説明

ポリマー変性したクレーを含有するナノサイズの複合体を含むトナーを製造する方法

【課題】外部の表面添加物などを含むことと関連する問題を回避しながらトナー粒子のRH感受性および帯電性能を改善する。
【解決手段】トナー粒子を製造する方法は、ポリマー変性したクレーを含みエクスフォリエート構造、インターカレート構造、タクトイド構造、およびそれらの混合物からなる群から選択される構造を有するナノサイズのクレー複合体を提供するステップと、少なくとも1つのバインダおよび少なくとも1つの着色剤を含むトナー粒子のコアのためのエマルジョンを形成するステップ、および少なくとも1つのバインダを含むトナー粒子のシェルのためのエマルジョンを形成するステップと、該ナノサイズのクレー複合体をコアのためのエマルジョンまたはシェルのためのエマルジョンの少なくとも1つに添加するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されているのは、ナノサイズの複合体およびこれらの複合体を用いてトナー粒子または現像剤を製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
トナー組成物は、一般的には制御された粒子の形をした小さいトナーサイズの粒子を有する微粉末を含む。しかしながら、小さいトナーサイズの粒子は、小さいトナーサイズの粒子と関連する物理的現象によって性能の問題をしばしば引き起こす。その結果、外部の表面添加物例えば金属酸化物などを、電荷安定性、トナー流動性、トナー接着性および/またはブロッキングを制御するために小さいトナーサイズの粒子に添加する。しかしながら、時間および現像ハウジングによる損傷と共に、小さいトナーサイズ粒子のトナー流動性およびトナー接着性は変化することがあり得、その小さいトナーサイズ粒子はブロック化して画像品質に影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
さらに、金属酸化物の添加物の充填は、小さいトナーサイズ粒子が所望を超える高い相対湿度感受性(以後「RH」)を示す原因となることがしばしばあり得、したがって、すべての湿度において性能を十分に発揮することはできない。トナー組成物は、プリンタによるデジタルプリント画像の良好な画像品質を可能にするために、すべての環境条件下で機能することが望ましい。つまり、現像剤は、10%RH/15℃相対湿度(本明細書ではCゾーンと称する)のような低湿度、および85%RH/28℃相対湿度(本明細書ではAゾーンと称する)のような高湿度の両方において機能することが望ましい。
【0004】
したがって、小さいトナーサイズ粒子またはEA(乳化重合凝集法による)トナー粒子などの微粉末の物理的現象は、高品質画像を形成する能力を妨害する様々な問題を現像剤に対して引き起こし得る。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,914,095号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、外部の表面添加物などを含むことと関連する問題を回避しながらトナー粒子のRH感受性および帯電性能を改善するより優れた方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の実施形態において、トナー粒子を製造する方法が開示されている。その方法は、ナノサイズのクレー複合体を提供するステップであって、該ナノサイズのクレー複合体が、ポリマー変性したクレーを含み、該ナノサイズのクレー複合体が、エクスフォリエート構造、インターカレート構造、タクトイド構造、およびそれらの混合物からなる群から選択される構造を有する該ナノサイズのクレー複合体を提供するステップを含む。さらに該方法は、少なくとも1つのバインダおよび少なくとも1つの着色剤を含むトナー粒子のコアのためのエマルジョンを形成するステップ、少なくとも1つのバインダを含むトナー粒子のシェルのためのエマルジョンを形成するステップ、ならびに該ナノサイズのクレー複合体を、コアのためのエマルジョンまたはシェルのためのエマルジョンの少なくとも1つに添加するステップを含む。更に、本方法は、該コアのためのエマルジョンを凝集させ、該トナー粒子のコアが凝集によって形成されるようにするステップと、トナー粒子のコアを凝集させた後、シェルのためのエマルジョンを加え、その後凝集したコア上にシェルを形成するように凝集を継続するステップを含む。
【0008】
なおもさらなる実施形態において、トナー粒子を製造する方法が開示されている。その方法は、ナノサイズのクレー複合体を提供するステップであって、該ナノサイズのクレー複合体が、ポリマー変性したクレーを含み、該ポリマー変性したクレーのクレー粒子が、約1nmから約500nmの平均粒径を有している該ナノサイズのクレー複合体を提供するステップを含む。さらに、該方法は、トナー粒子のためのエマルジョンを形成するステップであって、該トナー粒子がバインダおよび任意の着色剤を含み、該バインダが、アクリラート含有樹脂、スルホン化ポリエステル樹脂、非スルホン化ポリエステル樹脂、酸含有ポリエステル樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される該トナー粒子のためのエマルジョンを形成するステップを含む。その上に、該方法は、該エマルジョンにナノサイズのクレー複合体を添加するステップと該エマルジョンおよび任意の着色剤を凝集させ、該トナー粒子が凝集によって形成されるようにするステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書には、ポリマー変性したクレーを含むナノ粒子のクレー複合体が開示されている。用語「ナノサイズの」とは、例えば、約1nmから約300nmまでの平均粒径を指す。例えば、ナノサイズの粒子は、約50nmから約300nmまで、または約125nmから約250nmまでの大きさを有することができる。ナノサイズのクレー複合体は、したがって、約1nmから約300nmまで、約50nmから約300nmまで、または約125nmから約250nmまでの平均粒径を持つことができる。この平均粒径は、ナノメートルサイズの材料の大きさを測定するための任意の適当な装置を用いて測定することができる。かかる装置は市販されており、技術的に知られており、例えばコールターカウンタが挙げられる。
【0010】
複数の実施形態において、該ポリマーは、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂またはアクリル樹脂であり得る。
