説明

ポリマーブレンド及びそれを用いた液中物質移動材料

【課題】 不純物質または有用物質のような目的物質を含有する液中から同物質を捕集等するために適した液中物質移動材料を提供する。
【解決手段】 星型ポリマーと親水性ポリマーを含んで成るポリマーブレンドおよび該ポリマーブレンドを含んで成る液中物質移動材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、星型ポリマーと親水性ポリマーを含んで成るポリマーブレンド及びそれを用いた液中物質移動材料に関する。詳しくは、排水中、廃液中、またはある限定された領域の液中に含まれる目的物質を捕集・除去することができる液中物質移動材料として使用可能なポリマーブレンド及びそれを用いた液中物質移動材料に関する。
【背景技術】
【0002】
刺激応答性ポリマーは、光照射、電場印加、温度変化、pH変化、化学物質の添加など、刺激の付与(環境変化)に応じて、形状や物性を著しく変える物質であり、近年、高度機能を兼ね備えたインテリジェントマテリアル(知的材料)として数多く研究されている。
このような刺激応答性ポリマーとしては、線状ポリマーが存在する。線状ポリマーとしてリビングカチオン重合により合成された性質の異なるセグメントからなり、分子量やその分布の制御されたジブロックコポリマーが知られている。モノマーとしては性質の異なる置換基が導入可能なアルケニルエーテル、特にビニルエーテルが用いられる。例えば、刺激に応じて親媒性から疎媒性へ、または疎媒性から親媒性へと変化するブロックポリマーが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、アルケニルエーテルのポリマーを枝とし、ジアルケニルエーテル、特にジビニルエーテルの架橋ポリマーを核とし、アルケニルエーテル重合体の枝が2本以上結合した構造を有する多分枝高分子(星型ポリマー)が知られている(特許文献2、非特許文献1、非特許文献2参照)。このような星型ポリマーは核で有害物質を捕捉し、刺激に応答して、有害物質を分離し、回収または廃棄することが可能である。
星型ポリマーを製造するには、リビングポリマーにジビニル化合物を少量添加し、架橋反応によって合成する方法(特許文献1参照)、あるいは多官能性の開始剤や停止剤を用いて合成する方法がある。後者の方法では、枝の数、長さを正確に決定することができるが、このような多官能性開始剤や停止剤を合成するのに時間がかかり、また多数の枝を有するような星型ポリマーを製造することが難しくなる。それに比べて、ジビニル化合物を添加する前者の方法では、ごく容易に星型ポリマーを製造することができ、さらにジビニル化合物の量など、製造条件を変化させることにより、枝の数を変化させることができ、容易に多数の枝を有する星型ポリマーを製造することができる。すなわち、リビングポリマーにジビニルエーテルを添加すると、側鎖にビニル基を有するポリマーが得られ、このポリマーが分子間架橋することにより星型ポリマーが得られる(特許文献1参照)。
【0004】
排水中、廃液中、またはある限定された領域の水中にある目的物質の捕集・除去に関しては、従来、対象の液中に凝集剤を添加して目的物質を沈澱させる沈澱法が用いられている(例えば、特許文献3〜6を参照)。
また、吸着剤を詰めたカラムの中に対象の液体を通過させ、目的物質をカラムへ吸着させて液中から除去するカラム法が実用的である(例えば、特許文献7〜10を参照)。
【0005】
ところで、前記の液中には不純物質と共に有用物質や未反応の原料など再利用可能な物質が含まれていることもあり、このような物質を同液中から捕集することは有益である。例えば、ビスフェノールAはエポキシ樹脂、ポリカーボネート、防カビ剤、抗酸化剤、染料などに用いられる有用な化学物質である。
しかし、近年、ビスフェノールAが内分泌撹乱化学物質の一つであり、生体内の内分泌系の情報伝達を撹乱するのみならず、免疫系や神経系の正常な機能にも影響を与えることが指摘されており、ビスフェノールAを含む溶液等から高効率に同物質を除去する技術の開発が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−119342号公報
【特許文献2】特許第2782000号公報
【特許文献3】特開2002−361279号公報
【特許文献4】特開2002−126758号公報
【特許文献5】特開2001−9498号公報
【特許文献6】特開平09−52092号公報
【特許文献7】特開2003−53353号公報
【特許文献8】特開平10−323509号公報
【特許文献9】特開平10−118644号公報
【特許文献10】特開平7−328434号公報
【非特許文献1】Macromolecules,24巻,2309〜2313頁(1991年)
【非特許文献2】Polymer Bulletin,44巻,485〜492頁(2000年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
星型ポリマーを用いると、排水中、廃液中、あるいはある限定された領域の液中に含まれる目的物質を捕集・除去することができる。しかし、星型ポリマーを単独で使用する場合には、目的物質を捕集した星型ポリマーをその液中から取り出すのが困難であることが分かった。例えば、液中で目的物質を捕集した星型ポリマーを有機溶剤中に抽出しようとすると、星型ポリマーが親水性である場合は有機溶剤に抽出されにくい。
従って、本発明の課題は、排水中、廃液中、あるいはある限定された領域の液中に含まれる目的物質を捕集・除去することができ、さらに、目的物質を捕集した星型ポリマーをその液中から容易に取り出すことが可能である、液中物質移動材料に適したポリマーブレンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記課題は、星型ポリマーと親水性ポリマーを含んで成るポリマーブレンドによって達成される。
本発明のポリマーブレンドは、親水性ポリマーを母材とするマトリックス中に星型ポリマーが高分散して配置された構造を有することが好ましい。ポリマーブレンドがこのような構造を有することにより、星型ポリマーによる目的物質の捕集・除去が容易となる。即ち、このポリマーブレンドを、取り出したい目的物質を含有する液中に浸漬することにより、その液中で星型ポリマーに目的物質を捕集させ、このポリマーブレンドをその液中から取り出すことにより、目的物質が液中から除去される。
また、目的物質が取り込まれたポリマーブレンドを有機溶剤含有水溶液のような液中に浸漬させ、目的物質や用いる星型ポリマーの刺激応答性に応じた条件に設定することにより、ポリマーブレンド中の星型ポリマーから目的物質を放出させ、該液中に目的物質を回収・濃縮することができる。
さらに、本発明のポリマーブレンドを用いて、同一又は異なる目的物質の捕集と放出を繰り返し行うことも可能である。
【0009】
本発明において刺激応答性とは、温度変化、光または電磁波の暴露、pH変化、濃度変化、有機溶媒の添加等から選択される少なくとも1つの刺激に応答して、物理的状態が変化することを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、液中物質移動材料とは、液中から本発明のポリマーブレンドへ目的物質を捕集し、または既に目的物質が取り込まれたポリマーブレンドから液中へ目的物質を放出するための材料をいう。同様に、本発明において、液中物質移動方法とは、液中から本発明のポリマーブレンドへ目的物質を捕集し、または既に目的物質が取り込まれたポリマーブレンドから液中へ目的物質を放出するための方法をいう。
【0011】
本発明において使用可能な星型ポリマーは、親水性ポリマーとブレンド物を形成し得、好ましくは親水性ポリマーを母材とするマトリックス中に分散ないし溶解可能であれば特に限定されるものではなく、従来知られる任意の星型ポリマーを包含する。
【0012】
このような星型ポリマーは、アクリル酸エステル系モノマー、アクリルアミド系モノマー、アルキレンオキシド系モノマー、スチレン系モノマー及びアルケニルエーテル系モノマーよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマー単位を主成分として構成されたポリマーであることが、生産性や加工性の観点から好ましい。
アクリル酸エステル系モノマーとしては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のエステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等が好ましい。
アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等が好ましい。
アルキレンオキシド系モノマーとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が好ましい。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン等が好ましい。
