説明

ポリマーフォーム用の発泡剤

1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;及び2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;から選択される1種類以上のクロロフルオロオレフィンを含むフォーム発泡剤、及びこれから製造されるフォームを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年4月25日出願の米国仮出願61/047,918(その全部を参照として本明細書中に包含する)の優先権の利益を主張する。
本発明は、ポリマーフォーム用のハロゲン化オレフィン発泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフォームの製造は、通常は、化学的及び/又は物理的発泡剤を使用することを伴う。これらの発泡剤は、部分的に、ポリマーマトリクス内に気体状ポケットを形成することによってフォームを膨張させるように働く。かかる発泡剤としては、例えばアゾ化合物、種々の揮発性有機化合物、及びクロロフルオロカーボン(CFC)が挙げられていた。
【0003】
化学的発泡剤(例えば水)は、一般に、発泡プロセス中に、窒素、二酸化炭素、又は一酸化炭素のような気体の放出を伴う化学反応にかけられる。他方、物理的発泡剤は、発泡性ポリマー又はポリマーを発泡させることができる重合性成分中に溶解し、次に発泡構造体の形成を引き起こすように(所定の温度/圧力において)体積を膨張させる。
【0004】
発泡熱可塑性ポリマーを製造するためには物理的発泡剤がしばしば用いられるが、熱可塑性フォームに関して物理的発泡剤の代わりか又はこれに加えて化学的発泡剤を用いることができる。例えば、ポリ塩化ビニルベースのフォームの形成に関連して化学的発泡剤を用いることが公知である。また、発泡熱硬化性ポリマーを製造するためには、化学的発泡及び/又は物理的発泡剤を使用することが通常的である。特定の化合物は、化学的及び物理的発泡剤の両方として働かせることができる。
【0005】
CClF(CFC−11)のようなクロロフルオロカーボン(CFC)は、硬質及び軟質のポリウレタン及びポリイソシアヌレートフォームのようなイソシアネートベースのフォームの製造において標準的な発泡剤として用いられている。しかしながら、近年においてはCFCが地球の大気及び気象に損傷を与える可能性があるという懸念が増大しており、このためにクロロフルオロカーボン(CFC)のような特定の塩素含有炭化水素組成物を用いることは、地球オゾン層を減少させるそれらの疑わしい可能性のために嫌われるようになっている。特に、CFC−11の使用は、それを大気中に放出することによってオゾン層への損傷を引き起こしたことが確認されたことに基づいて国際条約によって禁止された。
【0006】
CFCに関係する問題によって、水素を含むクロロフルオロアルカン(HCFC)がより頻繁に用いられるようになっている。例えば、CHClCF(HCFC−123)及びCHClCHClF(HCFC−141b)は、大気中において比較的短い寿命を有することが確認された。しかしながら、HCFCはCFCと比べて比較的環境に優しい発泡剤と考えられているが、多くのHCFCはなお望ましくない「オゾン層破壊係数(ODP)」を有する。ゼロでないODPのために、HCFCは近年においては最終的に使用から排除することが目標になっている。
【0007】
塩素とODPとの間の疑わしい関連性のために、1種の非塩素化発泡剤として水素化フルオロカーボン(HFC)が産業界において開発された。例えば、CFCHCFH(HFC−245fa)は、断熱用途、特に冷蔵庫、冷凍庫、冷凍冷蔵庫、及びスプレーフォームの用途において広く用いられている。しかしながら、特定のHFCは比較的高い固有の熱伝導率(則ち乏しい断熱性)を有しており、したがって断熱フォームを製造するための発泡剤としては用いられない。HFC−245faのような特定の他のHFC発泡剤は改良された断熱性を与えるが、これらの化合物は比較的高い地球温暖化係数(GWP)を有するものとして特徴づけられている。したがって、他の所望の特性を全て保持しながら低GWPのヒドロフルオロカーボン又は他のフッ素化流体を用いることが非常に望ましい。特に硬質フォーム断熱材に関してHFCを使用することに関連するかかる欠点のために、HFCは、商業的なフォーム産業における発泡剤のためのより望ましくない候補物質になっている。
【0008】
他の公知のクラスの発泡剤は炭化水素発泡剤である。例えば、Hutzenの米国特許5,182,309においては、種々のエマルジョン混合物中においてイソ及びn−ペンタンを用いることが教示されている。炭化水素発泡剤の他の例は、Volkertの米国特許5,096,933によって教示されているようなシクロペンタンである。シクロペンタン及びペンタンの異性体のような多くの炭化水素発泡剤は、オゾン層破壊がゼロの薬剤であり、非常に低いGWPを示すが、これらは、例えばHFC−245fa発泡剤を用いて製造されるフォームと比べて適当な断熱効率に欠ける傾向がある。更に、炭化水素発泡剤は非常に可燃性であり、しばしば、ポリイソシアヌレート変性ポリウレタンフォームを製造するのに通常用いられる多くのポリエステルポリオールのような発泡性材料と不適当な混和性を有する。したがって、これらの炭化水素の使用には、好適な混合物を得るために化学的界面活性剤がしばしば必要であり、これらは望ましくなく且つ不都合である。