【0011】
ナノサイズのクレー複合体は、トナー粒子を形成するために、トナーの本体、例えば従来のトナーまたはエマルジョン凝集(EA)トナーなどの中に組み込むことができる。EAトナーにおいては、ナノサイズのクレー複合体は、トナー粒子のコア部分および/またはシェル部分のバインダ中に組み込むことができる。勿論、そのトナー粒子はシェル部分を含有する必要はなく、その場合、ナノサイズのクレー複合体は、シェルのまったくないトナー粒子それ自体の中に分配される。ポリマー変性したクレーのナノサイズの複合体を含有するトナーは、改良された弾性率、帯電性能とRH感受性および水蒸気透過性ならびに添加物固着を示すことができる。その結果、これらのトナーは、改良されたブロッキング温度およびビニルオフセット(vinyl offset)を示すことができる。
【0012】
ナノサイズのクレー複合体の使用によりトナー粒子の弾力性を増すことによってトナー粒子のビニルオフセットを防止または回避することができる。RH感受性に関しては、ナノサイズのクレー複合体を含有するトナーは、低湿度条件における高帯電および高湿度条件における低帯電を防ぐことができる。
【0013】
ナノサイズのクレー複合体に使用するのに適するシリケートクレーとしては、例えば、アルミノシリケートなどを挙げることができる。そのシリケートクレーは、シート状または層構造を有することができ、アルミナAlO八面体に結合したシリカSiO四面体からなることができる。その四面体対八面体の比は、例えばモンモリロナイトとしても知られるマグネシウムアルミニウムシリケートなどのスメクタイトクレーを形成するためには2対1であり得る。モンモリロナイトは、したがって、ナノサイズの複合体形成のために使用することができる。
【0014】
複数の実施形態において、ナノサイズの複合体形成のために適するその他のクレーとしては、ヘクトライト(hectorites)、例えばマグネシオシリケート(magnesiosilicates)などまたは合成クレー、例えばヒドロタルサイトなど、としても知られるケイ酸マグネシウムを挙げることができる。そのヘクトライトは、非常に小さい小板を含むことができ、そのヒドロタルサイトは、モンモリロナイトの小板上で見出すことができるマイナス電荷とは対照的に、小板上にプラスの電荷を持つように製造することができる。
【0015】
複数の実施形態において、該シリケートクレーは、カオリンクレーを含むことができる。カオリンクレーはまた、チャイナクレーまたは製紙用クレーとしても知られる。それは、鉱物カオリナイト、アルミノケイ酸塩からなり、約46%のシリカ、約40%のアルミナおよび約14%の水の組成のアルミナの水和シリカである。適当なカオリンクレー粒子の例は、Huber80、Huber90、Polygloss80およびPolygloss90である。天然の精製カオリンクレーのその他の適当な例は、R.T.Vanderbilt Company,Inc.によるDIXIECLAY(登録商標)、PAR(登録商標)、およびBILT−PLATES(登録商標)156である。カオリンクレーと同じく、シリケートクレーは、水和されていてもいなくてもよい。シリケートクレーは、無機または有機物質により処理することもできる。
【0016】
利用することができるその他のシリケートクレーとしては、ベントナイトクレーが挙げられる。別法では、該シリケートクレーは、天然の精製シリケート、例えばRockwood Additives Ltd.(英国)による、GELWHITE(登録商標)MASクレー、GELWHITE(登録商標)L、GELWHITE(登録商標)GP、BENTOLITE(登録商標)MB、およびCLOISITE(登録商標)Na+などを含むことができるマグネシウムアルミニウムシリケートであり得る。そのマグネシウムアルミニウムシリケートクレーは、また、有機物質、例えば、すべてRockwood Additives Ltd.(英国)から入手することができる、第四級アンモニウム塩により変性されている天然のモンモリロナイトであるCLOISITE(登録商標)10A、15A、20A、25A、30Bおよび93A、またはCLAYTONE(登録商標)HY、CLAYTONE(登録商標)SOなどによって処理することができる。その他の有機変性したモンモリロナイト類としては、例えば、Rockwood Additives Ltd.(英国)によるCLAYTONE(登録商標)40、APA、AF、HT、HO、TG、HY、および97を挙げることができる。ケイ酸マグネシウム類の例としては、例えば、すべてRockwood Additives Ltd.(英国)による、合成層状ケイ酸マグネシウム、例えば、LAPONITE RD、LAPONITE RDS(無機ポリリン酸塩ペプタイザーを組み込む)、LAPONITE B(フルオロシリケート)、LAPONITE S(無機ポリリン酸塩ペプタイザーを組み込んでいるフルオロシリケート)、LAPONITE DおよびDF(フッ化物イオンにより表面変性されている)、ならびにLAPONITE JS(無機ポリリン酸塩分散剤により変性されているフルオロシリケート)などが挙げられる。
【0017】
そのシリケートクレー粒子は、約10から約400m/gまで、または約15から約200m/gまでの比表面積を持つことができる。
【0018】
シート状または層構造は、電荷をそこに持つことができる表面および/または端部のある層を有することができる。そのシート状または層構造は、そのクレーの間にその構造物の表面および/または端部における電荷と対抗する電荷を生ずるための対イオンを収容することができる層間隔を持つことができる。さらに、その対イオンは、一部がクレーの層間隔の中に存在することができる。小板としても知られるそのシート状または層構造の厚さは、約1nm以上であり得る。その結果、その小板は、約100から約1500の範囲のアスペクト比を有することができる。
【0019】
複数の実施形態において、シリケートクレーの小板は、剛体ではなくある程度の柔軟性を有することができる。そのシリケートクレーは、イオン交換容量を有することができる。その結果、そのシリケートクレーは、非常に親水性の種であり得、広範囲のポリマータイプと不相溶であり得る。したがって、ポリマー−クレーのナノサイズの複合体を形成するためには、シリケートクレーについてのクレーの極性は、シリケートクレーを有機物親和性の種などにするための改質が必要であり得る。有機物親和性クレーの種は、普通に親水性のシリケートクレーから有機カチオン、例えばアルキルアンモニウムイオンなどによるイオン交換によって製造することができる。例えば、モンモリロナイトにおいては、シリケートクレーのナトリウムイオンを、アミノ酸例えば12−アミノドデカン酸(ADA)などに対して交換することができる:
Na−クレー+HOC−R−NHCl
→αHOC−R−NH−クレー+NaCl ・・・(1)
式(1)の中のRは、有機の基、例えばアルキル基またはアリール基を表し、αは、アミノ酸鎖内の酸基の最初の炭素原子に対するアミノ基配置の位置と関連付けることができる。
【0020】
ナノサイズの複合体を形成するための合成経路は、得られるシリケートクレーの構造が、インターカレートハイブリッド構造、エクスフォリエート(exfoliated)ハイブリッド構造、またはタクトイド構造のいずれかであることに基づき得る。インターカレートハイブリッド構造に対しては、有機成分を、クレーの層または小板の間に挿入することができる。その結果、クレーの間の層間隔は、広げられるが、その層または小板は、互いに対して明確な空間関係を有することができる。エクスフォリエートハイブリッド構造においては、クレーの層または小板は、完全に分離しておくことができ、個々の層または小板は、有機マトリックス中に分配することができる。第3の代替物は、ポリマーマトリックス中の完全なクレー粒子例えばタクトイドなどの分散体であり得る。その結果、そのクレーの分散体は、通常の充填剤などとして使用することができる。
【0021】
クレーの交換容量、反応媒体の極性および層間カチオン例えばオニウムイオンなどは、クレーの層間剥離に影響を及ぼし得る。クレーの表面極性を改質することによって、オニウムイオンは、ポリマー前躯体の構造の中間層領域への熱力学的に有利な浸透を可能にすることができる。オニウムイオンは、そのオニウムイオンの極性に基づいてクレーの層間剥離を支援することができる。ヒドロタルサイトなどのプラスに帯電したクレーにより、オニウム塩の改質はアニオン界面活性剤によって置き換えることができる。他の適当なクレーの改質を、ナノサイズのクレー複合体の形成に使用されるポリマーに基づいて利用することができる。有機物親和性の種を製造するためのシリケートクレーに対する適当なクレーの改質としては、クレーのイオン−双極子相互作用、シランカップリング剤の使用、ブロックコポリマーの使用などによるシリケートクレーの改質が挙げられる。
【0022】
ナノサイズの複合体に対するイオン−双極子相互作用の例としては、クレー中へのドデシルピロリドン等の小分子のインターカレーションが挙げられる。エントロピー的に進められる小分子の置換によりポリマー分子を導入する経路を提供することができる。クレーの端部とポリマーの好ましくない相互作用は、クレーの端部を改質するためのシランカップリング剤の使用によって克服することができる。その好ましくない相互作用は、オルガノクレー構造を形成するためにオニウムイオン処理したクレーと共に使用することができる。
【0023】
別法では、クレーの相互作用を避けるために、コポリマーの1成分がクレーと混和性があり、他がポリマーマトリックスと混和性があるブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーの使用に基づくクレーとポリマーとの混和化を利用することができる。典型的なブロックコポリマーは、クレー混和性の親水性ブロックおよびポリマー混和性の疎水性ブロックを含有することができる。その結果、高度のエクスフォリエーションを達成することができる。典型的なポリマー混和性の疎水性ブロックの構造は、次の通りである。
【化1】


典型的なポリマー混和性疎水性ブロックの構造において、nおよび/またはmは、約10単位から約1000単位まで、約50単位から約800単位までまたは約100単位から約700単位までの値を有することができる。
【0024】
そのシリケートクレーは、ポリマー変性したクレーを提供するように選択して、そのポリマーまたはその前駆体によってクレーの層間隔中に効果的に浸透させることができる。その結果、所望のエクスフォリエートまたはインターカレートハイブリッド構造を、クレーの層間隔中に浸透するポリマーまたはその前駆体から生成させることができる。複数の実施形態において、そのポリマーは、ポリマー種としてか、またはインサイチューで重合してポリマー変性したクレーを有するナノサイズの複合体を生成することができるモノマーを介するかのいずれかで組み込むことができる。
【0025】
複数の実施形態において、クレーを改質するためのポリマーは、押出しなどの溶融ブレンド法によるか、または溶液ブレンド法によってクレー中に導入することができる。その溶融ブレンド法または配合法は、クレーの層間剥離を促進するせん断力に依存し、エクスフォリエート化ナノサイズの複合体を生成させるためのインサイチュー(in situ)重合よりも効果が低い可能性がある。
【0026】
熱硬化性および熱可塑性ポリマーの両方を、溶液ブレンド法または溶融ブレンド法によってナノサイズの複合体中に組み込むことができる。クレーに組み込むための適当な熱硬化性および熱可塑性ポリマーとしては、ナイロン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル(以後「EVA」)コポリマー、エポキシ樹脂類、ポリウレタン類、ポリイミド類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、またはポリ(エチレンテレフタラート)(以後「PET」)などを挙げることができる。クレーは、ポリマー変性クレー中に、ポリマー変性クレーの約1から約20重量パーセントまたはポリマー変性クレーの約2から約10重量パーセントの量で存在し得る。(なお、本明細書中の「重量パーセント」は「質量パーセント」と同義に用いられる。)
【0027】
ナノサイズの複合体は、また、クレーの存在下で、例えば、反応性有機物親和性のクレーの存在下で、例えば、スチレンを乳化重合することによるモノマーのインサイチュー重合によるポリマーを導入することによって調製または形成することができる。その反応性有機物親和性のクレーは、天然クレーの中間層ハイブリッド構造中の無機カチオンを、例えば、アミノメチルスチレンの第四級塩により交換することによって合成することができる。その第四級塩は、クロロメチルスチレンなどのスチレンから開始するガブリエル反応によって調製することができる。ナノサイズ複合体のポリマーマトリックスは、ポリスチレンホモポリマーならびにスチレンとスチレン単位、例えばアミノメチルスチレン単位の第四級塩とのブロックコポリマーによって構成することができる。
【0028】