上記の各モノマーは単独で或いは組み合わせて用いてよく、上記モノマーを2種以上用いたコポリマーの場合には、ランダムコポリマー或いはブロックコポリマー等を構成してよい。また、本発明の目的を害さない範囲、好ましくは星型ポリマーに基づき40モル%以下の範囲、より好ましくは20モル%以下の範囲で、他のモノマーを用いてもよい。
【0013】
本発明の目的にとって好ましい星型ポリマーは、アルケニルエーテル星型ポリマーである。このようなアルケニルエーテル星型ポリマーは、ジアルケニルエーテルの架橋重合体を核とし、アルケニルエーテル重合体の枝が2本以上結合した構造を有する星型ポリマーであって、その一例として例えば特許第2782000号に開示されたような星形多分枝高分子を挙げることができる。
本発明においてアルケニルエーテルとは、ビニル基またはプロペニル基などのアルケニル基を有するエーテルである。具体的には、ビニルエーテル、プロペニルエーテルなどがある。
【0014】
本発明のポリマーブレンドに適したアルケニルエーテル星型ポリマーは、一般式(I):
CHR=CH(OR) (I)
[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは1価の有機基を示す。]
で表されるアルケニルエーテルをモノマー単位とする一般式(II):
−(CHR−CH(OR))− (II)
[式中、RおよびRは一般式(I)にて示されるものと同じである。]
で表される繰り返し単位を有するリビングポリマーを枝とする星型ポリマーである。
【0015】
本発明で使用するアルケニルエーテルとしては、一般式(I):
CHR=CH(OR) (I)
[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは1価の有機基を示す。]
で表される化合物がある。このようなアルケニルエーテルとしては、有機基(R)が炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、シリロキシアルキル基、炭素数6以上のシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールオキシアルキル基、アリールオキシカルボニルアルキル基、(メタ)アクリルカルボニルオキシエチル基、スチリルカルボニルオキシエチル基、ソルビンカルボニルオキシエチル基、アミド、イミド、ウレタンまたは尿素結合を有するアルキル基、アミン、カルボン酸またはリン酸を有するアルキル基などで示される化合物を包含する。
【0016】
具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル(NBVE)、イソブチルビニルエーテル(IBVE)、シクロヘキシルビニルエーテル、n−ヘキサデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)、エトキシエチルビニルエーテル(EOVE)、2−エトキシエトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシ−2−エトキシエトキシエチルビニルエーテル、フェノキシエチルビニルエーテル、p−クロロフェノキシビニルエーテル、2−ビニロキシエチルベンゾエート、2−ビニロキシエチル−p−メトキシベンゾエート、2−ビニロキシエチル−p−クロロベンゾエート、2−ビニロキシエチルメタクリレート、2−ビニロキシエチルアクリレート、2−ビニロキシエチルシナメート、ビニロキシエチルソルベート、ジエチルビニロキシエチルマロネート、ジフェニルビニロキシエチルマロネート、2−ビニロキシエチルフタルイミドなどのビニルエーテル;またはメチルプロペルエーテル、エチルプロペルエーテル、イソプロピルプロペニルエーテル、n−ブチルプロペニルエーテル、イソブチルプロペニルエーテル、シクロヘキシルプロペニルエーテル、n−ヘキサデシルプロペニルエーテル、2−クロロエチルプロペニルエーテル、ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、ベンジルプロペニルエーテル、エトキシエチルプロペニルエーテル、2−エトキシエトキシエチルプロペニルエーテル、2−エトキシ−2−エトキシエトキシエチルプロペニルエーテル、フェノキシエチルプロペニルエーテル、2−プロペニロキシエチルアセテート、2−プロペニロキシエチルベンゾエート、2−プロペニロキシエチル−p−メトキシベンゾエート、2−プロペニロキシエチル−p−クロロベンゾエート、2−プロペニロキシエチルメタクリレート、2−プロペニロキシエチルアクリレート、2−プロペニロキシエチルシナメート、プロペニロキシエチルソルベート、ジエチルプロペニロキシエチルマロネート、ジフェニルプロペニロキシエチルマロネート、2−プロペニロキシエチルフタルイミドなどのプロペニルエーテルなどが挙げられる。
本発明において使用するアルケニルエーテルは、1種または2種以上の化合物であってもよい。
【0017】
本発明において使用するアルケニルエーテル星型ポリマーは、一般式(I):
CHR=CH(OR) (I)
[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは1価の有機基を示す。]
で表される少なくとも2種のアルケニルエーテルをモノマー単位とする一般式(II):
−(CHR−CH(OR))− (II)
[式中、RおよびRは一般式(I)にて示されるものと同じである。]
で表される少なくとも2種の繰り返し単位を有するブロックまたはランダムコポリマーを枝とする星型ポリマーであってもよい。
【0018】
また、アルケニルエーテルとして、一般式(I):
CHR=CH(OR) (I)
[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは−(CH(R)−CH(R)−O)−Rであり、lは1から18の整数から選ばれる。RおよびRはそれぞれ独立にH、もしくはCHである。Rは炭素数1から18まで(但し、lが0の場合は炭素数10から18まで)の直鎖、分枝または環状のアルキル基からなる。]
で表される化合物を用いた場合、特に刺激応答性の高い星型ポリマーを得ることができる。
このような化合物としては、例えば、下記式で表される化合物がある。
CH=CH(OCH−CH−OCH)、
CH=CH(OCH−CH−OC)、
CH=CH(OCH−CH−OCH
CH=CH(OCH−CH−OC
CH=CH(OCH−CH−OC)、
CH=CH(OCH−CH−OC−CH)、
CH=CH(OCH−CH−OC−C)、または
CH=CH(OR
[式中、Rは炭素数10から18までの直鎖、分枝または環状のアルキル基である。]
【0019】
上記のようなアルケニルエーテル星型ポリマーは、例えば、アルケニルエーテルを、
(a)含酸素または含窒素化合物、
(b)下記一般式(1)または(2)で表されるアルミニウム化合物または四価チタニウム或いは四価スズ化合物、からなるルイス酸、
AlX (1)
[式中、X、XおよびXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリロキシ基を示す。]
MY (2)
[式中、Mは4価のTiまたはSnを示し、Y、Y、Y、およびYは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリロキシ基を示す。]
および
(c)開始種
の存在下、リビングカチオン重合し、得られたリビングポリマーにジアルケニルエーテルを添加することにより製造することができる。
【0020】
本発明に使用可能なリビングカチオン重合開始剤には、下記一般式(1)または(2)で表されるルイス酸と開始種が含まれる。
一般式(1):AlX
[式中、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリロキシ基を示す。]
で表されるアルミニウム化合物としては、具体的には、Xは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基またはアリロキシ基である。このようなアルミニウム化合物としては、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムフルオライド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムブロマイド、ジイソプロピルアルミニウムフルオライド、ジイソプロピルアルミニウムアイオダイド、ジメチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジフルオライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、イソブチルアルミニウムジクロライド、オクチルアルミニウムジクロライド、エトキシアルミニウムジクロライド、ビニルアルミニウムジクロライド、フェニルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムトリブロマイド、エチルアルミニウムエトキシクロライド、ブチルアルミニウムブトキシクロライド、エチルアルミニウムエトキシブロマイドなどの有機ハロゲン化アルミニウム化合物、ジエトキシエチルアルミニウムなどのジアルコキシアルキルアルミニウム、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウム、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウムなどのビス(アルキル置換アリロキシ)アルキルアルミニウムなどが挙げられる。これらのアルミニウム化合物は、1種または2種以上であってもよい。
