説明

ポリマー基材の光学物理的処理方法及び当該方法を実施するための装置

本発明の目的は、たとえば基材を無電解金属被覆するため、基材(ポリマー)に特定の物性、特に表面ナノ細孔質を与えることを可能とし、かつスルホクロム酸での酸洗いによる表面処理を完全に置き換える、表面処理プロセスを提供することである。この目的を達成するため、本発明の表面処理は、基材表面に対するハイブリッドUV/コロナ処理と、これに続く無電解金属被覆処理とを含む。本発明はまた、これらのプロセスを実行するための装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン:Acrylonitrile Butadiene Styrene))などのポリマー基材又はコポリマー基材の表面処理に関し、特に、基材を金属膜で覆うための表面処理に関する。
【0002】
本発明はまた、自動車部品のクロムめっきなどの装飾用基材の無電解金属被覆方法(non-electrolytic metallization methods)、及び航空用基材の無電解金属被覆方法に関する。本発明は、電子機器用基板の無電解金属被覆、特に導電路の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
ABSなどのポリマー基材の無電解金属被覆の分野においては、金属膜の付着を容易にするために基材表面を前処理する必要がある。
【0004】
最も一般的な前処理は、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に具体的に記載された、スルホクロム酸(sulfochromic)の侵食による化学的な表面酸化処理である。この非常に腐食性の強い処理により、金属膜の機械的固着を容易にするためにマイクロ多孔質面/ナノ多孔質面を得ることが可能となる。
【0005】
スルホクロム酸の混合液は、硫酸と、クロム酸カリウム又はクロム酸ナトリウムとの混合液(H2S04/(K2、Na2)Cr27)である。この混合液は、非常に毒性が強く環境にとって危険であり、欧州連合は、この混合液に含まれる六価クロム塩をカテゴリ1及びカテゴリ2のヒト発癌性物質であると言明している。使用される化合物の毒性の問題に加えて、スルホクロム酸の侵食による表面処理は、特許文献4、及び特許文献5に具体的に記載されたJet Metal Technologies社の方法を用いて無電解金属被覆を行う場合、満足のいく付着結果が得られない。実際には、酸化が非常に強く金属膜が非常に薄いため、酸化により生じた孔によって時間とともに金属膜が剥離するという現象が誘発される。
【0006】
あまり一般的ではないが、その他の化学的酸化も使用される。その他の化学的酸化は、過マンガン酸カリウムなどのその他の強力な酸化剤を使用するものであってもよい。過マンガン酸カリウムは可燃性で、人間にとって有害であり、かつ、水性生物にとって有毒である。
【0007】
前処理はまた、特許文献6に具体的に記載された、オゾンを使用した加熱による酸化前処理であってもよい。この処理では、酸化は紫外線(UV)照射により促進される。オゾンは酸素分子に自然分解する可燃性の気体である。オゾンもまた、吸入毒性があり腐食性がある。
【0008】
危険性がある汚染性の酸化化学剤の使用と関連した問題を克服するため、機械的前処理溶液又は物理的前処理溶液が検討されてきた。
【0009】
特に、サンドペーパーによる機械的研磨前処理が知られているが、他の特徴として、研磨されすぎてしまうという不都合がある。したがって、同様の光輝仕上げを得るためにはより厚い金属沈着を行わなければならない。このため、金属被覆のコストが大幅に増加する。
【0010】
制御された雰囲気下で加熱しながら、減圧下でプラズマを使用する物理的前処理もまた知られている。その他の既知の物理的表面前処理は、火炎処理である。
【0011】
これら2つの種類の物理的前処理は、膜付着の質の観点から、まったく満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3769061号
【特許文献2】英国特許出願公開第1240294号
【特許文献3】英国特許出願公開第1291351号
【特許文献4】仏国特許出願公開第2763962号
【特許文献5】仏国特許出願番号06−10287号
【特許文献6】特開平10‐92377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ポリマー基材に、その基材の無電解被覆などのため、特定の物理的特性、すなわち表面ナノ多孔性を与え、かつ、スルホクロム酸の侵食による表面処理を完全に置き換える表面処理方法が望まれている。
【0014】
少なくとも1つの以下の目的を満たす、ポリマー基材表面を金属被覆するための無電解法であることも望まれる。すなわち、
・当該方法は、金属膜のポリマー基材表面に対する付着が容易でなくてはならない。
・当該方法は、特に反射特性などの光学特性及び導電特性を有する、可能な限り薄い金属膜の被覆が可能でなければならない。
・当該方法は、「クリーン」でなければならない。すなわち、当該方法では、金属被覆に先だってポリマー表面をナノ多孔質にするために、スルホクロム酸酸化剤又は過マンガン酸カリウムなどのような、強力な酸化剤である有毒溶液、汚染性溶液、及び有害溶液を使用してはならない。
・当該方法は、当該プロセスにより生じる廃液のリサイクルが可能でなければならない。
・当該方法は、たとえば長さ1m〜5mの範囲のキャビンを用いて、既存の生産ラインに統合することができる小型装置の導入で実行可能でなり、自動化されたラインでの表面処理が可能でなければならない。
【0015】
本発明のその他の目的は、基材の全処理及び金属被覆方法をインラインで実行するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
長期間の研究により、本出願人は、好ましくは金属被覆すべきポリマー基材の紫外線放射及びコロナ放電によるUV/コロナ併用処理が、現存のスルホクロム酸の侵食による処理を完全に置き換え、さらに、好ましくはポリマー基材に対する金属膜の付着性を増大させ、装飾された基材の外観を向上可能とすることを見出した。