適当なナノサイズの複合体としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸で硬化したビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)樹脂、例えばEpikote8283などが挙げられる。
【0029】
ポリマー変性したクレーのナノサイズの複合体の組込みによって、外部表面添加物の固着に対する抵抗と関連するトナーの性質、例えばトナー粒子のブロッキング挙動ならびにトナー粒子のドキュメントオフセットおよびビニルオフセット特性などを改良することができる。さらに、ナノサイズの複合体をトナー粒子中に組み込むことによって、デジタル印刷画像を形成するための現像剤中のトナー粒子の帯電性能を改良することができる。シリケートクレーのクレーの純度は、ナノサイズ複合体の特性に影響を及ぼし得る。
【0030】
ナノサイズの複合体は、トナーのコア粒子および/またはトナーのシェル層のトナーバインダ中に実質的に均一に分配されていてもよいしされていなくてもよい。
【0031】
トナー粒子のバインダ中のナノサイズの複合体の存在により、トナー粒子のRH感受性、弾性率、帯電性能および/またはブロッキング温度が改善される。その結果、トナーの低湿度RHゾーンの帯電が大幅に改善され、RH感受性比、即ち、高湿度RHゾーンにおけるトナーの帯電対低湿度RHゾーンにおけるトナーの帯電の比が、大幅に改善される。そのバインダ中に存在するナノサイズの複合体により、トナー粒子に対する水蒸気透過性および添加物固着が減少することが見出される。さらに、トナー粒子のバインダ中のナノサイズの複合体の存在は、トナー粒子の摩擦電気帯電性能を改善することが見出される。
【0032】
本明細書に記載のトナー粒子は、ポリマーバインダ、少なくとも1つの着色剤、およびEAトナー粒子に対するコアおよび/またはシェルのバインダ中に分配されている適当なナノサイズの複合体を含むことができる。
【0033】
さらなる実施形態において、該トナー粒子は、コア−シェル構造を有する。この実施形態においては、そのコアは、少なくとも1つのバインダおよび着色剤を含むトナー粒子材料を含むものである。一旦コア粒子が形成され、所望の大きさに凝集されると、次にそのコア粒子上に薄い外側のシェルが形成される。そのシェルは、必要な場合は他の成分もそこに含有することができるが、バインダ材料を含むことができる。ナノサイズのクレー複合体は、コアバインダ、シェル層バインダ、またはその両方に分配することができる。
【0034】
複数の実施形態において、該ポリマーバインダとしては、ポリエステル系ポリマーバインダを挙げることができる。適当なポリエステル系ポリマーバインダの説明用の例としては、様々なポリエステルのいずれをも挙げることができ、例えば、ポリエチレン−テレフタラート、ポリプロピレン−テレフタラート、ポリブチレン−テレフタラート、ポリペンチレン−テレフタラート、ポリヘキサレン−テレフタラート、ポリヘプタデン−テレフタラート、ポリオクタレン−テレフタラート、ポリエチレン−セバカート、ポリプロピレン−セバカート、ポリブチレン−セバカート、ポリエチレン−アジパート、ポリプロピレン−アジパート、ポリブチレン−アジパート、ポリペンチレン−アジパート、ポリヘキサレン−アジパート、ポリヘプタデン−アジパート、ポリオクタレン−アジパート、ポリエチレン−グルタラート、ポリプロピレン−グルタラート、ポリブチレン−グルタラート、ポリペンチレン−グルタラート、ポリヘキサレン−グルタラート、ポリヘプタデン−グルタラート、ポリオクタレン−グルタラート、ポリエチレン−ピメラート、ポリプロピレン−ピメラート、ポリブチレン−ピメラート、ポリペンチレン−ピメラート、ポリヘキサレン−ピメラート、ポリヘプタデン−ピメラート、ポリ(プロポキシレート化ビスフェノール−フマラート)、ポリ(プロポキシレート化ビスフェノール−スクシナート)、ポリ(プロポキシレート化ビスフェノール−アジパート)、ポリ(プロポキシレート化ビスフェノール−グルタラート)、SPAR(商標)(Dixie Chemicals)、BECKOSOL(商標)(Reichhold Chemical Inc)、ARAKOTE(商標)(Ciba−Geigy Corporation)、HETRON(商標)(Ashland Chemical)、PARAPLEX(商標)(Rohm & Hass)、POLYLITE(商標)(Reichhold Chemical Inc)、PLASTHALL(商標)(Rohm & Hass)、CYGAL(商標)(American Cyanamide)、ARMCO(商標)(Armco Composites)、ARPOL(商標)(Ashland Chemical)、CELANEX(商標)(Celanese Eng)、RYNITE(商標)(DuPont)、STYPOL(商標)(Freeman Chemical Corporation)、スルホン化ポリエステル類、これらの混合物などである。
【0035】
ポリマーバインダ用に選択される材料のその他の例としては、ポリオレフィン類、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリペンテン、ポリデセン、ポリドデセン、ポリテトラデセン、ポリヘキサデセン、ポリオクタデセン、およびポリシクロデセンなど、ポリオレフィンコポリマー類、ポリオレフィン類の混合物、二様分子量(bi−model molecula)のポリオレフィン類、官能性ポリオレフィン類、酸性ポリオレフィン類、ヒドロキシルポリオレフィン類、分枝ポリオレフィン類、例えば、VISCOL550P(商標)およびVISCOL660P(商標)のような日本の三洋化成から入手できるものなどが挙げられる。
【0036】
複数の実施形態において、ポリマーバインダとしては、特定のアクリラートまたはメタクリラートポリマー樹脂を挙げることができる。複数の実施形態において、ポリマーバインダとしては、スチレン−アルキルアクリラートバインダを挙げることができる。そのスチレン−アルキルアクリラートは、スチレン−ブチルアクリラートコポリマー樹脂、例えばスチレン−ブチルアクリラート−β−カルボキシエチルアクリラートポリマー樹脂であり得る。そのスチレン−ブチルアクリラート−β−カルボキシエチルアクリラートポリマーは、約70%から約85%のスチレン、約12%から約25%のブチルアクリラート、および約1%から約10%のβ−カルボキシエチルアクリラートを含むものであり得る。
【0037】
複数の実施形態において、EAトナー粒子のコア部分のバインダ材料用に使用することができる適当なポリマーとしては、ポリエステル系モノマー類、ポリオレフィン類、ポリケトン類、ポリアミド類、などから形成される結晶性樹脂および非晶性樹脂を挙げることができる。EAトナーのシェル部分は、非晶性樹脂を含むことができ、結晶性樹脂は実質的に乃至は完全に含んではならない。