【0009】
Tapscottの米国特許5,900,185においては、発泡剤などの特定の材料の可燃性を減少させるための添加剤として特定の臭素化オレフィンを用いることを示唆した。この特許において開示されている添加剤は、高い効率性及び短い大気寿命を有することを特徴としており、則ちこれらは低いODP及び低いGWPを有する。Tapscottに記載されている臭素化オレフィンは特定の材料のための不燃性薬剤として多少のレベルの有効性を有する可能性があるが、これらの化合物は幾つかの欠点も有する。例えば、本出願人は、Tapscottにおいて確認されている化合物の多くは、発泡剤として用いると、それらの比較的高い分子量のために比較的低い効率性を有することを認識するに至った。更に、それらの比較的高い沸点のために、これらの化合物は、発泡剤として用いると他の問題に遭遇する。また、Tapscottにおいて開示されている臭素化オレフィンの多くは、高度の臭素置換を有しており、これにより化合物が毒性になるか及び/又は環境的に望ましくない生物蓄積を発現する可能性などのように安全でなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許5,182,309
【特許文献2】米国特許5,096,933
【特許文献3】米国特許5,900,185
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、従来の発泡剤に対する魅力的な代替物としての新規な化合物及び組成物に関する必要性が未だ存在する。本発明は、とりわけこの必要性を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人は、上記に記載の発泡剤に対する有効で環境的により安全な代替物である新規な発泡剤に関する必要性を認識した。好ましくは、これらの代替物は、少なくとも最も広く用いられている発泡剤の多くと関係するものに匹敵する特性を有するか又はフォームに与える。かかる望ましい特性としては、気相熱伝導率(低いkファクター)、低毒性又は非毒性、不燃性などが挙げられる。ここで用いる「不燃性」という用語は、ASTM標準規格E−681(2002年)(参照として本明細書中に包含する)にしたがって不燃性であることが決定される化合物又は組成物を指す。更に、新規な発泡剤は、フォームの製造及び形成において用いられる従来の装置及びシステムに大きな技術変更を行わずに有効であることが一般的に望ましいと考えられる。
【0013】
本出願人は、予期しなかったことに、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン(シス及びトランス異性体);3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン(シス及びトランス異性体);及び2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(シス及びトランス異性体);が驚くべきことに低いか又はゼロに近いODP及び低いGWPを有し、低毒性又は非毒性を示し、ポリオール中に可溶であることを見出した。したがって、これらの化合物は、発泡剤として及び他の用途においても用いられる望ましい代替物を与える。
【0014】
一形態においては、本発明は、(a)フォームマトリクスを形成することができる重合性材料;及び(b)1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;及び2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;からなる群から選択される1種類以上の化合物を含む発泡剤;を含む発泡性組成物に関する。
【0015】
他の形態においては、本発明は、ポリウレタン又はポリイソシアネートを含むセル壁、及び該セル壁内のセル容積を含み、該セル容積が、シス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;トランス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;シス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;トランス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;シス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;及びトランス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;からなる群から選択される少なくとも1種類の発泡剤を含む、独立気泡フォームに関する。
【0016】
他の形態においては、本発明は、シス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;トランス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;シス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;トランス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;シス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;及びトランス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む、フォーム用の発泡剤に関する。