【0017】
このため、本発明は、好ましくはポリマーの基材表面へのUV/コロナ併用処理を含むことを特徴とする、基材の表面処理方法を目的とする。
【0018】
本発明において、用語「ポリマー」は、ホモポリマー、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などのコポリマーを意味する。
【0019】
「UV/コロナ併用処理」によって、たとえば、基材は1又は複数回のコロナ放電処理と、1回又は複数回のUV処理であるUV照射とを受ける。これらのUV処理及びコロナ処理は、同時に行われても同時に行われなくてもよく、いずれの順番で行われてもよい。
【0020】
用語「コロナ処理」は、たとえば金属被覆される基材が、この効果を目的とする材料を用いて、かつ1つ又は複数、好ましくは2つ又は3つの放電ヘッド(又はプローブ)を有する器具を用いて、たとえば1〜100キロワット(kW)の放電を受けることを意味する。本発明において、用語「コロナ処理」は、最も広い意味である、すなわち大気プラズマである「空気プラズマ」、「火炎プラズマ」、及び化学的プラズマを使用した処理を含む意味で理解されるべきである。
【0021】
本発明において、「UV処理」は、たとえば金属被覆される基材を、たとえば200nm〜600nmの発光スペクトルを有し、365nmの波長にエネルギーピークを有する、PHILIPS(登録商標)社から販売されているHK125(登録商標)ランプなどの紫外線ランプの下を通過させることに相当する。
【0022】
基材表面のUV/コロナ併用処理は、金属被覆段階の直前に、中間ステップを含まずに行われることが好ましい。したがって、UV/コロナ併用処理と金属被覆ステップとの間の時間間隔は、たとえば数分以下である。たとえば、この継続時間は30分以下であり、好ましくは5分以下であり、より好ましくは1分以下であり、さらに好ましくは数秒である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の金属被覆方法の実施形態の全体図である。
【図2】本発明の金属被覆装置の図である。
【図3】本発明の金属被覆方法を用いて金属被覆された基材の横断面図である。
【図4】本発明の金属被覆方法を用いて金属被覆された基材の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
《基材》
上述のこの方法の好ましい実施条件において、基材はポリマーであり、好ましくは以下の熱可塑性プラスチック又は熱硬化性ポリマーから選択されるポリマーである。
【0025】
I.熱可塑性プラスチックは、
・ポリスチレン、ポリ(スチレン‐ブタジエン‐スチレン)即ちSBSのようなスチレンのコポリマー、ポリプロピレン、及び、ポリエチレンのいずれか1つを含むポリオレフィンと、
・ポリアミドと、
・アクリロニトリルとメチルアクリレートとのコポリマー、アクリロニトリルとメチルメタクリレートとのコポリマー、アクリロニトリルと塩化ビニルとスチレンとのコポリマー(SAN)、たとえばBAYER(登録商標)社からNOVODUR(登録商標)の商品名で販売されているアクリロニトリルとブタジエンとスチレンとのコポリマー(ABS)、及び、アクリロニトリルとブタジエンとスチレン(ABS)とポリカーボネート(PC)とのコポリマーのいずれか1つを含むアクリロニトリルのコポリマーと、
から選択される。
【0026】
II.熱硬化性ポリマーは、
・ポリイミドと、
・ポリエステルと、
・フェノール樹脂と、
・エポキシドと、
から選択される。
【0027】
《UV/コロナ併用処理》
UV/コロナ併用処理は、以下の処理、すなわちUV処理とコロナ処理との交互処理と、UV処理とコロナ処理との同時処理と、1回又は複数回のUV処理とコロナ処理との交互処理と1又は複数回のUV処理とコロナ処理との同時処理とを含む処理と、これらの組み合わせと、から選択される。
【0028】
本発明において、UV/コロナ併用処理は、UV処理とコロナ処理との交互処理を少なくとも1回含む。
【0029】
実施される基材がTABS製、PABS−P製、又はポリプロピレン製である場合、交互処理は、UVの次にコロナを連続して行うことが好ましい。
【0030】
本発明の注目すべき特徴によれば、UV/コロナ併用処理は、0.01秒〜30分のUV処理と0.01秒〜30分のコロナ処理との交互処理を1回〜120回含む。
【0031】
好ましくは、UV/コロナ併用処理における交互処理は、3回〜16回の交互処理、すなわち5回〜15回の交互処理、さらに好ましくは4回〜14回の交互処理、たとえば6回又は12回の交互処理を含む。
【0032】
UV/コロナ併用交互処理中のコロナ処理の継続時間は、好ましくは0.1秒〜5分、すなわち0.5秒〜2分、さらに好ましくは1秒〜1分である。
【0033】
UV/コロナ交互処理におけるUV処理の継続時間は、好ましくは30秒〜15分、すなわち1分〜5分、さらに好ましくは1分〜2分である。
【0034】
本発明において、コロナ処理の継続時間は、たとえば被処理表面の単位面積が、該被処理単位面積に相当する所与の面積(たとえば10cm2)のプローブ(又は放電ヘッド)を有するコロナ装置を用いたコロナ放電に曝されるか、又はコロナ放電を受ける間の継続時間を意味する。コロナ処理の継続時間は、100cm2の被処理平面における10cm2の単位面積に対して、たとえば15秒である。これは表面を合計15秒間のコロナ処理をするのと同等であり、75秒間のUV/コロナ併用処理をするのと同等であり、60秒間のUV処理と15秒間のコロナ処理とに相当する。
【0035】
本発明の方法によれば、交互のUV/コロナ併用処理中の交互処理は、コロナ処理又はUV処理のいずれで開始してもいずれで終わってもどちらでもよい。好ましくは、交互処理はUV処理から開始するのがよい。
【0036】
本発明の目的は、また、上に定義したUV/コロナ併用処理の次に、上記のように処理した基材の無電解金属被覆を行う表面処理方法でもある。
【0037】
《金属被覆処理(Metallization)》
[第1実施形態]
