説明

ポリペプチドを精製する方法

本発明は、イオン交換マトリックスへ結合される1つ又はそれ以上の不純物の量に対するイオン交換マトリックスへ結合される関心対象のポリペプチドの量を増加させることによって、関心対象のポリペプチドを精製するための改善された方法に関する。この効果は、イオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへも結合することによって、関心対象のポリペプチドの結合よりも多く不純物の結合を減少させる、化学化合物を方法に添加することによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、イオン交換マトリックスへ結合される1つ又はそれ以上の不純物の量に対するイオン交換マトリックスへ結合される関心対象のポリペプチドの量を増加させることによって、関心対象のポリペプチドを精製するための改善された方法に関する。この効果は、イオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへも結合することによって、関心対象のポリペプチドの結合よりも多く不純物の結合を減少させる、化学化合物を方法に添加することによって達成される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリペプチドの大規模で経済的な精製は、バイオテクノロジー産業についてますます重要な問題である。ポリペプチドは、そのポリペプチドについての遺伝子を含有する組換えプラスミドの挿入によって関心対象のポリペプチドを産生するように遺伝子操作された哺乳動物又は細菌細胞株のいずれかを使用することにより、細胞培養によって産生される。使用される細胞株は生物であるので、それらには、ある場合には動物血清の調製物からも供給される、増殖因子、アミノ酸、及び糖類を含有する複合増殖培地がしばしば与えられる。ヒト治療薬としての使用に十分な純度への、細胞へ与えられた化合物の混合物からの及び細胞自体の副産物からの所望の関心対象のポリペプチドの分離は、手ごわい難題である。
【0003】
組換え治療用ポリペプチドは、いくつかの哺乳動物宿主細胞株、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞、マウス骨髄腫NSO細胞、酵母細胞、及び細菌細胞、例えば大腸菌、及び昆虫細胞中において一般的に産生される。各細胞株は、細胞によって産生されるポリペプチドの特性及び生産性の観点から利点及び欠点を有する。市販の産生細胞株の選択は、高生産性についての要求と、所定の産物に要求される産物品質特性を与える能力とをしばしば天秤にかける。発酵及び細胞培養技術の進歩は、培養液中の標的ポリペプチドの濃度を大幅に増加させた。上流の効率のこの増加は、細胞採取段階での下流のプロセッシングにおいて障害をもたらした。細胞採取、又は採取された細胞培養液の清澄化は、バイオテクノロジーに基づく産物のほぼ全ての下流の精製において重要なプロセスである。
【0004】
いったんポリペプチドが所望のレベルで発現されると、ポリペプチドは宿主細胞から除去され、採取される。細胞、細胞断片、脂質及び他の不溶物などの、浮遊粒子は、通常、濾過又は遠心分離によってポリペプチド含有液から除去され、溶液状態の関心対象のポリペプチド並びに他の可溶性不純物を含有する清澄化液が生じる。細胞残屑からのポリペプチドの精製についての手順は、最初はポリペプチドの発現の部位に依存する。あるポリペプチドは、直接、細胞から周囲の増殖培地中へ分泌され;他のものは細胞内で作られる。後者のポリペプチドについて、精製プロセスの第1工程は、機械的剪断、浸透圧ショック、又は酵素処理を含む様々な方法によって行われ得る、細胞の溶解を必要とする。このような破壊は、細胞の全内容物をホモジネート中へ放出し、さらに、それらの小さなサイズに起因して除去するのが難しい細胞より小さい断片を作り出す。これらは一般的に遠心分離又は濾過によって除去される。同一の問題が、より小規模ではあるが、ポリペプチド産生の過程での細胞内宿主細胞ポリペプチドの放出及び細胞の自然死に起因して、直接分泌されるポリペプチドで生じる。
【0005】
宿主細胞ポリペプチド、産物変異体、宿主細胞DNA、小分子、方法関連汚染物質、内毒
素、プリオン及びウイルス粒子を含む不純物は、除去されなければならない。使用される精製技術は、拡大縮小可能であり、効率的であり、費用対効果が高く、信頼度が高くなければならず、かつ、最終製品の厳しい純度要件を満たさなければならない。現在の精製技術は、通常、多数のクロマトグラフィー分離を必要とする。通常のプロセスは、下記の工程の全部又は少なくとも一部を必要とし得る:沈澱、透析、電気泳動、限外濾過、アフィニティークロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー。従来のカラムクロマトグラフィー工程は、有効であり信頼度が高いが、低いプロダクトスループットを一般的に有する。
【0006】
関心対象のポリペプチドを含有する溶液がいったん得られると、細胞によって産生された他のポリペプチドからのその分離は、様々なクロマトグラフィー技術の組み合わせを使用して通常試みられる。ある場合において、所望のポリペプチドは不純物から分離され、それによって、不純物はカラムへ特異的に付着し、関心対象のポリペプチドはそうせず、即ち、関心対象のポリペプチドは「フロースルー」中に存在する(「ネガティブモード」クロマトグラフィー)。
【0007】
クロマトグラフィー技術は、高度の精製を達成するためにポリペプチドの化学的及び物理的特性を利用する。これらの化学的及び物理的特性としては、通常、サイズ、等電点、電荷分布、疎水性部位、及びリガンドについての親和性が挙げられる(非特許文献1)。クロマトグラフィーの様々な分離様式としては以下が挙げられる:イオン交換、クロマトフォーカシング、ゲル濾過(サイズ排除)、疎水性相互作用、逆相、及びアフィニティークロマトグラフィー。アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)及びカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)を含む、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)は、それらの正味の表面電荷の差異によって分析物(例えば、ポリペプチド)を分離する。IEXは、細胞残屑及び他の不純物からの発現ポリペプチドの分離のための主要なツールである。今日、IEXは、ポリペプチド、ペプチド、核酸及び他の帯電した生体分子の精製のための最も頻繁に使用される技術の1つであり、高いローディング能で高分解の集団分離を提供する。この技術は、それらの電荷特性が僅かにだけ相違する分子種、例えば1つの帯電したアミノ酸だけ相違する2つのポリペプチドを分離することができる。これらの特徴のため、IEXは、精製プロトコルにおける捕獲、中間精製又はポリッシング工程によく適しており、この技術は、マイクロスケールの精製及び分析からキログラムの産物の精製まで使用される。
【0008】
交換可能な対イオンに由来する、IEXは、イオン化可能な分子の精製に適用可能な手順である。イオン化された分子は、固相支持体マトリックスへ結合された反対に帯電した分子とのそれらの帯電した基の非特異的静電相互作用に基づいて分離され、それによって、より強く固相と相互作用するイオン化された分子を遅らせる。各タイプのイオン化分子の総電荷、及びマトリックスについてのその親和性は、帯電した基の数、各基の電荷、及び帯電した固相マトリックスとの相互作用について競合する分子の性質に従って変化する。これらの差異は、IEXによる様々な分子タイプの分解をもたらす。IEXを使用する通常のポリペプチド精製において、哺乳動物細胞培養におけるような、宿主細胞由来の多くのポリペプチドの混合物が、イオン交換カラムへ適用される。非結合性分子が洗浄除去された後、条件は、例えば、段階的に又は勾配様式でpH、対イオン濃度などを変化させることによって調節され、非特異的に保持された又は遅らせられた関心対象のイオン化ポリペプチドが固相から放出され、異なる電荷特性を有するポリペプチドからそれが分離される。AEXは、特定の分離プロセスの条件下及びpHでの固相マトリックスへ結合された正に帯電した分子との相互作用についての陰イオンとの関心対象のアニオン性分子の競合を含む。対照的に、CEXは、特定の分離プロセスの条件下及びpHでの固相マトリックスへ結合された負に帯電した分子についての陽イオンとの関心対象のカチオン性分子の競合を含む。ミックスモードイオン交換クロマトグラフィーは、同一の工程におけるイオン交換クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体の組み合わせの使用を含む。特に、「ミックスモード」は、疎水性相互作用部分とカチオン交換又はアニオン交換部分のいずれかとの混合物が共有結合されている固相支持体マトリックスを指す。
【0009】
ビタミンK依存性ポリペプチドは、分子のアミノ末端部において共通の構造特徴を共有することによって、他のポリペプチドと区別される。Glaドメインとも呼ばれる、これらのポリペプチドのN末端部分は、異常アミノ酸、γ−カルボキシグルタミン酸に富み、これは、酵素γ−グルタミルカルボキシラーゼによって触媒されるビタミンK依存性反応においてグルタメートから合成される。約2〜12個のGla残基の存在のために、Glaドメインは、Ca2+などの二価のカチオンに結合することができることを特徴とする。金属イオンが結合すると、これらのポリペプチドは、円二色性及び蛍光発光などのいくつかの技術によって測定され得る構造変化を受ける。1980年代に、金属誘導構造変化を受けるGla含有ポリペプチドの特有の性質を利用する、構造特異的シュードアフィニティークロマトグラフィーが開発された。シュードアフィニティークロマトグラフィーは、関与する固定化アフィニティーリガンドが存在せず、かつ、それが従来のクロマトグラフィーマトリックスにおいて行われる点で、従来のアフィニティークロマトグラフィーとは相違する(非特許文献2)。Glaポリペプチドは、二価の金属イオンを除去することによって、アニオン交換材料へ吸着され得る。続いて、溶出は、Ca2+を溶出バッファーへ添加することによって行われる。
【0010】
1986年、Bjoern及びThimは、第VII因子のGlaドメインのCa2+結合特性を利用するアニオン交換材料上での組換え第VII因子の精製を報告した(非特許文献3)。吸着がCa2+を含まないバッファー中において達成され、第VII因子の溶出が、穏やかな条件下で低イオン強度を有するCa2+含有バッファーを使用して可能であった。Yanらは、組換えヒトポリペプチドCの精製について同一の原理を使用した(非特許文献4)。
【0011】
GLAドメインを有するポリペプチドは、下記のポリペプチドを含むが、これらに限定されない:GAS−6、ポリペプチドS、第II因子(プロトロンビン)、トロンビン、第X/Xa因子、第IX/IXa因子、ポリペプチドC、第VII/VIIa因子、ポリペプチドZ、膜貫通γ−カルボキシグルタミン酸ポリペプチド1、膜貫通γ−カルボキシグルタミン酸ポリペプチド2、膜貫通γカルボキシグルタミン酸ポリペプチド3、膜貫通γ−カルボキシグルタミン酸ポリペプチド4、マトリックスGlaポリペプチド、及びオステオカルシン。
【0012】
当技術分野において、関心対象のポリペプチドから不純物を減らすためのいくつかの試みが記載されてきた。
【0013】
特許文献1は、不溶性微粒子及び可溶性不純物のサブセットへ不可逆的に結合することができ、さらには、清澄化されていない生物学的材料を含有する流れ中の1つ又はそれ以上の所望の生体分子へ可逆的に結合することができる、可溶性ポリマーなどのポリマー、並びに、事前の清澄化を必要とせずにこのような流れから1つ又はそれ以上の所望の生体分子を精製するためにこのような材料を使用する方法に関する。
【0014】
溶液から沈殿させた場合にのみ、ポリマーは、清澄化されていない細胞培養液の流れ中の1つ又はそれ以上の所望の生体分子(ポリペプチド、ポリペプチドなど)へ可逆的に結合することができる。次いで、沈澱物が、例えば流れの残りから濾別されることによって、流れから除去され得、所望の生体分子が、例えば沈澱物からの選択的溶出によって回収される。次いで、流れは捨てられ、それと共に、細胞培養培地、消泡材料、添加剤、及び可溶性成分などの混合物の不純物の大部分が除去される。
【0015】
特許文献2は、後の回収のために溶液中に組換えポリペプチドを残す、宿主ポリペプチド及び切断融合パートナーを含む、汚染ポリペプチドの優先的な沈澱を開示している。従って、関心対象のペプチド及び可溶性汚染ポリペプチドの両方を含む溶液が、汚染ポリペプチド(例えば、宿主細胞ポリペプチド、切断ポリペプチド融合パートナー、及びプロテアーゼなどのポリペプチド(polypeptideaceous)切断剤)の優先的な沈澱を生じさせる条件へ供される。次いで、沈澱物は、関心対象のペプチドを含有する溶液から分離され得、次いで、これは凍結乾燥などの適切な技術によってその溶液から回収され得る。
【0016】
特許文献3は、ポリアニオン高分子電解質又はポリカチオン高分子電解質などの高分子電解質を用いてのポリペプチドの沈澱による細胞培養液由来のポリペプチドの単離及び精製に関する方法を提供する。沈澱工程にカチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、及び他の沈澱工程が続き得る。
【0017】
特許文献4は、産物に結合する媒体にローディング流体を通過させること、続いてアルギニン又はアルギニン誘導体を含有する少なくとも1つの洗浄溶液を媒体に通過させること、及び溶出溶液を使用して産物を収集することによって、抗体などの産物及び1つ又はそれ以上の不純物を含有するローディング流体から産物を単離するための方法に関する。
【0018】
特許文献5は、抗体及び少なくとも1つのHCPを含む混合物から宿主細胞ポリペプチド(HCP)減少抗体調製物を製造するための方法であって、マトリックス1リットル当たり抗体30グラム以上を適用することによって混合物を第1イオン交換材料へ供するイオン交換分離工程を含む方法に関する。
【0019】
特許文献6は、アフィニティークロマトグラフィー工程又はインプロセスバッファー交換工程を含まない二段階精製プロセス(例えば、TFF又はHPTFF)を使用することによる、宿主細胞ポリペプチド及び培地成分などの汚染物質を含有する汚染混合物からのポリペプチド及びポリペプチド、特にモノクローナル抗体などの組換えポリペプチドの精製に関する。むしろ、pH操作及び/又は希釈のみが第1工程から第2工程まで必要である。
【0020】
特許文献7は、組成物からポリペプチドを精製するための方法に関し、この方法は、該組成物の溶液を逆相液体クロマトグラフィーカラムへロードする工程、及び緩衝剤及び塩を含有する溶媒を用いてカラムから該ポリペプチドを溶出する工程を含み、ここで、該塩は、使用される緩衝剤のpHで緩衝能を有さない。この方法は、産業規模でポリペプチドを精製する緩やかな方法、即ち、ロードされたポリペプチドの実質的な量が作動条件に耐えその生物活性を保持する方法をさらに提供する。
【0021】
特許文献8は、アフィニティークロマトグラフィー工程又はインプロセスバッファー交換工程を含まない二段階精製プロセス(例えば、TFF又はHPTFF)を使用することによる、少なくとも1つの汚染物質、例えば、宿主細胞ポリペプチド及び培地成分などの他の物質からの関心対象の分子の精製に関する。むしろ、pH操作のみが第1工程から第2工程まで必要である。HCP CHOPレベルは20ppm未満へ減少した。
【0022】
特許文献9は、関心対象のビタミンK依存性ポリペプチドを含む組成物中のポリペプチド汚染物質の含有量を減少させる又は排除さえするための様々な方法に関する。好ましい実施態様において、宿主細胞に由来するプロテインSが除去される。
【0023】
特許文献10は、高性能タンジェンシャルフロー濾過(HPTFF)と組み合わせての非アフィニティークロマトグラフィー精製プロセスの組み合わせに関し、これは、宿主細胞ポリペプチド不純物が100百万分率(ppm)未満の量で最終精製標的ポリペプチド中に存在するように、宿主細胞ポリペプチドを含有する混合物から抗体又は抗体様分子などの標的ポリペプチドを精製することができる。
【0024】
関心対象のポリペプチドを精製すると同時に宿主細胞タンパク質、宿主細胞核酸、内毒素、ウイルスなどの不純物を減少させるために、選択されるイオン交換マトリックスと反対の複数の電荷を有する化学化合物をIEXにおいて使用することは、本発明者らの知る限りでは、当技術分野においてまだ記載されていない。AEXが、組換え治療タンパク質から内毒素を減少させるための手段として記載され(非特許文献5)、しかし、内毒素の減少を高めるための正に帯電した化学化合物の使用は、記載されていない。
【0025】
EGTAは、2mMの濃度で適用された場合、アニオン交換樹脂(resion)へ結合することが示された(非特許文献6)。
【0026】
EDTAは、プロテアーゼを阻害するための手段として1mM〜10mMの濃度で(非特許文献7)、細菌封入体を可溶化するために10mMの濃度で(非特許文献8)、関心対象のポリペプチドの凝集を減少させるために、使用された。
【0027】
IEXにおいて、EDTAが、クロマトグラフィープロフィールの変化は見られずにアニオン交換Mono−Qカラムにおけるトンボスポンジン(thombospondin)の精製において1mMの濃度で、又はZhu(非特許文献9)においてその使用について理由を与えずに5mM濃度で使用され、Chen(非特許文献10)は、細菌によって発現された関心対象のポリペプチドをアニオン交換材料において再び折り畳むための1mM EDTAの使用を示唆した。Haganika(非特許文献11)は、そうすることについての合理性を同様に説明せずに、アニオン交換マトリックスから溶出バッファー中において1mMを使用した。Pittalisら(非特許文献12)は、アニオン交換マトリックスを平衡化するために1.25 mM EDTA濃度を使用した。Haberlein(非特許文献13)は、アニオン交換マトリックスMono−Qを使用してのチオレドキシンの精製において2mMのEDTAを使用した。Basta(非特許文献14)は、Mono Qカラムからの補体タンパク質の溶出のために6.5mM EDTAを含有するバッファーを使用した。
【0028】
上記の使用のいずれも関心対象のポリペプチドのイオン交換ベースの精製の性能に対するプラスの効果を記載しなかった。
【0029】
Nielsenらの論文(非特許文献15)は、1mM EDTAの添加の有利な効果が、全部ではないが一部のマトリックスにおけるIgG1、IgG2、IgM及びアルブミン間の分離を改善したことを記載している。著者らは、タンパク質会合を妨げ、それによってカラムリガンド結合を改善する、EDTAについての役割を示唆した。
【0030】
従って、要約すれば、本発明者らの知る限りでは、IEXにおいて今まで使用された関心対象のポリペプチドへ加えての多価化学化合物の最も高いレベルは、AEXにおいて6.5mM EDTAであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】WO 2009/082443
【特許文献2】WO 2008/122089
【特許文献3】WO 2008/091740
【特許文献4】WO 2008/031020
【特許文献5】WO 2007/117490
【特許文献6】WO 2007/108955
【特許文献7】WO 2007/071768
【特許文献8】WO 2006/110277
【特許文献9】WO 2006/067230
【特許文献10】WO 2003/102132
