説明

ポリマーの原液着色用のモノアゾ着色剤

高分子量物質の原液着色の方法であって、式(I)の化合物又はその互変異性体[式中、Mは、H、1/2 M、1/3 M又はNR、好ましくはH、1/2 M又はNR、特にHであり、Mは、酸化状態IIのアルカリ土類金属若しくは遷移金属、又は酸化状態IVのオキソ−金属であり、Mは、Al(III)、酸化状態IIIの遷移金属又は酸化状態Vのオキソ−金属であり、Rは、H又は非イオン性置換基であり、Rは、Hであるか、又はRとは独立に、更なる非イオン性置換基であり、Rは、H、C−Cアルキル、フェニル、CO−C−Cアルキル又はCO−フェニル、好ましくはH又はCO−C−Cアルキル、特にHであり、そしてR、R、R及びRは、それぞれ他と独立に、H、又はフェニル、ベンジル若しくはC−Cアルキル(これらは、非置換であるか、又はヒドロキシ若しくはハロゲンにより置換されていてもよく、そしてC−Cアルキルの場合には、中断されていないか、又はOにより中断されている)である]を、成形前又は成形中に高分子量物質に組み込む方法。得られる着色は、特にポリオレフィンでは良好な光安定性及び熱安定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
Colour Index Pigment Yellow 191:2は、優れた色彩を有するが、基本化学物質から多くの工程で調製しなければならない顔料である。したがって、簡単に調製でき、かつポリマーの原液着色に良好な適用関連特性を示す、同様に良好な色彩を有する顔料に対するニーズが存在する。
【背景技術】
【0002】
JP S34/000875は、式:
【0003】
【化1】


で示される化合物を包含する、核酸の代謝のアンタゴニスト及び癌に対する医薬として(又はその出発物質として)使用することができる化合物を開示している。
【0004】
DE-OS 1445982は、実施例8では式:
【0005】
【化2】


を有する、4−アミノ−5−アリールアゾピリミジン誘導体の製造方法を開示している。
【0006】
DE-OS 1769250は、一般式:
【0007】
【化3】


で示される水溶性アゾピリミジン染料、並びに実施例104ではウール及びポリアミド繊維を堅牢な純黄色の色調に染色する式:
【0008】
【化4】


で示される染料の製造方法を開示している。
【0009】
DE-OS 2351294は、好ましい一般式:
【0010】
【化5】


[式中、Xは、とりわけアミノであってよく、そしてY及びZは、OH又はNHであるが、X、Y及びZは、全てが同時にOHではない]で示されるアゾ顔料を開示している。R、R及びRの定義は、SOH基もその塩も包含しない。
【0011】
US 4,340,430は、トリアミノピリミジンアゾ顔料、及び実施例21/22では式:
【0012】
【化6】


で示されるそれらを開示している。
【0013】
PL 162231 B2は、ウール又はポリアミドの染色用のアゾ染料、及び実施例2では式:
【0014】
【化7】


で示されるそれを開示している。
【0015】
EP 0591105 A2は、不十分な全収率で2工程法で調製されるビスアゾ化合物、及び実施例41では式:
【0016】
【化8】


で示される化合物を開示している。
【0017】
DE-OS 4407802は、一般式:
【0018】
【化9】


で示されるアゾ化合物及び中間体を開示している。
【発明の概要】
【0019】
驚くべきことに、ポリマーの原液着色用の良好な着色剤が、今や非常に簡単に調製できることが見い出された。
【0020】
よって本発明は、高分子量物質の原液着色の方法であって、式(I):
【0021】
【化10】