上述の金属被覆方法の第1実施形態において、無電解金属被覆は、1種類又は複数種類のエアロゾル状酸化還元(redox)溶液をスプレーすることによる無電解金属被覆である。
【0038】
1種類又は複数種類のエアロゾル状酸化還元溶液をスプレーすることによる金属被覆は、無電解金属被覆が、少なくとも以下のステップ、すなわち、
・1種類又は複数種類のエアロゾル状酸化還元溶液をスプレーするステップと、
・洗浄するステップと、
を含む。
【0039】
本発明において、「1種類又は複数種類の酸化還元溶液」は、たとえば、
・複数の酸化剤と1つ又は複数の還元剤とを同時に含む単一溶液、又は、
・1つ又は複数の酸化剤を含む第1溶液及び1つ又は複数の還元剤を含む第2溶液の、2つの溶液、あるいは、
・少なくとも1つの酸化溶液と少なくとも1つの還元溶液とが存在しているという条件で、各々が1つ又は複数の酸化剤若しくは1つ又は複数の還元剤のいずれかを含む複数の溶液、
のいずれかを意味する。
【0040】
第1の可能性によれば、1種類又は複数種類のエアロゾル状酸化還元溶液をスプレーすることによる無電解金属被覆は、以下のステップ、すなわち、
・基材の表面を湿潤させるステップと、
・1種類又は複数種類のエアロゾル状酸化還元溶液をスプレーするステップと、
・洗浄するステップと、
をこの順番で含む。
【0041】
第2の可能性によれば、1種類又は複数種類のエアロゾル状酸化還元溶液をスプレーすることによる無電解金属被覆は、以下のステップ、すなわち、
・好ましくはSnCl2溶液を用いて、表面を増感するステップと、
・洗浄するステップと、
・1種類又は複数種類のエアロゾル状酸化還元溶液をスプレーするステップと、
・洗浄するステップと、
をこの順番で含む。
【0042】
(スプレー処理(Spraying))
無電解金属被覆中に使用される酸化還元溶液は、エアロゾルの状態で基材上にスプレーされ、1つ又は複数の酸化性金属カチオンと1つ又は複数の還元性化合物との溶液(水性溶液が有利である)とから得られることが好ましい。これらの酸化還元溶液は、好ましくは濃縮貯蔵溶液の希釈により得られる。希釈剤は好ましくは水である。
【0043】
したがって、本発明の好ましい構成によれば、スプレーするエアロゾルは、100μm未満、好ましくは60μm未満、より好ましくは0.1〜50μmの液滴の霧を得るために、溶液及び/又は分散液を霧状及び/又は微粒子化することにより生成されるということになる。
【0044】
本発明の方法によれば、金属被覆溶液のスプレーは、好ましくは連続的に行われ、基材を移動させてスプレーする。たとえば、金属被覆が銀から作られている場合、スプレーは連続的に行われる。たとえばニッケルから作られた金属被覆の場合、スプレーは休憩時間を挟んで交互に行われる。
【0045】
本発明の方法において、スプレーは、たとえば、金属被覆される領域1dm2に対して、0.5秒〜1000秒、好ましくは1秒〜800秒、より好ましくは2秒〜600秒続く。基材は、金属被覆のスプレーの間、少なくとも部分的に回転されてもよい。
【0046】
第1のスプレー方法によれば、1つ又は複数のエアロゾルで、1つ又は複数の金属カチオン溶液と1つ又は複数の還元性溶液とが、被処理表面上に継続的にかつ同時にスプレーされる。この場合、酸化性溶液と還元性溶液との混合液は、スプレーされるエアロゾルの形成直前に、又は酸化性溶液から生成したエアロゾルと還元性溶液から生成したエアロゾルとを融合することにより、好ましくは金属被覆される基材表面と接触する前に生成することができる。
【0047】
第2のスプレー方法によれば、1つ又は複数のエアロゾルを介して、1つ又は複数の金属カチオン溶液の次に、1つ又は複数の還元性溶液が連続的にスプレーされる。言い換えれば、酸化還元溶液のスプレーは、1つ又は複数の金属酸化剤を含む1つ又は複数の溶液と、1つ又は複数の還元剤を含む1つ又は複数の溶液とを別々にスプレーすることにより行われる。この第2の可能性は、1つ又は複数の還元性溶液と1つ又は複数の金属塩とを交互にスプレーすることに相当する。
【0048】
第2のスプレー方法の枠組みにおいて、異なった金属又は合金の多層を形成するための複数の酸化性金属カチオンの関連性は、好ましくは、異なった塩を、還元剤とは別々に、さらにお互いを別々に、連続的に自然スプレーするというようなものである。金属カチオンの種々の性質だけでなく、異なった対アニオンの使用も考慮され得ることは明らかである。
【0049】
スプレーステップの変形形態によれば、1つ又は複数の酸化剤と1つ又は複数の還元剤との準安定混合物を生成し、該混合物をスプレーする。その後、好ましくは開始剤と接触させて、反応混合物のスプレー前に、スプレー中に、又はスプレー後に、(有利には、1つ又は複数のエアロゾルを介して)金属への転換が開始されるように該混合物を活性化する。この変形形態により、スプレー後に酸化剤と還元剤とが基材を被覆するまで、これらの反応を遅らさせながら酸化剤と還元剤とをあらかじめ混合することが可能となる。反応の開始又は活性化は、任意の物理的手段(温度、UVなど)あるいは化学的手段によりなされる。
【0050】
上に示し、実施例により以下に説明する方法論的考察以上に、本発明の方法において達成される生産物についての正確な情報を提供することが適切である。
【0051】
有機溶媒を使用する可能性を除くと、水は、スプレーするエアロゾルが生成されることになる溶液を生成するための、最も安定な溶媒であるようだ。
【0052】
基材の金属被覆ステップ中にスプレーされる酸化還元溶液は、金属酸化剤の1つ又は複数の溶液及び還元剤の1つ又は複数の溶液である。
【0053】
スプレーされる酸化溶液中の金属塩の濃度は0.1g/l〜100g/lであり、好ましくは1g/l〜60g/lであり、貯蔵溶液中の金属塩の濃度は0.5g/l〜103g/lであり、該貯蔵溶液の希釈係数は5〜500である。金属塩は、以下の化合物、すなわち、硝酸銀、硫酸ニッケル、硫酸銅、塩化スズ、及びこれらの混合物から選択されることが有利である。
【0054】