【0021】
また、一般式(2):MY
[式中、Mは4価のTiまたはSnを示し、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリロキシ基を示す。]
で表される四価チタニウムまたは四価スズ化合物としては、具体的には、Xは塩素、臭素、ヨウ素などが包含されるハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基またはアリロキシ基である。このようなチタン化合物としては、四塩化チタン、四臭化チタン、四沃化チタン等のハロゲン化チタン、チタントリエトキシクロライド、チタントリn−ブトキシドクロライド等のハロゲン化チタンアルコキシド、チタンテトラエトキシド、チタンn−ブトキシドなどのチタンアルコキシドなどが挙げられる、またはスズ化合物としては、四塩化スズ、四臭化スズ、四沃化スズ等のハロゲン化スズ等を挙げることができる。これらのチタン化合物またはスズ化合物は、1種または2種以上であってもよい。
【0022】
本発明において使用し得る開始種とは、水、アルコール、プロトン酸などのプロトンを生成する化合物、またはハロゲン化アルキルなどのカルボカチオンを生成する化合物を含む。または、前記アルケニルエーテルとプロトンを生成する化合物との付加物などのカチオン供給化合物であってもよい。このようなカルボカチオンを生成する化合物としては、例えば、1−ブトキシエチルアセテートなどの1−アルコキシエチルアセテートなどが挙げられる。
【0023】
本発明において使用可能な含酸素または含窒素化合物は、生長種を安定化し、室温程度の条件下でも、ポリマーに単分散に近い分子量分布を与える目的で添加される塩基であって、エステル、エーテル、酸無水物、ケトン、イミド、リン酸化合物、ピリジン誘導体、アミンからなる群から選択される化合物がある。具体的には、エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、クロロ酢酸メチル、ジクロロ酢酸メチル、酪酸エチル、ステアリン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチルなどが挙げられる。エーテルとしては、ジエチルエーテル、エチレングリコールなどの鎖状エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテルが含まれる。酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。イミドとしては、エチルフタルイミドなどが挙げられる。さらに、リン酸化合物としては、トリエチルホスフェートなどが挙げられる。ピリジン誘導体としては、2,6−ジメチルピリジンなどが挙げられる。アミンとしては、トリブチルアミンなどが挙げられる。これらの含酸素または含窒素化合物は、1種または2種以上であってもよい。
【0024】
本発明において、一般に、前記ルイス酸の使用量は、モル比で原料アルケニルエーテル(I)とルイス酸(1)または(2)の比、(I)/(1)または(2)=2〜1000が好ましく、より好ましくは10〜1000であり、前記含酸素または含窒素化合物の使用量は、ルイス酸(1)または(2)に対する含酸素または含窒素化合物(4)の比、(4)/(1)または(2)=0.1〜2000が好ましく、より好ましくは1〜2000である。(4)/(1)または(2)が0.1未満であると、完全なリビング系にならないか、あるいは全くリビング系にはならず、通常の移動、停止を伴う重合になる。
開始種濃度は0.1〜1000mMが好ましく、より好ましくは1〜100mMである。
【0025】
アルケニルエーテルを上記ルイス酸と含酸素または含窒素化合物と開始種の存在下で重合するには、バルクで行ってもよいが、通常、溶媒を使用する。溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、四塩化炭素、塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテルなどのエーテルなどが挙げられる。特に無極性溶媒が好ましい。これらの溶媒は、必要に応じて単独または2種類以上の組合せで用いられる。
溶媒とアルケニルエーテルとの仕込み比は、通常、1:1〜100:1が好ましく、より好ましくは5:1〜30:1である。
本発明の方法では、重合温度は−80℃〜150℃が好ましく、より好ましくは−78〜80℃である。重合時間は、1秒〜1ヶ月が好ましく、より好ましくは1秒〜100時間である。
【0026】
本発明における好ましいアルケニルエーテル星型ポリマーは、一般式(I):
CHR=CH(OR) (I)
[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは1価の有機基を示す。]
で表される少なくとも2種のアルケニルエーテルをモノマー単位とする一般式(II):
−(CHR−CH(OR))− (II)
[式中、RおよびRは一般式(I)にて示されるものと同じである。]
で表される少なくとも2種の繰り返し単位を有するブロックまたはランダムコポリマーを枝とする星型ポリマーである。具体的には、側鎖構造を有するアルケニルエーテルと極性基を有するアルケニルエーテルとのブロックコポリマー、例えば、n−ブチルビニルエーテル(NBVE)とメトキシエチルビニルエーテル(MOVE)またはエトキシエチルビニルエーテル(EOVE)とのブロックコポリマーであってもよい。あるいはヒドロキシエチルビニルエーテルの前駆体とエトキシエチルビニルエーテル(EOVE)をリビングカチオン重合することにより、親水性セグメントとなるポリ(ヒドロキシエチルビニルエーテル)と感熱応答性のポリ(エトキシエチルビニルエーテル)のジブロックコポリマーを得てもよい。また、ブロックコポリマーとランダムコポリマーが混在したコポリマーであってもよい。
【0027】
ここで製造されるリビングポリマー(アルケニルエーテル重合体)は、重量平均分子量が好ましくは500〜1,000,000程度であり、より好ましくは1000〜500,000の範囲内である。また、分子量分布の指標である重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、非常に狭く、通常、Mw/Mnは1〜2が好ましく、より好ましくは1〜1.5、さらに好ましくは1〜1.2である。種々の条件の検討の結果、本発明では分子量分布が極めて狭く、分子量及び構造が制御された親水性、疎水性、刺激応答性ポリマーや親水性または疎水性と刺激応答性のジブロックコポリマーなどが製造できる。
【0028】
次いで、本発明では上記リビング重合反応を停止することなく、ジアルケニルエーテルを添加して、アルケニルエーテル星型ポリマーを製造する。ジアルケニルエーテルはリビングポリマーの生長種1当量に対して、好ましくは1〜100当量、より好ましくは3〜20当量を添加する。ジアルケニルエーテルは、好ましくは、前記アルケニルエーテル重合体の重合度が、10〜10000であるときに添加される。反応時間は、通常、1秒〜1ヶ月、好ましくは1秒〜100時間である。リビングポリマーにジアルケニルエーテルを添加した初期には、高分子量体は得られず、側鎖にアルケニル基、例えばビニル基を有するポリマーが得られる。続いて、これらの分子間架橋反応が起こり、時間とともに枝のピーク(GPC−MALLSにて測定)が消失していき、高分子量の星型ポリマーが生成する。
【0029】
前記ジアルケニルエーテルとしては、一般式[III]:
CHR=CH−O−R−O−CH=CHR [III]
(式中、RおよびRはそれぞれ水素原子またはメチル基を示し、Rは2価の有機基を示す。)
で表されるジアルケニルエーテルがある。2価の有機基(R)としては、下記式で示される基が含まれる。
−(CH
−(CH−R10−(CH
[式中、pは1以上の整数、R10は−O−、−O−Φ−O−或いは−O−Φ−C(CH−Φ−O−、または炭素数3以上のシクロアルキル基を示す。式中、Φはフェニレン基を示す。]
上記ジビニルエーテルとしては、エチレングリコールジビニルエーテル、ビスフェノールAビス(ビニルオキシエチレン)エーテル、ビス(ビニルオキシエチレン)エーテル、ヒドロキノンビス(ビニルオキシエチレン)エーテル、1,4−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサン、
【化1】

