説明

ポリマー合成に対する組合わせの戦略

【課題】多様ペプチドおよび多様オリゴヌクレオチドのような多様ポリマー配列の高密度アレーを合成する方法と装置の提供。
【解決手段】 基板上にポリマーの大きなアレーを形成する方法と装置。本発明の好ましい態様では、基板(401)を、チャンネル(409)を有するチャンネルブロック(407)と接触させる。選択された試薬を上記チャンネルを通じて送りこみ、基板を回転台(403)で回転させ、ついでこの工程を繰返して基板上にポリマーのアレーを形成させる。この方法は光による方法を組み合わせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本願は米国特許願第796,243号(1991年11月22日付け出願)および米国特許願第874,849号(1992年4月24日付け出願)に関連する出願であり、そしてこの両出願はすべての目的のために本願に援用するものである。
【0002】
本発明はポリマーの合成とスクリーニングの技術分野に関する。さらに具体的に述べると、本発明は一つの実施態様において、多様なポリマー配列のアレー(array)の改良合成法と改良合成装置を提供するものである。本発明の特別の態様によって、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドのような多様なポリマー配列の合成方法が提供される。この多様ポリマー配列は、例えば結合アフィニティーを決定するためのスクリーニング試験に用いることができる。
【背景技術】
【0003】
ペプチド配列のような所望のポリマー配列の合成方法は当該技術分野では公知である。オリゴヌクレオチドの合成方法は例えば Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approch, Gate編集、IRL Presss社 Oxford 1984年に見られる。
【0004】
なおこの文献はすべての目的のために全体を本願に援用するものである。いわゆる“メリフィールド”の固相ペプチド合成法は何年もの間普通に利用されており、Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85巻、2149〜2154頁、1963年に報告されている。なおこの文献はすべての目的のため本願に援用するものである。固相合成法はいくつかのペプチド配列を例えば多数の“ピン”上に合成するのに提供されている(例えばGeysenら、J. Immun. Meth., 102巻、259〜274頁、1987年参照。
【0005】
なおこの文献はすべての目的のため本願に援用するものである)。他の固相法としては、例えばカラム内に支持された異なるセルロースディスク上に各種のペプチド配列を合成する方法がある(FrankおよびDoring, Tetrahedon, 44巻、6031〜6040頁、1988年参照。この文献はすべての目的のため本願に援用する)。さらに他の固相法はHamillの米国特許第4,728,502号および国際特許願公開第W090/00626号(Beattie, 発明者)に記載されている。
【0006】
上記の各方法は、ポリマーの比較的低密度のアレーしか産生しない。例えばGeysenらの上記文献に記載されている方法は、標準の微量滴定用プレートの寸法で間隔を置いたピン上に96種のポリマーを産生するのに限定されている。
【0007】
ペプチド、オリゴヌクレオチドなどのポリマー配列の大きなアレーを短時間に製造する改良法が考案されている。特に注目すべきなのは Pirrungらの米国特許第 5,143,854号(また PCT特許願公開第WO90/15070号参照)およびFoderら、PCT特許願公開第WO92/10092号であり(これらの文献はすべて本願に援用する)、例えば光による合成法を用いてペプチドなどのポリマー配列の巨大なアレーを形成する方法が開示されている(Foderら、Science,251巻、767〜777頁、1991年も参照。この文献もすべての目的のために本願に援用するものである)。
【0008】
ポリマーアレーの合成を自動化するある種の研究が行われている。例えばSouthern,PCT特許願公開第WO89/10977号には、通常のペンプロッタ(pen plotter)を使って3種のモノマーを、基板上の12の別個の場所に堆積させることが記載されている。これらのモノマーは次に反応して、各々12個のモノマーの長さの3種のポリマーを生成した。また上記Southernの出願には、基板上にモノマーを堆積させるのにインクジェットプリンタを使用する可能性も記載されている。さらに先に引用したFodorらの PCT特許願には、VLSIPS(登録商標)の方法を行うのにコンピュータ制御システムを使用する優れた方法が記載されている。この方法を用いると、ポリマーの一つの非相同アレーが、多数の反応部位における同時のカップリングによって、異なる非相同のアレーに変換される。この方法は一般に“組合わせの(combinatorial)”合成法と呼ばれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
VLSIPS法はかなり成功した。しかし場合によっては、光を活性化因子として使用しないかまたは光だけを使用するのではない別の/追加のポリマー配列形成法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要約)
本発明は多様ペプチドおよび多様オリゴヌクレオチドのような多様ポリマー配列の高密度アレーを合成する方法と装置を提供するものである。さらに、本発明は化合物の利用可能なライブラリーを基板の特定の位置に送り込む(および場合によっては固定化する)方法と装置を提供するものである。好ましい実施態様では、各種のモノマーなどの反応物を単一の基板上の多数の反応部位に送り込み、そこでこれら反応物を平行して反応させる。
【0011】
本発明の好ましい実施態様によれば、一連のチャネル、溝またはスポットが基板上または基板に隣接して形成される。試薬は、チャネル、溝またはスポットを通じて選択的に流されるかまたはこれらチャネルなどの中に堆積され、異なる化合物を含有するアレーを形成し、そしていくつかの実施態様では基板上の選択された場所にいくつかのクラスの化合物を含有するアレーを形成する。
【0012】
本発明の第一の特別の態様では、その表面に溝のような一連のチャネルを有するブロックが利用される。そのブロックは誘導体化されたガラスなどの基板と接触させて配置される。第一ステップではピペッタなどの送り込み装置を用いて、選択された試薬をチャネルに接続された一連の開口の一つ以上に流入させるかまたは試薬をチャネル内に直接入れ、チャネルを第一試薬で満たして基板をストライプし(stripe)、第一群のモノマーをそれにカップリングさせる。第一群のモノマーは同種である必要はない。例えばモノマーAは第一群のチャネル内に入れてもよく、モノマーBは第二群のチャネル内に入れてもよくおよびモノマーCは第三群のチャネル内に入れてもよい。これらのチャネルには、その後いくつかの実施態様では追加の試薬を加え、追加のモノマーを第一群のモノマーにカップリングさせる。次にブロックは平行移動させるかまたは回転させて再び基板上に置き、この工程を第二の試薬に繰返し、第二群のモノマーを基板の異なる領域にカップリングさせる。この工程を、所望の配列と長さのポリマーの多様な組合わせが基板の上に形成されるまで繰返す。この工程によって、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドのような多様なモノマー配列を有する多数のポリマーが基板上の既知の場所に形成される。
【0013】
本発明の第二の態様では、一連の微小チャネルまたは微小溝が基板上、微小バルブの適切なアレーにそって形成される。これらのチャネルとバルブは誘導体化された表面上に選択された試薬を流動させるのに使用される。微小バルブは、特定のカップリングステップに対してどのチャネルを開くかを決定するのに使用する。
【0014】
したがって、本発明は、一つの実施態様として、単一の基板すなわち表面に複数の選択された領域を有する基板に多様なポリマー配列を形成する方法を提供するものである。この方法は次のようなステップで構成されている。すなわち、前記表面に隣接して複数のチャネルを形成し、そしてこれらのチャネルは少なくとも部分的に、前記の選択された領域の一部で形成された壁を有し;次いでチャネル中に選択された試薬を入れて、選択された領域の部分でポリマー配列を合成し、そしてその選択された領域の部分は、少なくとも一つの他の選択された領域内のポリマーとは異なるモノマーの配列を有するポリマーを合成しているステップで構成されている。別の実施態様では、チャネルまたは流路自体が選択された反応領域を形成している。例えばその基板は一連の隣接する平行なチャネルであり、各々がその中に反応部位をもっている。
【0015】
本発明は、第三の態様として、不活性領域によって互いに分離された不連続反応領域のアレーを有する基板を提供するものである。一つの実施態様では、第一モノマーの溶液を、適切に誘導体化された基板の第一組の反応領域上にスポット(spot)させる。次に、第二モノマーの溶液を第二組の領域上にスポットさせ、次いで第三モノマーの溶液を第三組の領域にスポットさせ、これを順に行って多数の領域各々に一つの種のモノマーを配置する。これらのモノマーを基板表面と反応させ、次にその基板を洗浄して、新しいセットのモノマーとの反応に備える。反応領域とモノマー溶液の各種のグループ分けを行い上記のステップを繰返すことによって、長さとモノマーの配列を制御された二量体、三量体および大ポリマーが製造される。別の実施態様では、アレーのポリマーなどの化合物が完全な種として領域内に送り込まれ、そのため上記のポリマー合成のステップは不要である。
【0016】
好ましい実施態様では、基板の表面上の複数の反応領域は、隣接する反応領域間で反応物が転移するのを防止する非湿潤領域のような閉じこめ領域で囲まれている。したがって一つの領域内の反応物は、他の領域に流入することはできず、その他の領域の反応を汚染することはない。ある好ましい実施態様では、アレーの領域は、光反応性の疎水性保護基を含有する基板表面に選択的に光を照射することによって形成される。表面に光が照射された領域の疎水性保護基は除去され、反応領域が形成される。水溶液などの極性反応物の溶液を反応領域内に堆積させると、その溶液は、基板面に対して比較的大きなぬれ角を有するので、堆積させる量を調節することによって、隣接領域へ流入しないよう保証することができる。
【0017】
本発明の特性と利点は、本明細書の後述の部分と添付図面を参照することによって一層よく理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
目次
I. 用語の説明
II . 一般事項
III. 試薬の機械的送り込み法
IV. 流動チャネルの実施態様
V. スポッティングの実施態様
VI. 別の実施態様
VII. 実施例
A.漏洩試験
B.YGGFLの形成
C.100ミクロンのチャネルブロック
D.チャネルマトリックスのハイブリッド形成検定
VIII. 結論
I.用語の説明 下記の用語は、本願で用いられる場合以下の一般的な意味をもっているものとする。
【0019】
1.リガンド:リガンドは受容体によって認識される分子である。本発明によって試験することができるリガンドの例としては、限定されないが、細胞膜受容体に対するアゴニストとアンタゴニスト、毒素と毒液、ウイルスのエピトープ、ホルモン、オピエート、ステロイド、ペプチド、酵素の基質、補因子、薬剤、レクチン、糖、オリゴヌクレオチド、核酸、オリゴ糖およびタンパク質がある。
【0020】
2.モノマー:モノマーは小分子のセットのメンバーであり、その小分子は共に連結しているかまたは連結可能で二つ以上のメンバーで構成されたポリマーまたは化合物を生成する。モノマーのセットとしては、限定されないが、例えば通常のL−アミノ酸のセット、D−アミノ酸のセット、合成および/または天然のアミノ酸のセット、ヌクレオチドのセットおよびペントースとヘキソースのセットがある。ポリマー内のモノマーの特定の定序(ordering)は本願ではポリマーの“配列”と呼ぶ。本願で用いる場合、モノマーという用語はポリマーの合成に用いる基本セットのメンバーを意味する。例えば、20個の天然産のL−アミノ酸の二量体はポリペプチドを合成するのに用いる400個のモノマーの基本セットを形成する。異なる基本セットのモノマーが、ポリマー合成のその後に続くステップで使用できる。さらにこれらのセットは各々、保護されたメンバーを含有し、このメンバーは合成後修飾される。本発明は、本願では主として、アミノ酸のようなモノマーの配列を有する分子の製造について説明されるが、他のポリマーを製造する場合にも容易に適用することができる。このようなポリマーとしては例えば、核酸、多糖、リン脂質、ならびにα―アミノ酸、β−アミノ酸もしくはω−アミノ酸を含有するペプチドの直鎖および環式のポリマー;上記のもののいずれかに公知の薬剤が共有結合しているヘテロポリマー;ポリヌクレオチド;ポリウレタン;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリ尿素;ポリアミド;ポリエチレンイミン;ポリアリーレンスルフィド;ポリシロキサン;ポリイミド;ポリアセテートなどのポリマーがあるが、本願の開示を見れば明らかになるであろう。上記のポリマーは、異なるモノマー配列を有するポリマーが基板の予め形成された異なる領域に形成されると、“多様”ポリマーになる。ポリマーの環化法およびポリマーのポリマー逆転法は、“POLYMER REVERSAL ON SOLID SURFACES”という名称で1991年11月22日付けで出願された同時係属出願の米国特許願第796,727号に開示されている。なおこの文献はすべての目的のために本願に援用するものである。
【0021】
3.ペプチド:ペプチドは、モノマーがα―アミノ酸でありそしてアミド結合で連結されているポリマーであり、ポリペプチドとも呼ばれる。アミノ酸はL−光学異性体またはD−光学異性体でもよい。ペプチドは2個以上のアミノ酸モノマーの長さであり、20個を越えるアミノ酸モノマーの長さの場合が多い。アミノ酸については標準の略語が使用される(例えばプロリンに対してはPを用いる)。これらの略語はStryer,Biochemistry,第3版、1988年に記載されている。なおこの文献はすべての目的のために本願に援用するものである。
【0022】
4.受容体:リガンドに対してアフィニティーをもっている分子である。受容体は天然産または人造の分子である。こららの分子は、その未変化の状態または他の種との凝集体として利用することができる。受容体は、結合メンバーに、直接にまたは特定の結合物質によって、共有結合または非共有結合によって結合することができる。本発明で利用できる受容体の例としては、限定されないが、抗体、細胞膜受容体、特定の抗原決定基と反応性のモノクローナル抗体と抗血清、ウイルス、細胞、薬剤、ポリヌクレオチド、核酸、ペプチド、補因子、レクチン、糖、多糖、細胞膜および細胞小器官がある。受容体は、当該技術分野では抗リガンドと呼ばれることがある。受容体という用語は本願で用いる場合、意味の差は全くない。“リガンド・受容体の対(Ligand Receptor Pair)”は二つの分子が分子の認識によって結合して複合体を形成する場合に形成される。
【0023】
本発明によって試験することができる受容体の具体例としては以下のものがある。