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Janson, J. C. and L. Ryden (eds.). (1989) Polypeptide Purification: Principles, High Resolution Methods and Applications. VCH Publishers, Inc., New York
【非特許文献2】Yan S. B., J. MoI. Recog. 1996; 9, 211−218
【非特許文献3】Bjoern S. and Thim L., Research Dislosure, 1986, 26960−26962
【非特許文献4】Yan S. B. et al., Bio/technology. 1990; 8, 655−661
【非特許文献5】Chen et al., 2009, Protein Expression and Purification, pp 76−81
【非特許文献6】Yingst et al, 1994, Biochimica et Biophysica Acta 1189, pp 113−118
【非特許文献7】Charlton A, Methods in Molecular Biology, vol. 241 Affinity Chromatography: Methods and Protocols, Second Edition, Humana Press, pp 211−227
【非特許文献8】Ledung et al., 2009, J.Biotechnology, 141, pp 64−72
【非特許文献9】Zhu et al., 2009, Process Biochemistry 44 pp 875−879
【非特許文献10】Chen et al. 2009, J.Chromatorgr. A 1216, pp 4877−4886
【非特許文献11】Haganika et al., 2001, J.Chromatography B, 751, pp 161−167
【非特許文献12】Pittalis et al., 1992, J.Chromatography, 573 pp 29−34
【非特許文献13】Haberlein, 1991, J. Chromatography, 587, pp 109−115
【非特許文献14】Basta et al., 1991, J.Immunological Methods, 142, pp39−44
【非特許文献15】Nielsen et al., 1985, Veterinary Immunology and Immunopathology, 9, pp 349−359
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
発明の概要
本発明は、イオン交換マトリックスへ結合される1つ又はそれ以上の不純物の量に対するイオン交換マトリックスへ結合される関心対象のポリペプチドの量を増加させることによって、複合混合物から関心対象のポリペプチドを精製するための改善された方法に関する。この効果は、イオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへも結合することによって、関心対象のポリペプチドの結合よりも多く不純物の結合を減少させる、化学化合物を方法に添加することによって達成される。上記の複合混合物は、組換え産生スキームから生じ得るか、又は、例えば、ヒト又は動物の体液、好ましくは血液又は血漿溶液であり得る。
【0034】
本発明の一実施態様は、IEXにおいて関心対象のポリペプチド中の不純物を減少させるための化学化合物の使用であり、ここで、選択される精製条件で、化学化合物は、イオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し、それによって、イオン交換マトリックスへ結合される関心対象のポリペプチドの量よりもイオン交換マトリックスへ結合される不純物の量を減少させることにより関心対象のポリペプチドの結合の特異性を増加させる。
【0035】
一実施態様において、化学化合物は負に帯電しており、イオン交換マトリックスは、選択される精製条件でアニオン交換マトリックスである。別の実施態様において、化学化合物は正に帯電しており、イオン交換マトリックスはカチオン交換マトリックスである。
【0036】
さらに別の実施態様において、本発明は、化学化合物がIEXにおいて関心対象のポリペプチド中の不純物を減少させる精製プロセスに関し、ここで、選択される精製条件で、化学化合物は、イオン交換マトリックスのそれと反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し、それによって、イオン交換マトリックスへ結合される関心対象のポリペプチドの量よりもイオン交換マトリックスへ結合される不純物の量を減少させることにより関心対象のポリペプチドの結合の特異性を増加させ、ここで、化学化合物は、少なくとも7mMの濃度で使用される。一実施態様において、前記方法において使用される化学化合物は負に帯電しており、イオン交換マトリックスは、選択される精製条件でアニオン交換マトリックスである。好ましい実施態様において、化学化合物はEDTA又はEGTAである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
ここで、本発明のある実施態様を詳細に参照する。本発明は列挙された実施態様と共に説明される一方、それらは本発明をそれらの実施態様へ限定するようには意図されないことが理解される。それどころか、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含められ得る、全ての代替物、変形物、及び等価物を包含するように意図される。当業者は、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載のものと同様又は等価の多くの方法及び材料を認識する。本発明は、記載される方法及び材料に決して限定されない。
【0038】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術及び科学用語は、(例えば、細胞生物学、化学及び分子生物学における)当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。
【0039】
本明細書の全体にわたって、単語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」などの変形物は、記載の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群の包含を意味し、しかし任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群の排除を意味しないことが理解される。
【0040】
本明細書の全体にわたって、数値への参照は、特に記載されない限り、「約」その数値を意味するとみなされる。用語「約」は、値が、値を測定するために用いられる装置及び方法についての固有の誤差変動、又は研究対象物間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0041】
温度値は、標準圧力(1atm)の条件について与えられる。
【0042】
本発明は、イオン交換マトリックスへの不純物の結合及び関心対象のポリペプチドの結合と競合する化学化合物が、IEXの間に、平衡化流体及び/又はサンプル液及び/又は洗浄流体へ添加され得るという驚くべき知見に基づく。驚くべきことに、それによって、より少ない不純物がイオン交換マトリックスへ結合し、IEXの間にマトリックスへ結合した1つ又はそれ以上の不純物に対する関心対象のポリペプチドの比率が増加し、従ってまた、溶出液中において、1つ又はそれ以上の不純物に対する関心対象のポリペプチドの比率が増加することがわかった。
【0043】
一実施態様において、本発明は、以下に関する:イオン交換クロマトグラフィーによる関心対象のポリペプチドの精製のための方法であって、化学化合物が少なくとも7mMの濃度で
a)イオン交換マトリックスの平衡化流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合するように、調節される、平衡化流体
及び/又は
b)イオン交換マトリックスへ適用されかつ関心対象のポリペプチドを含むローディング流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部及び関心対象のポリペプチドの少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合するように、調節される、ローディング流体
及び/又は
c)いったん関心対象のポリペプチドがイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合したイオン交換マトリックスを洗浄するために使用される洗浄流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し、かつ、関心対象のポリペプチドの少なくとも一部及び工程a)又はb)で添加された場合は既に結合した化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し続けるように、調節される、洗浄流体
へ添加し、
それによって、イオン交換マトリックスを溶離する前のイオン交換マトリックスへ結合した1つ又はそれ以上の不純物の量と比べてイオン交換マトリックスへ結合した関心対象のポリペプチドの量を増加させ、それによって、化学化合物を7mM未満の濃度で添加する同一の方法と比較して溶出液中の1つ又はそれ以上の不純物に対する関心対象のポリペプチドの比率を増加させる、方法。
【0044】
化学化合物の好ましい濃度は、少なくとも7mM又は少なくとも10mM、又は少なくとも15mM、又は少なくとも20mM又は少なくとも25mM又は少なくとも30 mM又は少なくとも32mM又は少なくとも40mM又は少なくとも50mMである。
【0045】
一実施態様において、イオン交換マトリックスはアニオン交換マトリックスである。
【0046】
一実施態様において、イオン交換マトリックスはカチオン交換マトリックスである。
【0047】
好ましい実施態様において、化学化合物上の負電荷又は正電荷はクラスター化される。
【0048】
本発明のより好ましい実施態様において、負電荷を有する化学化合物は、金属カチオンに結合する能力を有し、なおより好ましくは、五酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、又は四酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、又は三酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、又は二酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、又は複数のアミン基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、又は複数のチオール基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、又はホスホン酸(phosponic acid)及びその誘導体並びにそれらの種々の塩である。
【0049】
本発明の方法は、不純物を減少させ、不純物は、宿主細胞タンパク質及び/又は宿主細胞核酸及び/又は産物関連汚染物質及び/又はウイルス及び/又はプリオン及び/又は内毒素及び/又は方法関連汚染物質を含む。
【0050】
本発明の別の実施態様において、関心対象のポリペプチドは、IEXの間、クラスター化した電荷を有する。好ましい実施態様において、関心対象のポリペプチドは、金属イオンに結合することができる。本発明のさらにより好ましい実施態様において、関心対象のポリペプチドはビタミンK依存性ポリペプチドである。
【0051】
本発明はまた、以下に関する:イオン交換クロマトグラフィーによる関心対象のポリペプチドの精製における不純物の減少のための化学化合物の使用であって、化学化合物を
a)イオン交換マトリックスの平衡化流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合するように、調節される、平衡化流体
及び/又は
b)イオン交換マトリックスへ適用されかつ関心対象のポリペプチドを含むローディング流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部及び関心対象のポリペプチドの少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合するように、調節される、ローディング流体
及び/又は
c)いったん関心対象のポリペプチドがイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合したイオン交換マトリックスを洗浄するために使用される洗浄流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し、かつ、関心対象のポリペプチドの少なくとも一部及び工程a)又はb)で添加された場合は既に結合された化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し続けるように、調節される、洗浄流体
へ添加し、
それによって、イオン交換マトリックスを溶離する前のイオン交換マトリックスへ結合した1つ又はそれ以上の不純物の量と比べてイオン交換マトリックスへ結合した関心対象のポリペプチドの量を増加させ、それによって、化学化合物を添加せずに関心対象のポリペプチドの精製を行う場合と比較して溶出液中の1つ又はそれ以上の不純物に対する関心対象のポリペプチドの比率が増加される、使用。
【0052】
用語「ポリペプチド」は、本明細書において使用される場合、ペプチド結合によって一緒に連結された5個又はそれ以上のアミノ酸で構成されたポリマーを意味する。
【0053】
用語「組換えポリペプチド」は、本明細書に記載される場合、組換え法によって産生されるポリペプチドを指す。
【0054】
用語「アミノ酸」は、本明細書において使用される場合、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸の両方を包含し、後者は、一般的に、組換えポリペプチド合成の間組み込まれ得るか、又は翻訳後修飾から得ることができる。
【0055】
用語「精製された」又は「単離する」は、問題の分子が存在する優勢な種となる(例えば、モルに基づいて、それが組成物/溶液中の任意の他の個々の種よりも豊富となる)ように、関心対象のポリペプチドがその自然環境又は宿主から除去され、関連の不純物が減らされるか又は除去されることを意味する。通常、関心対象の精製組換えポリペプチドを含む組成物は、関心対象のペプチドが、存在する全ての高分子種の少なくとも30パーセントw/w、好ましくは少なくとも50、60、70又は75パーセントw/wを示すものである。実質的に純粋な組成物は、80〜90パーセントw/wを超える関心対象の組換えペプチドを含む。
【0056】
本発明の意味における「関心対象のポリペプチド」は、本発明の方法に従って混合物から精製することが望ましいポリペプチドを指す。一般的に、このような関心対象のポリペプチドは、市販され得、ある程度の純度を必要とする。関心対象のポリペプチドの好ましいタイプは、例えば分泌ポリペプチドであり得る、治療用ポリペプチドである。治療用ポリペプチドとしては、抗体、抗体の抗原結合性フラグメント、可溶性受容体、受容体融合(receptor fusion)、サイトカイン、増殖因子、酵素、又は凝固因子が挙げられ、これらの一部を本明細書以下においてより詳細に説明する。好ましい関心対象のポリペプチドは、ビタミンK依存性ポリペプチドである。ポリペプチドの上記リストは、単に例示にすぎず、限定的な記載であるようには意図されない。当業者は、任意のポリペプチドが本発明に従って使用され得ることを理解し、必要に応じて産生される特定のポリペプチドを選択することができる。
【0057】
用語「クロマトグラフィー」は、混合物中の関心対象のポリペプチドが、プロセスの特定の緩衝条件下で、pI、疎水性、サイズ及び構造などの溶質の特性に起因して多かれ少なかれ強く溶質を吸着又は保持する吸着剤による混合物のパーコレーションによって混合物中の他の溶質から分離されるプロセスを指す。用語「クロマトグラフィー」の使用は、カラム及び膜タイプを含む。
【0058】
用語「イオン交換」及び「イオン交換クロマトグラフィー(IEX)」は、関心対象のイオン化可能な溶質(例えば、混合物中の関心対象のポリペプチド)が、pH及び導電率の適切な条件下で、固相イオン交換材料へ(例えば、共有結合によって)結合された反対に帯電したリガンドと相互作用し、その結果、関心対象の溶質が、混合物中の溶質不純物又は汚染物質よりも多く又は少なく、帯電した化合物と非特異的に相互作用する、クロマトグラフィープロセスを指す。混合物中の汚染溶質は、関心対象の溶質よりも速く又は遅く、イオン交換材料のカラムから洗浄され得るか、又はマトリックスへ結合されるか又はマトリックスから排除される。「イオン交換クロマトグラフィー」としては、具体的には、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)、及びミックスモードの一部がAEX又はCEXのいずれかであるミックスモードクロマトグラフィーが挙げられる。
【0059】
句「イオン交換材料」又は「イオン交換マトリックス」は、負に帯電している(即ち、カチオン交換マトリックス)又は正に帯電している(即ち、アニオン交換マトリックス)固相を指す。一実施態様において、1つ又はそれ以上の帯電したリガンド(又は吸着剤)を例えば共有結合によって固相へ結合するすることによって、電荷が提供され得る。あるいは、又はさらに、電荷は、固相の固有の特性であり得る(例えば、全体的な負電荷を有するシリカの場合のように)。多くのイオン交換マトリックスの電荷は、pH依存性であり、当業者は、それぞれのイオン交換マトリックスが帯電するように、精製プロセスを調節することができる。
【0060】
本発明において使用される「バッファー」は、その酸−塩基共役成分の作用によって、酸又は塩基の添加によるpH変化に耐える溶液を指す。様々なバッファーが、バッファーの所望のpH及び精製プロセスにおける特定の工程に応じて本発明の方法において用いられ得る[Buffers. A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D., ed. Calbiochem Corporation (1975)を参照のこと]。本発明の方法に望ましいpH範囲を制御するために使用され得るバッファー成分の非限定的な例としては、酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、アンモニウムバッファー、例えば、酢酸アンモニウム、コハク酸塩、MES、CHAPS、MOPS、MOPSO、HEPES、Trisなど、並びにこれらの組み合わせ TRIS−リンゴ酸−NaOH、マレイン酸塩、クロロ酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、プロピオン酸塩、ピリジン、ピペラジン、ADA、PIPES、ACES、BES、TES、トリシン、ビシン、TAPS、エタノールアミン、CHES、CAPS、メチルアミン、ピペリジン、0−ホウ酸、炭酸、乳酸、ブタン二酸(butaneandioic acid)、ジエチルマロン酸、グリシルグリシン、HEPPS、HEPPSO、イミダゾール、フェノール、POPSO、コハク酸塩、TAPS、アミン系の、ベンジルアミン、トリメチル若しくはジメチル若しくはエチル若しくはフェニルアミン、エチレンジアミン、又はモルホリン(mopholine)が挙げられる。追加の成分(添加剤)が、必要に応じてバッファー中に存在し得、例えば、塩、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及び塩化カリウムが、バッファーイオン強度を調節するために使用され得る;並びに他の添加剤、例えば、アミノ酸(例えば、グリシン及びヒスチジン)、カオトロープ(例えば、尿素)、アルコール(例えば、エタノール、マンニトール、グリセロール、及びベンジルアルコール)、界面活性剤(上記を参照のこと)、及び糖類(例えば、スクロース、マンニトール、マルトース、トレハロース、グルコース、及びフルクトース)。バッファー成分及び添加剤、並びに使用される濃度は、本発明において実施されるクロマトグラフィーのタイプに従って変化し得る。
