説明

ポリマー原料での膨張グラファイトの使用

比表面積が15〜30m2/gで、バルク密度が0.1g/cm3以下で、平均粒径が15μm以上である膨張したグラファイトの、ポリマー材料、特に熱可塑性ポリマーに、熱伝導性、電気伝導性および上記ポリマー材料の成形に適した流動特性を付与するための使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー原料、特に熱可塑性ポリマー中での膨張グラファイト(graphite expanse)の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、導電性複合材料は有機または無機のマトリックス中に分散した粒子を含んでいる。伝導閾値またはパーコレーション閾値(絶縁/導電遷移)は導電性粒子が複合材料全体を通して導電性の通路を形成するようになった時に達する。
【0003】
導電性粒子は電気伝導性に優れた金属にすることができるが、密度が高く、化学的環境に敏感であるという欠点がある。非金属粒子は密度が低く、化学抵抗性に優れるといった点で有利である。広く使われている非金属の導電性充填剤は炭素ベースの粉末生成物、例えばカーボンブラックまたは黒鉛微粉末および炭素繊維である。
【0004】
また、炭質充填剤、例えば炭素繊維、カーボンブラックまたはグラファイトや窒化硼素または窒化アルミも良好な熱伝導度性を有するということも公知である。そのため、これらの充填剤をポリマー・マトリックスに入れて熱伝導性を改良することも公知である。しかし、ポリマーは熱導性が極めて悪く、熱損失および/または熱交換を必要とする場合にはその用途が制限される。
【0005】
近年、カーボンナノチューブ(CNT)の使用か急速に増えている。その理由はナノチューブを組込んだ材料は熱電導性および電気電導性に優れ、場合によっては機械的性質もよくなるためである(特許文献1〜3参照)。
【0006】
カーボンナノチューブは多くの分野、特にエレクトロニクス、機械または電気機械の分野に用途を有する。エレクトロニクスの分野の複合材料では温度および構造によってカーボンナノチューブは導体、半導体、絶縁体になる。機械分野ではカーボンナノチューブは複合材料を補強するために使われる。これは、カーボンナノチューブが鋼より100倍強く、6倍軽いためである。電気機械分野ではカーボンナノチューブは電荷を注入することで膨張できるという利点がある。例えば、電子部品の包装、燃料ラインまたは静電防止塗料の製造用の高分子組成物、サーミスタ、スーパーキャパシター(supercapacitors)用電極中でのカーボンナノチューブの使用が挙げられる。
【0007】
しかし、上記のカーボンナノチューブ充填剤および金属充填剤はそれらを添加した材料の熱伝導度を(少なくともファクタ2だけ)増加させるためにはかなり高い含有量(>20重量%)を導入されなければならないという欠点がある。しかし、実際には、高含有量にすると得られた材料の性能に悪影響を及ぼすことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許第WO 91/03057号公報
【特許文献2】米国特許第US 5 744 235号明細書
【特許文献3】米国特許第US 5 445 327号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、低密度で且つ安価に熱的特性および電気的特性を良くする充填剤を見つけるというニーズが依然として存在している。しかも、その充填剤は従来法、例えば押出し成形または射出成形で製品に成形できるというバランスも必要である。
【0010】
ポリマー中に膨張したグラファイトを入れることで、カーボンナノチューブを入れた従来公知のものよりはるかに高い熱伝導性とカーボンナノチューブで得られるものと同程度の電気伝導性を有し、流動性が改良され、従って、当業者に周知の方法(射出成形、押出し成形等)で容易に成形できる材料を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象は、比表面積が15〜30m2/gで、バルク密度が0.1g/cm3以下で、平均粒径が15μm以上である膨張したグラファイトの、ポリマー材料、特に熱可塑性ポリマーに、熱伝導性、電気伝導性および上記ポリマー材料の成形に適した流動特性を付与するための使用にある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ポリアミドのリルサン(Rilsan、登録商標)AMNO TLDタイプをマトリックスとした時の熱伝導度の測定結果を示す図。