【0024】
a)微生物の受容体:微生物の生存に必須の特定の輸送タンパク質もしくは酵素のような微生物受容体に結合するリガンドを確認することは、新しいクラスの抗生物質を発見するのに有効な手段であろう。特に価値があるのは、現在使用中の抗生物質に対して耐性で日和見性の真菌、原虫および細菌に対する抗生物質である。
【0025】
b)酸素:例えば受容体は神経伝達物質の分解に関与する酵素のような酵素の結合部位をもっている場合がある。この種の受容体に対するリガンドが神経伝達物質を分解する酵素の作用を調節するのを確認することは神経刺激伝達の障害の治療に使用できる薬剤を開発するのに有用である。
【0026】
c)抗体:例えば本発明は、問題の抗原のエピトープと結合するリガンド結合部位を有する、抗体分子の受容体を試験するのに有用である。抗原エピトープに類似している配列が決定されると、免疫原が一つ以上の、かような配列に基づいているワクチンが開発されるようになるか、または例えば自己免疫症に対する関連診断剤または治療に有用な化合物(例えば“自己”抗体の結合を遮断することによる)が開発されるようになる。
【0027】
d)核酸:核酸の配列を合成して、合成された配列に対して受容体として作用するDNAもしくはRNAの結合配列を樹立することができる。
【0028】
e)触媒ポリペプチド:一つ以上の反応物の一つ以上の産物への変換に関与する化学反応を促進できるポリマー好ましくは抗体である。このようなポリペプチドは一般に、少なくとも1個の反応物もしくは反応中間体に対して特異的な結合部位およびその結合部位の近くに活性な官能性を有し、捕捉された反応物はこの官能性によって修飾することができる。触媒ポリペプチドなどは例えば、PCT特許願公開第WO90/05746号、同第WO90/05749号および同第WO90/05785号に記載されており、これらの文献はすべての目的のため本願に援用するものである。
【0029】
f)ホルモン受容体:インシュリンや成長ホルモンに対する受容体のような受容体に対して高いアフィニティーで結合するリガンドを確認することは、例えば糖尿病患者が糖尿病の症状を軽減するために摂取しなければならない毎日の注射剤の経口による代替品または成長ホルモンの代替品を開発するのに有用である。
【0030】
ホルモン受容体の他の例としては血管収縮ホルモン受容体がある。そしてこれらの受容体に対するリガンドを確認すると、血圧を制御する薬剤が開発されるようになる。
【0031】
g)オピエート受容体:脳内でオピエート受容体に結合するリガンドを確認することは、モルヒネおよび類縁薬剤の低中毒性代替品を開発するのに有用である。
【0032】
5.基板:剛性または判剛性の表面を有する材料である。多くの実施態様において、基板の少なくとも一つの表面は実質的に平坦であるが、いくつかの実施態様では、基板は、例えばウェル、浮き出た領域、エッチングを行ったトレンチなどで、異なるポリマーの合成領域を物理的に分離することが望ましい。いくつかの実施態様では、基板自体がウェル、トレンチ、流動領域などを備えており、これらが合成領域の全体または一部を形成している。他の実施態様では、小ビーズが基板の表面上に提供され、ビーズ上に合成された化合物は合成が完了した後に放出させる。
【0033】
6.チャネルブロック:その表面に複数の溝またはくぼんだ領域を有する材料である。その溝またはくぼんだ領域は各種の幾何学的形態をもっていてもよく、限定されないが縞形、環形、蛇行形、流路形などがある。チャネルブロックは種々の方法で製造することができ、シリコンブロックのエッチング、ポリマーの成形もしくは圧縮などの方法がある。
【0034】
7.保護基:モノマー単位に結合され、次にモノマー単位から選択的に除去され、例えば具体例のアミノ酸の場合のアミノ基のような活性部位を暴露する物質である。感光性保護基の具体例は、Fodorら、PCT特許願公開第WO90/10092号(すでに本願に援用されている)および1992年11月2日付けで出願された米国特許願第 号(代理人摘要番号11509−68、すべての目的のため本願に援用するものである)で考察されている。
【0035】
8.予め形成された領域(predefined region):予め形成された領域は基板上の局部的な領域であり、選択されたポリマーを形成するのに用いられるか、用いられたかまたは用いるのを目的とする領域である。そしてあるいは本願では“反応”領域、“選択された”領域または単に“領域”と呼ばれる。この予め形成された領域は便利な形態を有し、例えば円形、長方形、楕円形、くさび形などがある。いくつかの実施態様ではそれ故に各別個のポリマー配列が合成される領域は約1cmより小さく、好ましくは1mmより小さく、さらに好ましくは0.5mmより小さい。最も好ましい実施態様では、これらの領域は面積が約10,000μmより小さくまたはより好ましくは100μmより小さい。これらの領域の中で、本発明で合成されるポリマーは実質的に純品の形態で合成することが好ましい。
【0036】
9.実質的に純品:ポリマーは、他の予め形成された領域から区別する特性を示す場合、基板の予め形成された領域内で“実質的に純品”であると考えられる。一般に純度は、均一な配列の結果として、生物学的な活性もしくは機能によって測定される。かような特性は一般に選択されたリガンドまたは受容体と結合させる方法で測定される。その領域は、予め形成された領域内で優勢な種が望ましい配列であるように充分に純品であることが好ましい。本発明の好ましい態様によれば、ポリマーは純度が少なくとも5%、好ましくは10%を越えて20%まで、さらに好ましくは80%を越えて90%まで、最も好ましくは95%を越える。そしてこの目的のための純度は、予め形成された領域内で形成された所望の配列を有するリガンド分子の数、予め形成された領域内で形成された分子の合計数に対する比率を意味する。
【0037】
II.一般事項
本発明は各種の用途に使用することができる。例えば、本発明は、合成の手段(例えばペプチド合成の手段)として、スクリーニング手段(例えば薬剤の活性について化合物のライブラリーをスクリーニングする場合の手段)として、または監視/診断の手段(例えば医学もしくは環境の試験の手段)として使用することができる。一つの特定の実施態様で、本発明は核酸ベースの診断に用いられる。
【0038】
合成の手段として本発明は、多様の異なるポリマー配列のアレーを形成する。
【0039】
好ましい実施態様では、本発明は、基板の選択された領域内に異なるペプチドまたはオリゴヌクレオチドのアレーを合成する。多様な配列をその上に形成された、かような基板は、例えば、その多様な配列および抗体と核酸のような受容体の相互作用を評価するためのスクリーニング試験で使用することができる。例えば、好ましい実施態様で、本発明は、ペプチドをスクリーニングして、もしあれば、ペプチドの多様なセットのどれが受容体に対して強い結合アフィニティーをもっているかを確認し、および最も好ましい実施態様では、問題の受容体に対する各種のペプチドの相対的な結合アフィニティーを確認する。
【0040】
上記の多様なポリマー配列は単一の基板上で合成することが好ましい。多様なポリマー配列を単一基板上に合成することによって、相対結合アフィニティーのような特性を評価するための配列の処理が一層容易に行われる。例えばペプチド配列のアレー(または他の化合物のライブラリー)を評価して、受容体に対するペプチドの相対結合アフィニティーを確認する場合は、基板全体と、したがってポリマー配列の前部もしくは一群は適切に標識をつけた受容体に対して暴露され同時に評価される。
【0041】
いくつかの実施態様で、本発明は、合成化学化合物または天然産物の抽出物の莫大な収集物を局在化させ、場合によっては固定化するのに利用できる。かような方法では化合物は基板の予め形成された領域に堆積される。上記の固定化された単一の化合物(または複数の化合物)と、化学ライブラリーまたは生物学的抽出物のメンバーのような各種の試験組成物との反応を、上記ライブラリーもしくは抽出物の各メンバーの小部分を、異なる領域に対して用いて試験する。所望の活性を同定するのに、競合検定法などの公知の方法を使用することができる。例えばヒト受容体の大きな収集物を、各領域内に一つづつ基板上に堆積させてアレーを形成させる。次いで植物/動物の抽出物は、アレーの各種受容体に対する結合性についてスクリーニングされる。
【0042】
本発明は、先に本願に援用した米国特許第5,143,854号に記載されている“光依存式(light derected)”方法と共通の特徴をもっている。上記米国特許第5,143,854号で考察されているこの光依存式方法は、基板の予め形成された領域を活性化し次にその基板を予め選択されたモノマー溶液と接触させることからなる方法である。予め形成された領域は、マスクを通して示される光源によって活性化することができる(集積回路の製造に用いられる写真平版法の方法による)。基板の他の領域は、マスクによって光の照射が遮断されるので不活性のままである。したがって、光のパターンによって、基板のどの領域が与えられたモノマーと反応するか規定される。異なるセットの予め形成された領域を繰返し活性化し、異なるモノマー溶液を基板に接触させると、ポリマーの多様なアレーが基板上に形成される。勿論、未反応のモノマーの溶液を基板から洗浄するような他のステップを必要な場合使用してもよい。
【0043】
本発明では、機械的装置または物理的構造によって、与えられたモノマーと反応させるのに利用できる領域が形成される。いくつかの実施態様では、与えられたモノマー溶液が、基板の選択された小数の領域以外のいずれの領域にも接触しないよう遮断するため壁などのバリヤーが用いられる。他の実施態様では、堆積されたモノマー(または他のものの)の量と基板の組成が、基板上の異なるモノマー溶液を分離する作用を行う。このことによって、異なるモノマーを同時に(またはほゞ同時に)異なる領域に送り込んでカップリングさせることができ、かつポリマーのアレーを形成するのに必要な別個の洗浄などの反応ステップの数を減少させることができる。さらに異なる活性化領域における反応条件は独立して制御することができる。したがって、反応物の濃度などのパラメータは、反応部位から反応部位へと独立して変えてその方法を最適化することができる。
【0044】
本発明の別の好ましい実施態様では、光または他のアクチベータを、物理的構造とともに用いて反応領域を形成させる。例えば光源が、同時に基板の各種の領域を活性化し、次に機械的システムが平行して異なる領域にモノマー溶液を導入する。
【0045】
III.試薬を機械的に送り込む方法
本発明の好ましい実施態様では、試薬は(1)予め形成された領域に形成されたチャネル内に流入させるかまたは(2)予め形成された領域に“スポッティング(spotting)を行う”ことによって基板に送り込まれる。しかし、他の方法を、スポッティングと流入を組合わせて利用してもよい。各々の場合、基板の所定の活性化領域は、モノマー溶液が各種の反応部位に送り込まれる場合、他の領域から機械的に分離されている。
【0046】
本発明の代表的な“フローチャネル(flow channel)”法は一般に次のように記述することができる。多様なポリマー配列は、基板の表面にフローチャネルを形成し、該チャネルを通じて適切な試薬を流動させるかまたは該チャネル内に適切な試薬を入れることによって、基板の選択された領域で合成される。例えばモノマー“A”を第一グループの選択された領域で基板に結合させねばならないと仮定する。選択された領域のすべてまたは一部の中の基板の表面のすべてまたは一部は、例えば適切な試薬をチャネルのすべてまたはいくつかを通じて流動させるかまたは基板全体を適切な試薬で洗浄することによって、結合を行うために活性化させる。基板の表面にチャネルブロックを置いた後、モノマーAを含有する試薬を、すべてのもしくはいくつかのチャネルを通じて流動させるか、またはすべてのもしくはいくつかのチャネル内に入れる。これらのチャネルによって第一選択領域は液体接触を行い、その結果モノマーAが、第一選択領域において、基板に直接ましくは間接的に(リンカーを通じて)結合される。
【0047】
次にモノマーBを第二の選択領域にカップリングさせる。そしてこの領域のいくつかは第一選択領域中に含まれている場合がある。第二選択領域は、基板表面上のチャネルブロックの平行移動、回転もしくは置換;選択されたバルブの開閉;またはホトレジスト層の沈積によって、第二のフローチャネルで液体接触をしている。必要な場合、少なくとも第二領域を活性化するステップを実施する。その後、モノマーBを第二フローチャネルを通じて流動させるかまたは第二フローチャネル中に入れ、モノマーBを第二の選択された場所で結合させる。この特定の実施例では、処理のこの段階で基板に結合して生成した配列は例えばA,BおよびABである。この工程を繰返して、基板上の既知の場所に所望の長さの配列の莫大なアレーを形成する。
【0048】
基板を活性化した後、モノマーAはいくつかのチャネルを通じて流入させることができ、モノマーBは他のチャネルを通じて流入させることができ、モノマーCはさらに他のチャネルを通じて流入させることができる。この方法では、チャネルブロックを移動させねばならなくなるかまたは基板を洗浄および/または再活性化しなければならなくなるまで、多くのまたはすべての反応領域をモノマーと反応させる。利用可能な反応領域の多くまたはすべてを同時に使用することによって、洗浄と活性化のステップの回数を最少にすることができる。
【0049】
本発明は種々の実施態様で、チャネルを形成する別の方法または基板表面の一部を保護する別の方法を提供するものである。例えば、いくつかの実施態様では、親水性もしくは疎水性のコーティング(溶媒の性質による)のような保護コーティングを、時には、他の領域の反応物溶液による濡れを容易にする物質を混合して、基板の保護すべき部分を覆って利用する。この方式では、流入溶液はさらに、その指定流路以外を流れるのを防止される。
【0050】
本発明の“スポッティング”の実施態様はフローチャネルの実施態様とほゞ同じ方法で実施することができる。例えばモノマーAは、予め適正に活性化された第一グループの反応領域に送り込んでカップリングさせることができる。その後モノマーBを第二グループの活性化反応領域に送り込んで反応させることができる。上記のフローチャネルの実施態様と異なり、反応物は、比較的少量の反応物を選択された領域に(流入されるのではなく)直接堆積させることによって送り込まれる。いくつかのステップでは、勿論、基板表面の全体に溶液をスプレーするか別の方法でコートすることができる。好ましい実施態様では、ディスペンサーが領域から領域へと移動し、停止するごとにモノマーを必要量だけ堆積させる。代表的なディスペンサーは、モノマー溶液を基板に送り込むマイクロピペットおよびマイクロピペットの位置を基板に対して制御するロボット装置を備えている。他の実施態様では、ディスペンサーは、一連の配管、マニホルド、一連のピペットなどを備え、その結果、各種の試薬を反応領域に同時に送り込むことができる。
【0051】
IV.フローチャネルの実施態様
図1は本発明の一実施例を示す。この特定の実施例では、モノマーグループA,B,CおよびDのモノマーと二量体が基板の選択された領域で捕捉される。この基板としては、生物学的、非生物学的、有機、無機またはこれらのいずれかの組合わせの基板であり、粒子、ストランド、沈殿、ゲル、シート、管状物、球状物、容器、毛細管、パッド、スライス、フィルム、プレート、スライドなどとして存在している。基板は便利ないずれの形態でもよく、例えば、ディスク形、四角形、球形、円形などがある。基板は平坦な形態が好ましいが表面が各種の別の表面形態であってもよい。例えば基板は合成が起こる浮出した領域またはへこんだ領域をもっていてもよい。