【0061】
衛生化、平衡化、ローディング、ロード後洗浄、溶出又はストリップバッファーを含む、バッファーが本発明において使用される。特定の実施態様において、界面活性剤が洗浄バッファーへ添加される。本発明において使用され得る界面活性剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又は80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);Triton(商標);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウレル硫酸ナトリウム;ナトリウムオクチルグリコシド;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−、又はステアリル−スルホベタイン;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−又はステアリル−サルコシン;リノレイル−、ミリスチル−、又はセチル−ベタイン;ラウロアミドプロピル−、コカミドプロピル−、リノールアミドプロピル−、ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアラミドプロピル−ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアラミドプロピル−ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル−、又はジナトリウムメチルオレイル−タウレート;MONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries, Inc., Paterson, N. J.);Igepal CA−630(商標)、Pluronic(商標)、Triton(商標)、BRIJ、Atlas G2127(商標)、Genapol(商標)、HECAMEG(商標)、LUBROL PX(商標)、MEGA(商標)、NP(商標)、THESIT(商標)、TOPPS(商標)、CHAPS、CHAPSO、DDMAU、EMPIGEN BB(商標)、ZWITTERGENT(商標)及びC12E8(商標)。界面活性剤は、任意のワーキングバッファーに添加され得、関心対象の分子を含有する供給材料中にも含まれ得る。界面活性剤は、ポリペプチド精製プロセスにおける使用に適した任意の量で、例えば、約0.001パーセント〜約20パーセント、通常、約0.01パーセント〜約1パーセントで存在し得る。バッファーのpH及び導電率は、バッファーが使用される精製プロセスにおける工程に応じて変化し得る。選択されたリガンド及びマトリックス/膜と適合性のpHでの任意の適切なバッファー、例えば上述のバッファーが、関心対象のポリペプチドを精製するために使用され得る。CEXにおいて、精製工程及び用いられるバッファーに応じて、バッファーのpHは、約3〜10、より好ましくは約pH 4.0〜9.0であり得;導電率は、約0.1〜40 mS/cm、より好ましくは導電率約0.5〜15mS/cmであり得る。AEXにおいて、精製工程及び用いられるバッファーに応じて、バッファーのpHは、約4〜10、より好ましくは約pH 6.0〜9.0であり得;導電率は、約0.1〜10.0 mS/cm、より好ましくは約0.5〜5 mS/cmであり得る。
【0062】
用語「平衡化流体」は、関心対象のポリペプチドを含有する液体が適用される前にイオン交換マトリックスへ適用される液体を指す。「平衡化流体」は、精製のために関心対象のポリペプチドを含有する混合物をマトリックスにロードする前にイオン交換マトリックスのpH及び導電率を調節するために使用される。この目的のために使用され得る適切なバッファーは、例えば上述のバッファーのように、当技術分野において周知であり、これらとしては、関心対象のポリペプチドを精製するためのクロマトグラフィー工程において使用される選択されるマトリックスと適合性であるpHでの任意のバッファーが挙げられる。特定の実施態様において、AEX又はCEXについての平衡化バッファー種は、リン酸、炭酸、MES又はTRISベースである。AEXについてのある好ましいバッファーはMESである。
【0063】
平衡化バッファーは、AEX又はCEXが使用されるかどうかに応じて、関心対象のポリペプチドがマトリックスへ結合されるように又は関心対象のポリペプチドがカラムを通って流れると同時に1つ又はそれ以上の不純物がカラムへ結合するように、導電率及び/又はpHを有する。特定の実施態様において、クロマトグラフィー媒体のpH及び導電率が、それぞれ、平衡化バッファーのプラス又はマイナス0.2内及びプラス又はマイナス0.4 mS/cm内、より好ましくは、それぞれ、平衡化バッファーのプラス又はマイナス0.1内及びプラス又はマイナス0.2 mS/cm内にある場合に、平衡化は完成される。CEXにおいて、平衡化バッファーのpHは、約3〜約9、より好ましくはpH約4.0〜約8.0、導電率約0.1〜約40 mS/cm、より好ましくは約0.5〜約10.0 mS/cmである。AEXにおいて、平衡化バッファーのpHは、約4〜約10、より好ましくはpH約6〜9、導電率約0.1 (WFI)〜約10 mS/cm、より好ましくは導電率約0.5〜約5 mS/cmである。POROS(登録商標)HQ 50アニオン交換マトリックスを使用する場合、好ましいpH範囲は、それぞれ、約10〜20 mS/cm又はより好ましくは約15〜18 mS/cmの導電率でpH約4.5〜5.5である。
【0064】
用語「ローディング流体」は、単離される関心対象のポリペプチド及び1つ又はそれ以上の不純物を含有する液体を指す。ローディング流体は、本発明の作動条件下でイオン交換マトリックスに通される。「ローディング流体」は、カラム上へ関心対象のポリペプチドを含有する混合物をロードするために使用される。膜がクロマトグラフィー媒体として使用される場合、ローディング流体は、当技術分野において使用される従来の方法に従って膜と単に接触させられることが認識される。任意の適切な緩衝液がローディング流体として使用され得る。特定の実施態様において、ローディング流体のために使用されるバッファーは、炭酸、リン酸、MES又はTRIS緩衝液である。AEX用のローディング流体についての好ましいバッファーは、炭酸又はTRISベースである。AEX又はCEXについて、ローディング流体の導電率及びpHは、大抵の汚染物質が通って流れることができると同時に関心対象のポリペプチドがクロマトグラフィー媒体へ結合されるように、選択される。ローディング流体としての使用について適切なバッファー、例えば上述のものは、当技術分野において周知である。AEX又はCEXについてのローディング流体は、AEX又はCEXのための平衡化バッファーについて上述されたものと同等の(そうでない場合は同一の)pH及び導電率で使用され得ることが当業者によって認識される。POROS(登録商標)(R) HQ 50アニオン交換マトリックスを使用する場合、好ましいpH範囲は、それぞれ、10〜20 mS/cm、又はより好ましくは15〜19 mS/cm、より好ましくは17〜19 mS/cmの導電率でpH 7.0〜8.0である。
【0065】
用語「洗浄流体」は、本明細書において使用される場合、関心対象のポリペプチドを溶出する前に(例えば、カラムを使用する場合)クロマトグラフィーマトリックスから不純物を除去するために使用される流体を指す。用語「洗浄」及びその文法的な変形物は、クロマトグラフィーマトリックスを通っての又は越えての適切な洗浄流体の通過を記載するために使用される。望ましい場合、洗浄、平衡化及びローディング流体は同一であり得る。AEX又はCEXにおいて使用される洗浄流体のpH及び導電率は、マトリックスが関心対象のポリペプチドを保持すると同時に、1つ又はそれ以上の不純物がマトリックスから溶出されるようなものである。望ましい場合、洗浄流体は、上述のような界面活性剤、例えば、ポリソルベートを含有し得る。関心対象のポリペプチドを著しく溶出することなくHCP及び他の汚染物質を除去するように洗浄流体のpH及び導電率を選択することが重要である。洗浄流体のpH及び導電率は、関心対象のポリペプチドがプロセスにおいて使用されるAEX又はCEXマトリックスに保持されるように、選択される。洗浄流体についての使用に適したバッファーの例は、上述されている。特定の実施態様において、洗浄バッファーは、リン酸、炭酸、MES又はTRISベースである。AEXにおける好ましい洗浄バッファーは、MESである。
【0066】
AEX又はCEXにおいて使用される洗浄流体のpHは、約3〜約10、より好ましくはpH約4〜約9;導電率約0.1〜約40 mS/cm、より好ましくは約3〜約30 mS/cmであり得る。POROS(登録商標)HQ 50アニオン交換マトリックスを使用して、pHは好ましくは4.5〜5.5であり、導電率は、優先的には約15〜25 mS/cm、より好ましくは21〜23 mS/cm、なおより好ましくは約22 mS/cmである。
【0067】
用語「溶出液」は、本明細書において使用される場合、AEX又はCEXマトリックスから関心対象のポリペプチドを溶出するために使用されるバッファーを指す。用語「溶出する」及びその文法的な変形物は、関心対象のポリペプチドがマトリックスへ結合することができず従ってクロマトグラフィーカラムから溶出されるように、適切な条件を使用することによって、例えば、クロマトグラフィー材料を囲むバッファーのイオン強度又はpHを変更することによって、リガンドについての競合的分子を添加することによって、分子の疎水性を変えることによって、又はリガンドの化学的性質(例えば、電荷)を変化させることによって、クロマトグラフィー材料から、分子、例えば関心対象のポリペプチドを除去することを指す。溶出バッファーのpH及び導電率は、関心対象のポリペプチドが、プロセスにおいて使用されるAEX又はCEXマトリックスから溶出されるように、選択される。溶出バッファーとしての使用に適したバッファーの例は、上述されている。特定の実施態様において、溶出バッファーはリン酸又はTRISベースである。
【0068】
用語「溶出液」は、クロマトグラフィー材料への関心対象のポリペプチドの結合及び関心対象のポリペプチドを溶出するための溶出液の添加後に得られた、関心対象のポリペプチドを含む液体を指す。
【0069】
AEX又はCEXにおいて使用される溶出バッファーのpHは、約3〜約10、より好ましくはpH約4〜約9;導電率約0.1〜約40 mS/cm、より好ましくは導電率約5〜約30 mS/cmであり得る。POROS(登録商標)(R) HQ 50アニオン交換マトリックスを使用して、好ましいpHは8.0〜9.0 であり、好ましい導電率は、約17〜27 mS/cm、より好ましくは約22〜24 mS/cm、さらにより好ましくは約22.5〜23 mS/cmである。
【0070】
pHが洗浄と溶出との間で変更されなければならないこと、又は、後の洗浄バッファー又は溶出バッファーが、前の洗浄バッファー又は平衡化バッファーと適合性でない化合物を導入し得ることが、しばしば事実である。このような状況において、「再平衡化工程」を導入することが有利であり得、その目的は、関心対象のタンパク質の結合状態を維持しながら移動相のpHを変化させること、又は、ある化合物をその不適合性相当物の導入前に洗い流すことである。
【0071】
必要に応じて、追加の溶液が、再利用についてカラムを整えるために使用され得る。例えば、「再生溶液」は、精製プロセスにおいて使用されたカラムから固く結合された汚染物質を「ストリップする」又は除去するために使用され得る。通常、再生溶液は、マトリックスから実質的にあらゆる残っている不純物及び関心対象のポリペプチドを除去するに十分な導電率及びpHを有する。
【0072】
本発明の意味において、「調節する」は、IEXの特定の工程での作動パラメータの設定を意味する。これは、あるpH、ある導電率、ある温度、ある流量を調節すること、及び当業者によって知られているIEXの他のパラメータの調節を含む。パラメータは、平衡化流体及び/又はローディング流体及び/又は洗浄流体中の化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスへ結合するように設定される。
【0073】
本発明の意味における用語「不純物」は、ローディング流体などの溶液中に存在する任意の外来の又は望ましくない分子を指す。不純物は、精製される関心対象のポリペプチドのサンプル中に同様に存在する、精製される関心対象のポリペプチド以外の、生体高分子、例えば、DNA又はRNAのような核酸、又はポリペプチドであり得る。不純物としては、例えば、望ましくないポリペプチド変異体、例えば、凝集されたポリペプチド、ミスフォールドされたポリペプチド、アンダージスルフィド結合された(underdisulfide−bonded)ポリペプチド、高分子量種、低分子量種及び断片、並びに脱アミド化種;精製されるポリペプチドを分泌する宿主細胞からの他のポリペプチド、宿主細胞DNA、細胞培養培地からの成分、ウイルス、プリオン、内毒素、先の精製工程の間にサンプル中へ浸出するアフィニティークロマトグラフィーについて使用される吸収剤の一部である分子であり得る方法関連汚染物質、例えば、ポリペプチドA;核酸;又は前述のもののいずれかの断片が挙げられる。
【0074】
「イオン交換マトリックスへ結合された1つ又はそれ以上の不純物に対するイオン交換マトリックスへ結合された関心対象のポリペプチドの量を増加させること」は、イオン交換マトリックスへ結合された1つ又はそれ以上の不純物の分子の数に対するイオン交換マトリックスへ結合された関心対象のポリペプチドの分子の数の比率を、ローディング流体中の1つ又はそれ以上の不純物の分子の数に対する関心対象のポリペプチドの分子の数の比率と比べて増加させることを意味する。
【0075】
「溶出液中の1つ又はそれ以上の不純物に対する関心対象のポリペプチドの増加した比率」は、溶出液中の1つ又はそれ以上の不純物の分子の数に対する関心対象のポリペプチドの分子の数の比率が、ローディング流体中の1つ又はそれ以上の不純物の分子の数に対する関心対象のポリペプチドの分子の数の比率と対比して増加していることを意味する。
【0076】
「CHOP減少ファクター」は、他方ではローディング流体中のCHOPの質量に対する関心対象のタンパク質の質量と比較しての、一方では溶出液中のCHOP(チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質)の質量に対する関心対象のタンパク質の質量の比率を意味する。換言すれば、CHOP減少ファクターは以下である:
(溶出液中の、質量関心対象のタンパク質/質量CHOP)/(ローディング流体中の、質量関心対象のタンパク質/質量CHOP)。
【0077】
「CHOP減少ファクターの改善」は、化合物を使用する場合と同一の条件下で同一の精製プロセスで化合物を添加しない場合のCHOP減少ファクターと比較しての、本発明に従う化合物を使用するCHOP減少ファクターのパーセントの増加を意味する。例えば、CHOP減少ファクターの改善は、種々のイオン交換マトリックスと共に又は種々の関心対象のタンパク質と共に本発明に従う種々の化合物を使用する場合、11%又は16%又は38%又は52%又は60%又は89%又は150%又は165%又は223%又は265%又は563%又は1200%又は1325%又は1663%であり得る。
【0078】
「CHOPクリアランスファクター」は、溶出液中のCHOPの質量に対するローディング流体中のCHOPの質量の比率である。
【0079】
本明細書で使用される場合の「少なくとも一部分」は、それぞれの液体又は流体中に存在するか又はイオン交換マトリックスへ結合されている、化学化合物又は関心対象のポリペプチドの総量のうちのあるパーセンテージを指す。このあるパーセンテージは、少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%である。それは、例えば、平衡化流体中に添加された場合のイオン交換マトリックスへ結合する化学化合物の量、又は、ローディング流体中のイオン交換マトリックスへ添加された場合のイオン交換マトリックスへ結合する化学化合物の量又は関心対象のポリペプチドの量を指す。
【0080】
本発明の意味において、「アニオン交換マトリックス」は、タンパク質結合時に正に帯電しており、従って、そこへ結合された1つ又はそれ以上の正に帯電したリガンドを有する、固相を指す。アニオン性交換マトリックスを形成するために適した固相へ結合される任意の正に帯電したリガンド、例えば、第4級アミノ基が使用され得る。例えば、AECにおいて使用されるリガンドは、第4級アンモニウム、例えば、第4級アルキルアミン及び第4級アルキルアルカノールアミン、又はアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノプロピル、アミノ、トリメチルアンモニウムエチル、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルエタノールベンジルアンモニウム、及びポリアミンであり得る。あるいは、AECについて、上述のリガンドなどの、正に帯電したリガンドを有する膜が、アニオン交換マトリックスの代わりに使用され得る。
【0081】
市販のアニオン交換マトリックスとしては、DEAEセルロース、POROS(登録商標)PI 20、PI 50、HQ 10、HQ 20、HQ 50、D 50、Applied Biosystems製、MonoQ(登録商標)、MiniQ、Source(商標)15Q及び3OQ、Q、DEAE及びANX Sepharose(登録商標)Fast Flow、Q Sepharose(登録商標)High Performance、QAE SEPHADEX(商標)及びFAST Q SEPHAROSE(登録商標)、GE Healthcare製、WP PEI、WP DEAM、WP QUAT、J.T. Baker製、Hydrocell DEAE及びHydrocell QA、Biochrom Labs Inc.製、UNOsphere(商標)Q、Macro−Prep(登録商標)DEAE及びMacro−Prep(登録商標)High Q、Biorad製、Ceramic HyperD(登録商標)Q、Ceramic HyperD(登録商標)DEAE、Q HyperZ(登録商標)、Trisacryl(登録商標)M及びLS DEAE、Spherodex(登録商標)LS DEAE、QMA Spherosil(登録商標)LS、QMA Spherosil(登録商標)M、Pall Technologies製、DOWEX(登録商標)Fine Mesh強塩基タイプI及びタイプIIアニオンマトリックス及びDOWEX(登録商標)MONOSPHER E 77、弱塩基アニオン、Dow Liquid Separations製、Matrex Cellufine A200、A500、Q500、及びQ800、Millipore製、Fractogel(登録商標)EMD TMAE3 Fractogel(登録商標)EMD DEAE及びFractogel(登録商標)EMD DMAE、EMD製、Amberlite(商標)弱及び強アニオン交換体タイプI及びII、DOWEX(登録商標)弱及び強アニオン交換体タイプI及びII、Diaion弱及び強アニオン交換体タイプI及びII、Duolite(登録商標)、Sigma−Aldrich製、TSKゲル(登録商標)Q及びDEAE 5PW及び5PW−HR、Toyopearl(登録商標)SuperQ−650S、650M及び650C3 QAE−550C及び650S、DEAE−65OM及び650C、Tosoh製、並びにQA52、DE23、DE32、DE51、DE52、DE53、Express−Ion(商標)D及びExpress−Ion(商標)Q、Whatman製が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