などが挙げられる。
【0030】
前記ジアルケニルエーテルとして、一般式[III]:
CHR=CH−O−R−O−CH=CHR [III]
[式中、RおよびRはそれぞれ水素原子またはメチル基を示し、Rはシクロヘキサン環を有する2価の有機基を示す。]
で表されるジアルケニルエーテルを用いた場合、特に刺激応答性の高い星型ポリマーを得ることができる。シクロヘキサン環を有する2価の有機基(R)としては、1,4−シクロヘキシレン、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキサンジメチレン、4−メチル−1,2−シクロヘキシレンなどが挙げられる。このようなジアルケニルエーテルとしては、1,4−ビス(ビニルオキシ)シクロヘキサン、1,2−ビス(ビニルオキシ)シクロヘキサン、1,3−ビス(ビニルオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(ビニルオキシメチル)−3−メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0031】
本発明ではリビングカチオン重合により得られたアルケニルエーテル重合体にジアルケニルエーテルを添加すると、ジアルケニルエーテルの2個のビニル基のうちの1個が前記重合体(リビングポリマー)の活性末端に付加すると考えられる。この付加反応が数回繰り返されて、アルケニルエーテル重合体にジアルケニルエーテルが数個結合した一種のブロックポリマーが生成する。このブロックポリマーには、ジアルケニルエーテル重合体に由来する未反応のビニル基が側鎖置換基として存在し、これらのビニル基とブロックポリマーの活性末端が分子間で次々と反応することにより架橋反応が起こる。これにより、アルケニルエーテル重合体を枝とし、ジアルケニルエーテルの架橋重合体を核として、核に複数の枝が結合した星型ポリマーが製造される。
ここで製造される星型ポリマーは、重量平均分子量が好ましくは1万〜200万程度であり、より好ましくは10万〜100万の範囲内である。また、分子量分布の指標である重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、非常に狭いこと、Mw/Mnとして1〜2が好ましく、より好ましくは1〜1.5であり、さらに好ましくは1〜1.3、特に好ましくは1〜1.2である。
また、収率(鎖状ポリマーの星型ポリマーへの転換率)は、90〜100%が好ましく、より好ましくは95〜100%、さらに好ましくは98〜100%である。
【0032】
本発明における星型ポリマーは、その核と枝に親水性及び/又は疎水性の基を導入することにより、捕集または放出可能な物質の種類を広げることができる。具体的には、疎水性基を導入した場合は、環境ホルモン類を効果的に捕集または放出することが可能となる。また、アシル基、アミノ基、カルボキシル基またはチオール基などのキレート性官能基や、ポリマー内に環状エーテルを有する大環状ポリエーテル(クラウンエーテル)、大環状ポリチオエーテル(チオクラウンエーテル)等を導入することにより、星型ポリマーに金属捕集性を付与することができる。
【0033】
本発明において、上記の星型ポリマーとブレンドされるべき親水性ポリマーは、水中に浸漬させた際に形状を保持し続けることが可能なポリマーであって、ポリマー中に水分を包接することのできる任意のポリマーを用い得る。このような親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ−n−ヒドロキシビニルアルコール、ポリ−n−ヒドロキシアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセタール等を挙げることができる。なかでも、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリアルキレンオキシドよりなる群から選択されるものが、水中での安定性、含水性、ポリマーの加工性の点から好ましい。
また、セルロース、及びメチルセルロース、アセチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース等のセルロース誘導体、アルキルデンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ヒドロキシアルキルアルキルデンプン、デンプンエステル、寒天、アルギン酸、カラギーナン等の多糖類などに例示される天然ポリマー由来の親水性ポリマーも用い得る。
【0034】
適当なポリビニルアルコールとしては、重合度が100〜5000のものが好ましく、重合度が500〜5000のものがより好ましい。
適当なポリアクリル酸としては、平均分子量が1万〜1000万のものが好ましく、1万〜500万のものがより好ましい。
適当なポリアクリルアミドとしては、平均分子量が1万〜1000万のものが好ましく、1万〜500万のものがより好ましい。
適当なポリアルキレンオキシドとしては、平均分子量が1万〜1000万のものが好ましく、1万〜500万のものがより好ましい。
【0035】
このような親水性ポリマーは、共重合体であってもよく、例えば共重合成分や共重合割合を選択することによって、ポリマーの親水性をコントロールでき、また、多種の溶媒との親和性を容易に付与し得る点で有利である。
適当な共重合体成分としては、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレングリコール等が挙げられ、とりわけポリスチレン、ポリエステル、ポリアミドが好ましい。
【0036】
上記親水性ポリマーは、架橋体であってもよく、例えば架橋密度を変化させることによって、ポリマーの力学特性を飛躍的に向上させることができ、また、ポリマーの親水性をコントロールし得る点で有利である。このような架橋体を形成するためには、例えば、架橋剤の添加、温度刺激や溶媒添加による自己架橋の促進、放射線の照射等の方法を採用し得る。
【0037】
本発明において、上記の星型ポリマーと親水性ポリマーは、好ましくは親水性ポリマーを含むマトリックス中に星型ポリマーが分散または溶解された構造となるようにブレンドされる。ここで、親水性ポリマーを含むマトリックス中に星型ポリマーを分散または溶解させる方法は特に限定されないが、溶融ブレンド法、水系及び/又は有機系の溶剤を用いてブレンドする溶液ブレンド法などを採用することができる。本発明のポリマーブレンドにおいて、星型ポリマーは、親水性ポリマーと結合を有していてもよい。
ここで溶融ブレンド法とは、ある温度範囲で溶融または軟化し得る二種以上のポリマーを、溶融状態で機械的に混練することによりブレンド物を得る方法をいう。また、溶液ブレンド法とは、二種以上のポリマーを一種または二種以上の溶剤(混合物)中に溶解(溶液状態、エマルジョン状態の両方を含む)させ、若しくは、該溶剤(混合物)中で機械的に分散させることによりブレンド物を得る方法をいう。
また、分散または溶解された構造とは、星型ポリマー成分が100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは5nm〜50μmの大きさで存在している状態を意味する。
【0038】
ブレンド方法は、用いる星型ポリマー及び親水性ポリマーの性質に応じて適宜選択することができる。例えば、両方のポリマーが同一温度範囲で溶融体を成形する場合には溶融ブレンド法を採用することができ、両方のポリマーが同一溶剤に分散または溶解する場合には溶液ブレンド法を採用し得る。各ポリマーが異なる溶剤に分散または溶解する場合であっても、これらの溶剤が相互に親和性を有する場合にはブレンドが可能である。また、同一温度範囲で、一方が溶融体、他方が溶剤に分散または溶解した状態を形成する場合にも、これらを混合することによりブレンド物を得ることができる。ブレンドを行う際に各ポリマー相への相分離が生じる場合には、適当な相溶化剤を添加することにより、均一なブレンド物を得ることができる。
溶液ブレンド法を採用する場合、溶剤としては、水、またはエタノール、アセトン、クロロホルム、その他の有機溶剤を、単独又は混合物として使用し得る。このような溶剤(混合物)は、高温の状態で使用してもよい。
【0039】
上記のようにして得られた星型ポリマーと親水性ポリマーを含んで成るポリマーブレンドは、液中物質移動材料として、目的物質の移動、即ち液中からの捕捉、並びに液中への放出のために供される。本発明のポリマーブレンドを液中物質移動材料として用いる場合、目的物質または被処理液の性質に応じて、該ポリマーブレンドを粒状物、繊維、フィルム、ゲル又はシートの形態に適宜変換することが好ましい。また、本発明のポリマーブレンドを、粒状物、繊維、フィルム、ゲル、シートなどの支持体の少なくとも一部にコーティングして液中物質移動材料を構成してもよい。
【0040】
本発明のポリマーブレンドに基づく液中物質移動材料は、ドラッグデリバリーシステム基材としても有利に使用し得る。
この場合、本発明のポリマーブレンド中に分散または溶解する星型ポリマーに予め目的物質を捕集させ、または、予め目的物質を捕集させた星型ポリマーを親水性ポリマーとブレンドして液中物質移動材料とし、これをドラッグデリバリーシステム基材として用いることが好ましい。目的物質を放出させたい場所(例えば疾病患部)において、温度などの刺激変化が与えられることにより、目的物質を放出させることが可能となる。
このようなドラッグデリバリーシステムにおいて放出させ得る目的物質としては、例えばオリゴペプチド、ペプチド、タンパク質、プロスタグランジン、コレステロール低下剤、胃抗分泌剤、制酸剤、抗アレルギー剤、抗喘息剤、ACE阻害剤、利尿剤、抗新生生物剤、抗ウィルスヌクレオシド剤、抗真菌剤、抗パーキンソン病剤、抗癲癇剤、鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症剤、鎮咳薬、充血除去剤、麻酔剤、抗生物質、心血管剤などが挙げられる。
【0041】
本発明のポリマーブレンドは、好ましくは親水性ポリマーを含むマトリックス中に星型ポリマーが高分散して配置されたものである。このため、星型ポリマーがもつ目的物質の捕集性を損なうことなく、母材である親水性ポリマーをその液中から取り出すことにより、ポリマーブレンド中に含まれる星型ポリマーを容易に取り出すことができるので、目的物質の捕集を容易に行うことができる。次に、このポリマーブレンドを例えば有機溶剤含有水溶液中に浸漬して目的物質を放出させることにより、目的物質を回収・濃縮することができる。本発明のポリマーブレンドを用いて、捕集と回収を連続的に繰り返し行うことが可能である。
【0042】
即ち、本発明は、上記本発明のポリマーブレンドを用いた液中物質移動材料を、目的物質を含有する被処理液中に浸漬させ、次いで、所定時間経過後に該液中物質移動材料を被処理液から分離し、該液中物質移動材料中に目的物質を捕集することを含んで成る液中物質移動方法に関する。
本発明はまた、上記本発明のポリマーブレンドを用いた液中物質移動材料に目的物質を取り込ませ、次いで、該液中物質移動材料を液中に浸漬させ、該液中に目的物質を放出させることを含んで成る液中物質移動方法にも関する。
本発明は更に、上記のような目的物質の捕集と放出を繰り返し行うことを特徴とする液中物質移動方法にも関する。
【0043】
本発明のポリマーブレンドを用いた液中物質移動材料を適用して捕集または放出し得る目的物質にはいわゆる環境ホルモン物質が含まれるが、特に限定されない。捕集または放出に適した目的物質としては、例えばダイオキシン、ビスフェノールA、ポリ塩化ビフェニール(PCB)、ポリ臭化ビフェニール(PBB)類、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、ペンタクロロフェノール(PCP)、2,4,5−ジクロロフェノキシ酢酸、アミトロール、アトラジン、アラクロール、ヘキサクロロシクロヘキサン、エチルパラチオン、カルバリル、クロルデン、オキシクロルデン、1,2−ジブロモ−3−クロロプロパン、DDT、DDE、DDD、アルドリン、エンドリン、ディルドリン、ヘプタクロロエポキサイド、エストロゲン、マラチオン、ニトロフェン、トキサフェン、トリブチルスズ、トリフェニルスズ、トリフルラリン、ノニルフェノール、4−オクチルフェノール、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチル、2,4−ジクロロフェノール、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ベンゾフェノン、4−ニトロトルエン、オクタクロロスチレン、アンディカーブ、ジペルメトリン、ペルメトリン、ピンクロゾリン、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジプロピル、スチレンの2,3量体、n−ブチルベンゼン、アゾベンゼンなどが挙げられる。また、本発明における星型ポリマーに付与された金属捕集性により、本発明のポリマーブレンドを用いた液中物質移動材料が捕集し得る金属としては、例えばニッケル、クロム、金、白金、銀、銅、バナジウム、コバルト、鉛、亜鉛、水銀、カドミウム等が挙げられる。
捕集される目的物質を含み、または目的物質が放出される溶液としては、例えば水、アルコール類、アセトン、アセニトリル等から選択される1種または2種以上の混合溶液が挙げられる。目的物質を放出させる溶液は、目的物質との親和性(溶解性)に応じて選択することが好ましく、例えば目的物質が環境ホルモン類の場合、溶解性の高いアルコール類やアセトニトリルが適当である。
【0044】
目的物質の捕集と放出に関する具体的な方法を以下に例示する。
浸漬条件としては、材料全体に分散または溶解している星型ポリマーまで溶液を到達させるため、母材となる親水性ポリマーが完全に膨潤するまで浸漬することが望ましい。浸漬の程度は用いるポリマーの親水性のほか、材料の形状に応じて適宜決定する。例えば、直径1mm程度のポリビニルアルコール繊維の場合、内部全体が膨潤するまで、通常、約1時間程度の浸漬が必要となる。
分離方法としては、凝集剤の添加、遠心分離などによるポリマーの凝集沈殿による分離等、従来の分離方法を採用することも可能であるが、本発明のポリマーブレンドによれば、粒状物、繊維、フィルム、ゲル又はシート等、様々な形態をとることができるので、浸漬したポリマーブレンド(液中物質移動材料)を被処理液から引き出すことにより、容易に被処理液から目的物質を包接したポリマーブレンド(液中物質移動材料)を分離することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって、本発明をさらに具体的に説明する。実施例中の各特性の分析は、下記方法に従って行なった。