【0052】
基板とその表面は、本願に記載の反応を実施するための支持体を形成している。これらのモノマーは、第一方向に基板上にもしくは基板に隣接して形成もしくは配置されている第一フローチャネル流路x,x,xおよびx、ならびに第二方向に基板上にもしくは基板に隣接して形成もしくは配置されている第二フローチャネル流路y,y,yおよびyを用いて捕捉される。第二フローチャネル流路は第一フローチャネル流路の少なくとも一部と交差する。これらのフローチャネルは、本願の他の部分で詳細に述べられている方法によって製造される。
【0053】
最初、基板には、例えば洗浄およびその表面に“リンカー”分子を任意に配置するなどのような一種以上の予備処理を行う。また基板は、各種の活性基、ポリマーの一部を形成する共通のモノマー配列などを備えていてもよい。
【0054】
その後、第一カップリングステップで、一つ以上のフローチャネルに第一モノマーAが供給され、そのモノマーは、フローチャネルが基板と接触している場所で、共有結合または他の方法で基板に(直接もしくは間接に)結合する。図1に示す特定の実施例では、フローチャネルxとxを用い、これらのチャネルに隣接する基板の全長にそって、基板にモノマーAを結合させる。各カップリングステップは、いくつかの実施態様では、種々のサブステップで構成されている。
【0055】
例えば各カップリングステップには、洗浄、化学的活性化などを行う一つ以上のサブステップが含まれている。
【0056】
その後または同時に、図2に示すように、第二モノマーBが選択されたフローチャネルに供給され、モノマーBは、第二フローチャネルが接触している場所で基板に結合する。図2に示す特定の実施例ではモノマーBはチャネルxとxにそって捕捉される。モノマーAとBがそれらのそれぞれのフローチャネルを同時に流れると、二つのカップリングステップを同時に行うのに単一のプロセスステップ(process step)しか必要でない。“プロセスステップ”という用語は本願で用いる場合、一つ以上のチャネルに一つ以上の試薬を注入することを意味する。“カップリングステップ(coupling step)”という用語はモノマーのポリマーへの付加を意味する。
【0057】
その後プロセシングは、図2の流れ図に示す方式でモノマーCとDについて同様に続き、モノマーCはフローチャネルyとy内で捕捉され、Dはフローチャネルyとy内で捕捉される。モノマーCとDはフローチャネルy〜yを通じて同時に導入され、その結果二つのカップリングステップを単一のプロセスステップで実施することが好ましい。図1の白い領域は生成した流路の交差部分を示す。
【0058】
図3は上記のステップを用いて形成された配列のマッピングを示す。図3に示すように、配列A,B,C,D,AD,BD,ACおよびBCがわずか2回のプロセスステップを用いて形成された。したがって、このプロセスは比較的少ないプロセスステップしか使用せずに、ポリマー配列の莫大なアレーの合成を行うことが分かる。別の実施例によれば、4個のモノマーの基本セットの合計4=16個の二量体を形成させるのに二つのプロセスステップしか使用する必要がない。
【0059】
別の実施例によれば、4個のモノマーの基本セットの合計4個の八量体を形成させるのに、“x”方向に配向させた256個のフローチャネルと、“y”方向に配向させた256個のフローチャネルを設けて合計8回のカップリングステップしか必要としない。
【0060】
この方法の威力はさらに、20個のアミノ酸の基本セットから6種の六量体ペプチドの完全なアレーを合成することによって示される。このアレーは、64,000,000の異なるペプチドを形成する20すなわち64,000,000個の領域を有し、わずか6回のプロセスステップで作ることができる。さらにこの方法は異なる型板をわずか3回しか必要としない。第一の型板は20本の平行なチャネルを有し、第二の型板は幅が各々第一型板のチャネルの1/20の400本のチャネルを有し、そして第三の型板は幅が各々第二型板のチャネルの1/20の8000本のチャネルをもっている。各型板は、二回のプロセスステップで、図4に示すように、各々他方に対して90°の方向で使用する。第一の型板によって、基板は活性化され次いで20種のアミノ酸の基本セット(または他の20種のメンバーの基本セット)の各々の溶液を流入させ、第一方向の、異なる予め形成されたストライプ上で反応させる。
【0061】
これは第一のプロセスステップであり、20のカップリングすなわち結合のステップを含み、同時に実施することができる。次に基板全体を再び活性化し、第一型板を、第一方向に対して直角の第二方向に配置する(図4a)。次いで20種のアミノ酸の溶液を20個の新しい予め形成されたストライプにそって流入させる(このストライプは各々元のセットのストライプに対して直角である)。こららの二つの各プロセスステップにおいて、20個の予め形成された領域(フローチャネルにそったストライプ)はまず活性化され、次いで個々のモノマーを接触させると、合計20個のストライプは、次の活性化ステップが必要になるまで反応する。換言すれば、20のカップリングステップが平行に実施され、活性化ステップの必要回数が大きく減少する。
【0062】
残りの四つのカップリングステップは第二と第三の型板を使用する。第三と第四のプロセスステップ(図4b)では20本のチャネルが各モノマーに充当され、第五と第六のプロセスステップ(図4c)では400本のチャネルが各モノマーに充当される。最初の二つのステップの場合と同様に、基板全体が単一のプロセスステップ中に反応を受ける。したがって、64,000,000個のペプチド六量体の全ライブラリーを製造するのにわずか6回のプロセスステップ(合計約24時間を要する)しか必要でない。異なる実施態様では、送り込みを制御する8000本のチャネルを有する単一の型板(例えば第1ラウンドでの20種の各アミノ酸に対する400チャネル)がわずか一回の回転ステップで六量体の全ライブラリーを製造することができる。したがって本発明は多様なポリマーアレーを極めて迅速に製造する方法を提供するものである。
【0063】
図5aと5bは上記の合成ステップを実施するのに使用される装置の第一実施態様の詳細を示す。詳しく述べると図5aは装置を平面図で示し、一方図5bは装置を断面側面図で示す。図5に示す特定の実施態様では、装置は基板401上でポリマー配列を合成するのに使用される。基板401は回転ステージ403に取付けられ、かつクランプ405によってチャネルブロック407に対して保持されている。チャネルブロック407には、その中に、複数のチャネル409がストライプの形態でエッチングされている。各チャネルは流入口411と流出口413を備えている。減圧源415が一つ以上の流出口413に適用され、一方、ピペッタ417が摺動可能にアーム419に取付けられ、貯槽421から選択された流入口411に選択された試薬を送り込む。
【0064】
第二の好ましい実施態様の詳細に図6〜11に示す。図6は、圧力チャンバー101内で、基板111に対して均一に分布する圧力によって、基板111を、チャネルブロック109に当接させて適正な位置に保持する装置を示す。加圧ガスをガス圧入口103から入れて、クラッピング圧を与えて、基板に固定し、一方流体は流体流入口115からチャネル123を通じて流入させ次いで流体出口117から流出させる。圧力チャンバーハウジングの上方部分105と下方部分125はナット121とボルト104によってともに保持されている。圧力チャンバーハウジングの部分をともに保持するのに、クランプのような他の手段も勿論使用できる。
【0065】
図7は本発明のチャネルブロックの好ましい流路の構成を示す。図7aに示すように、流体送り込み部位127,129,131,133,135および137は反応領域141に至るチャネルに接続されている。類似の装置を図7bに比較するために示すが、図7bでは、反応領域におけるフローチャネルの方向が長方形のチャネルブロック上で90°シフトしている。外部減圧ラインへの減圧口145と146が設けられその結果、基板の位置は流体が流動中、維持される。
【0066】
図7aと7bに示すチャネルは、集積回路に用いられるリード線のパターンに類似の方式で、チャネルブロック139上に“扇形チャネルアレー”を形成している。このことによって、反応領域におけるチャネルの密度が高いのに比べて、流体送り込み点間の距離が著しく増大している。2インチ×3インチの基板において、一般に空間の距離が、扇形の配置によって、少なくとも約4:1の比率で増大している。したがって反応領域におけるチャネルが200ミクロン離れている場合、送り込み口は0.8mm離れさせることができる。
【0067】
その間隔距離は、送り込み口127,129および131について示すように送り込み口をずらすことによってさらに増大させることができる。このようにすることによって、少なくとも約3:1の比率でチャネルの距離をさらに増大することができる。したがって、200ミクロンの距離で反応領域のチャネルが離れている場合、扇形アレーをずらすことによって、送り込み口間の距離は2.4mmになる。したがって流体は、反応領域のチャネルの高密度アレーに、標準の1.6mmのテフロン(登録商標)のチュービングから送り込むことができる。追加の間隔が必要な場合には、基板の大きさを大きくし一方反応領域の大きさは維持する。
【0068】
図8に示すように、流体送り込み口は、チャネルブロック上の位置決めプレート(stabilizing plate)108の裏面の通孔から形成されている。この位置決めプレートは、溶融パイレックス(登録商標)で製造することが好ましいが、圧力チャンバー内でクランプしている間、チャネルブロックに対して構造の一体性を与える。またこの位置決めプレートはチャネルブロックの流入口を形成し、送り込み口間またはチャネル間の漏洩を減らす手段も提供する。好ましい実施態様では、チャネルブロックのチャネル123は一般に被削性かまたは鋳造された材料であるウェーハ106で形成され、好ましくはエッチングされたシリコンかまたは微細に切削されたセラミックである。他の実施態様では、チャネルブロックは適切なポリマー材料から圧力成形または射出成形によって製造される。チャネルブロック装置全体は剛性のチャネルブロックのサブプレート110上に取付けられ、このサブプレートには真空ライン112、流体送り込みライン115の流入口、流体流出ライン117の出口、およびプラグ末端151と153のくぼんだ部分が設けられている。この装置によって、基板はチャネルブロックの上面に対してクランプすることができ(図6の実施態様に示すように減圧または加圧のガスによる)、一方流体は下から入り下から流出する。サブプレートは、ステンレス鋼またはアノード酸化アルミニウム(アルマイト)のような硬質材料で製造することが好ましい。
【0069】
個々の微細配管の接続部は各チャネルについて、図9に示すように製造することができる。プラグ末端151には、円錐形の上面が設けられ、その上面はパイレックス(登録商標)製の位置決めプレート108の円錐形凹部118と係合している。またプラグ末端151は円筒形の下面を有し、この下面はサブプレート110の円錐形凹部116と係
合している。このサブプレートと位置決めプレートは、ボルト114とねじ付き挿入部分112、または他の適切な係合手段によってともに保持されている。
【0070】
図10は本発明の好ましい装置の流体流れ図を示す。圧力はポイント25(P1)とポイント21(P2)において制御されて、圧力降下(P1−P2)が装置の両端間で維持される。活性化されたモノマーのようなカップリングする化合物は貯槽31,32および33から供給される。追加の試薬類は貯槽15,17および19から供給される。勿論、図10に示すモノマーとカップリング試薬の貯槽は、可能性がある一層大きなシリーズの貯槽の代表例である。該試薬とカップリング化合物はノード(node)27,28および29で混合され次いでチャネルブロック139に導入される。適切な試薬とカップリング化合物の混合はノードのバルブによって制御され、またこれらのバルブは電子制御器23によって順に制御される。基板の両端にわたって誘導された排出液はライン35によって放出される。
【0071】
図10に示す装置は、ごく小数の変数を調節することによって全チャネルを平行に制御することができる。例えば、P1とP2を固定することによって、全チャネルの両端間の圧力勾配が同時に一定に維持される。したがって、全チャネルの流量は、フローチャネルの断面積と流体のレオロジー特性によってきまる。チャネルは断面積が均一でありかつカップリング化合物は一般に単一溶媒による希薄溶液として供給されるので、均一な流量が全チャネルにわたって得られる。この装置の場合、全チャネルでのカップリング時間は、この装置の両端間の圧力勾配を単に調節することによって同時に変えることができる。この装置のバルブは、制御器23からの単一の電子出力によって制御することが好ましい。
【0072】
図7に示す扇形チャネルアレー構造は、化学合成中に続けて実施するプロセスステップに用いる二つの別個のチャネルブロックを示す。一方のブロックは固体基板上の水平アレーを形成し、他方のブロックは垂直アレーを形成する。化学化合物の交差する横列と縦列のマトリックスを作製するために、固体基板は連続するプロセスステップ中に、一つのブロックから他方のブロックへと移転させる。
【0073】
多くの実験は、一連のプロセスステップ中、一つのブロックから他のブロックへの一回の移転しか必要でないが、図11aと11bに示す扇形チャネルアレーのトランスファブロック75は、移転を繰返す間、固体基板71のチャネルブロック79に対する正確な見当合わせを維持する装置を提供する。いくつかの実施態様では、単一のチャネルブロックを、必要なとき単に90°回転するだけで、水平と垂直方向のアレー用に用いることができる。
【0074】
このトランスファブロック(transfer block)は、固体基板の寸法特性が芯合せに用いられないように、チャネルブロックに対して位置決めが行われる。トランスファブロック75はチャネルブロックに対して運動学的マウント81(kinematic mount)によって芯合わせがなされ、一方減圧は、チャネルブロックの減圧ライン83からトランスファブロック上の減圧ライン77に切換えられる(定常作動中、減圧によって基板はチャネルブロックに対して当接保持される)。この基板とトランスファブロックは次いで移動させて、第二のチャネルブロックに対して再び位置合わせを行う。減圧を第二チャネルブロックに切換えて、基板を適正なアラインメントに保持する。このようにして、個々の基板の寸法が変わっても、プロセスステップ間の正確な見当合わせが保証される。またトランスファブロック装置は、機械および光によるプロセスステップの両方を利用する実験で、フローセルに対する出し入れの移転中マトリックス領域のアラインメントを保持する。
【0075】
いくつかの実施態様ではチャネルブロックは利用する必要がない。あるいは、いくつかの実施態様では、小“ストリップ(strip)”の試薬を、例えばピペッタでその基板またはチャネルにストライプを付けることによって塗布する。この実施態様は本発明のスポッティングによる実施態様にいくらか類似している。別の態様によればチャネルは、半導体産業に広く用いられているようなホトレジストを堆積させることによって形成される。このような材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とその誘導体およびポリオレフィンスルホン類のような電子ビームレジストなどがある(Ghandi, “VLSI Fabrication Principles,”Wiley社(1983年)、10章に一層詳しく記載されている。なおこの文献を、すべての目