望ましい場合、アニオン交換膜が、アニオン交換マトリックスの代わりに使用され得る。市販のアニオン交換膜としては、Sartorius製のSartobind(登録商標)Q、Pall Technologies製のMustang(登録商標)Q、及びMillipore製のIntercept(商標)Q膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
用語「化学化合物」は、IEXにおいてあるpHで使用されると帯電し、イオン交換マトリックスへの結合において関心対象のポリペプチド及び不純物とあるpHで競合する、一般的に1000ダルトン未満の分子量を有する小分子である化学化合物を指す。金属イオンに結合する能力を有する好ましい化学化合物を下記に列挙する。
【0084】
本発明の意味において、用語「クラスター化した」は、化学化合物中において局所濃度の負電荷が存在することを意味する、負電荷の一様でない分布を意味する。
【0085】
「カチオン交換マトリックス」は、タンパク質結合時に負に帯電しており、固相を越えて又は通って通される水溶液中のカチオンとの交換のための遊離カチオンを有する、固相を指す。カチオン交換マトリックスを形成するのに適した固相へ結合される任意の負に帯電したリガンド、例えば、カルボキシレート、スルホネート、及び下記の他のものが使用され得る。市販のカチオン交換マトリックスとしては、例えば、以下を有するものが挙げられるが、これらに限定されない:スルホネートベースの基(例えば、MonoS(登録商標)、MiniS、Source(商標)15S及び30S、SP Sepharose(登録商標)Fast Flow(商標)、SP Sepharose(登録商標)High Performance、GE Healthcare製、Toyopearl(登録商標)SP−650S及びSP−650M、Tosoh製、Macro−Prep(登録商標)High S、BioRad製、Ceramic HyperD(登録商標)S、Trisacryl(登録商標)M及びLS SP及びSpherodex(登録商標)LS SP、Pall Technologies製;スルホエチルベースの基(例えば、Fractogel(登録商標)SE、EMD製、POROS(登録商標)(S−10及びS−20、Applied Biosystems製);スルホプロピルベースの基(例えば、TSK Gel(登録商標)SP 5PW及びSP−5PW−HR、Tosoh製、POROS(登録商標)HS−20及びHS 50、Applied Biosystems製);スルホイソブチルベースの基(例えば、Fractogel(登録商標)EMD SO3、EMD製);スルホキシエチルベースの基(例えば、SE52、SE53及びExpress−Ion(商標)S、Whatman製)、カルボキシメチルベースの基(例えば、CM Sepharose(登録商標)Fast Flow、GE Healthcare製、Hydrocell CM、Biochrom Labs Inc.製、Macro−Prep(登録商標)CM、BioRad製、Ceramic HyperD(登録商標)CM、Trisacryl M CM、Trisacryl LS CM、Pall Technologies製、Matrex Cellufine C500及びC200、Millipore製、CM52、CM32、CM23及びExpress − Ion(商標)C、Whatman製、Toyopearl(登録商標)CM−650S、CM−650M及びCM−650C、Tosoh製);スルホン酸及びカルボン酸ベースの基(例えば、BAKERBOND(登録商標)Carboxy−Sulfon、J.T. Baker製);カルボン酸ベースの基(例えば、WP CBX、J.T Baker製、DOWEX(登録商標)MAC−3、Dow Liquid Separations製、Amberlite(商標)弱カチオン交換体、DOWEX(登録商標)弱カチオン交換体、及びDiaion弱カチオン交換体、Sigma−Aldrich製、並びにFractogel(登録商標)EMD COO−、EMD製);スルホン酸ベースの基(例えば、Hydrocell SP、Biochrom Labs Inc.製、DOWEX(登録商標)Fine Mesh強酸カチオンマトリックス、Dow Liquid Separations製、UNOsphere(登録商標)S、WP Sulfonic、J. T. Baker製、Sartobind(登録商標)S膜、Sartorius製、Amberlite(商標)強カチオンマトリックス、DOWEX(登録商標)強カチオン及びDiaion強カチオン交換体、Sigma−Aldrich製);並びにオルトホスフェートベースの基(例えば、Pl 1、Whatman製)。望ましい場合、カチオン交換膜、例えば、Sartobind(登録商標)S(Sartorius; Edgewood, NY)が、カチオン交換マトリックスの代わりに使用され得る。
【0086】
本発明の意味において、用語「金属イオンを錯化する能力」は、化学化合物又は関心対象のポリペプチドと金属イオンとの間での錯体の形成能力を意味する。錯体の形成は、多座配位子、即ち、化学化合物又は関心対象のポリペプチドと単一の中心原子との間での2つ又はそれ以上の別個の結合の形成を包含する。通常、このような化学化合物は、“Organic compound”有機化学化合物であり、キレート剤(chelant)、キレーター、キレート化剤、又は封鎖剤と呼ばれる。化学化合物は、金属イオンであり得る単一の中心原子とキレート錯体を形成する。キレート錯体は、中心原子とたった1つの結合を形成する、単座配位子との配位錯体と対比される。非限定的な例として、下記の薬剤は、本発明に従う金属イオンを錯化する能力を有する化学化合物である:
a)五酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA又はペンテト酸)、Pentetide、Ino−1及びFura−2;
b)四酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、例えば、1,2−ビス(o−エタン−N,N,N',N'−四酢酸(BAPTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその様々な塩(例えば、EDTAジアンモニウム、EDTA二カリウム二水和物;EDTA二ナトリウム;EDTA三ナトリウム;EDTA四ナトリウム及びEDTAテトラアンモニウム)及びエチレングリコール四酢酸(EGTA);
c)三酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、例えば、N−(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)及びニトリロ三酢酸(NTA);
c)三酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、例えば、N−(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)及び(NTA);
d)二酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩、例えば、イミノ二酢酸(IDA)、イミノ二コハク酸四ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、及び
e)複数のアミン基を含む化学化合物、例えば、アミノエチル−エタノールアミン(AEEA)、2,3−ジフェニルエチレンジアミン、エチレン−ジアミン、エチレンジアミン−N,N'−ビス(2−ヒドロキシフェニル酢酸)エチレンジアミン−N,N'−二コハク酸、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、及びポリアミノカルボン酸
f)複数のチオール基を含む化学化合物、例えば、ジメラクプロール(dimeracprol)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、ジメルカプト−1−プロパンスルホン酸(DMPS)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム
g)ホスホン酸及びその誘導体並びにそれらの種々の塩、例えば、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エチレン
ジアミンテトラ(メチレンホスホン酸(EDTMP)、エチドロン酸又は1−ヒドロキシエタン1,1−ジホスホン酸(HEDP)。
【0087】
イオン又はある塩としてある化学化合物を列挙することは、異なる塩でのイオンを同様に包含することが理解される。
【0088】
下記の錯化剤も、本発明の意味における金属イオンを錯化する能力を有する化学化合物である。アセチルアセトン酸、アセチルアセトン、ベンゾトリアゾール、2,2'−ビピリジン、4,4'−ビピリジン、1,2−ビス(ジメチル−アルシノ)ベンゼン 1,2ビス(ジメチル−ホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−エタン、ベンゾトリアゾール、クラスロ−キレート、2.2.2−クリプタンド、カテコール、コロール、クラウンエーテル、18−クラウン−6、クリプタンド、シクレン、シクロデキストリン、デフェラシロクス、デフェリプロン、デフェロキサミン、デキスラゾキサン、ジグリム、ジメチルグリオキシム、ジチオレン、エタンジオール、エチドロン酸、フェリクロム、グルコン酸、メタラクラウン、加水分解カゼイン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ペニシラミン、フェナントロリン、ホスホネート、フィトケラチン、ポルフィン、ポルフィリン、ピロホスフェート、スコルピオネート配位子、ナトリウムポリ(アスパルテート)、テルピリジン、テトラフェニル−ポルフィリン、1,4,7−トリアザシクロノナン、トリメタホスフェート トリホス、及び1,4,7−トリチアシクロノナン。
【0089】
本発明の特に好ましい実施態様は、本発明の意味における化学化合物としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を使用する方法である。EDTAは、式[CH2N(CH2CO2H)2]2を有するポリアミノカルボン酸である。その有用性は、キレート化剤としてのその役割、即ち、Ca2+及びFe3+などの金属イオンを「封鎖する」その能力のために生じる。EDTAによって結合された後、金属イオンは溶液に残るが、減少した反応性を示す。EDTAは、いくつかの塩、特にEDTA二ナトリウム及びEDTAカルシウム二ナトリウムとして製造される。分子量は292.24 Daである。配位化学において、EDTA4−は、ポリアミノカルボン酸ファミリーの配位子のメンバーである。EDTA4−は、通常、その2つのアミン及び4つのカルボキシレートを介して金属カチオンへ結合する。得られる配位化学化合物の多くは、八面体ジオメトリーをとる。EDTAはまた、AEXマトリックスのカチオン性電荷へ結合することができる。
【0090】
本発明の方法は、7mMと、化学化合物が平衡化流体又はサンプル液又は洗浄流体へ導入する導電率が関心対象のポリペプチドの結合がもはや起こらないほど高い濃度との間の濃度で、EDTAのような化学化合物を使用する。化学量のこの最大濃度は、所定の化学化合物及び所定の関心対象のポリペプチドの各個々の組み合わせについて当業者によって容易に決定され得る。EDTAについて、本発明に従う方法についての好ましい濃度は、少なくとも7mM又は少なくとも10mM、又は少なくとも15mM、又は少なくとも20mM又は少なくとも25mM又は少なくとも30mM又は少なくとも32mM又は少なくとも40mM又は少なくとも50mMである。EDTAについて、平衡化流体又はサンプル液又は洗浄流体の導電率が関心対象のポリペプチドの効率的な結合について高すぎるようになる範囲は、約200mMで始まる。従って、本発明に従う非常に好ましい方法は、200mMまでのEDTA、又は190mMまで、又は180mM又は170mMまで又は160mMまで又は150mMまで又は140mMまで又は130mMまでを使用する。EDTAの濃度について開示されるより低い範囲は、開示される高いほうの濃度と組み合され、好ましい濃度範囲、例えば、7mM〜200mM、7mM〜190mM、7mM〜180mM......又は10mM〜200mM、又は10mM〜190mM、又は10 mM〜180mM.........、又は15mM〜200mM又は15mM〜190mM又は15mM〜180mM...を形成し得ることが理解される。
【0091】
本発明の同様に特に好ましい実施態様は、化学化合物としてエチレングリコール四酢酸(EGTA)を使用する方法である。
【0092】
CEXによる関心対象のポリペプチドの精製において本発明に従って使用され得るアニオン性化合物の例は、第1級アミン及びカチオン性アミノ酸ポリマー、例えば、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジピコリルアミン(DPA)、ポリリジン、ポリアルギニン及びポリヒスチジンである。
【0093】
本発明の方法によって精製される好ましいポリペプチドは、帯電しており、クラスター化した電荷を優先的には有し、又は化学化合物について上記に列挙された官能基、例えば、アミン又はチオール基を含み、これらは、イオン交換マトリックスへの強力な結合に寄与し得る。優先的には、これらの官能基もまたクラスター化している。
【0094】
用語「宿主細胞ポリペプチド」、又は「HCP」は、宿主細胞のゲノムから発現された任意のポリペプチド、又は、組換え発現され、かつ、標的ポリペプチドとは見なされないポリペプチドを含む、標的ポリペプチドを発現する宿主細胞の代謝(細胞内及び細胞外)由来のポリペプチドのいずれかを指す。宿主細胞は、標的ポリペプチドを発現することができる任意の細胞、特に、哺乳動物(例えば、CHO及びマウス骨髄腫細胞株、例えばNSO)、昆虫 細菌、植物及び酵母細胞株であり得る。本発明の特定の実施態様において、HCPは、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞培養物由来の宿主細胞ポリペプチド(「HCP」)のいずれかを指す、「チャイニーズハムスター卵巣細胞ポリペプチド」、又は「CHOP」である。HCPは、関心対象のポリペプチドを含有する細胞培養培地又は溶解物[例えば、採取細胞培養液(「HCCF」)]中に不純物として一般的に存在する。関心対象のポリペプチドを含む混合物中に存在するHCPの量は、関心対象のポリペプチドについての純度の程度の指標を提供する。通常、ポリペプチド混合物中のHCPの量は、混合物中の関心対象のポリペプチドの量に対する百万分率で表現される。従って、ある実施態様において、産物を含有する溶出液は、100ppm未満、又は90ppm未満、又は80ppm未満、又は70ppm未満、又は60ppm未満、又は50ppm未満、又は40ppm未満、又は30ppm未満、又は20ppm未満、又は10ppm未満、又は5ppmで存在するHCPを有する。
【0095】
HCP組成物は、非常に不均質であり、ポリペプチド産物及び使用される精製手順に依存する。治療用途についての生物学的産物の販売承認の前に、産物中の汚染ポリペプチド(例えば、HCP)のレベルが、ICH及びFDAガイドラインに従って定量的に測定されなければならない。
【0096】
上述の宿主細胞ポリペプチドは、ヒト細胞株が関心対象のポリペプチドの産生のために使用される場合、ヒトポリペプチドであり得、又は、非ヒト細胞株が関心対象のポリペプチドの産生のために使用される場合、非ヒトポリペプチドであり得る。本発明の一局面において、ポリペプチド汚染物質は、ビタミンK依存性ポリペプチドなどの、宿主細胞ポリペプチドである。宿主細胞ポリペプチドの特に関連性のあるクラスは、Glaドメイン含有ポリペプチド、例えば、GAS−6、ポリペプチドS、第II因子(プロトロンビン)、トロンビン、第X/Xa因子、第IX/IXa因子、ポリペプチドC、第VII/VIIa因子、ポリペプチドZ、膜貫通γ−カルボキシグルタミン酸ポリペプチド1、膜貫通γ−カルボキシグルタミン酸ポリペプチド2、膜貫通γカルボキシグルタミン酸ポリペプチド3、膜貫通γ−カルボキシグルタミン酸ポリペプチド4、マトリックスGlaポリペプチド、及びオステオカルシンである。
【0097】
上述したように、関心対象のビタミンK依存性ポリペプチドは、通常、第VII因子ポリペプチド、第IX因子ポリペプチド、第X因子ポリペプチド及び活性化ポリペプチドCより選択されるビタミンK依存性凝固因子である。あるより特定の実施態様において、関心対象のビタミンK依存性ポリペプチドは、第IX因子ポリペプチドである。別のより特定の実施態様において、関心対象のビタミンK依存性ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドである。別の特定の実施態様において、関心対象のビタミンK依存性ポリペプチドは、第X因子ポリペプチドである。
【0098】
別の実施態様において、本発明は、ヒトビタミンK依存性ポリペプチドからの非ヒトポリペプチド汚染物質の分離のための方法を提供する。本発明の一局面において、非ヒトポリペプチド汚染物質はまた、ビタミンK依存性ポリペプチドである。さらに別の局面において、非ヒトポリペプチド汚染物質は、ハムスターポリペプチドである。
【0099】
用語「百万分率」又は「ppm」は、本明細書において交換可能に使用され、本発明の方法によって精製される関心対象のポリペプチドの純度の指標を指す。単位ppmは、ポリペプチドが溶液中にある場合、ミリグラム/ミリリットルでの関心対象のポリペプチド当たりのナノグラム/ミリリットルでのHCPの量を指す(即ち、下記の実施例において記載されるように、HCP ppm=(CHOP ng/ml)/(関心対象のポリペプチドmg/ml))。ポリペプチドが例えば凍結乾燥によって乾燥される場合、ppmは、(HCP ng)/(関心対象のポリペプチドmg)を指す。
【0100】
宿主細胞タンパク質(HCP)レベルを測定するための種々の方法が存在する。関心対象のポリペプチドからHCPを同定し十分に除去できないことは、効能の減少及び/又は有害な患者反応をもたらし得る。一方法は、ELISAを指す「HCP ELISA」であり、ここで、アッセイにおいて使用される二次抗体は、抗体を産生するために使用される細胞、例えばCHO細胞から産生されるHCPに特異的である。二次抗体は、当業者に公知の従来の方法に従って産生され得る。例えば、二次抗体は、見せかけの産生及び精製実行によって得られるHCPを使用して産生され得、即ち、関心対象の抗体を産生するために使用されるのと同一の細胞株が使用されるが、細胞株は抗体DNAでトランスフェクションされない。例示的な実施態様において、二次抗体は、最適な細胞発現系、即ち、標的抗体を産生するために使用される細胞発現系において発現されるものと同様のHCPを使用して産生される。
【0101】