【0038】
上記ポリマーの2つ以上の混合物も必要に応じて使用することができる。
【0039】
複数の実施形態において、該ポリマーバインダは、該バインダが二様の分子量分布(即ち、少なくとも2つの異なる分子量領域での分子量ピーク)を持つように、異なる分子量の2つのバインダ材料の混合物を含むものであり得る。例えば一実施形態において、そのポリマーバインダは、第1の低分子量バインダおよび第2の高分子量バインダを含むものである。その第1のバインダは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定して、例えば、約1,000から約30,000まで、より具体的には約5,000から約15,000までの数平均分子量(Mn)、例えば、約1,000から約75,000まで、より具体的には約25,000から約40,000までの重量平均分子量(Mw)、および例えば約40℃から約75℃のガラス転移温度を有することができる。その第2のバインダは、例えばMwおよびMnについては1,000,000を超える大幅に大きい数平均および重量平均分子量と、例えば約35℃から約75℃までのガラス転移温度を有することができる。そのガラス転移温度は、例えば、バインダ中のアクリラートの量を調節することによって制御することができる。例えば、より高いアクリラート含量により、バインダのガラス転移温度を下げることができる。第2のバインダは、ゲル、即ち大規模なゲル化およびラテックスの高分子量による高度に架橋したポリマーとみなすことができる。この実施形態においては、そのゲルバインダは、バインダ全体の約0%から約50重量%まで、またはバインダ全体の約8%から約35重量%の量で存在することができる。
【0040】
第1のバインダ中に分配されているポリマーバインダのゲル部分は、トナーの光沢特性を制御するために使用することができる。ゲルバインダの量が多いほど一般に光沢は低下する。
【0041】
両方のポリマーバインダは同じモノマー材料から得ることができるが、例えば、高分子量ポリマー中にはより多い量の架橋を含めることによって異なる分子量を有するように製造する。第1の低分子量バインダは、前記ポリマーバインダ材料のいずれかの中から選択することができる。第2のゲルバインダは、第1のバインダと同じであっても異なってもよい。ゲルバインダは、第1のバインダと同じであって両方ともスチレンアクリラートであり、複数の実施形態においてスチレン−ブチルアクリラートであり得る。第2のゲルバインダの高い分子量は、例えば、モノマー系により多量のスチレンを含有させ、モノマー系により多量の架橋剤を含有させ、かつ/またはより少量の連鎖移動剤を含有させることによって達成することができる。
【0042】
ゲルラテックスは、界面活性剤を含む水相中に懸濁した約10nmから約400nmまたは約20nmから約250nmのサブミクロンの架橋した樹脂粒子を含むことができる。
【0043】
コア−シェル構造をしたトナーにおいて、そのシェルはゲルラテックス樹脂を含まないものであり得るけれども、そのシェルはコア粒子のラテックスと同じであるラテックス樹脂を含むものであることができる。そのシェルラテックスは、トナー凝集体にバインダ材料全体の約5重量パーセントから約40重量パーセントの量またはバインダ材料全体の約5重量パーセントから約30重量パーセントの量で添加することができる。そのシェル即ちトナー凝集体上のコーティングは、約0.2μmから約1.5μmまたは約0.5μmから約1.0μmの厚さを有することができる。
【0044】
コアおよび存在する場合はシェルを含めたバインダの全体量は、固形分基準でトナー粒子(即ち、外部添加物を除くトナー粒子)の約60重量%から約95重量%またはトナーの約70重量%から約90重量%であり得る。
【0045】
トナー粒子は、しばしば少なくとも1つの着色剤も含む。ここで使用される着色剤には、顔料、染料、染料の混合物、顔料の混合物、染料と顔料の混合物などが含まれる。その着色剤は、本明細書に記載のトナー粒子の約2重量パーセントから約35重量パーセント、例えば約3重量パーセントから約25重量パーセントまたは約3重量パーセントから約15重量パーセントなどの量で存在し得る。着色剤分散体は、EA法のためのポリマーバインダの出発エマルジョン中に加えることができる。
【0046】
一般に、選択することができる着色剤は、ブラック、シアン、マゼンタ、またはイエロウ、およびそれらの混合物である。
【0047】
トナーは、ラテックスポリマーバインダおよび着色剤に加えて、ワックス分散体を含むことができる。ワックスは、トナーオフセット抵抗性、例えば、特にオイル量が低いまたはオイルレスの定着設計による定着ロールからのトナーのリリースを助けるためにトナー配合物中に加えることができる。エマルジョン凝集(EA)トナー、例えばスチレン−アクリラートEAトナーに対しては、線状ポリエチレンワックス、例えばBaker Petroliteから入手可能であるPOLYWAX(登録商標)の一連のワックスなどが有用であり得る。勿論、そのワックス分散体は、ポリプロピレンワックス、当技術分野で知られているその他のワックス、および複数のワックスの混合物も含むことができる。
【0048】
トナーは、ワックスを固形分基準で、例えば、トナーの約5重量%から約15重量%まで含むことができる。複数の実施形態において、トナーは、約8重量%から約12重量%のワックスを含むことができる。
【0049】
トナー粒子の弾性率は、ナノサイズの複合体をそのトナー粒子中に組み込むことによって改良することができる。その結果、トナー粒子の弾性率は、ナノサイズの複合体、例えばエクスフォリエートしたクレーなどを含めることによって改良することができる一次的な力学的性質であり得る。トナー粒子中に含まれるエクスフォリエートクレー層または小板の高いアスペクト比に基づいて、一定の改良を達成することができる。その補強作用は、クレー層または小板のエクスフォリエーション(exfoliation)によって提供され、クレーの層または小板に対するせん断変形および応力転移によるものであり得る。
【0050】
ポリマー変性したクレーによるナノサイズの複合体は、水蒸気透過性の減少を示すことができる。ナノサイズの充填剤は、層状のシリケートとは対照的に、アニオンによってカウンタ的にバランスをとることができるプラスの層荷電をギャラリー中に有することができる有機変性したヒドロタルサイトと共に使用することができる。高度にインターカレートされたナノサイズの複合体の水蒸気透過性は、純ポリマーと比較した場合、例えば、それぞれ約3重量%および約5重量%のヒドロタルサイト含量で、約5から約10倍減少させることができる。