[式中、
は、H、1/2 M、1/3 M又はNR、好ましくはH、1/2 M又はNR、特にHであり、
は、酸化状態IIのアルカリ土類金属若しくは遷移金属、又は酸化状態IVのオキソ−金属であり、
は、Al(III)、酸化状態IIIの遷移金属又は酸化状態Vのオキソ−金属であり、
は、H又は非イオン性置換基であり、
は、Hであるか、又はRとは独立に、更なる非イオン性置換基であり、
は、H、C−Cアルキル、フェニル、CO−C−Cアルキル又はCO−フェニル、好ましくはH又はCO−C−Cアルキル、特にHであり、そして
、R、R及びRは、それぞれ他と独立に、H、又はフェニル、ベンジル若しくはC−Cアルキル(これらは、非置換であるか、又はヒドロキシ若しくはハロゲンにより置換されていてもよく、そしてC−Cアルキルの場合には、中断されていないか、又はOにより中断されている)である]で示される化合物又はその互変異性体を、成形前又は成形中に高分子量物質に組み込む方法に関する。
【0022】
は、好ましくはCa、Co、Cu、Fe、Mg、Mn、Sr、TiO、Zn又はZrOである。Mは、好ましくはAl、Ce、Co、Cr、Fe又はVOである。分数の1/2及び1/3は、金属原子のM又はMが、それぞれ2個又は3個のスルホナート分子と塩を形成することを意味する。
【0023】
は、好ましくは、−0.3〜0.6、特に−0.3〜0.3のパラHammett定数σを有する非イオン性置換基である。Rは、好ましくはH、又はRとは独立に、−0.3〜0.6、特に−0.3〜0.3のパラHammett定数σを有する更なる非イオン性置換基であるが、Rは、特にHである。
【0024】
−0.3〜0.6のパラHammett定数σを有する非イオン性置換基は、例えば、OCH(σ=−0.27)、tert−C(σ=−0.20)、CH(σ=−0.17)、NHCOCH(σ=−0.01)、C(σ=−0.01)、F(σ=0.06)、I(σ=0.18)、Cl(σ=0.22)、Br(σ=0.23)、CO(σ=0.45)及びCF(σ=0.54)である。
【0025】
普通の置換基のHammett定数は、例えば、Roempp's encyclopaedia(www.roempp.com)に表形式で見い出すことができる。更なる置換基のHammett定数は、Chem. Rev. 17, 125-136 [1935]により決定することができる。しかし、COO又はSOのようなイオン性置換基、及びN(CH(σ=−0.83)、NH(σ=−0.66)、OH(σ=−0.37)、CN(σ=0.66)又はNO(σ=0.78)のような強く分極している置換基では、残念なことにあまり有利な性質とはならないことが多い。
【0026】
式(I)の化合物はまた、他の塩との(例えば、アルカリ金属塩との)混合物又は固溶体の形であってもよい。反応及び乾燥パラメーターに応じて、結晶水が存在してもよい。
【0027】
−Cアルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル又はn−ヘキシルである。ハロゲンは、塩素、臭素、フッ素又はヨウ素、好ましくはフッ素又は塩素、特にアルキル上のフッ素(例えば、トリフルオロメチル、α,α,α−トリフルオロエチル、又はヘプタフルオロプロピルのようなペルフルオロアルキル基)及びフェニル上の塩素である。
【0028】
は、C−Cアルキル、OC−Cアルキル、NHCOC−Cアルキル、フェニル又はCl、更にはC−Cアルキル、例えば、tert−ブチル又は特にメチルであることが、そしてR及びRは、水素であることが特に好ましい。スルホ基SOMは、好ましくはアゾ橋に対してオルト位にある。
【0029】
特に、特定の興味深い化合物の多くは新規である。よって本発明はまた、式(II):
【0030】
【化11】


[式中、
は、H、1/2 M、1/3 M又はNR、好ましくはH、1/2 M又はNR、特にHであり、
は、−0.3〜0.6、好ましくは−0.3〜0.3のパラHammett定数σを有する非イオン性置換基であり、
は、Hであるか、又はRとは独立に、−0.3〜0.6、好ましくは−0.3〜0.3のパラHammett定数σを有する、更なる非イオン性置換基であり、
10は、H、C−Cアルキル、フェニル、CO−C−Cアルキル又はCO−フェニル、好ましくはH又はCO−C−Cアルキル、特にHであり、そして
、R、R及びRは、それぞれ他と独立に、H、又はフェニル、ベンジル若しくはC−Cアルキル(これらは、非置換であるか、又はヒドロキシ若しくはハロゲンにより置換されていてもよく、そしてC−Cアルキルの場合には、中断されていないか、又はOにより中断されている)である]で示される化合物又はその互変異性体に関する。
【0031】
好ましいのは、式(III)、(IV):
【0032】
【化12】


