説明

ポリマーコーティングされたオーブン基材(ovenboard)及びそれから作製された食品パッケージ

本発明は、ポリマーコーティングされたオーブン基材と、それから形成された閉じた酸素不透過性食品パッケージとに関する。本発明によれば、基材(1)上のコーティングは、ポリアミド(PA)の酸素バリア層(7)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)の表面層(8)とを含有するが、表面層は両層間の結合剤層なしに酸素バリア層に接着される。ポリマー層(7、8)は、ポリアミド層(7)が、押出成形時に基材に直接接着するように、共押出成形により形成されている。本発明に係る閉じたパッケージにおいて、重ねたポリアミド及びPETの層(7、8)は基材層内部に位置しており、パッケージの外表面上には、PET層(9)があってもよい。パッケージは、PET層をヒートシールすることによりシールされる。ポリアミドは、ヒートシールと、オーブン内でのパッケージの加熱とに耐えるように選択されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーコーティングされたオーブン基材、及び本発明の基材を使用したオーブン加熱可能な閉じた酸素不透過性食品パッケージに関する。
【0002】
加工食品パッケージ等の閉じた食品パッケージは、内容物の十分な保存能力、すなわち、内容物の輸送及び貯蔵の間並びに小売店における十分な保存有効期間を達成するために、蒸気及びガスに不透過性であることが要求される。さらに、パッケージの特性には、パッケージを開けなくても、内容物をレンジ又は電子レンジ内で加熱できることが挙げられ得る。これらの必要性を満たすために、パッケージに用いられる基材は、基材及び完成パッケージにおいて異なる層が異なる機能を果たすように、1つ又は複数のポリマー層によって、少なくとも片面から、好ましくは両面からコーティングされる。
【0003】
蒸気及び酸素を透過しない包装基材は、一般に、2つ以上の層によるポリマーコーティングを含み、通常パッケージの内表面になる最上層は、シーミングによりパッケージを閉じることを可能にするヒートシール層であり、最上層より下の層は、酸素不透過性のバリア層を形成する。また、パッケージが、ヒートシール層を互いにシーミングすることにより閉じることができるように、パッケージの外表面は一般にヒートシール層を有する。
【0004】
他方では、パッケージに用いられる加熱可能なオーブン基材には、オーブン基材のポリマーコーティングがオーブン内での内容物の加熱に耐えることが要求される。このため、ポリエチレンテレフタレート(PET)がオーブン基材のコーティングポリマーとして好まれており、PETの融点は約250℃、すなわち、レンジオーブンの一般的な加熱温度の約200〜240℃を超えている。しかしながら、PETは酸素バリア性に乏しいため、店内で長い貯蔵期間を有することが要求される加工食品パッケージ用のポリマーコーティングとしては十分でない。
【背景技術】
【0005】
米国特許第6534139B1号明細書には、酸素バリアとして機能するエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)の内層と、ポリエチレンテレフタレート(PET)の表層とを含むパッケージング基材が開示されている。しかし、EVOHは、約180〜190℃、すなわち、オーブンの通常の加熱温度未満で融解するため、オーブン基材としての適用可能性は低い。前記公報では、EVOH/PETによりコーティングされた基材をオーブン基材としても示していないが、酸素バリアに加えて、パッケージング材料の機械的特性及び再生利用可能性により、コーティングポリマーの選択が正当化されている。
【0006】
PETと併用されるEVOHの問題は、PETにより必要とされる高いヒートシール温度において、EVOHは溶融状態であるので、加熱により基材層から泡として放出される水蒸気が、EVOHを透過し、EVOHが形成する酸素バリアを破壊し得ることである。融解前に、PETは、約180℃で軟化し始め、この軟化した状態で、PET層は、ヒートシールにより互いに接着され得る。これらのシール温度は、EVOHの融点、又はこれを超える温度である。
【0007】
欧州特許出願公開第EP1640157A1号明細書には、耐熱パッケージング基材が開示されており、そのポリマーコーティングは、PETではなく環状アセタール構造を含むポリエステルを含有している。コーティングされた基材の表面層にこの材料を使用することは、PETのヒートシール性が低いことにより正当化されている。その基材には、アセタール系ポリエステルのヒートシール層に加えて、1つの可能な材料として言及されているポリアミドの、例えば酸素バリア層が設けられている多層コーティングが含まれ得る。しかし、前記公報における実施例4によれば、ポリアミドを用いるときに、上記のポリアミドとポリエステルの表面層とを一緒に結合する接着層が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、従来より簡単で、食品パッケージに適用可能であり、内容物の保存に必要とされる酸素不透過性を有し、いかなる損傷を受けることなくオーブン又は電子レンジ内でのパッケージの加熱に耐えるオーブン基材を製造することである。本発明による解決策は、ポリアミド(PA)の酸素バリア層と、この層に接着されたポリエチレンテレフタレート(PET)の表面層とを含有する、ポリマーコーティングされたオーブン基材であり、両層は、PAの酸素バリア層の重量が3〜15g/mであり、PETの表面層の重量が20〜50g/mとなるように、両層間に接着層を設けずに共押出成形により基材上に形成されている。