【図2】ポリエーテル-ブロック・アミドの ペバックス(Pebax、登録商標)の名称で市販(登録商標)5533タイプをマトリックスとした時の熱伝導度の測定結果を示す図。
【図3】ポリアミドのリルサン(Rilsan、登録商標)BMNO TLDタイプをマトリックスとした時の熱伝導度の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の上記以外の対象、観点および特数は下記の説明からより明らかになるであろう。
「膨張グラファイト(expanded graphite)」「膨張したグラファイト」という用語はグラファイトシート間の間隔を増加させるための処理をしたグラファイトを意味する。この処理で比表面積が増加し、バルク密度が低下する。本発明の膨張したグラファイトはBET(Brunauer、Emmett、Teller)で測定した比表面積が15〜30m2/gで、バルク密度(またはスコット密度)が0.1g/cm3以下で、平均粒径が15μm以上であるグラファイトである。
【0014】
本明細書で使用する記載「〜」は両端の限界値を含む。
BET(Brunauer、Emmett、Teller)比表面積」という用語は1グラム当たりの材料の表面積を意味する。この比表面積の測定は固形表面でのガス吸着量を測定する方法をベースにしており、ASTM規格 D6556およびISO規格9277:1995に記載されている。BET比表面積は20〜30m2/gであるのが好ましい。
【0015】
「バルク密度(bulk density)」(またはスコット密度)という用語は、マクロ、またはナノ-サイズの粒子間の空間を含む、粉末全体の密度を意味する。この密度は標準分析法、例えば、スコット体積計を使用した ASTM規格 B329およびISO規格3923-2:1981に詳細に記載された方法で測定できる。この密度は0.01〜0.09g/cm3であるのが好ましい。
【0016】
「平均粒径」という用語は50重量%の粒子がこの第1直径より小さい直径を有するような粒径を意味する。この寸法は種々の方法で測定できるが、例としてはレーザー粒度測定または篩分法が上げられる。この平均粒径は20〜500μmであるのが好ましい。
【0017】
本発明の膨張したグラファイトはティムカル(Timcal)社からBNB90の名称で市販のものにすることができる。
【0018】
本発明の熱可塑性ポリマーはアクリル酸およびアクリル酸エステルのホモポリマーおよびのコポリマー、ビニル重合体、芳香族および非芳香族ポリアミド(PA)、ポリエーテル-ブロックアミド(PEBA)、ポリカーボネート(PC)、官能化したまたは官能化していないポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリ(アリーレンエーテルケトン)(PAEK)および上記ポリマーのモノマーを主成分とするコポリマーの中から選択できる。
【0019】
上記ポリマー群の中でも下記ポリマーを上げることができる:
(1)アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのホモポリマーおよびコポリマー、例えばアルキルメタクリレート、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、メタクリル酸エチル、n−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミドおよびこれらの混合物、
(2)ビニルポリマー、例えばポリビニールアルコール、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(塩化ビニリデン)またはポリ(酢酸ビニル)または重合モノマーと少なくとも一つの共重合可能なモノマーとのコポリマー、例えばエチレン/酢酸ビニールコポリマー、
【0020】
(3)非芳香族ポリアミド(PA)、例えばホモポリアミド、例えばラウリルラクタム(PA 12)のホモポリアミド、11-アミノウンデカン酸ホモポリマー(PA 11)または異なるアミド単位のコポリマーまたはコポリアミド、例えばラクタム-6およびラクタム-12の重縮合によって得られるコポリアミド(PA 6/12)、デカンジアミンとセバシン酸(PA 10.10)の重縮合によって得られるホモポリアミドまたはヘキサンジアミンとドデカンジオン酸の重縮合によって得られるホモポリアミド(PA 6.12)。ポリアミドの命名法はISO規格1874-1:1992に記載の「プラスチック(ポリアミドPA)の成形および押出し原料、パート1:表示」に記載のもの、