及び特に式(V):
【0033】
【化13】


で示される化合物であり、そしてこれらはまた、互変異性体、例えば、スルホベタイン(MがHであるとき)として存在することができる。
【0034】
一般に、スルホベタインは有利には、特に高い着色力、及び良好な堅牢性を持つ、わずかに赤味を帯びた色〜橙色の色調を特徴とする。
【0035】
式(II)、(III)及び(IV)において、R、R及びR10には、式(I)におけるそれぞれR、R及びRと同じ他の優先傾向が当てはまる。
【0036】
特に好ましいのは、式(VI):
【0037】
【化14】


で示される化合物である。
【0038】
驚くべきことに式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)の化合物は、高分子量物質、特にプラスチック及びプラスチック繊維の原液着色に使用すると、高温安定性、耐光堅牢性の着色力の高い着色が得られる。
【0039】
本発明の着色剤は、それ自体既知の、又はそれらと類似の製法により調製し、純粋な形で単離して乾燥することができ、その後、プラスチック、表面コーティング及び印刷インキ中に、例えば、ボールミル又はビーズミルを用いて、容易に分散させられる。これらはまた、湿った圧縮ケーキの形で顔料分散液の製造に直接使用することができる。適用関連特性を改善するために、場合により、沈殿又は単離の前又はその最中に、本発明の着色剤に通常の添加剤を通常の濃度で加えることができる。
【0040】
よって本発明はまた、総着色高分子量物質に基づいて、0.01〜70重量%の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)の化合物を含む(高分子量物質中に分布した固体粒子の形で存在するか、又は溶解した形で高分子量物質に均質に浸透している)、原液着色された高分子量物質に関する。
【0041】
本発明はまた、高分子量物質の原液着色における式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)の化合物の使用に関する。
【0042】
高分子量物質は、好ましくは、高密度、中密度若しくは低密度ポリエチレン(HDPE、HDPE−HMW、HDPE−UHMW、LDPE、LLDPE、VLDPE、ULDPE)、ポリプロピレン又はポリイソブチレンのようなポリオレフィンであるが、驚くべき程の高温安定性が達成されれば、このことはまた、ポリアミドにおける適用も興味深い。
【0043】
本発明の着色剤は、ポリオレフィン類、更に特定してポリエチレンの原液着色に特に適しているが、これらはまた、他のポリマーの原液着色にも有利に使用することができる。
【0044】
本発明により着色される高分子量有機物質は、天然又は合成起源であってよく、通常は10〜10g/molの範囲の分子量を有する。これは例えば、天然樹脂又は乾性油、ゴム又はカゼイン、又は塩化ゴムのような修飾天然物質、油変性アルキド樹脂、ビスコース、又は酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、アセト酪酸セルロース若しくはニトロセルロースのようなセルロースエーテル若しくはエステルであってよいが、特に、重合、重縮合又は重付加により得られるような、完全合成有機ポリマー(熱硬化性プラスチック又は熱可塑性プラスチックのいずれか)、例えば、ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート若しくはポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリイソブチレンのようなポリオレフィン;塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル又はアクリル酸及び/若しくはメタクリル酸エステル、又はブタジエンの重合生成物のような置換ポリオレフィン;ポリスチレン又はポリメタクリル酸メチル;更には該モノマーの共重合生成物、特にアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、スチレン/アクリロニトリル(SAN)又はEVAである。
【0045】
重付加樹脂及び重縮合樹脂の範囲からは、ホルムアルデヒドとフェノールとの縮合生成物、いわゆるフェノプラスト、及びホルムアルデヒドと尿素、チオ尿素及びメラミンとの縮合生成物、いわゆるアミノプラスト、アルキド樹脂のような飽和、又はマレイン酸樹脂のような不飽和のいずれかの表面コーティング樹脂として使用されるポリエステル、また線状ポリエステル及びポリアミド又はシリコーンに言及することができる。
【0046】
更に、高分子量有機物質は、煮あまに油、ニトロセルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂又は他の硬化性若しくは重合性前駆体のような、表面コーティング又は印刷インキ用のバインダーであってもよい。
【0047】
該高分子量化合物は、プラスチック組成物、溶液又は溶融物の形(場合により、紡いで繊維を形成することができる)で、単独で又は混合物として使用することができる。これは、直ぐに使用できる組成物であっても、又はここから形成される物品であっても、あるいは例えば、顆粒の形のマスターバッチであってもよい。場合により、本発明により高分子量有機物質を着色するために、通常の添加剤を使用することもできるが、これは、未着色の有機物質中及び着色剤中の両方に含有されていてもよいか、あるいは組み込み中に添加することができる。
【0048】
このような添加剤の例は、酸化防止剤、UV安定剤又は光安定剤のような、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、可塑剤又はテクスチャー改善剤である。テクスチャー改善剤が望まれるとき、これらは場合により合成中又は後処理中という早い段階で、好ましくは本発明の着色剤に添加される。
【0049】