【0017】
更に他の形態においては、本発明は、フォームを形成するのに有効な条件下で発泡剤を発泡性材料に加えることを含み、該発泡剤が、シス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;トランス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;シス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;トランス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;シス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;及びトランス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む、フォームの製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のフォーム発泡剤は、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;及び2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;から選択される1種類以上の化合物を含む。これらの発泡剤は、広範囲の発泡材料と相溶性であり、高い断熱性、低いオゾン層破壊係数、及び低い地球温暖化係数などの望ましい特性を有するフォームを与えることが分かった。更に、これらの化合物は不燃性で非毒性であることが分かった。
【0019】
他に示さない限りにおいて、それぞれの化合物に関する化学名は、特定の化合物の立体異性体、特にジアステレオマーを指す。例えば、「1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン」という用語は1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテンのシス及びトランス異性体の両方を指し;「2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン」という用語は2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテンのシス及びトランス異性体の両方を指し;「2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン」という用語もそのシス及びトランス異性体の両方を含む。
【0020】
本発明の発泡剤組成物は、広範囲の量の1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン、3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン、2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン、及び/又は2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを含む。特定の態様においては、発泡剤は、実質的に1種類以上のこれらの化合物から構成される。
【0021】
特定の態様においては、本発明において用いる発泡剤は、1種類以上の他の添加剤を更に含む。かかる場合によって用いる更なる化合物としては、発泡剤としても作用する他の化合物(以下、「共発泡剤」と呼ぶ)が挙げられるが、これらに限定されない。共発泡剤は、物理的発泡剤、化学的発泡剤(好ましくは水を含む)、又は物理的及び化学的発泡剤の特性の組み合わせを有する発泡剤を含んでいてよい。本発明において広範囲の共発泡剤を用いることができることが意図されるが、特定の好ましい態様における発泡剤組成物としては、1種類以上のHFC、より好ましくは1種類以上のC〜CHFC、及び/又は1種類以上の炭化水素、より好ましくはC〜C炭化水素が挙げられる。非常に好ましいHFCとしては、CHFC、更により好ましくは5フッ素化CHFCが挙げられる。
【0022】
例えば、HFCに関しては、本発泡剤組成物には、ジフルオロメタン(HFC−32)、フルオロエタン(HFC−161)、ジフルオロエタン(HFC−152)、トリフルオロエタン(HFC−143)、テトラフルオロエタン(HFC−134)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、ペンタフルオロプロパン(HFC−245)、ヘキサフルオロプロパン(HFC−236)、ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、ペンタフルオロブタン(HFC−365)、ヘキサフルオロブタン(HFC−356)、並びに全てのかかるHFCの全ての異性体を含ませることができる。
【0023】
