説明

ポリマーメルト添加剤組成物およびその使用

本発明は、ホストポリマーの溶融加工において添加剤として使用される粉末の形態のポリマーメルト添加剤組成物を提供し、そのポリマーメルト添加剤組成物は、フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンの粒子と、フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンの前記粒子の凝集を防ぐのに有効な量のフルオロサーモプラストとを含有する。このポリマーメルト添加剤組成物は、ホストポリマーの溶融強度を向上させ、かつ粉末状態で取り扱うのが容易であることが見出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブリル化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むポリマーメルト添加剤組成物に関する。特に、本発明は、PTFE粒子の早すぎるフィブリル化または凝集を防ぐ、ポリマーメルト添加剤組成物に関する。さらに、本発明は、ホストポリマーの溶融加工におけるポリマーメルト添加剤組成物の使用に関する。本発明はさらに、ポリマーメルト添加剤組成物と熱可塑性ホストポリマーとの混合物、ならびにそれで製造される押出し品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ホストポリマーとして、一般に非フッ素化ホストポリマーのためのメルト添加剤であるフルオロポリマーの使用は、当技術分野でよく知られている。一般に、フルオロポリマーメルト添加剤は、ホストポリマーの溶融加工を向上させるために使用されている。例えば、フルオロポリマーメルト添加剤は、押出し物に表面粗さが生じることなく、またはメルトフラクチャーが生じることなく、ホストポリマーの押出し成形速度を増加するために使用される。
【0003】
熱可塑性ポリマーの押出し成形で生じる他の問題を防ぐ、または軽減するために、フルオロポリマーが使用される。かかる問題としては、例えば、ダイのオリフィスでのポリマーの付着(ダイ・ビルドアップまたはダイの垂れ落ちとして知られる)、押出し成形実施中の背圧の上昇、および高い押出し成形温度が原因のポリマーの過剰な劣化または低い溶融強度が挙げられる。装置を清浄にするためにプロセスを停止しなければならないため、またはプロセスを低い速度で行わなければならないために、これらの問題によって、押出し成形プロセスが遅くなる。
【0004】
特定のフルオロカーボン加工助剤は、押出し成形可能な熱可塑性炭化水素ポリマーのメルト欠陥(melt defect)を一部軽減し、より早い、より効率的な押出し成形を可能にする。例えば、Blatzの(特許文献1)は溶融押出し成形可能な炭化水素ポリマーにおけるフルオロカーボンポリマー加工助剤の使用について最初に記載されたものであり、そのフッ素化ポリマーは、少なくとも1:2のフッ素対炭素原子比を有するフッ化オレフィンのホモポリマーおよびコポリマーであり、かつフルオロカーボンポリマーは、炭化水素ポリマーの特性と同様なメルトフロー特性を有する。
【0005】
(特許文献2)(Chapman,Jr.ら)には、(1)困難な溶融加工性ポリマーの溶融加工温度で、結晶質である場合には溶融状態であり、または非晶質である場合には、そのガラス転移温度を超える、フルオロカーボンコポリマーと、(2)そのモル比が少なくとも1:1である、少なくとも1種類のテトラフルオロエチレンホモポリマーまたはテトラフルオロエチレンのコポリマーおよびそれと共重合性の少なくとも1種類のモノマーと、を含む、困難な溶融加工性ポリマーで使用されるフッ素化加工助剤であって、困難な溶融加工性ポリマーの溶融加工性温度で固体である加工助剤が記載されている。
【0006】
フルオロポリマーメルト添加剤組成物の使用の他の開示としては、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)および(特許文献11)が挙げられる。一般に、これらの開示内容は、ホストポリマーのより容易な押出し成形、つまりメルトフラクチャーを低減し、かつ/またはより高速で加工することを可能にすることに関するものである。
【0007】
フルオロポリマーメルト添加剤は、それらが添加されると熱可塑性ホストポリマーの機械的性質が向上するためにも使用されている。例えば、(特許文献12)には、10μm未満のサイズを有するPTFE粒子と有機ポリマー粒子との混合物が開示されている。かかる添加剤は、成形加工性を向上させ、熱可塑性ポリマーの機械的特性を向上させることが教示されている。
【0008】
熱可塑性ホストポリマーメルトへの添加剤としてのフィブリル化PTFEの使用によって、溶融強度が向上し、難燃性ポリマーが製造される。押出し成形ポリマー生成物が、PTFE繊維を含有し、それによって樹脂の垂れ落ち防止性(anti−dripping property)が得られることから、難燃性が一般に達成される。