的のため全体を本願に援用するものである)。これらの実施態様では、レジストを堆積させ、選択的に暴露し、エッチングを行い、基板の暴露された部分を残してカップリングを行う。レジストを堆積させ、選択してレジストを除き、次いでモノマーをカップリングさせるこれらのステップを繰返して、所望の配列のポリマーを所望の場所に形成させる。
【0076】
いくつかの実施態様では、基板の所定の領域を活性化するのにレジストを利用できる。例えば、酸生成ポリマーのようなある種のレジスト材料は光を照射されるとプロトンを放出する。これらの実施態様によれば、このような材料で被覆された基板は、マスクを通じて照射されるかまたは他の方法で選択的に照射されると、基板の照射された領域は酸性状態に暴露される。基板上の酸で変化する保護基または基板上のオリゴマーが除去され、活性化された領域が残る。この時点でそのレジストのすべてまたは一部を除去することができる。好ましい実施態様では、レジストは活性化された領域のみが除去され、その結果、チャネルが活性化された領域で形成される。あるいはレジストは基板全体から除去されることがある。この場合、別のチャネルブロックを基板に接触させてフローチャネルを形成させるか、または通常のVLSIPS法を使用してもよい。
【0077】
好ましい実施態様において、基板は通常のガラス、パイレックス(登録商標)、石英、各種のポリマー物質のいずれか一つなどがある。勿論、基板はシリコン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのような各種の物質のいずれか一つで製造することができる。
【0078】
好ましい実施態様では、チャネルブロックは、シリコン、または3M社が製造し商品名KelF(登録商標)80で知られている物質のようなポリクロロトリフルオロエチレンで製造されているが、ポリスチレン、ポリカーボネート、ガラス、Dupont社が製造しているKalrezのようなエラストマー、各種のセラミック、ステンレス鋼などのような広範囲の物質も利用できる。
【0079】
チャネルブロックのチャネルは、問題の材料によって、機械加工、圧縮成形、射出成形、平版印刷、レーザー切削などによって製造するのが好ましい。より大きなチャネルブロックを利用するいくつかの実施態様では、チャネルブロックのチャネルの浮出した部分はラッピングフィルム(0.3μmグリット)を重ねることによって処理される。このような滑らかな表面によって、シーラントを使用せずに基板に対して優れた封止が行われ、それ故チャネルブロックを回転する場合、基板上にシーラント物質が残ることはない。操作はすべてほゞ常温、常圧で行うことが好ましい。
【0080】
特に好ましいチャネルブロックは磨きシリコンウェーハを化学的エッチング法で処理することによって製造される。化学的エッチング法は集積回路を製造するのに広く使用されている方法である。この方法によれば磨きシリコンウェーハの12.8mmの領域上に60本以上の100ミクロンのチャネルを容易に形成することができる。エッチングを行った後でも、ウェーハの上面(未エッチング)領域は、未エッチングウェーハの極めて平坦な形態を保持している。したがってフローセル操作中、基板との密着が確実に行われる。
【0081】
操作中、基板の表面は、例えば有機溶媒の塩化エチレン、DMFまたはエチルアルコールなどで洗浄することによって適切に処理される。基板は、任意にその表面に適切なリンカー分子を付与してもよい。そのリンカー分子は、例えばアリールアセチレン、2〜10個もしくはそれ以上のモノマーを含有するエチレングリコールのオリゴマー類、ジアミン類、二酸類、アミノ酸類またはその混合物でもよい。その後、その表面には、TBOCもしくはFMOCで保護されたアミノ酸のような保護された表面活性基が付与される。このような方法は当該技術分野の当業者にとって公知である。
【0082】
次いでチャネルブロックと基板は接触させて、チャネルブロック中の溝および基板で囲まれた液密チャネルを形成させる。チャネルブロックと基板が接触しているとき、保護基除去剤と、最初に選択された一本のチャネルもしくはチャネル群の流入口にピペッタを置きおよび任意に減圧源をチャネルの出口に配置することによって、選択されたチャネルを通じて導入する。例えばTBOCで保護されたアミノ酸の場合、この保護基除去剤としては例えばトリフルオロ酢酸(TFA)がある。なおこのステップに続いて任意に、例えばジクロロメタン(DCM)で洗浄して過剰のTFAを除去するステップを実施してもよい。
【0083】
次に、最初のアミノ酸もしくは他のモノマーAを最初に選択したフローチャネルを通じて導入する。この最初アミノ酸もTBOC,FMOC、またはNVOCなどのような適切な保護基を付与されている方が好ましい。またこのステップの場合も続いて適切な洗浄ステップが実施される。第一群のチャネルで利用される脱保護/カップリングのステップは、追加の群のチャネルで同時に行われるかまたはその後に繰返して行われる。好ましい実施態様では、モノマーAが第一群のチャネルを通じて導入され、モノマーBが第二群のフローチャネルを通じて導入されるなどして、その結果各種の異なるモノマーが基板の平行のチャネルにカップリングされる。
【0084】
次いで、基板とチャネルブロックを分離し、次いで任意に、基板全体を適切な物質で洗浄して、チャネルが基板と接触する部分から不要な物質を除去する。
【0085】
基板および/またはブロックは次に、任意に洗浄し、次いでステージとともに平行移動および/または回転させる。好ましい実施態様では、基板はその元の位置から90°回転させるが、いくつかの実施態様では例えば0°〜180°の範囲のより小さいかもしくは大きい回転を行わせる。図7に示す装置について考察したような他の実施態様では、二つ以上の異なるチャネルブロックを用いて、基板を横ぎって異なるフローパターンが作製される。チャネルブロックは、回転させるとき、同時に基板に対して平行移動させることができる。“平行移動させる”という用語は、基板および/またはチャネルブロックの相対的な運動を意味し、一方“回転”という用語は、基板および/またはチャネルブロックが、それらに垂直な軸線のまわりを回転することを意味する。いくつかの実施態様では、その相対的回転は、合成の異なる段階に対して異なる角度で行われる。
【0086】
脱保護およびアミノ酸などのモノマーのカップリングのステップを繰返して、基板の表面にポリマーのアレーが形成されるに至る。例えば、モノマーBを選択されたフローチャネルを通じて導入して、最初の位置のチャネルブロックによって形成されたチャネルと、そのチャネルブロックを90°回転させて形成されたチャネルとの交差部分にポリマーABから得られる。
【0087】
チャネルブロックの回転は本発明の好ましい実施態様によって行われるがこのような回転は必要でない。例えば、単に異なる試薬をチャネルを通じて流入させることによって、異なるモノマー配列を有するポリマーを形成させることができる。単に一つの具体例では、第一カップリングステップで複数のチャネルの一部にモノマー“A”が充填され、一部にモノマー“B”が充填される。次いで上記の第一チャネルの全部もしくは一部にモノマー“C”を充填し、および第二チャネルの全部もしくは一部にモノマー“D”を充填して、配列ABとCDが形成される。このようなステップを用いて、10個のモノマーの基本セットと100個の溝を有するチャネルブロックを使用して100個の配列を形成させることができるであろう。
【0088】
他の実施態様で、本発明は図12に示すマルチチャネル固相合成器を提供するものである。この実施態様では、チューブのマニホルドまたは収集体1000のような送り込みラインの収集体が活性化された試薬を合成支持体マトリックス1002に送り込む。チューブ収集体1000は硬質の合成ブロックマニホルドの形態を有し、このマニホルドは合成支持体マトリックス1002と正確に心合わせを行うことができる。この支持体マトリックスは、化合物を固定化または合成することができる複数の反応領域を備えている。好ましい実施態様では、これらの反応領域は、合成フリット、パッドまたは樹脂などを含有している。
【0089】
支持体マトリックスの個々の反応領域に送り込まれた溶液は、反応領域を通過して、廃棄物処理領域、再循環タンク、分離器などに流入する。いくつかの実施態様では、反応溶液は、単に重力の作用で反応領域を通過し、一方他の実施態様では、反応溶液は、減圧もしくは圧力によって反応領域を通じて引出されるか押出される。
【0090】
支持体マトリックスの個々の反応領域1004は壁またはガスケット1001によって互いに分離されている。これらの壁またはガスケットは、一つの反応領域中の反応物溶液が隣接している反応領域中に移動して汚染するのを防止する。一つの実施態様では、その反応領域は、樹脂または反応混合物が充填されているチューブが形成されている。このガスケッティングによって、支持体マトリックス1002と“マスク”(図示せず)を密着させることができる。このマスクは、第一群の反応物溶液を、予め決められたライン(チューブ)を通じて第一セットの反応領域へ送り込むのを制御する働きをする。送り込みチューブ1000、マスク、および支持体マトリックス1002を確実に密着させることによって、反応溶液が偶然まちがった反応領域に加わる確率が小さくなる。
【0091】
各プロセスステップの後、マスクを変えて、新しい群の反応物が新しいセットの反応領域に送り込まれる。この方式において、組合わせ戦略を用いて、ポリマーなどの化合物の大きなアレーを作ることができる。他の実施態様では、マスク以外の機構を利用して個々の送り込みチューブを遮断することができる。例えば、チューブ内の制御バルブのアレーはいくつかの実施態様に適している。
【0092】
合成支持体マトリックスの厚みを調節することによって、反応領域内に固定化される物質の量を制御することができる。例えば比較的薄い支持体合成マトリックスを使って、分析用の、表面に捕捉された少量のオリゴマーを製造することができ、一方比較的厚い支持体合成マトリックスを使って、その後使用するために支持体から開裂させることができる比較的大量のオリゴマーを合成することができる。後者の実施態様では、個々の合成支持体に整合した寸法を有するコレクタを用いて、反応マトリックスから最終的に遊離させたオリゴマーを収集することができる。
【0093】
多数のポリマーを合成するこの装置の性能を示すと、各辺の長さが10cmの正方形で、5mm幅のガスケットで分離された5mm大きさの反応領域を有する合成マトリックスは100個の個々の合成部位(反応領域)を提供する。反応領域の大きさを各辺について2.5mmに変化させると400個の反応領域を利用できるようになる。
【0094】
本願では、本発明の好ましい態様に直線状溝を示しているが、本発明の他の実施態様では、円形リングのような円形リングなどの形態が提供され、その選択されたリング間に半径方向の溝が走行している。いくつかの実施態様によれば、異なった幾何学的形態のチャネルブロックを一つのステップから次のステップへと使用する。例えば第一のステップで円形リングを使い次のステップで直線ストライプを使用する。図13aは、チャネル409がチャネルブロック407中に蛇行した配置で配置されている、可能性がある配列の一つを示す。チャネルブロックの適切な平行移動および/または回転によって、所望のモノマー配列のポリマーは、例えば位置501でポリマーを連続的に添加している間にチャネルの交差部に形成される。なお以前のまたは以後のセットのチャネルの交差部は破線で示す。図13bは他の装置を示し、その装置では、チャネルは(この場合流路413はない)直線状の配置になっており、503と505の群が基板の隣接領域内に配置され、かつ基板の長さの一部にのみ延びている。
【0095】
本発明のいくつかの実施態様では、例えば各種のモノマーを含有する各種の試薬は開口413を通じて送る場合、ポンプでは送らない。代わりに、試薬を図13bに示す溝409のような溝の一つの中に入れその溝を満たす。次にこの基板をチャネルブロックの上面の上に置いて、基板の暴露された部分を溝の中の物質と反応させる。好ましい実施態様では、チャネルの幅は、チャネル間の浮き出した領域の幅と同じである。これらの実施態様によれば、次に基板を一つのチャネルの幅だけまたは一つのチャネルの幅の整数倍、横方向に移動させて、前のカップリングステップにおけるチャネル間の領域とモノマーの反応および該領域上へのモノマーの配置を行うことができる。その後、基板もしくはチャネルブロックは、次のシリーズのカップリングステップを行うため回転させる。
【0096】
好ましい実施態様では、このプロセスを繰返して基板の表面に10種類を越える異なるポリマー配列が得られる。さらに好ましい実施態様では、このプロセスを繰返して、10, 10, 10, 10, 10またはこれらを越える数の種類のポリマー配列が単一の基板上に得られる。いくつかの実施態様では、このプロセスを繰返して2個ほどの少数のモノマーを有するポリマーが得られるが、このプロセスは、3,4,5,6,10,15,20,30,40,50,75,100またはこれらを越える数のモノマーを有するポリマーを生成するよう容易に適応させることができる。
【0097】
好ましい実施態様によれば、ポリマー配列のアレーは、一つ以上の各種のスクリーニング法に利用される。そのスクリーニング法の一つは、1991年11月22日付けで出願された同時係属出願中の米国特許願第796,947号に記載されている。なおこの文献はすべての目的のために本願に援用するものである。例えば一つの実施態様によれば、その基板を、酵素もしくは抗体のような問題の受容体に暴露させる。好ましい実施態様では、受容体が結合する場所を容易に検出するように受容体にはフルオレセインで標識を付けるかまたは他の方法で標識をつける。いくつかの実施態様によれば、チャネルブロックを用いて、受容体を含有する溶液を、ポリマーの合成されたアレー上に導入する。例えばいくつかの実施態様によれば、チャネルブロックを用いて、受容体の濃度が異なる受容体の溶液を基板の領域の上に導入する。
【0098】
最も好ましい実施態様では、フルオレセインによる標識付けで得られたシグナルの増幅を、基板の問題の抗体に暴露し、次いで問題の抗体に対して相補的でかつ好ましくは、問題の抗体の多数の場所に結合する標識付き物質に基板を暴露することによって行う。例えば一つの特定の実施態様では、マウスの抗体を試験する場合、標識をつけた第二抗体を、例えばヤギ抗マウスの基板に暴露する。このような方法は、すでに本願に援用したPCT特許願公開第WO92/10092号に記載されている。
【0099】
V.スポッティングの実施態様
いくつかの実施態様では、モノマー(または他の反応物)をディスペンサーから液滴で堆積させて予め形成された領域を満たす。例えば単一のカップリングステップで、ディスペンサーは、選択された各領域がモノマーを受け終るまで、第一領域上を移動して液滴を分配し、次いで第二領域に移動して液滴を分配するなど行うことによって、一連の予め形成された領域に第一モノマーを堆積させる。
【0100】