テクスチャー改善剤は、例えば、少なくとも12個の炭素原子を有する脂肪酸(特に、ステアリン酸又はベヘン酸、ステアリン酸又はベヘン酸アミド、ステアリン酸又はベヘン酸マグネシウム、亜鉛又はアルミニウムのようなステアリン酸又はベヘン酸の塩など)、また第4級アンモニウム化合物(特に、トリメチル−、トリエチル−、トリ−n−プロピル−、トリ−イソプロピル−、トリ−n−ブチル−、トリ−sec−ブチル−及びトリ−tert−ブチル−ベンジルアンモニウム塩のようなトリ(C−C)アルキルベンジルアンモニウム塩など)、及びまたエポキシ化ダイズ油のような可塑剤、ポリエチレンワックスのようなワックス、アビエチン酸のような樹脂酸、コロホニウムソープ、水素化又は二量体化コロホニウム、(C12−C18)パラフィンジスルホン酸、アルキルフェノール類及びステアリルアルコールのようなアルコール類、またラウリルアミン又はステアリルアミン、及び/又は1,2−ドデカンジオールのような脂肪族1,2−ジオール類である。
【0050】
好ましいテクスチャー改善剤は、ラウリルアミン及びステアリルアミン、脂肪族1,2−ジオール類、ステアリン酸とそのアミド、塩及びエステル類、エポキシ化ダイズ油、ワックス並びに樹脂酸である。
【0051】
このような添加剤は、本発明の組成物に基づいて、その調製の前、最中又は後に、例えば、有利には0.05〜25重量%、好ましくは0.5〜15重量%の量で加えることができる。
【0052】
本発明の着色剤による高分子量有機物質の着色は、例えば、場合によりマスターバッチの形のような着色剤を、ロールミル又は混合若しくは粉砕装置を用いてこの基体と混合することにより実施される。次に着色物質は、カレンダー掛け、圧縮成形、押し出し、コーティング、噴霧、注型、印刷又は射出成形によるような、一般にそれ自体既知の方法により、望まれる最終形状にされる。非剛体成形品を製造するため、又はそれらの脆性を減少させるため、成形の前に、いわゆる可塑剤を高分子量化合物中に組み込むことがしばしば望ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸、フタル酸又はセバシン酸のエステル類を使用することができる。本発明のプロセスにおいて、可塑剤は、顔料色素の組み込みの前又は後にポリマーに組み込むことができる。また、様々な色調を実現するために、高分子量有機物質に、顔料組成物の他に、充填剤、又は白色、カラー若しくは黒色顔料、更にはさし色顔料のような他の色を与える構成成分を、それぞれ所望の量で加えることもできる。
【0053】
着色剤の混合はまた、実際の加工工程の直前に達成することができるが、これは例えば、本発明の粉体着色剤を、そして同時に、顆粒化した高分子量有機物質、及び場合により追加成分(例えば、添加剤など)を直接押し出し機の取り込みゾーンに連続的に供給し、そこで加工の直前に混合する。しかし一般には、均一な成果が達成できるため、予め高分子量有機物質に着色剤を混合するのが好ましい。
【0054】
表面コーティング及び印刷インキの着色には、高分子量有機物質及び本発明の着色剤は、場合により、安定化剤、分散剤、光沢改善剤、充填剤、他の顔料、乾燥剤又は可塑剤のような添加剤と一緒に、一般には有機及び/又は水性溶媒又は溶媒混合物中に、微細に分散させるか又は溶解する。個々の成分を別々に分散若しくは溶解させるか、又は複数の成分を一緒に分散若しくは溶解させ、そしてその時に全ての成分を合わせるという手順を利用することができる。
【0055】
表面コーティングは、例えば、浸漬、へら付け、フィルム延伸、刷毛塗り又は噴霧により塗布され、本発明のコーティングは、有利には熱での又は照射による乾燥及び硬化後に形成される。コーティングが生じる更に別の塗布法は、粉体塗装及びコイル塗装法であるが、その全ての詳細は、それ自体当業者には既知である。
【0056】
着色される高分子量物質が、表面コーティングであるとき、これは普通のコーティングであっても特殊コーティング、例えば、自動車仕上げであってもよい。
【0057】
一般に知られている組成の印刷インキは、通常法により、例えば、凸版印刷(フレキソ印刷)、平版印刷(オフセット印刷、石版印刷)、凹版印刷(輪転グラビア、鋼版彫刻)、スクリーン印刷又はインクジェット印刷(圧電又は蒸気泡法)により、例えば、紙、ボール紙、金属、木、革、プラスチック又は織物に、出版、図解、包装、紙幣、物流文書又は装飾のために適用される。ボールペン及びフェルトペン、更にはスタンプ台、インクリボン及びインクカートリッジには、更に別のインキ組成物を利用することができる。
【0058】
当業者ならば、当業者に公知の任意のプラスチック、表面コーティング又は印刷インキ組成物、例えば、公開特許出願の主題であるもの、又は市販されているものを、それらの組成物について正確な知識を持たないときでさえ、日常的に試してみることが望ましい。
【0059】
プラスチック、表面コーティング及び印刷インキの形態の高分子量有機物質の原液着色に加えて、本発明の着色剤はまた、例えば、固体トナー、転写リボン又はカラーフィルターの製造にも適している。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定するものではない(特に断りない限り、「%」は常に重量%を意味する):
【0061】
実施例1:
4−メチルアニリン−2−スルホン酸(99%)7.56gを水160ml中で撹拌して、30%水酸化ナトリウム溶液4mlで溶解した。次に37%塩酸(工業等級)14mlを加えた。この混合物を0〜5℃に冷却して、4N亜硝酸ナトリウム水溶液10mlを滴下により加えた。2時間後、1Nスルファミン酸水溶液4mlをこのジアゾニウム懸濁液に加えた。
【0062】
2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン5.55gを、30%水酸化ナトリウム溶液を含有する水120mlに溶解し、次に冷ジアゾニウム塩懸濁液に30分以内に滴下により加えた。30%水酸化ナトリウム溶液でpHをpH5.5に調整した。この反応混合物を23℃で更に18時間撹拌した。次にこの懸濁液をそれぞれ約300mlの2つの試料に分けた。
【0063】
1) 一方の懸濁液を60℃に加熱して、更に1時間撹拌した。次にこの黄色の懸濁液を硬質フィルターにより濾過し、水250mlで洗浄して、90℃/5・10Paで乾燥して、下記式:
【0064】
【化15】