特定の好ましい態様においては、発泡剤組成物には、熱硬化性ポリマーを発泡させるためにイソ、n−、及び/又はシクロペンタンを含ませることができる。他の好ましい態様においては、発泡剤組成物には、熱可塑性ポリマーを発泡させるためにブタン又はイソブタンを含ませることができる。水、CO、CFC(例えば、トリクロロフルオロメタン(CFC−11)及びジクロロジフルオロメタン(CFC−12))、ヒドロクロロカーボン(例えば、塩化エチル及びクロロプロパン)、HCFC、C〜Cアルコール(例えば、エタノール及びブタノール)、C〜Cアルデヒド、C〜Cケトン、C〜Cエーテル(例えば、ジメチルエーテル及びジエチルエーテル)、ジエーテル(例えば、ジメトキシメタン及びジエトキシメタン)、及びギ酸メチル、並びに上記で言及した任意の成分の組み合わせのような他の材料を加えることができる。しかしながら、かかる更なる成分は負の環境影響のために好ましくないと考えられる。
【0024】
特定の好ましい態様においては、本発明の発泡剤組成物において共発泡剤として用いるのには、以下のHFC:
1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC−125);
1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134);
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a);
1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a);
1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea);
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa);
1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa);及び
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc);
の1以上が好ましい。
【0025】
本組成物中に含ませることができる任意の上記で示した共発泡剤並びに任意の更なる成分の相対量は、本発明の広範な範囲内で広く変化させることができ、組成物に関する特定の用途にしたがって選択することができる。特定の好ましい態様においては、1種類又は複数の共発泡剤は、加えた場合には、十分量の本発明の1種類又は複数の化合物と一緒に、全体的に不燃性の発泡剤組成物を与える。したがって、かかる態様においては、本発明の1種類又は複数の化合物に対する共発泡剤の相対量は、少なくとも部分的に共発泡剤の可燃性によって定まる。
【0026】
他の場合によって用いる添加剤としては、界面活性剤、ポリマー変性剤、強化剤、着色剤、染料、可溶性向上剤、流動性改良剤、可塑剤、可燃性抑制剤、抗バクテリア剤、粘度減少変性剤、充填剤、蒸気圧改良剤、成核剤、触媒などが挙げられる。
【0027】
特定の好ましい態様においては、本発明において用いる発泡剤には、分散剤、気泡安定剤、界面活性剤、及び他の添加剤を含ませることもできる。特定の界面活性剤は場合によって用いることができるが、好ましくは気泡安定剤として働かせるために加える。幾つかの代表的な界面活性剤としては、米国特許2,834,748、2,917,480、及び2,846,458(それぞれ参照として本明細書中に包含する)に開示されているもののような一般的にポリシロキサンポリオキシアルキレンブロックコポリマーであるDC-193、B-8404、及びL-5340の名称で販売されているものが挙げられる。発泡剤組成物のための場合によって用いる他の添加剤としては、トリ(2−クロロエチル)ホスフェート、トリ(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、ジアンモニウムホスフェート、種々のハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム3水和物、ポリ塩化ビニルなどのような難燃剤を含ませることができる。
【0028】
特定の態様においては、共発泡剤は、HFC、炭化水素、及びこれらの組み合わせを含み、好ましくは実質的にこれらからなる群から選択される。特定の好ましい態様においては、HFC共発泡剤は、C〜CHFC、更により好ましくはCHFCを含む。特定の好ましい態様においては、HFC−245faのような5フッ素化CHFCが非常に好ましい共発泡剤である。
【0029】
特定の態様においては、本発明の発泡剤は、ポリウレタン発泡装置のような通常の発泡装置において、通常の処理条件で用いる。本方法には、マスターバッチタイプの操作、ブレンドタイプの操作、第3流発泡剤添加、及びフォームヘッドにおける発泡剤添加が含まれる。特定の態様においては、発泡剤を超臨界又は超臨界に近い状態で用いることが望ましい可能性がある。
【0030】
本発明の他の形態は、好ましくは、発泡性ポリマー又は重合性成分、並びに、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;及び2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む発泡剤を含む発泡性組成物を提供する。これらのフォームとしては、発泡性ポリマー又は重合性成分から製造される独立気泡フォーム、連続気泡フォーム、硬質フォーム、軟質フォーム、インテグラルスキンフォームなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい態様においては、フォームは熱可塑性ポリマーを含む。他の好ましい態様においては、フォームは熱硬化性ポリマーを含む。