【0009】
しかしながら、PTFEのフィブリル化特性もまた、PTFEメルト添加剤の取り扱いにおいて問題を示す。つまり、PTFEの凝集は避けられるべきである。したがって、一般には、PTFEがホストポリマーのメルトに添加される前、それに剪断応力をかけないように、またはそうでなければ、フィブリル化および/または凝集が起こるのを防ぐ低い温度で、フィブリル化PTFEを取り扱うべきである。このことは、製造プロセスを複雑にする。ホストポリマーの押出し成形中に、PTFEのフィブリル化を抑制することなく、PTFEの凝集を防ぐより良い方法を見出すことが望ましい。押出物の向上した溶融強度および難燃性の望ましい特性を達成するために、押出し成形中にフィブリル化が行われるほうがよい。
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,125,547号明細書
【特許文献2】米国特許第4,904,735号明細書
【特許文献3】米国特許第5,397,897号明細書
【特許文献4】米国特許第5,064,594号明細書
【特許文献5】米国特許第5,132,368号明細書
【特許文献6】米国特許第5,464,904号明細書
【特許文献7】米国特許第5,015,693号明細書
【特許文献8】米国特許第4,855,013号明細書
【特許文献9】米国特許第5,710,217号明細書
【特許文献10】米国特許第6,277,919号明細書
【特許文献11】国際公開第02/066544号パンフレット
【特許文献12】EP822226号明細書
【特許文献13】米国特許第4,558,141号明細書
【特許文献14】国際公開第01/27197号パンフレット
【特許文献15】米国特許第5,284,184号明細書
【非特許文献1】Rauwendaal,C.,「Polymer Extrusion」,Hansen Publishers,p.23−48,1986年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、本発明は、ホストポリマーの溶融加工において添加剤として使用されるポリマーメルト添加剤組成物、フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンと、フィブリル化ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)の凝集を防ぐのに有効な量のフルオロサーモプラストと、を含むポリマーメルト添加剤組成物を提供する。「凝集を防ぐ」という用語は、フィブリル化PTFEが、溶融加工へのホストポリマーの添加前のメルト添加剤組成物の製造中および取り扱い中に全く凝集しないこと、あるいは溶融強度を向上させる添加剤組成物の能力を実質的に損なう、または組成物の塊が形成される程度まで、粒子が凝集しないことを意味する。
【0012】
ポリマーメルト添加剤組成物は、ホストポリマーの溶融強度を向上することができることが分かっている。さらに、ポリマーメルト添加剤組成物は、フィブリル化PTFEのフィブリル化および/またはPTFE粒子の凝集に対して特別に注意する必要なく容易に取り扱うことができる。
【0013】
「ホストポリマー」という用語は一般に、溶融強度を向上することが望ましい、かつメルト添加剤組成物がそれと不相溶性である熱可塑性ポリマーを意味する。一般に、ホストポリマーは、非フッ素化ポリマーまたはフッ素原子と炭素原子との比が1:1未満であるようなフッ素化度を有するポリマーである。
【0014】
「フルオロサーモプラスト」という用語は、フルオロポリマー、つまりフッ素化主鎖を有し、かつ少なくとも1:1、好ましくは少なくとも1.5:1の主鎖におけるフッ素原子と炭素原子との比を有するポリマーを意味する。フルオロポリマーは熱可塑性であり、つまり、加熱すると溶融することができ、非フッ素化熱可塑性ポリマーに通常使用される溶融加工装置によって加工することができる。フルオロポリマーは、はっきりと識別可能な融点を有し、一般に半結晶性である。
【0015】
「フィブリル化PTFE」という用語は、ホストポリマーの溶融加工中にフィブリル化することができるポリテトラフルオロエチレンを意味する。
【0016】
他の態様において、本発明は、ホストポリマーと、前記ホストポリマーの溶融強度を向上させるのに有効な量の上記で定義されるポリマーメルト添加剤組成物と、の混合物に関する。
【0017】
さらに他の態様において、本発明は、前述の混合物の押出し成形およびそれから得られる押出物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