【0009】
本発明の最も簡単な実施形態は、基材に直接接着されたポリアミド層と、このポリアミド層に接着されたPET層とからなる、基材上の2層コーティングであり、PET層は、オーブン基材のための表面層を形成し、最も好ましくは、閉じたパッケージにおける内表面である。PA及びPETの層を、共押出成形により基材上に塗布することができ、PET層を、パッケージにおける外表面を形成する、基材の反対側に押出成形することができる。この場合において、パッケージは、基材の反対側のPET層を互いにシールすることにより閉じることができる。
【0010】
本発明は、ポリアミド層とPET層との間に設ける別個の接着層を必要としないように、押出成形されたポリアミド層及びPET層を互いに接着することと、酸素バリアとして機能するポリアミドの耐性がEVOHより良好であることと、ヒートシール時に基材から放出される水蒸気に対する耐性がより良好であることとに基づく。
【0011】
本発明に係るオーブン基材及び食品パッケージに特に有利な酸素バリアポリマーは、商品GrivoryHB5299等の高バリアポリアミド(HBPA)である。酸素バリアとして、HBPAは、PETより確かに良好なポリマーであり、損傷していないEVOH層により達成され得る低酸素透過値に近い。
【0012】
本発明によるオーブン加熱可能な食品パッケージは、重ねたポリアミド層及びPET層が閉じたパッケージにおける基材層の内側に位置するように、本発明の上述のオーブン基材を含むことを特徴とする。
【0013】
次に、本発明を、添付の特許図面中に含まれる実施例により、より詳細に説明する。実施例は、2つの従来技術の基材層構造と、本発明によるオーブン基材の2つの実施形態とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術のパッケージング基材を示す図である。
【図2】加熱可能パッケージ向けの第2の従来技術のパッケージング基材を示す図である。
【図3】本発明によるオーブン基材の層構造を示す図である。
【図4】本発明による第2のオーブン基材の層構造を示す図である。
【図5】本発明による閉じたパッケージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、その構造が米国特許第6534139B1号公報の図1に開示されたものに相当する、層構造のパッケージング基材を示す。この図で、重ねたEVOH層(2)及びPET層(3)は、基材1の上に共押出成形されている。基材の反対側にPET層があってもよく、その構造は、米国特許第6534139B1号公報の図2に示されている。これらの構造中でPETがオーブン内での加熱に対して耐性がある場合、PETのヒートシールは、高温を必要とするのでEVOH酸素バリア層(2)が融解し、EVOHが加熱により基材から放出される水蒸気を吸収し、その完全性を失うことがある。EVOHは、オーブン内での加熱の間さらに融解し、したがって、これにより構造の完全性が弱められる。これらの理由のために、図1における構造は、加熱可能なオーブン基材に適していない。
【0016】
図2に係る包装基材の層構造は、欧州特許出願公開第1640157A1号公報の実施例4から明白である。この図で、ポリアミド層4、結合剤層5及びポリエステル層6が、基材1の上に押出成形されている。ポリエステル6は、環状アセタール基を含有するジオール単位とジカルボン酸単位とからなり、ポリエステル6を使用することは、ポリエステル6がPETより容易にヒートシール可能であることにより正当化されている。しかし、前記公報によれば、ヒートシール層6は、上記のアセタール系ポリエステルにブレンドされたPETであり得る。
【0017】
図3に、ポリアミド及びPETの層7、8が基材1に共押出成形された、本発明の最も簡単なオーブン基材を図示する。ポリアミド層7は、基材1に直接接着され、ポリアミド及びPETの層7、8は、両層間の結合剤なしに互いに接着されている。ポリアミド層7は、最も好ましくは高バリアポリアミド(HBPA)であり、PET層8は、添加剤及び他の成分をドーピングすることなく市販のポリエチレンテレフタレート自体であり得る。基材1は、重量170〜600g/m、好ましくは200〜400g/mの、杯状体又は成形体(cups or forms)向けの包装基材であることができる。ポリアミド層7の重量は、3〜15g/m、好ましくは5〜10g/mの間であることができ、PET層8の重量は、20〜50g/m、好ましくは30〜40g/mであることができる。
【0018】
図4に係るオーブン基材は、層8に類似し得る、すなわち重量20〜50g/m、好ましくは30〜40g/mである押出成形されたPET層9が、基材の反対側にも設けられている点のみにおいて、図3において示されるものと異なる。
【0019】