一般的に、HCP ELISAは、2つの層の抗体、即ち、一次抗体及び二次抗体の間に、HCPを含む液体サンプルを挟むことを含む。親和性精製された一次抗体、例えばヤギ抗CHO(Cygnus)によってサンプル中のHCPが捕獲される時間の間、サンプルはインキュベートされる。抗体、例えばビオチン化された抗CHO HCPを作製するために使用された細胞から産生されたHCPへ特異的な標識二次抗体が、添加され、サンプル中のHCPへ結合する。サンプル中に含有されるHCPの量は、二次抗体の標識に基づいて適切なテストを使用して測定される。HCP ELISAは、上記セクションIIIに記載のプロセスを使用して得られる溶出液又はフロースルーなどの、抗体組成物中のHCPのレベルを測定するために使用され得る。本発明はまた、組成物がHCP酵素結合免疫吸着検定法(「ELISA」)によって測定されるような検出可能なレベルのHCPを有さない、抗体を含む組成物を提供する。
【0102】
用語「宿主細胞核酸」は、関心対象のポリペプチドを発現する宿主細胞中に存在する任意のポリヌクレオチド、例えば、RNA又はDNAを意味する。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得る。
【0103】
用語「産物関連汚染物質」は、望ましくなく、最終の純粋な関心対象のポリペプチドから除去されるべきである、関心対象のポリペプチドの分解産物、凝集体又はミスフォールドされた又はそうでなければ変性形態を指す。減らされ得る特定の関心対象のある分解産物は、FIXの精製におけるFIXαである。
【0104】
用語「ウイルス」は、DNA又はRNAウイルスを含む。これらのウイルスは、リン脂質膜によって包まれているか又は包まれていない場合がある。
【0105】
用語「プリオン」は、伝染性のミスフォールドされたタンパク質に関する。これらのミスフォールドされたタンパク質は、タンパク質の正しく折り畳まれた型自体をミスフォールドさせ得る。
【0106】
用語「内毒素」は、細胞膜由来のリポ多糖を意味する。
【0107】
用語「方法関連不純物」は、プロセスにおいて添加される任意の分子、特にタンパク質に関する。非限定的な例として、このような方法関連不純物は、プロテインA、ポリソルベート−80、リン酸トリ−n−ブチル、又は、例えば上流の免疫親和性精製からのモノクローナル抗体からの、浸出されたリガンドであり得る。
【0108】
用語「採取細胞培養液」は、遠心分離又は濾過を含む手段によって細胞が除去された、原核又は真核細胞培養液を意味する。細胞培養は、原核細胞又は真核細胞のいずれかが制御条件下で増殖されるプロセスである。
【0109】
用語「細胞培養」は、動物細胞を含む多細胞真核生物、又は細菌及び酵母を含む単細胞原核生物由来の、細胞の培養を指す。真核細胞培養物としては、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ハイブリドーマ、及び昆虫細胞が挙げられる。適切な細胞培養容器を用いて、分泌ポリペプチドが、接着依存性細胞又は浮遊細胞株から得ることができる。哺乳動物細胞培養物としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。
【0110】
用語「減少した」は、物質の量を減らす又は減少させることを指す。減少した調製物は、初期量と比べてより少量の物質、例えばHCPを有する調製物を含む。一実施態様において、物質は、不純物又は汚染物質である。一実施態様において、用語「減少した」は、物質の実質的な減少を意味する。別の実施態様において、用語「減少した」は、物質の量が無いことを意味する。一実施態様において、物質の量が無いことは、本明細書に記載のアッセイを使用して「検出可能な量が無いこと」を含む。
【0111】
用語「実質的に含まない」は、物質の量が無いことを含み、しかしまた、最少の量の物質を含み得る。一実施態様において、物質の量が無いことは、本明細書に記載のアッセイを使用して「検出可能な量が無いこと」を含む。
【0112】
用語「界面活性剤」は、ポリペプチドの凝集を防止するため、及び関心対象のポリペプチドへの汚染物質の結合又は非特異的相互作用を防止するために有用であり、様々な濃度で存在し得る、イオン性、双性イオン性及び非イオン性界面活性剤を指す。
【0113】
「衛生化」溶液は、精製プロセス前に、任意の結合された汚染物質、例えば生物学的起源のものを除去することによって、カラムクロマトグラフィーにおいて使用されるマトリックスを洗浄するために通常使用される。任意の望ましいバッファーが、本発明の方法に従って選択される特定のカラム及びマトリックスと適合性である限り、この目的のために使用され得る。好ましくは、衛生化溶液のpHは高く、例えば、pH 10又はそれ以上、より好ましくはpH 11又はそれ以上、さらにより好ましくはpH 12又はそれ以上であり;あるいは、衛生化溶液のpHは、低い場合があり、例えば、pH 4又はそれ未満、より好ましくはpH 3又はそれ未満であり得る。特定の実施態様において、本発明の方法において使用されるマトリックスは、IN NaOH,12を超えるpHを含む衛生化溶液を使用して洗浄される。
【0114】
本明細書において使用される場合、用語「導電率」は、特定の温度で2つの電極間で電流を伝導する水溶液の能力を指す。電流は、溶液中のイオン輸送によって流れる。従って、水溶液中に存在するイオンの量が増加するにつれて、溶液は、より高い導電率を有する。本発明の方法において、精製が通常行われる温度は、指定のpH範囲内で、セ氏約4〜約37度、より好ましくはセ氏約15〜約25度であり得る。
【0115】
導電率についての測定単位は、ミリジーメンス毎センチメートル(mS/cm)であり、標準の導電率計を使用して測定され得る。溶液の導電率は、その中のイオンの濃度を変化させることによって変更され得る。例えば、溶液中の緩衝剤の濃度及び/又は塩(例えば、NaCl又はKCl)の濃度は、所望の導電率を達成するために変更され得る。好ましくは、塩濃度は、下記の実施例に記載されるような所望の導電率を達成するために変えられる。それぞれの流体の導電率は、本発明の必須の特徴ではない。当業者は、関心対象のポリペプチド及び化学化合物の両方がイオン交換マトリックスへ結合することを可能にする、平衡化流体、ローディング流体又は溶出液中の導電率を標準実験で測定することができる。
【0116】
ポリペプチドの「pI」又は「等電点」は、ポリペプチドの正電荷がその負電荷と釣り合うpHを指す。pIは、例えば、ポリペプチド上のアミノ酸及び/又はシアル酸残基の総電荷から又は等電点電気泳動を使用することによって、様々な従来の方法に従って計算され得る。
【0117】
関心対象のビタミンK依存性ポリペプチド
本発明は、広い局面において、関心対象のビタミンK依存性ポリペプチドの精製に、及びこのようなポリペプチドを含む特定の精製組成物に関する。用語「関心対象の」は、例えば、治療状況においてビタミンK依存性ポリペプチドを使用する目的のために、最も純粋な形態で得ることに関連する、特定の種(ビタミンK依存性ポリペプチド)へのポインターとして本明細書において適用される。
【0118】
本明細書に記載される方法は、原則的に、以下を含むがこれらに限定されない任意のビタミンK依存性ポリペプチドの精製に適用可能であり得る:GAS−6、ポリペプチドS、第II因子(プロトロンビン)、トロンビン、第X/Xa因子、第IX/IXa因子、ポリペプチドC、第VII/VIIa因子、ポリペプチドZ、膜貫通γ−カルボキシグルタミン酸ポリペプチド1、膜貫通γ−カルボキシグルタミン酸ポリペプチド2、膜貫通γカルボキシグルタミン酸ポリペプチド3、膜貫通γ−カルボキシグルタミン酸ポリペプチド4、マトリックスGlaポリペプチド、及びオステオカルシン)、特に、第VII因子ポリペプチド、第IX因子ポリペプチド、第X因子ポリペプチド及び活性化ポリペプチドCより選択されるビタミンK依存性凝固因子。特定の一実施態様において、方法は、細胞培養条件、特に非ヒト細胞培養下で産生された関心対象の組換えビタミンK依存性ポリペプチドの精製のために使用される。
【0119】
特定の一実施態様において、関心対象のビタミンK依存性ポリペプチドは、FIX又はFIXaなどの、第IX因子ポリペプチドである。
【0120】
本明細書において使用される場合、用語「第IX因子ポリペプチド」及び「FIXポリペプチド」は、野生型ヒト第IX因子のアミノ酸配列を含む任意のポリペプチド(即ち、米国特許第4,994,37号又は欧州特許第EP 0107278号に開示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド)、その変異体、並びに第IX因子関連ポリペプチド、第VII因子誘導体及び第VII因子複合体を意味する。これは、野生型ヒト第IX因子と比べて実質的に同一の又は改善された生物学的活性を示す第IX因子変異体、第IX因子関連ポリペプチド、第IX因子誘導体及び第IX因子複合体を含む。
【0121】
ビタミンK依存性ポリペプチドの群のメンバーである、ヒトFIXは、57kDaの分子量を有する一本鎖糖タンパク質であり、これは、415個のアミノ酸の不活性チモーゲンとして血流中へ肝細胞によって分泌される。それは、ポリペプチドのN末端Glaドメインに局在する12個のγ−カルボキシ−グルタミン酸残基を含有する。Gla残基は、それらの生合成のためにビタミンKを要求する。Glaドメインに続いて、2つの上皮増殖因子ドメイン、活性化ペプチド、及びトリプシン型セリンプロテアーゼドメインが存在する。FIXのさらなる翻訳後修飾は、ヒドロキシル化(Asp 64)、N型(Asn157及びAsn167)並びにO型グリコシル化(Ser53、Ser61、Thr159、Thr169、及びThr172)、硫酸化(Tyr155)、及びリン酸化(Ser158)を包含する。
【0122】
FIXは、Arg145−Ala146及びArg180−Val181での活性化ペプチドのタンパク質分解によって、その活性形態である第IXa因子へ変換され、1つのジスルフィド架橋によって一緒に保持される2つのポリペプチド鎖、N末端軽鎖(18 kDa)及びC末端重鎖(28 kDa)が形成される。第IX因子の活性化切断は、例えば第XIa因子又は第VIIa因子/TFによって、インビトロで達成され得る。第IX因子は、ヒト血漿中に5〜10μg/mlの濃度で存在する。ヒトにおける第IX因子の血漿半減期は、約15〜18時間であることがわかった(White GC et al. 1997. Recombinant factor IX. Thromb Haemost. 78: 261−265; Ewenstein BM et al. 2002. Pharmacokinetic analysis of plasma−derived and recombinant FIX concentrates in previously treated patients with moderate or severe hemophilia B. Transfusion 42:190−197)。
【0123】
別の実施態様において、本発明は、FIXαからの全長FIXの分離のための方法に関する。FIXαは、Arg145−Ala146活性化部位のみでのFIXの切断から生じるある特定のタンパク質分解性分解産物である。タンパク質のこの形態はSECによって分離可能ではなく、何故ならば、それはジスルフィド結合によって一緒のままであるためであり、従って、FIXの精製において固有の問題である。本発明の一実施態様において、FIXαの量は、本発明の方法を使用することによって、インタクトなFIXの量と比較して減らされる。
【0124】
別の特定の実施態様において、関心対象のビタミンK依存性ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチド、例えば、第VII因子関連ポリペプチド、又は第VII因子誘導体、又は第VII因子複合体、特に、ヒト第VII因子ポリペプチド、特に、ヒト野生型第VII因子又は野生型ヒト第VIIa因子である。本明細書において使用される場合、用語「第VII因子ポリペプチド」及び「FVIIポリペプチド」は、野生型ヒト第VIIa因子のアミノ酸配列1−406を含む任意のポリペプチド(即ち、米国特許第4,784,950号に開示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド)、その変異体、並びに第VII因子関連ポリペプチド、第VII因子誘導体及び第VII因子複合体を意味する。これは、野生型ヒト第VIIa因子と比べて実質的に同一の又は改善された生物学的活性を示す第VII因子変異体、第VII因子関連ポリペプチド、第VII因子誘導体及び第VII因子複合体を含む。
【0125】
FVIIは、406個のアミノ酸の不活性チモーゲンとして血流中へ肝細胞によって分泌される、約50 kDaの分子量を有する一本鎖糖タンパク質である。それは、タンパク質のN末端Glaドメインに局在する10個のγ−カルボキシ−グルタミン酸残基(6、7、14、16、19、20、25、26、29、及び35位)を含有する。Gla残基は、それらの生合成のためにビタミンKを要求する。GlaドメインのC末端へ配置されるのは、2つの上皮増殖因子ドメイン、続いてトリプシン型セリンプロテアーゼドメインである。FVIIのさらなる翻訳後修飾は、ヒドロキシル化(Asp 63)、N型(Asn145及びAsn322)並びにO型グリコシル化(Ser52及びSer60)を包含する。
【0126】
FVIIは、Arg152−Ile153での単一のペプチド結合のタンパク質分解によって、その活性形態である第VIIa因子へ変換され、1つのジスルフィド架橋によって一緒に保持される2つのポリペプチド鎖、N末端軽鎖(24 kDa)及びC末端重鎖(28 kDa)が形成される。他のビタミンK依存性凝固因子とは対照的に、これらの他のビタミンK依存性凝固因子の活性化の間に切断される活性化ペプチドは、FVIIについて記載されていない。Arg152−Ile153切断部位及び下流のいくつかのアミノ酸は、他のビタミンK依存性ポリペプチドの活性化切断部位と相同性を示す。
【0127】
組換え発現
ポリペプチドの組換え産生は、様々な技術を使用して達成され得る。通常、関心対象のポリヌクレオチド配列は、「発現ベクター」中へクローン化される。ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、又は、外来配列の挿入、真核細胞又は原核細胞中へのそれらの導入、及び必要に応じて導入配列の発現に適した任意の他の適切なビヒクルであり得る。通常、ベクターは、宿主細胞中での融合ポリペプチドの発現のために必要とされる転写/翻訳制御配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、開始コドン、終止コドン、場合によりオペレーター配列、及び場合により他の調節配列、例えばエンハンサーを含む。
【0128】
本発明の組換えポリペプチドを産生するために適した組換え発現ベクターは、発現される融合ポリペプチドをコードする核酸配列へ機能的に連結された、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択される、1つ又はそれ以上の調節配列を通常含む。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択及び所望のペプチドの発現レベルなどの因子に依存し得ることが、当業者によって認識される。ベクターDNAは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術によって原核又は真核細胞中へ導入され得る。組換えベクターの作製、複製ベクターを使用する宿主細胞の形質転換、及び生物学的に活性な外来ポリペプチドの発現のための、方法及び材料は、当技術分野において一般的に周知である。本発明の組換えポリペプチドはまた、細胞フリー系において作製され得る。
【0129】
関心対象の組換えポリペプチドはまた、それらが細胞外に分泌されるように及び/又は細胞中の特定の場所へ輸送されるように、設計され得る。例えば、組換えペプチドは、細胞小器官、例えば、植物細胞中の色素体又は液胞、又は他のタイプの非膜細胞体又は封入体、例えば、原核生物中に存在するものへ輸送されるように設計され得る。細胞外の又は細胞の場所へペプチドを標的化するために用いられる方法は、当技術分野において一般的に公知である。例えば、組換えペプチド及び/又はベクター構築物は、細胞輸送を可能にするターゲッティング配列及び/又は翻訳後修飾を含むように設計され得る。このような輸送は翻訳後又は翻訳と同時であり得る。
【0130】
関心対象の組換えポリペプチドはまた、特定の細胞小器官又は細胞の場所、例えば、色素体において産生され得る。所望の場所において発現を達成するための適切な方法は、当業者に公知であり、例えば、組換えペプチド及び/又は必要に応じて適切なプロモーター及び他の5’及び3’制御配列を有するベクターの設計を含む。
【0131】
原核生物に加えて、真核微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、ポリペプチドをコードするベクターについての適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)、又は一般的なパン酵母が、下等真核宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかし、多数の他の属、種及び株が市販されており、本明細書において有用である:例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe);クルイベロマイセス(Kluyveromyces)宿主、例えば、K.ラクチス(K. lactis)、K.フラジリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、K.ブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC 16,045)、K.ウイッケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24,178)、K.ワルチイ(K. waltii)(ATCC 56,500)、K.ドロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906)、K.サーモトレランス(K. thermotolerans)、及びK.マルキシアヌス(K. marxianus);ヤロウイア(yarrowia)(EP 402,226);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(EP 183,070);カンジダ(Candida);トリコデルラア・レーシア(Trichoderraa reesia)(EP 244,234);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);シュワンニオミセス(Schwanniomyces)、例えば、シュワンニオミセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis);並びに糸状菌、例えば、ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、及びアスペルギルス(Aspergillus)宿主、例えば、A.ニデュランス(A. nidulans)及びA.ニガー(A. niger)。グリコシル化抗体の発現についての適切な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株及び変異体、並びに、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(毛虫)、アエデス・アエジプティ(Aedes aegypti)(蚊)、アエデス・アルボピクタス(Aedes albopictus)(蚊)、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)(ミバエ)、及びボンビュクス・モリー(Bombyx mori)などの宿主由来の対応の許容される昆虫宿主細胞が、確認された。トランスフェクションについての様々なウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL−I変異体及びボンビュクス・モリーNPVのBm−5株が公的に入手可能であり、このようなウイルスは、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションについて、本発明に従って本明細書においてウイルスとして使用され得る。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト及びタバコの植物細胞培養物もまた、宿主として利用され得る。