【0031】
本発明のフォームは、低いか又はゼロに近いODP及び低いGWPを与えることができ、これはその中で用いる発泡剤に関係している。また、フォーム、特にポリウレタンフォームのような発泡熱硬化性ポリマーに関する他の有利性は、特に及び好ましくは低温条件下でKファクター又はλで測定される非常に優れた熱特性を達成する能力であると考えられる。また、本発明のフォームは、寸法安定性、圧縮強度、断熱特性の経時変化のような改良された機械特性を示すことも意図される。例えば、本発明のフォームは、実質的に同じ条件下で現在商業的に製造されているフォームのものと比べて優れた圧縮強度を有することができる。
【0032】
本出願人は、本発明のフォーム、特に発泡熱硬化性ポリマーは広範囲の用途において用いることができると考える。特定の好ましい態様においては、本発明のフォームは、冷蔵庫用フォーム、冷凍庫用フォーム、冷凍冷蔵庫用フォーム、及びパネルフォームのような電気製品用フォームである。
【0033】
特定の好ましい態様においては、発泡性組成物は、反応によって熱硬化性ポリマーを形成することができる発泡性ポリマー又は1種類又は複数の重合性成分を含む。これらの発泡性組成物は、ここでは熱硬化性組成物ともみなされる。熱硬化性組成物の例としては、ポリウレタン及びポリイソシアヌレートフォーム組成物、並びにフェノール系フォーム組成物(例えばフェノールホルムアルデヒドベースのフォーム)が挙げられる。また、米国特許6,221,973(参照として本明細書中に包含する)のようなホルムアルデヒドを含まない発泡性で硬化性のポリ酸/ポリオールポリマーを、本発明の発泡方法と共に熱硬化性ポリマーとして用いることができる。発泡熱硬化性ポリマーを製造するための反応及び発泡プロセスは、促進剤(「触媒」とも呼ぶ)並びに形成中に気泡の寸法を制御及び調節してフォーム構造を安定化させるように働く界面活性剤材料のような種々の添加剤を用いることによって向上させることができる。更に、本発明の発泡性組成物中に1種類以上の共発泡剤を導入することもできることが意図される。
【0034】
特定の態様においては、発泡性熱硬化性組成物は、本発明の発泡剤、及び適当な条件下で互いに反応及び/又は発泡して発泡ポリマーマトリクス又は気泡構造体を形成することができる1種類以上の重合性成分を含む。
【0035】
特定の好ましい態様においては、発泡性組成物は、発泡性ポリマー、又は熱可塑性ポリマー(及び/又は樹脂)を発泡させることができる1種類以上の重合性成分を含む。これらの発泡性組成物は、ここでは熱可塑性組成物ともみなされる。熱可塑性組成物のための成分の例としては、式:Ar−CH=CHを有するモノビニル芳香族化合物(例えばポリスチレン)のようなポリオレフィンが挙げられる。ポリオレフィン樹脂の他の例としては、ポリエチレン及びエチレンコポリマーのような種々のエチレン樹脂、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。特定の態様においては、熱可塑性組成物は押出し可能な発泡性組成物である。
【0036】
一般に、発泡ポリマーマトリクスを製造するための本発明方法は、上記の発泡剤を発泡性組成物中に導入し、次に例えば該組成物を加熱することによって発泡性組成物を発泡させることを必要とする。この方法又はプロセスは、好ましくは、発泡剤の体積膨張を引き起こす一工程又は一連の工程によって行う。更に、発泡剤を導入するため及び発泡させるための従来のシステム及び装置は、本発明のために用いるように容易に適合させることができる。実際、本発明の1つの有利性は、改良された発泡剤が一般に既存の発泡方法及びシステムと適合性であることであると考えられる。したがって、本発明によって多くのタイプのフォームを発泡させるための方法及びシステムが提供されることが、当業者によって認識されるであろう。
【0037】
発泡性熱硬化性組成物を用いてフォームを製造することを伴う特定の好ましい態様においては、本方法は発泡プロセス中に互いに発熱反応させることを伴う。非常に好ましい態様においては、重合性成分間のかかる1つ又は複数の発熱反応によって、発泡性組成物をその中で用いられている発泡剤の沸点より高い温度に加熱するのに用いるための熱が生成する。
【0038】
他の好ましい態様においては、発泡性熱硬化性組成物中の重合性成分は、発泡プロセス中に互いに吸熱反応を起こす。非常に好ましい態様においては、重合成分間の1つ又は複数の吸熱反応の進行は、発泡性組成物の温度を発泡剤の沸点よりも高く上昇させるのに用いられる熱に少なくとも部分的に依存する。
【0039】
特定の好ましい態様においては、熱硬化性ポリマーを製造する方法は、種々の添加剤、特に促進剤(則ち触媒)を用いて発泡プロセス又はその中の反応を促進させる。当該技術において公知の全ての好適な促進剤を、本発明方法に関連して用いることができる。特定の好ましい態様においては、発泡熱硬化性ポリマーを製造する方法は、界面活性剤材料を用いて、形成プロセス中において気泡の寸法を制御及び調節してフォーム構造を安定化させる。当該技術において公知の全ての好適な界面活性剤を、本発明方法に関連して用いることができる。
【0040】