図5に、上述の図4によるオーブン基材から形成される、本発明のオーブン加熱可能な食品パッケージを示す。そのパッケージは、ヒートシールによりシールされた加工食品成形体であり、成形体の口部でエッジカラー12にシーミングされた成形体11及びカバー13が同じオーブン基材で作製されている。カバーは、他の何らかの酸素不透過性、熱耐性の材料でもあり得る。オーブン基材の重ねたポリアミド及びPETの層7、8は、閉じたパッケージにおける基材の内表面上に位置し、第2のPET層9がパッケージの外表面上に設けられている。ヒートシールは、エッジカラー12の領域で互いに接着された向かい合うPET層8からなる。パッケージ全体が、折り曲げ及びヒートシールにより本発明のオーブン基材から形成されることも可能である。好ましいヒートシール温度は、180〜220℃であり、この範囲内において、PET層は、柔らかくなり、接着性を有するように変化するが、ポリアミド、特にHBPAは、まだ融解しない。
【実施例】
【0020】
3種の試験材料を押出コーティングすることにより包装基材を製造した。これらの材料の酸素及び水蒸気の透過性を、異なる温度及び相対湿度で測定した。従来技術を代表する材料1は、重量350g/mのTrayforma型厚紙と、重量40g/mの押出成形されたPET層とであった。本発明を代表する材料2は、重量210g/mの杯状体基材Cupforma 210と、重量8g/mのHBポリアミドGrivory BH 5299の内層と、重量32g/mのPETの外層とであった。参照材料の材料3は、6g/mの最も内側のEVOH層と、その上の7g/mの前記HBポリアミド層と、30g/mの最も外側のPET層とを有する、杯状体基材Cupforma 210であった。酸素透過性についての結果を添付の表1に示し、水蒸気の浸透についての結果を添付の表2に示す。透過値は、表中では、平方メートル及び24時間あたりの立方センチメートルとして示されている(cm/m−24時間)。
表1:酸素透過性
【表1】


表2:水蒸気透過性
【表2】

【0021】
試験により、HBPA層及びPET層は、両層間に結合剤層を何ら必要とすることなく、共押出成形2層構造として基材上に形成することができることがわかった。さらに、結果によれば、本発明の構造、基材/HBPA/PET(材料2)は、特に室温又はそれより低温で貯蔵されるときに、基材上のPET層(材料1)のみより本質的に良好な酸素バリア形成する。EVOH層をその構造に加える(材料3)ことにより、さらに酸素バリアが改善されるが、EVOH層は湿気を吸収することがあり、この材料をパッケージにヒートシールすると酸素バリアが弱まる。
【0022】
水蒸気透過性についての測定結果により、本発明の構造、基材/HBPA/PETと、公知の構造、基材/PETとは、水蒸気バリアに関して、室温及びそれより低温では実質的に等しいことがわかる。EVOHにより、水蒸気バリアが改善されるが、言及したように、この利点は、この材料をヒートシールすると失われることがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングが、ポリアミド(PA)の酸素バリア層(7)と、該酸素バリア層に接着されたポリエチレンテレフタレート(PET)の表面層(8)とを含み、これらの層が、両層間の結合剤層なしに共押出成形することにより基材(1)上に形成されており、該PA酸素バリア層の重量が3〜15g/mであり、該PET表面層の重量が20〜50g/mであることを特徴とする、ポリマーコーティングされたオーブン基材。
【請求項2】
前記コーティングが、基材(1)に直接接着されたポリアミド(PA)の酸素バリア層(7)と、該酸素バリア層に接着されたポリエチレンテレフタレート(PET)の表面層(8)とからなることを特徴とする、請求項1に記載のオーブン基材。
【請求項3】
前記基材(1)の反対側にもPET表面層(9)が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のオーブン基材。
【請求項4】
前記酸素バリア層(7)が、高バリアポリアミド(HBPA)から作製されることを特徴とする、請求項1から3までの一項に記載のオーブン基材。
【請求項5】
前記ポリアミド層(7)の重量が5〜10g/mであることを特徴とする、請求項1から4までの一項に記載のオーブン基材。
【請求項6】
前記ポリアミド層(7)に向かい合う前記PET層(8)の重量が30〜40g/mであることを特徴とする、請求項1から5までの一項に記載のオーブン基材。
【請求項7】
重ねたポリアミド及びPETの層(7、8)が、パッケージにおいて基材層(1)の内側に位置するように、請求項1から6までのいずれか一項に記載のオーブン基材を含むことを特徴とする、オーブン内で加熱可能な酸素不透過性食品パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−506221(P2011−506221A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538821(P2010−538821)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050771
【国際公開番号】WO2009/080891
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(508096585)
【Fターム(参考)】