(1)重量平均分子量、数平均分子量および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、ポリスチレンゲル換算のゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)で測定した[RI検出器、カラム(東ソー(株)製TSKgelカラムG−2000HXL+3000HXL+4000HXL)、溶離液はクロロホルム]。
(2)星型ポリマーの分子量は、光散乱検出器を接続したゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)であるGPC−MALLS(Wyatt Technology社製)を使用して測定した。
GPC−MALLSにより測定した重量平均分子量がGPCにより測定した重量平均分子量よりも大きいことは、ポリマーが分枝の多いコンパクトな構造を有することを意味する[多角度光散乱検出器、カラム(昭和電工(株)製ShodexカラムGPC K−806L×3本)、溶離液はクロロホルム]。
枝の数fは、次式に従って求めた。
f(枝の数)=(アルケニルエーテルモノマーの重量画分)×[Mw(星)]/[Mw(枝)]
(3)粒径は、動的光散乱(DLS)(大塚電子(株)製)により解析した。
(4)環境ホルモン類の捕集性及び放出性は、紫外可視分光光度計(日立製作所製 U−1800)及び液体クロマトグラフィー[UV検出器、RI検出器、カラム(GL Sciences社製Inertsil ODSカラム、または、Polymer Laboratories社製PL aquagel-OH MIXEDカラム)溶離液はアセトニトリル50%水溶液]を用いて、捕集及び放出を行った溶液の環境ホルモン濃度の変化を測定することにより評価した。
(5)金属類の捕集性は、ICP発光分析装置(島津製作所製ICPS−8000)を用いて、捕集実験を行った溶液の金属濃度変化を測定することにより評価した。
【0046】
(メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)を枝部に持つ星型ポリマーの合成)