【0021】
(4)芳香族ポリアミド、特にポリフタルアミド(PPAで表す)。ポリフタルアミドは式A/X.TおよびA/X.T/Yのあるのが好ましい。
ここで、Aはアミノ酸またはラクタム・タイプの脂肪族化合物を表し、Aはラウリルラクタムまたは11-アミノウンデカン酸(A=11または12)を表すのが好ましく、Xは4〜20の炭素原子を有する脂肪族ジアミンを表し、Xはデカンジアミン(X=10)を表すのが好ましく、Tはテレフタル酸を表し、Yは任意の脂肪族、脂環式または半芳香族ポリアミドを表す。ポリフタルアミドは1モルのX.T単位当たり0〜2モルのA単位を有し、ポリフタルアミドの全モル数に対して0〜50モル%のYを有するのが好ましい。
【0022】
重合の式はラウリルラクタム、デカンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合によって得られるコポリアミド(PA 12/10 .T)、11-アミノウンデカン酸、デカンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合によって得られるコポリアミド(PA 11/10 .T)、11-アミノウンデカン酸、ヘキサンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合によって得られるコポリアミド(PA 11/6 .T)、ヘキサンジアミン、テレフタル酸およびイソフタル酸の重縮合によって得られるコポリアミド(PA 6.I/6.T)、ドデカンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合によって得られるホモポリアミド(PA 12.T)および11-アミノウンデカン酸、デカンジアミン、ヘキサンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合によって得られるターポリマー(PA 11/10 .T/6.T)を含む。
【0023】
芳香族ポリアミドの中ではメタ-キシレンジアミン単独またはパラ-キシレンジアミンおよびセバシン酸との混合物の重縮合によって得られるホモポリアミド(PA MXD.10)を使用することもできる。
【0024】
(5)ポリアミド混合物、ポリエーテル-ブロック・アミド(PEBA)およびポリアミドおよびPEBA、
(6)ポリカーポネート(PC)、
(7)ポリオレフィン、例えばエチレンまたはプロピレンのコポリマー、例えばエチレン/プロピレン/ジエン・コポリマー、少なくとも一つのアクリルまたはビニルモノマーのコポリマー、例えばエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー、これらのポリオレフィンは官能化されていてもよく、従ってカルボキシル酸、酸無水物またはエポキシ基をさらに有していてもよい。
(8)フルオロポリマー、例えばポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー(ETFE)またはエチレン、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(EFEP)、
(9)ポリ(アリーレンエーテルケトン)(PAEKともよばれる)
(10)上記ポリマーのモノマーを含むコポリマー。
【0025】
ポリ(アリーレンエーテルケトン)(PAEK)は下記式の単位を有する:
(−Ar−X−)および(−Ari−Y−)
(ここで、ArおよびAr1は各々二価の芳香族ラジカルを表し、ArおよびArlは1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、4,4'-ビフェニレン、1,4-ナフタレン、1,5-ナフタレンおよび2,6-ナフタレンから選択するのが好ましい)。
【0026】
Xは電子求引性基を表し、カルボニルおよびスルホニル基から選択するのが好ましい。
Yは酸素原子、硫黄原子またはアルキレン基、例えば-CH2-およびイソプロピリデンから選択される基にするのが好ましい。
【0027】
これらの単位で、Y基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%はカルボニルであり、Y基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%は酸素原子を表すのが好ましい。好ましい実施例では、Xの100%はカルボニル基を表し、Yの100%は酸素原子を表す。
【0028】
ポリ(アリーレンエーテル・ケトン)(PAEK)は下記から選択するのが好ましい:
(1)下記式Iの単位を有するポリ(エーテルエーテル・ケトン)(PEEKともよばれる):

(2)下記式IIの単位を有するポリ(エーテルケトン)(PEKともよばれる):



(3)下記式IIIAの単位または式IIIBの単位およびこれらの混合物からなるポリ(エーテルケトン・ケトン(PEKKともよばれる):

(4)下記式IVの単位から成るポリ(エーテルエーテル)(PEEKKともよばれる):

【0029】
上記以外のカルボニル基と酸素原子との組合せも可能である。
本発明で使用するポリ(アリーレンエーテル・ケトン)は結晶質、半結晶質またはアモルファスにすることができる。
【0030】
使用する熱可塑性ポリマーはポリアミド、特にPA 11、PA 12、PA 11/10.T、PA 11/6.TおよびPA MXD.10であるのが好ましい。
【0031】
従って、上記定義の熱可塑性樹脂に上記定義の膨張したグラファイトを加えた組成物は下記から成る:
(1)(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸性エステルのホモポリマーおよびコポリマー、ビニル重合体、芳香族および非芳香族ポリアミド(PA)、ポリエーテル−ブロック−アミド(PEBA)、ポリカーボネート(PC)、官能化されていてもよいポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリ(アリーレンエーテルケトン)(PAEK)および上記ポリマーのモノマーを主として含むコポリマーの中から選択される少なくとも一つの熱可塑性ポリマー、
(2)BET比表面積が15〜30m2/gで、バルク密度が0.1g/cm3以下で、平均粒径が15μm以上である、組成物の総重量に対して1重量%の少なくとも一種の膨張したグラファイト。
本発明の膨張したグラファイトは組成物の総重量に対して1〜50重量%、好ましくは5〜35重量%含まれる。
【0032】
本発明組成物はさらに少なくとも一つの添加剤を含むことができる。この添加剤としては特に衝撃吸収剤(改良剤)、繊維、染料、光安定剤、特に紫外線安定剤および/または熱安定剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、膨張したグラファイト以外の充填剤、例えばタルク、ガラス繊維、顔料、金属酸化物または金属、表面活性剤、光沢剤、抗酸化剤、天然ワックスおよびこれらの混合物の中から選択できる。
【0033】
膨張したグラファイト以外の充填剤としては特にシリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、非膨張グラファイト、酸化チタンまたはガラスビーズを上げることができる。
【0034】
組成物中に存在する添加剤の含有量は組成物の総重量に対して一般に0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%であるのが好ましい。
【0035】
組成物は多層構造の形にすることができる。この多層構造は単一層構造でもよく,その場合には上記組成物のみから成る。多層構造は少なくとも2つの層から成る多層の構造でもよく、その場合には構造を形成する各種の層の少なくとも一つの層が上記組成物から成る。単一層でも多層でも、本発明の多層構造は繊維(例えば織布または不織布用)、フィルム、パイプ、シート、中空製品または射出成形品にすることができる。
【0036】
すなわち、熱伝導が必要な任意の部分を本発明組成物で製造することができる。従って、現在金属で作られた部分を本発明組成物に代えることができる。この交換によって既存構造の重さを減らすことができるという利点が得られる。
【0037】
上記定義の組成物は下記製造方法で製造できる。本発明製造方法では、膨張したグラファイトをポリマーマトリックス中に導入する。ブレンディング温度はマトリックスを形成するポリマーまたはポリマーの種類、官能基に依存する。このブレンディングは標準的な混合(コンパウンディング)装置、例えば共混練機または二軸押出機で実行できる。
【0038】
上記定義の組成物は自動車部品、射出成形部品(エンジン排気フードの下に配置されるのでもよい)の全部または一部の生産に使用でき、また、航空機分野で金属部品の代替品として、反応装置または熱交換機のコーティングの工業分野、エネルギ分野、熱を放散させる且つ軽量にする必要のある分野、特にパワーを増加させるために冷却を必要とする部品、光電池用、スポーツ器具または余暇機器、例えば熱の放散を必要とする履物、さらには、電気および電子部品で使用できる。