で示される生成物6.2gを得たが、これをPVC(カレンダー掛け)及びHDPE(射出成形)の原液着色に使用すると、熱安定性の黄色の着色が得られた。
元素分析: C H N S Na
[%] 40.0 3.9 26.1 9.5 < 1ppm
計算値: 40.7 3.7 25.9 9.9 -
【0065】
2) 2番目の懸濁液は、水10ml中のモノラウリン酸ソルビタン1gで処理した。この混合物を60℃に加熱して、更に1時間撹拌した。次にこの黄色の懸濁液を硬質フィルターにより濾過して、残渣を水250mlで洗浄し、真空キャビネット中で90℃/5・10Paで乾燥して、生成物7.4gを得たが、これをPVC(カレンダー掛け)及びHDPE(射出成形)の原液着色に使用すると、熱安定性の黄色の着色が得られた。
元素分析: C H N S Na
[%] 43.3 4.5 23.3 8.4 < 1ppm
【0066】
実施例2:
4−メチルアニリン−2−スルホン酸(99%)22.7gを水450ml中で撹拌した。次に37%塩酸(工業等級)30mlを加えた。この混合物を0〜5℃に冷却して、4N亜硝酸ナトリウム水溶液40mlを滴下により加えた。1.5時間後、1Nスルファミン酸水溶液6mlをこのジアゾニウム塩懸濁液に加えた。
【0067】
2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン16.6gを、30%水酸化ナトリウム溶液を含有する水360mlに溶解し、次に酢酸で沈殿させて、0〜5℃に冷却した。次いで30%水酸化ナトリウム溶液によりでpHを5.5に維持しながら、冷ジアゾニウム塩懸濁液をここに30分以内に滴下により加えた。この橙色の懸濁液を23℃で更に18時間撹拌し、次に85℃に加熱して、2時間撹拌し、最後に硬質フィルターにより濾過し、水1200mlで洗浄して、90℃/5・10Paで乾燥して、生成物37.7g(理論値の96.3%)を得たが、これをPVC(カレンダー掛け)及びHDPE(射出成形)の原液着色に使用すると、熱安定性の黄色の着色が得られた。
元素分析: C H N S Na
[%] 40.4 3.9 26.2 9.6 < 1ppm
計算値: 40.7 3.7 25.9 9.9 -
また、pH値を変化させることにより、ある場合にはMとしてアルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K)を含有する、顔料混合物又は固溶体を得ることもできる。
【0068】
実施例3〜5:
手順は実施例2と同様に行ったが、カップリングが終了したら、スルホン酸を酢酸カルシウム、ストロンチウム又はアンモニウムで中和することにより、以下の構造を有する化合物を得て、これをPVC(カレンダー掛け)及びHDPE(射出成形)の原液着色に使用すると、熱安定性の黄色の着色が得られた:
【0069】
【化16】