次にディスペンサーはほゞ同じ寸法で第二シリーズの予め形成された領域に第二モノマーを堆積させる。いくつかの実施態様では、2台以上のディスペンサーを用いるので2種以上のモノマーを同時に堆積させる。これらのモノマーは反応領域と接触して直ちに反応するか、または触媒添加のような別の活性化ステップを必要とする場合がある。いくつかの数のモノマーを、基板全体にわたって予め形成された領域に堆積させて反応させた後、未反応のモノマー溶液は基板から除去する。このようにして第一プロセスステップを完了する。
【0101】
この実施態様を行うのに、基板の個々の反応領域間の間隔は好ましくは約3mmより小さく、より好ましくは約5〜100μmである。さらにこれら領域間の角度は、一貫して1°以内が好ましく、0.1°以内がさらに好ましい。基板は好ましくは少なくとも約100個の反応領域を有し、より好ましくは少なくとも約1000個の反応領域を有し、そして最も好ましくは少なくとも約10,000個の反応領域を有する。勿論、基板上の反応領域の密度は変化させる。好ましい実施態様では基板の1cm当り、少なくとも約1000個の反応領域があり、そしてより好ましくは1cm当り少なくとも約10,000個の反応領域がある。
【0102】
反応物の液滴を正確に指定された領域に一貫して堆積させるために、送り込み装置と基板に共通の基準の枠組み(frame of reference)が必要である。換言すれば、送り込み装置の基準座標を、基板の基準座標に正確にマッピングしておかなければならない。ポリマー領域のアレーを完全にマッピングするのに、基板上の基準点が二つしか必要でないのが理想的である。ディスペンサー装置はこれらの基準点の位置を見つけ出し次いでその内部基準座標を修正して必要なマッピングを行う。その後、ディスペンサーを特定の方向に特定の距離だけ移動させ、既知の位置に直接配置することができる。勿論、このディスペンサー装置は正確に繰返すことができる移動を行えなければならない。さらに、アレーの個々の領域は、基板に基準マークが形成された後は、このマークに対して移動させてはいけない。基板を製造し使用している間に通常遭遇する加圧などの機械的操作によって、あいにく、基板が曲がり、基準マークと反応領域間の対応が変化することがある。
【0103】
したがって、好ましい実施態様では、“全体的な”基準マークと“局部的な”基準マークを有する基板を使用する。好ましい実施態様では、二つの全体的基準マークを基板上に配置して基準の最初の枠組みを定義するのが便利である。これらの点が見つけられると、ディスペンサー装置はその中に、基板と予め形成された領域の近似地図をもっている。これらの領域の正確な位置を見つけるのを助けるために基板は基準の局部の枠組みにさらに分割される。したがって初期の“コース”修止時には、ディスペンサーは、一つの基準の局部枠組み内に配置される。局部領域に配置されるとディスペンサー装置は、局部の基準マークを探してさらに基準の局部枠組みを決定する。これらのことから、ディスペンサーは、モノマーが堆積される反応領域を正確に移動する。この方式では、曲がりなどの変形の作用は最小にすることができる。局部の基準マークの数は、基板に予想される変形の程度によって決定される。基板が充分に剛性であるため変形がほとんど起こらないか全く起こらない場合、ごく少数の局部基準マークしか必要でない。しかしかなりの変形が予想される場合は、さらに多数の局部基準マークが必要である。
【0104】
適切な基準点を最初にみつけて、ディスペンサーをその基準点に心を合わせるため、視覚または非視覚(blind)による装置が利用される。視覚による装置では、カメラがディスペンサーのノズルにしっかりと取付けられている。カメラが基準点を見出したとき、ディスペンサーは基準点から一定の距離と方向にあることが分かり基準の枠組みが樹立される。本発明の非視覚装置は、例えばキャパシタンス、抵抗または光による方向によって基準点を見つけだす。光による方法の一例ではレーザービームを基板に透過させるかまたは基板から反射させる。そのレーザービームが基準マークに遭遇すると、光強度の変化がセンサによって検出される。キャパシタンスや抵抗による方法も同様に利用される。センサは、基準点に遭遇したときのキャパシタンスまたは抵抗の変化を自動記録する。
【0105】
単一の基準点で開始して、ディスペンサーは、基板の一つの反応領域から他の領域へ、正しい距離で正しい方向に平行移動する〔これは“推測位置(dead reckoning)”走行(navigational)法である〕。停止するごとに、ディスペンサーは、正しく計量された量のモノマーを堆積させる。類似の装置は超小型の電子装置の製造および試験の技術分野で広く利用されているが、1秒当り3〜10回の停止までの速度で移動することができる。このような装置の平行移動(X−Y)の精度は1μm以内で充分である。
【0106】
ディスペンサーを移動させる平行移動機構は、閉ループ位置フィードバック機構(符号器)を備えかつバックラッシとヒステリシスが少ないことが好ましい。
【0107】
好ましい実施態様では、この平行移動機構は高分解能を有し、すなわち符号器の1カウント当り1モータティック(motor tick)より優れている。さらにその電気機械機構は、反応領域の直径走行距離に対して高い繰返し性(一般に±1μmまたはこれより優れている)をもっていることが好ましい。
【0108】
基板上にモノマー溶液の一滴を正確に堆積させるために、ディスペンサーのノズルは基板表面上方に正しい距離をおいて配置しなければならない。一つの実施態様では、ディスペンサーの先端は、5ナノリットルの一滴を放出する場合、基板表面の上方約5〜50μmに位置させるのが好ましい。またその一滴は基板表面の上方約10μmで放出することが一層好ましい。このような精度を達成するのに必要な制御度は、上記のタイプの繰返し可能な高分解能の平行移動機構で達成される。一つの実施態様において、基板の上方の高さは、ディスペンサーを小インクリメントで基板に向かって、その先端が基板に接触するまで移動させることによって測定される。この時に、ディスペンサーは、特定の距離に対応する一定数のインクリメントだけ表面から移動して離れる。その位置から、一滴が下方のセルに放出される。ディスペンサーが移動するインクリメントは約5μm未満が好ましく、約2μm未満が一層好ましい。
【0109】
別の実施態様では、ディスペンサーのノズルは、ディスペンサーの先端より一定距離だけ固定して延びているシースで囲まれている。この延びている距離は、溶液の一滴が選択された反応領域に送り込まれるときに落下する距離に一致することが好ましい。したがって、このシースが基板表面に接触すると、ディスペンサーの移動が停止し、一滴が放出される。この実施態様では、接触が行われた後、ディスペンサーを後退させて基板から離れさせる必要はない。基板表面と接触した時は、ディスペンサー(またはシース)の先端および下方の基板間のキャパシタンスまたは抵抗を監視するような各種の方法で確認することができる。基板表面と接触した時には、これらの特性のいずれかが急速に変化することが観察される。
【0110】
この点について、スポッティング装置は平行移動についてしか報告されていない。しかし他の装置も利用できる。一つの実施態様では、ディスペンサーは、磁気または光による記憶媒体の分野で利用されているのと類似の装置によって、問題の領域に対して心合わせが行われる。例えばモノマーを堆積させるべき領域はディスク上のトラック付きセクタの位置によって特定される。次いでディスペンサーは適切なトラックに移動させ、一方ディスク基板は回転する。適切なセルがディスペンサーの下方に位置すると(トラック上の適切なセクタによって参照されるとき)、モノマー溶液の一滴が放出される。
【0111】
一滴の大きさの制御は種々の方法で達成することができる。例えば、一つの実施態様では、通常の微量ピペッティング装置が5ナノリットル以下の一滴を毛細管から放出するよう構成されている。このような液滴は、本発明の非湿潤マスクを使用する場合、直径が300μm以下の領域に適合している。
【0112】
他の実施態様では、ディスペンサーが圧電ポンプであり、このポンプは、通常のインクジェットプリンタと類似の方式で荷電液滴を生成しそれを電界によって反応領域に案内する。実際にいくつかのインクジェットプリンタは、わずかに修正し、単にインクの代わりにモノマー含有溶液を用いることによって使用することができる。例えばWongらのヨーロッパ特許願第260965号(すべての目的のために本願に援用する)には、抗体を固体マトリックスに塗布するのに市販のプリンタを使用することが記載されている。このプロセスでは、抗体を含有する溶液は、溶液を別個の液滴に細分する方式で、振動している小口径のノズルを通じて押出される。次にその液滴は電界を通過することによって荷電され、次いでマトリックス材料上に向ける。
【0113】
通常のインクドロッププリンタはインクを加圧下で保持する貯槽を備えている。このインク貯槽はノズルに接続されているパイプにインクを供給する。ノズルをある適切な高周波数で振動させるために電気機械式変換器を用いる。ノズルの実際の構造としては多数の異なる構造のものがあり、外部変換器によって振動させる引抜きガラス管、または外部変換器(例えば圧電結晶)で振動させる金属管、または磁気ひずみで振動させる磁気ひずみ金属管が挙げられる。したがってインクはノズルから一つの流れで射出され、その流れはすぐに個々の液滴に分割される。液滴に電荷を与えるためにノズルの近くに電極が置かれている。通常のインクドロップディスペンサーは米国特許願3,281,860号および同第4,121,222号に記載されている。なおこれらの文献はすべての目的のために本願に援用する。
【0114】
異なる好ましい実施態様では、反応物の溶液が電気泳動ポンプで貯槽から基板に送り込まれる。この装置では、毛細管によって、反応物の貯槽とディスペンサーのノズルが接続されている。この毛細管の両端には電極が設置され電位差が与えられている。当該技術分野では公知のことであるか、化学種が電気泳動媒体の電位勾配中を走行する速度は、輸送される化学種の電荷密度、大きさおよび形態を含む各種の物理特性、ならびに輸送媒体自身の物理特性と化学特性に支配される。電気勾配、毛細管の寸法、および輸送媒体のレオロジーの適切な条件下で、流体力学的流れが毛細管中に生成する。したがって本発明の電気泳動ポンプで、問題の反応物を含有する多量の流体が貯槽から基板にポンプ輸送される。電気泳動ポンプノズルに対する基板の適正な位置を調節することによって、反応物の溶液は、予め形成された反応領域に正確に送り込まれる。
【0115】
特に有用な一つの用途で、本発明の電気泳動ポンプが、未知の反応物溶液の各種の画分を含有するアレーを製造するのに使用される。例えば、植物の葉または細胞培養物のような生物物質由来の抽出物は、受容体、リガンド、アルカロイド、核酸および生物細胞さえも含めて各種の未知の物質を含有し、そのうちのいくつかは所望の活性をもっている場合がある。このような抽出物を貯槽から電気泳動によってポンプ輸送すると、含有されている各種の種が異なる速度で毛細管を通じて移動する。ポンプ輸送されるこれらの各種の成分は勿論、分離できるようにいくらかの電荷をもっていなければならない。基板がディスペンサーに対して移動し、一方抽出物の成分が電気泳動で分離されると、各種の別個の種を含有するアレーが形成される。次いでこのアレーは結合検定法などの適正な試験法で活性について試験される。有望な活性を示すそのアレーの成分は、その後の研究で他の起源からその後に単離される抽出物の画分と関連がある。いくつかの実施態様では、抽出物溶液中の成分に例えば蛍光の標識を付ける。したがって、該溶液を電気泳動ポンプで送り込んでいる間に、蛍光検出器によって、標識を付けた種がいつ基板上に堆積されるか確認される。いくつかの実務態様では、その標識が、抽出物中のある種の化合物と選択的に結合して、その化合物に電荷を与える。
【0116】
他の適切な送り込み手段としては、浸透ポンプとセルソーター(生物ソーター)がある。浸透ポンプは、比較的長期間にわたって定常流の溶液を送り込む。このようなポンプの構造は当該技術分野では公知であり、一般に、問題となる抽出物の溶液を溶媒透過性のバッグ内に入れている。バッグを透過して拡散する溶媒分子によって、浸透圧が抽出物溶液に加えられ、濃度差が等しくなる。このようにして抽出物を、一定の速度でノズルからバッグ中に押出す。セルソーターも当該技術分野で公知であり、単一の生物細胞を基板上の別個の位置に加えることが望ましい用途に用いることができる。
【0117】
上記の実施態様は、液滴を用いる装置に関連しているものであるが、各試験物質の微少部分を微細ペレットとしてセルに送りこむこともできる。かようなペレットは、問題の化合物(例えばアフィニティー検定法に用いるリガンド)および1種以上の不活性の結合物質で製造することができる。このような結合剤の組成と該ペレットの製造方法は当該技術分野の当業者にとって明らかなことである。
【0118】
このような“ミニペレット”は、広範囲の試験物質と相溶性であり、長期間にわたって安定で、容易に貯蔵容器から取出して分配するのに適しており(すなわち、非粘着性で好ましくは生理的緩衝液のような液体中に懸濁させることができる)、および受容体の結合活性に対して不活性である。
【0119】
好ましい実施態様では、予め形成された各領域内の反応物溶液は、適切なバリヤーまたは閉じ込め領域によって近接領域に移動するのを防止される。例えば、モノマー水溶液を閉じこめるために、親水性物質を用いて反応領域をコートし、一方、好ましい実施態様では、疎水性物質を用いて個々の反応領域を囲む領域をコートする。勿論、非水性または非極性の溶媒を用いる場合、異なる表面コーティングが一般に好ましい。適切な材料(基板、疎水性コーティングおよび反応物の溶媒)を選択することによって、液滴と基板の接触角は有利に制御される。反応物液滴と基板との接触角は大きい方が望ましい。というのはその場合溶液は比較的小さな反応領域を浅い接触角で濡らし、一方液滴はより大きな面積を濡らすからである。極端な場合、液滴は広がって全表面を覆う。
【0120】
接触角は、ヤングの式として知られている下記式で求められる。
【0121】
cosθ=(σsa−σsl)/σia
ここでθは湿潤角であり、σsaは固体−空気の界面張力であり、σslは固体−液体の界面張力であり、およびσlaは液体−空気の界面張力である。これらの界面張力の値は、液体と固体基板の化学成分を含む熱力学的事項によって支配される。各種の化学薬剤の液体―空気の界面張力は、Adamson, Physical Chemistry of Surfaces, John Wiley and Sons社、第5版、1990年(この文献はすべての目的のため本願に援用する)に記載されているような各種の方法で容易に測定される。固体−液体および固体―空気の界面張力の差は与えられた系について、ジスマン(Zisman)のプロットから経験的に求めることができる。この方法では、接触角は、所定の固体表面上の同族系液体について測定される。同族系のある種の液体については“臨界接触角(critical contact angle)”がみとめられ、この角度を越えると、低界面張力の液体は表面を濡らす。この臨界接触角における液体の液体―空気の界面張力は固体の界面張力であると考えられる。この方法は、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、炭水化物などのような低エネルギー固体に対して極めて妥当な結果を与えることが見出されている。このような研究から得られた情報は、アレー中の所定の反応物溶液についての湿潤角を増大するため、基板の組成を最適化するのに用いられる。
【0122】