還元剤は、好ましくは以下の化合物、すなわち、ホウ化水素、ジメチルアミノボラン、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、水素化アルミニウムリチウム、グルコース及びエリソルビン酸ナトリウムなどの還元糖、並びにこれらの混合物から選択される。還元剤は、pH及び金属被覆膜の目的とする特性を考慮して選択する必要がある。当業者はこれらの日常的な調整を行うことができる。スプレーされる還元溶液中の還元剤の濃度は0.1g/l〜100g/l、好ましくは1g/l〜60g/lであり、貯蔵溶液中の還元剤の濃度は0.5g/l〜103g/lであり、該貯蔵溶液の希釈係数は5〜100である。
【0055】
本発明の特定の構成によれば、金属被覆時にスプレーされる少なくとも1つの酸化還元溶液中に、粒子が取り込まれる。その結果、該粒子は金属被覆に閉じ込められる。これらの硬質粒子は、たとえば、ダイヤモンド、セラミックス、カーボンナノチューブ、金属粒子、希土類酸化物、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、金属酸化物、及びこれらの混合物である。金属膜にこれらの粒子を取り込むことにより、金属基材に特有の機械的特性と美的特性とが付与される。
【0056】
(洗浄処理(Rinsing))
洗浄ステップ、すなわち、表面全体又は表面の一部を1つ又は複数の洗浄液源と接触させるステップは、洗浄液のエアロゾル(好ましくは水)をスプレーすることにより行われることが有利である。
【0057】
(湿潤処理(Wetting))
上で述べた湿潤予備ステップは、基材表面を液膜でカバーすることからなる。湿潤液は、以下の群、すなわち、1つ又は複数の陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、又は中性界面活性剤、1つ又は複数のアルコール(たとえば、イソプロピルアルコール、エタノール)及びこれらの混合物が添加されていてもよい、脱イオン水又は非脱イオン水から選択される。具体的には、陰イオン界面活性剤とエタノールとが添加された脱イオン水が湿潤液として選択される。(その上で湿潤液が液化する)基材上にスプレーされた湿潤液が蒸気に変換される、湿潤の変形形態においては、産業上の利便性という明白な理由のため、該液は基本的に水性であることが好ましい。湿潤の継続時間は、検討中の基材の面積及び湿潤エアロゾルのスプレー速度に依存する。
【0058】
(増感処理(Sensitization))
本発明の特定の実施形態によると、基材表面の増感ステップは、たとえば特許文献4に記載の実施様式に準じて、増感溶液、具体的には塩化第一スズを用いて実施することができる。この場合、上述のような洗浄液を用いた洗浄ステップは、中間のステップを挟まずに、増感ステップの直後に行われる。
【0059】
(熱処理(Thermal treatment))
第1実施形態によれば、金属被覆された基材はスプレー処理の次の洗浄処理の直後に、付着を強化するために熱処理される。
【0060】
熱処理は、好ましくは50℃〜150℃、より好ましくは60℃〜120℃、さらに好ましくは約100℃の温度の赤外線オーブン又は赤外線トンネル中で、5分〜3時間、好ましくは15分〜90分間、より好ましくは約60分間行われる。熱処理は洗浄水を排水するステップからなる乾燥ステップであってもよい。熱処理は、たとえば20℃〜40℃の温度で1パルスあたり5バールのパルス化された圧縮空気系を用いて、20℃〜40℃の温度で行うことが有利な場合がある。
【0061】
本発明の意味におけるエアロゾル状の1種類又は複数種類の酸化還元溶液のスプレーによる無電解金属被覆ステップのすべての実施形態は、特許文献4及び特許文献5に、より正確に記載されている。
【0062】
[第2実施形態]
上述の金属被覆方法の第2実施形態によれば、無電解金属被覆は、1種類又は複数種類の酸化還元溶液を含む1つ又は複数の溶液槽に浸漬することによる無電解金属被覆である。この方法は、当業者により「化学的金属被覆」と呼ばれる。
【0063】
1種類又は複数種類の酸化還元溶液を含む1つ又は複数の溶液槽に浸漬することによる無電解金属被覆とは、当該無電解金属被覆が、少なくとも、
・好ましくはSnCl2溶液を用いて、表面を増感するステップと、
・好ましくはPdCl2溶液を用いて、表面を活性化するステップと、
・塩酸又は苛性ソーダで洗浄するステップ
・基材を酸化還元溶液の入った1つ又は複数の溶液槽に浸漬するステップと、
・洗浄するステップと、
をこの順番で含むことを意味する。
【0064】
好ましくは、処理される部分を、主に3つの物質、すなわち金属塩と還元剤と自発的還元及び溶液槽での沈殿を防止する錯化剤とを含む溶液槽に浸漬する。
【0065】
本発明における1種類又は複数種類の酸化還元溶液を含む1つ又は複数の溶液槽に浸漬することによる無電解金属被覆のすべての実施形態は、より具体的には、特許文献4に記載されている。
【0066】
当該方法の好ましい実施形態によれば、生成される金属被覆は化学的ニッケル被覆である。たとえば、被覆はATOTECH(登録商標)の化学的酸化還元溶液が使用可能であり、
・活性化のための被覆には、FUTURON(登録商標)溶液が使用可能であり、
・化学的ニッケル金属被覆には、NOVIGANTH AK(登録商標)を使用することができる。
【0067】
(仕上層形成処理(Finishing layer))
本発明の特定の実施形態によれば、当該方法は、以下の無電解金属被覆「ステップに加えて、該ステップの後に仕上層を形成するためのステップを含む。
【0068】
仕上層を形成するステップは、好ましくは金属被覆された表面を電解厚膜化することである。電解厚膜化は、少なくとも部分的に金属被覆された基材を、電解液を含む溶液の溶液槽に浸漬し、電解液の溶液槽に存在する電極と少なくとも部分的に金属被覆された基材との間に十分に高い電流を通すことにより行われることが好ましい。本発明の枠組みにおいて、電解液は金属被覆された基材表面上の被覆に適した金属イオンであるCr6+、Ni2+、Ag+、及びCu2+など、クロム、ニッケル、銀、又は銅などの金属のイオンから選択される。たとえば、銅を厚膜化し、次にニッケルの層を厚膜化し、クロムの最終層を厚膜化するなどの、連続的なステップにより、複数の金属層の積層を形成してもよい。電解厚膜化の技術は当業者に周知である。たとえば、250g/lのCu2+イオン溶液から、1dm2の金属被覆された領域を有する基材上に1μmの銅の層を形成するために必要とされる電流量は、0.5A〜20Aである。一般に、電解厚膜化により形成される仕上層の厚さは2μm〜40μmである。仕上層が電解厚膜化によって形成される場合、基材は部分的に金属被覆されていることが好ましい。部分的な金属被覆は、すなわち、金属被覆先だって基材表面の一部をマスキングすることにより可能である。