三方活栓をつけたガラス反応容器を窒素ガス気流下で加熱し、容器内を十分乾燥させた。窒素雰囲気下、容器内にメトキシエチルビニルエーテル(2.0M)、酢酸エチル(1.0M)、1−イソブトキシエチルアセテート(10mM)およびトルエンを入れ、全体を4.5mLとし、0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mMヘキサン溶液0.50mL(20mM)を加えて、重合を開始した。約1時間後、メトキシエチルビニルエーテルの重合度200であるリビングポリマーに、生長種1当量に対して10当量(r=10)の1,4−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサンを添加して、反応を12時間続けた。
【0047】
リビングポリマー(重合度200)の分子量および分子量分布は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン標準サンプルで分子量を校正した。生成ポリマーの重量平均分子量は2.4×10、数平均分子量2.0×10、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は1.2であった。1,4−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサンを添加後、12時間で得られたポリマーの重量平均分子量は24×10、数平均分子量20×10、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は1.2であった。また、GPC曲線には、枝ポリマー(長さ200量体)つまり出発原料の線状ポリマーのピークが完全に消失し、定量的に、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.2と非常に狭いポリマーが得られた。また、得られたポリマーの重量平均分子量を、光散乱検出器を接続したGPCであるGPC−MALLSにより測定したところ、30×10となり、それに基づいて求めた枝の数は13であり、粒径は約10nmであった。
さらに、通常のGPCによる重量平均分子量は24×10であり、GPC−MALLSによる重量平均分子量に比べて小さい。このことから得られたポリマーは分枝の多いコンパクトな構造をもつことが明らかである。さらに、粒径の解析から、分子同士は会合せずに存在していることも明らかである。したがって、得られたポリマーは星型ポリマーである。
【0048】
[実施例1]
(メトキシエチルビニルエーテル(重合度200)星型ポリマー/ポリビニルアルコール(MOVE200-star/PVA)ブレンドゲル及びブレンド繊維の調製)