フィブリル化PTFEは一般に、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマーであるが、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE)などの他のフッ素化モノマー、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)などの過フッ素化ビニルエーテル、またはヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの過フッ素化オレフィンとTFEとのコポリマーであることもできる。しかしながら、フッ素化コモノマーの量は、メルトから加工できない高分子量ポリマーが得られるほど十分に低いほうがよい。これは一般に、ポリマーの溶融粘度は1010Pa.sを超えることを意味する。一般に、PTFEが、非溶融加工性PTFEを定義するISO 12086標準規格に準拠するように、任意のコモノマーの量は1%を超えない。TFEのかかるコポリマーは、改質PTFEとして当技術分野で公知である。
【0019】
フィブリル化PTFEは一般に、10μm以下の平均粒径(数平均)を有する。一般に、フィブリル化PTFEの平均粒径は、50nm〜5μm、例えば100nm〜1μmである。実際の範囲は、50〜500nmである。好都合なことに、フィブリル化PTFEは、水性乳化重合によって製造される。
【0020】
メルト添加剤組成物において使用されるフルオロサーモプラストは一般に、半結晶性フルオロポリマーである。一般に、フルオロサーモプラストは、ホストポリマーの加工に使用される溶融加工条件下でフルオロサーモプラストが溶融状態であるような融点を有する。本発明で使用するために一般に考慮に入れられるホストポリマーの多くが、範囲150〜320℃の溶融加工温度を有することから、融点100〜310℃を有するフルオロサーモプラスチックが、本発明で使用するのに一般に望ましい。好ましくは、フルオロサーモプラストは、100〜250℃の融点を有する。しばしば、フルオロサーモプラストは、200℃以下の融点を有する。
【0021】
フルオロサーモプラストは、フィブリル化PTFEの粒子の凝集を防ぐのに有効な量で使用される。有効な量は、通常の実験で当業者によって容易に決定することができる。一般に、有効な量のフルオロサーモプラストは、フィブリル化PTFEの重量を基準にして少なくとも10重量%の量である。メルト添加剤組成物中のPTFEの量を最大化することが一般に望ましい。というのは、ホストポリマーメルトに添加される場合に、メルト添加剤組成物におけるPTFEの量が高くなると、メルト添加剤組成物が、例えばホストポリマーの溶融強度の増加などの所望の効果を達成するのにより有効となるためである。メルト添加剤組成物におけるフルオロサーモプラストの量の実際の範囲は、フィブリル化PTFEの全重量を基準にして、少なくとも10重量%、例えば10〜60重量%、好都合なものは12〜50重量%、通常15〜30重量%である。
【0022】
メルト添加剤組成物において使用されるフルオロサーモプラストとしては、次式
RCF=CR2(I)
(式中、Rはそれぞれ独立して、H、F、Cl、炭素原子1〜8個のアルキル、炭素原子1〜8個のアリール、炭素原子3〜10個の環状アルキル、または炭素原子1〜8個のパーフルオロアルキルから選択される)の少なくとも1種類のフッ素化、エチレン性不飽和モノマー、好ましくは2種類以上のモノマーから誘導される共重合単位を含む、フルオロポリマーが挙げられる。R基は好ましくは、炭素原子1〜3個を含む。このモノマーにおいて、R基はそれぞれ、他のR基のそれぞれと同じであることができる。その代わりに、R基はそれぞれ、他のR基の1つまたは複数と異なることができる。
【0023】
フルオロポリマーは、少なくとも1種類の式Iモノマーと、次式:
12C=CR12(II)
(式中、R1がそれぞれ独立して、H、Cl、または炭素原子1〜8個のアルキル基、炭素原子3〜10個の環状アルキル基、または炭素原子1〜8個のアリール基から選択される)を有する少なくとも1種類の非フッ素化、共重合性コモノマーとの共重合から誘導されるコポリマーも含み得る。R1は好ましくは、炭素原子1〜3個を含有する。
【0024】
有用な式Iのフッ素化モノマーの代表的な例としては、限定されないが、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、2−クロロペンタフルオロプロペン、ジクロロジフルオロエチレン、1,1−ジクロロフルオロエチレン、およびその混合物が挙げられる。パーフルオロ−1,3−ジオキソールもまた使用することができる。パーフルオロ−1,3−ジオキソールモノマーおよびそのコポリマーが、(特許文献13)(Squires)に記載されている。
【0025】
式IIの有用なモノマーの代表的な例としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0026】