【0132】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、Kaufman and Sharp (1982) MoI. Biol. 159:601−621に記載されるような、DHFR選択可能マーカーと共に使用される、Urlaub and Chasin, (1980) PNAS USA 77:4216−4220に記載されるような、dhfr−CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞中へ導入されると、宿主細胞中での抗体の発現、又はより好ましくは、宿主細胞が増殖される培養培地中への抗体の分泌を可能にするために十分な期間の間、宿主細胞を培養することによって、抗体が産生される。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CVI株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(浮遊培養における増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243−251 (1980));サル腎臓細胞(CVl ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N. Y. Acad. Sci. 383:44−68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒトヘパトーム株(Hep G2)である。
【0133】
宿主細胞は、産生について上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導すること、形質転換体を選択すること、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅することについて必要に応じて修飾された従来の栄養培地中において培養される。
【0134】
薬学的組成物
本発明の方法を使用して得られるポリペプチドは、被験体への投与に適した薬学的組成物へ組み込まれ得る。通常、薬学的組成物は、抗体、又はその抗原結合性部分、及び薬学的に許容される担体を含む。
【0135】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」としては、生理学的に適合性である、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に許容される担体の例としては、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つ又はそれ以上、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。薬学的に許容される担体は、抗体又はその抗原結合性部分の有効性又は貯蔵寿命を高める、少量の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、保存剤又はバッファーをさらに含み得る。
【0136】
本発明の方法を使用して得られる関心対象のポリペプチドは、被験体への投与に適した薬学的組成物へ組み込まれ得る。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」としては、生理学的に適合性である、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に許容される担体の例としては、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つ又はそれ以上、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。薬学的に許容される担体は、抗体又はその抗原結合性部分の有効性又は貯蔵寿命を高める、少量の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、保存剤又はバッファーをさらに含み得る。
【0137】
溶媒の一部又は全部を例えばフリーズドライ、噴霧乾燥、凍結乾燥によって除去するように、又はそうでなければ溶液から組換えペプチドを回収するように、溶液は処理され得る。次いで、組換えペプチドは、例えば液体製剤又は固体調製物として、保存され得る。最終産物の所望の製剤は、ペプチドの要求される下流の適用によって決定される。
【0138】
本発明のポリペプチドを含む薬学的組成物は、様々な形態で見られ得る。これらとしては、例えば、液体、半固体及び固体投薬形態、例えば、液体溶液(例えば、注射可能な及び注入可能な液剤)、ディスパージョン又は懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム及び坐剤が挙げられる。好ましい形態は、意図される投与様式及び治療適用に依存する。通常の好ましい組成物は、注射可能な又は注入可能な液剤の形態である。好ましい投与様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋内)である。好ましい実施態様において、抗体は静脈内注入又は注射によって投与される。別の好ましい実施態様において、抗体は筋内又は皮下注射によって投与される。
【0139】
治療組成物は、通常、製造及び保存の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、液剤、マイクロエマルジョン、ディスパージョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に適した他の規則正しい構築物として処方され得る。無菌注射液剤は、上記に列挙された成分の1つ又は組み合わせと共に適切な溶媒中に必要量で活性化合物(即ち、抗体、又はその抗原結合性部分)を組み入れ、必要に応じて、続いて濾過滅菌によって調製され得る。一般的に、ディスパージョンは、基本の分散媒と上記に列挙されるものからの必要とされる他の成分とを含有する無菌ビヒクル中へ活性化合物を組み入れることによって調製される。無菌注射液剤の調製のための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は、その既に滅菌濾過された溶液から有効成分及び任意の追加の所望の成分の散剤をもたらす真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、ディスパージョンの場合は必要とされる粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持され得る。注射可能な組成物の持続性吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0140】
本発明の方法を使用して得られるポリペプチドは、当技術分野において公知の様々な方法によって投与され得るが、多くの治療適用について、好ましい投与経路/様式は皮下注射である。別の実施態様において、投与は、静脈内注射又は注入による。当業者によって認識されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化する。ある実施態様において、活性化合物は、急速な放出から化合物を保護する担体と共に作製され得る;例えば、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達システムを含む、放出制御製剤。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸が使用され得る。このような製剤の多くの作製法が、特許されているか又は当業者に一般的に公知である。
【0141】
本発明の薬学的組成物は、本発明に従う方法を使用して精製された「治療有効量」又は「予防有効量」の関心対象のポリペプチドを含み得る。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な投薬量及び時間で、有効な量を指す。抗体、又はその抗原結合性部分の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の反応を誘発するポリペプチドの能力などの因子に従って変化し得る。治療有効量はまた、治療的に有利な効果が、抗体、又はその抗原結合性部分の毒性又は有害効果を上回るものである。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するために、必要な投薬量及び時間で、有効な量を指す。通常、予防用量は疾患の前又は初期段階で被験体において使用されるので、予防有効量は治療有効量よりも少ない。投与計画は、最適な所望の反応(例えば、治療又は予防反応)を提供するように調節され得る。例えば、単一のボーラスが投与され得、いくつかの分割された用量が長い間にわたって投与され得、又は、用量は、治療状況の緊急性によって示されるように比例して増加又は減少され得る。投与の容易さ及び投薬量の均一性のために投薬単位形態で非経口組成物を処方することが、特に有利である。投薬単位形態は、本明細書において使用される場合、治療される哺乳動物被験体についての単位投薬量として適した物理的に分離している単位を指し;各単位は、必要とされる薬学的担体と共に所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態についての指定は、(a)活性化合物の特有の特性及び達成される特定の治療又は予防効果、並びに(b)個体における感受性の処理についてこのような活性化合物を調合する技術分野に固有の制限によって指図され、これらに直接依存する。
【0142】
本発明はまた、本発明の方法を使用して得られる、抗体又はその抗原結合性部分を含む、包装された薬学的組成物、製造品、又はキットに関する。製造品は、包装材料及び本発明の方法を使用して得られる、抗体又はその抗原結合性部分を含み得る。製造品はまた、抗体又はその抗原結合性部分を含む製剤又は組成物が減少したレベルのHCPを有することを示すラベル又は添付文書を含み得る。
【0143】
ここで、例示的に過ぎず非限定的である下記の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。実施例は図を参照する:
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】様々なEDTA濃度でのCHOPクリアランス。
【図2−1】コントロール法及びEDTA含有法からの溶出液の分析的SEC。
【図2−2】図2−1の続き。
【図3】コントロール法及びEDTA含有法の溶出液中の第IXα因子レベル。
【図4】大規模製造におけるCHOPクリアランス。
【図5】POROS(登録商標)50 HQにおける種々の化合物についてのCHOP減少ファクター。
【図6】EDTAを使用しての種々のアニオン交換マトリックスについてのCHOP減少ファクター。
【図7】ロード後洗浄バッファー中のみのEDTA及びPOROS(登録商標)50 HQについてのCHOP減少ファクター
【図8】EDTAを使用してのアニオン交換マトリックスFractogel(登録商標)EMD TMAE (M)におけるモノクローナル抗体についてのCHOP減少ファクター。
【図9】DPAを使用してのカチオン交換マトリックスFractogel(登録商標)EMD SO3 (M)におけるモノクローナル抗体についてのCHOP減少ファクター。
【図10】EDTAを添加しないコントロールと比較しての種々の濃度のEDTAを使用するPOROS(登録商標)50 HQにおけるrVIIa−FPについてのCHOP減少ファクター
【実施例】
【0145】
実施例
実施例1:POROS(登録商標)−HQにおけるrIX−FPのEDTA媒介精製についての方法
WO2007/144173に記載されるように、そのC末端でヒトアルブミンへ融合されたFIXを用いて、CHO細胞中においてrIX−FPをアルブミン融合タンパク質として発現させた。発酵後、培養物をCuno Zeta 60SP続いて10SPでの濾過へ供した。次いで、清澄化細胞培養液を、本発明に従う「EDTA含有」アニオン交換法によって、又は「コントロール」法によって処理した。
【0146】
実施例1a:コントロール方法
清澄化細胞培養液(ローディング流体)を、380 cm/hrで、POROS(登録商標)HQ 50 (Applied Biosystems)が詰められたアニオン交換カラムへ適用した。3カラム体積の平衡化流体(50mM MES, 150mM NaCl, pH5.0)を380 cm/hrで適用することによって、このカラムを前もって平衡化していた。導電率は16〜18 mS/cmの範囲内にあった。清澄化細胞培養液を適用した後、3カラム体積の洗浄流体(50mM MES, 150mM NaCl, pH 5.0)を380 cm/hrで適用することによって、結合されていない物質をカラムから洗浄した。次いで、5カラム体積の洗浄流体(50mM MES, 195mM NaCl, 2mM CaCl2, pH 5.0)を380 cm/hrで適用することによって、rIX−FPと比べてより弱く結合されたさらなる汚染物質をカラムから洗浄し、続いて、2カラム体積の50mM Tris−HCl, 100mM NaCl, pH 8.5を380 cm/hで用いて再平衡化し、CaCl2の導入から生じるrIX−FPタンパク質の損失を防ぎ、同時に、高導電率の洗浄バッファーがカラム又はそのようなものの上に存在し、最後に、5カラム体積の50mM Tris−HCl, 100mM NaCl, 10mM CaCl2, pH 8.5を380 cm/hrで用いた。次いで、50mM Tris−HCl, 150mM NaCl, 30mM CaCl2, pH 8.5を有する5カラム体積の溶出液を190 cm/hrで適用することによって、精製rIX−FPをカラムから溶出した。
【0147】
精製rIX−FPの溶出及び収集に続いて、3カラム体積の50mM Tris−HCl, 2M NaCl, pH 8.5を380 cm/hrで適用することによって、カラムを再生させた。
【0148】
実施例1b:本発明に従うEDTA含有法
清澄化細胞培養液へ、EDTAを研究下のレベルまで(表1を参照のこと)又は5〜150mMの範囲内の値まで添加した。次いで、導電率を≦18 mS/cmへ調節し、それが細胞培養液へ添加されたのと同一の濃度で20mM Tris, pH 7.0及びEDTAからなる希釈バッファーを用いてコントロールサンプルとの導電率に関する同価値を与えた。
【0149】
35 mM EDTA(実施例1fを参照のこと)で大規模作製を行う場合、20mM Tris−HCl, pH7.0での希釈によって、先ず、清澄化細胞培養液を≦13.5 mS/cmの導電率へ調節した。次いで、EDTA二ナトリウムを35mMのレベルまでこの溶液へ添加し、未調整コントロールフィードストックのそれ(≦18 mS/cm)と同等のレベルまで導電率を戻した。
【0150】
いずれにしても、最終溶液(ローディング流体)を、380 cm/hrで、POROS(登録商標)HQ 50 (Applied Biosystems)が詰められたアニオン交換カラムへ適用した。3カラム体積の平衡化流体(50mM MES, 100mM NaCl, 50mM EDTA二ナトリウム, pH5.0)を380 cm/hrで適用することによって、このカラムを前もって平衡化していた。この平衡化バッファーの導電率は、NaCl濃度を低下させることによってコントロール法における対応のバッファーのそれと同様であった。
【0151】
調節されたEDTA含有清澄化細胞培養液(ローディング流体)を適用した後、3カラム体積の洗浄流体(50mM MES、100mM NaCl、50mM EDTA二ナトリウム, pH5.0)を380 cm/hrで適用することによって、結合されていない物質をカラムから洗浄した。次いで、5カラム体積の洗浄流体(50mM MES, 195mM NaCl, 2mM CaCl2, pH5.0)を380 cm/hrで適用することによって、rIX−FPと比べてより弱く結合されたさらなる汚染物質をカラムから洗浄し、続いて、2カラム体積の50mM Tris−HCl, 100mM NaCl, pH8.5を380 cm/hで最後に5カラム体積の50mM Tris−HCl, 100mM NaCl, 10mM CaCl2, pH8.5を380 cm/hrで用いて再平衡化した。次いで、5カラム体積の溶出液(50mM Tris−HCl, 150mM NaCl, 30mM CaCl2, pH8.5)を190 cm/hrで適用することによって、精製rIX−FPをカラムから溶出した。
【0152】
精製rIX−FPの溶出及び収集に続いて、3カラム体積の50mM Tris−HCl, 2M NaCl, pH8.5を380 cm/hrで適用することによって、カラムを再生させた。
【0153】
実施例1c:CHOPクリアランス
繰り返されたコントロール実験及びローディング流体中の種々のレベルのEDTAでのEDTA含有実験の結果を表1に示す。このクリアランスを図1に図示する。CHOPクリアランスは、35mM(実験変動についていくぶん許容される)の辺りのピークまでEDTA濃度と共に直線的に増加し、この点を過ぎるとさらなる増加は観察されなかった。CHOPレベルを酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Cygnus Technologiesカタログ番号F015)によって定量化した。
【0154】
実施例1d:rIX−FPの凝集又は分解形態の除去
高速液体クロマトグラフィーにおける分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって観察された主なタンパク質種を表2に示す。EDTA含有法の使用は、溶出中の凝集体及びフラグメント(分解産物)の両方のレベルを著しく減少させた。これはまた図2において見られ得、これは、コントロール法及びEDTA含有法からの溶出された生成物のSECトレースを示す。
【0155】
実施例1e:第IXα因子の除去
第IXα因子は、Arg145−Ala146活性化部位のみでの切断から生じるある特定のタンパク質分解性分解産物である。タンパク質のこの形態はSECによって分離可能ではなく、何故ならば、それはジスルフィド結合によって一緒のままであるためであり、従って、FIXの精製において固有の問題である。EDTA含有法の使用は、還元及び変性条件下で操作される分析的キャピラリー電気泳動によって測定された、図3に示されるようにこの種のクリアランスを改善した。
【0156】
実施例1f:rIX−FPの大規模精製
清澄化細胞培養液500Lを、20mM Tris−HCl, pH7.0での希釈によって≦13.5 mS/cmの導電率へ調節した。次いで、EDTA二ナトリウムを35mMのレベルまでこの溶液へ添加し、未調整フィードストックのそれ(≦18 mS/cm)と同等のレベルまで導電率を戻した。次いで、実施例1bに実質的に記載される通りに、この物質をPOROS(登録商標)HQ 50へ適用した。このスケールで達成された宿主細胞クリアランスを表3及び図4に示し、コントロール(実施例1a)法の大規模適用で達成されたものとそれを比較した。
【0157】
【表1】