【0039】
これらの物品は上記組成物の少なくとも一つを射出成形、押出成形、共押出または加熱圧縮成形することで得られる。
【実施例】
【0040】
1:組成物の製造
a)インターナルミキサでの製造
ポリマーおよび下記充填剤をブラベンダー(Brabender)インターナルミキサでポリアミドの場合は260℃の温度で、ポリエーテル-ブロック・アミドの場合は240℃の温度で、50回転数/分で10分間混合した。
【0041】
テストしたポリマー
(1)アルケマ(Arkema)社からリルサン(Rilsan、登録商標)AMNO TLDの名称で市販のポリアミド PA 12、
(2)アルケマ(Arkema)社からペバックス(Pebax、登録商標)5533の名称で市販のポリエーテル−ブロック−アミド、
【0042】
テストした充填剤
(1)本発明による膨張したグラファイト(ティムカル(Timcal)社からBNB 90の名称で市販)
(2)アルケマ(Arkema)社からMB グラフィストレングス(Graphistrength、登録商標)の形で市販のナノチューブ(CNT)、
(3)ティムカル(Timcal)社からエナスコ(Ensaco)250Gの名称で市販のカーボンブラック
(4)炭素繊維、
(5)窒化アルミ
(6)窒化硼素
【0043】
下記の各種の組合せをテストした:
A)リルサン(Rilsan、登録商標)AMNO TLDタイプのポリアミド・マトリックスと下記の組合せ:
(1)ポリアミドマトリックス単独(充填剤なし)
(2)カーボンナノチューブ(CNT)
(3)ポリアミド・マトリックス+5%のカーボンナノチューブ(CNT)
(4)ポリアミド・マトリックス+10%のカーボンナノチューブ(CNT)
(5)ポリアミド・マトリックス+15%のカーボンナノチューブ(CNT)
(6)ポリアミド・マトリックス+20%のカーボンナノチューブ(CNT)
(7)ポリアミド・マトリックス+20%の本発明の膨張したグラファイト
(8)ポリアミド・マトリックス+18%の本発明の膨張したグラファイト
(9)ポリアミド・マトリックス+20%のカーボンブラック
(10)ポリアミド・マトリックス+20%の炭素繊維
(11)ポリアミド・マトリックス+20%の窒化硼素
(12)ポリアミド・マトリックス+10%の窒化硼素
(13)ポリアミド・マトリックス+20%の窒化アルミ
(14)ポリアミド・マトリックス+10%の炭素繊維+10%のカーボンナノチューブ(CNT)
(15)ポリアミド・マトリックス+10%の本発明の膨張したグラファイト+10%のカーボンナノチューブ(CNT)
(16)ポリアミド・マトリックス+10%の窒化アルミ+10%のカーボンナノチューブ(CNT)
【0044】
B)ペバックス(Pebax)5533タイプの名称で市販のポリエーテル-ブロック・アミド・マトリックスと下記の組合せ:
(1)ポリエーテル−ブロック−アミドマトリックス単独(充填剤なし)
(2)ポリエーテル−ブロック−アミドマトリックス+10%のカーボンナノチューブ(CNT)
(3)ポリエーテル−ブロック−アミドマトリックス+15%のカーボンナノチューブ(CNT)
(4)ポリエーテル−ブロック−アミドマトリックス+20%のカーボンナノチューブ(CNT)
(5)ポリエーテル−ブロック−アミドマトリックス+20%の本発明の膨張したグラファイト
(6)ポリエーテル−ブロック−アミドマトリックス+20%の炭素繊維
(7)ポリエーテル−ブロック−アミドマトリックス+20%の窒化アルミ
【0045】
得られた組成物を4mm厚さの一変が6×6cm2のプレートに圧縮成形した。プレートは下記条件下に製造した:230℃で4分間、プレートを加圧なしに予熱し、次いで100バールの圧力下で230℃で2分間加熱し、50バールの圧力下で3分間冷却する。
【0046】
b)共混練機を用いた製造
ポリマーと下記充填剤とから7つの組成物を製造した。各組成物はバス(Buss) 15D共混練機を使用して、280回転数/分で、スクリュー温度220℃、バーレル温度:240℃の温度プロファイルで製造した。
【0047】
テストしたポリマー
(1)アルケマ(Arkema)社からリルサン(Rilsan、登録商標)BMNO TLDの名称で市販のポリアミドPA 11
【0048】
テストした充填剤および添加剤
(1)本発明の膨張したグラファイト(ティムカル(Timcal)社からBNB 90の名称で市販)
(2)衝撃改良剤として使用したエチレンプロピレンコポリマーEPR(エチレン/プロピレン・ゴム)VA 1801、
(3)アルケマ(Arkema)社からペバックス(Pebax、登録商標)MX1205の名称で市販のポリエーテル-ブロック・アミド