【0069】
本発明の金属被覆方法において、好ましくは金属被覆の第1実施形態において、当該方法の種々のステップに由来する廃液を、当該方法で使用し、かつ生態学的影響を制限するために、再処理して再利用することが有利である。
【0070】
上述及び第1実施形態の金属被覆方法において、廃液の再処理及び再利用は、以下のステップをこの順番で含む。
・廃液、具体的には汚水由来の廃液を、容器に回収するステップと、
・可能であれば、凝集剤を添加するステップと、
・可能であれば、上澄みを取る(decanting)ステップと、
・可能であれば、ろ液と沈殿物とを分離するステップ、すなわち、ろ過による分離ステップと、
・可能であれば、ろ液を中和するステップ、具体的には、pHを制御しながら酸を添加することによりアンモニアを除去するステップと、
・ろ液を、好ましくはエバポレータ内で、蒸留するステップと、
・可能であれば活性炭システムを通過させるステップと、
・蒸留液を、たとえば、金属被覆方法において正常水として再利用するか、又は酸化還元溶液の希釈液として再利用するか、あるいは下水に廃棄するステップと、である。
【0071】
廃液に添加する凝集剤は、好ましくは、SNF FLOERGER(登録商標)社から発売されている凝集剤などの荷電有機ポリマーである。
【0072】
上澄みと沈殿物との分離は、焼結フィルター上でのろ過、又はオーバーフローにより行うことが有利である。
【0073】
その後、沈殿物を廃棄処分し、廃棄物を再処理又は再利用するための専門センターへ送ってもよい。
【0074】
得られたろ液は、0.1N〜10Nの規定度の酸溶液を添加することにより、ろ液がpH5〜6になるまで中和してもよい。具体的には、ろ液中に存在するアンモニアの中和に使用される酸は、塩酸、硫酸、硝酸、及びこれらの混合液から選択される。
【0075】
ろ液の蒸留は、好ましくはエバポレータを用いて行われ、ろ液は90℃〜120℃の温度で加熱される。蒸留の最後にボイラーの底部に残留する残渣を廃棄処分し、廃棄物を再処理又は再利用するための専門センターへ送ってもよい。蒸留水は金属被覆方法において再利用することができ、具体的には貯蔵溶液の希釈のため、並びに洗浄ステップ及び湿潤ステップのために再利用することができる。
【0076】
本発明の方法には多数の利点がある。表面処理により金属被覆反応の制御が可能となり、表面への金属膜の付着性を向上させることが可能となる。UV/コロナ併用処理は、化学製品を使用しない。さらに、工業規模では1日に1トン以上となる、当該プロセスにより排出される金属被覆廃液は、当該プロセスにより再処理し再利用される。再処理モジュールから排出される蒸留水は純粋であり、そのまま酸化剤貯蔵溶液及び還元剤貯蔵溶液の希釈のため、並びに洗浄及び湿潤のために使用することができる。
【0077】
この利点は、水の消費量が大幅に減少するため経済的観点から無視できないものであり、廃棄される水の量が大幅に減少するため環境的観点から無視できないものである。当該方法では工業水を用いることはできないこと、及び当該方法が廃液を再処理し汚水を浄化するモジュールを含まない場合は浄化ステップが必要となることに注意しなければならない。さらに、当該方法では、金属被覆に先だって現場(on-site)で希釈される濃縮貯蔵溶液が使用される。したがって、すでに溶液が希釈されている場合と比較して、貯蔵溶液の量は少なくなり、これにより特に輸送のためのコストが削減される。
【0078】
さらに、使用される還元剤の量は認証基準(ISO14001)より少なく、この化合物は環境に対して有毒であるため使用量を減らすことは重要な環境的利点である。
【0079】
さらに、得られる電解厚膜化は選択的であるという利点がある。すなわち、電解厚膜化は、基材の金属被覆された表面上でのみ起こり、これにより導電路などのエンボスパターンを作成することが可能となる。
【0080】
本出願の目的はまた、上の説明に定義された通り、UV/コロナ併用処理と基材の金属被覆とを含む表面処理方法であり、この方法では複数の基材が連続性を絶つことなくインラインで処理される。具体的には、当該方法は、金属被覆される基材を取り付けるステップと金属被覆済みの基材を取り外すステップとを除いては、人間により行われるいかなる操作も必要としない。
【0081】
上述の方法は、以下の部材、すなわち、
・UV/コロナ併用表面処理のための少なくとも1つのモジュールと、
・無電解金属被覆のための少なくとも1つのモジュールと、
を含む工業用の金属被覆装置を用いて実施することが有利である。
【0082】
本発明の好ましい実施形態によれば、上述の方法を実施するための工業用装置は、さらに以下の部材、すなわち
・仕上層を形成するための少なくとも1つのモジュールと、
・廃液を再処理及び再利用するための少なくとも1つのモジュールと、
を含む。
【0083】
UV/コロナ併用表面処理のためのモジュールは、1つ又は複数のコロナ放電ヘッドと、1つ又は複数のUVランプとを含む。このモジュールは、たとえば、DMG(登録商標)社からC22(登録商標)の商品名で販売されているコロナ放電トンネル、及びPHILIPS(登録商標)社の参照UVランプHK125(登録商標)であってもよい。
【0084】
無電解金属被覆モジュールは、特許文献4に具体的に記載される、溶液をスプレーする既存の手段である無電解金属被覆手段、又はたとえば溶液による電気めっきラインなどの浸漬手段を含む。
【0085】