【0158】
【表2】

【0159】
【表3】

【0160】
実施例2:ロードバッファー中におけるEDTAとは異なる化学化合物の存在下でのPOROS(登録商標)−HQにおけるrIX−FPの改善された精製方法
EDTAとは異なる種々の化学化合物の効果を、96ウェルフィルターマイクロプレートを用いるハイスループットバッチスクリーニングアプローチを使用して調べた。調べた化合物は、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン−N,N'−二コハク酸(EDDS)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)であった。代表的な清澄化採取材料を2x平衡化バッファーで1:1に希釈し、16.5 mS/cmの導電率へ調節し、最終化合物濃度は10、20、40及び60 mMであり、又はコントロー
ル実行については化合物を添加しなかった。最適な化合物濃度がEDTAと異なり得るので、種々の化合物濃度をスクリーニングし、pH及び導電率を他の化合物について最適化しなかった。表4に、各工程についてのバッファー又は溶液を列挙する。
【0161】
【表4】

【0162】
インキュベーション工程のために、フィルタープレートを指定のインキュベーション時間の間1100 rpmでマイクロプレートスターラーにおいて撹拌し、真空マニホールド装置を使用することによってディープウェル保存プレート中へ液体を移した。実験の各セットを四重で行い、平均の結果を使用した。
【0163】
詳細には、POROS(登録商標)50 HQ樹脂スラリーを96ウェルフィルタープレート(0.65μm PVDF膜)へ移し、保存バッファーを真空によって樹脂から除去した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーと共にインキュベートした。調節したロード材料を合計で40分間樹脂と共にインキュベートし、フロースルーを収集した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーでさらに洗浄し、ロード後洗浄フラクションを収集した。全ての樹脂を、各々5分間、洗浄1、2及び3バッファーと共にインキュベートした。樹脂を5分間溶出バッファー150μLで溶出した。ロード材料、フロースルー、ロード後洗浄及び溶出フラクションを、ヒトアルブミン含有量についてAlbumin Blue 580アッセイ(Sigma Aldrichカタログ番号05497)によって分析した。CHOP含有量を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Cygnus Technologiesカタログ番号F015)によって分析した。表5は、ハイスループットスクリーニングアプローチを使用してのコントロール法と比較してのEDTA法及び他の化合物のCHOP減少ファクター及びCHOP減少ファクターの改善についての結果を示し、図5において、結果を図表として示す。
【0164】
【表5】

【0165】
実施例3:ロードバッファー中のEDTAの存在下でのしかし種々のアニオン交換マトリックスを使用してのrIX−FPの改善された精製のための方法
POROS(登録商標)50 HQとは異なる種々のアニオン交換マトリックスの効果を、96ウェルフィルターマイクロプレートを用いるハイスループットバッチスクリーニングアプローチを使用して調べた。調べたアニオン交換マトリックスは、Macro−Prep(登録商標)25Q(Bio−Rad)、Macro−Prep(登録商標)DEAE(Bio−Rad)及びCellufine Q−500(Chisso)であった。代表的な清澄化採取材料を2x平衡化バッファーで1:1に希釈し、16.5 mS/cmの導電率へ調節し、最終EDTA濃度は10、20、40及び60 mMであり、又はコントロール実行については化合物を添加しなかった。最適なEDTA濃度がPOROS(登録商標)50 HQと異なり得るので、種々のEDTA濃度をスクリーニングし、pH及び導電率を他のアニオン交換マトリックスについて最適化しなかった。表6に、各工程についてのバッファー又は溶液を列挙する。
【0166】
【表6】