MOVE200-starを実施例1の方法により作製した。PVAは和光純薬工業株式会社製ポリビニルアルコール(平均重合度約2000、けん化度98mol%以上)を使用した。
ジメチルスルホキシド24mlにポリビニルアルコール2gを約95℃で溶解させた。十分に溶解した後、濃度1wt%のMOVE200-star水溶液を16ml加え30分攪拌した。混合溶液を適当な型に移し、−10℃で一昼夜放置しブレンドゲルを作製した。ゲル中のジメチルスルホキシドを取り除く為、アルコール浴中で置換した。置換後に延伸し乾燥させ、ブレンド繊維を作製した。(MOVE200-starはPVAに対して8wt%含有)
【0049】
[実施例2]
(MOVE200-star/PVAブレンド繊維によるビスフェノールAの捕集)

ビスフェノールA水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させた実施例1で得たMOVE200-star/PVAブレンド繊維(約100mg)を浸漬させた。1時間後にブレンド繊維を取り出し、水溶液中のビスフェノールAの濃度を液体クロマトグラフィーで測定したところ、ブレンド繊維を浸漬させた場合は6.0ppmにまで減少した。
【0050】
[比較例1]
(PVA繊維によるビスフェノールAの捕集)

ビスフェノールA水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させたPVA繊維(約100mg)を浸漬させた。1時間後にPVA繊維を取り出し、水溶液中のビスフェノールAの濃度を液体クロマトグラフィーで測定したところ18.0ppmであった。
【0051】
[実施例3]
(MOVE200-star/PVAブレンド繊維によるビスフェノールAの捕集、放出の繰り返し(その1))

実施例2と同様に、ビスフェノールA水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させた実施例1で得たMOVE200-star/PVAブレンド繊維(200mg)を浸漬させた。1時間後にブレンド繊維を取り出し、水溶液中のビスフェノールAの濃度を液体クロマトグラフィーで測定したところ6.08ppmであった。
その後、取り出したブレンド繊維を、アセトニトリル水溶液(50%、3ml)に浸漬させて、ブレンド繊維が捕集したビスフェノールAをアセトニトリル水溶液中に放出させた。アセトニトリル水溶液中のビスフェノールA濃度を液体クロマトグラフィーで測定したところ16.35ppmであった。
【0052】
その後、ブレンド繊維を乾燥させて、同様の試験(捕集、放出)を繰り返したところ、以下のようになった。
1回目捕集:25ppm→ 6.08ppm
1回目放出: 0ppm→16.35ppm
2回目捕集:25ppm→ 5.79ppm
2回目放出: 0ppm→17.07ppm
3回目捕集:25ppm→ 5.45ppm
3回目放出: 0ppm→15.47ppm
【0053】
[実施例4]
(MOVE200-star/PVAブレンド繊維によるビスフェノールAの捕集、放出の繰り返し(その2))

捕集溶液中のビスフェノールA濃度を25ppmから以下のように変更したこと以外は実施例3と同様にして、MOVE200-star/PVAブレンド繊維によるビスフェノールAの捕集、放出の繰り返し実験を行った。
1回目捕集:50ppm→ 8.19ppm
1回目放出: 0ppm→34.39ppm
2回目捕集:10ppm→ 1.76ppm
2回目放出: 0ppm→ 7.81ppm
3回目捕集: 5ppm→ 0.87ppm
3回目放出: 0ppm→ 3.39ppm
【0054】
[実施例5]
(MOVE200-star/PVAブレンド繊維によるベンゾフェノンの捕集)

ビスフェノールAに替えてベンゾフェノン(25ppm)を捕集溶液に溶解させたこと以外は実施例2と同様にして、MOVE200-star/PVAブレンド繊維を用いた液中物質捕集実験を行った。その結果、25ppmであったベンゾフェノン濃度が15.2ppmに減少した。
【0055】
[比較例2]
(PVA繊維によるベンゾフェノンの捕集)

ベンゾフェノン水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させたPVA繊維(約100mg)を浸漬させた。1時間後にPVA繊維を取り出し、水溶液中のベンゾフェノン濃度を液体クロマトグラフィーで測定したところ20.8ppmであった。
【0056】
[実施例6]
(MOVE200-star/PVAブレンド繊維によるノニルフェノールの捕集)

捕集溶液にビスフェノールAに替えてノニルフェノール(6ppm)を溶解させたこと以外は実施例2と同様にして、MOVE200-star/PVAブレンド繊維を用いた液中物質捕集実験を行った。その結果、6ppmであったノニルフェノールが、1ppm以下に減少した。
【0057】
[実施例7]
(MOVE200-star/PVAブレンド繊維による銅の捕集)

銅水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させた前記MOVE200-star/PVAブレンド繊維(約100mg)を浸漬させた。1時間後にブレンド繊維を取り出し、水溶液中の銅の濃度をICP発光分析装置で測定したところ、銅の濃度は10.3ppmに減少した。
【0058】
[実施例8]
(MOVE200-star/PVAブレンド繊維によるニッケルの捕集)

ニッケル水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させた前記MOVE200-star/PVAブレンド繊維(約100mg)を浸漬させた。1時間後にブレンド繊維を取り出し、水溶液中のニッケルの濃度をICP発光分析装置で測定したところ、ニッケルの濃度は13.5ppmに減少した。
【0059】
[実施例9]
(MOVE200-star/PVAブレンド繊維によるコバルトの捕集)

コバルト水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させた前記MOVE200-star/PVAブレンド繊維(約100mg)を浸漬させた。1時間後にブレンド繊維を取り出し、水溶液中のコバルトの濃度をICP発光分析装置で測定したところ、コバルトの濃度は12.3ppmに減少した。
【0060】
[実施例10]
(MOVE200-star/酢酸セルロースブレンドフィルムの調製)

酢酸セルロース(和光純薬工業株式会社製)1g、およびMOVE200-star(実施例1の方法により作製)100mg(酢酸セルロースに対して10wt%)をアセトン30mlに溶解させた。十分に溶解した後、溶液をシャーレに移し、50℃の乾燥機で(凡そ一日)乾燥させ、ブレンドフィルムを作製した。
【0061】
[実施例11]
(MOVE200-star/酢酸セルロースブレンドフィルムによるビスフェノールAの捕集)

ビスフェノールA水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させた前記MOVE200-star/酢酸セルロースブレンドフィルム(約200mg)を浸漬させた。1時間後にブレンド繊維を取り出し、水溶液中のビスフェノールAの濃度を液体クロマトグラフィーで測定したところ、ビスフェノールAの濃度は9.13ppmに減少した。
【0062】
[比較例3]
(酢酸セルロースフィルムによるビスフェノールAの捕集)