スプレー手段は、たとえば1セットのHVLP(大容量低圧)スプレーガンなどを含み、このガンは各々が1つ又は複数の溶液供給ポンプと連結されている。第1のポンプ/ガンシステムは湿潤ステップのために提供される。第2のポンプ/ガンシステムは増感ステップのために提供され、第3のポンプ/ガンシステムは洗浄のために提供される。金属酸化剤溶液と還元剤溶液とのスプレーは、少なくとも2つのポンプ/ガンシステム、すなわち酸化剤溶液のためのシステムと還元剤溶液のためのシステムとを用いて行われる。酸化剤溶液のスプレーのためには、ガンの数は1〜30であり、少なくとも1つのポンプと連結されている。1〜30個のガンを用いる還元剤溶液のスプレーについても同様である。最後のポンプ/ガンシステムは、金属被覆溶液のスプレー後の洗浄のために提供される。
【0086】
浸漬手段は、たとえば液体溶液を入れる容器(タンク又はバット)である。使用されるラインは、たとえばCORELEC(登録商標)社から販売されるものである。
【0087】
無電解金属被覆モジュールはまた、IRオーブン又はIRトンネルの使用、あるいは20℃〜40℃の温度で1空気パルスあたり5バールの、パルス化された圧縮空気系など、金属膜のための熱処理手段を含んでいてもよい。
【0088】
仕上層を形成するためのモジュールは、金属被覆された表面を電解厚膜化する手段、具体的には、電解質を含む溶液で満たされた電解溶液と少なくとも1つの電極と電流循環装置とを含む。
【0089】
本発明の装置が既存の溶液スプレー手段である無電解金属被覆手段を用いる場合、当該装置はさらに廃液を再処理し再利用するためのモジュールを備える。
【0090】
廃液を再処理及び再利用するためのこのモジュールは、たとえば、廃液を回収容器に導き、金属被覆される基材が配置されるコンベア機構の保護を目的としたシケインスクリーンのような回収管などの廃液回収手段を含む。
【0091】
廃液を再処理及び再利用するためのこのモジュールはまた、
・デカンター装置又はオーバーフロー装置などの、ろ液と沈殿物とをデカンテーション及び分離する手段と、
・1つ又は複数のボイラーと1つ又は複数の冷蔵カラムとを含む設備を使用するものなどの、蒸留手段と、
を含む。
【0092】
廃液を再処理する場合、たとえばパイプ及びポンプなどの液体運搬手段により、当該方法の再使用される種々のモジュールへ精製水を導く。
【0093】
本発明の装置の好ましい実施形態によれば、金属被覆される基材は、当該基再をあるモジュールから他のモジュールに移動させる手段の上に設置される。金属被覆モジュールを使用する場合、該手段は、たとえばコンベヤーであってもよく、具体的にはスプレー手段を含むベルト・ピンコンベヤーなどであってもよい。金属被覆モジュールが浸漬手段からなる場合、該手段はスイングトレイであってもよい。
【0094】
好ましくは、基材を移動させる手段は、その軸の周りに基材を回転させる手段を備える。
【0095】
本発明はまた、上述の方法を用いて得られる金属被覆された基材に関し、該基材は、具体的には自動車部品又は航空分野で使用される部品である。
【0096】
本発明はまた、前述の方法を用いて得られる金属被覆された基材を目的とし、該基材は、具体的には導電路又は無線自動識別(RFID)アンテナなどの電子装置で用いられる部品である。
【0097】
添付の図面を参照しながら本方法の実施例及び本装置の実施形態についての以下の説明を読み取ることにより、本発明はさらに良く理解されるであろう。
【0098】
図1では、本発明のメ金属被覆方法の実施形態の不可欠なステップとオプションであるステップとが示される。
【0099】
図2は、本発明の方法を実施するための装置の略図である。
【0100】
この装置は以下の3つのモジュールを含む。
・UV/コロナ併用処理モジュール3と、
・無電解金属被覆モジュール6と、
・仕上層を形成するためのオプションであるモジュール16と、である。
【0101】
UV/コロナ併用処理モジュール3は、UV処理キャビン4とコロナ処理キャビン5とを含む。
【0102】
無電解金属被覆モジュール6は、ポンプ9と連結されたガン8を備えたスプレーゾーン7を含み、各々のポンプは独自の溶液バットと連結されている。ポンプ10は表面を湿潤させるために確保される。ポンプ11は基材表面を増感するステップのために提供され、ポンプ12は洗浄のために提供される。ポンプ13及びポンプ14は酸化還元溶液と連結される。ポンプ15は洗浄のためのポンプである。
【0103】
仕上層を形成するためのオプションであるモジュール16は、電解液17と、電解厚膜化するための十分に高い電流が循環する電極18と電極19とから成る電解膜厚化のためのキャビネットである。電極18は電解溶液槽に浸かっており、電極19は金属被覆された基材と連結されている。
【0104】
この装置を用いたプロセスの間、金属被覆される基材1は、基材をUV/コロナ併用処理モジュール3へ運搬するスイングトレイ2上に設置され、該モジュールにおいて、基材はUV処理キャビン4とコロナ処理キャビン5とによりUV/コロナ併用処理を受ける。この段階において、スイングトレイ2は、UV処理キャビン4とコロナ処理5キャビンとの間を交互に往復する。
【0105】
その後、処理された基材は、UV/コロナ併用処理モジュール3に続いて設置された無電解金属被覆6へ運搬される。スプレーゾーン7において、ポンプ10が水などで表面を湿らせる。その後、ポンプ11が塩化第一スズの溶液をスプレーする。このような増感の次に、ポンプ12を用いて、水などによる洗浄ステップが行われる。その後、ポンプ13とポンプ14とにより、金属膜の形成に必要な酸化還元溶液がスプレーされる。ポンプ13は、金属イオン溶液などに連結され、ポンプ14は還元剤溶液に連結される。これらのポンプは同時に作動しても、連続的に作動してもよい。金属被覆の後、水などの洗浄液の溶液に連結されたポンプ15を用いた洗浄ステップが行われる。
【0106】
このように金属被覆された基材は、最後に仕上層を形成するためのオプションであるモジュール16へ運搬され、ここで基材が電解厚膜化される。基材は電解溶液槽に浸かっており、電極18は電解溶液槽に浸かっており、電極19は金属被覆される基材に取り付けられ、2つの電極間を電流が循環する。
【0107】
その後、本発明の方法を使用して金属被覆された基材20は、仕上層の形成後に取り外される。
【0108】
図3及び図4は、それぞれ本発明の実施形態により金属被覆された基材の横断面の略図である。
【0109】