フルオロポリマーの詳細な例としては、ポリフッ化ビニリデン、2種類以上の異なる式Iのモノマーの共重合から誘導されるフルオロポリマー、および1種または複数種の式Iのモノマーと1種または複数種の式IIモノマーとから誘導されるフルオロポリマーが挙げられる。かかるポリマーの例は、フッ化ビニリデン(VDF)およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)から誘導される共重合単位を有するポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)およびTFE以外の少なくとも1種類の共重合性コモノマー少なくとも5重量%から誘導されるポリマー;である。この後者の種類のフルオロポリマーとしては、TFEおよびHFPから誘導される共重合単位のポリマー;TFE、HFPおよびVDFから誘導される共重合単位のポリマー;TFE、HFPおよび式IIのモノマーから誘導される共重合単位のポリマー;TFEおよび式IIのモノマーから誘導される共重合単位のポリマー;が挙げられる。
【0027】
フルオロサーモプラストは、公知の重合技術のいずれかによって製造することができるが、溶融加工可能な熱可塑性フルオロポリマーを得るには、水性乳化重合が一般に好ましい。
【0028】
メルト添加剤組成物は好ましくは、フィブリル化PTFEの水性分散液とフルオロサーモプラストの水性分散液とをブレンドし、混合分散液を凝固させ、続いて生成物を乾燥させることによって製造される。かかる方法は、例えば(特許文献14)に開示されている。かかる方法は、メルト添加剤組成物を製造すると同時に、PTFEのフィブリル化を防ぐという利点を提供する。しかしながら、PTFEとフルオロサーモプラストを乾燥ブレンドすることによって、メルト添加剤組成物を製造することも可能である。しかしながら、後者の場合には、ブレンド作業でかけられる剪断力によって、PTFEがフィブリル化しないように注意を払うべきである。したがって、次いで、フィブリル化を防ぐことができる低温で通常、ブレンドが行われる。PTFEを有効量のフルオロサーモプラストとブレンドすると、PTFEのフィブリル化は防止され、したがってメルト添加剤を従来の方法で取り扱うことができる。メルト添加剤組成物はさらに、特定の所望の特性を得るために他の補助剤を含有し得る。
【0029】
メルト添加剤組成物は、ホストポリマーの溶融加工で使用される。メルト添加剤組成物と共に使用されるホストポリマーとしては、メルト添加剤組成物がそれと不相溶性であるポリマーが挙げられる。一般に、ホストポリマーは、非フッ素化またはわずかにフッ素化された熱可塑性ポリマーである。
【0030】
多種多様なポリマーが本発明においてホストポリマーとして有用であり、炭化水素ポリマーおよび非炭化水素ポリマーのどちらも含まれる。有用なホストポリマーの例としては、限定されないが、ポリアミド、塩素化ポリエチレン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリ尿素、ポリ塩化ビニルなどのポリビニル樹脂、ポリアクリレートおよびポリメチルアクリレートが挙げられる。
【0031】
ホストポリマーの特に有用な種類はポリオレフィンである。本発明において有用なポリオレフィンの代表的な例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(3−メチルブテン)、ポリ(4−メチルペンテン)、およびプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクタデセンとエチレンとのコポリマーである。
【0032】
本発明において有用なポリオレフィンの代表的なブレンドは、ポリエチレンおよびポリプロピレンのブレンド、直鎖状または分岐状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、共重合性モノマーを含有するポリエチレンおよびオレフィンコポリマーであり、その一部
以下に記述される例えばエチレンおよびアクリル酸のコポリマー;エチレンおよびメチルアクリレートのコポリマー;エチレンおよびエチルアクリレートのコポリマー;エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマー;エチレン、アクリル酸およびエチルアクリレートのコポリマー;エチレン、アクリル酸、および酢酸ビニルのコポリマーである。
【0033】
ポリオレフィンは、オレフィンの単独重合または共重合によって得られ、かつ1種または複数種のオレフィンと、かかるオレフィンと共重合性である1種または複数種のモノマー、例えば酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物の約30%までまたはそれ以上、好ましくは20重量%以下とのコポリマーが製造される。オレフィンは、一般構造CH2=CHR(式中、Rは、水素またはアルキルラジカルであり、一般にそのアルキルラジカルは、10個以下、好ましくは1〜6個の炭素原子を含有する)によって特徴付けられる。代表的なオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンである。オレフィンと共重合性である代表的なモノマーとしては:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、およびクロロプロピオン酸ビニルなどのビニルエステルモノマー;アクリルおよびα−アルキルアクリル酸モノマーおよびそのアルキルエステル、アミド、およびニトリル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、およびアクリロニトリル;ビニルアリールモノマー、例えばスチレン、o−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、およびビニルナフタレン;ビニルおよびビニリデンハロゲン化物モノマー、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、および臭化ビニリデン;マレイン酸およびフマル酸のアルキルエステルモノマーおよびその無水物、例えばマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、および無水マレイン酸;ビニルアルキルエーテルモノマー、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、および2−クロロエチルビニルエーテル;ビニルピリジンモノマー;N−ビニルカルバゾールモノマー;およびN−ビニルピロリジンモノマーが挙げられる。
【0034】
有用なホストポリマーとしては、遊離カルボン酸基を含有する、オレフィンコポリマーの金属塩またはそのブレンドが挙げられる。前記カルボン酸ポリマーの塩を提供するために使用することができる金属の実例は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、ベリリウム、鉄、ニッケル、およびコバルトなどの1、2および3価金属である。
【0035】
有用なホストポリマーとしては、種々の熱可塑性ポリマーのブレンド、および酸化防止剤、光安定剤、充填剤、ブロッキング防止剤、顔料などの従来の補助剤を含有するそのブレンドも挙げられる。
【0036】
ホストポリマーは、粉末、ペレット、顆粒状、または他のいずれかの押出し成形可能な状態で使用される。本発明において有用な最も好ましいオレフィンポリマーは、エチレンおよびプロピレンのホモポリマー、またはエチレンおよび1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、プロピレン、酢酸ビニルおよびメチルアクリレートのコポリマーである。
【0037】
メルト添加剤組成物とホストポリマーとの混合物は、様々な方法のいずれかによって製造することができる。例えば、ホストポリマーおよびメルト添加剤組成物は、プラスチック産業で通常使用されるブレンド手段のいずれか、例えば配合ミル、バンバリーミキサー、またはフルオロポリマーがホストポリマー全体に均一に分散される混合押出機を使用して共に合わせることができる。メルト添加剤組成物およびホストポリマーは、例えば粉末、ペレット、または顆粒状生成物の形で使用される。その成分は一般に、粒子として固体状態で乾燥ブレンドされる。メルト添加剤組成物とホストポリマーとの混合物が、いわゆるマスターバッチとして使用される。かかるマスターバッチは一般に、必要とされるよりもかなり高い量でメルト添加剤組成物を含有し、そしてホストポリマーの溶融加工の際に純粋なホストポリマーで希釈される。いわゆるマスターバッチにおけるメルト添加剤組成物の量は、ホストポリマーの重量に対して2〜20重量%と様々であり、通常その量は5〜10%である。代替方法としては、ホストポリマーを溶融加工すると同時に、ホストポリマーのメルトにメルト添加剤組成物を直接添加することができる。
【0038】
ホストポリマーの溶融加工において所望の効果を得るために有効な量でメルト添加剤組成物が使用される。通常、その量は、ホストポリマーの溶融強度を適切に向上させるのに十分な量である。一般に、本明細書における有効な量とは、ホストポリマーとメルト添加剤組成物との混合物が、ホストポリマーの量を基準にしてフィブリル化PTFEを少なくとも500ppm含有するような量で、メルト添加剤組成物が使用されることを意味する。例えば、ホストポリマーとの混合物におけるメルト添加剤組成物の有効な量は、フィブリル化PTFEの量が、ホストポリマーの量を基準にして500〜50000ppm、好都合なものは800〜20000ppmまたは1000〜15000ppmであるような量である。
【0039】
ホストポリマーとメルト添加剤組成物との混合物は通常、温度180〜280℃で溶融加工されるが、最適な作業温度は、ブレンドの融点、溶融粘度、および熱安定性に応じて選択される。本発明の組成物を押出し成形するのに使用される異なる種類の押出機が、例えば(非特許文献1)に記載されている。押出機のダイのデザインは、製造される所望の押出し物に応じて異なる。例えば、その説明が参照により本明細書に組み込まれる(特許文献15)(Nooneら)に記載されるダイなど、燃料ラインホースにおいて有用な管材料を押出し成形するために、環状のダイが使用される。