基板表面の化学組成を制御する方法、したがって基板表面の局部表面自由エネルギーの制御方法には各種の方法があるがいずれも当該技術分野の当業者にとって明らかな方法である。集積回路の製造に用いられる化学蒸着法などの方法は、表面の選択された領域に極めて均一な層を堆積させるのに利用できる。具体例を示すと、シリコンウェーハの表面の湿潤性は、自己集合単層堆積法(self-assembled mono-layer deposition)と微細機械加工法を組合わせたマイクロメーターの尺度で調節されている〔Abbottら、“Manipulation of the Wettability of Surfaces on the 0.1〜1 Micrometer Scale Through Micromachining and Molecular Self-Assembly”Science, 257(1992年9月4日)参照。なおこの文献はすべての目的のため本願に援用するものである〕。
【0123】
好ましい実施態様では、個々の領域の境界線が、基板表面から疎水性保護基を選択的に除去することによって形成された親水性基板上に形成されている。例えば疎水性光保護基の単層は、例えば基板表面に結合されたリンカー分子にカップリングすることができる。次に基板表面にマスクを通して選択的に光が照射された(または例えば酸によって別の方法で活性化される)、反応領域を配置すべき領域を暴露する。この処理によって、保護基は基板表面から外され、反応領域は周囲の領域より疎水性が小さくなる。この工程によって、基板表面上に高密度の反応領域が生成する。疎水性物質は水よりも表面自由エネルギー(界面張力)が低いので、セル中の溶液液滴は広がるよりもビーズ形になる。
【0124】
いくつかの好ましい実施態様では、基板は、まず所望の反応性官能基(例えばアミン、ヒドロキシル、カルボキシル、チオなど)の単相を共有結合させ、そしてその官能基は疎水性の光分解性保護部分で保護することによって製造される。
【0125】
基板がガラス面を提供する場合、上記単相は以下に示すシラン化(silanation)反応によって堆積される。
【化1】

【0126】
上記構造中、Yはポリメチレン連鎖のようなスペーサー基であり、XはNH, C(O)O,O,Sなどのような保護されている反応性基であり、およびPrは疎水性の光分解性保護基である。
【0127】
以下に示す別の好ましい実施態様では、基板表面を、まず、例えばアミン層を提供するのに適切なシラン化反応によって誘導体化する。次に、スペーサー、反応性基、および光分解性基を含有する分子を表面にカップリングさせる。
【化2】

【0128】
上記光分解性保護基は、基板表面が実質的に非湿潤性になるよう充分に疎水性でなければならない。適切なマスクを通して光に暴露することによって特定の領域の保護基を除去すると、反応性官能基が遊離する。これらの基は適度に親水性であるから、暴露された領域の基板は湿潤可能になる。
【0129】
ニトロベンジル保護基のクラスは、ニトロベラトリル基が代表的なものであるが、このクラスのものを結合させたガラス表面に著しい疎水性を与える。塩基性ニトロベンジル保護基の疎水性は、基に連鎖の炭化水素置換基を付加することによって強化される。代表的な疎水性連鎖としては、C12H25(ラウリル)またはC18H37(ステアリル)置換基がある。適切に活性化された形態(ブロミド、クロロメチルエーテルおよびオキシカルボニルクロリド)の代表的な保護基の合成を図14に図式で示す。
【0130】
スペーサー基“Y”は表面の真の疎水性または親水性に寄与する。例えば、−(CH)−のような炭化水素連鎖で主として構成されているこれらのスペーサーは湿潤性を低下させる傾向がある。ポリオキシエチレン(−(CHCHO)−)またはポリアミド(−(CHCONH)−)の連鎖を含むスペーサーは、表面を一層親水性にする傾向がある。さらに大きな効果は、保護された官能基に加えて、いくつかの“マスクされた”親水性部分を有するスペーサー基を用いることによって達成される。このことを下図に示す。
【化3】

【0131】
好ましい実施態様では、親水性の反応領域は、アスペクト比が1に近い(すなわち長さが幅よりも実質的に大きくも小さくもない)二次元の円形などの形態である。しかし他の実施態様では、親水性領域は、上記の方式で流動する反応物を導入するのに使用される長いチャネルの形態をしている。
【0132】
さらに他の実施態様では、反応領域は、例えば基板上にガスケットまたはディンプルで形成された三次元の領域である。またこのディンプルまたはガスケットは、ディスペンサーを問題の領域に導く確認マークとして作用する。
【0133】
溶媒(または反応物を送り込むのに用いる他の液体)の蒸気圧が充分に高い場合、その蒸発によって反応物の濃度が上昇することがある。検査をしないでいると、この工程は結局溶質を溶液から沈殿させることになる。蒸発のこの作用は、基板の選択された領域が接近可能である必要がないとき、その領域を密封することによって最小にすることができる。あるいは、液相と蒸気相のフガシティーを等しくして蒸発を駆動する熱力学的力を減少させるように揮発性試薬の分圧を調節してもよい。試薬の分圧は、密閉チャンバー内に、揮発性試薬の比較的大きな貯槽を置くことによって増大させることができる。例えば問題の条件下で蒸気圧が低い溶媒を使用することができる。場合によって、蒸発は、逆のアレーパターンを有するフィルムまたはカバープレートを用いることによってさらに制御することができる。蒸発を防止する他の方法は物理化学の技術分野では公知であり、本発明に用いることができる。
【0134】
いくつかの好ましい実施態様では、蒸発は、反応領域での、標的オリゴヌクレオチドと固定されたオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成反応を促進するのに有利に利用される。一つの具体的な実施態様では、蛍光的に標識を付けたかまたは別の方法で標識を付けた標的オリゴヌクレオチドの溶液(例えば酢酸アンモニウムまたは塩化マグネシウムのような塩を含有する溶液)を、固定化プローブオリゴヌクレオチドが入っている反応領域に送り込む。揮発性塩溶液が反応液滴から蒸発すると(インクジェットプリンタによって沈着されたインク液滴から溶媒が蒸発するのと同じ方法で)、標的オリゴヌクレオチド:プローブオリゴヌクレオチドの濃度比が局部的に高くなり、ハイブリッド形成反応が促進される。ハイブリッド形成反応を室温で実施する場合は、反応を完了するには一般に10分間〜数時間必要である。充分に時間をかけた後、ハイブリッドを形成していないDNAを洗い流すかまたは他の方法で基板から除去する。最後にプローブと標的のDNAがハイブリッドを形成した領域を検出するため映像化(image)する。勿論、蒸発は、ハイブリッド形成反応以外の各種の反応において非DNA溶質の局部濃度を増大するのに有利に利用することができる。例えばいくつかの実施態様では、受容体の溶液は充分に揮発性なので、例えばスクリーニングされるべきペプチドを含有する反応領域において、局部の受容体濃度が増大する。
【0135】
上記のスポッティングの実施態様によって製造したアレーは、一般に、先に述べたフローチャネルの実施態様によって製造したアレーとほゞ同様に使用される。例えばスポッテヒングの実施態様によるアレーは、先に本願に援用したPCT特許願公開第WO92/10092号に記載されているようなフルオレセインで標識を付けた受容体によるスクリーニングに利用できる。
【0136】
VI.別の実施態様
本発明のいくつかの実施態様によれば、基板上の選択された流路にそってチャネルを形成するのに、マイクロバルブ構造体が使用できる。これらの実施態様では、マイクロバルブのアレーが形成され、このアレーは、その上方または下方に存在し、選択されたバルブを付勢してバルブを開閉するのに用いる電極のアレーによって運転される。
【0137】
図15はこのような構造体を示し、図15aはその装置を断面端面図で示し、そして図15bはその装置を平面図で示す。ここに示す構造体は、明快にするため二つの合成チャンバーしか備えていないが、大部分の実施態様でははるかに多くの数のチャンバーが設けられている。マイクロバルブは、例えばZdeblickの米国特許第4,966,646号およびKnutti,“Advanced Silicon Microstructures”,ASICT Conference 1989年に詳細に考察されている。なおこの両文献はすべての目的のために本願に援用する。
【0138】
図15に示すように基板602は、写真平版法または他の関連する法を用いて形成した複数のチャネル604を備えている。これらのチャネルは合成チャンバー606にまで到達している。各チャネルの末端にバルブ構造体608がある。図15に示すように、チャネルは合成チャンバーまで到達しているが、バルブによって該チャンバーから隔離することができる。多数のバルブを各チャンバーに設置してもよい。図15に示す特定の構造では、左側のチャンバーの右側のバルブと右側のチャンバーの左側のバルブは開いているが、その外のバルブは閉じている。したがって試薬は、基板の上面に送りこまれると、開いたチャネルを通じて左側のチャンバーに流入して通過するが右側のチャンバーを通過しない。したがってカップリングステップは、上記の方法を用いて、選択されたチャンバーに導入された選択された試薬によってチャンバー上で行われる。
【0139】
いくつかの実施態様では、一つのバルブがチャンバー606の一方の側に設けられ、その対向する側のバルブは半透膜で代替されている。これらの実施態様では、選択された試薬をチャンバー606に流入させ、その後もう一つの選択された試薬を、半透膜に隣接するフローチャネルを通じて流入させることが可能になる。
【0140】
この半透膜は、一方の側または他方の側の物質の一部を膜を通して通過させることができる。このような実施態様は例えばセルの研究に有用である。
【0141】
スクリーニングは、例えば装置の二つの半割り部分を分離または切断し、例えばフルオレセインで標識を付けた抗体などと接触させてスクリーニングができるようにし、次いで光で検出することによって実施される。
【0142】
図16aと16bは、本願で開示した機械的ポリマー合成法および光依存式合成法を組合わせた本発明の別の実施態様を示す。これらの実施態様では、基板401は図16aにストライプとして示す選択された領域に光が照射される。基板の表面には、例えばペプチド合成の具体例のアミノ基にPCT特許願公開第WO92/10092号(すでに本願に援用した)にしたがって結合された光排除性基(photoremovable group)が付与されている。このステップの間に、基板の領域701,702および703は特に脱保護され、基板の残りの領域は、ニトロベラトリルオキシカルボニル(“NVOC”)のような光排除性基で保護されたままで残っている。本発明の具体的実施態様では、基板の光を照射された領域の幅は、保護された領域の幅に等しい。
【0143】
次いで、図16bに示すように、基板にチャネルブロック407を接触させる。図16bに示す特定の実施態様では、チャネル704,705および707はそれぞれ、基板401上の領域701,702および703と一列に並んでいる。明らかなように、本発明の具体例では、ストライプの形態の光照射領域と、チャネルがあり、このステップで両者が一列に並べられる。しかし他の実施態様では、他の形態の光照射領域とチャネルおよび他の相対的方向の光照射領域とチャネルが提供される。チャネルブロックと基板は、例えば基板とチャネルブロックの両者につけられた心出しマークによって一列に並べられる。基板は、例えば減圧チップ(Vacuum tip)によってチャネルブロック上に配置される。
【0144】
その後、選択された試薬をチャネルブロック中のチャネルを通じて流入させるかまたは該チャネル中に入れて、すでに光に暴露した領域にカップリングさせる。先に述べたフローチャネルの実施態様と同様に、チャネルブロックの基板に対する圧縮およびポンプ輸送中のデッドスポットを避けるため、いくつかの実施態様では、基板は、予め充填されたチャネルブロックと接触させる。本発明の好ましい態様では、例えばモノマーA,BおよびCを含有する試薬のような異なる試薬が各チャネル701,702および703を流動する。次いでこの工程では任意に、基板を例えば一つのチャネルの幅だけ平行移動させて、元のチャネルの間の領域にモノマーをカップリングさせる第二のカップリングステップが行われる。
【0145】
次いで光を照射し次いでチャネルブロックでカップリングを行う工程をまだ暴露されていない領域で繰返す。次いでこの工程を、マスクのストライプと例えば90°回転させたチャネルブロックで再度繰返すのが好ましい。このカップリングステップにおいて、マスクと基板を適切に平行移動しかつ適切なマスクを選択することによって、基板の選択された領域に多様なモノマー配列を有するポリマーが生成する。本願に開示された光依存法と機械的フローチャネル法を組合わせることによって、多様な配列を形成する際に一層大きな効率が達成される。というのは、単一の光照射/カップリングステップで多数のモノマーがカップリングされるからである。
【0146】
光依存法では、マスクを通して見える光が、マスクの暗領域の端縁のまわりで種々の程度に回折される。したがって“暗”領域の端縁において感光性保護基の望ましくない除去がいくらか起こる。この作用は、マスクの平行移動とこれに続く暴露を繰返すことによって悪化し、結局、予め形成された領域の端縁に不均一な合成部位をもたらすことになる。この作用は勿論、ガラス基板の厚みおよび光が回折される角度に左右される。マスクが基板の“裏側”に配置されている場合、回折角2.5°および基板の厚み0.7mmの場合、各端縁の側部に接して幅60μmの光の帯(多様な強度を有する)を生成する。0.1mmの基板の場合、光の帯の幅は約5μmになる。
【0147】
回折によるこのような“ブリードオーバー”作用(“bleed-over”effect)を減らすために、基板の反応領域を活性化および/または形成するのにピンホールマスクを利用する。すなわち、例えばピンホールマスクを通じて見える光を光排除性疎水性基を含有する基板にあてる。次いでこの光を照射された領域の基は除去され、親水性の反応領域が形成される。一つの具体例では、ピンホールマスクが一連の円形の通孔を有し、その通孔は直径と間隔が規定され、例えば直径が20μmで間隔が50μmである。いくつかの好ましい実施態様では、定置ピンホールマスクが、基板およびPCT特許願公開第WO92/10092に記載されているタイプの平行移動マスクの間にサンドイッチされている。この方法によれば、基板の選択された領域はブリードオーバーなしで活性化されてポリマー合成を行うことができる。上記の平行移動マスクは定置ピンホールマスクの選択された通孔に光を当てるために用いられ、そしてその端縁は平行移動マスクの通孔の間隔距離を分断し(dissect)その結果、近くの部位を光保護基が回折によって除去されることがない。ブリードオーバー入射光は無視できる程度であるから、端縁にそって並んでいる部位における不均一な合成はなくなる。得られた円形部位には、勿論、ピンホールマスクの端縁における回折によって種々の配列密度が含まれているが、予め形成された各領域における配列は均一である。それに加えて、各合成領域は、基板が標識化標的でプローブされている場合、“暗”領域で囲まれている。したがって、ブリードオーバーなしの蛍光シグナルが、近くの部位に結合することによって導入される。
【0148】
直径が20μmで間隔が50μmの円形通孔を有するピンホールマスクは、オリゴヌクレオチドの完全セットを得るのに必要な全合成面積は1.78cmに過ぎない。