本方法は、一般に、イソシアネート、ポリオール又は複数のポリオールの混合物、発泡剤或いは1種類以上の本組成物を含む複数の発泡剤の混合物、並びに触媒、界面活性剤、及び場合によっては難燃剤、着色剤、又は他の添加剤のような他の材料を配合することによってポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームを製造することを含むことが意図される。
【0041】
ポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームに関する成分は予めブレンドした組成物で提供することが、多くの用途において好都合である。最も通常的には、フォーム組成物は2つの成分に予めブレンドする。第1の成分(通常は「A」成分と呼ぶ)は、発泡剤、イソシアネート、及び場合によっては特定の界面活性剤を含み、一方、第2の成分(通常は「B」成分と呼ぶ)は、ポリオール又はポリオール混合物、界面活性剤、触媒、発泡剤、難燃剤、及び他のイソシアネート反応性成分を含む。したがって、フォームは、A及びB成分を手動混合法又は機械混合法のいずれかによって混合して、ブロック、スラブ、積層体、現場注入パネル及び他の物品、吹き付けフォーム、フロスなどを形成することによって容易に製造することができる。場合によっては、難燃剤、着色剤、発泡助剤のような他の成分、及び更には他のポリオールを、1つ又は複数の更なる流れとして混合ヘッド又は反応場に加えることができる。しかしながら、最も好ましくは、これらは全てB成分中に含ませる。
【0042】
また、本方法及びシステムには、本発明に従う発泡剤を含む1成分フォーム、好ましくはポリウレタンフォームを形成することが含まれる。特定の好ましい態様においては、発泡剤の一部を好ましくは容器内の圧力において液体であるフォーム形成剤中に溶解することによってフォーム形成剤中に含ませ、発泡剤の第2の部分を別の気相として存在させる。かかるシステムにおいては、含有/溶解している発泡剤は主としてフォームの膨張を引き起こすように機能し、別の気相がフォーム形成剤に推進力を与えるように作用する。かかる1成分システムは、通常は及び好ましくは、エアロゾルタイプの缶のような容器内に収容され、したがって本発明の発泡剤は、好ましくは、フォームの膨張、及び/又はフォーム/発泡性材料を容器から移送するエネルギー、好ましくは両方を与える。特定の態様においては、かかるシステム及び方法は、完全に配合された系(好ましくはイソシアネート/ポリオールの系)を容器に充填し、本発明の気体状発泡剤を容器、好ましくはエアロゾルタイプの缶の中に導入することを含む。
【0043】
特定の好ましい態様においては、熱可塑性フォームを製造するための本発明方法は、一般に、本発明による発泡剤を、発泡性熱可塑性材料、好ましくはポリオレフィンのような熱可塑性ポリマー中に導入し、次に熱可塑性材料を、発泡を引き起こすのに有効な条件にかけることを含む。
【0044】
特定の非常に好ましい態様においては、発泡熱可塑性ポリマーを製造する方法は、少なくとも部分的に、発泡性熱可塑性組成物をその中に用いられている発泡剤の沸点よりも高い温度に加熱するのに必要な熱を生成させるために溶融処理を用いる。
【0045】
他の好ましい態様においては、発泡性熱可塑性組成物を発泡剤の沸点よりも高い温度に加熱するために用いる熱は、少なくとも部分的に、ポリマーを機械的に処理することによって与えられる。特定の非常に好ましい態様においては、熱可塑性材料を発泡させるのに用いる溶融プロセスは、押出プロセスである。かかるプロセスにおいては、熱可塑性材料を発泡させる方法に、熱可塑性材料を含むスクリュー押出機中に発泡剤を導入し、熱可塑性材料の圧力を低下させ、それによって発泡剤の体積膨張を引き起こすような工程を含ませることができる。
【0046】
更に、本発明の発泡剤を形成及び/又は発泡性組成物に加える順番及び方法は、本発明の実施可能性に一般的に影響を与えないことが、当業者によって認識されるであろう。例えば、押出プロセスにおいては、発泡剤の種々の成分、及び更には発泡性組成物の成分は、押出装置に導入する前に混合する必要はなく、及び押出装置内の同じ位置に加える必要はない。
【0047】
更に、押出プロセスを用いる方法に関しては、発泡剤は、発泡性組成物に加える前に直接か又は予備混合物の一部としてのいずれかで導入することができる。特定の態様においては、発泡剤の1つ以上の成分を、発泡剤の他の1つ又は複数の成分に関する添加位置の上流である押出機の第1の箇所において導入することができる。また他の態様においては、発泡剤の成分を、発泡性組成物中に導入する前に前もって混合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フォームマトリクスを形成することができる重合性材料;及び
(b)1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;及び2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;からなる群から選択される1種類以上の化合物を含む発泡剤;
を含む発泡性組成物。
【請求項2】
該重合性材料が、ポリウレタン、ポリイソシアネート、フェノール、又はこれらの前駆体を含む、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項3】