【0051】
ポリマー変性したシリケートクレーを有するナノサイズの複合体は、トナー粒子のポリマーバインダ中に分配されるようにトナー粒子に加えることができる。そのナノサイズの複合体は、コア−シェルトナー粒子構造中のトナーのコア粒子およびシェル層の1つまたは両方のポリマーバインダ中に分配することができる。
【0052】
エマルジョン凝集トナー工程に加えられるように、ナノサイズの複合体は、例えばナノサイズの複合体粒子を、界面活性剤を使用するかまたは使用しないで、水中に分散させて水性分散体を形成することにより分散体とすることができる。その分散体の固形分含量は、その分散体の約5%から約35%であり得る。
【0053】
そのナノサイズの複合体は、トナー粒子中に、トナー粒子の約2重量%から約15重量%の全体量(例えば、コア−シェル構造中のコアとシェル層の両方の量を含む)またはトナー粒子の約3重量%から約10重量%の量で含むことができる。
【0054】
トナー粒子のシェルバインダ内のナノサイズの複合体は、トナー粒子の約0.1から約5重量%の量で存在することができる。複数の実施形態において、トナー粒子のシェルバインダ中のナノサイズの複合体は、トナー粒子のコア上に単層を形成することができ、トナー粒子の約0.1重量%から約2重量%の量であり得る。
【0055】
トナー粒子を形成するには任意の適当な方法を無制限で使用することができる。複数の実施形態において、エマルジョン凝集トナー粒子の形成においてはエマルジョン凝集手順を使用することができる。
【0056】
一例としてのエマルジョン/凝集/融合工程は、容器中で、ラテックスバインダ、着色剤分散体、ナノサイズの複合体分散体、任意のワックスエマルジョン、任意の凝固剤(coagulant)および脱イオン水の混合物を形成するステップを含み得る。その混合物は、ホモジナイザーを用いて均一になるまで攪拌し、次に反応器に移してその均一になった混合物を、例えば、少なくとも約45℃の温度に加熱し、その温度で、所望の大きさまでのトナー粒子の凝集が可能となる時間保持する。凝集したコア粒子上にシェルを形成するために、追加のラテックスバインダを次に加えることができる。凝集したトナー粒子の所望の大きさが得られたところで、その混合物のpHを調節してさらなるトナーの凝集を防ぐ。そのトナー粒子は、例えば、少なくとも約90℃の温度までさらに加熱し、その粒子が融合して球形になることができるようにpHを下げる。ヒーターを次に止め、反応器の混合物を室温までそのまま冷却し、その時点で、凝集し、融合したトナー粒子を回収し、場合によっては洗浄し、乾燥する。
【0057】
エマルジョン凝集手順によるトナー調製においては、その工程中で1つ以上の界面活性剤を使用することができる。適当な界面活性剤としては、アニオン、カチオンおよび非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0058】
融合および凝集に続いて、該粒子は、大きすぎる粒子を除去するために、所望のサイズのオリフィスを通す湿式篩にかけ、洗浄して所望のpHまで処理し、次いで、例えば1重量%未満の水分含量まで乾燥する。
【0059】
複数の実施形態において、該トナー粒子は、約1μmから約15μmまでまたは約5μmから約9μmまでの平均粒径を有することができる。その粒径は、適当な装置、例えば通常のコールターカウンタを用いて測定することができる。その円形度は、既知のMalvern Sysmex Flow Particle Image Analyzer FPIA−2100を用いて測定することができる。
【0060】
トナー粒子は、(D84/D50)における容積による上位幾何標準偏差(GSDv)が約1.15から約1.25の範囲、例えば約1.18から1.23であるような粒径を有することができる。トナー粒子全体の50%の累積割合が得られる粒径は容積D50として定義される。84%の累積割合が得られる粒径は容積D84として定義される。これら上述した容積平均粒度分布指数GSDvは、累積分布中のD50およびD84を使用して示すことができ、容積平均粒度分布指数GSDvを(容積D84/容積D50)として表す。
【0061】
トナー粒子は、形成後、外部添加物とブレンドすることができる。任意の適当な表面添加物を使用することができる。外部添加物の例としては、SiO、金属酸化物、例えば、TiOおよび酸化アルミニウムなど、および潤滑剤、例えば、脂肪酸の金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)、ステアリン酸カルシウム)またはUNILIN 700等の長鎖アルコール類を挙げることができる。
【0062】
該トナーは、例えば、約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのチタニア(約10nmから約50nmまたは約40nmの粒度)、約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのシリカ(約10nmから約50nmまたは約40nmの粒度)、約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのスペーサー粒子を含むことができる。
【0063】
該トナー粒子は、場合によって、そのトナー粒子をキャリア粒子と混合することによって現像剤組成物に配合することができる。そのキャリア粒子は、トナー粒子と様々な適当な組合せで混合することができる。その濃度は、通常、トナーが約1重量%から約20重量%であり、キャリアが約80重量%から約99重量%である。しかしながら、所望の特徴を有する現像剤組成物を得るためには様々なトナーとキャリアの百分率を用いることができる。
【0064】
該トナーは、既知の静電写真(electrostatographic)画像形成方法において使用することができる。したがって、例えば、そのトナーまたは現像剤は、例えば摩擦電気によって帯電させ、感光体またはイオノグラフィックレシーバーなどの画像形成部材上の逆帯電している潜像に適用することができる。得られたトナー画像は、次に直接かまたは中間転写部材を介するかのいずれかで紙または透明シートなどの画像受容基材に転写することができる。そのトナー画像は、次に、例えば加熱した定着ロールにより、熱および/または圧力を加えることにより画像受容基材に定着させることができる。
【実施例】
【0065】
実施例1.