【0167】
インキュベーション工程のために、フィルタープレートを指定のインキュベーション時間の間1100rpmでマイクロプレートスターラーにおいて撹拌し、真空マニホールド装置を使用することによってディープウェル保存プレート中へ液体を移した。実験の各セットを四重で行い、平均の結果を使用した。
【0168】
詳細には、アニオン交換樹脂スラリーを96ウェルフィルタープレート(0.65μm PVDF膜)へ移し、保存バッファーを真空によって樹脂から除去した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーと共にインキュベートした。調節したロード材料を合計で40分間樹脂と共にインキュベートし、フロースルーを収集した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーでさらに洗浄し、ロード後洗浄フラクションを収集した。全ての樹脂を、各々5分間、洗浄1、2及び3バッファーと共にインキュベートした。樹脂を5分間溶出バッファー150μLで溶出した。ロード材料、フロースルー、ロード後洗浄及び溶出フラクションを、ヒトアルブミン含有量についてAlbumin Blue 580アッセイ(Sigma Aldrichカタログ番号05497)によって分析した。CHOP含有量を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Cygnus Technologiesカタログ番号F015)によって分析した。表7は、ハイスループットスクリーニングアプローチを使用してのコントロールと比較してのPOROS(登録商標)プロセス及び他のアニオン交換マトリックスについてのCHOP減少ファクター及びCHOP減少ファクターの改善についての結果を示し、図6において、結果を図表として示す。
【0169】
【表7】

【0170】
実施例4:洗浄バッファー中のEDTAの存在下でのPOROS(登録商標)−HQにおけるrIX−FPの改善された精製のための方法
POROS(登録商標)50 HQにおけるロード後洗浄バッファー中にのみEDTAを有する効果を、96ウェルフィルターマイクロプレートを用いるハイスループットバッチスクリーニングアプローチを使用して調べた。代表的な清澄化採取材料を2x平衡化バッファーで1:1に希釈し、16.5 mS/cmの導電率へ調節し、EDTAを添加しなかった。ロード後洗浄バッファー中40mMのEDTA濃度を使用した。表8に、各工程についてのバッファー又は溶液を列挙する。
【0171】
【表8】

【0172】
インキュベーション工程のために、フィルタープレートを指定のインキュベーション時間の間1100 rpmでマイクロプレートスターラーにおいて撹拌し、真空マニホールド装置を使用することによってディープウェル保存プレート中へ液体を移した。実験の各セットを四重で行い、平均の結果を使用した。
【0173】
POROS(登録商標)50 HQ樹脂スラリーを96ウェルフィルタープレート(0.65μm PVDF膜)へ移し、保存バッファーを真空によって樹脂から除去した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーと共にインキュベートした。調節したロード材料を合計で40分間樹脂と共にインキュベートし、フロースルーを収集した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーでさらに洗浄し、ロード後洗浄フラクションを収集した。全ての樹脂を、各々5分間、洗浄1、2及び3バッファーと共にインキュベートした。樹脂を5分間溶出バッファー150μLで溶出した。ロード材料、フロースルー、ロード後洗浄及び溶出フラクションを、ヒトアルブミン含有量についてAlbumin Blue 580アッセイ(Sigma Aldrichカタログ番号05497)によって分析した。CHOP含有量を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Cygnus Technologiesカタログ番号F015)によって分析した。表9は、コントロールと比較してのロード後洗浄バッファー中にのみEDTAが存在することについてのCHOP減少ファクター及びCHOP減少ファクターの改善についての結果を示し、図7において、結果を図表として示す。
【0174】
【表9】

【0175】
実施例5:ロードバッファー中のEDTAの存在下でのAEXマトリックスFractogel(登録商標)EMD TMAEにおけるモノクローナル抗体の改善された精製のための方法
アニオン交換マトリックスにおけるモノクローナル抗体の精製に対するEDTAの効果を、96ウェルフィルターマイクロプレートを用いるハイスループットバッチスクリーニングアプローチを使用して調べた。代表的な清澄化採取材料を2x平衡化バッファーで1:1に希釈し、最終EDTA濃度は5、10、及び20mMであり、又はコントロール実行については化合物を添加しなかった。精製条件を最適化しなかったので、種々のEDTA濃度をスクリーニングした。表10は、スクリーニングにおける各工程について使用したバッファーを列挙する。
【0176】
【表10】

【0177】
インキュベーション工程のために、フィルタープレートを指定のインキュベーション時間の間1100rpmでマイクロプレートスターラーにおいて撹拌し、真空マニホールド装置を使用することによってディープウェル保存プレート中へ液体を移した。実験の各セットを四重で行い、平均の結果を使用した。
【0178】
Fractogel(登録商標)EMD TMAE樹脂スラリーを96ウェルフィルタープレート(0.65μm
PVDF膜)へ移し、保存バッファーを真空によって樹脂から除去した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーと共にインキュベートした。調節したロード材料を合計で40分間樹脂と共にインキュベートし、フロースルーを収集した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーでさらに洗浄し、ロード後洗浄フラクションを収集した。全ての樹脂を、各々5分間、化合物が添加されていない平衡化バッファーで洗浄した。樹脂を5分間溶出バッファー150μLで溶出した。ロード材料、フロースルー、ロード後洗浄及び溶出フラクションをIgG含有量についてProtein A HPLCによって分析した。CHOP含有量を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Cygnus Technologiesカタログ番号F015)によって分析した。表11は、ハイスループットスクリーニングアプローチを使用してのFractogel(登録商標)EMD TMAEにおけるモノクローナル抗体の精製についてのコントロールと比較しての増加するEDTA濃度についてのCHOP減少ファクター及びCHOP減少ファクターの改善についての結果を示し、図8において、結果を図表として示す。
【0179】
【表11】

【0180】
実施例6:ロードバッファー中のDPAの存在下でのCEXマトリックスFractogel(登録商標)EMD SO3におけるモノクローナル抗体の改善された精製のための方法
カチオン交換マトリックスにおけるモノクローナル抗体の精製に対する2,2'−ジピコリルアミン(DPA)の効果を、96ウェルフィルターマイクロプレートを用いるハイスループットバッチスクリーニングアプローチを使用して調べた。代表的な清澄化採取材料を2x平衡化バッファーで1:1に希釈し、最終DPA濃度は5、10、及び20mMであり、又はコントロール実行については化合物を添加しなかった。精製条件を最適化しなかったので、種々のDPA濃度をスクリーニングした。表12は、スクリーニングにおける各工程について使用したバッファーを列挙する。
【0181】
【表12】

【0182】
インキュベーション工程のために、フィルタープレートを指定のインキュベーション時間の間1100 rpmでマイクロプレートスターラーにおいて撹拌し、真空マニホールド装置を使用することによってディープウェル保存プレート中へ液体を移した。実験の各セットを四重で行い、平均の結果を使用した。
【0183】
Fractogel(登録商標)EMD SO3樹脂スラリーを96ウェルフィルタープレート(0.65μm PVDF膜)へ移し、保存バッファーを真空によって樹脂から除去した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーと共にインキュベートした。調節したロード材料を合計で40分間樹脂と共にインキュベートし、フロースルーを収集した。樹脂を5分間それぞれの平衡化バッファーでさらに洗浄し、ロード後洗浄フラクションを収集した。全ての樹脂を、各々5分間、化合物が添加されていない平衡化バッファーで洗浄した。樹脂を5分間溶出バッファー150μLで溶出した。ロード材料、フロースルー、ロード後洗浄及び溶出フラクションをIgG含有量についてProtein A HPLCによって分析した。CHOP含有量を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Cygnus Technologiesカタログ番号F015)によって分析した。表13は、ハイスループットスクリーニングアプローチを使用してのFractogel(登録商標)EMD SO3におけるモノクローナル抗体の精製についてのコントロールと比較しての増加するDPA濃度についてのCHOP減少ファクター及びCHOP減少ファクターの改善についての結果を示し、図9において、結果を図表として示す。
【0184】
【表13】

【0185】
実施例7:添加剤としてEDTAを使用してのAEXマトリックスPOROS(登録商標)50 HQにおけるrVIIa−FPの改善された精製のための方法
【0186】
組換えアルブミン融合FVIIaを、Weimer et al. (Thromb. Hemost. (2008) Vol 99 (4) pp. 659−67)に記載されるようにCHO−S細胞中において発現させた。清澄化細胞培養液を種々のEDTA、pH及び導電率レベルへ調節し、POROS(登録商標)HQ 50(Applied Biosystems)が詰められたアニオン交換カラムへ適用した。このカラムは、清澄化細胞培養液、例えばEDTAスパイクと同一の条件へ調節した、20mM HEPES, 50mM NaCl, pH6.2で前もって平衡化していた。ロードに続いて、それぞれの平衡化バッファーでのロード後洗浄を行った。結合されていない物質を、20mM HEPES, 100mM NaCl, pH6.2でカラムから洗浄した。次いで、精製されたrVIIa−FPを、20mM HEPES, 150mM NaCl, 10mM CaCl2, pH6.2でカラムから溶出した。rFVIIa−FP活性を発色活性アッセイで測定し、CHOP含有量を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Cygnus Technologiesカタログ番号F015)によって分析した。表14は、種々のEDTA濃度についてのコントロールと比較してのPOROS(登録商標)プロセスについてのCHOP減少ファクター及びCHOP減少ファクターの改善についての結果を示し、図10において、結果を図表として示す。
【0187】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換クロマトグラフィーによる関心対象のポリペプチドの精製のための方法であって、化学化合物を少なくとも7mMの濃度で
a)イオン交換マトリックスの平衡化流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合するように、調節される、該平衡化流体
及び/又は
b)イオン交換マトリックスへ適用されかつ関心対象のポリペプチドを含むローディング流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部及び関心対象のポリペプチドの少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合するように、調節される、該ローディング流体
及び/又は
c)いったん関心対象のポリペプチドがイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合したイオン交換マトリックスを洗浄するために使用される洗浄流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し、かつ、関心対象のポリペプチドの少なくとも一部及び工程a)又はb)で添加された場合は既に結合した化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し続けるように、調節される、該洗浄流体
へ添加し、
それによって、イオン交換マトリックスを溶離する前のイオン交換マトリックスへ結合した1つ又はそれ以上の不純物の量と比べてイオン交換マトリックスへ結合した関心対象のポリペプチドの量を増加させ、それによって、化学化合物を7mM未満の濃度で添加する同一の方法と比較して溶出液中の1つ又はそれ以上の不純物に対する関心対象のポリペプチドの比率を増加させる、上記方法。
【請求項2】
イオン交換マトリックスがアニオン交換マトリックスであり、化学化合物が負電荷を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学化合物上の負電荷がクラスター化される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
化学化合物が、1つ又はそれ以上の金属イオンを錯化する能力を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
化学化合物が、
a)五酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
b)四酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
c)三酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
d)二酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
e)複数のアミン基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
f)複数のチオール基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
g)ホスホン酸(phosponic acid)及びその誘導体並びにそれらの種々の塩
を含むリストより選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
不純物が、宿主細胞タンパク質及び/又は宿主細胞核酸及び/又は産物関連汚染物質及び/又はウイルス及び/又はプリオン及び/又は内毒素及び/又は方法関連汚染物質を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
化学化合物が、EDTA及びそのそれぞれの塩又はEGTA及びそのそれぞれの塩である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
関心対象のポリペプチドが荷電され、電荷がクラスター化される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
関心対象のポリペプチドが1つ又はそれ以上の金属イオンを錯化することができる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
関心対象のポリペプチドがビタミンK依存性ポリペプチドである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
関心対象のポリペプチドがFIX又はFVIIである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
関心対象のポリペプチドがFIXであり、不純物がFIXαを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
不純物が宿主細胞タンパク質を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
宿主細胞タンパク質の減少が、他の点では同一の方法パラメータ下で化学化合物を使用しない場合とは対照的に、化学化合物を使用した場合、少なくとも2倍より高い、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
イオン交換マトリックスがカチオン交換マトリックスであり、化学化合物が正に荷電している、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
化学化合物上の正電荷がクラスター化される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
化学化合物が、例えばテトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジピコリルアミン(DPA)、ポリリジン、ポリアルギニン及びポリヒスチジンなどのアミノ基を有する化学構造及び/又はカチオン性アミノ酸ポリマーを含むリストより選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
不純物が、宿主細胞タンパク質及び/又は宿主細胞核酸及び/又は産物関連汚染物質及び/又はウイルス及び/又はプリオン及び/又は内毒素及び/又は方法関連汚染物質を含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
イオン交換クロマトグラフィーによる関心対象のポリペプチドの精製における不純物の減少のための化学化合物の使用であって、化学化合物を
a)イオン交換マトリックスの平衡化流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合するように、調節される、該平衡化流体
及び/又は
b)イオン交換マトリックスへ適用されかつ関心対象のポリペプチドを含むローディング流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部及び関心対象のポリペプチドの少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合するように、調節される、該ローディング流体
及び/又は
c)いったん関心対象のポリペプチドがイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合したイオン交換マトリックスを洗浄するために使用される洗浄流体が、その流体中の化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し、かつ、関心対象のポリペプチドの少なくとも一部及び工程a)又はb)で添加された場合は既に結合された化学化合物の少なくとも一部がイオン交換マトリックスの電荷と反対の電荷に起因してイオン交換マトリックスへ結合し続けるように、調節される、該洗浄流体
へ添加し、
それによって、イオン交換マトリックスを溶離する前のイオン交換マトリックスへ結合した1つ又はそれ以上の不純物の量と比べてイオン交換マトリックスへ結合した関心対象のポリペプチドの量を増加させ、それによって、化学化合物を添加せずに関心対象のポリペプチドの精製を行う場合と比較して溶出液中の1つ又はそれ以上の不純物に対する関心対象のポリペプチドの比率を増加させる、上記使用。
【請求項20】
イオン交換マトリックスがアニオン交換マトリックスであり、化学化合物が負電荷を有する、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
イオン交換マトリックスがカチオン交換マトリックスであり、化学化合物が正電荷を有する、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
化学化合物上の電荷がクラスター化される、請求項19〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
化学化合物が、金属カチオンに結合する能力を有する、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
不純物が、宿主細胞タンパク質及び/又は宿主細胞核酸及び/又は産物関連汚染物質及び/又はウイルス及び/又はプリオン及び/又は内毒素及び/又は方法関連汚染物質を含む、請求項19〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
化学化合物の濃度が少なくとも7mMである、請求項19〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
化学化合物が、
a)五酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
b)四酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
c)三酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
d)二酢酸基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
e)複数のアミン基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
f)複数のチオール基を含む化学化合物及びそれらの種々の塩
g)ホスホン酸及びその誘導体並びにそれらの種々の塩
を含むリストより選択される、請求項19〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
化学化合物が、EDTA及びそのそれぞれの塩又はEGTA及びそのそれぞれの塩である、請求項19〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
関心対象のポリペプチドが、金属イオンを錯化することができるポリペプチドである、請求項19〜27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
関心対象のポリペプチドがビタミンK依存性タンパク質である、請求項28に記載の使用。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−514310(P2013−514310A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543705(P2012−543705)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069713
【国際公開番号】WO2011/073235
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【Fターム(参考)】