ビスフェノールA水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させた酢酸セルロースフィルム(約200mg)を浸漬させた。1時間後に同フィルムを取り出し、水溶液中のビスフェノールAの濃度を液体クロマトグラフィーで測定したところ、ビスフェノールAの濃度は21.23ppmであった。
【0063】
[実施例12]
(メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)とエトキシエチルビニルエーテル(EOVE)を枝部に持つ星型ポリマーの合成)

三方活栓をつけたガラス反応容器を窒素ガス気流下で加熱し、容器内を十分乾燥させた。窒素雰囲気下、容器内にメトキシエチルビニルエーテル(0.6M)、酢酸エチル(1.0M)、1−イソブトキシエチルアセテート(10mM)およびトルエンを入れ、全体を4.5mLとし、0℃に冷却した後、(CHCH1.5AlCl1.5の200mMヘキサン溶液0.50mL(20mM)を加えて、重合を開始した。1時間10分後、メトキシエチルビニルエーテルの重合度60であるリビングポリマーに、エトキシエチルビニルエーテル(0.6M)を加えた。さらに1時間10分後、生長種1当量に対して10当量(r=10)の1,4−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサンを添加して、反応を23時間40分続けた。
【0064】
ブロックポリマーの分子量および分子量分布は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン標準サンプルで分子量を校正した。生成ポリマーの数平均分子量0.80×10、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は1.2であった。エトキシエチルビニルエーテル添加後、得られたポリマーの数平均分子量は1.32×10、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は1.14であった。1,4−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサンを添加後、23時間40分で得られたポリマーの数平均分子量は23.0×10であった。
【0065】
(メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)とエトキシエチルビニルエーテル(EOVE)を枝部に持つ星型ポリマー/PVAブレンド繊維によるビスフェノールAの捕集)

ビスフェノールA水溶液(25ppm、3ml)中に乾燥させた前記のメトキシエチルビニルエーテル(MOVE)とエトキシエチルビニルエーテル(EOVE)を枝部に持つ星型ポリマー/PVAブレンド繊維(約100mg)を浸漬させた。1時間後にブレンド繊維を取り出し、水溶液中のビスフェノールAの濃度を液体クロマトグラフィーで測定したところ、ビスフェノールAの濃度は10.24ppmにまで減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
星型ポリマーと親水性ポリマーを含んで成るポリマーブレンド。
【請求項2】
星型ポリマーは、親水性ポリマーを含むマトリックス中に分散または溶解されて成る請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
前記星型ポリマーは、アクリル酸エステル系モノマー、アクリルアミド系モノマー、アルキレンオキシド系モノマー、スチレン系モノマー及びアルケニルエーテル系モノマーよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマー単位を主成分として構成されたポリマーである請求項1又は2に記載のポリマーブレンド。
【請求項4】
前記星型ポリマーは、アルケニルエーテル星型ポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーブレンド。
【請求項5】
前記アルケニルエーテル星型ポリマーは、一般式(I):
CHR=CH(OR) (I)
[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは1価の有機基を示す。]
で表されるアルケニルエーテルをモノマー単位とする一般式(II):
−(CHR−CH(OR))− (II)
[式中、RおよびRは一般式(I)にて示されるものと同じである。]
で表される繰り返し単位を有するリビングポリマーを枝とする星型ポリマーである、請求項4に記載のポリマーブレンド。
【請求項6】
前記アルケニルエーテル星型ポリマーは、一般式(I):
CHR=CH(OR) (I)
[式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは1価の有機基を示す。]
で表される少なくとも2種のアルケニルエーテルをモノマー単位とする一般式(II):
−(CHR−CH(OR))− (II)
[式中、RおよびRは一般式(I)にて示されるものと同じである。]
で表される少なくとも2種の繰り返し単位を有するブロックまたはランダムコポリマーを枝とする星型ポリマーである、請求項4または5に記載のポリマーブレンド。
【請求項7】
前記一般式(I)で表されるアルケニルエーテルが、
CH=CH(OCH−CH−OCH)、
CH=CH(OCH−CH−OC)、
CH=CH(OCH−CH−OCH
CH=CH(OCH−CH−OC
CH=CH(OCH−CH−OC)、
CH=CH(OCH−CH−OC−CH)、
CH=CH(OCH−CH−OC−C)、および
CH=CH(OR
[式中、Rは炭素数10〜18の直鎖、分枝または環状のアルキル基を表す。]
よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4〜7のいずれかに記載のポリマーブレンド。
【請求項8】
前記アルケニルエーテル星型ポリマーは、一般式[III]:
CHR=CH−O−R−O−CH=CHR [III]
[式中、RおよびRはそれぞれ水素原子またはメチル基を示し、Rはシクロヘキサン環を有する2価の有機基を示す。]
で表されるジアルケニルエーテルの架橋ポリマー[IV]を核とする請求項4〜6のいずれかに記載のポリマーブレンド。
【請求項9】
前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びポリアルキレンオキシドよりなる群から選択される請求項1〜8のいずれかに記載のポリマーブレンド。
【請求項10】
前記親水性ポリマーは、共重合体である請求項1〜9のいずれかに記載のポリマーブレンド。
【請求項11】
前記親水性ポリマーは、架橋体である請求項1〜10のいずれかに記載のポリマーブレンド。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンドを含んで成る液中物質移動材料。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンドを含んで成る粒状物、繊維、フィルム、ゲル又はシートとしての液中物質移動材料。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーブレンドが支持体の少なくとも一部にコーティングされて成る液中物質移動材料。
【請求項15】
ドラッグデリバリーシステム基材としての請求項12〜14のいずれかに記載の液中物質移動材料。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれかに記載の液中物質移動材料を、目的物質を含有する被処理液中に浸漬させ、次いで、所定時間経過後に該液中物質移動材料を被処理液から分離し、該液中物質移動材料中に目的物質を捕集することを含んで成る液中物質移動方法。
【請求項17】
請求項12〜15のいずれかに記載の液中物質移動材料に目的物質を取り込ませ、次いで、該液中物質移動材料を液中に浸漬させ、該液中に目的物質を放出させることを含んで成る液中物質移動方法。
【請求項18】
目的物質の捕集と放出を繰り返し行うことを特徴とする請求項16または17に記載の液中物質移動方法。

【公開番号】特開2006−70094(P2006−70094A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252507(P2004−252507)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(599100198)財団法人 滋賀県産業支援プラザ (12)
【Fターム(参考)】