(4)衝撃改良剤として使用したアルケマ(Arkema)社からMB Graphistrengthの形で市販のナノチューブ(CNT)
(5)ティムカル(Timcal)社からKS150の名称で市販の非膨張グラファイト
【0049】
リルサン(Rilsan、登録商標)BMNO TLDタイプのポリアミド・マトリックスと下記の各種組合せをテストした:
(1)ポリアミド・マトリックスリルサン(Rilsan、登録商標)BMNO+20%の本発明の膨張したグラファイト
(2)ポリアミド・マトリックス+20%の本発明膨張したグラファイト+10%のEPR VA 1801
(3)ポリアミド・マトリックス+20%の本発明膨張したグラファイト+15%のペバックス(Pebax、登録商標)MX1205
(4)ポリアミド・マトリックス+10%の本発明膨張したグラファイト
(5)ポリアミド・マトリックス+10%の本発明膨張したグラファイト+3%CNT
(6)ポリアミド・マトリックス+15%の本発明膨張したグラファイト
(7)ポリアミド・マトリックス+20%のティムカル(Timcal)社からKS150の名称で市販の非膨張グラファイト
【0050】
各組成物を射出成形して厚さ4mmの10×10cm2のプレートに成形した。フィード/ノズル射出温度は260/280℃にし、金型は60℃にした。
【0051】
2:熱伝導度の測定
製造した各プレートの熱伝導度の測定はThermoconcept社のHot Disk TPS 250を使用してHot Disk方で測定した。測定は下記ダイヤグラムで行った。
2−1)リルサン(Rilsan、登録商標)AMNO TLDタイプのポリアミドマトリックス([図1]参照)
2−2)ペバックス(Pebax、登録商標)5533タイプのポリエーテル−ブロック−アミド([図2]参照)
2−3)リルサン(Rilsan、登録商標)BMNO TLDタイプのポリアミド([図3]参照)
【0052】
上記の結果から、高分子マトリックス内に膨張したグラファイトが存在すると、従来の充填剤(カーボンナノチューブまたは非膨張グラファイト)で得られる熱伝導度より大きな熱伝導度を得ることができることが示された。
本発明の膨張したグラファイトは熱伝導度において他の炭質充填剤よりはるかに大きな効果を示す。例えばポリマーマトリックスに2%を導入した場合、同じマトリックスに10%のカーボンナノチューブを混合したときの熱伝導度に匹敵する熱伝導度が得られる。
【0053】
3:電気伝導率の測定
製造した各プレートの電気伝導率の測定は電極法で測定した。各電極は銀ラッカーで製造した。2つの電極間の表面抵抗を絶縁抵抗計を使用して測定した。測定値は下記の[表1]に示した。
【0054】
【表1】

【0055】
上記結果は、ポリマーマトリックス内に膨張したグラファイトが存在すると、カーボンナノチューブで得られるものと同じ電気伝導率(すなわち高度に満足な電気伝導率)を得ることができることを示している。
【0056】
4:溶融物の流れ特性の測定
実施例l.aで製造したいくらかの混合物の粘弾性挙動の測定は、Physica MCR301で管理したストレス・レオメータを使用して測定した。温度は260℃にセットした。1.35rad/sでの複合粘性率を下記[表2]に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
材料が流れ易くなる(低粘性になる)ほど、成形がより容易になる。上記の結果は、CNTを含む材料と比較して、本発明の膨張したグラファイトを含む材料は低周波での粘性が非常にわずかにしか増加しないことを示す。20%の膨張したグラファイトを含む材料は5%のCNTを含む材料で測定したものに匹敵する粘度を示す。
【0059】
結論
膨張したグラファイトを含む材料は他の炭質充填剤に比べて熱伝導度がはるかに大きく、電気伝導度はナノチューブのそれに匹敵し、流動性はそれよりはるかに良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が15〜30m2/gで、バルク密度が0.1g/cm3以下で、平均粒径が15μm以上である膨張したグラファイトの、ポリマー材料、特に熱可塑性ポリマーに、熱伝導性、電気伝導性および上記ポリマー材料の成形に適した流動特性を付与するための使用。
【請求項2】