3.5重量パーセントのモンモリロナイトクレーおよびカルシウム塩を含むものである樹脂エマルジョン(ラテックスA)。
【0066】
機械攪拌機および熱油ジャケットが装備されている2リットルのバッチリアクター(buchi reactor)に、500gの脱イオン(「DI」)水、4グラムのDOWFAX 2A1(アニオン乳化剤溶液)、および20.4gのモンモリロナイトクレーのナトリウム塩(Nanocorから入手できるN)を仕込んで混合物を形成する。その混合物を300rpmで攪拌して80℃に加熱し、続いて10グラムの水の中に1.6グラムの水酸化カルシウムを加える。次に、8グラムのβ−CEA(β−カルボキシエチルアクリラート)をその混合物に加え、続いて45グラムの脱イオン水に溶解した3gの過硫酸ナトリウムと8.1グラムの過硫酸アンモニウムの開始剤を加える。
【0067】
別の容器にモノマーエマルジョンを次のようにして用意する。最初に、426.6グラムのスチレン、113.4グラムのn−ブチルアクリラートおよび8グラムのβ−CEA、11.3グラムの1−ドデカンチオール、1.89グラムのADOD、10.59グラムのDOWFAX(アニオン界面活性剤)、および257グラムの脱イオン水を混合し、モノマーエマルジョンを形成する。スチレンモノマー対n−ブチルアクリラートモノマーの重量による割合は、79パーセント対21パーセントである。上記のエマルジョンのモノマーの1%を、次に76℃で水性界面活性剤相を含有している反応器中にゆっくり供給し、その間窒素をパージして、「シード」を形成する。開始剤溶液を次に反応器にゆっくり加え、20分後、残りのエマルジョンを定量ポンプを用いて連続して供給する。すべてのモノマーエマルジョンが主反応器中に仕込まれたところで、温度をさらに2時間76℃に保持して反応を完了させる。フル冷却を次に適用し、反応器温度を35℃まで下げる。生成物を、1μmのフィルターバッグにより濾過した後、貯蔵タンク中に集める。
【0068】
ラテックスエマルジョンAの調製:
スチレン、n−ブチルアクリラートおよびβ−カルボキシエチルアクリラート(β−CEA)の半連続的乳化重合により生じたポリマー粒子を含むものであるラテックスエマルジョンを次のように調製する。この反応配合物は、2リットルのバッチリアクター(Buchi reactor)中で調製する。
【0069】
実施例2.
エマルジョン樹脂(ラテックスB)は、スチレン、n−ブチルアクリラートおよびβ−カルボキシエチルアクリラートから誘導する。
【0070】
0.9グラムのDOWFAX 2A1(アニオン乳化剤)および514グラムの脱イオン水からなる界面活性剤溶液を、ステンレススチールの貯蔵タンク中で10分間攪拌して用意する。その貯蔵タンクを次に窒素で5分間パージした後反応器に移す。その反応器は次に300RPMで攪拌しながら引続き窒素パージをする。その反応器を次に76℃まで制御速度で加熱し、一定に保持する。
【0071】
第1の別の容器中で、8.1グラムの過硫酸アンモニウム開始剤を45グラムの脱イオン水に溶解する。第2の別の容器中で、モノマーエマルジョンを次のように調製する。最初に、426.6グラムのスチレン、113.4グラムのn−ブチルアクリラートおよび16.2グラムのβ−CEA、11.3グラムの1−ドデカンチオール、10.59グラムのDOWFAX(アニオン界面活性剤)、および257グラムの脱イオン水を混合し、モノマーエマルジョンを形成する。スチレンモノマー対n−ブチルアクリラートモノマーの重量による割合は、79パーセント対21パーセントである。そのモノマーエマルジョンの1パーセントを、次に76℃で水性界面活性剤相を含有している反応器中にゆっくり供給し、その間窒素をパージして、「シード」を形成する。開始剤溶液を次に反応器にゆっくり加え、20分後、残りのエマルジョンを、定量ポンプを用いて連続して供給する。すべてのモノマーエマルジョンが主反応器中に仕込まれたところで、温度をさらに2時間76℃に保持して反応を完了させる。フル冷却を次に適用し、反応器温度を35℃まで下げる。生成物を、1μmのフィルターバッグにより濾過した後、貯蔵タンク中に集める。
【0072】
実施例3.