水、CO、ギ酸メチル、トランス−1,2−ジクロロエチレン、C〜Cヒドロフルオロカーボン、及びC〜C炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種類の共発泡剤を更に含む、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項4】
該共発泡剤が、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC−125);1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134);1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a);1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a);1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea);1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa);1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa);及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc);からなる群から選択される、請求項3に記載の発泡性組成物。
【請求項5】
フェノール系フォーム、ポリウレタン、又はポリイソシアネートを含むセル壁、及び該セル壁内のセル容積を含み、該セル容積が、シス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;トランス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;シス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;トランス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;シス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;及びトランス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;からなる群から選択される少なくとも1種類の発泡剤を含む、独立気泡フォーム。
【請求項6】
シス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;トランス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;シス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;トランス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;シス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;及びトランス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む、フォーム用の発泡剤。
【請求項7】
フォームを形成するのに有効な条件下で発泡剤を発泡性材料に加えることを含み、該発泡剤が、シス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;トランス−1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン;3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン;シス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;トランス−2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン;シス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;及びトランス−2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン;からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む、フォームの製造方法。
【請求項8】
該熱可塑性ポリマーが、モノビニル芳香族化合物、エチレン樹脂、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該熱可塑性ポリマーがポリスチレンである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
該熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2011−518924(P2011−518924A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506472(P2011−506472)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/041615
【国際公開番号】WO2009/132242
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】