【0040】
メルト添加剤組成物は、ホストポリマーの押出し成形において有用であり、例えば、フィルムの押出し成形、吹込み成形、射出成形、パイプ、ワイヤーおよびケーブルの押出し成形、真空成形、発泡成形およびカレンダー成形が挙げられる。メルト添加剤組成物は、難燃化樹脂およびそれをベースとする押出し品の製造において特に有用である。
【0041】
以下の実施例は、本発明のより良い理解を助けるために提供される。これらの実施例は、本発明のすべての実施形態の網羅的なまとめとして解釈すべきではなく、かつ必要以上に本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0042】
別段の指定がない限り、すべてのパーセンテージは重量によるものである。
【0043】
ポリマーメルト添加剤組成物の製造
ポリマーメルト添加剤組成物PM−1は、60%PTFE分散液(ダイニオン(Dyneon)(商標)TFX 5060)100mlを、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびフッ化ビニリデン(VDF)から誘導される反復単位を有する半結晶性熱可塑性フルオロポリマーの30%分散液(ダイニオン(Dyneon)(商標)THV 220D)100mlとブレンドすることによって製造された。ポリマーメルト添加剤組成物CM−1は、60%PTFE分散液(ダイニオン(Dyneon)(商標)TFX 5060)100mlを、ムーニー粘度36を有する、HFP(38%)およびVDF(62%)の非晶質フルオロポリマーの30%分散液100mlとブレンドすることによって製造された。比較用ポリマーメルト添加剤C−PMは、PTFEの60%分散液(ダイニオン(Dyneon)(商標)TFX 5060)から製造された。
【0044】
分散液を−20℃で一晩維持した。室温まで温めた後、混合物を凝固させた。凝固した混合物を濾過し、120℃で一晩乾燥させた。
【0045】
実施例1および比較例C−1〜C−3
実施例1および比較例C−1において、20gの乾燥ポリマーメルト添加剤PM−1およびCM−1をそれぞれ、ポリプロピレン(PP,エスコレン(Escorene)(商標)5012 F2;MFI:2.9;エクソンモービル社(ExxonMobil)から入手可能)180gとブレンドした。ローラーブレードを備えたHaake Rheomix(商標)ミキシングボウルを使用して、ブレンドを温度210℃で8分間溶融混合した。混合の間、Rheocord(商標)システム90トルクレオメーターでトルクをモニターした。PTFE(CM−2)20gとPPエスコレン(Escorene)(商標)5012 180gとのブレンド(比較例C−2)を使用して、かつポリマーメルト添加剤を含まないPPエスコレン(Escorene)(商標)5012(比較例C−3)を使用して、比較の測定を行った。8分後に記録された平衡トルク値を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
上記の表から分かるように、フルオロサーモプラストを使用した本発明によるポリマーメルト添加剤組成物は、溶融強度を向上させた。さらに、メルト添加剤組成物は、易流動性粉末であると思われ、PTFEの早すぎるフィブリル化が表れることなく、取り扱うのが容易である。非晶質の溶融加工可能な熱可塑性フルオロポリマーを使用したポリマーメルト添加剤組成物CM−1も、溶融強度を向上させるが、易流動性粉末ではないと考えられ、フィブリル化PTFEのみを含有するメルト添加剤組成物CM−2として取り扱うのは同様に難しい。
【0048】
実施例2および比較例C−4およびC−5
実施例2において、温度範囲220〜230℃および溶融温度230℃でBerstorff二軸スクリュー押出機を使用して、ポリマーメルト添加剤組成物とポリプロピレンを乾燥ブレンドし、配合した。
【0049】
実施例2では、PM−1 1%を含有する、アリステック(Aristech)PP 12MIとBP アモコ(Amoco)12MI PPとの50:50ブレンドを射出成形した。ポリマーメルト添加剤を使用せず、上記のPPブレンドから(C−4)、およびPTFE1%を有するPPブレンド(C−5)から比較例を製造した。
【0050】
Cincinnati Milacron−Fanuc Roboshot 110R number Robo110R−55を使用して、射出成形を完了した。射出成形領域温度は、230、220、220、210℃(溶融温度:216℃)に設定された。射出速度は2段階;12mmまで高射出速度90mm/秒、9mmでの射出パック移行(injection−pack transition)まで60mm/秒であった。射出成形の他のパラメーターは以下のとおりである:背圧100kg/cm2;RPM:100;射出サイズ63mm;冷却時間15秒;3秒間に450パック。使用した型は、長さ160mmおよび62mmのダンベル、125mm×幅12.5×3mmの屈曲棒(flex bar)、およびディスク3つ(直径62mm、25.5mmおよび8mm)を有する多数個取りTSM金型であった。すべてのキャビティは開いており、すべての成形品が単一ゲートにあった。金型温度は27℃に設定された。