コアおよびシェルが実施例1のレジネートクレーラテックスを含むものであるトナー粒子の調製:
【0073】
オーバーヘッド攪拌機(overhead stirrer)および加熱マントルを備えた4リットルのガラス反応器中、639.9グラムの上記ラテックスエマルジョンA(実施例1)、92.6グラムの26.49パーセントの固形分含量を有するBlue Pigment PB15:3分散体を、1462.9グラムの水中に、ポリトロンを用いる高せん断の攪拌により分散させる。この混合物に、10重量パーセントのポリ(塩化アルミニウム)(PAC)と90重量%の0.02MのHNO溶液からなる54グラムの凝固剤溶液を加える。このPAC溶液は、低いrpmで滴下して加え、顔料着色したラテックス混合物の粘度が上昇したらポリトロンプローブのrpmも2分間にわたって5,000rpmに上げる。これによって、粒子のコアのための、ナノメートルサイズのラテックス粒子、9%のワックスおよび5%の顔料からなるゲル化した粒子の凝集またはヘテロ凝集が生じる。
【0074】
顔料着色したラテックス/ワックスのスラリーを、0.5℃/分の制御速度でほぼ52℃まで加熱し、この温度またはこれよりやや高い温度で保持して粒子をほぼ5.0μmまで成長させる。5.0μmの平均粒径が達成されたところで、308.9グラムのラテックスエマルジョンA(実施例1)を、次に攪拌しながら反応器に導入する。さらなる30分から1時間後、測定される粒径は、5.7μmであり、1.20の容積または数による幾何標準偏差(GSD)の粒径分布を有する。得られた混合物のpHを、次に4パーセントの水酸化ナトリウムの塩基性水溶液により2.0から7.0に調整し、さらに15分間にわたってそのまま攪拌する。その後、得られた混合物を、1分間当り1.0℃で93℃まで加熱し、測定される粒径は、容積によるGSDが1.22および数によるGSDが1.22の5.98μmとなる。そのpHを次に2.5パーセントの硝酸溶液を用いて5.5まで下げる。得られた混合物は、次に、93℃の温度で2時間にわたって融合するままにする。
【0075】
この粒子の形態は、滑らかであり、「ポテト」の形をしている。冷却後の最終の粒径は、洗浄前であるが、5.98μmで、容積によるGSDが1.21である。粒子は6回洗浄し、最初の洗浄は63℃でのpH10で実施し、続いて室温で脱イオン水により3回実施し、1回の洗浄は、40℃でのpH4.0で行い、最後に室温で脱イオン水による最終的な洗浄を行う。乾燥した粒子の最終平均粒径は、GSD=1.21およびGSD=1.25の5.77μmである。この試料のガラス転移温度は、DSCによって測定され、補外ガラス転移開始温度(Tg(onset))=49.4Cを有することが見出される。
【0076】
実施例4.
コアがラテックスB(実施例2)を含むものであり、シェルが実施例1のレジネートクレーラテックスAを含むものであるトナー粒子の調製:
【0077】
上記の実施例3と類似のプロセスで、ラテックスエマルジョンB(実施例2)を、粒子がほぼ5.0μmまで成長するように凝集させる。5.1μmの平均粒径が得られたところで次にラテックスエマルジョンA(実施例1)を攪拌しながら反応器に導入し、凝集を継続する。得られた凝集した混合物を次いで93℃の温度で2時間そのまま融合させる。
【0078】
この粒子の形態は、滑らかであり、「ポテト」の形をしている。冷却後の最終の粒径は、洗浄前であるが、6μmで、容積によるGSDが1.22である。粒子は6回洗浄し、最初の洗浄は63℃でのpH10で実施し、続いて室温で脱イオン水により3回実施し、1回の洗浄は、40℃でのpH4.0で行い、最後に室温で脱イオン水による最終的な洗浄を行う。乾燥した粒子の最終平均粒径は、GSD=1.21およびGSD=1.24の5.8μmである。この試料のガラス転移温度は、示差走査熱量測定法によって測定され、補外ガラス転移開始温度=49.6Cを有することが見出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を製造する方法であって、
ナノサイズのクレー複合体を提供するステップであって、該ナノサイズのクレー複合体が、ポリマー変性したクレーを含み、該ナノサイズのクレー複合体が、エクスフォリエート構造、インターカレート構造、タクトイド構造、およびそれらの混合物からなる群から選択される構造を有するステップと、
少なくとも1つのバインダおよび少なくとも1つの着色剤を含むトナー粒子のコアのためのエマルジョンを形成するステップ、および少なくとも1つのバインダを含むトナー粒子のシェルのためのエマルジョンを形成するステップと、
該ナノサイズのクレー複合体を、コアのためのエマルジョンまたはシェルのためのエマルジョンの少なくとも1つに添加するステップと、
該コアのためのエマルジョンを凝集させ、該トナー粒子のコアが凝集によって形成されるようにするステップと、
トナー粒子のコアを凝集させた後、シェルのためのエマルジョンを加え、その後凝集したコア上にシェルを形成するように凝集を継続するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
トナー粒子を製造する方法であって、
ナノサイズのクレー複合体を提供するステップであって、該ナノサイズのクレー複合体が、ポリマー変性したクレーを含み、該ポリマー変性したクレーのクレー粒子が、約1nmから約500nmの平均粒径を有し、該ナノサイズのクレー複合体が、エクスフォリエート構造、インターカレート構造、タクトイド構造、およびそれらの混合物からなる群から選択される構造を有し、該ポリマー変性したクレーのクレー粒子が、アルミノシリケートクレー粒子、マグネシオシリケートクレー粒子、ヒドロタルサイトクレー粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択されるステップと、
該トナー粒子のためのエマルジョンを形成するステップであって、該トナー粒子がバインダおよび任意の着色剤を含み、該バインダが、アクリラート含有樹脂、スルホン化ポリエステル樹脂、非スルホン化ポリエステル樹脂、酸含有ポリエステル樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択されるステップと、
該エマルジョンにナノサイズのクレー複合体を添加するステップと、
該エマルジョンおよび任意の着色剤を凝集させ、該トナー粒子が凝集によって形成されるようにするステップと、
を含むことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2009−48192(P2009−48192A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207318(P2008−207318)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】