【0070】
実施例6:
0.2重量%の実施例1又は2の生成物を押し出し機でポリアミド6(Ultramid(登録商標)B3K、BASF)に組み込み、次に240℃で射出成形により試験板(例えば、30×50×2mm)を製造した。良好な光安定性を有する均質な着色が得られた。
【0071】
実施例7〜10:
手順は実施例2〜5と同様に行ったが、4−メチルアニリン−2−スルホン酸の代わりに、等量の2−メチルアニリン−4−スルホン酸を使用した。結果は、実施例2〜5のものと非常に類似していた。
【0072】
実施例11〜14:
手順は実施例2〜5と同様に行ったが、4−メチルアニリン−2−スルホン酸の代わりに、等量のアニリン−4−スルホン酸を使用した。結果は、実施例2〜5のものと非常に類似していたが、わずかに緑色味を帯びた色調であった。
【0073】
実施例15〜16:
手順は実施例2〜3と同様に行ったが、4−メチルアニリン−2−スルホン酸の代わりに、等量のアニリン−3−スルホン酸を使用し、更にはテクスチャーを改善するために、20重量%(理論的に得られる顔料の量に基づく)のコロホニウム樹脂を加えた。
【0074】
実施例17〜20:
手順は実施例2〜5と同様に行ったが、4−メチルアニリン−2−スルホン酸の代わりに、等量の2−アミノ−5−クロロ−4−エチルベンゼンスルホン酸を使用した:
【0075】
【化17】


結果は、実施例2〜5のものと非常に類似していた。
【0076】
実施例21〜24:
手順は実施例2〜5と同様に行ったが、4−メチルアニリン−2−スルホン酸の代わりに、等量の2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸を使用した:
【0077】
【化18】


結果は、実施例2〜5のものと非常に類似していたが、もっと赤味を帯びた色〜橙色であった。
【0078】
実施例25〜28:
手順は実施例2〜5と同様に行ったが、4−メチルアニリン−2−スルホン酸の代わりに、等量の5−アセトアミノ−2−アミノベンゼンスルホン酸を使用した:
【0079】
【化19】


結果は、実施例2〜5のものと類似していたが、もっと赤味を帯びた色〜橙色であった。
【0080】
実施例29〜32:
手順は実施例2〜5と同様に行ったが、4−メチルアニリン−2−スルホン酸の代わりに、等量の4−アセトアミノ−2−アミノ−5−(2’−スルホフェニルアゾ)−ベンゼンスルホン酸を使用した:
【0081】
【化20】


結果は、実施例2〜5のものと類似していたが、もっと赤味を帯びた色〜橙色であった。
【0082】
実施例33〜36:
手順は実施例2〜5と同様に行ったが、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジンの代わりに、等量の4−アミノ−2−ジメチルアミノ−6−ヒドロキシピリミジンを使用した:
【0083】
【化21】


