方法で調製したABA5.77kg(21.35モル)、第一塩化すず200gを投入し、反応器のジャケット温度を100℃にコントロールしながら、3時間攪拌した。こうして出来た粘凋なスラリーを上流側から150℃、170℃、200℃、220℃、170℃に其々設定された、5つのヒーティングゾーンを持つ2軸押出機に、ギヤポンプを用いて供給した。同時に末端停止剤として、安息香酸の20%ポリリン酸溶液をギヤポンプを用いて、ABAに対して1モル%となるように、2軸押出機に供給した。2軸押出機内での平均滞留時間が1時間となるように吐出量を調整して重合反応をおこなった。押し出し機出口からサンプリングしたポリマードープをメタンスルホン酸で希釈し、固有粘度を求めたところ、32dl/gであった。またこのポリマードープの色は、黄色であった。このドープ100gをリボン型翼を備えた300mlセパラブルフラスコに入れ、さらに3時間200℃で加熱攪拌したが、固有粘度は変化せず、反応が完結していることが確認できた。
(ポリベンゾオキサゾール繊維の製造)
上記ポリマードープを用い、孔数334、孔径0.22mm、口金面積54.1cm2のノズルから、ポリマードープ吐出量158g/分、口金温度180℃の条件で、ギヤポンプを用いて紡出し、温度60℃の冷却風で糸条を冷却、ついでリン酸水溶液の凝固浴に導き、ゴデットロールで巻き取った。巻き取った糸条を水洗し、リン酸を抽出した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和、再度水洗を行い、200℃で乾燥させた。得られたポリベンゾオキサゾール繊維の強度は39cN/dtexであった。
【0037】
実施例2
2軸押出機の温度設定を、上流側から120℃、170℃、220℃、220℃、150℃とし、2軸押出機内での平均滞留時間を30分とした以外は、実施例1と同様に反応させた。出来たポリマードープの色は黄色で、固有粘度は24dl/gであった。このドープ100gをリボン型翼を備えた300mlセパラブルフラスコに入れ、さらに3時間200℃で加熱攪拌したが、固有粘度は変化せず、反応が完結していることが確認できた。
【0038】
実施例3
双腕型攪拌機、固形分投入口および液体投入口を備えた50lのステンレス鋼製の反応器に、116%PPA31.00kg、五酸化二リン7.50kg、上記方法で調製したABA5.77kg(21.35モル)、第一塩化すず500gを投入し、反応器のジャケット温度を140℃にコントロールしながら、2時間攪拌した。こうして得られたこうして出来た粘凋なスラリーを実施例1と同様の条件で反応させた。得られたポリマーは黄色で、固有粘度は26dl/gであった。このドープ100gをリボン型翼を備えた300mlセパラブルフラスコに入れ、さらに3時間200℃で加熱攪拌したが、固有粘度は変化せず、反応が完結していることが確認できた。
【0039】
実施例4
5つのヒーティングゾーンを持つ30mmφの2軸押出の温度設定を上流側から130℃、150℃、220℃、220℃、180℃とし、滞留時間が1.5時間となるように押出機の回転数、パドル構成を設定した。第1ゾーンに100℃に加熱した117%ポリリン酸を20cc/分でギヤポンプで供給しつつ、ABAをスクリュー型粉体供給装置を用いて6g/分の速度で、同じく第1ゾーンに供給した。
第4ゾーンに20%アミノフェノール/ポリリン酸溶液を0.5cc/分の速度で添加した。得られたポリマーの固有粘度は22dl/gで、ポリマー色調は黄色であった。このドープ100gをリボン型翼を備えた300mlセパラブルフラスコに入れ、さらに3時間200℃で加熱攪拌したが、固有粘度は変化せず、反応が完結していることが確認できた。
【0040】
実施例5
安息香酸の20%ポリリン酸溶液をギヤポンプを用いて、ABAに対して2モル%となるように、2軸押出機に供給した以外は、実施例1と同様に反応させた。出来たポリマードープの色は黄色で、固有粘度は15dl/gであった。このドープ100gをリボン型翼を備えた300mlセパラブルフラスコに入れ、さらに3時間200℃で加熱攪拌したが、固有粘度は変化せず、反応が完結していることが確認できた。
【0041】
比較例1
50lのステンレス鋼製の反応器の温度を180℃とした以外は、実施例1と同様に反応をおこなった。ポリマードープの色は濃い緑色で、固有粘度は17dl/gであった。このドープ100gをリボン型翼を備えた300mlセパラブルフラスコに入れ、さらに3時間200℃で加熱攪拌したが、固有粘度は変化せず、反応が完結していることが確認できた。
(ポリベンゾオキサゾール繊維の製造)
上記ポリマードープを用い、孔数334、孔径0.22mm、口金面積54.1cm2のノズルから、ポリマードープ吐出量158g/分、口金温度180℃の条件で、ギヤポンプを用いて紡出することを試みたが、糸切れが多発し、生産性に乏しい結果となった。
【0042】
比較例2
2軸押出機のヒーター温度の設定を150℃、180℃、180℃、180℃、170℃とし、平均滞留時間を1.5時間となるようにした以外は実施例1と同様に反応をおこなった。得られたポリマーの固有粘度は、8dl/gと低かった。このドープ100gをリボン型翼を備えた300mlセパラブルフラスコに入れ、さらに3時間200℃で加熱攪拌すると、固有粘度は29dl/gになり、2軸押し出し機では反応が完結していなかったことが確認できた。
【0043】
比較例3
アンカー翼型攪拌機、固形分投入口および液体投入口を備えた50lのステンレス鋼製の反応器に、116%PPA26.49kg、五酸化二リン3.50kg、上記方法で調製したABA5.77kg(21.35モル)、第一塩化すず200gを投入し、反応器のジャケット温度を100℃にコントロールしながら、3時間攪拌した。さらに160℃で2時間反応させたのち、210℃で反応させた。1時間おきにポリマーをサンプリングし、固有粘度を測定した。固有粘度が最大となったのは、8時間後でその固有粘度は22dl/gであった。ポリマードープはところどころ緑色に変色しており、攪拌翼に巻きついて、反応缶から取り出すことが出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法は、従来になく短時間で、しかも安定して製造が可能であるため、製造コストの低減など産業上の寄与が大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を原料とし、非酸化性脱水溶媒中でポリベンゾオキサゾールポリマーを製造するに際し、150℃以下の温度の前期重合段階と200℃以上の温度で重合させる後期重合段階とを設け、少なくとも後期重合段階を混練型反応装置中で実施して重合反応を完結させることを特徴とするポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法。
【化1】

Ar1はベンゼン環またはナフタレン環を2個以下含む4価の有機基、Ar2はベンゼン環又はナフタレン環を2個以下含む2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1〜6の1価の有機基を表す。
【請求項2】
全重合反応時間を6時間以内とすることを特徴とする請求項1に記載のポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法。
【請求項3】
非酸化性脱水溶媒がポリ燐酸、五酸化リン又はメタンスルホン酸およびそれらの混合物から選ばれた重合溶媒であり、還元剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリベンゾオキサゾールポリマーの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られたポリマーであって、固有粘度が、5dl/g以上であることを特徴とするポリベンゾオキサゾールポリマー。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られたポリマーであって、固有粘度が、20dl/g以上であることを特徴とするポリベンゾオキサゾールポリマー。

【公開番号】特開2007−106980(P2007−106980A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56189(P2006−56189)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】