熱可塑性ポリマーがアクリル酸およびアクリル酸エステルのホモポリマーおよびのコポリマー、ビニル重合体、芳香族および非芳香族ポリアミド(PA)、ポリエーテル-ブロックアミド(PEBA)、ポリカーボネート(PC)、官能化したまたは官能化していないポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリ(アリーレンエーテルケトン)(PAEK)および上記ポリマーのモノマーを主成分とするコポリマーの中から選択される請求項1に記載の使用。
【請求項3】
膨張したグラファイトが、熱可塑性ポリマーから成る組成物物の総重量に対して1〜50重量%、好ましくは5〜35重量%の含有量で存在する請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
熱可塑性ポリマーが芳香族および非芳香族のポリアミド、ポリエーテル−ブロック−アミドおよびポリ(アリーレンエーテルケトン)の中から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
熱可塑性ポリマーがラウリルラクタム(PA 12)のホモポリアミド、11-アミノウンデカン酸(PA 11)のホモポリアミド、ラウリルラクタム、デカンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合で得られるコポリアミド(PA 12/10.T)、11-アミノウンデカン酸、デカンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合によって得られるコポリアミド(PA 11/10.T)、11-アミノウンデカン酸、ヘキサンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合によって得られるコポリアミド(PA 11/6 .T)、ヘキサンジアミン、テレフタル酸およびイソフタル酸の重縮合によって得られるコポリアミド(PA 6.I/6.T)、ドデカンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合によって得られるホモポリアミド(PA 12.T)、11-アミノウンデカン酸、デカンジアミン、ヘキサンジアミンおよびテレフタル酸の重縮合によって得られるターポリマー(PA 11/10 .T/6.T)およびメタ-キシレンジアミン単独またはパラ-キシレンジアミンおよびセバシン酸(PA MXD.10)との混合物としての重縮合によって得られるホモポリアミドから選択される請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ポリ(アリーレンエーテル・ケトン)が下記(1)〜(4)の中から選択される請求項4に記載の使用:
(1)式Iの単位を含むポリ(エーテルエーテル・ケトン):

(2)式IIの単位を含むポリ(エーテルケトン):

(3)式IIIAの単位、式IIIBの単位およびこれらの混含むポリ(エーテルケトン・ケトン):

(4)式 IVの単位を含むポリ(エーテルエーテル・ケトン・ケトン):

【請求項7】
熱可塑性ポリマーおよび請求項1に記載の膨張したグラファイトから成る組成物物が、請求項1に定義の膨張したグラファイト充填剤以外に、ガラス繊維、染料、安定剤、可塑剤、衝撃吸収剤、界面活性剤、顔料、光沢剤、抗酸化剤、滑剤、難燃剤、紫外線安定剤、静電防止剤、天然ワックスおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一つの添加剤をさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
膨張したグラファイトがカーボンナノチューブで得られるものよりも改良された流動性を熱可塑性ポリマーに付与する請求項1に記載の使用。
【請求項9】
下記(1)と(2):
(1)請求項2および4〜6に定義の少なくとも一つの熱可塑性ポリマー、
(2)組成物物の総重量に対して少なくとも1重量%の製造1に定義の膨張したグラファイト、
の組成物物の、電子・電気部品、反応装置または熱交換塗料、スポーツ用品、自動車パーツまたは航空産業でのパーツの製造での使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509972(P2012−509972A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538032(P2011−538032)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052288
【国際公開番号】WO2010/061129
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】