【0051】
アレス(Ares)レオメーター(現在、TAインスツルメンツ社(TA Instruments))を使用して、貯蔵弾性率G’を測定した。射出成形された2.55cm×1.1mmのディスクを直径2.5cmの平行なプレートの間で窒素下にて240℃で分析した。試料ディスクを予め加熱しておいた(240℃で)プレートの間に置き、ギャップを1.1mに設定した。次いで、試料をプレートの直径に調整した。ギャップを1mmに減らし、メニスカス(meniscus)を形成した。平衡化して100秒後に、試験を開始した。ひずみ速度は10%で設定された。せん断速度は、0.1ラジアン/秒〜200ラジアン/秒と様々であった。各式について収集されたレオロジーのデータ(具体的には、貯蔵弾性率(G’))を1ラジアン/秒で比較した。
【0052】
その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
この結果から、PTFEとフルオロサーモプラストとのブレンドを含む、ポリマーメルト添加剤組成物を使用することによって、貯蔵弾性率G’が増加することが示された。ポリマーメルト添加剤中のフルオロケミカルのレベルは減少したが、より良い機械的性質が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンと、前記フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンの凝集を防ぐのに有効な量のフルオロサーモプラストと、を含むポリマーメルト添加剤組成物。
【請求項2】
前記フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンが、10μm以下の平均粒径を有する粒子の形態である、請求項1に記載のポリマーメルト添加剤組成物。
【請求項3】
前記ポリテトラフルオロエチレンが、非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレンである、請求項1に記載のポリマーメルト添加剤組成物。
【請求項4】
前記ポリマーメルト添加剤組成物が、フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンの前記粒子の全重量に対して、少なくとも10重量%の量で前記フルオロサーモプラストを含む、請求項1に記載のポリマーメルト添加剤組成物。
【請求項5】
前記フルオロサーモプラストが、100〜310℃の融解温度を有する、請求項4に記載のポリマーメルト添加剤組成物。
【請求項6】
前記フルオロサーモプラストの量が、前記フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンの前記全重量の10〜50重量%である、請求項4に記載のポリマーメルト添加剤組成物。
【請求項7】
前記フルオロサーモプラストが、250℃以下の融解温度を有する、請求項4に記載のポリマーメルト添加剤組成物。
【請求項8】
ホストポリマーをさらに含む、請求項1に記載のポリマーメルト添加剤組成物。
【請求項9】
ホストポリマーと、ホストポリマーの溶融強度を向上させるのに有効な量の請求項1に記載のポリマーメルト添加剤組成物との混和材料を押出し成形することを含む、ホストポリマーを溶融加工する方法。
【請求項10】
熱可塑性ホストポリマーと、前記ホストポリマーの溶融強度を向上させるのに有効な量の請求項1に記載のポリマーメルト添加剤組成物と、を含む混合物。
【請求項11】
前記ホストポリマーが、非フッ素化ポリマーである、請求項10に記載の混合物。
【請求項12】
前記非フッ素化ポリマーが、ポリオレフィンである、請求項10に記載の混合物。
【請求項13】
前記フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンが、10μm以下の平均粒径を有する粒子の形態である、請求項10に記載の混合物。
【請求項14】
前記フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンの量が、前記ホストポリマーの量を基準にして、500〜50000ppmである、請求項10に記載の混合物。

【公表番号】特表2007−536397(P2007−536397A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511386(P2007−511386)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/012833
【国際公開番号】WO2005/113669
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】