結果は、実施例2〜5のものと類似していたが、もっと赤味を帯びた色〜橙色であった。
【0084】
実施例37〜66:
実施例7〜36により得られた顔料を、カレンダー掛けでPVCの原液着色に使用すると、良好な光安定性を有する均質な着色が得られた。
【0085】
実施例67〜96:
実施例7〜36により得られた顔料を、射出成形プロセスでHDPEの原液着色に使用すると、良好な光安定性を有する均質な着色が得られた。
【0086】
実施例97〜122:
実施例7〜32により得られた0.2重量%の顔料を、実施例6によりポリアミド6中に組み込み、次に240℃で射出成形により試験板(例えば、30×50×2mm)を製造した。良好な光安定性を有する均質な着色が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子量物質の原液着色の方法であって、式(I):
【化22】


[式中、
は、H、1/2 M、1/3 M又はNR、好ましくはH、1/2 M又はNR、特にHであり、
は、酸化状態IIのアルカリ土類金属若しくは遷移金属、又は酸化状態IVのオキソ−金属であり、
は、Al(III)、酸化状態IIIの遷移金属又は酸化状態Vのオキソ−金属であり、
は、H又は非イオン性置換基であり、
は、Hであるか、又はRとは独立に、更なる非イオン性置換基であり、
は、H、C−Cアルキル、フェニル、CO−C−Cアルキル又はCO−フェニル、好ましくはH又はCO−C−Cアルキル、特にHであり、そして
、R、R及びRは、それぞれ他と独立に、H、又はフェニル、ベンジル若しくはC−Cアルキル(これらは、非置換であるか、又はヒドロキシ若しくはハロゲンにより置換されていてもよく、そしてC−Cアルキルの場合には、中断されていないか、又はOにより中断されている)である]で示される化合物又はその互変異性体を、成形前又は成形中に高分子量物質に組み込む方法。
【請求項2】
が、Ca、Co、Cu、Fe、Mg、Mn、Sr、TiO、Zn又はZrOであるか、あるいはMが、Al、Ce、Co、Cr、Fe又はVOである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
が、−0.3〜0.6のパラHammett定数σを有する非イオン性置換基であり、そしてRが、H、又はRとは独立に、−0.3〜0.6のパラHammett定数σを有する更なる非イオン性置換基である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
式(I)においてSOMが、アゾ橋に対してオルト位にある、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項5】
式(II):
【化23】


[式中、
は、H、1/2 M、1/3 M又はNR、好ましくはH、1/2 M又はNR、特にHであり、
は、−0.3〜0.6、好ましくは−0.3〜0.3のパラHammett定数σを有する非イオン性置換基であり、
は、Hであるか、又はRとは独立に、−0.3〜0.6、好ましくは−0.3〜0.3のパラHammett定数σを有する、更なる非イオン性置換基であり、
10は、H、C−Cアルキル、フェニル、CO−C−Cアルキル又はCO−フェニル、好ましくはH又はCO−C−Cアルキル、特にHであり、そして
、R、R及びRは、それぞれ他と独立に、H、又はフェニル、ベンジル若しくはC−Cアルキル(これらは、非置換であるか、又はヒドロキシ若しくはハロゲンにより置換されていてもよく、そしてC−Cアルキルの場合には、中断されていないか、又はOにより中断されている)である]で示される化合物又はその互変異性体。
【請求項6】
式(III)、(IV)、若しくは(V):
【化24】


で示される、請求項5記載の化合物、又はその互変異性体。
【請求項7】
式(VI):
【化25】


で示される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
請求項5記載の化合物及び下記式:
【化26】


[式中、
は、Na、Li又はKであり、そしてR、R及びRは、請求項1と同義である]で示される化合物を含む、混合物又は固溶体。
【請求項9】
総着色高分子量物質に基づいて、0.01〜70重量%の請求項1〜7のいずれか1項記載の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)若しくは(VI)の化合物、又は請求項8記載の混合物若しくは固溶体を含む(高分子量物質中に分布した固体粒子の形で存在するか、又は溶解した形で高分子量物質に均質に浸透している)、原液着色された高分子量物質。
【請求項10】
高分子量物質が、ポリオレフィンである、請求項9記載の原液着色された高分子量物質。
【請求項11】
高分子量物質の原液着色における、請求項1〜7のいずれか1項記載の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)若しくは(VI)の化合物、又は請求項8記載の混合物若しくは固溶体の使用。

【公表番号】特表2010−507697(P2010−507697A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533785(P2009−533785)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060925
【国際公開番号】WO2008/049744
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】