図3において、金属被覆された基材は層Aと層Bと層Cとの3つの層からなる。層AはABS製の基材などの基材を表し、層Bはクロム膜などの金属膜であり、層Cは硫酸ニッケルを含む浴液中で電解厚膜化した結果物である。
【0110】
図4において、帰属被覆された基材はまた、層A’と層B’と層C’という3つの層からなる。A’は、ABS‐PCなどの基材である。層B’は、表面の一部をマスキングしたメタライゼーションにより得られた、ニッケル製などの金属層である。層C’は、硫酸銅を含む浴液中で電解厚膜化した結果物である銅層である。この層C’の被覆は選択的であり、層B’の表面でのみ行われる。
【実施例】
【0111】
《実施例1:ABS基材のクロム金属被覆》
長さ10cm、幅10cm、厚さ1cm程度のBAYER(登録商標)社のABS NOVODUR(登録商標)製の成形部品を、回転プレート上で0.5rpmで回転させる。その後、回転している部品を、以下の条件にしたがってUV/コロナ交互処理により処理する。
【0112】
200nm〜600nmの波長の発光スペクトルを有するPHILIPS(登録商標)社のUV HK125(登録商標)(125mW)ランプ下に1分間置く。
【0113】
DMG(登録商標)社のC22(登録商標)装置を用いて32kWで、全表面にわたって分布する1分間のコロナ放電を行う。当該装置のプローブは2つの電極を備え、表面積は10cm2である。したがって、部品は10cm2ごとに1.6秒間のコロナ放電を受ける。プローブは表面から10mmに設置され、全表面は1分でスキャンされる。この交互処理を6回繰り返す。
【0114】
処理された部品を、スプレーを用いた無電解金属被覆のためのモジュールの内部に設置し、ここで、連続的に、
・水を5秒間スプレーすることにより該部品を湿潤し、
・10g/lの水素化ホウ素ナトリウムの水性溶液をスプレーするのと同時に、7g/lの濃度のニッケル塩(MSO4)の水性溶液を、休憩時間を挟んで600秒間交互に該部品にスプレーし、
・水で10秒間、該部品を洗浄する。
【0115】
このようにして、プロトコルに準じた電解厚膜化により、それ自体が既知の方法及び製品を用いて、仕上層がその上に形成された導電性ニッケル製の金属一次層を有するABS部品が得られる。この電解厚膜は以下の連続する層、すなわち銅(20マイクロ)+ニッケル(5マイクロ)+クロム(0.5マイクロ)からなる。
【0116】
したがって、Ni金属一次層を有するABS部品は、
・ATOTECH(登録商標)社からCUPRACIDE ULTRA(登録商標)という商品名で販売されている銅イオンの電解溶液の浴液中(電流2A、700秒)と、
・MACDERMID(登録商標)社からNiMAC(登録商標)という商品名で販売されているニッケルイオンの電解溶液の浴液中(電流2A、150秒)と、
・その後、十分に高い電流強度で、0.5μmの膜が得られるほど十分長い時間、MACDERMID(登録商標)社からMACRO ME 8210−CHROME(登録商標)レンジという商品名で販売されているクロムイオンの電解溶液の浴液中と、
に連続的に浸漬される。
【0117】
《実施例2:ABS‐PC製部品のニッケルによる金属被覆》
・長さ10cm、幅10cm、厚さ1cmであり、かつ印刷回路パターンを形成するために表面の一部がマスクされたBAYER(登録商標)社のABS‐PC部品を、回転プレート上において5rpmで回転させる。その後、回転している部品を、以下の条件にしたがってUV/コロナ交互処理を用いて処理する。
・200nm〜600nmの波長の発光スペクトル(365nmにピーク)を有するPHILIPS(登録商標)社のUV HK125(登録商標)(125mW)ランプ下に2分間置く。
・DMG(登録商標)社のC22(登録商標)装置を用いて、32ボルトで全表面にわたって1分間のコロナ放電を行う。当該装置のプローブは、2つの電極を備える。プローブは表面から10mmに設置される。
この交互処理を12回繰り返す。
【0118】
当該処理済み部品を、スプレーを用いた無電解金属被覆のためのモジュール内部に設置し、ここで、連続的に、
・塩化第一スズを5秒間スプレーすることにより該部品を増感し、
・水を該部品に10秒間スプレーすることにより増感溶液を洗浄し、
・10g/lのグルコース水性溶液のスプレーと同時に、3g/lの濃度のアンモニウム硝酸銀の水性溶液を該部品に30秒間スプレーし、
・水で25秒間、該部品を洗浄する。
【0119】
マスクを表面の一部から除去する。
【0120】
このようにして、当該部品を部分的に金属被覆し、ATOTECH(登録商標)社からCUPRACIDE ULTRA(登録商標)という商品名で販売されている銅イオンの電解溶液の浴液中に浸漬する。電極は溶液槽中に設置され、2Aの電流が電極と基材との間に印加される。電気分解の継続時間は700秒であり、厚みは20ミクロンである。
【0121】
このようにして、金属被覆され銅で厚膜化されたABS‐PC部品が得られる。
【0122】
この部品について標準化剥離試験ASTM B533を行う。0.7N/nmの平均値が得られる。
【0123】
《実施例3:ABS製部品の銅による一次金属被覆》
・長さ10cm、幅10cm、厚さ1cmであり、印刷回路パターンを形成するために表面の一部がマスクされたBAYER(登録商標)社のNOVODUR(登録商標)レンジであるABS部品を、回転プレート上において5rpmで回転させる。その後、回転している部品を、以下の条件にしたがってUV/コロナ交互処理を用いて処理する。
・200nm〜600nmの波長の発光スペクトル(365nmにピーク)を有するPHILIPS(登録商標)社のUV HK125(登録商標)(125mW)ランプ下に2.5分間置く。
・DMG(登録商標)社のC22(登録商標)装置を用いて、32ボルトで全表面にわたって2分間コロナ放電を行う。当該装置のプローブは、2つの電極を備える。プローブは表面から10mmに設置される。
この交互処理を12回繰り返す。
【0124】
処理された当該部品を、スプレーを用いた無電解金属被覆のためのモジュール内部に設置し、ここで、該部品を、連続的に、
・ATOTECH(登録商標)社のコロイダルパラジウムであるFUTURON(登録商標)を用いて7分間活性化し、