【0149】
所定のピンホールマスクに対して、薄い基板を使うと、間隔を大きくしたより小さな反応部位が得られる。しかし、小さい部位を用いると、信頼性の高いデータを得ることができる面積は減少する。反応部位の密度は結局、回折角、およびピンホールマスクと反応領域の距離(一般に基板の厚み)によって決定される。
【0150】
これまでの考察は円形ピンホールに集中していたが長穴形、四角形、三日月形などの他の形態でも、選択された送り込み法に対して適切であれば利用できる。
【0151】
したがっていくつかのフローチャネルの実施態様に対しては直線状またはS字形線状の長穴が望ましい。
【0152】
別の好ましい実施態様において、ピンホールマスクは基板上にコートされた層の形を有している。このようにすることによって、ドットパターンを生成させるのに別の定置マスクを用いる必要がなくなる。さらに、この表面層は、上記のスポッティングの実施態様にしたがって反応物を堆積させる際の、明確な合成領域を提供する。さらに、表面ピンホールマスクは、モノマー溶液を上記のように適正な領域に送り込むため用いられる走行装置で使用される局部基準座標で便利にエンボス加工される。好ましいピンホールマスクはクロムのような不透明または反射性材料で製造される。
【0153】
VI.実施例
A.漏洩試験
最初の実験は、溶液を基板の選択された場所に送り込み他の領域に接触しないよう保証するフローチャネル装置を用いて実施した。さらにその実験は試薬を同じ方式で送り込めることを示すのに利用した。
【0154】
したがって、約42mm×42mmの寸法の通常のガラスの平板をアミノプロピルトリエトキシシランで誘導体化した。全スライド(entire slide )を通常の方法を用
いて脱保護を行って洗浄した。深さが1mmで幅が1mmの10本のチャネルを備えたKelF81製ブロックを基板に接触させたときに形成されたフローチャネルに、FITCのフルオレセインマーカーを注入した。フルオレセインマーカーはDMF溶液であり、手動ピペットで溝に注入することによってチャネルを通じて流入させた。
【0155】
同様にフルオレセイン染料を、ブロックの他のすべてのチャネルに注入し、ブロックを回転し次いでこの処理を繰返した。蛍光強度:位置の得られると予想されるプロットを図17に図式で示す。暗領域は垂直方向と水平方向のストライプの交差部に見られ、一方薄いグレー部分はストライプの交差していない部分に見られる。この暗グレー領域は高染料濃度の予想領域を示し、一方薄グレー領域は低染料濃度の予想領域である。
【0156】
マッピングは、PCT特許願公開第WO92/10092号(すでに本願に援用した)の方法によって、収集した強度データを用い、実際のスライド(actual slide)の部分の蛍光強度で行った。結果は予想した結果とよく一致し、チャネルの交差部分は高い蛍光強度を示し(ストライプの交差していない部分より約50%高い)、かつチャネルの他の領域は低い蛍光強度を示した。蛍光染料に暴露されなかった領域は活性をほとんど示さず、良好なS/N比を示している。交差部はバックグランドの約9倍もの高い蛍光強度を有している。またチャネル内の領域は蛍光強度の変動が少なく、このことはチャネル内のこの領域が均一に処理されていることを示している。
【0157】
B.YGGFLの形成
上記装置を使用し、以下の4種の異なるペプチドを合成した。すなわちYGGFL(SEQ.ID No.1),YpGFL(SEQ.ID No.2),pGGFL(SEQ.ID No.3)、およびppGFLである(なおこれらの略語はさきに本願に援用したStryer, Biochemistry,第3版,1988年に記載されている。小文字はD−光学異性体を示し大文字はL−光学異性体を示す)。全ガラス基板を、TBOCで保護されたアミノプロピルトリエトキシシランで誘導体化し、TFAで脱保護を行い、FMOCで保護されたカプロン酸(リンカー
)でコートし、ピペリジンで脱保護を行い、次いでFMOCで保護されたグリシン―フェニルアラニン―ロイシン(GFL)でコートした。
【0158】
このFMOC―GFLでコートしたスライドをチャネルブロックに密着させ(seal)、次いで10本の溝すべてを、DMF中のピペリジンで脱保護を行った。溝を洗浄した後、FMOCグリシン(G)を奇数番号の溝に注入し、FMOC d−プロリン(P)を偶数番号の溝に注入した。標準のカップリング化学反応を用いて2時間カップリングを行った後、すべての溝をDMFで洗浄した。これらの溝を減圧乾燥し、ブロックを外して90°回転させた。再び密着させた後、すべての溝をDMF中ピペリジンで脱保護し次いで洗浄した。FMOCチロシン(Y)を奇数番号の溝に注入し、次いでFMOC Pを偶数番号の溝に注入した。カップリングを行った後、これらの溝を洗浄し、減圧乾燥した。したがって各化合物YGGFL,YpGFL,pGGFLおよびppGFLの25の領域が基板上に合成された。この基板を外し、FITCの標識をつけた抗体(Herz抗体3E7)でステイン(stain)した。
【0159】
得られたスライドは強い蛍光の明るい領域を示した。白い四角部分はYGGFLの領域内にある。最も暗い領域はpGGFLとppGFLである。YGGFLの部位は最も強度が高く、YpGFL部位がこれに続いている。pGGFLとppGFLの強度はバックグランドのレベルに近く、Herz抗体に対する予想結果と一致している。
【0160】
試験結果を定量分析したところ、YGGFL:YpGFL:pGGFL:ppGFLの全強度比が1.7:1.5:1.1:1.0であることを示している。しかしYGGFLとYpGFLについては標準偏差が大きいので、すべての部位を互いに比較しても、実際のコントラストを正確には示さない。同じ“ストライプ”内の部位の強度を比較すると大きなコントラストが得られるが、そのコントラストは2:1のオーダーのままである。
【0161】
C.100ミクロンのチャネルブロック
基板にカップリングさせたイソチオシアン酸フルオレセインのグリッドパターンを本発明のフローセルを用いて作製した。2インチ×3インチのNVOC誘導体化基板をマスクを通して光分解を行い、一つの軸線上に400ミクロンの活性化されたバンドを生成させた。100ミクロンの壁で分離された64本の平行の100ミクロンチャネルを有する、エッチングされたシリコンチャネルブロックを、他の軸線上で(すなわち400ミクロンの活性化バンドの軸線に直角に)基板にクランプした。アルミニウム製の上部と下部のクランププレートからなるクランピング装置を使用した。圧力は、2本のボルトをトルクレンチで締付けることによって400psiまで加えた。7mMのイソチオシアン酸フルオレセイン領域を、暴露されたチャネルの末端に直接ピペットで入れることによってチャネルを通じて流入させた。
【0162】
基板の画像(image)は、フルオレセインが基板に結合したことを示す強い蛍光の領域を示した。フルオレセインの結合を示す白色の領域が、100ミクロンの垂直流路内の光分解領域上の400ミクロン水性ストライプとして認められた。チャネルおよびチャネル間の部分のコントラスト比は8:1であった。このことは400psiのクランピング圧下で、100ミクロンチャネルを通過する流体がほぼ完全に物理的に分離されていることを示している。
【0163】
D.チャネルマトリックスのハイブリッド形成検定
2インチ×3インチのスライドの中央領域をビス(2―ヒドロキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシランで誘導体化した。次に6種のヌクレオシドを、加えられる各モノマーに対して、脱保護、カップリング、および酸化のステップからなる合成工程を用い、全反応領域にカップリングさせた。これらの最初の6種のヌクレオシドは、2インチ×3インチのスライドにクランプされたアルミニウム型板の直径0.84インチの円形ウェルで形成された反応領域にカップリングさせた。
【0164】
7番目と8番目のモノマーは、モノマー溶液を、エッチングしたシリコンチャネルブロック(上記実施例Cで使用した)の100ミクロンチャネルを通じて流入させて基板に塗布した。7番目の塩基は、2インチ×3インチのスライドの長軸(垂直)にそってカップリングさせ、次いで8番目の塩基を、7番目の塩基に対して直角にスライドの短軸(水平)にそってカップリングさせた。このようにして、1cm2 当り2500個の反応領域の密度を有する1.28cm×1.28cmの活性マトリックス領域を形成した。
【0165】
チャネルブロックを反応領域上の中央に置いて、機械加工がなされたアルミニウムプレートからなるクランピング装置を用いて基板にクランプした。このようにして、2インチ×3インチの基板をチャネルブロックに対して所望の方向に配置した。7番目と8番目のカップリングステップの間で、上記クランププレートとチャネルブロックを、下部クランププレートと基板に対して回転させて、交差する横列と縦列のマトリックスを得た。
【0166】
上部クランププレートにおいて、流体送り込みウェルを、チャネルブロックの背面から個々のチャネルに入るレーザーであけた孔に接続した。これらの送り込みウェルは、チャネルブロックが基板にクランプされている間に、カップリング試薬をチャネルにピペットで分注するのに用いた。対応する流体回収ウェルをチャネルブロックの下流で減圧源に接続し、流体をチャネルを通じて引出し排液容器に入れた。したがって、カップリングステップ中は、チャネル領域の基板上には連続して流体が流動している。
【0167】
7番目と8番目のカップリングステップによって形成されたチャネル交差部において合成された完全な八量体は下記の配列をもっている。
【0168】
基板--(3′)CGCAGCCG(5′) (SEQ.ID No.4)
合成工程を完了した後、反応領域を濃水酸化アンモニウム溶液中に浸積することによって、環外アミンの開裂を行った。次にその反応領域を、相補的な塩基配列:5′−GCGTCGGC−F(SEQ.ID No.5)(配列中、“F”はオリゴヌクレオチドの3′未満にカップリングされたフルオレセイン分子である)の10nM溶液中で、15℃にて1時間インキュベートした。次にやはり15℃にて、標的連鎖の溶液を反応領域からフラッシュし、純粋の6×SSPE緩衝液で置換した。最後に、上記緩衝溶液中に浸積しながら、反応領域を、レーザー蛍光検出装置を用いて走査した。
【0169】
得られた画像中最も明るい領域は、完全な八量体が基板表面上に合成されたチャネル交差部に相当している。画像の垂直列は、7番目の塩基がカップリングしたチャネル領域を示し、一方水平列は8番目の塩基がカップリングされたチャネル領域を示す。チャネル交差領域の明るさが、フルオレセインで標識を付けた標的連鎖と、これらの領域内で合成されその基板に捕捉された相補的連鎖とのハイブリッドが生成したことを示した。画像の垂直方向のストライプは、交差領域における明るさが著しく高い領域と一致する明るさを示した。水平方向のストライプは垂直方向のストライプの一貫した明るさをもっていなかったが垂直方向のストライプとの交差部では明るい領域を示した。7番目のモノマーの軸線(垂直方向)に沿った一貫した明るさは、八つの相補的塩基のうちの七つが基板表面にカップリングした領域において標的連鎖が部分的にハイブリッドを形成することを示した。8番目のモノマーの軸線(水平方向)にそって明るさが欠如していることは、基板表面に捕捉された6個のマッチング塩基(matching base)の連鎖は溶液中の八量体と有効にハイブリッドを形成しない(6個のマッチング塩基を有し7位にミスマッチを有する七量体)という予想と一致している。一層暗いバックグランドは、全反応領域にカップリングされた最初の6個のモノマーからなる六量体で構成されている。
【0170】
VII.結論
上記の説明は本発明を例示して説明しているが本発明を限定するものではない。本発明の多くの変形は本発明の開示を見れば当該技術分野の当業者にとって明らかになるであろう。例えば、基板、受容体、リガンドなどの物質については各種のものを、本発明の適用範囲から逸脱することなく使用することができる。それ故、本発明の適用範囲は、上記説明によって決定されるべきではなく、本願の特許請求の範囲とその均等物によって決定されるべきである。
【表1】

【0171】

【0172】

【0173】

【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】図1は本発明を示す一般線図である。
【図2】図2は各種ポリマーのアレーを合成する際に行われる処理ステップを示す流れ図である。
【図3】図3は得られたポリマーのアレーのマッピングである。
【図4】図4の4a〜4cは20種のアミノ酸の基本組合わせから6400万のヘキサペプチドを合成するのに用いる六つのプロセスステップにおける3チャネルのブロック型板の配置を示している。
【図5a】図5aはポリマー配列のアレーを合成するのに用いる装置の第一実施態様の平面図である。
【図5b】図5bはポリマー配列のアレーを合成するのに用いる装置の第一実施態様の断面図である。
【図6】図6はチャネルブロックに当接させて基板を支持するのに用いる圧力チャンバーを備えた実施態様の断面図である。
【図7】図7の7aと7bは二つの異なる“扇形アレー(fanned array)”のチャネルブロックの2種の平面図である。
【図8】図8は本発明の一つの実施態様によるチャネルブロックおよび付属流動口の詳細断面図である。
【図9】図9はチャネルブロックの流動口の詳細断面図である。
【図10】図10はカップリング化合物と試薬をフローセルに送り込むのに用いる流動システムの線図である。
【図11】図11の11aと11bは一つのチャネルブロックからもう一つのチャネルブロックに基板を移すのに用いる装置を示している。
【図12】図12は多チャネルの固相合成器の線図である。
【図13】図13の13aと13bはチャネルブロック内の溝の別の配置を示している。
【図14】図14は本発明のいくつかの疎水性基を製造するのに用いる反応経路を示す図式である。
【図15】図15の15aと15bは微小バルブ装置を示している。
【図16】図16の16aと16bは本発明の別の実施態様を示している。
【図17】図17は蛍光染料に選択的に暴露された基板について予想される蛍光強度のマッピングである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の選択された領域を有する表面からなる単一の基板上に、多様なモノマー配列を有するポリマーを形成する方法であって;下記ステップ;すなわち
(a)前記表面に隣接して複数のチャネルを形成し、そのチャネルは少なくとも部分的に、前記の選択された領域の部分によって形成された壁を有し;
(b)選択されたモノマーを前記チャネルに入れ、前記の選択された領域の前記部分においてポリマーを合成し、前記の選択された領域の前記部分は前記の選択された領域中の少なくとも一つの他の領域内のポリマーと異なるモノマーの配列を有するポリマーを含有し;次いで
(c)前記の選択された領域の第二の部分にそって形成された前記チャネルについてステップ(a)と(b)を繰返す
ステップからなる方法。
【請求項2】
複数のチャネルを形成する前記ステップが、前記表面に隣接してチャネルブロックを配置するステップからなり、前記チャネルブロックが、複数の溝、前記溝の壁および前記フローチャネルを少なくとも部分的に形成する前記表面を備えている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