・水で25秒間洗浄し、
・ATOTECH(登録商標)社のOVOGANTH AK(登録商標)レンジであるニッケルの化学浴液槽中で15分間金属被覆し、
・水で30秒間、洗浄する。
【0125】
(ニッケル層の下が)金属被覆された部品を250g/lの銅イオンの電解溶液浴液に浸漬する。電極は溶液槽内に設置され、該電極と基材との間に2Aの電流が印加される。電気分解の継続時間は700秒であり、厚さは20ミクロンである。5ミクロンのニッケル層と0.5ミクロンのクロム層とを電解被覆することにより、レンジが完成する。この銅/ニッケル厚膜化は実施例1と同様に行われる。
【0126】
このようにして、特に自転車分野用途のためのクロム金属被覆されたABS部品が得られる。
【0127】
得られた部品について、標準化剥離試験ASTM B533を行う。0.75N/mmの平均値が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線放射及びコロナ放電を併せて用いて基材の表面に処理を施すUV/コロナ併用処理ステップと、
前記UV/コロナ併用処理ステップの後に、前記処理が施された基材を無電解で金属被覆する無電解金属被覆ステップと、
を含むことを特徴とする基材表面処理方法。
【請求項2】
前記UV/コロナ併用処理ステップにおいて、
前記基材の表面に対し、前記紫外線放射と前記コロナ放電とを交互に行なう第1処理、
前記基材の表面に対し、前記紫外線放射と前記コロナ放電とを同時に行なう第2処理、
前記基材の表面に対し前記紫外線放射及び前記コロナ放電を交互に1回又は複数回行なう処理と、前記基材の表面に対し前記紫外線放射及び前記コロナ放電を同時に1回又は複数回行なう処理とを含む第3処理、
又は、
上記第1乃至第3処理の少なくともいずれか2つの処理の組合せ、
を行なうことを特徴とする請求項1に記載の基材表面処理方法。
【請求項3】
前記基材は、以下の熱可塑性プラスチックI、又は熱硬化性ポリマーIIであることを特徴とする請求項1に記載の基材表面処理方法。
ここで、前記熱可塑性プラスチックIは、
ポリスチレン、ポリ(スチレン‐ブタジエン‐スチレン)即ちSBSのようなスチレンコポリマー、ポリプロピレン、及びポリエチレンのいずれか1つを含むポリオレフィンと、
ポリアミドと、
アクリロニトリルとメチルアクリレートとのコポリマー、アクリロニトリルとメチルメタクリレートとのコポリマー、アクリロニトリルと塩化ビニルとスチレンとのコポリマー(SAN)、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンとのコポリマー(ABS)、及び、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンとポリカーボネート(PC)とのコポリマーと、のいずれか1つを含むアクリルニトリルのコポリマーと、
から選択され、
前記熱硬化性ポリマーIIは、
ポリイミドと、
ポリエステルと、
フェノール樹脂と、
エポキシドと、
から選択される。
【請求項4】
前記UV/コロナ併用処理ステップは、紫外線放射とコロナ放電とを少なくとも1回交互に行なうことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基材表面処理方法。
【請求項5】
前記UV/コロナ併用処理ステップは、前記基材の表面に対し、0.01秒〜30分の紫外線放射と0.01秒〜30分のコロナ放電とを1回から120回交互に行なうことを特徴とする請求項1に記載の基材表面処理方法。
【請求項6】
前記無電解金属被覆ステップは、1種類又は複数種類のエアロゾル状の酸化還元溶液を前記基材にスプレーするステップを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基材表面処理方法。
【請求項7】
前記無電解金属被覆ステップは、1種類又は複数種類の酸化還元溶液に前記基材を浸漬させるステップを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基材表面処理方法。
【請求項8】
前記無電解金属被覆ステップで排出された廃液を再処理して再利用する廃液再利用ステップをさらに含み、
前記廃液再利用ステップは、
前記廃液を容器に回収するステップと、
回収した前記廃液をエバポレータ内で蒸留する蒸留ステップと、
前記蒸留ステップで蒸留して得られた蒸留物を、前記無電解金属被覆ステップにおいて再利用するか又は下水に廃棄するステップと、
をこの順番で含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基材表面処理方法。
【請求項9】
前記基材表面処理方法により、複数の前記基材の表面を、連続性を絶つことなくインラインで処理することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の基材表面処理方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の基材表面処理方法を実施するための装置であって、
前記UV/コロナ併用処理ステップを実行する少なくとも1つのモジュールと、
前記無電解金属被覆ステップを実行する少なくとも1つのモジュールと
を備えたことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−530656(P2011−530656A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522481(P2011−522481)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060164
【国際公開番号】WO2010/018115
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(511014921)ジェット・メタル・テクノロジーズ (2)
【氏名又は名称原語表記】JET METAL TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】