選択された試薬を前記チャネル中に入れるステップが、下記のステップ:すなわち
少なくとも第1チャネルの活性部位から保護基を除き;
第一モノマーを、前記の少なくとも第一チャネルを通じて、流入させ、前記第一モノマーが保護基を有し、前記第一モノマーを前記第一チャネルの前記活性部位に結合させ;
少なくとも第二チャネルの前記活性化部位から保護基を除去し、前記第二チャネルの少なくとも部分が、前記第一チャネルが接触している前記基板の部分に重なり;次いで、
第二モノマーを前記の少なくとも第二チャネルを通じて流入させ、前記第二モノマーを前記第二チャネルの前記活性部位に結合させる
ステップからなる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーを、受容体との結合アフィニティーについてスクリーニングするステップをさらに有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも10種の異なるポリマーを前記表面上に生成させる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1,000種の異なるポリマーを前記表面上に生成させる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも10,000種の異なるポリマーを前記表面上に生成させる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーがオリゴヌクレオチドおよびペプチドからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記の選択された領域が各々約10,000ミクロン未満の面積を有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
除去および流入のステップがさらに、
チャネルブロックを、第一方向に、前記表面と接触させて配置し、次いで第一モノマーを含有する物質を、前記チャネルブロックの少なくとも二つのチャネルを通じて入れ;
前記チャネルブロックおよび前記基板のうちの一方を、残りの他方に対して回転し;次いで
チャネルブロックを、第二方向に、前記表面と接触させて配置し、次いで第二モノマーを含有する物質を、前記チャネルブロックの少なくとも一つのチャネルを通じて入れる
ステップを含んでいる、請求項3記載の方法。
【請求項11】
選択された試薬を前記チャネルに入れる前記ステップが、前記チャネルと流体で連通させてピペットを配置し;および前記選択された試薬を前記チャネルを通じて注入する;ことからなる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ピペットを前記チャネルと流体で連通させて配置する前記ステップが、前記ピペットを、前記基板の前記表面に対して反対側の面上のオリフィスと接触させて配置するステップである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ピペットを前記チャネルと流体で連通させて配置する前記ステップが、複数のピペットを、複数の前記チャネルと連通させて配置し、次いで異なる試薬を少なくとも二つの前記チャネルを通じて流入させるステップである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記表面のバルブのアレーを形成して流体が前記表面の所望の場所に導入可能になり、次いで前記バルブを選択的に作動させ次に前記の選択された試薬を形成されたチャネルを通じて流入させるステップが先行している、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記基板の部分に光を照射して、光排除性基が前記基板上の活性基から除去されるステップが先行している、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記の選択された光照射部分がストライプの形態であり、かつチャネルを形成する前記ステップが前記チャネルを前記ストライプの経路にそって形成ることを含み、異なる試薬が前記チャネルの少なくとも一部の中に入れられる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
単一の基板の表面上に複数のピペットの配列を形成する方法であって;下記のステップすなわち
a)前記基板を、第一方向に、複数のチャネルを有するチャネルブロックと接触させて配列し;
b)少なくとも第一アミノ酸を、少なくとも一つの前記チャネルを通じて流入させ、前記第一アミノ酸を前記表面の部分にカップリングさせ;
c)少なくとも第二アミノ酸を、少なくとも一つの前記チャネルを通じて流入させ、前記第二アミノ酸を前記表面の部分にカップリングさせ;
d)前記チャネルブロックを前記基板に対して回転させ、次いで前記基板を再び前記チャネルブロックと接触させて配置し;
e)第三アミノ酸を少なくとも一つの前記チャネルを通じて流入させて前記表面上に少なくとも第一と第二のペプチド配列を形成し;
次いで
f)第四アミノ酸を少なくとも一つの前記チャネルを通じて流入させて前記表面上に少なくとも第三と第四のペプチド配列を形成する
ステップからなる方法。
【請求項18】
基板;
複数の溝を備えたチャネルブロック;
前記チャネルブロックを前記基板と係合させて保持する手段;
前記チャネルブロックおよび前記基板のうちの一方を、残りの他方に対して平行移動させる手段;および
選択された試薬を前記溝に注入する手段;
からなる、多様なポリマー配列を形成するのに用いるキット。
【請求項19】
前記基板が活性部位の保護基を有する、請求項18記載のキット。
【請求項20】
さらに、前記保護基を除去するのに用いる脱保護物質を有する、請求項19記載のキット。
【請求項21】
前記溝が前記チャネルブロックの孔に接続され、前記孔が前記基板の背面を通って延びている、請求項18記載のキット。
【請求項22】
さらに、前記基板の選択された部分に光を照射して前記基板上の保護基を除去する手段を有し、前記保護基は光に暴露されると前記基板上の活性部位から除去される請求項18記載のキット。
【請求項23】
光を照射する前記手段が光源と光マスクを有し、前記光マスクが前記光を透過しない領域および前記光を透過する領域を有する、請求項22記載のキット。
【請求項24】
前記注入手段がピベッタからなる、請求項18記載のキット。
【請求項25】
前記ピベッタが複数のピペットからなり、各ピペットが前記溝の異なる一つに取付けられている、請求項24記載のキット。
【請求項26】
単一の基板上で複数の反応を行う装置であって;
単一の基板上に存在し、各々別個の反応を行うことができる少なくとも約100個の反応領域;
一つ以上の反応物を一つ以上の反応領域に送り込む手段;および
少なくともいくつかの反応物が少なくともいくつかの反応領域と接触するのを防止する手段;
を有する装置。
【請求項27】
基板が複数の流路を有し、反応が前記流路内に保持されている、請求項26記載の装置。
【請求項28】
一つ以上の反応物を送り込む手段が基板に隣接しているチャネルブロックのフローチャネルであり、および少なくともいくつかの反応物を閉じこめている手段がフローチャネルの壁である、請求項26記載の装置。
【請求項29】
少なくともいくつかの反応物を閉じこめている手段が基板の表面上の疎水性層である、請求項26記載の装置。
【請求項30】
内部に異なる化合物を有する約100個より多い反応領域;および
反応領域を囲みかつ疎水性が反応領域より高い閉じこめ領域;を有する基板。
【請求項31】
閉じこめ領域が疎水性保護基を有する、請求項30記載の基板。
【請求項32】
保護基が光分解性である、請求項31記載の基板。
【請求項33】
反応領域がチャネルを形成する、請求項30記載の基板。
【請求項34】
基板が約1000個より多い反応領域を有する、請求の項30記載の基板。
【請求項35】
閉じこめ領域に囲まれ、この領域より一つ以上のモノマー溶液によって濡れ易い複数の反応領域を有する基板上に、多様なモノマー配列を有する複数のポリマーを形成する方法であって;
一つ以上のモノマー溶液を順に第一反応領域に入れて第一モノマー配列を有する第一ポリマーを形成し、そのモノマー溶液は閉じこめ領域によって第一反応領域に閉じこめられ;次いで
一つ以上のモノマー溶液を順に第二反応領域に入れて第二モノマー配列を有する第二ポリマーを形成し、そのモノマー溶液は閉じこめ領域によって第一反応領域に閉じこめられている;ことからなる方法。
【請求項36】
モノマー溶液を第一反応領域に入れるステップが、ピペットを基板に対して移動し次いで少なくとも一つのモノマー溶液を第一反応領域に堆積させることからなる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
さらに、選択されたモノマーを第一ポリマーと第二ポリマーにカップリングさせた後、モノマー溶液を、第一反応領域と第二反応領域から定期的に除去するステップを有する、請求項35記載の方法。
【請求項38】
第一モノマーを第一反応領域にカップリングさせ次いで第二モノマーを第二反応領域にカップリングさせ、その後追加のモノマーを、第一反応領域および第二反応領域に入れてカップリングさせる、請求項35記載の方法。
【請求項39】
モノマー溶液を、雷気泳動ポンプ、ピペットおよび荷電液滴ディスペンサーからなる群から選択されるディスペンサーによって第一反応領域と第二反応領域に入れる、請求項35記載の方法。
【請求項40】
単一基板上の、複数の反応領域を有する化合物の非相同アレーを変換する方法であって;下記のステップすなわち
第一群の反応領域と第二群の反応領域を活性化し;
第一反応物を第一群の反応領域に送りこむが第二群の反応領域には送りこまず;
第一反応物を第一群の反応領域で反応させて第一非相同アレーを第二非相同アレーに変換し、その非相同アレーが約100個を越える別個の反応領域を有する;
ステップからなる方法。
【請求項41】
さらに、第一群の反応領域を第二群の反応領域から隔離するステップを有する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
第一群の反応領域を、チャネルブロックを基板に当接させて配置することによって隔離する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
第一群の反応領域を、基板上の壁によって第二群の反応領域から隔離する、請求項40記載の方法。
【請求項44】
基板が、壁によって互いに隔離された反応領域を通過する一連の流れを有する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
第一群の反応領域を、基板上の一つ以上の非湿潤領域によって第二群の反応領域から隔離する、請求項40記載の方法。
【請求項46】
非相同アレーが約1000個を越える別個の反応領域を有する、請求項40記載の方法。
【請求項47】
さらに、下記のステップ:すなわち
第二反応物を第二群の反応領域に送りこむが第一群の反応領域には送りこまず;
第二反応物を第二群の反応領域で反応させ;
第三群の反応領域を活性化させ、その第三群は第一群の反応領域と共通のいくつかの反応領域を有し;
反応物を第三群の反応領域に送りこむが第二群の反応領域には送りこまず;そして
反応を第三群の反応領域で起こさせる;
ステップを有する、請求項40記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基板上にポリマーの配列(アレイ)を形成する方法であって、
(A)1mm2より小さい局所領域(複数)を物理的に境界づけるために基板上あるいはそれに隣接して閉じ込め要素を配置するステップであって、前記局所領域(複数)はポリマーあるいはモノマーを含む反応物溶液と反応するように使用可能になっているステップと、
(B)前記局所領域(複数)へ反応物溶液を与え、もって前記閉じ込め要素により前記反応溶液が前記局所領域(複数)に閉じ込められるステップと、
(C)前記局所領域(複数)へ前記反応物を直接あるいは間接的に付着させるステップと、
(D)前記ステップ(B)及び(C)及び選択的にステップ(A)を繰り返し、少なくとも100個の異なるポリマーの配列(アレイ)が異なる複数の局所領域に形成されるまで、異なる局所領域(複数)に異なる反応物を付着させるステップとを有する
固体基板上にポリマーの配列(アレイ)を形成する方法。
【請求項2】
前記閉じ込め要素は疎水性であり、前記局所領域(複数)は親水性である請求項1の方法。
【請求項3】
前記閉じ込め要素は、前記基板上の表面にフォトレジストを置き且つ前記フォトレジストの一部を選択的に除去することにより形成される請求項1の方法。
【請求項4】
前記ポリマーは核酸であり、前記ステップ(B)及び(C)は、前記基板の表面の1cm2内の局所領域(複数)を占有する少なくとも1000個の異なる核酸(複数)の配列を生成するように繰り返される請求項1の方法。
【請求項5】
前記基板はガラスあるいは水晶あるいはシリコンである請求項1の方法。
【請求項6】
前記反応物溶液は水溶性溶液である請求項1の方法。
【請求項7】
前記局所領域(複数)は、5〜100μmの間で離間されるようにあらかじめ規定される請求項1の方法。
【請求項8】
前記表面は、前記ポリマーが付着されるところの親水性局所領域(複数)を取り囲む疎水性の物質を含む請求項1の方法。
【請求項9】
前記ポリマーは、核酸、あるいは、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、あらかじめ合成されたポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアセテート、受容体、酵素、抗体、触媒ポリペプチド、ホルモン受容体、あるいはオプピエート受容体を含む請求項1の方法。
【請求項10】
前記局所領域は1mm2よりも小さい請求項1の方法。
【請求項11】
前記局所領域は0.5mm2より小さい請求項1の方法。
【請求項12】
前記局所領域は10,000μm2より小さい請求項1の方法。
【請求項13】
前記局所領域は100μm2よりも小さい請求項1の方法。
【請求項14】
異なる局所領域(複数)に、少なくとも1,000個の異なる反応物のアレイ(配列)が形成される請求項1の方法。
【請求項15】
異なる局所領域(複数)に、少なくとも10,000個の異なる反応物(試薬)の配列が形成される請求項1の方法。
【請求項16】
異なる複数の局所領域に、少なくとも100,000個の異なる反応物(試薬)の配列が形成される請求項1の方法。
【請求項17】
異なる複数の局所領域に、少なくとも1,000,000個の異なる反応物(試薬)の配列が形成される請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−194897(P2006−194897A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32668(P2006−32668)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【分割の表示】特願平5−509567の分割
【原出願日】平成4年11月20日(1992.11.20)
【出願人】(399125757)アフィメトリックス インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】